説明

ゴルフ用手袋対

【課題】一体感及びフィット感に優れたゴルフ用手袋対の提供。
【解決手段】本発明に係る手袋対は、右手用手袋2と左手用手袋とからなる。右手用手袋2は、掌側地4、甲側地及びマチ8からなる。掌側地4は、掌部10、親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び小指部20からなる。掌部10は、主部22と親指付け根部24とからなる。親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び主部22は、合成皮革からなる。小指部20は、他の合成皮革からなる。親指付け根部24は、ニットからなる。この親指付け根部24は、左手用手袋の親指付け根部に比べて、伸縮性及び柔軟性に優れる。この親指付け根部24の厚みは、左手用手袋の親指付け根部の厚みに比べて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフプレーヤーに着用される手袋対に関する。詳細には、本発明は、利き手に装着される手袋と、利き手ではない手に装着される手袋とを備えたゴルフ用手袋対に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのグリップは、一般的には、ゴム又はエラストマーから成形されている。ゴルフプレーヤーは、グリップを、手で把持する。スイング時の、このグリップとの摩擦により、手に肉刺ができることがある。肉刺の抑制の目的で、ゴルフプレーヤーは手袋を着用する。通常は、利き手ではない手に、手袋を着用する。例えば、右利きのゴルフプレーヤーは、左手に手袋を着用する。右手には、肉刺は生じないか、生じてもその程度は小さい。従って、右手には手袋は着用されない。一方、左利きのゴルフプレーヤーの場合は、右手に手袋を着用する。
【0003】
近年、女性のゴルフプレーヤーが増加している。女性のゴルフプレーヤーは、多少の肉刺でも嫌う傾向がある。さらに、女性のゴルフプレーヤーは、日焼けを嫌う傾向がある。利き手の肉刺及び日焼けを防止する目的で、女性のゴルフプレーヤーは、両手に手袋を着用することが多い。男性のゴルフプレーヤーにも、両手に手袋を着用する者がいる。
【0004】
手袋は、手とグリップとのスリップを抑制する。握力の弱いゴルフプレーヤーにとって、両手の手袋は有効である。両手に着用される手袋対が、特開2009−22389公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−22389公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゴルフのスイング中、利き手でない手の親指の上に、利き手の掌が置かれる。利き手に手袋が着用されると、両手の一体感が得られにくい。さらに、利き手に手袋を着用してこなかったゴルフプレーヤーが、利き手に手袋を着用すると、フィット感が得られにくい。一体感及びフィット感の欠如は、スイングを乱す。一体感及びフィット感の欠如により、ヘッド速度が低下する現象が見られる。
【0007】
本発明の目的は、一体感及びフィット感に優れたゴルフ用手袋対の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴルフ用手袋対は、利き手に装着される第一手袋と、利き手ではない手に装着される第二手袋とからなる。第一手袋は、掌部を有している。第二手袋は、掌部を有している。第一手袋の掌部の少なくとも一部分が、この部分に対応する第二手袋の掌部の部分に比べて、伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる。
【0009】
好ましくは、伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる部分の厚みは、この部分に対応する第二手袋における部分の厚みよりも、大きい。
【0010】
好ましくは、第一手袋の掌部の、親指の付け根に相当する部分が、伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる。
【0011】
好ましくは、第一手袋の伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる部分の10%伸張時の引張り荷重F1の、この部分に対応する第二手袋の部分の10%伸張時の引張り荷重F2に対する比(F1/F2)は、1.0/1.5以下である。
【0012】
他の観点によれば、本発明に係るゴルフ用手袋対は、利き手に装着される第一手袋と、利き手ではない手に装着される第二手袋とからなる。第一手袋は、掌部を有している。この掌部は、親指付け根部と、この親指付け根部以外の部分である主部とを有している。この親指付け根部は、主部に比べて伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる。
【0013】
さらに他の観点によれば、本発明に係るゴルフ用手袋は、掌部を備える。この掌部は、親指付け根部と、この親指付け根部以外の部分である主部とを有している。この親指付け根部は、主部に比べて伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる。この手袋は、利き手に装着される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る手袋対は、一体感及びフィット感に優れる。この手袋対は、スイングを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る手袋対の右手用手袋が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の右手用手袋が示された背面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の右手用手袋と対をなす左手用手袋が示された正面図である。
【図5】図5は、図4の左手用手袋が示された背面図である。
【図6】図6は、図4のVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
本発明に係るゴルフ用手袋対は、右手用手袋(第一手袋)と左手用手袋(第二手袋)とからなる。図1から3には、右手用手袋2が示されている。この右手用手袋2は、右利きのゴルフプレーヤーに着用される。換言すれば、この右手用手袋2は、利き手に着用される。左利きのゴルフプレーヤーの左手に着用される手袋は、図1から3に示された右手用手袋2の形状がミラー反転した形状を有する。
【0018】
図1には、掌側から見られた右手用手袋2が示されている。図2には、甲側から見られた右手用手袋2が示されている。この手袋2は、掌側地4、甲側地6及びマチ8からなる。掌側地4と甲側地6とは、接合されている。接合は、部分的には、掌側地4と甲側地6とが縫合されることで達成されている。さらに、接合は、部分的には、マチ8を介して達成されている。マチ8の材質は、ニットである。ニットとは、編み物又は編み物に似せて織られた織物を意味する。
【0019】
掌側地4は、掌部10、親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び小指部20からなる。掌部10は、主部22と親指付け根部24とからなる。主部22と親指付け根部24とは、糸26によって縫合されている。図3から明らかなように、親指付け根部24の厚みは、主部22の厚みより大きい。親指付け根部24は、親指部12とも、糸27によって縫合されている。
【0020】
親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び主部22は、第一素材からなる。小指部20は、第二素材からなる。親指付け根部24は、ニットからなる。
【0021】
第一素材は、合成皮革である。織物に合成樹脂が塗布されることにより、合成皮革が得られる。親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び主部22は、ゴルフクラブのグリップと直接に接触する部分である。右手用手袋2とゴルフクラブのグリップとのスリップを抑制する目的で、第一素材として、摩擦係数の大きい合成皮革が用いられている。しっとり感のある合成樹脂が織物に塗布されることにより、摩擦係数の大きい合成皮革が得られうる。親指部12、人差し指部14、中指部16、薬指部18及び主部22に、表面に多数の微小凹凸模様を備えた合成皮革が用いられてもよい。この凹凸模様によって、右手用手袋2とグリップとのスリップが抑制されうる。
【0022】
第二素材は、他の合成皮革である。スイングのとき、小指部20は、左手用手袋と当接する。スイング中の小指部20の、左手用手袋との引っかかりを防止する目的で、第二素材として、摩擦係数の小さい合成皮革が用いられている。さらっと感のある合成樹脂が織物に塗布されることにより、摩擦係数の小さい合成皮革が得られうる。
【0023】
甲側地6も、第二素材からなる。前述の通り、第二素材はさらっと感を有している。この甲側地6は、べとつかない。
【0024】
第一素材として、天然皮革又は人工皮革が用いられてもよい。第二素材として、天然皮革又は人工皮革が用いられてもよい。
【0025】
図4から6には、左手用手袋30が示されている。この左手用手袋30は、右利きのゴルフプレーヤーに着用される。換言すれば、この左手用手袋30は、利き手ではない手に着用される。左利きのゴルフプレーヤーの右手に着用される手袋は、図4から6に示された左手用手袋30の形状がミラー反転した形状を有する。
【0026】
図4には、掌側から見られた左手用手袋30が示されている。図5には、甲側から見られた左手用手袋30が示されている。この手袋30は、掌側地32、甲側地34及びマチ36からなる。掌側地32と甲側地34とは、接合されている。接合は、部分的には、掌側地32と甲側地34とが縫合されることで達成されている。さらに、接合は、部分的には、マチ36を介して達成されている。マチ36の材質は、ニットである。
【0027】
掌側地32は、掌部38、親指部40、人差し指部42、中指部44、薬指部46及び小指部48からなる。掌部37は、主部50と親指付け根部52とからなる。主部50と親指付け根部52とは、糸54によって縫合されている。図6から明らかなように、親指付け根部52の厚みは、主部50の厚みと同じである。親指部40と親指付け根部52とは、一体である。
【0028】
掌側地32は、第一素材からなる。前述の通り、第一素材は摩擦係数の大きい合成皮革である。掌側地32は、ゴルフクラブのグリップと直接に接触する部分である。第一素材により、左手用手袋30とグリップとのスリップが抑制される。掌側地32に、表面に多数の凹凸模様を備えた合成皮革が用いられてもよい。この凹凸模様によって、左手用手袋30とグリップとのスリップが抑制される。
【0029】
甲側地34は、第二素材からなる。前述の通り、第二素材はさらっと感を有している。この甲側地34は、べとつかない。
【0030】
第一素材として、天然皮革又は人工皮革が用いられてもよい。第二素材として、天然皮革又は人工皮革が用いられてもよい。
【0031】
前述の通り、右手用手袋2の親指付け根部24はニットからなり、右手用手袋2の主部22は第一素材(合成皮革)からなる。親指付け根部24は、主部22に比べて、伸縮性及び柔軟性に優れている。
【0032】
前述の通り、右手用手袋2の親指付け根部24はニットからなり、左手用手袋30の親指付け根部52は第一素材(合成皮革)からなる。右手用手袋2の親指付け根部24は、左手用手袋30の親指付け根部52に比べて、伸縮性及び柔軟性に優れている。
【0033】
スイングの時、右手用手袋2の親指付け根部24は、ゴムグリップと接触しない。この親指付け根部24には、大きな摩擦係数は必要ない。さらに、この親指付け根部24には、優れた耐摩耗性も必要ない。従って、この親指付け根部24に、皮革に代えてニットが採用されうる。
【0034】
スイングの時、右手用手袋2の親指付け根部24は、左手用手袋30の甲側地34と当接する。伸縮性及び柔軟性に優れた親指付け根部24は、スイング中のフィット感を高める。さらにこの親指付け根部24は、右手と左手との一体感を高める。この手袋対を着用したゴルフプレーヤーは、違和感なくゴルフクラブをスイングできる。この手袋対は、スイング速度を高めうる。
【0035】
右手用手袋2の親指付け根部24に、ニット以外の素材が用いられてもよい。ニット以外の素材としては、伸縮性に優れた合成皮革及び伸縮性に優れた人工皮革が例示される。
【0036】
右手用手袋2の親指付け根部24の10%伸張時の引張り荷重F1の、左手用手袋30の親指付け根部52の10%伸張時の引張り荷重F2に対する比(F1/F2)は、1.0/1.5以下である。比(F1/F2)が1.0/1.5以下である手袋対は、フィット感及び一体感に優れる。この観点から、比(F1/F2)は、1.0/3.0以下がより好ましく、1.0/5.0以下が特に好ましい。比(F1/F2)は、1.0/50.0以上が好ましい。
【0037】
引張り荷重F1及びF2は、引張り試験機によって測定されうる。試験片は、短冊状である。この試験片の幅は50mmであり、長さは300mmである。標線間距離は50mmであり、引張り速度は200mm/minである。試験片は、手袋の原反から切り出される。試験は、23℃の環境下で行われる。
【0038】
親指付け根部の伸縮性に方向性がある場合、最も引張り荷重が小さい方向と、これに直交する方向とにおいて、測定がなされる。両者が平均されて、引張り荷重F1又はF2が算出される。
【0039】
右手用手袋2の親指付け根部24の厚みT1は、左手用手袋30の親指付け根部52の厚みT2よりも大きい。この手袋対では、柔軟でかつ厚みT1が大きい親指付け根部24により、優れた一体感及びフィット感が達成されうる。この観点から、比(T1/T2)は1.2/1.0以上が好ましく、1.4/1.0以上が特に好ましい。親指付け根部24の厚みT1は、0.5mm以上1.5mm以下が好ましく、0.7mm以上1.0mm以下が特に好ましい。
【0040】
利き手用手袋が、単独で販売されてもよい。この利き手用手袋が、利き手ではない手用の手袋と、組み合わされて用いられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0042】
[実施例1]
図1から6に示される手袋対を製作した。この手袋対では、右手用手袋の親指付け根部は合成皮革Aからなり、右手用手袋の主部は合成皮革Bからなり、左手用手袋の掌部は合成皮革Bからなる。合成皮革Aは、合成皮革Bに比べて伸縮性に優れる。
【0043】
[実施例2]
右手用手袋の親指付け根部をニットCから製作した他は実施例1と同様にして、実施例2の手袋対を得た。ニットCは、合成皮革Bに比べて伸縮性に優れる。
【0044】
[実施例3]
右手用手袋の親指付け根部をニットDから製作した他は実施例1と同様にして、実施例3の手袋対を得た。ニットDは、合成皮革Bに比べて伸縮性に優れる。ニットDの厚みは、合成皮革Bの厚みに比べて大きい。
【0045】
[比較例1]
右手用手袋の親指付け根部を合成皮革Bから製作した他は実施例1と同様にして、比較例1の手袋対を得た。
【0046】
[フィーリングの評価]
手袋対を着用した女性のゴルフプレーヤーにゴルフクラブを把持させ、一体感及びフィット感を評価させた。この結果が、下記の表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0047】
[ヘッド速度の測定]
手袋対を着用した女性のゴルフプレーヤーに、ドライバーにてゴルフボールを打撃させた。この打撃の直前のヘッド速度を、測定した。10回の測定の結果の平均値が、下記の表1に示されている。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示されるように、各実施例の手袋対は、フィーリングに優れている。さらに、各実施例の手袋対を着用することで、ヘッド速度が高まっている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る手袋対は、女性のゴルフプレーヤーのみならず、男性のゴルフプレーヤーにも適している。
【符号の説明】
【0051】
2・・・右手用手袋
4、32・・・掌側地
6、34・・・甲側地
8、36・・・マチ
10、38・・・掌部
22、50・・・主部
24、52・・・親指付け根部
30・・・左手用手袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利き手に装着される第一手袋と、利き手ではない手に装着される第二手袋とからなるゴルフ用手袋対であって、
上記第一手袋が掌部を有しており、上記第二手袋が掌部を有しており、
上記第一手袋の掌部の少なくとも一部分が、この部分に対応する第二手袋の掌部の部分に比べて伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる手袋対。
【請求項2】
上記伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる部分の厚みが、この部分に対応する第二手袋における部分の厚みよりも大きい請求項1に記載の手袋対。
【請求項3】
上記第一手袋の掌部の、親指の付け根に相当する部分が、伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる請求項1又は2に記載の手袋対。
【請求項4】
上記第一手袋の伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる部分の10%伸張時の引張り荷重F1の、この部分に対応する第二手袋の部分の10%伸張時の引張り荷重F2に対する比(F1/F2)が、1.0/1.5以下である請求項1に記載の手袋対。
【請求項5】
利き手に装着される第一手袋と、利き手ではない手に装着される第二手袋とからなるゴルフ用手袋対であって、
上記第一手袋が掌部を有しており、
上記掌部が、親指付け根部と、この親指付け根部以外の部分である主部とを有しており、
上記親指付け根部が、主部に比べて伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる手袋対。
【請求項6】
利き手に装着されるゴルフ用手袋であって、
上記手袋が掌部を備えており、
上記掌部が、親指付け根部と、この親指付け根部以外の部分である主部とを有しており、
上記親指付け根部が、主部に比べて伸縮性又は柔軟性に優れた材料からなる手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85641(P2013−85641A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227677(P2011−227677)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】