説明

サイトカイン及びNF−KBに影響を与える組成物及び方法

本発明は、有効量の植物ろ過物組成物を個体に投与することにより種々のサイトカイン及びNF−κBに影響を与える組成物及び方法を開示する。種々の例示的実施形態において、IL−10及びIL−2などの種々のインターロイキン並びにNF−κBを含む転写因子を制御することにより、炎症、癌、及び/又はHIVなどの種々の感染症の有効な治療において前記組成物が有用であることが主張される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、サイトカインや転写因子などのタンパク質の産生及び/又は機能を変化させる組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は特定の淡水微生物、藻類、コケ、細菌及び/又は菌類の培養物又は共培養物から得られた組成物、並びに有効量の前記組成物を投与することにより炎症及び/又は癌及びHIVなどの疾患を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、免疫系の細胞などの種々の細胞から分泌される、広範な種類のタンパク質である。サイトカインの一つの機能は様々なシグナルを細胞間で運び、それにより細胞の間で活性調節を行うことである。病原体と細胞との接触などのいくつかの因子は、細胞にサイトカインを分泌させることができ、それにより疾患を生じうる。ある場合には、細胞は、病原体又は疾患に対する自然防御を組織化するための手段としてサイトカインを分泌する。
【0003】
サイトカインには数多くのものがあり、それらのうち多くのものは白血球細胞によって産生されるインターロイキン(「IL」)と一般的に称されている。また、インターロイキンにも数多くの異なる種類のものがあり、例えばIL−2、IL−10、及びIL−17Aなどがある。これらの異なるインターロイキンは、炎症を減少又は増加させる、種々の細胞種の増殖及び機能を刺激する並びに抗体の産生を調節するなど、それぞれ特定の機能及び効果を有している。例えば、IL−2及びTNF−αは炎症に寄与し、炎症性タンパク質とみなしうるのに対し、IL−10は炎症を減少させる抗炎症タンパク質であるとみなしうる。よって、産生されるIL−2及びTNF−αの量が増加するにつれて、炎症も大きくなる。逆に産生されるIL−10の量が増加するにつれて、炎症は小さくなる。
【0004】
インターロイキンは多くのプロセスに関与することが決定されており、これには炎症が含まれるがこれに限定されない。例えば、IL−2が免疫グロブリンの産生を抑制することを示唆する実質的な証拠が存在する。逆に、IL−10が免疫グロブリンの産生を増強することを示唆する実質的な証拠も存在する。
【0005】
別のサイトカインはインターフェロン−ガンマあるいはIFN−γである。IFN−γはウイルスに対する先天性免疫及び獲得免疫並びに細胞内細菌防御機能の上で、並びに腫瘍制御の上で、非常に重要である。IFN−γは30を超える遺伝子の転写を変化させ、Th2細胞活性を増加させる、NK細胞活性を増進する、及びこれら以外の種々の分子シグナル伝達経路に影響を与える、などの影響を生み出すことが示されている。
【0006】
他のサイトカインとしては、免疫細胞の制御に関わる腫瘍壊死因子アルファあるいはTNF−αがある。さらに、TNF−αの産生の上昇は、癌などの種々の人疾患に寄与する因子であると示唆されてきた。さらに別のサイトカインとしては顆粒球マクロファージコロニー刺激因子あるいはGM−CSFがある。GM−CSFは幹細胞を刺激することが知られている白血球細胞増殖因子であり、免疫/炎症カスケードの一部である。
【0007】
「核因子カッパベータ」あるいはNF−κBとして知られている転写因子は遺伝子転写の制御因子として機能する細胞内タンパク質であり、種々の生物学的プロセス及び病態において重要な役割を果たす。NF−κBは感染に応答しての免疫系制御において、並びにシクロオキシゲナーゼ、一酸化窒素シンターゼ及びその他の炎症促進性タンパク質の産生など幾つかの炎症経路において、重要な役割を果たすことが見出されてきた。NF−κBの不適当な調節は癌、炎症性疾患及び自己免疫疾患、敗血性ショック、ウイルス感染及び不適当な免疫発達に結びつけられており、幾つかの研究ではNF−κBはシナプス可塑性及び記憶に関連するプロセスに結びつけられている。NF−κB及び種々のサイトカインの役割は、Sarkar, et al.著、American Association for Cancer Research(2006年4月1日発行)のUsing Chemopreventive Agents to Enhance the Efficacy of Cancer Therapyというタイトルの論文で論じされており、この論文はその全体が参照により本明細書中に取り込まれる。さらに、HIVなど種々のウイルスはNF−κBとの分子結合部位を有しており、これは、NF−κBがHIVウイルスを潜在状態から活性状態へと活性化する上で非常に重要な成分でありうることを示している。
【0008】
よって、サイトカイン及び/又はNF−κBの調節は種々の疾患の治療を提供する上での非常に重要なプロセスでありうる。例えば、IL−10は抗炎症的性質を有しているため、慢性的な炎症状態にある患者においてIL−10を増加させることは炎症の治療に用いられうる。あるいは、NF−κBはHIVウイルスを潜在状態から活性状態に活性化する因子であるため、NF−κBの量を減少させることによりHIVウイルスが活性化されることを遅らせたり防止したりできる可能性がある。
【0009】
現在、サイトカイン及びNF−κBを調節するための組成物及び方法が知られている。しかし、これら知られた組成物及び方法のうち多くのものは細胞に対して刺激性であったり、細胞に対する毒性を有する。さらに、サイトカイン及びNF−κBを調節するための多くの知られた組成物及び方法は、多くのサイトカインを同じ様に調節するものであり、それらのうち幾つかのものは治療の所望される総体的効果の妨げとなりうる。例えば、IL−10などの抗炎症性サイトカインを上方制御する、炎症治療のための組成物及び方法が知られているが、これらの組成物ではIL−10の影響を減少させる炎症性サイトカインであるIL−2も上方制御されてしまう。
【0010】
このため、抗炎症性のサイトカイン及びNF−κBを制御し、これらに細胞レベルで影響を与える改良された組成物及び方法を提供することが有利となる。さらに、選択されたサイトカイン及びNF−κBを制御して多くの効果を達成し、種々の健康上の問題を治療することが可能な組成物及び方法を提供することが望ましいものになる。そのような、多数のサイトカインの特異的制御の一例は、炎症を抑制するために、IL−2を上方制御すること無しに、あるいはIL−2を下方制御さえしつつ、IL−10を上方制御して、これにより、炎症を減少させるために炎症促進性のサイトカインのレベルを減少若しくは維持しつつ抗炎症性サイトカインを増加させる組成物である。種々のサイトカイン及びNF−κBに影響を与える組成物及び方法であって、ただし刺激性でなく、非毒性であり、製造及び流通が容易で、かつ製造が高価ではない、組成物及び方法を提供することも望ましいこととなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
詳細な説明に記載されるように、また本発明の種々の実施形態に従って、サイトカイン及びNF−κBに影響を与える組成物及び方法が開示される。一つの実施形態によれば、前記組成物は、ATCC寄託番号PTA−5863の特定の淡水微生物、藻類、コケ、細菌及び/又は菌類の培養物又は共培養物から得られる。
【0012】
本発明の種々の例示的実施形態によれば、サイトカイン及びNF−κBに影響を与えて免疫応答を制御し、炎症を減少し、抗酸化活性を付与し、抗体産生を調節し、癌性腫瘍の成長を治療若しくは予防し、及びHIVなどの感染を治療若しくは防止する、方法が開示される。この組成物は非毒性であり、IL−2及び/又はTNF−αなど他のサイトカインを維持又は減少させつつIL−10などの特定のサイトカインを選択的に上方制御して、炎症の減少などの所望の効果を達成することが可能である。本発明のさらに別の例示的実施形態においては、NF−κBのDNA結合活性に影響を与える方法、及びTNF−αに誘導されたNF−κB活性化を減少させる方法が開示される。さらに、本発明の種々の例示的実施形態によれば、IL−10など特定の抗炎症性サイトカインを誘導する方法、特にIL−2、TNF−α及びIFN−γなど他の炎症促進性サイトカインは誘導しない方法が開示される。
【0013】
本発明の主題は、明細書末尾において具体的に指摘され明確にクレームされている。しかしながら、本発明の実施形態は、付属の図面と併せて以下の説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A〜Dは、本発明の種々の例示的実施形態による電気泳動ゲル移動度シフトアッセイからの生データを示す。
【図2】図1A〜図1Dに提示された実験で得られた結果の定量的分析を表した棒グラフを示し、それにより本発明の種々の例示的実施形態によるNF−κBに影響を与える方法の効能を示す。
【図3】本発明の種々の例示的実施形態による、サイトカインIL−2の産生に対する方法の効能を表した棒グラフを示す。
【図4】本発明の種々の例示的実施形態による、サイトカインIL−10の産生に対する本方法の効能を表した棒グラフを示す。
【図5】本発明の種々の例示的実施形態による、サイトカインIL−17Aの産生に対する本方法の効能を表した棒グラフを示す。
【図6】本発明の種々の例示的実施形態による、サイトカインINF−γの産生に対する本方法の効能を表した棒グラフを示す。
【図7】本発明の種々の例示的実施形態による、サイトカインTNF−αの産生に対する本方法の効能を表した棒グラフを示す。
【図8】本発明の種々の例示的実施形態による、GM−CSFの産生に対する本方法の効能を表した棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本発明の例示的実施形態の説明であり、本発明の範囲や利用可能性を限定することは何ら意図されていない。寧ろ、以下の説明は本発明の種々の実施形態を実施するための便利な例示を提供することを意図しているものである。本発明の範囲から逸脱しなければ、他の構成、組成、量、方法などを用いても構わない。以下で明らかになるように、本発明の精神及び範囲から逸脱しなければ、これらの実施形態に記載された方法に対して他の変更を種々加えても構わない。
【0016】
本発明の種々の例示的実施形態によれば、本発明は種々のサイトカイン及びNF−κBに影響を与える組成物を投与することを含む。前記組成物は
、米国特許7,807,622(タイトル:”Composition and Use of Phyto−Percolate For Treatment of Disease)、米国特許出願番号12/897,574(タイトル:”Composition and Use of Phyto−Percolate For Treatment of Disease”)、米国特許出願 11/587,266(タイトル:”Method of Preparation and Use of Fibrinolytic Enzymes in the Treatment of Disease”)、米国特許出願番号61/306,591(タイトル:”Method of Lowering Cholesterol With PAZ Components”)及び米国特許出願番号61/311,838(タイトル:”Agents and Mechanisms for Treating Hypercholesterol with PAZ Components”)などの、本願と同一人によって所有されている数多くの共係属中の特許出願に記載されている。上記の文献は全て、その全体が参照により本明細書中に取り込まれる。これらの米国出願からの優先権を主張する米国外での特許出願及びPCT特許出願の全ても、その全体が参照により本明細書中に取り込まれる。
【0017】
本明細書中で「植物ろ過物」(phyto−percolate)と称される組成物は、藻類、コケ、細菌及び菌類など特定の微生物の培養物又は共培養物から産生される分子から概して構成されている非毒性の組成物である。一つの例示的実施形態においては、植物ろ過物を作製するために用いられる培養物の寄託は、寄託番号PTA−5863としてバージニア州マナサスのアメリカンタイプカルチャーコレクションに預けられている。この寄託物は、それを開示した特許が付与された際には公衆に利用可能となる。この寄託は37C.F.R.1.808章及びMPEP2410.01章に従ってなされたものであり、よって、特許が付与された際は寄託された生物材料の公衆による入手可能性について預託者が課した制限は全て取消不能に除去されるという一つの例外事項を除き、この寄託物へのアクセスは、本出願が継続している間、37C.F.R.1.14章及び35U.S.C.122章の下でそのアクセスを認められた者として長官により決定された者に対し、その寄託物への参照をなすことによって認められる。
【0018】
一つの例示的実施形態において、本明細書中に「植物ろ過物」として記載された組成物は以下に記載のプロセスにより作製される。この実施形態によれば、まず、ATCC培養物寄託番号PTA−5863として現在寄託されている種類の培養物の、おおよそ1又はそれ以上のアリコート(aliquot)を得る。1より多いアリコートを用いる種々の実施形態においては、それらのアリコートを1つのより大きな複合培養器中で一緒にし、以下に述べる方法を用いて維持してもよい。
【0019】
この例示的実施形態によれば、凍結保存から成功裏に入手及び培養された培養物の各アリコートについて、その全量を滅菌脱イオン水を用いて全量が約10mLになるように希釈する(例えば、3アリコート(約4.5ml)を一緒にし、全量が30mLになるよう希釈する)。さらに、約1mLの滅菌脱イオン温水中に約20mgの乾燥活性パン酵母を混合して得られた栄養ブレンド原液を調製し、室温で約20分インキュベートし、約1000の培養アリコートに十分な栄養を産生する。そして、調製した栄養ブレンドのうち約1μLを各希釈アリコートに添加し(例えば、混合され希釈された3アリコートに対しては、調製した栄養ブレンド3μLを添加し)、次に混合物を緩やかに渦状にかき混ぜる。
【0020】
この例示的実施形態に係る植物ろ過物の製造の次のステップは、前記培養サンプルを栄養ブレンドと共に丸底ガラス培養器などの滅菌培養器中で、雰囲気を滅菌フィルター換気しながら、約1週間室温でインキュベートするステップを含む。この例示的実施形態においては、この混合物を週の半ばで一度渦状にかき混ぜ、約12:12時間サイクルの疑似日照の下で維持する。この週の後、おおよそ用いられた各希釈アリコートに対して約1μLの新たに調製した栄養ブレンドを、前記培養器に添加し、この新たな混合物を好ましくは穏やかに渦状にかき混ぜる。この栄養ブレンドが加えられた培養サンプルを室温で約1週間さらにインキュベートし、好ましくは週の半ばで一度渦状にかき混ぜ、約12:12時間サイクルの疑似日照の下で維持する。
【0021】
この例示的な植物ろ過物製造方法を続けながら、滅菌管とサイフォン又は蠕動ポンプとを用いて、培養器の底で生育している藻類バイオマスを撹乱すること無しに培養器のおおよそ上半分から液量をゆっくりと回収あるいは収集し、使用した各寄託アリコート当たり約5mLを生成する。この液体を滅菌ガラス保存容器その他の適切な保存容器に保存して、滅菌フィルタ処理して所望の際に投与するようにしてもよい。前記培養器中の液量は滅菌脱イオン室温水を用いておおよそ回収前の体積まで補充すべきであり、それにより最終総体積は使用した各寄託アリコート当たり約10mLとなる。次に、新たに調製した栄養ブレンドを、使用された各アリコート当たりおおよそ1μL、前記培養器に添加し、そして混合物を穏やかに渦状にかき混ぜ、所望に応じて更なるサイクル、前記のやり方でインキュベートする。
【0022】
この例示的実施形態を引き続き参照しながら、前記培養サンプル及び栄養ブレンドを、約12:12時間サイクルの疑似日照を維持しながら、室温で約1週間あるいはそれ以上インキュベートする。この培養液を栄養ブレンドとインキュベートしながら、先に回収した材料を約0.2μmの孔径の滅菌膜フィルタ(又は当業者が認識する同様のフィルタ)でろ過し、最終的な生活性液体(本明細書中で「組成物」又は「植物ろ過物」と記載される)を生成する。フィルタに補足されたバイオマスを破壊又は収集してもよい。インキュベーション又はスケールアップの間に、培養物の要求に応じた補助的な微量栄養素又は微量ミネラルブレンドを培養物に加えて、元々の培養バイオマスの完全性を保全し、さらなる成長を支援するようにしてもよい。
【0023】
さらに、この例示的製造方法によれば、培養液中で経時により(約8〜12週間あるいはそれ以上)十分なバイオマスがひとたび生成されれば、必要に応じて、培養液をスケールアッププロセス中で以下の例示的なステップにより2つの等しい培養液に分割してもよい。最初に、培養液を穏やかにホモジナイズして、バイオマスを完全に懸濁させる。2番目に、前記均質な培養液のうち約半分を新たな滅菌ガラスその他の適切な培養器に移す。3番目に、室温の滅菌脱イオン水を用いて、これら2つの培養器の各々の中の液量を最初の培養体積に戻すように補充する。4番目に、各培養器に新たに調製された栄養ブレンド約1μLを添加し、穏やかに渦状にかき混ぜる。5番目に、栄養ブレンドが添加された培養液を室温で約1週間、好ましくは週の半ばで1度渦状にかき混ぜ約12:12時間サイクルの疑似日照の下で維持しながら、インキュベートする。6番目に、培養器に約1μLの新たに調製した栄養ブレンドをさらに添加する。7番目に、栄養ブレンドが添加された培養サンプルを室温で約1週間、好ましくは週の半ばで1度渦状にかき混ぜながら、さらにインキュベートする。最後に、このスケールアッププロセスについては、複数の培養液をより大きな培養器中で一緒にし、同様の一般的培養方法及び栄養−培養液体積比を用いて維持することもできることを述べておく。
【0024】
植物ろ過物製造方法のこの例示的実施形態を引き続き参照しながら、上述したステップを必要に応じて実施して十分な量の植物ろ過物及びその種々の誘導体を生成する。PROALGAZME(登録商標)の名前で販売されている植物ろ過物のサンプルを、アリゾナ州スコッツデールのHealth Enhancement Products, Inc.から入手することも出来る。
【0025】
組成物の製造方法及び組成物中の量に関する具体例が上記に与えられているが、組成物及び組成物の製造方法に対する種々の変形例を用いることができ、また本発明の範囲内となりうることを述べておく。さらに、植物ろ過物を製造するために、他の培養方法、希釈体積、生育培地若しくは栄養ブレンド、体積若しくは添加頻度、インキュベーション時間、培養器、回収若しくはろ過方法、などを用いることができることが想定され、また本発明の範囲内であり、上記の例示的方法は植物ろ過物の他の製造方法を排除することを意図したものではない。
【0026】
本明細書中で、植物ろ過物の語は上記の組成物及びその誘導体を指す。植物ろ過物はまた、上記のプロセス又は当業者に認識可能なそのバリエーションにより作られた任意の組成物も指す。出願人は、本出願の出願後に「植物ろ過物」の語をより狭く定義する権利を保持する。
【0027】
さらに、本発明の種々の例示的実施形態によれば、植物ろ過物は種々の画分に分離される。幾つかの例示的かつ非限定的なプロセスを以下に記載する。
【0028】
一つの例示的実施形態によれば、植物ろ過物を、蠕動ポンプなどのポンプを用いて、毎分約6mLの流速で2.7cm×23cmの寸法(それぞれ総容積でおおよそ100mLの樹脂)の4つのクロマトグラフィーカラムを連続して通過させる。この流速は最適な結合のために選択されたもので、最も遅い樹脂(C18)の流速に基づいてもいる。このプロセスは、約180Lの植物ろ過物の分画を可能とするために最適化されている。その他のサンプル体積を収容するようにプロセスを最適化することなどの、これらの方法の他のバリエーション及び変形例は、当業者に自明であろう。下の表は成分の分離及び単離のための例示的なフローチャートを示している。
【化1】

【0029】
DEAE樹脂などの樹脂を約18Lが通過した後、カラムを新しいカラムに交換し、先の約18Lからの結合物質を直ちに溶出し、0.2ミクロンのフィルタでろ過し、溶出物を滅菌容器中に保存する。同様に、この例示的実施形態により、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を、約36Lの材料がそれぞれを通過した後に交換する。単一の疎水性樹脂(C18)はプロセス全体で用いる。最初の3つのカラムからの溶出画分は全て直ちに滅菌フィルタを通過させ、滅菌容器に保存する。C18カラムに結合した材料の溶出には有機溶媒が必要で、これはその後、以下に詳述されるように除去される。前記4つのカラムのいずれにも結合しない材料は、有機成分の大部分が枯渇しており、「フロースルー」画分とラベルされ、後の試験及び使用のために滅菌容器に集められる。
【0030】
分離プロセスの各ステップの詳細な説明を、本発明の一つの例示的実施形態に従って説明する。最初に、クロマトグラフィーカラム樹脂を以下のプロセスに従って調製する。DEAEセルロース(タンパク質の分離のために広く用いられている弱陰イオン交換樹脂)をこの例示的プロセスで用いる。おおよそ20gのDEAEセルロースをおおよそ300mLの水(この例示的実施形態では超純水が用いられる)で再水和し、1Lフラスコ中室温で一晩あるいはそれと同等の時間で膨潤させる。落ち着いた/充填樹脂から水をデカンテーションし、樹脂をさらに約300mLの超純水などの水の中に再懸濁する。この再懸濁及びデカンテーションの手順を約24時間かけてさらに2回繰り返す。本例示的実施形態によれば、前記洗浄された樹脂を約200mlの0.1MNaOH/0.5MNaCl中に再懸濁し、次いで600mlのブフナー漏斗に移す。このフラスコをさらに約50mlの0.1MNaOH/0.5MNaClでリンスし、リンス中に懸濁された材料を前記漏斗に移す。溶液を重力により流す前に、前記樹脂をこの溶液中で約10分落ち着かせる。次にこの樹脂を約750mlの0.1MNaOH/0.5MNaClでさらにリンスする。このろ過手順を0.5MNaClを用いて繰り返し、0.1MHCl/0.5MNaClを用いてさらに繰り返す。この樹脂を、最初に約2Lの超純水などの水でリンスし、続いて流出液のpHが5より大きくなるまで約5Lの超純水でさらにリンスする。次に、このDEAEセルローススラリーを5つのカラム(本実施形態によれば、2.7×23cmの寸法の5つのカラム)に移し、落ち着かせる。充填されたカラムは総容積約100mlを有し、本例示的実施形態において使用されるまで4℃で保存する。
【0031】
さらに、この例示的実施形態によれば、約100gの乾燥樹脂、例えば塩化物形態で受領される、100〜200ドライメッシュ、106〜180μmウエットビーズ径、4級アンモニウム官能性のカタログ番号140−1441のBioRad AG1−X8強塩基陰イオン交換樹脂、が用いられる。不要な酸化夾雑物を全て除去するため、樹脂を最初に脱イオン水で水和して消耗(exhaust)させ、次に各カラムの底部にガラスフィルタを装着したガラスカラムにビーズをロードした。約3時間かけて約500mLの1.0M塩化ナトリウム溶液を前記樹脂に通すことで、前記樹脂は膨潤し、不要な酸化産物を放出する。このプロセスによって、前記樹脂は塩化物(Cl−)形に変換もされる。この塩処理の後、前記樹脂を約2リットルの脱イオン水でリンスして、余分な塩化ナトリウムを除去する。
【0032】
今や完全に塩化物(Cl−)形となった陰イオン交換樹脂を、約500mLの2.0M水酸化ナトリウム溶液をカラムに約2時間かけて通すことで、水酸化物(−OH)形に変換する。流出液は若干色合いが悪く、アンモニア様の臭気を有していることがあるため、次に、この樹脂を重力サイホン滴下を用いて約7.0Lの脱イオン水で一晩リンスする。本例示的実施形態においては、このステップの後は、樹脂の流出液は透明、無色、かつ無臭である。前記カラムから溶出する溶液は、インジケーターストリップで測ったところ中性のpHである。この陰イオン交換樹脂は、この時点では、再生され使用準備が整っていると考えられる。
【0033】
さらに、この例示的実施形態によれば、約100gの乾燥樹脂、例えばミシガン州ミッドランドのDow Chemical companyから入手可能な400〜700μmのビーズ径及びスルホネート官能性を有するDOWEX MONOSPHER(登録商標)88強酸陽イオン交換樹脂、を用いる。陰イオン交換樹脂については、不要な酸化夾雑物は最初に脱イオン水で水和させ、次に各カラムの底にガラスフィルターを装着したガラスカラムにビーズをロードすることで除かれる。
この塩化ナトリウムによる消耗(exhaustion)により、前記樹脂は完全にナトリウム(Na+)形に変換される。この塩処理の後、前記樹脂を約2.0リットルの脱イオン水でリンスすることで余分な塩化ナトリウムを除去する。
【0034】
今や完全にナトリウム(Na+)形である陽イオン交換樹脂を、約500mLの2.0M塩酸溶液をカラムに約2時間かけて通すことによって、酸(H+)形に変換する。次に、インジケーターストリップで測定したカラムから溶出する溶液のpHが中性になるまで、この樹脂を約3.0Lの脱イオン水でリンスする。この陽イオン交換樹脂は、この時点では、再生され使用準備が整っていると考えられる。
【0035】
さらに、この例示的実施形態によれば、シリカゲル90C18−逆相(C−18)において、約25gの樹脂を超純水に再懸濁し、カラムに詰め、使用前に約5倍体積の水で洗浄する。
【0036】
この例示的実施形態の説明を続けながら、以下の段落は分画プロセスの詳細なタイムテーブルを与える。前記植物ろ過物は、流速約6.9ml/分で、一つのカラムからの流出液が次のカラムを流れるように連続して配置されたカラム群を通り抜けるようにポンプで送り込まれる。さらに、フロースルーを収集するために収集容器が清浄化及び乾燥される。貯められたフロースルーを0.2μmフィルタシステムに通し、約4〜25℃で保存する。
【0037】
最初の約18Lが通過した後、DEAEセルロースカラムは除去され、pH8.3の1MのNaCl250mlで溶出される。溶出液を0.2μフィルタでろ過し、ラベルして4℃で保存する。次に、新たなDEAE−セルロースカラムを分画システムに設置し、プロセスを再開する。次の18Lが通過した後に、前記DEAE−セルロースカラム、陰イオン交換カラム、及び陽イオン交換カラムを除去し、各々をpH8.3の1MのNaCl約250mlで溶出する。溶出液をそれぞれ個別の0.2μmフィルタシステムに通し、ラベルして約4℃で保存する。
【0038】
この例示的実施形態によれば、新たなDEAE−セルロースカラム、陰イオン交換カラム及び陽イオン交換カラムが分画システムに設置され、プロセスが再開された。次の18Lの後、前記DEAE−セルロースカラムを除去し、pH8.3のNaCl250mlで溶出する。溶出液を0.2μmフィルタシステムに通し、ラベルして4℃で保存する。(全物質から)C18カラムに結合した物質の溶出:C−18カラムは過剰量の水で廃液し、加圧窒素でパージして残留水を除去する。
【0039】
次に、カラムに約50mLのアセトンを流し(flushし)て、最後の微量の水及び有機物を除去し、約50mLの酢酸エチルを流し、最後に約50mLのヘキサンを流す。この溶液を過剰量の無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ガラスウール又は類似の材料でろ過する。
【0040】
次に、溶媒を窒素流で除去し、約5mLのエチルアセテートで再構成して質量が既知のガラスバイアルに移す。溶媒を窒素で除去し、最終質量を測る。
【0041】
さらに、DEAE−セルロースカラム、陰イオン交換カラム、及び陽イオン交換カラムをそれぞれpH8.3の1MのNaCl約250mlで溶出する。溶出物を個別の0.2μmフィルタシステムに通し、ラベルして約4℃で保存する。陽イオン交換カラムからの溶出液1mL(図1〜8及び本発明の説明において画分3又は「F3」とラベルされている)は、植物ろ過物を最初の3つのカラムに前記の方法で通した後に陽イオン交換カラムから捕捉された溶出液で、分離プロセスに導入された未分離の植物ろ過物と比べると約160倍の濃縮物である(つまり、プロセスに導入した植物ろ過物160mLにつき、1mLの溶出液がPF3で分離される)。
【0042】
図1〜8中及び本発明の説明中F4とラベルされた画分4は、前記方法を用いて植物ろ過物に4つのカラム全てを通過させた後に分画シリーズの最後で捕捉されたフロースルーである。
【0043】
その結果が図1〜8に提示されている実験において、与えられた希釈物は完全な未分離の植物ろ過物組成物又は指定された特定の画分のものである。例えば、F4で分離されたフロースルーの総体積は未分画の植物ろ過物のそれと同じであり、F4の全成分の相対濃度は未分離の植物ろ過物のそれと同じであったが、強陽イオン交換樹脂から溶出したF3画分の1:20希釈物の成分の相対濃度は、未分離の植物ろ過物に対し約8倍濃縮されている(植物ろ過物160mLにつきF3の1mLが得られるため、1:20希釈物ではその中の成分は未分離の植物ろ過物に対し約8倍濃縮されているのに相当する)。
【0044】
この例示的実施形態によれば、植物ろ過物及びフロースルー/F4はカラムから出た直後のその元々の濃度の状態で、本明細書に記載されるように1:20及び1:100のみの希釈で試験された。末梢血単核細胞(「PBMC」)の培養物を、民間の販売元による正常な健康ヒト被験者から得た2バイアルの凍結末梢血単核細胞から調製し、2×10mlの培地に添加し、遠心した。末梢血単核細胞はRPMI1640/5%FBS中に再懸濁し、24時間培養した(培地11ml中に1バイアル分の凍結細胞)。
【0045】
この例示的実施形態のための処理剤は3つの剤:未分離植物ろ過物(「PAZ」)、画分3(「F3」)、画分4(「F4」)を含んでいる。各々に対する処理濃度は1:20及び1:100であった。各剤についての、希釈による例示的なサンプル調製方法は次のとおりである。第1に、0.7mlの剤(PAZ、F3又はF4)と6.3mlのRPMI1640/5%FBSとを一緒にして1:10希釈物を調製し、総量7mlの1:10溶液を得る。第2に、(各剤の)1:10希釈物1.2mlとRPMI1640/5%FBS4.8mlを一緒にすることによって1:50希釈物を調製し、総量6mlの1:50溶液となる。さらに、希釈された画分3(F3)については、1MのNaOHを用いてpHを7.0へと調製する。
【0046】
この例示的実施形態によれば、播種、処理、及び検出は以下のステップによって達成される。2皿分の末梢血単核細胞を合わせ、少量の末梢血単核細胞を0.4%のトリパンブルーで染色し、末梢血単核細胞の細胞数を知られている技術を用いて計数する。
【0047】
この実施形態においては、炎症性サイトカイン分泌の酵素結合免疫吸着測定(「ELISA」)分析、ヒトサイトカインの産生を並行して定量化するための商用キットに提供されたプロトコールを用いた。最初に、末梢血単核細胞を24ウェルプレートに播種(培地320μl中、337,600細胞/各ウェル)し、37℃で48時間インキュベートした。本例示的実施形態においては、さらに320μlの培地を添加し、細胞を48時間培養した。コントロール(対照)培養については、前記320μlの追加的培地は追加成分を何ら含んでいなかった。幾つかのサイトカインの生産を刺激するために、末梢血単核細胞の並行培養物を50ng/mlのホルボールミリステートアセテート(「PMA」)及び1μg/mlのイオノマイシンで24時間処理し、0.64μlPMA/0.64μlイオノマイシンを添加し、さらに24時間インキュベーションした。末梢血単核細胞が植物ろ過物またはそこから得た画分で処理される培養物については、植物ろ過物またはそこから得られた画分3若しくは4の1:10又は1:50希釈物を含むさらなる培地320μl(これにより培養物中の最終希釈度は1:20又は1:100となる)を24時間のインキュベーションの直前に添加し、PMA+イオノマイシン処理有り又は無しでさらに24時間培養した。2連の末梢血単核細胞培養物を、これらの条件の各々について調べた。インキュベーション期間の最後に、培養物を遠心し、上清培地を回収してアリコートを−70℃で保存した。次いで、培地サンプルの各々中に存在するサイトカイン量を、ヒト炎症性サイトカイン用多アナライトELISArrayキット(商品番号MEH−004A)及びSA Biosciencesから提供された方法を用いて決定した。
【0048】
植物ろ過物又はそこから分離された画分が、培養末梢血単核細胞の核タンパク質画分中のNF−κBのDNA結合活性に及ぼす影響の分析は、この例示的実施形態においては以下の様にして決定した。約18.26mLの懸濁末梢血単核細胞を約18mLの培地に添加し、この細胞懸濁液(2mL中に2,718,000細胞)の2mlをそれぞれ60mm培養皿に播種した。本例示的実施形態においては、さらに2mLの培地を添加した。コントロール培養については、この2mLの追加的培地は追加成分を何ら含んでいなかった。TNF−αで刺激された細胞の培養を、2mLの追加的培地を培養開始時に添加することも含め同じやり方で行ったが、ただし回収の1時間前に2μlのTNF−α(50ng/ml)をこれらの培養物に添加した。末梢血単核細胞が植物ろ過物又はそこから得られた分画によって処理される培養物については、植物ろ過物又はそこから得られた画分3若しくは4の1:10又は1:50希釈物を含む2mLの追加培地(これにより培養液中の最終希釈度は1:20又は1:100となる)をインキュベーションの直前に添加した。NF−κBのDNA結合活性の阻害についての2つのポジティブコントロールを行った。一つのケースでは、末梢血単核細胞を25μMのG2535の存在下で24時間培養し、続いてTNF−α処理を1時間行った。2つ目のケースでは、末梢血単核細胞を25μMのゲニステインの存在下で24時間培養し、続いてTNF−α処理を1時間行った。これらの条件それぞれについて2連の末梢血単核細胞培養物を試験し、次いで回収の前に37℃で24時間培養した。
【0049】
インキュベーション期間の最後に、PubMed−Cancer Research65:6934(2005年)に記載された方法に従って核タンパク質を細胞から抽出し、同族(cognate)NF−κBのDNA結合エレメントに対応する合成放射標識DNA配列へのNF−κBの結合について電気泳動移動度シフト解析(「EMSA」)をPubMed−Cancer Research65:6934(2005年)に記載されたものなどの確立されたプロトコールを用いて行った。
【0050】
今度は図1〜8を参照して、本発明のある例示的実施形態に従って、「PAZ」の句で表される植物ろ過物及びその画分を用いて種々のサイトカイン及びNF−κBに影響を与える方法について論じる。種々のサイトカインの産生及びNF−κBのDNA結合活性に影響を与える組成物の具体例がここでは論じられるものの、本発明はそれらの例や、本明細書中で論じられる組成物の組成及び量、希釈、又は画分のみには制限はされない。ただし、出願人は特定の量、希釈、又は画分を後日クレームする権利を保持する。
【0051】
図1A〜1Dを具体的に参照しながら、NF−κBが結合するDNA配列に対応し赤外線色素で標識されたデオキシオリゴヌクレオチドを用いて行われた、NF−κBについての種々の電気泳動移動度シフト解析あるいは(「EMSA])の生データが示される。具体的には、図1A及び1Bは、赤外線スキャナー(Li−Cor Corporation)を短時間用いて(図1A)バンドを可視化した「低濃度」及び同じゲルから得られた画像を増強した(図1B)「高濃度」の両方の結果を示す。図1C及び1Dは、図1A及び1Bに示された分析の基となった試験を、同じ量の核タンパク質を用いてより長時間(2時間に対し3時間)に渡って再度行ったときの結果を示す。
【0052】
今度は図2を参照し、ホルボールミリステートアセテート(PMA)による刺激有り又は無しの場合の末梢血単核細胞中のNF−κBのDNA結合活性に対する、植物ろ過物及び完全な植物ろ過物組成物をクロマトグラフィーで処理して得られた種々の画分を投与したことによる影響が、本発明のある例示的実施形態に従って示されている。活性なNF−κBは同族(cognate)DNA配列に結合し、炎症において重要な役割を果たす特定のタンパク質の転写を調節する二量体タンパク質である。このため、発現しDNAに結合するNF−κBの量が多くなれば、産生される炎症性タンパク質の量も多くなり、炎症反応も大きくなる。NF−κB標的遺伝子のDNA配列に結合するNF−κBの総量を減少させると、炎症が減少すると共に、HIVウイルスなど種々のウイルスの活性化の減少などのNF−κBの他の効果も減少する。
【0053】
図2に示されるように、コントロールの未刺激の未処理末梢血単核細胞を試験して、放射標識DNAプローブに結合するNF−κBの天然量を決定した。これは、1.0の相対ユニットで表されるNF−κB活性のベースラインの測定を示すものである。この例によれば、腫瘍壊死因子アルファあるいはTNF−αが添加された場合、NF−κBのDNA結合活性はほぼ2.0の相対レベルへと顕著に増加した。しかし、植物ろ過物(「PAZ」とラベル)の1:20希釈物を含む組成物を末梢血単核細胞に添加すると、NF−κBの濃度はコントロールに比較して大きく減少し、相対レベルは約0.4ユニットとなった。図2に示されるように、また、本発明の種々の例示的実施形態によれば、TNF−αと組み合わせられた1:20又は1:100希釈の植物ろ過物、1:100希釈の植物ろ過物単独、1:20及び1:100希釈の画分3及び4(「F3」及び「F4」とラベル)単独、及びTNF−αの存在下での1:100希釈の画分3、はNF−κBの総濃度をコントロールに比較して減少させ、1:100希釈の画分4にTNF−αを足したものはNF−κB濃度を増加させた。図2には、TNF−α、G2535+TNF−α、G2535単独、及びゲニステイン単独、を添加した結果も示されている。図2に示されるように、植物ろ過物単独、画分3及び画分4はNF−κBを阻害し、植物ろ過物及び画分3はどちらもTNF−αが誘導するNF−κBの活性化を阻害した。
【0054】
よって、植物ろ過物を投与することで、NF−κBのDNA結合能を減少し得、これは炎症を減少させる。さらに、NF−κBの活性化はHIVウイルスなど特定のウイルスの複製及び/又は機能を促進するため、NF−κBの総DNA結合活性を減少させることでHIVなど特定のウイルスの病理学的効力を減少あるいは予防しうる。本発明は、NF−κBのDNA結合活性減少の、現在知られあるいは将来発見されるいかなる効果も、植物ろ過物並びにその希釈物、画分及び誘導体を有効量投与することで達成できることを想定する。
【0055】
今度は図3〜5を参照し、本発明の種々の例示的実施形態に従って、末梢血単核細胞による種々のインターロイキンの産生に対する植物ろ過物の影響を論じる。IL−10やIL−17Aなどある特定のインターロイキンが論じられるが、植物ろ過物は他のインターロイキンや他の炎症経路においても効果を有する。
【0056】
特に図3を参照して、本発明の一つの例示的実施形態に従い、植物ろ過物及びその種々の希釈物及び画分を他の刺激物質の存在無しに末梢血単核細胞に添加した後に、あるいはPMAで処理された末梢血単核細胞に添加したときの、産生されるIL−2の量(100,000細胞当たりのIL−2のpg数で表される)を測定した。示されるように、未処理の培養末梢血単核細胞からなるコントロールは検出可能な量のIL−2を培地中に分泌しなかったが、一方、PMAを培養末梢血単核細胞に添加したところ約125pg/100,000細胞のIL−2分泌があった。培養末梢血単核細胞を植物ろ過物の1:20又は1:100希釈物で処理しても検出可能な量のIL−2の産生の誘導は起こらなかった(つまり、コントロールの未処理末梢血単核細胞の場合とおおよそ同じ結果)。植物ろ過物の1:20希釈物、1:100希釈の画分3、及び1:20希釈の画分4をPMAで刺激された末梢血単核細胞に添加したところ、PMA単独で処理した末梢血単核細胞よりもIL−2の産生は減少した。植物ろ過物のクロマトグラフィー分画で得られた画分3及び画分4の1:20及び1:100希釈物で培養末梢血単核細胞を処理したところ、コントロールと同様に、検出可能な量のIL−2の産生は誘導されなかった。しかし、この例示的実施形態によれば、1:100希釈の植物ろ過物及び1:20希釈の植物ろ過物の画分3及び1:100の植物ろ過物の画分4を、PMAの存在下の末梢血単核細胞で試験したところ、PMA単独を添加した場合に比べると、IL−2の総量は大きく変化はしなかった。
【0057】
よって、この例示的実施形態に示されたように、植物ろ過物及びその希釈物、画分又は誘導体を添加することによってIL−2産生を刺激する薬剤に応答して末梢血単核細胞から産生されるIL−2濃度は減少し得、ただしこれらはそれ自体ではIL−2の産生を刺激せず、またこのサイトカインの産生を誘導することが知られている薬剤(例えばPMA)によるIL−2産生を増強することもない。植物ろ過物が末梢血単核細胞によるIL−2の産生を減少する(又は増加させない)働きは、炎症量を減少させるその能力と共に、現在知られ又は将来発見されるIL−2の他の効果も反映したものである。本発明の種々の実施形態によると、IL−2などの炎症性サイトカインを上方制御せず、同時にIL−10などの抗炎症性サイトカインを上方制御するその能力は、炎症量を減少させる上で有効であり、望ましくない副作用を減少する点で従来から利用されている治療法よりも優れている。
【0058】
今度は図4を参照し、本発明の別の例示的実施形態に従って、植物ろ過物、その種々の画分及び希釈物、及びPMAを培養末梢血単核細胞に添加したときのIL−10の総産生及び総分泌(100,000細胞当たりのIL−10のpg数で表される)が図4に表される。図4に示されるように、植物ろ過物の1:20希釈物単独、及びPMAと組み合わせて試験された1:20希釈物は、検出可能な量のIL−10を培地に分泌しなかったコントロール末梢血単核細胞と比較してIL−10の総分泌を増加させた。示されたこの一つの例示的実施形態において、植物ろ過物の種々の他の希釈物及び画分は、単独でもPMAと組み合わせられても、IL−10の総濃度に影響を与えないようであった。しかしながら、本明細書に記載される他の例示的実施形態の場合のように、画分3及び4は植物ろ過物の組成の内の低パーセンテージを含むに過ぎず、この結果は、IL−10濃度を増加させなかった濃度及び画分の植物ろ過物がIL−10濃度を上昇させることは必然的に絶対あり得ないという点にまで本発明を限定するものではない。
【0059】
このため、植物ろ過物はIL−10の総濃度を上昇しうる。IL−10は抗炎症性サイトカインであるため、IL−10の総濃度が上昇すると炎症量が減少するはずである。さらに、IL−10に起因することが現在知られており又は将来発見される他の効果も、植物ろ過物の添加によって達成されることを、本発明は想定している。
【0060】
本発明の種々の例示的実施形態によれば、植物ろ過物が炎症を減少させる効果は、NF−κBのDNA結合活性を減少させるその効果単独、又はその効果とIL−10などの抗炎症性サイトカインの産生及び分泌を増加させること並びに後述するようにIL−2などの炎症性サイトカインや腫瘍壊死因子−アルファ(「TNF−α」)を減少させることとが組み合わさって、生じる。よって、本発明は、植物ろ過物が複数の異なる際と下院に同時に影響を及ぼして、種々の例示的実施形態による炎症減少などの総体的効果を達成することを想定している。
【0061】
今度は図5を参照し、本発明の一つの例示的実施形態に従って、培養末梢血単核細胞の混合物に植物ろ過物を添加してIL−17Aの総生産及び分泌に影響を与える(100,000細胞当たりのIL−17のpg数で表す)ことを開示する。IL−17Aと並び、インターロイキン17(インターロイキン17Aと同義)も植物ろ過物の添加により同様に影響を受ける。示されるように、未刺激の培養コントロール末梢血単核細胞は検出可能なレベルのIL−17Aを分泌しないが、PMAを培養末梢血単核細胞に添加するとIL−17Aは約3pg/100,000細胞へと顕著に増加した。1:20希釈又は1:100希釈の植物ろ過物を添加したところコントロール末梢血単核細胞からはIL−17Aの検出可能な分泌が起こらなかった。1:20希釈若しくは1:100希釈の植物ろ過物又は1:100希釈の画分4をPMA存在下で添加しても、PMA単独に反応して分泌されるIL−17Aのレベルに変化は見られなかった。植物ろ過物の画分3及び画分4は、1:20希釈及び1:100希釈どちらの場合でも、コントロール末梢血単核細胞からのIL−17Aの検出可能な分泌を引き起こさなかった。植物ろ過物の画分3の1:20希釈物を添加したところ、PMA処理に応答して末梢血単核細胞によるIL−17Aの分泌は約1pg/100,000細胞へと顕著に減少した。示されるように、植物ろ過物の画分3の1:100希釈物及び植物ろ過物の画分4の1:20希釈物によっても、PMA処理に応答した末梢血単核細胞によるIL−17A産生は減少した。
【0062】
図6〜8を参照して、他のサイトカインに対する植物ろ過物の影響を開示する。具体的には、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)に対する、種々の希釈及び画分の植物ろ過物の影響を開示する。
【0063】
図6に示されるように、また本発明の一例示的実施形態に従って、IFN−γの濃度(100,000細胞当たりのIFN−γのpg数で表す)に対する植物ろ過物の影響を開示する。この例示的実施形態によれば、未刺激の培養コントロール末梢血単核細胞は検出可能なレベルのIFN−γを分泌しなかったのに対し、培養末梢血単核細胞にPMAを添加すると約70pg/100,000細胞へと顕著なレベルのIFN−γの分泌が起こった。本例示的実施形態においては、1:20希釈若しくは1:100希釈の植物ろ過物、又はこれらの希釈度の画分3若しくは4を培養末梢血単核細胞に添加しても検出可能なレベルのIFN−γの分泌は起こらなかったが、1:20希釈の植物ろ過物をPMAと組み合わせて末梢血単核細胞に添加するとPMA単独により誘導されるIFN−γの総分泌が減少した。植物ろ過物の画分3の1:20希釈を添加するとPMAに誘導されるIFN−γの分泌は約10pgへと顕著に減少した。植物ろ過物の画分3の1:100希釈は、植物ろ過物の画分4の1:20希釈物の場合と同様に、PMAに誘導されるIFN−γ分泌を約60pgへと減少させた。
【0064】
よって、植物ろ過物はIFN−γの産生を誘導せず、他の薬剤により引き起こされるIFN−γの総生産を調整してそれから得られうる利益を可能にしうる。
【0065】
今度は図7を参照し、本発明の例示的実施形態に従って、TNF−αの産生及び分泌(100,000細胞当たりの分泌pg数により表される)に対する植物ろ過物の影響を測定した。この例示的実施形態によれば、未刺激の培養コントロール末梢血単核細胞は検出可能なレベルのTNF−αを分泌せず、一方、PMAを培養末梢血単核細胞に添加すると約50pg/100,000細胞へとTNF−αの顕著な分泌が起こった。1:100希釈の植物ろ過物又は1:20若しくは1:100希釈の画分3又は1:20若しくは1:100希釈の植物ろ過物画分4は検出可能なレベルのTNF−αの分泌を誘導しなかった。植物ろ過物及びそこから得られた画分はPMAにより誘導される培養末梢血単核細胞によるTNF−αの分泌を顕著には変化させなかった。
【0066】
今度は図8を参照し、本発明の別の例示的実施形態に従って、種々の濃度及び画分の植物ろ過物を投与することが末梢血単核細胞によるGM−CSFの産生及び分泌(100,000細胞当たりの分泌pg数で表す)に及ぼす影響を論じる。示されるように、未刺激培養末梢血単核細胞からなるコントロールは測定可能な量のGM−CSFを産生せず、一方、PMAの添加により約50pg/100,000細胞の分泌が誘導された。1:20希釈の植物ろ過物は非常に低レベルのGM−CSFの分泌(約5pg/100,000細胞)を誘導し、一方、1:00希釈の植物ろ過物又は種々の希釈度の画分3及び4はGMCSF分泌を誘導しなかった。さらに、どちらも1:20希釈及び1:100希釈の植物ろ過物及び画分3、並びに1:20希釈の画分4は、PMA存在下での末梢血単核細胞によるGM−CSFの産生に影響を与えなかった。
【0067】
よって、これらの例示的実施形態によれば、植物ろ過物それ自体は、種々の希釈度及び分画において、大した量のGM−CSFの分泌を引き起こさず、また種々の希釈度及び画分の植物ろ過物は他の薬剤による処理の結果誘導されるGM−CSFの産生を顕著には変化させない。
【0068】
よって、本発明の種々の例示的実施形態によれば、植物ろ過物の投与により種々のサイトカイン及びNF−κBが制御され、炎症の減少などの特定の所望の効果が達成される。先行技術の組成物とは異なり、植物ろ過物は多数のサイトカインを制御して炎症の減少を達成することができる。例えば、上記に示され論じられたように、植物ろ過物の投与はIL−2を上方制御することなしにIL−10を上方制御することができ、炎症をより大きく減少させることができる。
【0069】
さらに、植物ろ過物並びにその種々の希釈物及び画分はNF−κB、及びTNF−αに誘導されるNF−κB活性化、を阻害することができ、このことは植物ろ過物が抗酸化剤として機能することを示している。また、ある例示的実施形態によれば、種々の希釈度及び画分の植物ろ過物、特に画分3、の投与は、NF−κBのDNA結合活性を顕著に抑制する。有効量の植物ろ過物を投与してもTNF−αやIFN−γなどの特定の炎症促進性サイトカインは誘導されず、一方でIL−10などの種々の抗炎症性サイトカインが誘導され、炎症が減少する。さらに、これら種々の例示的実施形態によれば、植物ろ過物の投与は細胞又は組織に対して毒性あるいは刺激物質としての効果を有さない。
【0070】
本発明の種々の原理が例示的実施形態により上記に記載されたことが理解されなければならない。しかしながら、具体的に記載されていないものに加えて、本発明を実施するのに用いられる上記の処方、比率、要素、材料、及び成分の多くの組み合わせ及び改変は、それらの原理から逸脱すること無しに変更する、特に具体的な環境及び作動要件に合わせる、ことが出来る。本発明のその他のバリエーション及び変形例は当業者には明らかであろうが、そのようなバリエーションや変形例も本開示によってカバーされることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC寄託#PTA−5863の微生物群を培養して得られる植物ろ過物の有効量を投与することを含み、炎症促進性のサイトカインを下方制御しながら抗炎症性サイトカインを上方制御する前記植物ろ過物によって炎症が処置される、炎症を治療する方法。
【請求項2】
前記抗炎症性サイトカインがIL−10を含み、炎症性サイトカインがIL−2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性サイトカインがTNF−αを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性サイトカインがIFN−γを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗炎症性サイトカインがIL−10を含み、前記炎症性サイトカインがIL−2、TNF−α、及びIFN−γを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物ろ過物が細胞レベルでサイトカインの発現に影響を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記植物ろ過物がさらにNF−κBの活性化に影響を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ATCC寄託#PTA−5863の微生物群を培養して得られる植物ろ過物の有効量を投与することを含む、NF−κBに影響を与える方法。
【請求項9】
前記NF−κBに影響を与えることが、NF−κBの発現、活性化又はDNA−結合活性を減少させることにより起こる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記NF−κBに影響を与えることが炎症を抑制する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記NF−κBに影響を与えることが、種々のウイルスに影響を与える、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスがHIVウイルスを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
NF−κBに影響を与えることが、癌も含め免疫系の異常を治療又は予防する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
NFκBに影響を与えることが、宿主の免疫応答に影響を与える、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ATCC寄託#PTA−5863の微生物群を培養して得られる植物ろ過物の有効量を投与することを含む、サイトカインに影響を与える方法。
【請求項16】
前記影響を受けるサイトカインがインターロイキンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記影響を受けるサイトカインがTNF−αを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記影響を受けるサイトカインがIL−2、IL−10、IL−17A、及びIL−17を含み、前記IL−2、IL−10、IL−17A、及びIL−17に影響を与えることにより免疫応答が制御される、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−510905(P2013−510905A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539974(P2012−539974)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/056862
【国際公開番号】WO2011/060427
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512128380)ヘルス エンハンスメント プロダクツ インク (1)
【Fターム(参考)】