説明

サイクロン分離装置

【課題】流体中の浮遊物の分離効率を高めることができるサイクロン分離装置を提供すること。
【解決手段】中空で且つ略錐状の第二サイクロン筒33を有するサイクロン分離装置としてのサイクロン式集塵装置1であって、その中心軸線X方向に、上流側の加速領域34と下流側の遠心力増幅領域35とを配列して前記第二サイクロン筒33を構成し、前記加速領域34において、中心軸線X方向の始端から終端に向かって流通面積Abを減少させると共に、前記遠心力増幅領域35において、中心軸線X方向の始端から終端に向かって流通面積Acの減少率を減少させたことで、前記加速領域34にて旋回流の流速を上昇させた後、前記遠心力増幅領域にて、旋回流の速度上昇率の増加を抑えながら速度Vcを上昇させ、速い流速Vcの旋回流の旋回回数を多くして、旋回流中の浮遊物である塵埃の分離効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサイクロン分離装置として、円錐状筒体(本願発明のサイクロン筒に相当する)の内壁に沿って気流を流して旋回流とし、この旋回流に含まれる粉体を遠心分離するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。これは、軸方向の一端から他端に向かって、円錐状筒体の半径が比例して減少するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−77661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサイクロン分離装置は、前記円錐状筒体の流出口付近で旋回流の流速が加速度的に上昇する。これは、気流の流量Qと、流速Vと、前記円錐状筒体の断面積Aと、前記円錐状筒体の半径Rとの関係が、以下の式で表されることによる。

V=Q/A=Q/πR

そして、粉体流入筒が設けられた部位付近の遅い(即ち比較的高圧の)旋回流は、前記流出口付近の速い(即ち比較的低圧の)旋回流に吸引され、前記流出口付近に向かって軸方向に速やかに流れる。遅い旋回流が軸方向に速やかに流れるということは、前記円錐状筒体内で何度も旋回しないうちに前記流出口付近に至るということである。即ち、このようなサイクロン分離装置は、前記円錐状筒体における旋回流の旋回回数が少ないという問題があった。このため、浮遊物に十分に遠心力が働かず、浮遊物が残った状態の流体がサイクロンを通過してしまう虞があった。前記円錐状筒体の一端と他端の半径の差を小さくすることも考えられるが、このようにした場合、旋回流の流速が上昇しないため、浮遊物に働く遠心力が大きくならないので、浮遊物の旋回流からの分離効率を高めることができないという問題もあった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、流体中の浮遊物の分離効率を高めることができるサイクロン分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のサイクロン分離装置は、中空で且つ略錐状のサイクロン筒を有し、このサイクロン筒の内壁に沿って旋回流を発生させることで、遠心力によって旋回流中の浮遊物を分離するサイクロン分離装置において、前記サイクロン筒が、その中心軸線方向に、上流側の加速領域と下流側の遠心力増幅領域とを配列して構成され、前記加速領域にて、前記中心軸線方向の始端から終端に向かって旋回流の速度が上昇するように、流通面積を始端から終端に向かって減少させると共に、前記遠心力増幅領域にて、前記中心軸線方向の始端から終端に向かって単位距離移動する毎に変化する旋回流の速度上昇率の増加を抑えながら速度を上昇させるように、前記サイクロン筒の流通面積減少率を始端から終端に向かって減少させたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のサイクロン分離装置は、請求項1において、前記加速領域の中央部に排気筒を設けると共に、前記加速領域の終端における前記サイクロン筒の半径の減少率よりも、前記遠心力増幅領域の始端における前記サイクロン筒の半径の減少率を大きくしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載のサイクロン分離装置は、以上のように構成することにより、上流側の前記加速領域にて、前記中心軸線方向の始端から終端に向かって旋回流の速度を上昇させ、前記加速領域の終端における旋回流の流速を速くして、前記遠心力増幅領域に流入する旋回流の初速を速くすることができるので、前記遠心力増幅領域における旋回流の流速を速くして、旋回流中の浮遊物に働く遠心力を大きくし、浮遊物の分離効率を向上させることができる。また、前記遠心力増幅領域の全域において、旋回流の流速が急激に上昇しないことで、高速の旋回流を前記遠心力増幅領域に比較的長時間留め、旋回流の旋回回数を多くすることができるので、流体中の浮遊物に遠心力を十分に働かせて、流体からの浮遊物の遠心分離効率を向上させることができる。
【0009】
なお、前記加速領域の中央部に排気筒を設け、前記加速領域の終端における前記サイクロン筒の半径の減少率よりも、前記遠心力増幅領域の始端における前記サイクロン筒の半径の減少率を大きくすれば、前記加速領域から遠心力増幅領域に流入した直後の旋回流の速度上昇率を高くすることができるので、流通面積の増加に伴う旋回流の流速低下の影響を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すサイクロン分離装置の側面図である。
【図2】同、断面図である。
【図3】同、底蓋を開いた状態における断面図である。
【図4】同、第二サイクロン筒の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1乃至図4における上下を上下と規定する。また、図1乃至図4における左を前、右を後と規定する。1は本発明のサイクロン分離装置としてのサイクロン式集塵装置である。このサイクロン式集塵装置1は、サイクロン筒2と、底蓋3と、係合機構4とを有する。
【0012】
前記サイクロン筒2は、透明な合成樹脂によって形成される。そして、前記サイクロン筒2は、比較的径の小さな径小部5と、比較的径の大きな径大部6と、これら径小部5と径大部6を接続するように径を徐々に変化させる中間部7とを有する。前記径小部5の上端中央部には、図示しない電動送風機に接続される排気口8が形成されると共に、この排気口8から下方に延びるように、排気筒9が一体に形成される。また、前記径大部6の下端部には、開口部10が形成される。また、前記径大部6の下端部の前部には、軸支部11が形成される。更に、前記サイクロン筒2の後部には、後述するクランプ部材21を囲むように延びるリブ12が形成される。このリブ12は、上下方向に延びる一対の縦リブ13と、これらの縦リブ13同士の上端部を連結する横リブ14とを有する。なお、前記リブ12は、その下端が前記径大部6の下端部付近に位置すると共に、その上端が前記径小部5に位置する。また、前記リブ12の上部15は、前記サイクロン筒2の側面からの突出量が小さくなるように切り欠かれる。なお、前記サイクロン筒2の径小部5には、図1乃至3からは見えない位置に、気流の流入口が形成される。
【0013】
前記底蓋3は、蓋本体16と、軸支部17と、係合部18と、シール部材19とを有する。前記蓋本体16と軸支部17と係合部18は、透明な合成樹脂によって一体に形成される。なお、前記軸支部17は、前記蓋本体16の前部に設けられる。また、前記係合部18は、前記蓋本体16の後部に設けられる。また、前記シール部材19は、合成ゴム等で形成され、前記底蓋3を閉じた際に、前記サイクロン筒2の下端縁に気密に当接する。更に、前記軸支部17は、前記サイクロン筒2の軸支部11に対し、揺動軸20によって接続される。従って、前記底蓋3は、前記軸支部11に取り付けられた揺動軸20を中心として、揺動可能であると共に、前記開口部10を開閉可能である。
【0014】
前記サイクロン筒2の後部に形成されたリブ12の内側には、クランプ部材21が設けられる。このクランプ部材21は、レバー22と、爪部23とを有する。そして、前記レバー22と爪部23は、合成樹脂によって一体に形成される。また、前記レバー22の上端部24は、前記サイクロン筒2の径小部5の中央よりもやや上方に位置する。なお、前記レバー22は、その外面22Aが前記サイクロン筒2の側面に沿うように屈曲して形成される。即ち、前記レバー22は、その上端部24の外面22Aから前記サイクロン筒2の中心軸線X迄の距離が、前記レバー22の下端部25の外面22Aから前記中心軸線X迄の距離よりも小さくなるように形成される。また、前記レバー22は、前記縦リブ13に対し、揺動軸26を用いて取り付けられる。即ち、前記レバー22は、前記揺動軸26を中心として揺動可能である。そして、前記揺動軸26よりも上方において、前記レバー22とサイクロン筒2との間には、圧縮コイルバネ27が設けられる。即ち、前記レバー22は、その上端部24が前記サイクロン筒2から離れる方向に付勢されると共に、その下端部25が前記サイクロン筒2に近付く方向に付勢される。また、前記爪部23は、前記レバー22の下端部25に形成されると共に、前記底蓋3の係合部18と係合可能に構成される。更に、前記レバー22の上端部24は、前述した通り、前記リブ12の上部15が切り欠かれることで、操作可能な状態で露出する。
【0015】
そして、前記底蓋3の係合部18と前記クランプ部材21とによって、前記係合機構4が構成される。即ち、前記クランプ部材21の爪部23と前記底蓋3の係合部18とを係合させることで、前記底蓋3が前記サイクロン筒2の開口部10を閉塞するように保持される。一方、前記レバー22の上端部24を前記サイクロン筒2の中心側に動かして、前記爪部23と係合部18との係合を解除することで、前記開口部10は開放される。
【0016】
前記サイクロン筒2の内部には、有底の内筒体28が着脱可能に設けられる。この内筒体28は、その側面部に多数の通孔29を有する。また、前記内筒体28は、その下部にスカート部30を有する。なお、このスカート部30の下端は、前記中間部7の中央部と同程度の高さに位置する。そして、前記スカート部30によって、前記内筒体28から前記サイクロン筒2の内面迄の距離、即ち気流の流通面積が狭くされる。そして、前記スカート部30の下端を境界として、上部が遠心分離領域31、下部が貯塵領域32となる。また、前記内筒体28の内側には、第二サイクロン筒33が設けられる。この第二サイクロン筒33は、上部で且つ上流側の加速領域34と、下部で且つ下流側の遠心力増幅領域35を有する。前記加速領域34における前記排気筒9の外周面及び前記第二サイクロン筒33の内周面は、下方ほど内径が一次関数的に減少するように構成される。また、前記排気筒9の外周面から前記加速領域34における前記第二サイクロン筒33の内周面までの距離は、前記加速領域34の全域に亘ってほぼ一定である。一方、前記遠心力増幅領域35は、下方ほど内径の減少率が小さくなるように、縦断面の形状が放物線状に形成される。そして、前記遠心力増幅領域35には、外周ほど低くなるフランジ部36が設けられる。そして、このフランジ部36の外周縁が前記内筒体28の内面と当接することで、前記内筒体28の底部と前記フランジ部36とで、第二貯塵領域37が形成される。そして、前記第二サイクロン33の下端38は、前記第二貯塵領域37内に位置する。なお、前記排気筒9の下端は、前記加速領域34と遠心力増幅領域35との境界付近に位置する。また、前記加速領域34の終端における内壁の半径の減少率(即ち、中心軸線Xに対する内壁の傾斜)は、前記遠心力増幅領域35の始端における内壁の半径Rcの減少率(即ち、中心軸線Xに対する内壁の傾斜)よりも小さい。
【0017】
次に、本発明の作用について説明する。図示しない電動送風機を作動させると、塵埃を含む気流が、図示しない流入口から前記サイクロン筒2内に流入する。そして、前記サイクロン筒2内に流入した気流は、前記サイクロン筒2の遠心分離領域31の内面に沿って旋回しながら下降する。この際、前記気流に含まれる塵埃に遠心力が働くことで、塵埃は前記サイクロン筒2の内面に押し付けられながら旋回する。そして、前記スカート部30によって、前記内筒体28から前記サイクロン筒2の内面迄の距離、即ち気流の流通面積Aaが狭くされる。なお、気流の流量Qと流速Vaと流通面積Aaとの関係は、以下の式で表される。

Q=AaVa

即ち、流量Qが一定であるので、気流の流速Vaは、気流の流通面積Aaが小さくなる前記遠心分離領域31の下部において増加する。従って、気流の流速Vaは、前記サイクロン筒2の内面と前記スカート部30の外面との距離が最小となる位置において最速となり、この位置において、塵埃に働く遠心力が最大となる。
【0018】
そして、気流が前記スカート部30を超えて下降すると、気流の流通面積Aaは急激に増加する。即ち、気流の流速Va及び分離された塵埃の旋回速度は、前記スカート部30よりも下方の前記貯塵領域32において急激に低下する。そして、前記遠心分離領域31における気流の流速Vaが速く、前記貯塵領域32における気流の流速Vaが遅くなることで、前記遠心分離領域31の気圧が相対的に低く、前記貯塵領域32の気圧が相対的に高くなる。このように、前記遠心分離領域31と貯塵領域32との間で気圧差が生じることで、分離された粗い塵埃が、気流に乗って再び前記遠心分離領域31に流れることが抑制される。従って、粗い塵埃は、遠心力によって気流から分離され、前記貯塵領域32に貯められる。なお、前記遠心分離領域31から貯塵領域32に流入した気流は、前記中間部7とスカート部30との間から再び前記遠心分離領域31に流入する。そして、前記遠心分離領域31に戻った気流には、細かい塵埃が含まれる。
【0019】
そして、前記遠心分離領域31に戻った気流は、前記内筒体28の側面部に形成された多数の通孔29を通って、前記内筒体28内に流入する。そして、前記内筒体28内に流入した気流は、更に、図示しない流入口から前記第二サイクロン筒33内に流入する。この第二サイクロン筒33は、前述した通り、上部の前記加速領域34と、下部の前記遠心力増幅領域35を有する。そして、前記加速領域34は、図示しない流入口付近を除き、下方ほど半径が一次関数的に減少するように構成されるので、下方ほど流通面積Abが二次関数的に減少する。即ち、前記加速領域34内において、気流の流速Vbは加速度的に上昇する。従って、前記加速領域34を通過した気流は、速い速度で前記遠心力増幅領域35に流入する。そして更に、前記遠心力増幅領域35において、気流の流速Vcが一次関数的に増加する。なお、前述した通り、前記加速領域34において気流の流速が高められることで、前記遠心力増幅領域35の始端における旋回気流の初速Vcも高められるので、前記遠心力増幅領域35の全域において、旋回気流の速度Vcを高めることができる。
【0020】
前記遠心力増幅領域35における気流について詳述する。気流の流量Qと流速Vcと流通面積Acとの関係は、以下の通りである。なお、Rcは前記遠心力増幅領域35における前記第二サイクロン筒33の内壁の半径である。

Q=AcVc=πRcVc

そして、前記遠心力増幅領域35の上端からの軸線X方向距離がDとなる位置における気流の流量Qと流速Vcとの関係は、以下の式で表される。

Q=πRc(Vc+DΔVc)

従って、前記遠心力増幅領域35の上端からの距離がDとなる位置における断面積Acは、以下の式で表される。

Ac=πRc=Q/(Vc+DΔVc)

また、前記遠心力増幅領域35の上端からの距離がDとなる位置における半径Rcは、以下の式で表される。

Rc=(Q/π(Vc+DΔVc))1/2

そして、前述した通り、前記遠心力増幅領域35において、気流の流速Vcが一次関数的に増加するようにすると、即ち、軸線X方向に単位距離移動する毎の流速Vcの増加量ΔVcを一定とすると、前記遠心力増幅領域35の内壁は、二次関数的なカーブを描く。即ち、前記遠心力増幅領域35の内壁半径Rcの変化率は、上端付近で急激に減少するが、その後は穏やかに減少してゆき、下端付近では僅かに減少するだけである。
【0021】
なお、前記排気筒9が設けられていない分、前記加速領域34の終端における流通面積Abよりも、前記遠心力増幅領域35の始端における流通面積Acが大きくなるので、旋回流が前記加速領域34から遠心力増幅領域35に流入した際に、速度が低下する虞がある。しかしながら、前述した通り、予め前記加速領域34において気流の流速が高められることで、前記遠心力増幅領域35における旋回気流の初速Vcも高くすることができる。また、前述した通り、前記加速領域34の終端における内壁の半径の減少率が、前記遠心力増幅領域35の始端における内壁の半径Rcの減少率よりも小さいことで、前記加速領域34から遠心力増幅領域35に流入した直後の旋回流の速度上昇率を高くすることができる。これらによって、前記加速領域34と遠心力増幅領域35との境界における流通面積の差に伴う旋回流の流速低下の影響を低く抑えることができる。
【0022】
前記遠心力増幅領域35内における旋回気流は、前記遠心力増幅領域35の上端から下端へ向かう速度が遅く、前記遠心力増幅領域35内に比較的長時間留まる。これは、前記遠心力増幅領域35の全域において、旋回気流の流速Vcが加速度的に上昇しないため、前記遠心力増幅領域35の上端側を流れる遅い(即ち、比較的高圧の)旋回気流が、下端側を流れる速い(即ち、比較的低圧の)旋回気流に過度に引かれて、急速に下端側に流れるということがないからである。即ち、前記遠心力増幅領域35は、その内部を流れる旋回気流の旋回回数を多くすることができることで、旋回気流中に浮遊した細かい塵埃に働く遠心力を増幅することができる。これにより、前記第二サイクロン筒33は、旋回気流に残った細かい塵埃を、効率よく遠心分離することができる。
【0023】
そして、前記第二サイクロン筒33内で旋回する気流が、前記第二サイクロン33の下端38を越えて下降すると、前記第二貯塵領域37において、気流の流通面積Acは急激に増加する。即ち、気流の流速Vc及び分離された塵埃の旋回速度は、前記第二貯塵領域37において急激に低下する。そして、前記遠心力増幅領域35における気流の流速Vcが速く、前記第二貯塵領域37における気流の流速Vcが遅いことで、前記遠心力増幅領域35の気圧が相対的に低く、前記第二貯塵領域37の気圧が相対的に高くなる。このように、前記遠心力増幅領域35と第二貯塵領域37との間で気圧差が生じることで、遠心分離された細かい塵埃が、気流に乗って再び前記遠心力増幅領域35に流れることが抑制される。従って、細かい塵埃は、遠心力によって気流から分離され、前記第二貯塵領域37に貯められる。なお、前記第二貯塵領域37に流入した気流は、前記第二サイクロン筒33を上昇した後、前記排気筒9を通過して、前記排気口8から図示しない電動送風機に流れる。
【0024】
そして、前記サイクロン筒2を前記開口部10側が下になるように把持し、前記係合機構4を操作して前記底蓋3を開くことで、前記サイクロン式集塵装置1の貯塵領域32に溜まった塵埃を廃棄することができる。詳述すると、まず使用者は、自身の一方の手で前記サイクロン筒2を把持する。この際、前記径小部5を把持すれば、前記サイクロン筒2を片手で持ちやすい。そして、前記係合機構4を構成する前記クランプ部材21のレバー22の上端部24を、前記サイクロン筒2の中心に向かうように動かす。これによって、前記レバー22が、前記揺動軸26を中心として揺動することで、前記レバー22の下端部25が、前記底蓋3の係合部18から離れる。即ち、前記レバー22の下端部25に設けられた爪部23と、前記底蓋3の係合部18との係合が解かれる。このように、前記爪部23と係合部18との係合が解かれると、前記底蓋3は、重力によって、前記揺動軸20を中心に揺動し、前記開口部10を開放する。そして、前記開口部10が開放されると、前記貯塵領域32内に溜められた塵埃は廃棄される。
【0025】
なお、前述した通り、前記レバー22の上端部24が前記サイクロン筒2の径小部5に位置することで、この径小部5を把持する手の指によって、前記係合機構4を操作することが可能である。即ち、使用者は、片手で前記サイクロン式集塵装置1を把持しながら、前記貯塵領域32内に溜まった塵埃を廃棄することができる。また、前述した通り、外面22Aが前記サイクロン筒2の側面に沿うように、前記レバー22の上端部24の外面22Aから前記サイクロン筒2の中心軸線X迄の距離が、前記レバー22の下端部25の外面22Aから前記中心軸線X迄の距離よりも小さくなる形状に屈曲させたことで、前記サイクロン筒2の外面から前記レバー22の上端部24の外面22Aまでの距離を小さくすることができるので、前記サイクロン筒2を把持した手の指を前記サイクロン筒2から大きく離すことなく、前記レバー22の上端部24を容易に操作することができる。即ち、使用者は、片手で前記サイクロン式集塵装置1を把持しながら、前記貯塵領域32内に溜まった塵埃を容易に廃棄することができる。
【0026】
なお、前記第二貯塵領域37に溜まった塵埃は、前記内筒体28を取り外すことで、廃棄することができる。即ち、前述した通り、前記第二貯塵領域37が、前記内筒体28の底部と前記フランジ部36とで画定されるので、前記内筒体28を取り外すことで、前記第二貯塵領域37も前記サイクロン筒2から取り外される。そして、前記内筒体28をひっくり返すことで、その底部に溜まった細かい塵埃を廃棄することができる。
【0027】
塵埃を廃棄した後、使用者は、前記内筒体28を再び前記サイクロン筒2に取り付けた後、前記底蓋3を閉方向に揺動させ、その係合部18を前記レバー22の爪部23と再び係合させる。この際、この爪部23は、前記圧縮コイルバネ27の付勢力によって、前記係合部18側に付勢される。これによって、前記爪部23と係合部18との係合が維持されるので、前記底蓋3は、前記サイクロン筒2に対し、閉状態で保持される。なお、前記サイクロン筒2の下端縁と前記シール部材19が当接することで、前記サイクロン筒2と底蓋3との間がシールされる。
【0028】
以上のように、本発明は、中空で且つ略錐状の第二サイクロン筒33を有し、この第二サイクロン筒33の内壁に沿って旋回流を発生させることで、遠心力によって旋回流中の浮遊物を分離するサイクロン分離装置としてのサイクロン式集塵装置1であって、その中心軸線X方向に、上流側の加速領域34と下流側の遠心力増幅領域35とを配列して前記第二サイクロン筒33を構成し、前記加速領域34において、中心軸線X方向の始端から終端に向かって旋回流の速度が上昇するように、前記第二サイクロン筒33の流通面積を始端から終端に向かって減少させると共に、前記遠心力増幅領域において、中心軸線X方向の始端から終端に向かって単位距離移動する毎に変化する旋回流の速度上昇率の増加を抑えながら速度を上昇させるように、前記第二サイクロン筒33の軸直断面積減少率を始端から終端に向かって減少させたことで、前記加速領域34の終端における旋回流の流速Vb及び前記遠心力増幅領域35の始端における旋回流の初速Vcを速くして、前記遠心力増幅領域35における旋回流の流速Vcを速くすることができるので、旋回流中の塵埃に働く遠心力を大きくして分離効率を向上させることができるばかりでなく、前記遠心力増幅領域35の全域で旋回流の流速Vcを急激に上昇させず、高速の旋回流を前記遠心力増幅領域35に比較的長時間留め、旋回流の旋回回数を多くすることができるので、浮遊物に遠心力を十分に働かせて遠心分離効率を向上させることができるものである。
【0029】
また、本発明は、前記加速領域34の中央部に排気筒9を設け、前記加速領域34の終端における前記第二サイクロン筒33の半径の減少率よりも、前記遠心力増幅領域35の始端における前記第二サイクロン筒33の半径Rcの減少率を大きくしたことで、前記加速領域34から遠心力増幅領域35に流入した直後の旋回流の速度上昇率を高くすることができるので、流通面積の増加に伴う旋回流の流速低下の影響を低く抑えることができるものである。
【0030】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態は、サイクロン集塵装置に関するものであるが、他の分離装置に採用してもよい。また、電気掃除機に採用してもよい。また、上記実施形態は、二段型のサイクロン分離装置における二段目に採用したが、一段型のサイクロン分離装置に採用してもよい。更に、上記実施形態では、サイクロン筒の遠心力増幅領域の始端から終端にかけてΔVcを一定としたが、要は、旋回流の流速が前記遠心力増幅領域の終端に向かうに従って急激に上昇しないように抑えることができればよいので、ΔVcに若干の変動があっても許容される。
【符号の説明】
【0031】
1 サイクロン式集塵装置(サイクロン分離装置)
9 排気筒
33 第二サイクロン筒
34 加速領域
35 遠心力増幅領域
X 中心軸線
Ac 遠心力増幅領域35における第二サイクロン筒33の流通面積
D 遠心力増幅領域35の始端からの距離
Rc 遠心力増幅領域35における第二サイクロン筒33の半径
Vc 遠心力増幅領域における旋回流の流速
ΔVc 遠心力増幅領域における中心軸線Xに沿った単位距離毎の旋回流の速度差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で且つ略錐状のサイクロン筒を有し、このサイクロン筒の内壁に沿って旋回流を発生させることで、遠心力によって旋回流中の浮遊物を分離するサイクロン分離装置において、
前記サイクロン筒が、その中心軸線方向に、上流側の加速領域と下流側の遠心力増幅領域とを配列して構成され、
前記加速領域にて、前記中心軸線方向の始端から終端に向かって旋回流の速度が上昇するように、流通面積を始端から終端に向かって減少させると共に、
前記遠心力増幅領域にて、前記中心軸線方向の始端から終端に向かって単位距離移動する毎に変化する旋回流の速度上昇率の増加を抑えながら速度を上昇させるように、前記サイクロン筒の流通面積減少率を始端から終端に向かって減少させたことを特徴とするサイクロン分離装置。
【請求項2】
前記加速領域の中央部に排気筒を設けると共に、前記加速領域の終端における前記サイクロン筒の半径の減少率よりも、前記遠心力増幅領域の始端における前記サイクロン筒の半径の減少率を大きくしたことを特徴とする請求項1記載のサイクロン分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22513(P2013−22513A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159607(P2011−159607)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】