説明

サイクリックAMPエンハンサーおよび/またはEPリガンドを含む組成物、ならびにこれを調製および使用する方法

プロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドもしくはアゴニスト、および/またはサイクリックAMPエンハンサー、ならびに酢酸メチルを実質的に含まない適切な有機溶媒を含む、改善された薬学的組成物が提供され、上記組成物は、エンドトキシンを含まない容器(例えば、チューブもしくはPEバッグ)中での貯蔵および/もしくは使用のために提供される。上記組成物は、インビトロ、エキソビボ、およびインビボでの使用に、および特に、エキソビボでの治療的使用に(例えば、造血幹細胞移植物において)適している。エキソビボでの治療的適用において上記組成物を使用するための方法、および上記組成物を調製するための方法もまた、提供される。使用時の説明書付きのキットもまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年3月19日に出願された米国仮出願番号61/161,717および2009年10月5日に出願された米国仮出願番号61/248,765の米国特許法119条(e)項の下での利益を主張し、上記米国仮出願の各々は、その全容が参照によって援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、サイクリックAMP(cAMP)エンハンサーおよび/もしくはプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドを適した有機溶媒中に含み、無菌でかつエンドトキシンを含まない容器内に含まれる改善された薬学的組成物、ならびにこれを調製するための方法、およびこれを使用するための方法に関する。これら薬学的組成物は、主に、エキソビボ治療適用における(例えば、幹細胞移植治療における)使用のためであるが、当業者に明らかな他の方法で使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
プロスタグランジン(例えば、プロスタグランジンE(PGE))、そのアナログ、およびプロスタグランジンEPレセプターに対する他のリガンド、ならびにcAMPエンハンサーは、エキソビボ治療的使用における使用の可能性を示す。例えば、PGEおよびEPレセプターに対する他のリガンドが、細胞移植手順の前、その間、および/もしくはその後に造血幹細胞(HSC)の増殖および拡大を刺激し得る(例えば、特許文献1(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)ことが示された。種々の病的もしくは悪性状態の処置における幹細胞関連治療の十分に認識された役割を考慮すると、プロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドの適切に処方された組成物、およびcAMPエンハンサーの適切に処方された組成物は、同様に、このような状態の処置において大きな可能性を有する。
【0004】
しかし、それらの可能性にも拘わらず、PGEアナログおよびプロスタグランジンEPレセプターに対する他のリガンドは、エキソビボ処理のために、大部分には使用されてこなかった。他の潜在的な懸念の中で、このような薬剤は、問題となるインビボの特徴(例えば、急激な酸化(インビボ)を受けて、不活性なもしくは毒性の代謝産物を形成することによって)を有する。さらに、多くのプロスタノイドリガンドの水の安定性は、代表的には、12時間未満であり、これはしばしば、中性pH(約pH6.0〜約pH8.0を含む)において水中で脱水事象(例えば、不活性である16,16 PGA−2の形成)をもたらす。それらの低い水溶性は、治療的使用において他の困難を作り出す。なぜなら、特定の有機溶媒は、エキソビボ処理において細胞に対して望ましくない影響を有し得るからである。
【0005】
このようなEPリガンドの融解温度はまた、問題を引き起こし、室温で非結晶性化合物(「油」)の形成を引き起こす。特定のこれら化合物は、油として不安定であり、シス形態からトランス形態への異性化を受け得、また、エピマー化を受け得る。これら油はまた粘性であり、このことは、それらの取り扱いを困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/073748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いくつかのPGEリガンドは、臨床目的で使用されてきた一方で、いかなるエキソビボ目的でも使用されてこなかった。従って、ヒトのための(特に、HSC、多能性細胞(pluripotent cell)、もしくは多分化能細胞(multi−potent cell)の移植関連治療のための)エキソビボ処理およびインビボ処置についてこれらタイプの化合物の作用を改善もしくは促進する製造物品および組成物、ならびにこれらを調製および使用するための方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(簡潔な概要)
本発明の実施形態は、一般に、組成物、ならびにその使用法および調製法に関し、上記組成物は、サイクリックAMP(cAMP)エンハンサーおよびプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドから選択される薬剤、ならびに有機溶媒を含み、ここで上記薬剤および上記有機溶媒は、無菌でかつエンドトキシンを含まない容器内に含まれ、上記組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞へのエキソビボ投与に適している。
【0009】
特定の実施形態において、上記薬剤は、cAMPエンハンサーである。特定の実施形態において、上記cAMPエンハンサーは、ジブチリルcAMP(DBcAMP)、ホルボールエステル、フォルスコリン、スクラレリン(sclareline)、8−ブロモ−cAMP、コレラ毒素(CTx)、アミノフィリン、2,4 ジニトロフェノール(DNP)、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、カフェイン、テオフィリン(ジメチルキサンチン)、ドパミン、ロリプラム、イロプロスト、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、および血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)から選択される。
【0010】
特定の実施形態において、上記薬剤は、プロスタグランジンレセプターに対するリガンドであり、ここで上記リガンドは、プロスタグランジンEPレセプターアゴニストである。特定の実施形態において、上記リガンドは、プロスタグランジンE(PGE)、もしくはそのアナログである。特定の実施形態において、上記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGE、16−16 ジメチルPGE p−(p−アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11−デオキシ−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレン−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレンPGE、9−ケトフルプロステノール、5−トランスPGE、17−フェニル−ω−トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16−フェニルテトラノルPGE、15(S)−15−メチルPGE、15(R)−15−メチルPGE、8−イソ−15−ケトPGE、8−イソPGEイソプロピルエステル、20−ヒドロキシPGE、11−デオキシPGE、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15−ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEから選択される。特定の具体的実施形態において、上記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGEである。
【0011】
特定の実施形態において、上記リガンドは、非PGEベースのリガンドである。特定の実施形態において、上記非PGEベースのリガンドは、EPアゴニスト、EPアゴニスト、EPアゴニスト、およびEPアゴニストからなる群より選択される。特定の実施形態において、上記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−DI−004およびONO−8713から選択される。特定の実施形態において、上記非PGEベースのEPアゴニストは、CAY10399、ONO_8815Ly、ONO−AE1−259、およびCP−533,536から選択される。特定の実施形態において、上記非PGEベースのEPアゴニストは、AE5−599、MB28767、GR 63799X、ONO−NT012、およびONO−AE−248から選択される。特定の実施形態において、上記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−4819、APS−999 Na、AH23848、およびONO−AE1−329から選択される。特定の実施形態において、上記プロスタグランジンEPレセプターは、EP、EP、EP、およびEPから選択される。
【0012】
特定の実施形態において、上記薬剤は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(good manufacturing practice(GMP))によって製造される。特定の実施形態において、上記薬剤は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって、少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である。好ましい実施形態において、上記薬剤は、HPLCによって少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である16,16−ジメチルPGEである。
【0013】
特定の実施形態において、上記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まない。特定の実施形態において、上記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の具体的実施形態において、上記有機溶媒は、DMSOである。
【0014】
特定の実施形態において、上記薬剤は、約100nM〜約10mM、もしくは約1mM〜約10mM、もしくは約100nM〜約1μMの濃度で上記溶媒中に存在する。特定の実施形態において、上記薬剤は、約10mMの濃度で存在する。
【0015】
特定の実施形態において、本願組成物は、上記容器中に不活性ガスを含み得る。特定の実施形態は、上記容器中に空気オーバーレイを含み得る。特定の実施形態において、上記容器は、上記組成物の貯蔵に適したバッグ、カプセル、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジである。特定の実施形態において、上記容器は、使い捨て容器である。
【0016】
特定の実施形態において、上記容器は、適切な培地中で臍帯血もしくはヒト細胞をさらに含み、ここで上記容器は、上記細胞のエキソビボ処理に適しているバッグ、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジである。特定の実施形態において、上記有機溶媒容積は、上記適した培地の全容積のうちの約1%未満である、特定の実施形態において、上記有機溶媒容積は、上記適した培地の全容積のうちの約0.1%未満である。特定の実施形態において、上記ヒト細胞は、造血幹細胞を含む。
【0017】
特定の詳細な実施形態において、上記薬剤は、16,16 ジメチルPGEであり、好ましくは、最終濃度約10mMの、HPLCによって少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である16,16 ジメチルPGEであり、上記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、上記容器は、テフロン(登録商標)コーティングストッパー、キャップ、もしくは蓋付きの2mlバイアルであり、上記容器中に空気オーバーレイが存在する。
【0018】
特定の実施形態は、一般に、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与に適した組成物を調製するための方法に関し、上記方法は、(a)酢酸メチルならびにサイクリックAMP(cAMP)エンハンサーおよびプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドから選択される薬剤を含む容器中で、第1の組成物の容積を低下させて、第2の組成物を作り出す工程であって、ここで上記第2の組成物は、上記酢酸メチルを実質的に含まない、工程;ならびに(b)有機溶媒を上記容器中の上記第2の組成物に添加する工程であって、ここで上記有機溶媒は、酢酸メチルではなく、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与に適しており、それによって、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与に適した組成物を調製する、工程、を包含する。特定の実施形態において、(a)における上記第1の組成物の容積を低下させる工程は、上記酢酸メチルを蒸発させる工程を包含する。
【0019】
本発明の方法の特定の実施形態において、上記薬剤、上記有機溶媒、および上記容器は、本明細書に記載されるように、本発明の薬剤、本発明の有機溶媒、および本発明の容器から各々独立して選択される。
【0020】
特定の実施形態において、上記薬剤は、約100nM〜約10mM、もしくは約1mM〜約10mM、もしくは約100nM〜約1μMの最終濃度で上記有機溶媒中に存在する。特定の詳細な実施形態において、上記薬剤は、約10mMの濃度で上記有機溶媒中に存在する。
【0021】
特定の実施形態において、上記薬剤は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(GMP)によって製造される。特定の実施形態において、上記薬剤は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって、少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である。
【0022】
本発明の方法の特定の実施形態において、上記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16 ジメチルPGEであり、工程(b)の上記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、上記容器は、テフロン(登録商標)蓋、ストッパー、もしくはキャップ付きの2mlバイアルであり、上記バイアル中に空気オーバーレイが存在する。
【0023】
上記方法のうちの特定のものは、工程(c)上記組成物を上記容器から第2の容器に移す工程をさらに含み得、ここで上記第2の容器は、エンドトキシンを含まず、上記組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適している。特定の実施形態において、上記第2の容器は、バッグ、カプセル、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジである。特定の実施形態において、上記第2の容器は、使い捨て容器である。
【0024】
また、上記方法のうちの特定のものは、工程(c)上記組成物を、上記容器から第2の容器に移す工程をさらに包含し、ここで上記第2の容器は、エンドトキシンを含まずかつ上記組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適したテフロン(登録商標)キャップ付きの2mlバイアルであり、ここで上記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16 ジメチルPGEであり、工程(b)の上記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、上記バイアル中に空気オーバーレイが存在する。
【0025】
また、上記方法のうちの特定のものは、工程(c)上記組成物を、上記容器から第2の容器に移す工程をさらに包含し得、ここで上記第2の容器は、エキソビボ処理条件に適しており、臍帯血を含む。あるいは、上記方法のうちの特定のものは、工程(c)上記組成物を第2の容器へ移す工程をさらに包含し得、ここで上記第2の容器は、エキソビボ処理条件に適しており、適切な培地中にヒト細胞を含む。
【0026】
特定の実施形態において、上記有機溶媒容積は、上記適した培地の全容積のうちの約1%未満である。特定の実施形態において、上記有機溶媒容積は、上記適した培地の全容積のうちの約0.1%未満である。特定の実施形態において、上記ヒト細胞は、造血幹細胞(HSC)を含む。
【0027】
特定の実施形態は、造血幹細胞(HSC)の増殖もしくは拡大を刺激するための方法を含み、上記方法は、本発明の組成物を、エキソビボ処理条件に適した第2の容器へ移す工程を包含し、ここで上記第2の容器は、適した培地中に臍帯血もしくはHSCを含み、それによって、HSCの増殖もしくは拡大を刺激する。このような実施形態は、被験体に上記HSCを投与する工程をさらに包含し得る。
【0028】
特定の実施形態は、請求項1に記載の組成物および哺乳動物へのエキソビボ投与のために上記組成物を使用する際の説明書を含むキットを含み得る。特定の実施形態において、上記哺乳動物細胞へのエキソビボ投与は、ヒトにおけるエキソビボ治療的使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、cAMPエンハンサーの効力を測定するために使用され得る蛍光共鳴エネルギー移動時間分解(FRET)アッセイを示す。
【図2】図2は、実施例2のTR−FRETアッセイに従って測定される、フォルスコリンで処理したLS142Tの用量応答曲線を示す。この図面において、用量応答が観察された。ここで上記フォルスコリンの濃度を増大させると(右から左へ)、フルオレセインタグ化抗体の低下した蛍光発光によって示されるように、サイトゾルcAMPの増大が引き起こされた。次いで、ID50値をこのデータから計算して、異なるcAMPエンハンサーの相対的効力を比較できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本発明の実施形態は、一般に、所望の貯蔵、取り扱い、および物理化学的特性を有し、多くの研究的使用および治療的使用(特に、エキソビボ治療的使用)に適した、プロスタグランジンEPリガンドおよびcAMPエンハンサー(すなわち、本明細書で使用される場合、「薬剤」)の改善された組成物の発見に関する。本発明の実施形態はまた、このような薬剤を含む組成物を調製するための方法、治療適用(例えば、単離、インビボ拡大もしくはエキソビボ拡大、およびその後の必要な被験体への造血幹細胞の投与を含むインビボおよびエキソビボの治療適用)において上記組成物を使用するための方法に関する。
【0031】
一般に、以下に記載されるように、本発明の改善された組成物は、適切な部分において、本発明のプロスタグランジンEPリガンドおよびcAMPエンハンサーに適した有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))の同定および使用、ならびにこのような溶媒中での最適な貯蔵および機能濃度を同定および使用して、企図された用途に関して安定性および生物学的活性を高めることに関する。本発明の改善された、非常に精製された組成物はまた、医薬品の製造管理及び品質管理規則によって製造され得、それらのその後の治療的使用を促進するために、代表的には、無菌でかつエンドトキシンを含まない容器(例えば、テフロン(登録商標)コーティングキャップ、蓋もしくはストッパー付き2mlチューブ)または上記組成物と、細胞(例えば、臍帯血、骨髄など)の種々の供給源とのインキュベーションに適した医療用グレードポリエチレン(PE)バッグ中で貯蔵および使用される。空気もしくは1種以上の不活性ガスのオーバーレイはまた、本明細書に記載される組成物の貯蔵および安定性という特性を改善するために、上記容器内で使用され得る。このような組成物と、種々の治療適用(例えば、エキソビボ治療適用)において上記組成物をどのように利用するかに関する説明書のキットもまた含まれる。このような特性とともに、本発明の組成物は、インビトロ、エキソビボ、および/もしくはインビボ適用のためにプロスタグランジンEPリガンドの既に公知の組成物の使用と別の点で関連した望ましくない特徴のうちの多くを予測外に回避する。
【0032】
特定の実施形態において、本明細書に提供される改善された組成物を使用して、骨髄由来幹細胞(例えば、造血幹細胞)の数を拡大することは、移植および他の治療において、特に、血液疾患および腫瘍疾患に有用である。このような方法によれば、HSC数は、インビトロ、エキソビボ、および/もしくはインビボで増大させられ得る。このような方法は、自系ドナー移植物のかなりの数が、不十分な幹細胞、もしくはHSCを含むので、有用である。同様に、患者は、しばしば、組織適合性ドナーを見いだすことができず、移植前に、HSCの拡大のために改善された組成物の必要性が強調される。HSC数をインビトロもしくはエキソビボで増やす能力は、ドナーからより少ない細胞しか集められないことを許容し、それによって、骨髄幹細胞/末梢幹細胞採取と関連する時間および不快さを軽減し、自発的なHSCドナーのプールを増大させる。
【0033】
本発明の組成物はまた、臍帯血および他の細胞移植治療の使用を拡大するために有用であり得る。臍帯血バンクは広く行き渡っており、幅広く種々のドナー細胞(すなわち、組織適合性タイプ)を含むが、実践目的で、これらバンクからの臍帯血は、しばしば、子供における使用に制限されている。この制限は、成人幹細胞治療が、比較的かなりの数の幹細胞を必要とし、そしてこの目的では、大部分の臍帯血サンプルは、不適切な幹細胞数を含むことが主な原因にある。従って、臍帯血中の幹細胞数を増大させるための組成物および方法は、この豊富かつ様々な供給源のHSCが成体幹細胞治療において有用であることを可能にし、それによって、成体のための同種異系移植の利用可能性および有用性を拡大する。本発明の組成物は、当業者によって明らかなこれらおよび他の用途および利点を提供する。
【0034】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似もしくは等価な任意の方法および材料が、本発明の実施もしくは試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が、記載される。本発明の目的のために、以下の用語が以下に定義される。本明細書で言及される全ての参考文献は、それら全体が本明細書に参考として援用される。
【0035】
冠詞「1つの、ある(a)」および「1つの、ある(an)」は、上記冠詞の文法的対象の1つもしくは1つより多くに(すなわち、少なくとも1つに)言及するために、本明細書で使用される。例示すると、「1つの要素(an element)」とは、1つの要素もしくは1つより多くの要素を意味する。「約」とは、参照する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量もしくは長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%程度だけ変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量もしくは長さを意味する。
【0036】
「薬剤」とは、本明細書で使用される場合、一般に、プロスタグランジンEPレセプターに結合するかもしくはこれと機能的に相互作用し、そして/または細胞中のサイクリックAMPレベル(例えば、細胞内レベル)もしくは活性を増大もしくは増強する任意の化合物、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、炭水化物、脂肪酸、もしくは他の分子に関する。特定の実施形態において、「薬剤」は、これら特徴のうちの1つもしくは両方を、例えば、EPレセプターと相互作用しかつサイクリックAMPレベルもしくは活性を増大させることによって、有し得る。特定の実施形態において、薬剤は、例えば、EPレセプターとは無関係にcAMPレベルを増大させることによって、これら活性のうちの1つのみを有し得る。実施形態は、このような薬剤の遊離酸もしくは遊離塩基形態、ならびにこのような薬剤の薬学的な塩(例えば、リチウム、ナトリウムなど)およびエステル誘導体を含み、これらは、必要に応じて、任意の適切な位置(例えば、利用可能なヒドロキシルもしくはカルボキシル基の酸素原子)で改変され得る(例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties,Selection, and Use. P.Heinrich Stahl & Camille G. Wermuth, Editors,Wiley−VCH;1st Edition(2002年6月15日)(その全体は本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0037】
本明細書全体を通じて、文脈が別段必要としなければ、語句「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」および「含む、包含する(comprising)」は、示される工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群の包含を意味し、いかなる他の工程もしくは要素も、工程もしくは要素の群も排除することを意味しないことが理解される。
【0038】
用語「生物学的材料(biological material)」とは、任意の生きている生物学的材料(細胞、組織、器官、および/もしくは生物が挙げられる)、およびこれらの任意の組み合わせに言及する。本発明の方法が、生物の一部に対して(例えば、細胞において、組織において、および/もしくは1つ以上の器官において)、その部分が、上記生物内にあるままであろうが、上記生物から取り出されていようが、または完全な生物に対してであろうが、行われ得ることが企図される。さらに、細胞もしくは組織の状況において、同種および異種、両方の細胞集団は、本発明の実施形態の対象であり得ることが企図される。用語「インビボの生物学的物体(in vivo biological matter)」とは、インビボに存在する(すなわち、なお生物内にあるかもしくは生物に付着している)生物学的物体に言及する。さらに、用語「生物学的物体」は、用語「生物学的材料」と類義語であると理解される。特定の実施形態において、1個以上の細胞、組織、もしくは器官が、生物から分離されていることが企図される。用語「単離される」および「エキソビボ」とは、一般に、このような生物学的材料を記述するために使用される。本発明の方法は、インビボで、単離された、および/もしくはエキソビボの生物学的材料に対して行われ得ることが企図される。
【0039】
「〜からなる」とは、語句「〜からなる」が続くもの全てを含み、かつこれに限定されることを意味する。従って、語句「〜からなる」とは、その列挙された要素が、必須であるかまたは強制であり、他の要素が存在しないであろうことを示す。
【0040】
「〜から本質的になる」とは、上記語句の後ろに列挙された任意の要素を含むこと、および上記列挙された要素についての開示で特定される活性も作用も顕著に妨害しないか、または上記活性にも作用にも寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、語句「〜から本質的になる」とは、上記列挙された要素が、必須であるかもしくは強制であるが、他の要素は、選択肢的でありかつ上記列挙された要素の活性もしくは作用に顕著な(例えば、統計学的に)影響を及ぼすか否かに依存して、存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0041】
化合物(例えば、有機化合物)に関して、「アナログ」もしくは「誘導体」とは、構造および機能において別の化学物質に類似し、しばしば、単一の要素もしくは基によって構造的に異なるが、親の化合物と同じ機能を保持していれば、1個より多くの基(例えば、2個、3個、もしくは4個の基)の修飾によって異なり得る化学分子に関する。このような修飾は、当業者には慣用的であり、例えば、さらなるもしくは置換された化学部分(例えば、酸のエステルもしくはアミド)、保護基(例えば、アルコールもしくはチオールについてはベンジル基、およびアミンについてはtert−ブトキシカルボニル基)が挙げられる。アルキル側鎖への修飾(例えば、アルキル置換(例えば、メチル、ジメチル、エチルなど))、側鎖の飽和もしくは不飽和のレベルへの修飾、および修飾された基(例えば、置換されたフェニルおよびフェノキシ)の付加もまた、含まれる。誘導体はまた、結合体(例えば、ビオチンもしくはアビジン部分)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)を含み得、放射性標識された部分、生体発光部分、化学発光部分、もしくは蛍光部分を含む。また、ある部分は、薬物動態特性を変化させるために(例えば、他の望ましい特性の中でも、インビボもしくはエキソビボでの半減期を増大させるために、またはそれらの細胞浸透特性を増大させるために)、本明細書に記載される薬剤に添加され得る。また、プロドラッグが含まれ、これは、医薬の多くの望ましい品質を高めることが公知である(例えば、溶解度、バイオアベイラビリティー、製造など)(例えば、例示的EPアゴニストプロドラッグについては、WO/2006/047476(これは、このようなアゴニストのその開示について参考として援用される)を参照のこと)。
【0042】
ポリペプチドに関して、「誘導体」とは、改変(例えば、他の化学的部分との結合体化もしくは複合体化(例えば、peg化))によって、または当該分野で理解されるように、翻訳後修飾技術によって、基本的配列から得られたポリペプチドをいう。用語「誘導体」はまた、その範囲内で、親配列に対して行われた改変(機能的に等価な分子もしくは機能的に改善された分子を提供する付加、欠失、および/もしくは置換を含む)を含む。
【0043】
「酵素条件」とは、任意の必要な条件が、上記薬剤を機能させる環境中で利用可能であること(すなわち、温度、pH、阻害物質の欠如などのような因子)を意味する。酵素反応条件は、インビトロもしくはエキソビボ(例えば、試験管の中)、またはインビボ(例えば、被験体内)のいずれかであり得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「機能、機能する」および「機能的な」などは、一般に、生物学的機能もしくは酵素的機能に言及する。
【0045】
「単離される」とは、天然の状態で通常は付随する成分を実質的にもしくは本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたリガンド」、「単離されたHSC」もしくは「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用される場合、その天然の細胞環境からの、および上記細胞もしくは組織の他の成分との結合からの、リガンド(例えば、プロスタグランジン)もしくはポリペプチド分子のインビトロもしくはエキソビボでの単離および/または精製/富化(すなわち、インビボでの物質と顕著に結合していない)に言及する。
【0046】
「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーならびにその改変体および合成アナログに言及するために、本明細書で交換可能に使用される。従って、これら用語は、1もしくは数個のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸(例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログ)であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに言及する。特定の局面において、ポリペプチドは、代表的には、種々の化学反応を触媒する(すなわち、化学反応速度を増大させる)酵素的ポリペプチド、もしくは「酵素」を含み得る。
【0047】
「増強する、高める(enhance)」、もしくは「増強する、高める(enhancing)」、または「増大する、させる(increase)」もしくは「増大する、させる(increasing)」とは、一般に、薬剤もしくは組成物が、薬剤なし、もしくはコントロール分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、細胞においてより大きな生理学的応答(すなわち、下流効果)を生じるかもしくは引き起こす能力をいう。測定可能な生理学的応答は、とりわけ、当該分野での理解および本明細書中の説明から明らかな、より大きな細胞増殖もしくは拡大を含み得る。「増大した」量もしくは「高められた」量とは、代表的には、「実質的に顕著な」量であり、薬剤なし(薬剤の非存在)もしくはコントロール組成物によって生じる量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍以上(例えば、500倍、1000倍)(1の間および1より大きい全ての整数および小数点を含み、例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍など)である増大を含み得る。
【0048】
以下でより詳細に記載される「サイクリックAMP(cAMP)エンハンサー」とは、一般に、薬剤なしもしくはコントロール分子/組成物と比較して、より多量の細胞中のcAMP、または細胞中のより多量のcAMP活性、またはcAMP関連シグナル伝達経路の任意の他の関連成分、またはcAMPシグナル伝達経路の測定可能な下流の生理学的応答もしくは効果を生じるかまたは引き起こす薬剤に言及する。測定可能な下流の効果としては、とりわけ、当該分野での理解および本明細書中の説明から明らかな、より多量の幹細胞増殖もしくは拡大が挙げられ得る。cAMPエンハンサーは、代表的には、レセプターもしくは細胞の他の分子に結合し、かつ上記細胞による応答を引き起こす「アゴニスト」、および代表的には、(例えば、cAMPの分解をブロックする(例えば、ホスホジエステラーゼをブロックする)ことによって)ある作用に対して作用し、ブロック/阻害する「アンタゴニスト」を含み得る。また、cAMPアナログを含む。
【0049】
cAMPエンハンサーの例としては、ジブチリルcAMP(DBcAMP)、ホルボールエステル、フォルスコリン、スクラレリン、8−ブロモ−cAMP、コレラ毒素(CTx)、アミノフィリン、2,4 ジニトロフェノール(DNP)、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、カフェイン、テオフィリン(ジメチルキサンチン)、ドパミン、ロリプラム、イロプロスト、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、および血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
以下でより詳細に記載される「プロスタグランジンEPレセプターに対するリガンド」とは、代表的には、本明細書に記載され、当該分野で公知のように、プロスタグランジンEPレセプターと関連する下流のシグナル伝達経路のうちの1つ以上を活性化もしくは増大させるための、一般には、EPレセプターに結合および/またはこれと相互作用する任意の天然に存在する分子または合成の化学的分子またはポリペプチドに言及する。プロスタグランジン(PGE)(例えば、「PGE」ならびにその「アナログ」もしくは「誘導体」)が、この定義内に含まれる。プロスタグランジンは、一般に、20個の炭素原子(本明細書に記載され、当該分野で公知であるように、5炭素環を含む)を含む脂肪酸から得られるホルモン様分子に関する。
【0051】
PGE「アナログ」もしくは「誘導体」の例としては、16,16−ジメチルPGE、16−16 ジメチルPGE p−(p−アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11−デオキシ−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレン−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレンPGE、9−ケトフルプロステノール、5−トランスPGE、17−フェニル−ω−トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16−フェニルテトラノルPGE、15(S)−15−メチルPGE、15(R)−15−メチルPGE、8−イソ−15−ケトPGE、8−イソPGEイソプロピルエステル、20−ヒドロキシPGE、11−デオキシPGE、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15−ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEが挙げられるが、これらに限定されない。9位においてハロゲンで置換されたPGEに類似の構造を有するPGアナログもしくは誘導体(例えば、WO 2001/12596(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、ならびに2−デカルボキシ−2−ホスフィニコプロスタグランジン誘導体(例えば、米国特許公開第2006/0247214号(その全体が本明細書に参考として援用される)に記載されるもの)もまた、含まれる。
【0052】
リガンドは、代表的には、細胞のレセプターに結合し、上記細胞による応答を引き起こし、しばしば、天然に存在する物質の作用を模倣する「アゴニスト」を含む。特定の実施形態において、リガンドは、代表的には、ある作用に対して作用し、ブロック/阻害する「アンタゴニスト」を含む。
【0053】
「プロスタグランジンEPレセプター」は、一般に、上記EPレセプターファミリー内のGタンパク質共役レセプターの4つのサブタイプ(EP、EP、EP、およびEPといわれる)のうちのいずれか1つに関する。
【0054】
記載「非PGEベースのリガンド」とは、PGEリガンドに比較的構造的に関連しない(すなわち、必ずしもPGEアナログもしくは誘導体ではないが、別の点で、EPレセプターに結合できるかもしくはEPレセプターを刺激できる)分子をいう。個々の非PGEベースのリガンドは、上記EPレセプターのうちのいずれか1つ以上を刺激し得、従って、EPアゴニスト、EPアゴニスト、EPアゴニスト、および/もしくはEPアゴニスト(これらの任意の組み合わせを含む)として特徴付けられ得る。非PGEベースのEPアゴニストの例としては、ONO−DI−004およびONO−8713が挙げられる。非PGEベースのEPアゴニストの例としては、CAY10399、ONO_8815Ly、ONO−AE1−259、およびCP−533,536が挙げられる。非PGEベースのEPアゴニストの例としては、AE5−599、MB28767、GR 63799X、ONO−NT012、およびONO−AE−248が挙げられる。非PGEベースのEPアゴニストの例としては、ONO−4819、APS−999 Na、AH23848、およびONO−AE1−329が挙げられる。非PGEベースのEPアゴニストのさらなる例としては、WO 2007/071456(このような薬剤の開示について、参考として援用される)に開示されるカルバゾールおよびフルオレンが挙げられる。非PGEベースのEPアゴニストのさらなる例は、WO/2000/038663;米国特許第6,747,037号;および米国特許第6,610,719号(これらの各々は、このようなアゴニストの開示について、参考として援用される)において見いだされ得る。
【0055】
特定の実施形態において、本発明の組成物中の薬剤の「濃度」は、濃度の標準単位(例えば、モル濃度(例えば、μM、mMなど))によって規定され得る。例えば、特定の実施形態において、上記薬剤は、最終濃度約100nM〜約10mM、もしくは約1mM〜約10mM、もしくは約100nM〜約1μM、もしくは約10mMで、適した有機溶媒中に存在し得る。
【0056】
特定の実施形態において、上記濃度は、その生物学的活性(例えば、選択された薬剤の「IC50」、「EC50」および/もしくは「EC90」が挙げられる)によって規定され得る。上記「IC50」もしくは最大半量阻害濃度とは、生物学的機能もしくは生化学的機能を阻害することにおいて、ある薬剤もしくは組成物の有効性の尺度に言及する。この定量的な尺度は、どのくらいの特定の薬剤が、所定の生物学的プロセスもしくはプロセスの要素を半分だけ阻害するために必要とされるかを示し、薬理学的研究において「アンタゴニスト」薬物効力の尺度として一般に使用される。ときおり、この尺度は、pIC50スケール(−log IC50)に変換され得、ここでより高い値は、指数関数的により大きな効力を示す。米国食品医薬品局(FDA)によれば、IC50は、インビトロで50%阻害に必要とされる薬物の濃度を表す。
【0057】
用語「EC50」もしくは最大半量効果濃度とは、ベースラインと最大との間の応答中間点を誘導するある薬剤もしくは組成物の濃度に言及し、アゴニスト/刺激因子の薬物効力の尺度として一般に使用される。段階的用量応答曲線(graded dose response curve)のEC50は、ある薬剤もしくは組成物の濃度であって、その最大効果の50%が認められるものを表す。同様に、量子的用量応答曲線(quantal dose response curve)のEC50は、ある薬剤もしくは組成物の濃度であって、集団のうちの50%が応答を示すものを表す。EC50はまた、インビボで最大効果の50%を得るために必要とされる血漿濃度を表す。同様に、「EC90」とは、最大効果の90%が認められる、ある薬剤もしくは組成物の濃度に言及する。上記「EC90」は、上記「EC50」およびHillの傾きから計算され得るか、または当該分野で慣用的な知識を使用して、上記データから直接決定され得る。
【0058】
特定の実施形態において、エキソビボ処理容器へと分配される場合に、EPリガンドの最終濃度は、そのEPレセプター結合親和性および/もしくはEPレセプター活性化の上記IC50もしくはEC50に少なくとも匹敵し得る。別の例として、特定の実施形態において、上記濃度は、そのEPレセプター結合親和性および/もしくはEPレセプター活性化のEC90の少なくとも約10倍であり得る。特定の実施形態において、上記EPリガンドは、エンドトキシンを含まない容器へ導入する前に、上記リガンドのEC90の5%以上であるEC90を示す。特定の実施形態において、例えば、上記リガンドが、16,16−ジメチルPGEである場合、上記リガンドは、例えば、コロニー形成単位(CFU)アッセイによって測定される場合、エンドトキシンを含まない容器に導入する前に上記リガンドの同じバッチのEC50の約10%以内であるEC50を示す。CFUアッセイは、当該分野で公知である。
【0059】
EPレセプター結合親和性およびEPレセプター活性化は、当該分野で慣用的であり、本明細書に記載される技術に従って測定され得る。例えば、マウスEPレセプターに対する親和性を測定するための詳細な準備は、Kirimayaら(Br J Pharmacol.122:217−24,2007)(その全体が本明細書に参考として援用される)に概説されている。同様に、ヒトレセプターに対する親和性を測定する準備は、WO 2005/061449(例えば、第71頁を参照のこと)(その全体が本明細書に参考として援用される)に記載されている。結合親和性は、上記個々の4つのレセプターサブタイプであるEP、EP、EPおよびEP(これらの組み合わせを含む)のうちのいずれか、ならびに他の抗標的(例えば、プロスタノイドレセプターDPおよびIP)について測定され得る。特定の実施形態において、結合親和性は、EPおよび/もしくはEPレセプターについて測定され得、他のものについては、抜き取り検査され得る。
【0060】
EPレセプター活性化および/もしくはEPリガンド機能アッセイはまた、当該分野で公知である。例えば、EPレセプターおよびEPレセプターの活性化は、細胞内cAMPレベルを増大させ、このレベルは、標準的機能アッセイに従ってモニターされ得る。特定の例として、WO 2005/061449(その全体が本明細書に参考として援用される)は、上記EPレセプターにおける機能的効力をモニターするための一般的手順を記載している(第73頁を参照のこと)。類似のアッセイは、上記EPおよび他のEPレセプターに関して利用可能である。
【0061】
記載「有機溶媒」もしくは「適した有機溶媒」とは、一般に、固体、液体、もしくはガス様溶質を溶解して、溶液を生じる炭素含有液体もしくは炭素含有ガスに関する。「適した有機溶媒」は、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与もしくは哺乳動物細胞とのインキュベーションに適したものであり、また、被験体へのインビボ投与に(例えば、インキュベーションもしくは投与の時間について選択された濃度において、エキソビボ条件(例えば、細胞培養)下で、またはインビボで、最小限の毒性効果もしくは他の阻害効果を有することによって)適切であり得る。適した有機溶媒はまた、本明細書に記載される薬剤の貯蔵安定性および取り扱いに適しているべきである。適した有機溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、およびジメチルアセトアミド(これらの混合物もしくは組み合わせを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、組成物もしくは有機溶媒は、酢酸メチルを「実質的に含まず」、これは、上記組成物もしくは溶媒中に、僅か微量の、好ましくは、検出不可能な量の(例えば、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)などによって測定される場合に)酢酸メチルしか存在しないはずであることを意味する。
【0062】
記載「エンドトキシンを含まない」とは、一般に、せいぜい微量(すなわち、被験体への有害な生理学的影響を有さない量)のエンドトキシン、および好ましくは、検出不可能な量のエンドトキシンを含む、組成物、溶媒、および/もしくは容器に関する。エンドトキシンは、特定の細菌(代表的には、グラム陰性細菌)と関連した毒素であるが、エンドトキシンは、グラム陽性細菌(例えば、Listeria monocytogenes)において見いだされ得る。最も一般的なエンドトキシンは、種々のグラム陰性細菌の外膜に見いだされるリポポリサッカリド(LPS)もしくはリポ−オリゴ−サッカリド(LOS)であり、これは、これらの細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原性の特徴を示す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、有害な生理学的効果の中でもとりわけ、発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化を生じ得る。
【0063】
従って、医薬製造において、大部分もしくは全ての微量のエンドトキシンを薬物製品容器から除去することは、しばしば望ましい。なぜなら、少量ですら、ヒトにおいて有害な影響を引き起こし得るからである。300℃を超える温度が、代表的には、大部分のエンドトキシンを分解するために必要とされるので、発熱物質除去(depyrogenation)オーブンは、この目的のために使用され得る。例えば、主なパッケージング材料(例えば、シリンジもしくはバイアル)に基づいて、ガラス温度250℃および保持時間30分の組み合わせが、しばしば、エンドトキシンレベルの、3対数低下を達成するために十分である。
【0064】
エンドトキシンは、当該分野で公知の慣用的技術を使用して検出され得る。例えば、Limulus Ameobocyte Lysateアッセイ(これは、カブトガニに由来する血液を利用する)は、エンドトキシンの存在を検出するための高感度なアッセイである。この試験において、非常に低レベルのLPSは、この反応を増幅する強力な酵素カスケードに起因して、上記カブトガニ溶解物の検出可能な凝固を引き起こし得る。
【0065】
特定の実施形態において、組成物中の任意の所定の薬剤の「純度」は、具体的に規定され得る。例えば、特定の組成物は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)(化合物を分離し、同定し、定量するために、生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィの周知の形態)によって測定される場合に、少なくとも90%純粋、91%純粋、92%純粋、93%純粋、94%純粋、95%純粋、96%純粋、97%純粋、98%純粋、99%純粋、もしくは100%純粋(間の全ての小数を含む)である薬剤を含み得る。
【0066】
「不活性ガス」とは、本明細書で使用される場合、要素と反応性でない任意のガスに関する。特定の実施形態は、上記組成物中に「不活性ガス」(例えば、不活性ガスオーバーレイ)を含み得る。不活性ガスは、例えば、本発明の薬剤の貯蔵安定性を(例えば、酸素含有量を低下させることによって)増大させるために、利用され得る。不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン、煙道ガス、およびときおり、二酸化炭素、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
同様に、特定の実施形態は、「空気オーバーレイ」を使用し得、これは、一般に、薬剤含有溶媒と、容器の蓋もしくは他の部分との間のエアスペースをいう。特定の局面において、上記空気オーバーレイは、当該分野で公知であるように、改変を加えていない空気、もしくは酸素含有量の低下した空気(例えば、不活性ガスと混合した空気)が挙げられ得る。
【0068】
「容器」は、一般に、本発明の組成物を貯蔵および/もしくは投与するための任意の適した入れ物に関し、代表的には、本明細書で記載されかつ当該分野で公知であるように、エンドトキシンを含まない。容器は、任意のタイプの貯蔵条件(例えば、室温条件および/もしくは低温貯蔵条件)に適切であり得る。「容器」はまた、本発明の組成物に加えて、例えば、エキソビボ治療適用中、細胞(例えば、HSC)を含むために適切であり得る(例えば、上記細胞を、選択された容器(例えば、PEバッグもしくはポリ塩化ビニル(PVC)バッグ)内で上記組成物とインキュベートするか、または上記組成物に曝露する)。容器の例としては、バッグ(例えば、医療用グレードのPEおよび/もしくはPVCのバッグなど)、パウチ、カプセル、バイアル、チューブ(例えば、微小遠心管、エッペンドルフチューブ(登録商標)、ファルコン(登録商標)コニカルチューブなど)、ボトル、ディッシュ(例えば、ペトリ皿など)、インプラントデバイス(例えば、コラーゲンスポンジなど)、フラスコ、バイオリアクタ、およびシリンジが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記容器は、使い捨て容器である。また、特定の実施形態において、上記容器は、本発明の薬剤(例えば、PGE、もしくはアナログ)のうちの1種以上でコーティングされ得る。本発明の実施形態はまた、この容器のトレイ、および容器もしくはこのような容器のトレイを含むキットを包含する。
【0069】
記載「医薬品の製造管理及び品質管理規則(GMP)」とは、一般に、製造の制御および管理、ならびに食品、医薬品、および医療用デバイスの品質制御試験に関する。GMPは、必ずしもサンプリングに依拠するわけではなく、代わりに、薬物および医療用デバイス製造と関わるプロセス、活動、および操作のあらゆる局面の証拠書類に依拠する。上記製品がいかにして作製され試験されたかを示す証拠書類(これは、追跡および、将来、問題があれば市場からリコールすることを可能にする)が正しくなく、合法でない場合、上記製品は、必要とされる仕様を満たさず、汚染されているとみなされる(すなわち、米国において法定基準に合っていない)。さらに、GMPは、代表的には、全ての製造および試験設備が、使用に適切であるとの資格が与えられていること、および薬物製造プロセスにおいて利用される全ての操作方法論および手順(例えば、製造、クリーニング、および分析試験)が、それらの意図された機能を発揮し得ることを実証するために、所定の仕様に従って確証されていることを必要とする。米国において、語句「現在の医薬品の製造管理及び品質管理規則」は、1938 連邦食品、医薬品、化粧品法(Food, Drug, and Cosmetic Act)の501(B)(21 U.S.C. § 351)に見られる。
【0070】
「造血幹細胞(HSC)」は、一般に、血球タイプを生じる多能性(pluripotent)もしくは多分化能(multipotent)「幹細胞」のいずれかに関し、これらのタイプとしては、骨髄系統(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ球系統(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、ならびに当該分野で公知の他のものが挙げられる。「幹細胞」は、代表的には、複数の細胞タイプを形成するそれらの能力(すなわち、多能性)およびそれらの自己再生能力によって定義される。しかし、特定の実施形態において、少能性(oligopotent)および単能性(unipotent)前駆細胞が、含まれ得る。
【0071】
「造血」とは、一般に、HSCからの細胞分化もしくは特定の専門化された血球の形成のプロセスに関する。発生の間に、造血は、胎児肝臓から骨髄へと位置を変え、その後、骨髄は、成人期を通じて造血部位のままである。骨髄中でいったん確立されると、HSCは、骨空洞全体に無作為には分布しない。むしろ、HSCは、代表的には、骨内膜表面付近に見いだされる。より成熟した幹細胞は、骨表面からの距離が増すにつれて、数を増やす。最終的には、中心長手軸に近づき、最終分化が生じる。
【0072】
造血組織は、代表的には、長期間および短期間の再生能力を有する細胞、ならびに分化決定(commited)多能性、少能性、および単能性の前駆細胞を含む。近年では、長期間の移植実験が、造血幹細胞のクローン性多様性モデルを指摘している。このようなモデルにおいて、上記HSC区画は、確定した数の異なるタイプのHSCからなり、各々は、後成的に予めプログラムされた挙動を有する。HSCは、骨髄組織中の細胞の約1:10,000(骨髄組織中の細胞)を構成すると考えられる。
【0073】
HSCは、当該分野で公知の技術に従って得られ得る。例えば、HSCは、大腿骨、寛骨、肋骨、胸骨などの骨を含む、成人の骨髄において見いだされ得る。HSCは、針およびシリンジを使用して寛骨から、もしくは血液から取り出すことによって、しばしば、骨髄区画から放出されるように細胞を誘導するサイトカイン(例えば、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)での前処理後に、直接得られ得る。臨床的使用および科学的使用のための他の供給源としては、臍帯血、胎盤、および動員末梢血が挙げられる。実験目的で、動物の胎児肝臓、胎児脾臓、およびAGM(大動脈−性腺−中腎)もまた、HSCの有用な供給源である。
【0074】
HSCは、特定の表現型もしくは遺伝子型マーカーに従って同定され得る。例えば、HSCは、それらの小さなサイズ、系統(lin)マーカーを欠いていること、生体染色色素、例えば、ローダミン123(ローダミンDULL(rholoともいわれる))もしくはHoechst 33342での染色が低いこと(サイドポピュレーション(side population))、およびそれらの表面に種々の抗原性マーカーが存在すること(そのうちの多くは、分化シリーズのクラスタ(例えば、CD34、CD38、CD90、CD133、CD105、CD45、およびc−kit(幹細胞因子のレセプター))に属する)によって同定され得る。HSCは、代表的には、分化系統決定(lineage commitment)を検出するために使用されるマーカーについて主に陰性であり、よって、しばしば、lin(−)細胞といわれる。大部分のヒトHSCは、CD34、CD59、Thy1/CD90、CD38lo/−、C−kit/CD117、およびlin(−)と特徴付けられ得る。しかし、特定のHSCは、CD34/CD38であるので、必ずしも全ての幹細胞が、これら組み合わせによって網羅されるわけではない。また、いくらかの研究は、最初期の幹細胞が、細胞表面上にc−kitを欠き得ることを示唆する。ヒトHSCについては、CD133は、CD34 HSCおよびCD34 HSCの両方が、CD133であることが示されたので、初期マーカーを代表し得る。
【0075】
lin(−)HSCをフローサイトメトリーもしくはFACSによって精製するために、一連の成熟血液系統マーカー抗体が、上記lin(+)細胞もしくは後期多能性前駆体(MPP)を除去するために使用され得、上記抗体としては、例えば、当該分野で公知のものの中でもとりわけ、ヒト骨髄細胞については、CD13に対する抗体およびCD33に対する抗体、ヒト赤血球についてはCD71に対する抗体、ヒトB細胞についてはCD19に対する抗体、ヒト巨核球細胞については、CD61に対する抗体、単球については、Mac−1(CD11b/CD18)に対する抗体、顆粒球については、Gr−1に対する抗体、T細胞については、Il7Raに対する抗体、CD3に対する抗体、CD4に対する抗体、CD5に対する抗体、およびCD8に対する抗体が挙げられる。他の精製法は、当該分野で公知であり、例えば、細胞表面分子の「シグナル伝達リンパ球活性化分子」(SLAM)ファミリーの特定のシグナチャを使用する方法がある。
【0076】
HSCは、臍帯血由来であろうと、骨髄由来であろうと、末梢血由来であろうと、他の供給源由来であろうと、所望のように、血清ありまたはなしで、任意の適切な市販のもしくは特注の規定された培地中で増殖もしくは拡大され得る(例えば、Hartshornら,Cell Technology for Cell Products,221〜224頁,R.Smith,Editor;Springer Netherlands,2007(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。例えば、特定の実施形態において、無血清培地は、無血清培地中のCD34+細胞の増殖および拡大に有用であることが示されたアルブミンおよび/もしくはトランスフェリンを利用し得る。また、サイトカインとしては、とりわけ、例えば、Flt−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、およびトロンボポエチン(TPO)が挙げられ得る。HSCはまた、容器(例えば、バイオリアクタ(例えば、Liuら,Journal of Biotechnology 124:592−601,2006(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)中で増殖させられ得る。HSCのエキソビボ拡大のために適した培地はまた、例えば、リンパ組織の分離から得られ得、HSCのインビトロ、エキソビボ、およびインビボでの維持、増殖、および分化、ならびにそれらの子孫を支持することが示されたHSC支持細胞(例えば、間質細胞(例えば、リンパ網内間質細胞))を含み得る。
【0077】
「造血幹細胞(HSC)の増殖もしくは拡大」とは、当該分野で公知の慣用的技術に従って、インビトロもしくはインビボで測定され得る。例えば、WO 2008/073748(これら方法について本明細書に参考として援用される)は、HSCのインビボおよびインビトロでの拡大を測定するための方法、ならびに例えば、中間の前駆細胞のような潜在的に異種の集団(例えば、骨髄)において、HSCの増殖/拡大と、他の細胞の増殖/拡大との間を区別するための方法を記載する。上記増殖もしくは拡大を生じる投与工程もしくはインキュベーション工程は、インビボで、エキソビボで、もしくはインビトロで起こり得るが、特定の実施形態において、上記投与もしくはインキュベーションは、HSCのエキソビボ処理の間に起こる。HSCおよびHSC支持細胞の拡大されていない集団は、本明細書に記載されるように、プロスタグランジン、プロスタグランジンレセプターアゴニスト、もしくはcAMPエンハンサーへの曝露前の、もしくはそれらの実質的な非存在下での、HSC集団に言及する。
【0078】
「臍帯血(cord blood)」もしくは「臍帯血(umbilical cord blood)」は、一般に、臍帯が早期にクランプ止めされなければ、新生児循環に戻る新生児に由来する比較的少量の血液(最大約180mLまで)に関する。臍帯血は、HSCが豊富であり、当該分野で公知の技術に従って、後の使用のために採取および貯蔵され得る(例えば、米国特許第7,147,626号および同第7,131,958号(このような方法論について本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。また、上記臍帯血が最終的にクランプ止めされなければ、生理学的締め付け(clamping)が、冷たい空気との相互作用の際に生じ、ここで上記内部ゼラチン様物質(Whartonゼリーといわれる)は、臍帯動脈および臍帯静脈の周囲で膨張する。にも関わらず、Whartonゼリーは、幹細胞の供給源としてなお機能し得る。
【0079】
上記のように、「エキソビボ」とは、一般に、生物の外で行われる活動に言及する(例えば、上記生物の外の人工的な環境で生きている組織においてもしくは生きている組織に対して、好ましくは、天然の状態の最小限の改変を伴って行われる実験もしくは測定)。最も一般には、「エキソビボ」手順とは、生物から採取され、実験装置中で、通常は、無菌条件下で、代表的には、数時間にわたって、もしくは最大約24時間にわたって(しかし、環境に依存して、最大48時間もしくは72時間を含む)培養された、生きている細胞もしくは組織を必要とする。特定の実施形態において、このような組織もしくは細胞は、採取および凍結され得、後にエキソビボ処理のために解凍され得る。生きている細胞もしくは組織を使用する、数日間より長く続く組織培養実験もしくは手順は、代表的には、「インビトロ」とみなされるが、特定の実施形態において、この用語は、エキソビボと交換可能に使用され得る。
【0080】
記載「エキソビボ投与」、「エキソビボ処理」、もしくは「エキソビボ治療的使用」とは、一般に、1種以上の器官、細胞、もしくは組織が、生きているかもしくは死亡したばかりの被験体から得られ、必要に応じて精製/富化され、上記幹細胞を拡大するための処理もしくは手順(例えば、上記細胞と、本発明の組成物とをインキュベートして、望ましい細胞(例えば、HSC)の拡大を高める工程を包含するエキソビボ投与工程)に曝露され、その後、選択肢的な処理もしくは手順の後に、同じかもしくは異なる、生きている被験体に投与される医学的手順に関する。
【0081】
このようなエキソビボ治療適用はまた、選択肢的なインビボ処置もしくは手続き上の工程(例えば、上記器官、細胞、もしくは組織の投与後に、本発明の組成物を1回以上生きている被験体に投与することによる)を含み得る。局所投与および全身投与の両方が、当該分野で周知の技術に従って、これら実施形態について企図される。被験体に投与される薬剤の量は、その被験体の特徴(例えば、全身的な健康状態、年齢、性別、体重および薬物への耐性、ならびに上記薬物および/もしくは細胞移植物への反応の程度、重篤度およびタイプ)に依存する。
【0082】
「被験体」とは、本明細書で使用される場合、本発明の薬剤もしくは組成物もしくはデバイスで処置され得るか、または本発明の薬剤もしくは組成物で、エキソビボで処理されたHSCもしくは臍帯血で処置され得る症状を示す任意の動物を含む。「被験体」はまた、幹細胞移植もしくは骨髄移植のための候補である誰もを含む(例えば、悪性疾患もしくは遺伝子治療の成分についての処置過程中)。被験体はまた、同種異系移植のために幹細胞もしくは骨髄を提供する個体もしくは動物を含み得る。特定の実施形態において、被験体は、放射線療法もしくは化学療法を(例えば、種々のがん処置中に)受けた可能性がある。適した被験体(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)、農場の動物、および家畜もしくはペット(例えば、ネコもしくはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類および好ましくは、ヒト患者が含まれる。代表的な被験体としては、薬剤または幹細胞もしくは骨髄移植物によって調節され得る1つ以上の生理学的活性の異常な量(「通常」もしくは「健康な」被験体より低い量もしくは高い量)を示す動物が挙げられる。
【0083】
「処置」もしくは「処置すること」とは、本明細書で使用される場合、ある疾患もしくは病的状態の症状もしくは病理に対する任意の望ましい効果を含み、処置される疾患もしくは状態の1種以上の測定可能なマーカーにおける最小限の低下すら含み得る。「処置」は、上記疾患もしくは状態、またはその関連した症状の完全な根絶もしくは治癒を必ず示す必要はない。この処置を受けている上記被験体は、その必要がある任意の動物であり、霊長類(特に、ヒト)、および他の哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタおよびヒツジ);ならびに家禽および一般のペットが挙げられる。
【0084】
用語「病原性」もしくは「病的状態」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物細胞、組織、もしくは器官(代表的には、細胞移植物ベースの治療から利益を得る可能性のあるもの)の疾患、異常な状態もしくは傷害に関する。このような病的状態としては、例えば、過剰増殖性および制御されない新生物細胞増殖、変性状態、炎症性疾患、自己免疫疾患および感染性疾患が挙げられる。過剰なもしくは制御されない細胞増殖によって特徴付けられる病的状態としては、例えば、過形成、がん、自己免疫疾患および感染性疾患が挙げられる。過形成細胞およびがん細胞は、制御されない様式で増殖し、組織および器官の破壊を引き起こす。過形成の具体例としては、良性前立腺肥大および子宮内膜増殖症が挙げられる。がんの具体例としては、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、子宮がん、脳のがんおよび皮膚がんが挙げられる。
【0085】
異常な細胞増殖はまた、外来生物が過剰増殖を引き起こす感染性疾患から生じ得る。感染性疾患はまた、組織を、例えば、アポトーシスおよび/もしくは壊死を引き起こすことによって損傷させ得、さらに、上記病的状態(例えば、高熱)を与える過剰な生物学的応答を引き起こす。病原体(例えば、ウイルスもしくは細胞内細菌)が感染した細胞の増殖は、外来生物の存在から生じる、細胞の正常な状態の変化に起因して、異常である。感染性疾患の具体例としては、DNAウイルス疾患およびRNAウイルス疾患、細菌性疾患、ならびに寄生生物性疾患が挙げられる。同様に、自己免疫疾患および炎症性疾患を媒介する細胞の増殖は、異常に制御されており、例えば、継続した増殖、ならびに組織および器官の破壊を伴う免疫機構の活性化を生じる。
【0086】
病的状態の上記のカテゴリーの具体的な言及によって、当業者は、このような用語が、これら病的状態の全てのクラスおよびタイプを含み、その特定の例が、本明細書の他の箇所に記載されていることを理解する。例えば、用語、がんは、悪性と特徴付けられようが、良性と特徴付けられようが、軟組織と特徴付けられようが、固形腫瘍と特徴付けられようが、全ての既知のがんを含むことが意図される。同様に、用語、感染性疾患、変性疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患は、これら病的状態の全てのクラスおよびタイプを含むことが意図される。
【0087】
(サイクリックAMP(cAMP)エンハンサー)
本発明のcAMPエンハンサーは、代表的には、cAMPの細胞内レベルおよび/もしくは活性を増大させるか、または維持する。最も一般には、サイクリックアデノシンモノホスフェート(cAMP、サイクリックAMPもしくは3’−5’−サイクリックアデノシン一モノホスフェート)は、多くの生物学的プロセスにおいて重要な二次メッセンジャーとして作用する。二次メッセンジャーシステムは、細胞シグナル伝達の方法に関し、それによって、拡散性のシグナル伝達分子が、迅速に特定の活性化シグナルに際して生成/分泌され、次いで、細胞応答を発揮するように上記細胞内のエフェクタータンパク質を活性化し得る。例えば、応答の中でもとりわけ、cAMPシグナル伝達は、別の方法では、細胞膜を通過できないグルカゴンおよびアドレナリンのようなホルモンの効果を伝える。cAMPはまた、イオンチャネルを介するCa2+の通過を調節する。
【0088】
cAMPは、アデニリルシクラーゼによってATPから合成され、上記アデニリルシクラーゼは、細胞膜に位置する。アデニリルシクラーゼは、幅広いシグナル伝達分子によって、例えば、アデニリルシクラーゼ刺激性G(G)共役レセプターの活性化を介して、活性化され得る。例えば、肝臓アデニリルシクラーゼは、グルカゴンに強く応答し、筋肉アデニリルシクラーゼは、アドレナリンに強く応答する。従って、cAMPおよびその関連したキナーゼは、いくつかの生化学的プロセスにおいて機能し、これらのプロセスとしては、グリコーゲン、糖、および脂質代謝の調節が挙げられる。
【0089】
上記cAMP依存性経路(アデニリルシクラーゼ経路ともいわれる)は、細胞コミュニケーションにおいて使用されるGタンパク質共役レセプター誘発シグナル伝達カスケードである。Gタンパク質共役レセプター(GPCR)は、種々の細胞外刺激に応答する内在性膜タンパク質の大きなファミリーである。各GPCRは、低分子カテコールアミン、脂質、もしくは神経伝達物質から大きなタンパク質ホルモンまでの大きさの範囲に及ぶ特定のリガンドに結合し、上記リガンド刺激によって活性化される。GPCRは、その細胞外リガンドによって活性化される場合、それは、結合した細胞内ヘテロトリマーGタンパク質複合体に伝達されるコンホメーション変化を受ける。応答において、上記刺激されたGタンパク質複合体の上記G αサブユニットは、GDPをGTPに交換し、次いで、上記複合体から放出されて、上記経路において次の工程へとシグナル伝達する。
【0090】
cAMP依存性経路において、上記活性化されたG αサブユニットは、代表的には、アデニリルシクラーゼに結合し、これを活性化し、続いて、上記のように、ATPをcAMPに変換するのを触媒する。二次メッセンジャーであるcAMPの濃度の増大は、サイクリックヌクレオチドでゲート制御されるイオンチャネル、cAMPにより活性化される交換タンパク質(EPAC)(例えば、RAPGEF3)、および/もしくはプロテインキナーゼA(PKA)の活性化をもたらし得る。cAMP依存性経路を介するGPCRとその最終的分子標的との間のシグナル伝達の特異性は、マルチタンパク質複合体(上記GPCR、アデニリルシクラーゼ、およびエフェクタータンパク質を含む)の形成を介して達成され得る。
【0091】
上記のように、サイクリックAMPは、プロテインキナーゼA(PKA、cAMP依存性プロテインキナーゼとしても公知)を活性化する。PKAは、通常、2個の触媒性ユニットおよび2個の調節ユニット(C)からなるテトラマーホロエンザイムとして不活性であり、上記調節ユニットは、上記触媒性ユニットの触媒中心をブロックする。サイクリックAMPは、PKAの調節性ユニット上の特定の位置に結合し、上記調節性サブユニットと触媒性サブユニットとを解離し、それによって上記触媒ユニットを活性化し、これらが基質タンパク質をリン酸化することを可能にする。全てのプロテインキナーゼがcAMPに応答するわけではない。なぜなら、プロテインキナーゼのいくつかのタイプは、cAMP依存性ではない(例えば、プロテインキナーゼCが挙げられる)からである。
【0092】
PKAの活性サブユニットは、ATPからタンパク質基質の特定のセリン残基もしくはスレオニン残基へのリン酸転移を触媒し得る。上記リン酸化したプロテインキナーゼは、細胞におけるイオンチャネルに対して直接作用し得るか、または他の酵素を活性化もしくは阻害し得る。PKAはまた、DNAのプロモーター領域に結合する特定のタンパク質をリン酸化し、特定の遺伝子の増大した発現を引き起こす。さらなる下流の効果は、細胞のタイプに依存して異なり得る、種々のPKAの役割に依存する。例えば、活性化PKAは、多くの他のタンパク質(例えば、グリコーゲンをグルコースに変換するタンパク質、心臓の筋収縮を促進し、心拍数の増大をもたらすタンパク質、および遺伝子発現を調節する転写因子が挙げられる)をリン酸化し得る。
【0093】
cAMP活性は、種々の機構によって負に調節され得る。例えば、上記G αサブユニットは、GTPからGDPへの加水分解をゆっくりと触媒し、続いて、上記Gタンパク質を不活性化し、それによって、上記cAMP経路を遮断する。上記cAMP経路はまた、アデニリルシクラーゼを直接阻害することによって、またはPKAによってリン酸化される上記タンパク質を脱リン酸化することによって下流で不活性化され得る。アデニリルシクラーゼ(および従って、cAMP生成)は、アデニリルシクラーゼ阻害性G(G)タンパク質共役レセプターのアゴニストによって阻害され得る。AMPへのcAMP分解は、酵素ホスホジエステラーゼによって触媒され、これはまた、cAMPシグナル伝達の負の調節因子として作用し得る。
【0094】
cAMP経路を阻害する分子の例としては、例えば、cAMPホスホジエステラーゼ(この酵素は、cAMPをAMPに脱リン酸化し、cAMPレベルを低下させる);Gタンパク質(これは、アデニリルシクラーゼを阻害し、それによってcAMPレベルを低下させる);および百日咳毒素(これは、cAMPレベルを低下させる)が挙げられる。
【0095】
本発明のcAMPエンハンサーは、代表的には、cAMP経路における段階のいずれかにおいてその経路を活性化させ得るか、またはcAMPの負の調節(例えば、分解)を妨ぐことができ、cAMPエンハンサーとしては、化学物質、ポリペプチド、抗体、およびこのような機能的効果を有する他の分子が挙げられる。cAMP経路を活性化する例示的分子もしくは薬剤としては、例えば、コレラ毒素(これは、cAMPレベルを増大させる);フォルスコリン(アデニリルシクラーゼを活性化するジテルピン天然生成物);カフェインおよびテオフィリン(これは、cAMPホスホジエステラーゼを阻害し、Gタンパク質の活性化をもたらし、次いで、上記cAMP経路を活性化する);およびブクラデシン(ジブチリルcAMP、DBcAMP)(これはまた、ホスホジエステラーゼインヒビターである)が挙げられ得る。
【0096】
cAMPエンハンサーの例としては、当該分野においてとりわけ、ジブチリルcAMP(DBcAMP)、ホルボールエステル、フォルスコリン、スクラレリン、8−ブロモ−cAMP、コレラ毒素(CTx)、アミノフィリン、2,4 ジニトロフェノール(DNP)、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、カフェイン、テオフィリン(ジメチルキサンチン)、ドパミン、ロリプラム、イロプロスト、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、および血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)が挙げられるが、これらに限定されない。上記で例示されるように、cAMPエンハンサーの例としてはまた、とりわけ、cAMPおよびcAMPのアナログ(例えば、sp−5,6−DCl−BIMPS(BIMPS))が挙げられる。
【0097】
cAMPは、培養中の造血幹細胞の増殖および/もしくは生存に関与する(例えば、Negrottoら,Experimental Hematology 34:1420−1428,2006(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。例えば、2つの異なるcAMPアナログ(例えば、ジブチリル−cAMPおよびBIMPS)は、一酸化窒素(NO)もしくは血清欠乏のいずれかによって誘導されるアポトーシスを抑制することによって、ヒト臍帯由来CD34+細胞の生存を促進することが観察された。PKAおよびPI3K経路の関与は、それぞれ、それらの特異的インヒビターであるRp−cAMPおよびWortmanninもしくはLY294002が、BIMPSの抗アポトーシス効果を逆転する能力によって実証された。トロンボポエチン(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、もしくは幹細胞因子(SCF)は、cAMPレベルを増大させない一方で、これら増殖因子によって発揮される抗アポトーシス活性は、上記アデニレートシクラーゼの阻害によってブロックされ、BIMPSによって相乗効果が発揮される。従って、サイクリックAMPアナログは、NOもしくは血清欠乏に曝露された細胞における低下したコロニー形成を抑制し、このことは、cAMPが、CD34+生存を制御する重要な経路であるのみならず、TPO、G−CSF、およびSCF媒介性の細胞防御のメディエーターであるようであることを示す。
【0098】
同様に、cAMPの(例えば、骨髄細胞移植直後の、イソプロテレノール(これは、アデニリルシクラーゼを刺激する)もしくはジブチリルサイクリックアデノシン3’,5’−モノホスフェートの注射による)活性化は、ほぼ直ぐに、DNA合成を誘導することによって上記移植した幹細胞をS期に入らせるきっかけとなる(例えば、Necasら,Cell Proliferation,9:223−230,2008(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0099】
従って、cAMPエンハンサーを含む本発明の組成物は、培養中の(例えば、インビトロもしくはエキソビボで)および/またはインビボでの(例えば、骨髄、幹細胞、および/もしくはHSCベースの移植手順の前もしくは後に)、造血幹細胞の生存および/もしくは拡大を増大するために利用され得、それによって、レシピエント被験体に投与されたHSCの数全体を増大させ得る。
【0100】
(プロスタグランジンEPレセプターおよびレセプターリガンド)
種々の細胞タイプに、多くの異なるプロスタグランジンレセプターが存在する。これらプロスタグランジンレセプターは、Gタンパク質共役レセプターといわれる細胞表面7回膜貫通レセプターのサブファミリーを代表する。Gタンパク質共役レセプター(GPCR)は、細胞の外側の分子を検出し、細胞内シグナル伝達経路を活性化し、それによって、下流の細胞応答を活性化する膜貫通レセプターの大きなタンパク質ファミリーを含む。Gタンパク質共役レセプターは、真核生物(酵母、植物、襟鞭毛虫、および動物が挙げられる)においてのみ見いだされる。一般に、これらレセプターを結合しかつ活性化するリガンドとしては、光感受性化合物、匂い、フェロモン、ホルモン、および神経伝達物質が挙げられ、低分子からペプチド〜大きなタンパク質までサイズは様々である。GPCRは、多くの疾患に関与し、従って、多くの現代の医薬の直接的もしくは間接的な標的の代表である。
【0101】
上記多くのプロスタグランジンレセプターのうち、現在、4種のプロスタグランジンEPレセプターがある:EP、EP、EP、およびEP。適切なリガンドもしくはアゴニスト(例えば、プロスタグランジンもしくはそのアナログ)によって活性化される場合、これらプロスタグランジンレセプターは、種々の下流の生物学的機能を開始する。例えば、これら4種のレセプターは、Ca2+動員(EPおよびEP)もしくはアデニリルシクラーゼ(EPおよびEP)の刺激へのいずれかに共役する。
【0102】
プロスタグランジンは、脂肪酸から酵素的に得られる脂質化合物である。代表的には、プロスタグランジンは、5炭素の環を含む20個の炭素原子を含む。これら分子は、種々の強力な生理学的効果を媒介し、それらは、技術的にはホルモンであるものの、ホルモンとして分類されることはめったにない。例えば、オートクリンおよびパラクリン脂質メディエーターとして、プロスタグランジンは、細胞の中でもとりわけ、血小板、内皮細胞、子宮およびマスト細胞に対して作用する。
【0103】
一般に、プロスタグランジンは、リンパ球を除いて、全ての有核細胞によって生成される。プロスタグランジンは、代表的には、必須脂肪酸(EFA)から細胞中で合成される。例えば、プロスタグランジンは、シクロオキシゲナーゼ(COX−1およびCOX−2)および最終のプロスタグランジンシンターゼによって、アラキドン酸(AA)、γ−リノレン酸(GLA、DGLAを介して)、もしくはエイコサペンタエン酸(EPA)の逐次的酸化後に生成され得る。COX−1は、プロスタグランジンのベースラインレベルに関与すると考えられ、COX2は、主に、刺激を介してプロスタグランジンを生成する。
【0104】
これらEFA出発分子から、ホスホリパーゼ−Aは中間体分子の形成を触媒し、中間体分子は、上記シクロオキシゲナーゼ経路もしくはリポキシゲナーゼ経路のいずれかに入って、それぞれ、プロスタグランジンおよびトロンボキサン、またはロイコトリエンのいずれかを形成する。上記シクロオキシゲナーゼ経路は、代表的には、トロンボキサン、プロスタサイクリン、およびプロスタグランジンD、EおよびFを生成する。上記リポキシゲナーゼ経路は、代表的には、白血球およびマクロファージにおいて活性であり、ロイコトリエンを合成する。
【0105】
プロスタグランジンE2(PGE)は、アラキドン酸代謝の一次生成物であり、代表的には、上記シクロオキシゲナーゼシンターゼ経路およびプロスタグランジンシンターゼ経路を介して合成される。例えば、PGEは、プロスタグランジンH(PGH)に対するプロスタグランジンEシンターゼの作用から生成され得る。いくつかのプロスタグランジンEシンターゼが同定された(例えば、PGEの形成において重要な酵素の代表であるミクロソームプロスタグランジンEシンターゼ−1)。
【0106】
PGEおよびそのアナログは、上記種々のEPレセプターを活性化して、多くの下流の活性を開始する。例えば、効果の中でもとりわけ、PGEによるEPレセプターの活性化は、気管支収縮および胃腸管平滑筋収縮を刺激する。PGEによる上記EPレセプターの活性化は、気管支拡張、胃腸管平滑筋弛緩、および血管拡張を刺激する。PGEによる上記EPレセプターの活性化は、胃酸分泌の低下、胃粘液分泌の増大、子宮収縮(妊娠中)、胃腸の平滑筋の収縮、脂肪分解阻害を刺激し、効果の中でも、自律神経系の神経伝達物質を増大させる。さらに、PGEは、感染もしくは炎症に応答して、血管壁から放出され、脳に対して作用して、発熱を誘導し得る。従って、PGEは、発熱効果を有し、また、痛覚過敏症をもたらし得る。
【0107】
PGE、そのアナログ、および関連プロスタグランジンは、多くの臨床的用途を有する。例えば、他の用途の中でもとりわけ、合成プロスタグランジンは、出産(分娩)もしくは人工中絶(例えば、プロゲステロンアンタゴニストであるミフェプリストンありもしくはなしで、PGEもしくはPGF)を誘導するために、特定のチアノーゼ心臓血管を有する新生児における動脈管開存の閉鎖を妨げる(例えば、PGE)ために、消化性潰瘍を妨げかつ処置する(例えば、PGE)ために、重篤なレイノー現象もしくは四肢の虚血において血管拡張因子として、肺高血圧症を処置することにおいて、緑内障の処置において(例えば、眼圧降下活性を有する合成プロスタミドアナログであるビマトプロスト眼用液剤として)、および勃起機能不全を処置するために、または術後のペニスリハビリテーション(例えば、アルプロスタジルとしてPGE)において、使用される。
【0108】
プロスタグランジンはまた、他の臨床的に関連する生理学的プロセスに関与する。例えば、上記プロスタグランジン合成経路の、特に、シクロオキシゲナーゼによって触媒される律速酵素工程の結腸直腸発がん現象に対する役割、および新規な抗結腸直腸がん治療の開発は、十分に確立されている。良性結腸直腸腫瘍および悪性結腸直腸腫瘍において優勢なPG種は、PGEである。上記のように、PGEは、4種のEPレセプター(EP〜EPと称される)を介して作用する。従って、EPレセプターは、結腸直腸がんの処置および/もしくは予防のための潜在的標的として同定された(例えば、Hullら,Mol Cancer Ther.3:1031−9,2004(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0109】
また、PGEは、主な発熱メディエーターであると考えられる(例えば、Okaら,Brain Research 98:256−262,2003(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。例えば、ONO−DI−004(EP1レセプターアゴニスト)は、用量依存性様式において、PGE誘導性高体温に類似の時間経過で、深部体温(T)を高めることが示された。同様に、ONO−AE−248(20nmol)(EPレセプターアゴニスト)はまた、上記Tを高めた。対照的には、ONO−AE1−329(EP4レセプターアゴニスト)は、上記Tを下げ、ONO−AE1−259−01(EPレセプターアゴニスト)は、上記Tを変化させないことが示された。従って、上記EPレセプター、EPレセプター、およびEPレセプターは全て、PGEに対する体温調節応答を与え得るが、各々は、異なる役割を有し得る。
【0110】
プロスタグランジンはまた、細胞増殖の調節および生存に関与する。例えば、PGEは、肝星細胞(これは、肝線維症おいて中心的である)の有糸分裂誘発を阻害する(例えば、Huiら,Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.71:329−33,2004(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。PGEおよびEP2選択的アゴニストは、PDGF刺激性増殖に対して用量依存性阻害効果を生じることが示された。対照的に、EP選択的アゴニスト、EP選択的アゴニスト、EP選択的アゴニストはいずれも、いかなる阻害効果をも示さない。アデニリルシクラーゼインヒビターは、PGEおよび上記EP2アゴニスト(このプロセスにおいてcAMPの役割を示す)によって誘発されるDNA合成の阻害を強力に鈍らせる。従って、上記PGE EPレセプターの活性化は、肝星細胞に対して抗増殖効果を有し、これは、サイクリックAMP関連シグナル伝達経路によって媒介され得る。この点に関して、本発明の組成物のうちの特定のものは、肝線維症の治療において肝星細胞の増殖を低下させるために使用され得る。
【0111】
PGEおよびそのアナログはまた、樹状細胞(DC)の移動および生存において必須の役割を果たす(例えば、Vassiliouら,The Journal of Immunology,173:6955−6964,2004(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。研究から、PGEが、DCをエキソビボもしくはインビトロで、増殖因子もしくはセラミドの投与中止(withdrawal)によって誘導されるアポトーシスから保護することが実証された。内因性PGE放出を阻害する条件において成熟させたDCは、非常にアポトーシスをうけやすく、そして内因性PGEの添加は、より抵抗性の表現型を再確立することが示された。この抗アポトーシス効果は、EP/EPレセプターを介して媒介され、おそらくPI3K→Akt経路を必要とする。特に、PGEは、Aktのリン酸化の増大、ミトコンドリア膜の欠陥に対する保護、およびカスパーゼ3活性の低下をもたらす。また、マクロアレイ(macroarray)データは、PGEが多くのアポトーシス促進分子(例えば、BAD、いくつかのカスパーゼ、およびグランザイムB)のダウンレギュレーションをもたらすことを示す。インビボでは、より多数の未熟な抗原負荷CFSE標識DCが、イブプロフェンで処置した動物およびPBSを注射したコントロールと比較して、PGEレセプターアゴニストを接種したマウスの排出リンパ節に存在する。従って、DCに対する内因性抗アポトーシス因子として作用することによって、PGEベースのアゴニストを含む組成物は、それを必要とする被験体への投与後にエキソビボで抗原負荷したDCの生存を増大させるために、エキソビボおよび/もしくはインビボで使用され得る。
【0112】
PGEはまた、脊椎動物における造血幹細胞ホメオスタシスを調節する(例えば、Northら,Nature 447:1007−1011,2007;およびBroxmeyer,Cell 1:135−136,2007(これらはともに、それらの全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。造血幹細胞(HSC)ホメオスタシスは、増殖因子、シグナル伝達分子および転写因子によって厳密に制御されている。大動脈−性腺−中腎領域において胚発生の間に得られる完全なHSCは、その後、胎児および成人の造血器官でコロニー形成する。この状況において、PGE合成に関与する化学物質はHSC数を増大させ、プロスタグランジン合成をブロックする化学物質は幹細胞数を低下させることが示された。また、PGE合成に関与するシクロオキシゲナーゼがまた、HSC形成に必要とされることが示された。さらに、PGE2の安定な誘導体は、成体ゼブラフィッシュにおける照射傷害後の腎髄(kidney marrow)回復を改善することが示された。マウス胚性幹細胞分化アッセイにおいて、PGEは、多能性前駆細胞の増殖を引き起こすことが示された。さらに、安定化PGEへのエキソビボ曝露は、移植後12日目に脾臓コロニー形成単位を高め、限界希釈競合移植後のマウス骨髄に存在する長期再構成(repopulating)HSCの頻度を増大させる。従って、脊椎動物HSCホメオスタシスの調節におけるPGE2の保存された役割は、上記プロスタグランジン経路の調節が、治療目的のために、HSC数の拡大を促進し得ることを示す。
【0113】
従って、本明細書で提供される特定の組成物および方法によれば、生物活性PGEおよびそれらのアナログもしくは誘導体は、化学療法もしくは照射後に造血システムの回復を加速し得、および/もしくはエキソビボ処理の間の(例えば、移植手順の前、その間、および/もしくはその後の)造血幹細胞の増殖および拡大を促進する(例えば、WO 2008/073748(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。同様にまた、本明細書で提供される方法によれば、幹細胞移植前のPGEもしくはそのアナログの存在下でのHSCのエキソビボ拡大は、移植後の造血および免疫機能の再構成を改善し得る(例えば、Lordら,Cell Cycle 6:3054−7,2007(その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0114】
従って、本発明の実施形態は、造血幹細胞(HSC)増殖、ホーミング、もしくは拡大、ならびに他の幹細胞様細胞(例えば、多分化能細胞(multi−potent cell)、多能性細胞(pluripotent cell)など)の増殖もしくは拡大を刺激するための方法を包含し、上記方法は、cAMPエンハンサーもしくはEPリガンドのいずれか、ならびに適した有機溶媒を含む改善された組成物を、エキソビボ処理条件に適した容器に移す工程であって、ここで上記容器は、適した培地中に臍帯血もしくはHSCを含む、工程、必要に応じて、上記細胞を、上記HSCの増殖もしくは拡大を刺激するのに十分な時間にわたってインキュベートし、それによって、HSCの増殖もしくは拡大を刺激する、工程を含む。あるいは、このような方法は、HSC(もしくは他のHSC供給源(例えば、臍帯血もしくは骨髄))を、本発明の組成物を既に含む(例えば、コーティングされた容器)適切な容器(例えば、PEバッグ、チューブなど)へ移すことによって達成されうる。本願方法を実施するためのこのようなバリエーションは、本明細書で提供される説明に基づいて当業者に明らかである。
【0115】
本発明の改善された組成物は、本明細書で記載され、当該分野で理解される技術に従って調製され得る。例えば、特定の実施形態において、サイクリックAMP(cAMP)エンハンサー、およびプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドから選択される薬剤は、有機溶媒(例えば、酢酸メチル)中に既に溶解されていてもよく、有機溶媒は、エキソビボ治療的使用において使用するために他の点では不適切であり得、および/または、このような薬剤の望ましくない貯蔵もしくは取り扱い特性に寄与し得る。この点に関して、EPリガンドの特定の市販の供給源は、酢酸メチル中に提供される。
【0116】
従って、このような薬剤供給源から本発明の組成物に達するために、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与に適した組成物を調製するための方法は、酢酸メチルおよび本発明の薬剤を含む容器中の第1の組成物の容積を低下させて、第2の組成物を作り出す工程であって、ここで第2の組成物は、酢酸メチルを実質的に含まない、工程;次いで、有機溶媒を、上記容器中の上記第2の組成物に添加して、本明細書に記載される(例えば、10mM)ように、上記薬剤の適切な濃度を有する最終組成物を得る工程であって、ここで上記有機溶媒は酢酸メチルではなく、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与に適している、工程を含み得る。特定の実施形態において、上記第1の組成物の容積を低下させる工程は、上記酢酸メチルを蒸発させる工程を含み得る。また、第2の溶媒は、代表的には、本明細書に記載されるように、適した有機溶媒である(例えば、DMSO、DMF、DMEなど(これらの組み合わせもしくは混合物を含む))。1種以上の溶媒は、特定の比率で合わせられ得る。例えば、2種の溶媒の混合は、9.5:0.5、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5など(全ての整数および小数点を含む)の比率で合わせられ得る。
【0117】
特定の実施形態において、本発明の組成物を調製するための方法は、上記組成物を、上記の初期もしくは第1の容器から第2の溶液に移す工程であって、ここで上記第2の容器は、エンドトキシンを含まず、上記組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適している、工程をさらに含み得る。この点に関して、上記第2の容器は、上記第1の容器より、貯蔵、取り扱い、輸送、および/もしくはエキソビボ治療的使用に適しているとみなされ得、上記第1の容器は、例えば、選択された薬剤の市販の供給源から得られていてもよい。あるいは、上記第1の容器は、全ての点において適切であるとみなされてもよい。
【0118】
特に、これらの方法のうちの特定のものは、上記組成物を上記第1の容器から第2の容器へ移す工程であって、ここで上記第2の容器は、エンドトキシンを含まずかつ上記組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適したテフロン(登録商標)キャップ付きの2mlバイアルであり、上記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16 ジメチルPGEであり、上記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、上記バイアル中に空気オーバーレイが存在する、工程を含み得る。好ましくは、上記容器および上記溶媒を含め、組成物全体は、無菌でかつエンドトキシンを含まない。
【0119】
特定の実施形態において、上記第2のもしくは他の容器は、細胞(例えば、HSCもしくは臍帯血)を含み得る。よって、これらおよび他の実施形態は、上記組成物を上記第1のもしくは初期の容器から、またはさらに以前の段落に記載される上記第2の容器から、エキソビボ処理条件に適しておりかつ適した培地中に臍帯血もしくは別のヒト細胞供給源を含む別の容器(すなわち、第2のもしくは第3の容器)へ移す工程を含み得る。あるいは、上記ヒト細胞供給源は、上記組成物を既に含む上記第1のもしくは第2の容器(例えば、PEバッグもしくはチューブ)へ移され得、上記容器は、エキソビボ処理もしくはインキュベーション条件に既に適切である。
【0120】
特定の実施形態において、上記臍帯血もしくはヒト細胞供給源は、比較的不均質な集団(例えば、臍帯血、骨髄など)としてであろうが、比較的精製されているかもしくは富化されている均質な集団としてであろうが、HSCを含み得、いずれの集団も、本明細書に記載され、当該分野で公知であるように調製される。特定の実施形態において、上記細胞とのインキュベーションの際の上記適した有機溶媒の最終濃度は、上記適した培地の全容積のうちの約0.01%未満〜約1%未満(全ての小数点未満およびその間を含む)(例えば、0.005、0.03、0.05、0.08など)であり得、または本明細書で記載されるように、そのIC50、EC50、もしくはEC90によって特徴付けられ得る。
【0121】
実施形態はまた、本明細書に記載される1個以上の容器、もしくはこのような容器のトレイを含むキットを含み、ここで上記容器は、本発明の組成物を含む。また、このようなキットは、哺乳動物細胞へのエキソビボ投与のための上記組成物の使用に関する説明書をさらに含み得る。上記説明書は、幹細胞(例えば、HSC)の単離、富化、精製、および拡大に関するガイダンスを含み得、エキソビボ治療的使用において重要であると予測される変数の中でもとりわけ、本発明の組成物の投与の最適化、曝露のタイミング、拡大のタイミング、拡大およびその後の投与のための至適細胞数、培養条件および/または培地、ならびに/または被験体への投与のための最終調製物に関する説明書を含み得る。特定の実施形態において、哺乳動物細胞もしくはHSCへのエキソビボ投与は、ヒトにおけるエキソビボ治療的使用を含む。
【実施例】
【0122】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに記載される。
【0123】
(実施例1:移植前の造血幹細胞(HSC)のエキソビボ処理)
本実施例は、本発明の薬剤が、移植前に、HSCのエキソビボ増殖を高めるために使用されうる様式を示す。HSCを含む骨髄細胞を、針およびシリンジを使用して、ドナー被験体の腰部から取り出すことによって、直接得る。骨髄細胞の不均一混合物を、2つの別個の組織培養フラスコに移し、適した増殖培地を提供する。
【0124】
DMSO中の16,16−ジメチルPGEの10mM 溶液262μlを、上記第1の組織培養フラスコ中の上記細胞に、最終作業濃度10μMの16,16−ジメチルPGEになるように添加する。薬剤なしのDMSOの同じ量を、コントロールとして第2のフラスコに添加し、両方のフラスコ中の上記細胞を、4℃で(例えば、アイスバス中で)1時間にわたってインキュベートする。上記16,16−ジメチルPGEは、HPLCによって測定した場合に少なくとも90%純粋であり、医薬品の製造管理及び品質管理規則(GMP)によって製造される。
【0125】
上記アイスバス中で上記HSCをインキュベートした後、各フラスコからの細胞を、別個の、しかし他の点では遺伝的に同一な被験体に投与する。これら被験体はともに、上記ドナー細胞に対して同種異系である。次いで、上記被験体を、上記ドナー細胞に対して特異的なマーカーを使用して、上記ドナーHSCの移植について観察した。上記16,16−ジメチルPGE処理細胞の移植を受けた上記被験体は、上記コントロール処理細胞を受けた被験体より移植HSCドナー細胞の数が顕著に多いことが示される。
【0126】
(実施例2:cAMPエンハンサー活性についての細胞ベースのアッセイ)
本実施例は、cAMPレベルによって反映されるように、cAMPエンハンサー化合物の効力を決定するために使用されうるイムノアッセイを示す。具体的には、蛍光共鳴エネルギー移動時間分解(FRET)を、cAMPエンハンサー化合物で処理した細胞におけるcAMPレベルを定量化するために使用する。このアッセイにおいて、細胞を試験化合物で処理し、次いで、溶解して、サイトゾルcAMPを放出させる。ビオチン化cAMP、cAMPに対するフルオロフォアタグ化抗体、およびユーロピウムキレート−ストレプトアビジンを、上記細胞溶解物に添加し、図1に示されるように、平衡化させる。
【0127】
サイトゾルcAMPの非存在下(例えば、コントロールサンプル中)では、上記α−cAMP抗体は、上記ビオチン化cAMPを結合し、上記ビオチン部分は、ストレプトアビジンを介してユーロピウムキレートを結合する。この結合している複合体は、波長約340nmの光で励起した際に、上記ユーロピウムキレートから上記フルオロフォアへのエネルギー移動を可能にする。次いで、上記励起したフルオロフォアは、特徴的な波長において、特定のベースラインレベルの光を発する。この光は、蛍光計によって測定される。
【0128】
サイトゾルcAMPの存在下(例えば、cAMPエンハンサーでの細胞の処理後)では、増大したレベルのサイトゾルcAMPが、上記ユーロピウムキレート−ストレプトアビジン/ビオチン化cAMP複合体を、上記フルオロフォア標識α−cAMP抗体から外す。このプロセスは、ユーロピウムを、上記フルオロフォアの近くから効率的に除去し、フルオロフォア励起および発光に必要とされるエネルギー移動を妨げ、上記蛍光計による、低下したシグナル検出を生じる。従って、このアッセイにおいて、cAMPエンハンサーの効力は、コントロールと比較して、処理細胞でのシグナル減少の程度によって測定され得る。
【0129】
(実施例3:cAMP活性についての生物学的アッセイ)
cAMPエンハンサー化合物の効力はまた、細胞機能に対する上昇したcAMPレベルの効果に従って測定されうる。例えば、移植可能な造血幹細胞の頻度の増加は、コロニー形成単位−脾臓(CFU−S)アッセイで測定されうる。このアッセイにおいて、ヒト骨髄もしくは臍帯血を、エキソビボで、cAMPエンハンサー化合物で処理し、次いで、内因性脾臓コロニー形成を抑制するために致死量以下で照射した免疫不全マウス(例えば、NOD/SCIDマウス)の静脈内に投与する。上記細胞の投与の12〜14日後に、上記脾臓を上記マウスから取り出し、脾臓−移植造血幹細胞から生成された上記細胞コロニーを、計数する。脾臓コロニーの数は、移植可能な造血幹細胞の頻度を反映し、これは、cAMPエンハンサーの投与後に増大する。
【0130】
(実施例4:16,16−ジメチルPGEの液体クロマトグラフィ紫外線(LC/UV)検出)
16,16−ジメチルPGEおよびその関連物質を、勾配溶出条件で、Phenomenex,Synergi Hydro RP 4μ HPLCカラムで分離し、205nmで検出した。16,16−ジメチルPGEのアッセイを、上記試験サンプルの16,16−ジメチルPGEピーク面積を、既知濃度および純度の参照標準物質のものと比較することによって、決定した。不純物および分解生成物のレベルを、上記16,16−ジメチルPGEおよび全ての不純物および分解生成物の合計ピーク面積に対する各個々の不純物のピーク面積比から決定した。16,16−ジメチルPGEの正体を、上記試験サンプルの主要ピークの保持時間を、上記参照標準物質におけるものに対して比較することによって確認した。
【0131】
上記方法を、以下のクロマトグラフィパラメーターを使用して、決定および完成させた:
溶媒A-水(0.04%ギ酸含有)
溶媒B-メタノール(0.04%ギ酸含有)
LC/UV 勾配4(以下の表1に示される)
205nmでの検出
流速 1.0mL/分
DMSO/MeOH 1/1で針をすすいでキャリーオーバーを防止
オートサンプラードロー速度(autosampler draw speed) 粘性の溶液については50μl/分
注入容積 10μl
【0132】
【表1】

上記方法パラメーターを決定した後、方法の適格性認定を、線形性、機器の精度および適格性の限界に関して行った。適格性の結果のまとめを、以下の表2に示す。
【0133】
【表2】

16,16−ジメチルPGEの保持時間は、サンプル注入と標準物質注入との間で非常に一致していた。保持時間に基づくサンプルの同定もまた、達成した。これら方法を使用したところ、16,16−ジメチルPGE(DMSO中10mM)のアッセイは、98.5%であった。
【0134】
(実施例5:16,16−ジメチルPGE処方物の安定性)
安定性試験を、−80℃もしくは−20℃のいずれかで最大6ヶ月にわたって貯蔵した16,16−ジメチルPGEの処方物に対して行った。これら臨床的処方物は、1mg/ml DMSO中10mM 16,16−ジメチルPGEから構成され、13mm West 4432/50テフロン(登録商標)コーティングストッパー付きの2ml タイプI透明ガラスバイアル中に貯蔵した。結果を、以下の表3(−80℃)および表4(−20℃)に示す。
【0135】
【表3−1】

【0136】
【表3−2】

【0137】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクリックAMP(cAMP)エンハンサーおよびプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドから選択される薬剤、ならびに有機溶媒を含む組成物であって、ここで該薬剤および該有機溶媒は、無菌でかつエンドトキシンを含まない容器内に含まれ、該組成物は、ヒト細胞へのエキソビボ投与に適している、組成物。
【請求項2】
前記薬剤は、cAMPエンハンサーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記cAMPエンハンサーは、ジブチリルcAMP(DBcAMP)、ホルボールエステル、フォルスコリン、スクラレリン、8−ブロモ−cAMP、コレラ毒素(CTx)、アミノフィリン、2,4ジニトロフェノール(DNP)、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、カフェイン、テオフィリン(ジメチルキサンチン)、ドパミン、ロリプラム、イロプロスト、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、および血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬剤は、プロスタグランジンレセプターに対するリガンドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記リガンドは、プロスタグランジンEPレセプターアゴニストである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記リガンドは、プロスタグランジンE(PGE)、もしくはそのアナログである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGE、16−16ジメチルPGE p−(p−アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11−デオキシ−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレン−16、16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレンPGE、9−ケトフルプロステノール、5−トランスPGE、17−フェニル−ω−トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16−フェニルテトラノルPGE、15(S)−15−メチルPGE、15(R)−15−メチルPGE、8−イソ−15−ケトPGE、8−イソPGEイソプロピルエステル、20−ヒドロキシPGE、11−デオキシPGE、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15−ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEからなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGEである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記リガンドは、非PGEベースのリガンドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記非PGEベースのリガンドは、EPアゴニスト、EPアゴニスト、EPアゴニスト、およびEPアゴニストからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−DI−004およびONO−8713からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、CAY10399、ONO_8815Ly、ONO−AE1−259、およびCP−533,536からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、AE5−599、MB28767、GR 63799X、ONO−NT012、およびONO−AE−248からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−4819、APS−999 Na、AH23848、およびONO−AE1−329からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬剤は、約100nM〜約10mMの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬剤は、約1mM〜約10mMの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬剤は、約100nM〜約1μMの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬剤は、約10mMの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬剤は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(GMP)によって製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬剤は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって、少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記プロスタグランジンEPレセプターは、EP、EP、EP、およびEPから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項22】
前記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記有機溶媒は、DMSOである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記容器中に不活性ガスを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記容器中に空気オーバーレイを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記容器は、前記組成物の貯蔵に適したバッグ、カプセル、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジである、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記容器は、使い捨て容器である、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記容器は、適した培地中に臍帯血もしくはヒト細胞をさらに含むバッグ、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジであり、該容器は、該細胞のエキソビボ処理に適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記有機溶媒容積は、前記適した培地の全容積のうちの約1%未満である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記有機溶媒容積は、前記適した培地の全容積のうちの約0.1%未満である、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記ヒト細胞は、造血幹細胞を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16ジメチルPGEであり、前記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、前記容器は、テフロン(登録商標)コーティングされたストッパー付きの2mlバイアルであり、該バイアルに空気オーバーレイが存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
ヒト細胞へのエキソビボ投与に適した組成物を調製するための方法であって、該方法は、
(a)酢酸メチルならびにサイクリックAMP(cAMP)エンハンサーおよびプロスタグランジンEPレセプターに対するリガンドから選択される薬剤を含むエンドトキシンを含まない容器中の第1の組成物の容積を低下させて、第2の組成物を作り出す工程であって、ここで該第2の組成物は、該酢酸メチルを実質的に含まない、工程;および
(b)有機溶媒を、該容器中の該第2の組成物に添加する工程であって、ここで該有機溶媒は、酢酸メチルではなく、かつヒト細胞へのエキソビボ投与に適している、工程
を含み、それによって、ヒト細胞へのエキソビボ投与に適した該組成物を調製する、
方法。
【請求項35】
(a)において前記第1の組成物の容積を低下させる工程は、前記酢酸メチルを蒸発させる工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記薬剤は、cAMPエンハンサーである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記cAMPエンハンサーは、ジブチリルcAMP(DBcAMP)、ホルボールエステル、フォルスコリン、スクラレリン、8−ブロモ−cAMP、コレラ毒素(CTx)、アミノフィリン、2,4ジニトロフェノール(DNP)、ノルエピネフリン、エピネフリン、イソプロテレノール、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、カフェイン、テオフィリン(ジメチルキサンチン)、ドパミン、ロリプラム、イロプロスト、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、および血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤は、プロスタグランジンレセプターに対するリガンドである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記リガンドは、プロスタグランジンEPレセプターアゴニストである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記リガンドは、プロスタグランジンE(PGE)、もしくはそのアナログである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGE、16−16ジメチルPGE p−(p−アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11−デオキシ−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレン−16,16−ジメチルPGE、9−デオキシ−9−メチレンPGE、9−ケトフルプロステノール、5−トランスPGE、17−フェニル−ω−トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16−フェニルテトラノルPGE、15(S)−15−メチルPGE、15(R)−15−メチルPGE、8−イソ−15−ケトPGE、8−イソPGEイソプロピルエステル、20−ヒドロキシPGE、11−デオキシPGE、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15−ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記PGEアナログは、16,16−ジメチルPGEである、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記リガンドは、非PGEベースのリガンドである、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記非PGEベースのリガンドは、EPアゴニスト、EPアゴニスト、EPアゴニスト、およびEPアゴニストからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−DI−004およびONO−8713からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、CAY10399、ONO_8815Ly、ONO−AE1−259、およびCP−533,536からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、AE5−599、MB28767、GR 63799X、ONO−NT012、およびONO−AE−248からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記非PGEベースのEPアゴニストは、ONO−4819、APS−999 Na、AH23848、およびONO−AE1−329からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記薬剤は、最終濃度約100nM〜約10mMで(b)の前記有機溶媒中に存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤は、濃度約1mM〜約10mMで(b)の前記有機溶媒中に存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項51】
前記薬剤は、濃度約100nM〜約1μMで(b)の前記有機溶媒中に存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤は、濃度約10mMで(b)の前記有機溶媒中に存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(GMP)によって製造される、請求項34に記載の方法。
【請求項54】
前記薬剤は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって、少なくとも90%、95%、もしくは98%純粋である、請求項34に記載の方法。
【請求項55】
前記プロスタグランジンEPレセプターは、EP、EP、EP、およびEPから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項56】
(b)の前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項57】
前記有機溶媒は、DMSOである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記容器は、無菌でかつエンドトキシンを含まないバッグ、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジであり、前記組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適している、請求項34に記載の方法。
【請求項59】
前記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16ジメチルPGEであり、(b)の前記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、前記容器は、テフロン(登録商標)キャップ付きの2mlバイアルであり、該バイアル中に空気オーバーレイが存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項60】
(c)前記組成物を、前記容器から第2の容器へ移す工程であって、ここで該第2の容器は、エンドトキシンを含まず、かつ該組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適している、工程、
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の容器は、バッグ、カプセル、バイアル、チューブ、ディッシュ、もしくはシリンジである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の容器は、使い捨て容器である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
(c)前記組成物を、前記容器から第2の容器へ移す工程であって、ここで該第2の容器は、エンドトキシンを含まず、かつ該組成物の貯蔵もしくはエキソビボ投与に適している、テフロン(登録商標)キャップ付きの2mlバイアルであり、前記薬剤は、最終濃度約10mMの16,16ジメチルPGEであり、(b)の前記有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まないジメチルスルホキシド(DMSO)であり、該容器中に空気オーバーレイが存在する、工程、
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項64】
(c)前記組成物を、前記容器から第2の容器へ移す工程であって、ここで該第2の容器は、エキソビボ処理条件に適しており、かつ臍帯血を含む、工程、
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項65】
(c)前記組成物を第2の容器へ移す工程であって、ここで該第2の容器は、エキソビボ処理条件に適しており、かつ適した培地中にヒト細胞を含む、工程、
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項66】
前記有機溶媒容積は、前記適した培地の全容積のうちの約1%未満である、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記有機溶媒容積は、前記適した培地の全容積のうちの約0.1%未満である、請求項64または65に記載の方法。
【請求項68】
前記ヒト細胞は、造血幹細胞(HSC)を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
造血幹細胞(HSC)増殖もしくは拡大を刺激するための方法であって、該方法は、請求項1に記載の組成物を、エキソビボ処理条件に適した第2の容器に移す工程を包含し、ここで該第2の容器は、適した培地中に臍帯血もしくはHSCを含み、それによって、HSC増殖もしくは拡大を刺激する、方法。
【請求項70】
前記HSCを被験体へ投与する工程をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
請求項1に記載の組成物、およびヒト細胞へのエキソビボ投与のために該組成物を使用する際の説明書を含む、キット。
【請求項72】
前記ヒト細胞へのエキソビボ投与は、ヒトにおけるエキソビボ治療的使用を含む、請求項71に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521349(P2012−521349A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500968(P2012−500968)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027852
【国際公開番号】WO2010/108028
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511227439)フェイト セラピューティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】