説明

ゴルフボール

【課題】反発性に優れ、アプローチショットのスピン量が高いゴルフボールを提供する。
【解決手段】本発明のゴルフボールは、センターと、カバーと、前記センターと前記カバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであって、前記センターは、樹脂成分として、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、及び、スラブ硬度がショアD硬度で40〜60であるセンター用組成物から形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターとカバーと前記センターとカバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールに関するものであり、より詳細には、樹脂組成物からなるセンターを有するゴルフボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
センターとカバーと、前記センターとカバーとの間に位置する少なくとも一層の中間層を有するゴルフボールが知られている。中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内層カバー層、外層コア、包囲層などと呼ばれている。センターは、通常、反発性の高いゴム組成物から形成されているが、近年、樹脂組成物からなるセンターが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コアと、このコアの外側に位置するカバーとを備えており、このコアが、センターと、このセンターの外側に位置する中間層とを有しており、このセンターの基材ポリマーの主成分が、熱可塑性エラストマーであるゴルフボールが開示されている。前記センターの基材ポリマーの主成分としては、スチレンブロック含有熱可塑性樹脂エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー又は熱可塑性ポリアミドエラストマーが例示されている。
【0004】
特許文献2には、ソリッドコアにカバーを被覆してなり、かつ該ソリッドコアが最内芯と該最内芯を被覆する少なくとも1層の外層コアとを有する多層構造に形成されたソリッドゴルフボールにおいて、上記最内芯が樹脂を主材とし、直径3mm以上15mm未満であり、上記外層コアの少なくとも1層がポリブタジエンを主材とするゴム組成物にて形成され、最内芯のショアD表面硬度が外層コア中の最も内側の層より硬いことを特徴とするソリッドゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献3には、a)65ないし90重量%の、コポリエーテルアミドおよびコポリエーテルエステルから選ばれる熱可塑性ポリマー、b)1ないし10重量%の、エポキシ基を含む化合物、および、c)全量100重量%に対して残りの、酸を含むエチレン共重合アイオノマー、からなることを特徴とする組成物を中心球に用いたスリーピースゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−301985号公報
【特許文献2】特開2000−229133号公報
【特許文献3】特表平6−504308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、樹脂組成物からなるセンターが検討されている。しかし、樹脂組成物からなるセンターを有するゴルフボールの性能は、必ずしも十分ではなく、これらの性能を一層向上させることが求められている。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反発性に優れ、アプローチショットのスピン量が高いゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することのできた本発明のゴルフボールは、センターと、カバーと、前記センターと前記カバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであって、前記センターは、樹脂成分として、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、及び、スラブ硬度がショアD硬度で40〜60であるセンター用組成物から形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のゴルフボールのセンターは、(A)変性ポリエステルエラストマーと(B)二元系アイオノマー樹脂とを含有するセンター用組成物により形成されている。前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(B)二元系アイオノマー樹脂との相溶性が高く、得られるセンター用組成物を軟質化する作用を有する。このセンター用組成物は、反発性が高く、ソフトな打球感と反発性とを両立することができる。
【0010】
前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤存在下、(a−2)ポリエステルエラストマー100質量%に対して、0.01質量%〜30質量%の(a−3)不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させて得られるものであり、前記(a−2)ポリエステルエラストマー中のポリアルキレングリコール成分の含有率は、5質量%〜90質量%であることが好ましい。
【0011】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂は、得られるセンターの反発性の向上に寄与する。前記(B)二元系アイオノマー樹脂の酸含有率は、15質量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記(C)成分は、得られるセンターを軟質化する作用を有する。前記(C)成分としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
前記センター用組成物は、樹脂成分100質量部に対して、金、タングステン、鉛、銅、鉄、鋳鉄、銑鉄、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化スズ、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、マイカよりなる群から選択される少なくとも1種の充填剤を1質量部〜40質量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反発性に優れ、アプローチショットのスピン量が高いゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のゴルフボールは、センターと、カバーと、前記センターと前記カバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであって、前記センターは、樹脂成分として、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、及び、スラブ硬度がショアD硬度で40〜60であるセンター用組成物から形成されていることを特徴とする。
【0017】
(1)ゴルフボールの構造
本発明のゴルフボールは、センターと、カバーと、前記センターとカバーとの間に位置する少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。本発明のゴルフボールは、二層の中間層を有することが好ましい。中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内層カバー層、外層コア、包囲層などと呼ばれる場合がある。本発明のゴルフボールが二層の中間層を有する場合、センターを直接被覆する中間層を「包囲層」と称し、センターと包囲層とからなる球形体を単に「球状コア」と称する場合がある
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。このゴルフボール2は、センター4と、前記センター4の外側に位置する包囲層6と、前記包囲層6の外側に位置する中間層8と、前記中間層8の外側に位置するカバー12とを有する。センター4と包囲層6とからなる球形体を球状コアと称してもよい。中間層8とカバー12との間には、中間層8とカバー12との密着性を向上させるための補強層10が設けられていても良い。カバー12の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバーの外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0020】
前記センターの形状としては、球状が一般的であるが、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様を挙げることができる。前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、および、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の包囲層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の包囲層によって充填するようにして、センターと包囲層からなる成形体の形状を球形とすることが好ましい。
【0021】
センターの中心硬度は、JIS−C硬度で、30以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。中心硬度が、JIS−C硬度で30以上であれば、反発性が向上する。また、ドライバーショットのスピン抑制の観点から、中心硬度は85以下が好ましく、83以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。センターが切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度が測定される。測定には、JIS−C硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0022】
センターの表面硬度は、JIS−C硬度で、60以上が好ましく、63以上がより好ましく、65以上がさらに好ましい。表面硬度が60以上であれば、反発性能が向上する。また、打球感の観点から、表面硬度は95以下が好ましく、90以下がより好ましい。センターの表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、表面硬度が測定される。測定には、JIS−C型硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0023】
センターは、ゴルフボールの反発性能に寄与する。センターの直径は5.0mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上がさらに好ましい。直径が5.0mm以上のセンターを使用することにより、ゴルフボールの反発性が高くなる。また、十分な厚みを有する包囲層が形成され得るという観点から、センターの直径は、40mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましい。
【0024】
センターは、直径が5.0mm以上30.0mm未満の場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重294Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.2mm以上がさらに好ましい。圧縮変形量が0.8mm以上であれば、打球感が向上する。圧縮変形量は、3.0mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が特に好ましい。圧縮変形量が3.0mm以下であれば、反発性が向上する。
【0025】
センターは、直径が30.0mm以上41.0mm未満の場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、2.3mm以上がより好ましく、2.6mm以上がさらに好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であれば、打球感が向上する。圧縮変形量は4.0mm以下が好ましく、3.8mm以下がより好ましく、3.6mm以下が特に好ましい。圧縮変形量が4.0mm以下であれば、反発性が向上する。
【0026】
圧縮変形量の測定では、球体(センター、コア又はゴルフボール)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1275Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量である。
【0027】
センターの密度は、1.5g/cm以下が好ましく、1.3g/cm以下がより好ましい。センターの密度を小さくすることで、ゴルフボールの慣性モーメントが大きくなる。その結果、バックスピンが持続し、飛距離が大きいゴルフボールが得られる。センターの密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましい。
【0028】
センターの質量は、1.0g以上が好ましく、1.2g以上がより好ましく、40.0g以下が好ましく、39.0g以下がより好ましい。
【0029】
包囲層のスラブ硬度は、JIS−C硬度で40以上が好ましく、42以上がより好ましく、45以上がさらに好ましい。包囲層のスラブ硬度が、JIS−C硬度で40以上であれば、飛行性能および打球感が良くなる。また、打球感および耐久性の観点から、包囲層のスラブ硬度は、JIS−C硬度で90以下が好ましく、88以下がより好ましい。包囲層のスラブ硬度は、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「LA1」)に取り付けられたJIS−C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、包囲層用組成物から成形された厚み約2mmのスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。
【0030】
前記包囲層の厚みは、飛行性能の観点から、2.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、5.0mm以上がさらに好ましい。また、打球感の観点から、包囲層の厚みは、25mm以下が好ましく、23mm以下がより好ましく、21mm以下がさらに好ましい。
【0031】
前記包囲層の密度は、0.8g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、1.5g/cm以下が好ましく、1.3g/cm以下がより好ましい。包囲層の密度が、前記範囲内であれば、所望のスピン性能が得られるからである。
【0032】
センターと包囲層とからなる球状コアの表面硬度は、JIS−C硬度で、40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。表面硬度が40以上であれば、反発性能が向上する。また、打球感の観点から、球状コアの表面硬度は、JIS−C硬度で、95以下が好ましく、90以下がより好ましい。球状コアの表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、表面硬度が測定される。測定には、JIS−C型硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0033】
球状コアの直径は、7mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上がさらに好ましい。直径が7mm以上の球状コアを使用することにより、ゴルフボールの反発性が高くなる。また、十分な厚みを有する中間層およびカバーが形成され得るという観点から、球状コアの直径は、41.0mm以下が好ましく、40.0mm以下がより好ましい。
【0034】
前記球状コアは、直径が7.0mm以上30.0mm未満の場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重294Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.2mm以上がさらに好ましい。圧縮変形量が0.8mm以上であれば、打球感が向上する。圧縮変形量は、3.0mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましい。圧縮変形量が3.0mm以下であれば、反発性が向上する。
【0035】
前記球状コアは、直径が30.0mm以上41.0mm以下の場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上がさらに好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であれば、打球感が向上する。圧縮変形量は、4.0mm以下が好ましく、3.8mm以下がより好ましく、3.6mm以下が特に好ましい。圧縮変形量が4.0mm以下であれば、反発性が向上する。
【0036】
中間層のスラブ硬度は、反発性能の観点から、ショアD硬度で、40以上が好ましく、45以上がより好ましい。打球感の観点から、中間層のスラブ硬度は、ショアD硬度で、70以下が好ましく、68以下がより好ましく、66以下がさらに好ましい。中間層のスラブ硬度は、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「LA1」)に取り付けられたショアD型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、中間層用組成物から成形された厚み約2mmのスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。
【0037】
中間層の厚みは、0.5mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましく、0.7mm以上がさらに好ましい。中間層の厚みが、0.5mm以上であれば、耐久性が良好になるからである。中間層の厚みは、1.7mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましい。中間層の厚みが、1.7mm以下であれば、打球感が良好になるからである。
【0038】
中間層の密度は、0.85g/cm以上が好ましく、0.90g/cm以上がより好ましく、2.0g/cm以下が好ましく、1.8g/cm以下がより好ましい。中間層の密度が、前記範囲内であれば、慣性モーメントが大きくなり、スピン性能が向上するからである。
【0039】
本発明のゴルフボールは、中間層とカバーとの間に補強層を備えてもよい。補強層は、中間層と堅固に密着し、カバーとも堅固に密着する。補強層により、中間層からカバーの剥離が抑制される。特に、薄いカバーを有するゴルフボールが、クラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。補強層により、シワが抑制される。
【0040】
シワの抑制の観点から、補強層の厚みは3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。補強層が容易に形成されるとの観点から、厚みは30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。厚みは、ゴルフボールの断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。
【0041】
シワの抑制の観点から、補強層の鉛筆硬度は4B以上が好ましく、B以上がより好ましい。ゴルフボールが打撃されたときの、カバーから中間層までの力の伝達ロスが小さいとの観点から、補強層の鉛筆硬度は3H以下が好ましい。鉛筆硬度は、JIS K5400規格に準拠して測定される。
【0042】
本発明のゴルフボールのカバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で、20以上が好ましく、22以上がより好ましく、24以上がさらに好ましい。カバーのスラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、カバーの耐擦過傷性が向上する。カバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で、70以下が好ましく、68以下がより好ましく、65以下がさらに好ましい。カバーのスラブ硬度が、ショアD硬度で、70以下であれば、アプローチショットのスピン量が増加して、コントロール性が向上する。カバーのスラブ硬度は、中間層と同様の方法で測定される。
【0043】
カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。カバーが薄すぎると、カバーの成形が難しくなるからである。カバーの厚みは、2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。カバーが厚すぎると、反発性が低下するからである。
【0044】
本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
【0045】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。
【0046】
本発明のゴルフボールは、直径が40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上がさらに好ましい。前記圧縮変形量が2.0mm以上であると、打球感の良いゴルフボールが得られる。また、前記圧縮変形量は、5.0mm以下が好ましく、4.8mm以下がより好ましく、4.6mm以下がさらに好ましい。前記圧縮変形量が、5.0mm以下であれば、反発性が向上する。
【0047】
本発明のゴルフボールの表面に形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0048】
(2)センター用組成物
本発明のゴルフボールのセンターは、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマー;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂;および、必要に応じて、さらに(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を含有するセンター用組成物から形成される。
【0049】
まず、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーについて説明する。本発明で使用する(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤の存在下、(a−2)ポリエステルエラストマーと(a−3)不飽和カルボン酸またはその誘導体とを反応させることにより得ることができる。この反応に際しては、ポリエステルエラストマーに不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるものと考えられるが、他にもポリエステルエラストマーの末端に不飽和カルボン酸やその誘導体が付加する反応やエステル交換反応、分解反応等も起こるものと考えられる。また、(A)変性ポリエステルエラストマーは、グラフト結合している不飽和カルボン酸又はその誘導体の量が、0.03質量%〜20質量%であるのが好ましい。このグラフト量が0.06質量%〜4質量%、特に0.08質量%〜1.5質量%であればさらに好ましい。グラフト量が上記範囲であれば、(B)二元系アイオノマー樹脂への分散性が向上して、得られるゴルフボールの耐久性がより良好になる。
【0050】
(a−2)ポリエステルエラストマーとしては多くのものが知られているが、その典型的なものは、芳香族ポリエステル成分をハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールや脂肪族ポリエステル成分をソフトセグメントとするものである。本発明では、芳香族ポリエステル成分をハードセグメントとし、ポリアルキレングリコール成分をソフトセグメントとするポリエステルポリエーテルブロック共重合体を用いるのが好ましい。ポリアルキレングリコール成分の含有率は、ブロック共重合体に対し、5質量%〜90質量%であるが、30質量%〜80質量%、特に55質量%〜80質量%であるのが好ましい。一般にポリアルキレングリコール成分の含有率が高いポリマーは、縮重合による製造が困難となる傾向にある。また、これを原料とする変性ポリエステルエラストマーとアイオノマー樹脂とからなる熱可塑性樹脂に、適度な硬度と高い反発弾性力を発現させるのが困難となる。逆にポリアルキレングリコール成分の含有率が少ないとエラストマー性が低下し、これを原料とする変性ポリエステルエラストマーと二元系アイオノマー樹脂とを含有するセンター用組成物に、適度な柔軟性や高反発弾性力を発現させるのが困難となる。また、(B)二元系アイオノマー樹脂への分散性が低下する。
【0051】
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、通常、ハードセグメントを与える成分として炭素原子数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオールと、芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルを用い、ソフトセグメントを与える成分として重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレングリコールを用いて、常法により、エステル化又はエステル交換反応によりオリゴマーとし、次いでこれを重縮合させて製造することができる。炭素原子数2〜12の脂肪族又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルエラストマーの原料として一般に用いられるものを用いればよい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を用いることができる。中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。また、これらのジオールは所望ならば、2種以上を併用することもできる。
【0052】
芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルエラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。また、これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を併用していても良い。芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、これらの芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられ、好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレートである。脂肪族ジカルボン酸としては、通常はシクロヘキサンジカルボン酸が用いられ、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。また、所望ならば上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させることもできる。更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いることもできる。
【0053】
ポリアルキレングリコールとしては、通常は重量平均分子量が400〜6,000のものが使用されるが、500〜4,000、特に600〜3,000のものを用いるのが好ましい。一般的に重量平均分子量が小さいポリアルキレングリコールを用いると、生成するポリエステルエラストマーに、エラストマーとしての物性を発現させるのが困難となる。逆に、重量平均分子量が大きすぎるポリアルキレングリコールは、反応系内での相分離が起きやすく、生成するポリエステルエラストマーの物性が低下する傾向がある。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。このようなポリエステルエラストマーの市販品としては、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等がある。
【0054】
本発明で使用する(a−2)ポリエステルエラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを有し、ソフトセグメントとして、ポリテトラメチレングリコールを含有するものが好ましい。
【0055】
ポリエステルエラストマーの変性に使用する(a−3)不飽和カルボン酸としては、例えば、置換基としてアルキル基やハロゲン原子などを有していてもよいアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ、その誘導体としては酸無水物やエステル等が挙げられる。また側鎖に不飽和結合を有する酸無水物も用いることができる。例えば、2−オクテン−1−イルコハク酸無水物、2−ドデセン−1−イルコハク酸無水物、2−オクタデセン−1−イルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物、及び(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられ、中でも不飽和カルボン酸無水物、特にマレイン酸無水物が好適である。これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリエステルエラストマーや、変性条件に応じて適宜選択すれば良く、所望ならば、二種以上を併用することもできる。
【0056】
(a−1)ラジカル発生剤としては、常用の種々のものを用いることができる。例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。これらのラジカル発生剤は、反応に用いるポリエステルエラストマーや、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、所望ならば二種以上を併用することもできる。
【0057】
変性反応に際しての各成分の配合比は、(a−2)成分100質量%に対して(a−3)成分は、通常0.01質量%〜30質量%であるが、0.05質量%〜5重量%が好ましい。最も好ましいのは、0.1質量%〜2質量%、特に0.1質量%〜1質量%である。また(a−1)成分は(a−2)成分100質量%に対して0.001質量%〜3質量%であるが、0.005質量%〜0.5質量%が好ましい。最も好ましいのは0.01質量%〜0.2質量%、特に0.01質量%〜0.1質量%である。変性反応に際しての最も好ましい配合比は、(a−2)成分100質量%に対して(a−3)成分が0.1質量%〜1質量%、(a−1)成分が0.01質量%〜0.1質量%である。
【0058】
一般に、(a−3)成分の配合量が少ないと、変性の程度が小さいので、得られた変性ポリエステルエラストマーをアイオノマー樹脂と配合して得られるセンター用組成物が、十分な耐摩耗性を発現しない傾向がある。逆に配合量が多すぎると、生成する変性ポリエステルエラストマーの溶融時の粘度が低下してしまい、これをアイオノマー樹脂と配合して得られるセンター用組成物は成形が困難となる。また、(a−1)成分の配合量が少なすぎると、変性が十分に起こらず、十分な耐摩耗性を発現しにくい傾向となる。逆に多すぎると、生成する変性ポリエステルエラストマーの溶融時の粘度が低下してしまい、成形性が悪化する。
【0059】
(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−1)成分を用いて、変性ポリエステルエラストマーを得るための変性方法としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応法など公知の種々の反応方法を用いることができるが、通常は溶融混練反応法が好ましい。この方法によるときは、(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−1)成分を、所定の配合比にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて溶融混練すればよい。なお、(a−3)成分及び(a−2)成分は、所望ならば有機溶剤に溶解して反応に供してもよい。溶融混練は、樹脂が熱劣化しないように、通常100℃〜300℃で行うが、120℃〜280℃、特に150℃〜250℃の範囲で行うのが好ましい。
【0060】
本発明で使用する(A)変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度は、ショアA硬度で、95以下が好ましく、より好ましくは93以下、さらに好ましくは91以下であり、70以上が好ましく、より好ましくは75以上、さらに好ましくは80以上である。前記変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度が、上記範囲内であれば、センター用組成物の硬度が所望の範囲になりやすく、反発性とのバランスが良好になる。ここで、前記変性ポリエステルエラストマーのスラブ硬度とは、変性ポリエステルエラストマーをシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0061】
次に、(B)二元系アイオノマー樹脂について説明する。前記二元系アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0062】
(B)前記二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは16質量%以上、さらに好ましくは17質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。酸成分の含有率が15質量%以上であれば、反発性、硬度が良好となり、30質量%以下であれば、反発性、成形性、硬度などのバランスが良好となるからである。
【0063】
前記二元共重合体の中和に用いられる金属(イオン)としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属(イオン);マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属(イオン);アルミニウムなどの3価の金属(イオン);錫、ジルコニウムなどのその他の金属(イオン)が挙げられる。これらの中でも、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウム(イオン)が反発性、耐久性などから好ましく用いられる。
【0064】
(B)前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、センターの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、センター用組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0065】
前記二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7329(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)など」が挙げられる。
【0066】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0067】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0068】
前記二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0069】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、300MPa以上が好ましく、より好ましくは310MPa以上、さらに好ましくは330MPa以上であり、600MPa以下が好ましく、より好ましくは550MPa以下、さらに好ましくは500MPa以下である。前記(B)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率が低すぎると、センターの弾性率が低くなり、高打出角化および低スピン化の効果が小さくなり、曲げ弾性率が高すぎると、センターの弾性率が高くなりすぎ、ゴルフボールの耐久性や打球感が低下する傾向がある。
【0070】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)は、1.0g/10min以上、好ましくは1.5g/10min以上、より好ましくは2.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは25g/10min以下、さらに好ましくは20g/10min以下である。前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)が1.0g/10min以上であれば、センター用組成物の流動性が良好になる。また、前記(B)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0071】
前記二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で65以上が好ましく、より好ましくは66以上、さらに好ましくは67以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で65以上であれば、反発性がより良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で80以下であれば、センターが硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0072】
(C)(A)成分および(B)成分以外の熱可塑性樹脂
本発明のセンター用組成物は、前記(A)成分および(B)成分に加えて、さらに(A)成分および(B)成分以外の(C)熱可塑性樹脂を含有することができる。
前記(C)成分としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体などを挙げることができる。
【0073】
前記(C)成分の具体例としては、例えば、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランXNY85A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマー等が挙げられる。
【0074】
本発明において、センター用組成物は、樹脂成分として、(A)変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%、(B)二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%、及び(C)成分を0質量%〜50質量%含有する。ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が、100質量%になるようにする。前記(A)成分および(B)成分の含有率は、35質量%〜65質量%が好ましく、40質量%〜60質量%がより好ましい。(A)成分と(B)成分との含有率を上記範囲内とすることによりセンターが適正な剛性となり、高打出角化および低スピン化が図られてゴルフボールの飛距離が向上し、打球感も向上する。
【0075】
前記センター用組成物中の(C)成分の含有率は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。前記(C)成分の含有量が、上記範囲内であれば、機械的物性を低下させることなく、センター用組成物の硬度が所望の硬度となる。
【0076】
前記センター用組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、質量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0077】
前記質量調整剤としては、例えば、金、タングステン、モリブデン、鉛、銅、鉄、鋳鉄、銑鉄、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化スズ、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、マイカなどのその他の化合物を挙げることができる。前記質量調整剤は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
前記質量調整剤の配合量は、センター用組成物の樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは47質量部以下、さらに好ましくは44質量部以下である。質量調整剤の配合量が1質量部以上であれば、センター用組成物の密度をより容易に調整することができ、50質量部以下であれば、樹脂成分に対する分散性が良好となる。
【0079】
センター用組成物は、例えば、(A)変性ポリエステルエラストマーと(B)二元系アイオノマー樹脂とを、ドライブレンドし、押出し、ペレット化することにより得ることができる。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。ドライブレンド以外に、それぞれの材料を別々の投入装置から投入しても良い。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。押出条件としては、二軸押出機を使用する場合、例えば、スクリュー径45mm、スクリュー回転数50rpm〜400rpm、スクリューL/D=35以下、ダイ温度140℃以上、250℃以下の条件を挙げることができる。なお、所望ならば、(A)ポリエステル系エラストマーの変性に際して、ポリエステル系エラストマーにラジカル発生剤、不飽和カルボン酸などと共に二元系アイオノマー樹脂を配合して、ポリエステル系エラストマーの変性と、生成した変性ポリエステル系エラストマーと二元系アイオノマー樹脂との配合とを同時に行うこともできる。
【0080】
センター用組成物のメルトフローレイト(230℃×2.16kg荷重)は、3g/10min以上が好ましく、5g/10min以上がより好ましく、7g/10min以上がさらに好ましく、30g/10min以下が好ましく、27g/10min以下がより好ましく、25g/10min以下がさらに好ましい。前記センター用組成物のメルトフローレイトが3g/10min以上であれば、成形性が高くなる。
【0081】
前記センター用組成物の曲げ弾性率は、150MPa以上が好ましく、より好ましくは155MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、450MPa以下が好ましく、より好ましくは430MPa以下、さらに好ましくは400MPa以下である。前記センター用組成物の曲げ弾性率が150MPa以上であれば、得られるゴルフボールを外剛内柔構造とすることができ、飛距離が向上する。また、前記センター用組成物の曲げ弾性率が450MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
【0082】
前記センター用組成物の反発弾性率は、55%以上が好ましく、より好ましくは56%以上、さらに好ましくは57%以上である。前記センター用組成物の反発弾性率を、55%以上とすることにより、得られるゴルフボールの飛距離が大きくなる。ここで、センター用組成物の曲げ弾性率および反発弾性率とは、センター用組成物をシート状に成形して測定した曲げ弾性率および反発弾性率であり、後述する測定方法により測定する。
【0083】
前記センター用組成物の−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値は、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.07以下、さらに好ましくは0.06以下であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上である。−20℃〜0℃での損失係数の最大値が、上記範囲内であれば、所望の反発性が得られる。
【0084】
前記センター用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で40以上が好ましく、より好ましくは41以上、さらに好ましくは42以上であり、60以下が好ましく、より好ましくは59以下、さらに好ましくは58以下である。前記センター用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で40以上であれば、反発性(飛距離)により優れるゴルフボールが得られる。一方、前記センター用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で60以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性が一層向上する。ここで、前記センター用組成物のスラブ硬度とは、前記センター用組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0085】
なお、前記センター用組成物のメルトフローレイト、曲げ弾性率、反発弾性率およびスラブ硬度は、前記(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の種類、添加量などを適宜選択することによって、調整することができる。
【0086】
(3)包囲層用組成物
包囲層の材料としては、ゴム組成物、あるいは、カバーまたは中間層に用いられる樹脂やエラストマーを採用することができる。本発明のゴルフボールの包囲層は、ゴム組成物(以下、「包囲層用ゴム組成物」という場合がある)から形成されていることが好ましい。包囲層用ゴム組成物としては、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を挙げることができる。
【0087】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0088】
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、包囲層が柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を減量する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0089】
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
【0090】
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、包囲層が硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
【0091】
包囲層用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの密度を1.0〜1.5g/cmの範囲に調整するための質量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、より好ましくは20質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、質量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0092】
前記包囲層用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
【0093】
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0094】
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0095】
(4)中間層用組成物
中間層には、樹脂成分を含有する中間層用組成物が好適に用いられる。前記樹脂成分としては、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマーおよび熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。これらの中でも、樹脂成分としては、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は高弾性である。
【0096】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点からアイオノマー樹脂が樹脂成分の主成分とされる。樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0097】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0098】
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
【0099】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
【0100】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
【0101】
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
【0102】
本発明のゴルフボールの中間層層は、硬質であることが好ましい。酸含有量の多いアイオノマー樹脂が用いられることにより、中間層の硬質が達成され得る。酸含有量は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。酸含有量が多いアイオノマー樹脂の具体例としては、前述の「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「IOTEK8000」および「IOTEK8030」などが挙げられる。
【0103】
(5)補強層用組成物
補強層は、樹脂成分を含有する補強層用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。補強層の強度及び耐久性の観点から、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
【0104】
補強層用組成物は、着色材(例えば、二酸化チタン)、リン酸系安定剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、二液硬化型熱硬化性樹脂の主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
【0105】
(6)カバー用組成物
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパンから商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー;三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0106】
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0107】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0108】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0109】
(7)ゴルフボールの製造方法
本発明で使用するセンターは、例えば、前記センター用組成物を射出成形することにより成形される。具体的には、1MPa〜100MPaの圧力で型締めした金型内に、160℃〜260℃に加熱溶融したセンター用組成物を1秒〜100秒で注入し、30秒〜300秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
【0110】
包囲層および中間層の成形には、射出成形法、圧縮成型法等の公知の手法が採用され得る。生産性の観点から射出成形法が好ましい。包囲層用組成物としてゴム組成物を用いる場合には、まず、包囲層用組成物を混練し、センターが収まった状態の前記センター用上金型と、必要量の包囲層用組成物がセンターの表面の半分と接触するようにコア成形用下金型とを型締めしてプレスして、センターの表面の半分に包囲層を形成した中間コア成形物を作製する。次いで、前記中間コア成形物の包囲層が収まった状態のコア成形用下金型と、必要量の包囲層用組成物がセンター表面の残り半分と接触するようにコア成形用上金型とを型締めしてプレスし、センター表面の残りの部分に包囲層を形成した後、170℃で30分間加熱プレスして、コアを形成する。
【0111】
包囲層および中間層を射出成形する場合、成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による包囲層および中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、センターを投入してホールドさせた後、加熱溶融された樹脂組成物を注入して、冷却することにより成形することができる。例えば、980kPa〜1,500kPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜230℃に加熱溶融した樹脂組成物を0.1秒〜1秒で注入し、15秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0112】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状の組成物を、プランジャー面積:1cm、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0113】
補強層は、主剤及び硬化剤が溶剤に溶解又は分散した液が、中間層の表面に塗布されることで得られる。作業性の観点から、スプレーガンによる塗布が好ましい。塗布後に溶剤が揮発し、主剤と硬化剤とが反応して、補強層が形成される。
【0114】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0115】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0116】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。
【0117】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0119】
[評価方法]
(1)センターおよび球状コアの硬度(JIS−C硬度)
スプリング式硬度計JIS−C型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、センター、球状コアの表面部において測定したJIS−C硬度を、それぞれセンター表面硬度、球状コアの表面硬度とした。球状コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したJIS−C硬度をセンター(球状コア)中心硬度とした。また、切断面の中心から所定の距離の点で、JIS−C硬度を測定した。
【0120】
(2)スラブ硬度(JIS−C硬度、ショアD硬度)
センター用組成物、包囲層用組成物、中間層用組成物、または、カバー用組成物を用いて、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、スプリング式硬度計JIS−C型、または、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計を用いて測定した。
【0121】
(3)圧縮変形量(mm)
センター、球状コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重294Nまたは1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にセンター、コアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0122】
(4)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃または230℃で、荷重2.16kgの条件で行った。
【0123】
(5)曲げ弾性率(三点曲げ弾性率)(MPa)
センター用組成物、アイオノマー樹脂を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。曲げ弾性率を、JIS K7171に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
【0124】
(6)反発弾性率(%)
センター用組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
【0125】
(7)損失係数(tanδ)の測定
センター用組成物を用いて、厚みが0.5mmのシートを作製し、長さ30mm、幅4mm、厚み0.5mmの板状の試験片を切り出した。試験片の変位部分の長さが20mmとなるように試験片の両端部をチャックでつかみ、粘弾性スペクトロメーター(ユービーエム社の商品名「Rheogel−E4000型」)を用いて測定した。測定結果から−20℃〜0℃の範囲における損失係数の最大値を求めた。測定条件は、下記の通りである。
初期荷重 :自動静荷重200%
振幅 :0.025%
周波数 :10Hz
開始温度 :−100℃
終了温度 :100℃
昇温速度 :4℃/min
変形モード:引張
【0126】
(8)反発係数
各ゴルフボールまたは球状コアに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物およびゴルフボールまたは球状コアの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールまたは球状コアの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールまたは球状コアについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールまたは球状コアの反発係数とした。
【0127】
(9)センター、包囲層、および、中間層の密度
センター、包囲層、および、中間層の体積は、それぞれの直径、厚みなどに基づいて算出した。センターの質量は、質量計により測定し、包囲層、および、中間層の質量は、成形前後の質量変化により算出した。上記で求めたそれぞれの体積と質量から、密度を算出した。
【0128】
(10)アプローチショットのスピン量
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットに、アプローチウェッジ(SRIスポーツ社製、SRIXON I−302、シャフトS)を取り付け、ヘッドスピード21m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン量とした。
【0129】
[変性ポリエステルエラストマーの合成]
(1)変性ポリエステルエラストマー1
ポリテトラメチレングリコール65質量%、ポリブチレンテレフタレート35質量%のポリエステル−エーテルエラストマー100質量部に対し、無水マレイン酸(粉砕品)0.5質量部および過酸化ベンゾイル(50%含水品、商品名ナイパーBWK)0.13質量部をミキサーにてブレンドし、二軸混練機(日本製鋼社製TEX54α)にて、200℃、250回転、250kg/hrの条件にて押出、無水マレイン酸をグラフトさせて、変性ポリエステルエラストマー1を得た。得られた変性ポリエラストマー1中の無水マレイン酸含有率は、0.4質量%、ショアA硬度は84、メルトフローレイト(230℃、21N)は、24g/10minであった。
(2)変性ポリエステルエラストマー2
ポリエステル−エーテルエラストマーとして、ポリテトラメチレングリコール77質量%、ポリブチレンテレフタレート23質量%のポリエステル−エーテルエラストマーを用いた以外は、変性ポリエステルエラストマー1と同様にして、変性ポリエステルエラストマー2を得た。得られた変性ポリエラストマー2中の無水マレイン酸含有率は、0.5質量%、ショアA硬度は80、メルトフローレイト(230℃、21N)は、30g/10minであった。
【0130】
[ゴルフボールの作製]
(1)センターの作製
表1〜表3に示すように、配合材料をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ストランド状に冷水中に押し出した。押出されたストランドをペレタイザーにより切断してペレット状のセンター用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたペレット状のセンター用組成物を200〜270℃にて射出成形し、球形体(センター)を得た。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
センター用組成物としては、以下のものを用いた。
HPF1000:デュポン社製のマグネシウムイオン中和三元共重合体アイオノマー樹脂
サーリン8150:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸二元共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17質量%以上、曲げ弾性率364MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5、ショアD硬度68)
サーリン8945:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率254MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度61)
サーリン9150:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17質量%以上、曲げ弾性率252MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):4.5、ショアD硬度64)
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率240MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度59)
TPEE:熱可塑性ポリエステルエラストマー(ポリテトラメチレングリコール65質量%、ポリブチレンテレフタレート35質量%のポリエステル−エーテルエラストマー)
【0135】
(2)包囲層の形成
表4に示す包囲層用ゴム組成物No.Aを混練し、センターが収まった状態の前記センター用上金型と、必要量の包囲層用ゴム組成物No.Aがセンターの表面の半分と接触するようにコア成形用下金型とを型締めしてプレスして、センターの表面の半分に包囲層を形成した中間コア成形物を作製した。次いで、前記中間コア成形物の包囲層が収まった状態のコア成形用下金型と、必要量の包囲層用ゴム組成物No.Aがセンター表面の残り半分と接触するようにコア成形用上金型とを型締めしてプレスし、センター表面の残りの部分に包囲層を形成した後、170℃で30分間加熱プレスして、球状コアを形成した。
【0136】
【表4】

【0137】
包囲層用組成物としては、以下の材料を用いた。
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺(登録商標)R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
硫酸バリウムの量は、得られるゴルフボールの質量が45.5gになるように適宜調整した。
【0138】
(3)中間層用組成物、および、カバー用組成物の調製
表5〜6に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物をそれぞれ調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られた中間層用組成物を、球状コア上に射出成形することにより、球状コアを被覆する中間層を成形した。中間層を成形するための成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。中間層成形時には、ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後、ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きして球形体を取り出した。
【0139】
【表5】

【0140】
中間層には、以下の材料を用いた。
サーリン8945:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率254MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度61)
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率15質量%以下、曲げ弾性率240MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5、ショアD硬度59)
【0141】
【表6】

カバーには、以下のものを用いた。
エラストランNY97A:BASFジャパン社製H12MDI−ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0142】
成形した中間層に二液硬化型熱硬化性樹脂を塗布して、補強層を形成した。二液硬化型熱可塑性樹脂としては、二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE」)を用いた。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、5質量部の酸化チタンと、55質量部の溶剤とからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で6時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは10μmであった。
【0143】
(4)ハーフシェルの成形
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
【0144】
(5)カバーの成形
(3)で中間層を形成した球形体に(4)で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバーを成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
【0145】
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.8mm、質量45.5gのゴルフボールを得た。得られたゴルフボールついて評価した結果を表1〜表3に示した。
【0146】
表1〜3の結果から、センターと、カバーと、前記センターと前記カバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであって、前記センターが、樹脂成分として、(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、及び、スラブ硬度がショアD硬度で40〜60であるセンター用組成物から形成されているゴルフボールは、反発性に優れ、アプローチショットのスピン量が高い。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、樹脂成分からなるセンターを有するゴルフボールに好適である。
【符号の説明】
【0148】
2:ゴルフボール、4:センター、6:包囲層、8:中間層、10:補強層、12:カバー、14:ディンプル、16:ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターと、カバーと、前記センターと前記カバーとの間に配設された少なくとも一層の中間層とを有するゴルフボールであって、
前記センターは、樹脂成分として、
(A)ショアA硬度が95以下の変性ポリエステルエラストマーを30質量%〜70質量%;
(B)ショアD硬度が65以上、曲げ弾性率が300MPa以上、メルトフローレイト(190℃、2.16kg)が1.0g/10min以上の二元系アイオノマー樹脂を70質量%〜30質量%;及び、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の熱可塑性樹脂を0質量%〜50質量%含有し(ただし、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分の合計含有率が100質量%になるようにする)、曲げ弾性率が150MPa〜450MPa、−20℃〜0℃での損失係数(tanδ)の最大値が0.08以下、反発弾性率が55%以上、及び、スラブ硬度がショアD硬度で40〜60であるセンター用組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記(A)変性ポリエステルエラストマーは、(a−1)ラジカル発生剤存在下、(a−2)ポリエステルエラストマー100質量%に対して、0.01質量%〜30質量%の(a−3)不飽和カルボン酸又はその誘導体を反応させて得られるものであり、前記(a−2)ポリエステルエラストマー中のポリアルキレングリコール成分の含有率が5質量%〜90質量%である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記(B)二元系アイオノマー樹脂の酸成分の含有率は、15質量%以上である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記(C)成分は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記センター用組成物は、樹脂成分100質量部に対して、金、タングステン、鉛、銅、鉄、鋳鉄、銑鉄、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化銅、酸化スズ、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、マイカよりなる群から選択される少なくとも1種の充填剤を1質量部〜40質量部含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記センターの直径は、5.0mm以上、40mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
中間層を有し、センターを直接被覆する中間層が、ゴム組成物から形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール。


【図1】
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【公開番号】特開2013−81554(P2013−81554A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222280(P2011−222280)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)