説明

ゴーグル

【課題】優れた防曇性、耐久性、視認性、耐候性を有するゴーグルを提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上に、親水性ポリマーを含有する親水性層を有するゴーグルであって、該親水性ポリマーが少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有し、該親水性層の厚みが50nm〜1000nmであり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、光線透過率が85%以上であるゴーグル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴーグルに関し、二輪車用ヘルメットゴーグル、スキーやスノーボードなど雪上スポーツに使用されるゴーグル、水泳やダイビングなどに使用される水中用ゴーグル、薬品や異物などの飛散を防止するための安全用ゴーグルなどに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車用ヘルメットゴーグル、スキーやスノーボードなど雪上スポーツに使用されるゴーグル、水泳やダイビングなどに使用される水中用ゴーグル、薬品や異物などの飛散を防止するための安全用ゴーグルは、軽量性が求められておりアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などの透明性の高い樹脂が用いられている。このような樹脂性ゴーグルは使用環境により樹脂表面が結露することで曇りが生じることがあるため視認性を妨げる問題がある。このような曇りの発生を抑制する方法としては、従来より下記特許文献1〜7にあげたような方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、少なくとも一部がスルホン酸基および/またはその前駆基を有する加水分解性シラン化合物および/またはその部分加水分解物を親水性有機溶媒に溶解状態で含有することを特徴とする、基材表面に親水性を付与するためのコーティング液が開示されている。
また、特許文献2には、10〜100℃100%RHの雰囲気の中で、水中用ゴーグルの内側表面に水膜を保持することの出来ることを特徴とする防曇性を有する水中用ゴーグルが開示されている。しかし、特許文献1および2に記載の技術は、布などにより繰り返し擦ることで親水コーティング層が剥がれたりする欠点がある。
また、特許文献3には、無機アルコキシドおよび該アルコキシドが、加水分解・重縮合して形成されるOH基を有するポリマーのうちの少なくとも1種;ポリアルキレンオキサイド;触媒;および水含有有機溶媒を含有する、防曇性コーティング組成物が開示されている。しかし、特許文献3に記載の技術は、親水性が不十分であり、所望の防曇性が得られないという欠点がある。
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂を基材とし、該基材の少なくとも片面に、第1層として非吸水性のバリア層が、さらに該第1層のうえに第2層として吸水型の防曇層が形成されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体が開示されている。しかし、特許文献4に記載の技術は、親水性層が吸水性であり吸水量飽和に達すると曇が発生するために親水層厚を厚くする必要がある。親水層を厚くするとゴーグルの視認性が低下することがある。またUV硬化型の吸水層なのでUV照射装置などの特殊な処理機が必要でありコスト面での欠点もある。
特許文献5には、アクリルシリコーン系共重合体とパーフルオロアルキルカルボン酸およびポリビニルアルコールを含有するポリカーボネート樹脂表面の水滴を拡散する水滴拡散剤が開示されている。しかし、特許文献5に記載の技術は、親水層が結露水により溶け出すことがあり、繰り返し使用時の防曇持続性が不十分である。
特許文献6には、ゴーグル枠と、前記ゴーグル枠の内周部に形成された溝に着脱自在に嵌め込まれるゴーグルレンズを具備しており、前記ゴーグルレンズの上部に複数の通気孔を設けてあるゴーグルにおいて、左右サイド側の通気孔を中央部側の通気孔よりも大きくしてあることを特徴とするゴーグルが開示され、特許文献7には、頭部に装着し、頭部を保護するヘルメットにおいて、太陽光により発電する発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段から供給される電流により、ヘルメット内部を加冷する加冷手段とを具備することを特徴とするヘルメットが開示されている。しかし、特許文献6および7に記載の技術は、防曇性を有する層をコーティングする方法ではなくヘルメットなどに通気孔や加冷装置を具備するものであり、通気孔を具備するだけでは十分な防曇性を得ることができなかったり、加冷装置では防曇効果を発揮するのに時間がかかるなどの欠点がある。
【特許文献1】特開2002−60692号公報
【特許文献2】特開2002−78821号公報
【特許文献3】特開平8−231944号公報
【特許文献4】特開2007−210138号公報
【特許文献5】特開2000−230171号公報
【特許文献6】特開2001−231810号公報
【特許文献7】特開平10−212616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた親水性、透過率、防曇性、耐久性、温度サイクル性を有するゴーグルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上に、親水性ポリマーを含有する親水性層を有するゴーグルであって、該親水性ポリマーが少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有し、該親水性層の厚みが50nm〜1000nmであり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、光線透過率が85%以上であるゴーグル。
〔2〕
前記基材と、前記親水性層との間に厚みが10〜100nmであり、加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含む中間層を有する〔1〕に記載のゴーグル。
〔3〕
前記親水性ポリマーが下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)、一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)または一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)のいずれかであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のゴーグル。
【0006】
【化1】

【0007】
一般式(I−1)および(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101およびL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0008】
【化2】

【0009】
一般式(II−1)および(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0010】
【化3】

【0011】
一般式(III−1)および(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
〔4〕
前記親水性基が−CONH2、−COOHおよび−OHから選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のゴーグル。
〔5〕
前記加水分解性アルコキシシリル基が、-Si(OCH3)n、-Si(OC25)nおよび−Si(OC)n(式中nは2〜3の整数を表す)から選ばれる少なくとも一種のアルコキシシリル基を有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のゴーグル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた親水性、透過率、防曇性、耐久性、温度サイクル性を有するゴーグルが提供される。
本発明のゴーグルは少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有する親水性ポリマーを含有する親水性層を有することで、高い親水性を有し、優れた防曇性を発揮することができる。本願の親水性組成物はレベリングに優れるために基板の凸凹を薄厚の親水性層で埋めることができるためにゴーグルの視認性を阻害することなく高い親水性を得る効果がある。
また、該親水性層はポリマーを含むため、基材であるアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の熱膨張、熱収縮等の変化にも追従しやすく、温度変化による基材表面の割れを起こし難く温度サイクル性の向上が可能となった。
さらに、該親水性層の厚みが50nm〜1000nmという薄膜であっても優れた防曇性、親水性、耐久性、耐温度サイクル性を発揮するため、光線透過率が高く透明度に優れたゴーグルとすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のゴーグルは、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上に、親水性ポリマーを含有する親水性層を有するゴーグルであって、該親水性ポリマーが少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有し、該親水性層の厚みが50nm〜1000nmであり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、光線透過率が85%以上である。
【0014】
本発明のゴーグルは、親水性層の他に、後に詳述する中間層や下塗り層を有してもよい。
親水性層はアクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上の少なくとも片面に親水性組成物を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
好ましくは、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上の少なくとも片面に、分子中に少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有する親水性ポリマーを含有する親水性組成物を塗布し乾燥させて形成することができる。
【0015】
親水性組成物は、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド(金属アルコキシドともいう)を加水分解、重縮合して形成された架橋構造を有するコーティング(親水性被膜、親水性層または親水層ともいう)を形成させるものであることが好ましく、このような架橋構造を有する親水性層は、後に詳述する金属アルコキシド化合物と、親水性ポリマーと、適切な触媒とを用いて、適宜、形成することができる。
【0016】
上記金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。このような親水性層は、例えば、(A)加水分解性アルコキシシリル基を末端に有する下記一般式(I)で表される高分子化合物、または、該加水分解性アルコキシシリル基を幹ポリマーの側鎖として有する下記一般式(II)で表される高分子化合物と、(B)加水分解性の金属アルコキシド化合物と、該加水分解及び重縮合を生起する金属錯体触媒とを含有する親水性組成物を調製し、それを塗布、乾燥することにより容易に形成し得る。
以下に、この好ましい態様である親水性層を形成するための親水性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0017】
[親水性ポリマー]
本発明に用いる親水性ポリマーは、分子中に少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基(単にアルコキシシリル基と称する場合がある)を有する。
【0018】
親水性ポリマーの主鎖構造は特に限定されない。好ましい主鎖構造としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、特にアクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。親水性ポリマーは共重合体であってもよく、該共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
また、親水性層がポリマーを含むため、本発明のゴーグルの基材であるアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂が熱膨張、熱収縮する変化にも追従しやすく、温度変化による塗膜の割れなどの欠陥を起こしにくい。
【0019】
アルコキシシリル基は、水と反応してシラノール(Si−OH)を生成する基であり、好ましくは下記一般式(a)で表される。
一般式(a): −Si(R102a(OR1013-a
一般式(a)中、R101は水素原子またはアルキル基、R102は水素原子またはアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を示す。R101またはR102は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
101がアルキル基を表す場合は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、R102がアルキル基を表す場合は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、アリール基を表す場合は炭素数6〜25のアリール基が好ましく、アラルキル基を表す場合は炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。
【0021】
アルコキシシリル基は、好ましくは炭素原子に結合したアルコキシシリル基である。
アルコキシシリル基は、ポリマー主鎖の末端に一つまたは複数有する場合や、側鎖に一つまたは複数有する場合などがある。2以上のアルコキシシリル基を含む場合、該2以上のアルコキシシリル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明における加水分解性アルコキシシリル基は、-Si(OCH3)n、-Si(OC25)nおよび−Si(OC)n(式中nは2〜3の整数を表す)から選ばれる少なくとも一種のアルコキシシリル基であることが好ましい。加水分解しやすく、架橋性が高いため、防曇性に優れ、かつ耐久性に優れた親水性層を形成することができるためである。
【0022】
アルコキシシリル基は、後述するSi、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド(金属アルコキシドともいう)の加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる。また、アルコキシシリル基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。この場合の化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。該化学結合は、共有結合であることが好ましい。
【0023】
親水性基としては、好ましくはカルボキシル基、カルボキシル基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。−CONH2、−COOHおよびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。入手が容易な点で有利であり、親水性が高く優れた親水性層を形成することができるため好ましい。
【0024】
これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。
【0025】
親水性基を含む繰り返し単位とアルコキシシリル基との間や、親水性基を含む繰り返し単位と主鎖との間に連結基が介在していることが好ましい。
【0026】
親水性ポリマーは、下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)、一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)または一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)のいずれかであることが好ましい。
【0027】
〔一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)〕
【0028】
【化4】

【0029】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0030】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R101〜R108はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0031】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0032】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0033】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0034】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0035】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状ならびにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0036】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0037】
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0038】
101〜L102は単結合または有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。
101〜L102が有機連結基を表す場合、L101〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0039】
【化5】

【0040】
一般式(I−1)において、L101は単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
102は−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−及び−CH−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
【0041】
一般式(I−2)中、A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0042】
〜Rにおいて、直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、R〜Rにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウムまたはスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0043】
101としては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−COOH、−SO3-NMe4+、−SO3-+、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−SO3-+、−(CHCHO)H、である。尚、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0044】
pは1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0045】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーにおいて、x及びyは(A)特定親水性ポリマーにおける、一般式(I−1)で表される構造単位と一般式(I−2)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(I−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(I−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(I−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0047】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含むポリマーの質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0048】
以下に、一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
【化15】

【0059】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0060】
〔一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)〕
【0061】
【化16】

【0062】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0063】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)は、上記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に上記一般式(II−1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0064】
前記一般式(II−1)及び(II−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0065】
201及びL202は−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−及び−CH−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
【0066】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0067】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0068】
【化17】

【0069】
上記式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(II−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
【0070】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)において、加水分解性シリル基量を有する一般式(II−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(II−2)の構造単位のモル数が、1000〜10倍の範囲が好ましく、500〜20倍のがより好ましく、200〜30倍のが最も好ましい。30倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0071】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0072】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(II)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
【化21】

【0077】
【化22】

【0078】
【化23】

【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
〔一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)〕
親水性ポリマー(III)は、下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む。親水性ポリマー(III)は、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーであることが好ましい。
【0086】
【化30】

【0087】
一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0088】
上記一般式(III−1)及び(III−2)において、R301〜R311は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R301〜R311が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
301、L302及びL303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA301、側鎖及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L301、L302及びL303が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
rは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0089】
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0090】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0091】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0092】
親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0093】
一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)において、xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0094】
親水性ポリマー(III)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(III−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(III−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(III−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0095】
親水性ポリマー(III)は、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0096】
以下に、一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
【0097】
【化31】

【0098】
【化32】

【0099】
【化33】

【0100】
【化34】

【0101】
【化35】

【0102】
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0103】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0104】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0105】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0106】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0107】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0108】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、特定親水性ポリマー(I)、特定親水性ポリマー(II)及び/又は特定親水性ポリマー(III)を添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、特定親水性ポリマー(I)、特定親水性ポリマー(II)及び/又は特定親水性ポリマー(III)中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0109】
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)の共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0110】
本発明における親水性組成物は親水性ポリマー(I)、(II)または(III)を単独あるいは2種以上混合しても良い。
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)は硬化性と親水性の観点から、親水性組成物の全固形分に対して20〜99.5質量%使用されることが好ましく、30〜99.5質量%使用されることがさらに好ましい。
【0111】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0112】
[架橋剤]
本発明における親水性組成物中に、前記一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーを含有する場合は良好な硬化性を得るために架橋剤を含有することが好ましい。親水性組成物中に前記一般式(II)または一般式(III)で表される構造を含む親水性ポリマーを含有する場合は架橋剤を含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物(金属アルコキシドともいう)がとくに好ましい。金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは一般式(V−1)または一般式(V−2)で表すことができ、式中、R20は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R21はアルキル基またはアリール基を表し、ZはSi、TiまたはZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R20およびR21がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0113】
(R20m−Z−(OR214-m (V−1)
Al−(OR223 (V−2)
【0114】
以下に、一般式(V−1)または一般式(V−2)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0115】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0116】
上記のなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0117】
Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物は、前記一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーを用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、1〜80質量%使用されることが好ましく、5〜70質量%使用されることがさらに好ましい。前記一般式(II)または一般式(III)で表される構造を含む親水性ポリマーを用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、0〜80質量%使用されることが好ましく、0〜70質量%使用されることがさらに好ましい。
【0118】
[硬化触媒]
本発明の親水性組成物においては、アルコキシシリル基含有親水性ポリマー、さらに金属アルコキシド化合物などの架橋剤を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解および重縮合反応を促進するために硬化触媒を用いることが好ましい。
硬化触媒としては酸性触媒、塩基性触媒または金属錯体を使用することが好ましい。
【0119】
硬化触媒としては、前記金属アルコキシド化合物などの架橋剤を加水分解、重縮合し、アルコキシシリル基含有親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、または、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0120】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのR30COOHで表される構造式のR30を他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0121】
触媒は、金属錯体がとくに好ましい。
金属錯体触媒は、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A、3B、4Aおよび5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソまたはヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素,Ti、Zrなどの4A族元素およびV、NbおよびTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、AlおよびTiから得られる錯体が優れており好ましい。
【0122】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソまたはヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸およびそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0123】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖または分岐のカルボキシアルキル基およびヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0124】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトンおよびジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0125】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性および、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0126】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性および皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0127】
また、上記の金属錯体触媒の他に、前記酸性触媒、塩基性触媒を併用してもよい。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0128】
触媒は、親水性組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%使用されるのが好ましく、1〜10質量%使用されるのがさらに好ましい。
【0129】
[界面活性剤]
親水性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0130】
〔その他の成分〕
以下に、必要に応じて本発明に用いる親水性組成物に使用することのできる種々の添加剤について述べる。
【0131】
(抗菌剤)
本発明のゴーグルに抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を親水性組成物に含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れたゴーグルが得られる。
抗菌剤としては、ゴーグルの親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0132】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10'−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N'−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2'−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0133】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0134】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水性層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水性層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水性層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水性層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0135】
抗菌剤の含有量は、一般的には0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0136】
(無機微粒子)
本発明の親水性層は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水性層中に安定に分散して、親水性層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れるゴーグルを形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0137】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0138】
(紫外線吸収剤)
塗膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0139】
(酸化防止剤)
親水性組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、欧州特許出願公開第223739号明細書、同309401号明細書、同第309402号明細書、同第310551号明細書、同第310552号明細書、同第459416号明細書、独国特許出願公開第3435443号明細書、特開昭54−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0140】
(溶剤)
親水性組成物による塗膜形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性組成物に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性組成物全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0141】
(高分子化合物)
親水性組成物には、塗膜の物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
上記高分子化合物の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましい。
【0142】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有する親水性ポリマー及び必要に応じて特定アルコキシドおよび触媒をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0143】
前記親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0144】
以上述べたように、前記親水性組成物により親水性層を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
【0145】
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を用いており、一般的に上市されている製品を用いることができる。
アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂としては例えば、ポリカエース(住友ベークライト株式会社製)、アクリライトS(三菱レイヨン株式会社製)等を挙げることができる。
基材と親水性層の密着力を確保するために必要に応じて基材表面にプライマー層を設けてもよい。プライマー層としては親水性層との濡れ性のよいものであれば一般的に上市されている製品を用いても良い。中でも水性アクリル系のものが好ましい。
また基材表面を改質してもよい。改質方法としてはコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、カルカリ化成処理など公知の方法を用いることができる。
【0146】
基材と親水層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0147】
〔親水性層〕
親水性層の厚みは、50nm〜1000nmである。好ましくは50〜2000nmであり、更に好ましくは50〜500nmである。厚みが薄いと十分な親水効果を発揮しないことがある。また厚みが厚いと乾燥むら等の欠陥を生じることがある。親水性層の厚みは親水性組成物の固形分濃度、バーコータのコイル径等で調整することができるほか公知の方法で可能である。
【0148】
また、親水性層の中心線平均平均高さRaは、1nm〜10nmであることが好ましい。より好ましくは2〜5μmである。
表面粗さが大きくなると水に対する濡れ性が向上して親水性、防曇性、防汚性が向上する。中心線平均平均高さRaが、上記の範囲であることで、良好な親水性と耐磨耗性とを両立させることができる。
中心線平均高さは光干渉式粗さ計で評価することができ、中心線平均高さをRaとする。
親水層が粗面になると塗膜表面に干渉縞が発生したり視認性が低下する。平滑すぎると耐擦り性が低下することがある。
【0149】
親水性層のTg(ガラス転移温度)は、膜強度の観点から40℃〜150℃が好ましく、親水性層の弾性率は、1GPa〜7GPaが好ましい。Tgは動的粘弾性測定装置で測定するこができ、損失弾性率のピーク温度をTgとする。弾性率はTgと同様の測定で求めた貯蔵弾性率を用いることができる。
Tgが低いと塗膜表面が粘着しやすくゴミなどが付着する欠点がある。Tgが高すぎると塗膜が脆くなり易く耐擦り性に不利に働くことがある。
【0150】
本発明における親水性層は、光透過率85%以上であることが好ましい。より好ましくは87%以上であり、特に好ましくは90%以上である。光透過率が85%よりも低いと視認性が低下する。光透過率を一層低下させる手段としては親水性層膜厚を薄くすることや、無機粒子を併用する場合は、その粒子径を小さくしたり添加量を抑える方法がある。光透過率はASTM D1033法を用いて測定することができる。
【0151】
親水性は、汎用的に、水滴接触角で測定される。本発明のゴーグルの表面は、20℃にて測定した表面の空中水滴接触角が15°以下であり、好ましくは10°以下である。水滴接触角を15°以下とすることで、優れた防曇性を発揮でき好ましい。
本発明のゴーグルは、親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、かつ光線透過率が85%以上である。親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、かつ光線透過率を85%以上とすることで、視野性に優れたゴーグルとすることができ好ましい。
【0152】
〔中間層〕
前記基材と、前記親水性層との間に、加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含む中間層を有することが好ましい。中間層を設けることにより基材と親水性層との密着性を向上させることができ、好ましい。
前記基材と前記親水性層との間に、上記中間層を有する場合、中間層の厚みは10〜100nmであることが好ましい。中間層の厚みを上記範囲とすることで十分な密着性を確保することができ、塗膜に干渉縞を発生するなどの不具合もなく視認性に優れ好ましい。
本発明のゴーグルにおける中間層は、少なくとも1種の加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含有する塗布液を塗設して形成され、前記親水性層と縮合反応により化学結合したものである。
【0153】
(加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物)
本発明のゴーグルの中間層で用いる加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物は、単独でまたはその加水分解物となって、分子中に反応基を2つ以上有し、その中の少なくとも一つが基板と結合し、残りの少なくとも一つが親水性層の親水性ポリマーおよび/または金属アルコキシドと結合することにより、基板と親水性層との橋かけを行なうものである。加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物は親水層中に添加してもよいが、別層として基板と親水層の間に設けたほうが、親水性との両立の観点から好ましい。
【0154】
本発明に用いられる加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物の具体例を列挙するが、これらの化合物に限定されるものではない。
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)−3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。
【0155】
中でも、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0156】
中間層は、上記カップリング剤を含有する塗布液を基材上に塗布し、次いで、親水性層形成用塗布液を塗布、加熱、乾燥することにより形成することができる。
塗布方法としては、前記の親水性層塗布と同様の方法を適用できる。また、加熱乾燥も前記の親水性層同様、加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
中間層形成用塗布液には、上記カップリング剤のほか、適切な溶媒やその他必要な成分を含有する。
溶媒の具体例としては、前記の親水性層形成用に用いたものと同様の溶媒を用いることができる。より好ましくは、水、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。溶媒使用量は中間層塗布液全体に対し50〜99質量%が好ましく、より好ましくは70〜95質量%の範囲である。
その他の必要な成分の具体例としては、前記の親水性層形成用に用いたものと同様のコロイダルシリカなどの無機粒子、界面活性剤等、を挙げることができる。
【0157】
〔その他の層〕
本発明のゴーグルは、必要に応じて、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
【0158】
(下塗り層)
前記基材と、前記親水性層との間に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0159】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0160】
本発明では、アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材と前記親水性層との間に厚みが10〜100nmであり、加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含む中間層形成用組成物をコーティングして形成した中間層を設けることが好ましい。
加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物として、中でも好ましいものはテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランであり、特に好ましくはテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランである。
【0161】
(保護層)
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。
【0162】
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水性層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0163】
[ゴーグルの作製]
本発明におけるゴーグルとはスポーツや加工作業等において目を保護するために顔面に装着する道具をいう。主なゴーグルには水泳用、スキー用、軍用、サバイバルゲーム用、オートバイ用、各種工作作業用などがある。
(親水性組成物の撹拌)
親水性組成物は基材に塗布する前に撹拌することが、アルコキシシリル基の加水分解・縮合率の向上という理由から好ましい。撹拌時間は10分間〜10時間が好ましく、30〜2時間がより好ましい。
また親水性ポリマーを含む組成物に前記触媒を加えて上記時間撹拌することがさらに好ましい。
【0164】
親水性組成物を適切な基材とするゴーグル上に塗布し、加熱、乾燥して親水性層を形成することができる。親水性層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性と縮合率向上の観点から加熱温度は20〜200℃であることが好ましく、60〜150℃がより好ましい。加熱時間は10秒〜2時間が好ましく、1分〜1時間がより好ましい。
【0165】
前記ゴーグルは、公知の塗布方法で作製することが可能であり、特に制限はなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0166】
前記塗装方法は、例えば刷毛塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、浸漬塗りなどの手段で基材表面に塗布することができる。塗布量は特に制限ないが、一般には約0.1〜500μm の範囲で充分と考える。塗膜の乾燥は親水性組成物のタイプに応じて条件を選択することができる。例えば加水分解性シリル基、水酸基およびエポキシ基を必須官能基成分として含有する基体樹脂および金属キレート化合物を含む水性塗料を用いた場合には、室温で1時間〜72時間程度もしくは加熱する場合には40℃〜200℃で1分間〜24時間程度の乾燥をおこなうことができる。
【実施例】
【0167】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、部とあるのは質量部を意味する。
【0168】
〔実施例1〕
中性洗剤で洗浄後、十分乾燥させたポリカーボネート樹脂基材(住友ベークライト製ポリカエースECK100 5mm厚)表面に、乾燥後の膜厚が10nmの厚みになるようにバーコータ−(コイル径0.08Φ)を用いて中間層形成用組成物をコートし100℃10分間加熱乾燥を行った。
続いて、下記親水性塗布液(1)を乾燥後の膜厚が100nmの厚みになるようにバーコーター(コイル径0.08Φ)でコートし、100℃10分間加熱乾燥を行った。
表1記載の親水性層膜厚を有する親水処理部材が得られた。親水処理部材の親水性層膜厚は部材断面を走査型電子顕微鏡で観察することで確認した。
【0169】
<親水性層塗布液(1)>
・下記ゾルゲル調製液(1) 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0170】
【化36】

【0171】
<ゾルゲル調製液(1)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、親水性ポリマー(式−1)5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0172】
<中間層形成用組成物の調整>
テトラメトキシシラン10部、メチルトリメトキシシラン10部、チタンアセチルアセトナートを前記アルコキシシリル化合物のアルコキシシリル基のモル数と等モルでもって添加し、蒸留水900部、エタノール1000部を加え、20℃で30分間攪拌し中間層形成用組成物を得た。
【0173】
〔実施例2〜9、18〜22比較例1〜7、10〜13〕
表1に記載の基材、親水性ポリマー、中間層の膜厚、親水性層の膜厚に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜9、18〜22比較例1〜7、10〜13の親水性部材が得られた。
【0174】
〔実施例10、13〜17、比較例8〕
実施例1で用いた親水性層塗布液(1)を親水性層塗布液(2)に変更し、表1に記載の基材、親水性ポリマー、中間層の膜厚、親水性層の膜厚に変更した以外は実施例1と同様にして実施例10、13〜17、比較例8の親水性部材が得られた。
【0175】
<親水性層塗布液(2)>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液 100g
(日産化学工業(株)製 スノーテックスC、平均粒径10〜20nm)
・上記ゾルゲル調製液 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0176】
<ゾルゲル調製液(2)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと親水性ポリマー(式−1)5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0177】
〔実施例11、12〕
実施例1で用いた親水性層塗布液(1)を親水性層塗布液(3)に変更し、表1に記載の基材、親水性ポリマー、中間層の膜厚、親水性層の膜厚に変更した以外は実施例1と同様にして実施例11、12の親水性部材が得られた。
【0178】
<親水性層塗布液(3)>
・コロイダルシリカ分散物40質量%水溶液 30g
(日産化学工業(株)製 スノーテックスZL、平均粒径70〜100nm)
・上記ゾルゲル調製液(2) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0179】
〔比較例9〕
実施例1で用いた親水性層塗布液(1)を親水性層塗布液(4)に変更し、表1に記載の基材、親水性ポリマー、中間層の膜厚、親水性層の膜厚に変更した以外は実施例1と同様にして比較例9の親水性部材が得られた。
【0180】
<親水性層塗布液(4)>
・コロイダルシリカ分散物40質量%水溶液 30g
(日産化学工業(株)製 MP2040、平均粒径250nm) ・上記ゾルゲル調製液(2) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0181】
(親水性ポリマー(式−1)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド21.0g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル4.3g、及び1−メトキシ−2−プロパノール260gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル1.9gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水ポリマー(式−1)を得た。乾燥後の質量は22.1gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により求めたポリマーの質量平均分子量は20,500であった。
親水性ポリマー(式−2)〜(式−6)も同様の手法により合成した。
【0182】
(親水性ポリマー(式−7)の合成)
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により、13000の質量平均分子量を有するポリマーであることを確認した。5%水溶液粘度は2.5mPa・s、親水性基の官能基密度は、13.4meq/gであった。
親水性ポリマー(式−8)及び(式−9)の合成も同様の手法により合成した。
【0183】
実施例および比較例に使用した親水性ポリマーを以下に示す。
【0184】
【化37】

【0185】
【化38】

【0186】
[評価法]
水に対する接触角:協和界面科学(株)製 接触角計DropMaster500を用いて超純水を用いて親水性塗布膜表面の接触角を求めた。
透過率:ASTM D1003に準じて測定した。
繰り返し擦り性:得られた部材表面に対し、蒸留水で湿らせた不織布(旭化成製BEMCOT)を面圧500gf/cm2、ストローク30mmで5000回繰り返し擦り、目視にて表面にキズが確認できたものを不良、キズは確認できなかったが水に対する接触角が20°以上になったものを良好、水に対する接触角が15°以下且つキズが確認できなかったものを優秀とした。
防曇性:得られた部材表面に40〜50℃の加湿蒸気をあてて30sec以内に曇りが発生したものを不良、30sec以上曇が発生しなかったものを優秀とした。
温度サイクル性:得られた部材を−40℃環境下に2時間放置したのち85℃20%RH環境下で2時間放置させた。これを1サイクルとし20サイクルしたのち塗膜表面を観察し以下のランクで評価した。
優秀:目視及び光学顕微鏡(400倍)で観察し試験前と変化なし。
良好:目視では試験前と変化がないが光学顕微鏡で観察し部分的にひび割れが観察されたもの。
不良:目視及び光学顕微鏡で塗膜表面にひび割れが観察されたもの。
【0187】
結果を表1に示す。
【0188】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の基材上に、親水性ポリマーを含有する親水性層を有するゴーグルであって、該親水性ポリマーが少なくとも一種の親水性基及び加水分解性アルコキシシリル基を有し、該親水性層の厚みが50nm〜1000nmであり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であり、光線透過率が85%以上であるゴーグル。
【請求項2】
前記基材と、前記親水性層との間に厚みが10〜100nmであり、加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含む中間層を有する請求項1に記載のゴーグル。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)、一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)または一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴーグル。
【化1】

一般式(I−1)および(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101およびL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化2】

一般式(II−1)および(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化3】

一般式(III−1)および(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項4】
前記親水性基又はA101が−CONH2、−COOHおよび−OHから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のゴーグル。
【請求項5】
前記加水分解性アルコキシシリル基が、-Si(OCH3)n、-Si(OC25)nおよび−Si(OC)n(式中nは2〜3の整数を表す)から選ばれる少なくとも一種のアルコキシシリル基を有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴーグル。

【公開番号】特開2010−57690(P2010−57690A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226529(P2008−226529)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】