説明

サイトカイン誘導剤を含むアジュバントインフルエンザワクチン

【課題】アジュバントインフルエンザワクチンおよび改良されたアジュバントインフルエンザワクチン(流行中における使用および大流行の間の使用の両方のため)、ならびにそれらの調製のための方法の提供。
【解決手段】水中油型エマルションは、インフルエンザワクチンのための優れたアジュバントであるが、それらの効力は、サイトカイン応答(例えば、γ−インターフェロン応答)を改良するために他の免疫刺激剤をさらに含むことによって改良され得る。したがって、ワクチンは、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤を含む。本発明はまた、上記免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書中に引用されるすべての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、インフルエンザウイルス感染を防御するためのアジュバントワクチン(adjuvanted vaccine)の分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
現在、インフルエンザワクチンは、一般的使用においてアジュバントを含まない。これらのワクチンは、参考文献1の第17章および第18章においてさらに詳細に記載される。それらのワクチンは、生ウイルス(live virus)または不活化ウイルスに基づき、そして不活化ワクチンは、全ウイルス(whole virus)、「スプリット」ウイルス(「split」virus)または精製された表面抗原(赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む)に基づき得る。赤血球凝集素(HA)は、不活化インフルエンザワクチンにおける主要な免疫原であり、そしてワクチン用量は、HAレベルへの参照によって標準化され、そのワクチンは、代表的に、1株あたり約15μgのHAを含む。
【0004】
流行性のインフルエンザ感染において、多数の用量のインフルエンザワクチンが必要とされるが、多大な要求を満たすためにワクチンの供給を増大させることは、困難である。したがって、より多くのワクチン抗原を産生するよりも、1株あたりより低い量の抗原を使用すること、および減少した抗原用量を補うためにアジュバントを使用することが、提案されている。大流行間期にこのアプローチを使用すること(例えば、製造レベルを増大させることなく集団をより広く網羅することを可能にすること)がまた、提案されている。
【0005】
アルミニウム塩アジュバントの使用が、インフルエンザワクチンについて提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1)。MF59水中油型エマルションの使用もまた、報告されており[非特許文献2]、そしてこのエマルションはまた、Chiron Vaccines製の市販のFLUADTM製品において見出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,372,223号明細書
【特許文献2】国際公開第00/15251号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/22992号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hehmeら、Virus Res.、2004年、第103巻(1−2)、p.163〜171
【非特許文献2】Freyら、Vaccine、2003年、第21巻、p.4234〜4237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらなるアジュバントインフルエンザワクチンおよび改良されたアジュバントインフルエンザワクチン(流行中における使用および大流行の間の使用の両方のため)、ならびにそれらの調製のための方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
現在、水中油型エマルションがインフルエンザワクチンのための優れたアジュバントであるが、それらの効力が他の免疫刺激剤をさらに含むことによって改良され得ることが、見出されている。免疫応答の量の尺度である赤血球凝集力価または抗赤血球凝集素ELISA力価を単に増大させること以外に、さらなる薬剤の効果は、その応答の質を増大させることである。特に、上記さらなる薬剤は、インフルエンザワクチンによって誘発されるサイトカイン応答(例えば、インターフェロン−γ応答)を改良することが見出されており、その改良は、上記アジュバントまたは上記薬剤のいずれかが単独で使用される場合に見られるよりもずっと大きいものである。サイトカイン応答は、インフルエンザ感染に対する宿主防御の早期でありかつ決定的な段階に関与することが公知である[7]。
【0010】
したがって、本発明は、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤;を含む免疫原性組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤を合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法を提供する。
【0012】
本発明は、(i)インフルエンザウイルス抗原を含む第1のキット成分;と(ii)水中油型エマルションアジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットであって、(a)上記第1の成分または上記第2の成分は、サイトカイン誘導剤を含むか、または(b)上記キットは、サイトカイン誘導剤を含む第3のキット成分を含むかのいずれかであるキットを提供する。
【0013】
(水中油型エマルションアジュバント)
水中油型エマルションは、インフルエンザウイルスワクチンにアジュバント添加する(adjuvanting)のに使用するために特に適切であることが見出されている。種々のそのようなエマルションは、公知であり、そしてそれらは、代表的に、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、その油および界面活性剤は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。上記エマルション中の油滴は、一般に、5μm未満の直径であり、そしてサブミクロンの直径でさえも有し得、これらの小さいサイズは、安定なエマルションを提供するために、マイクロフルイダイザー(microfluidiser)を用いて達成される。220nm未満のサイズを有する小滴は、それらが濾過滅菌に供され得る場合に好ましい。
【0014】
本発明は、油(例えば、動物(例えば、魚)または植物供給源由来の油)と一緒に使用され得る。植物油についての供給源としては、ナッツ類、種子類および穀物類が挙げられる。ピーナッツ油、ダイズ油、ココナッツ油およびオリーブ油が最も一般的に入手可能な代表的なナッツ油である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油が使用され得る。種子油として、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油などが挙げられる。穀物群において、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、小麦、燕麦、ライ麦、イネ、テフ、トリチカレなどの他のシリアル穀物類の油もまた使用され得る。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素の脂肪酸エステルは、種子油内には天然に存在しないが、ナッツ油および種子油から出発した適切な物質の加水分解、分離およびエステル化により調製され得る。哺乳動物のミルク由来の脂肪および油は代謝可能であり、従って、本発明の実施において使用され得る。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、けん化および他の方法に関する手順は、当該分野において周知である。ほとんどの魚は、容易に回収され得る代謝可能な油を含む。例えば、タラの肝油、サメの肝油、および鯨ろうのようなクジラ油が代表的な種々の魚油であり、本明細書中において使用され得る。いくつかの分枝鎖油は、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、一般的にテルペノイドといわれる。サメの肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサンとして公知の分枝、不飽和テルペノイドを含み、本明細書において特に好ましい。スクアレンの飽和アナログであるスクアランもまた好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、市販の供給源から容易に入手可能であるか、または当該分野において公知の方法により得られ得る。他の好ましい油は、トコフェロール(以下参照)である。油の混合物が使用され得る。
【0015】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)により分類され得る。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてより好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenといわれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(例えば、DOWFAXTM商標名で販売される直線状EO/POブロックコポリマー);エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の繰返し数が変動し得るオクトキシノール、特にオクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)に関心がある;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)のようなリン脂質;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)(例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30));およびソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知)(例えば、ソルビタントリオレアート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート)を含む界面活性剤を用いて使用され得るが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤が、好ましい。エマルション中に含む好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、Span 85(ソルビタントリオレアート)、レシチンおよびTriton X−100である。
【0016】
界面活性剤の混合物は、例えば、Tween 80/Span 85混合物が使用され得る。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80))とオクトキシノール(例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100))との組合せもまた、適切である。別の有用な組合せは、ラウレス9にポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを加えたものを含む。
【0017】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80)の0.01〜1%(特に、約0.1%);オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、またはTritonシリーズにおける他の洗浄剤)の0.001〜0.1%(特に、0.005〜0.02%);ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)の0.1〜20%(好ましくは、0.1〜10%、そして特に、0.1〜1%または約0.5%)。
【0018】
本発明に有用な特定の水中油型エマルションアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
−スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロンエマルション。容量によるエマルションの組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan 85であり得る。重量の項目(term)に関して、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan 85になる。このアジュバントは、参考文献11の第10章および参考文献12の第12章により詳細に記載されるように、「MF59」[8〜10]として公知である。上記MF59エマルションは、有益に、クエン酸イオン(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液)を含む。
−スクアレン、トコフェロールおよびTween 80のエマルション。このエマルションは、リン酸緩衝化生理食塩水を含み得る。またSpan 85(例えば、1%で)および/またはレシチンも含み得る。これらのエマルションは、2〜10%スクアレン、2〜10%トコフェロールおよび0.3〜3%Tween 80を有し得、より安定なエマルションを提供する場合、スクアレン:トコフェロールの重量比は、1以下が好ましい。スクアレンおよびTween 80は、約5:2の容量比で存在し得る。そのようなエマルションの1つは、2%溶液を与えるためにPBS中にTween 80を溶解し、次いでこの溶液90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mLのスクアレンの)混合物とともに混合し、次いでこの混合物を微細流動化することにより作製され得る。この生じたエマルションは、サブミクロンの油滴(例えば、平均直径が100nmと250nmの間、好ましくは約180nm)を有し得る。
−スクアレン、トコフェロールおよびTriton洗浄剤(例えば、Triton X−100)のエマルション。そのエマルションはまた、3d−MPL(以下参照)を含み得る。そのエマルションは、リン酸緩衝液を含み得る。
−ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、コハク酸α−トコフェロール)を含むエマルション。そのエマルションは、約75:11:10(例えば、750μg/mIのポリソルベート80、110μg/ml Triton X−100および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)の質量比でこれら3つの成分を含み得、そしてこれらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むべきである。そのエマルションはまた、スクアレンを含み得る。そのエマルションはまた、3d−MPL(以下参照)を含み得る。その水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
−スクアレン、ポリソルベート80およびポロクサマー401(「PluronicTML121」)のエマルション。このエマルションは、リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4で処方され得る。このエマルションは、ムラミルジペプチドに有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバントにおいてトレオニル−MDPとともに使用される[13](0.05〜1% Thr−MDP、5%スクアレン、2.5%Pluronic L121および0.2%ポリソルベート80)。「AF」アジュバントの場合、Thr−MDPなしでもまた使用され得る[14](5%スクアレン、1.25%Pluronic
L121および0.2%ポリソルベート80)。微細流動化が好ましい。
−0.5〜50%油、0.1〜10%リン脂質、および0.05〜5%非イオン性界面活性剤を有するエマルション。参考文献15に記載されるように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの小滴サイズが有利である。
−代謝不可能な油(例えば、軽油)および少なくとも一種の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80またはSpan 80)のサブミクロン水中油型エマルション。添加物としては、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性物結合体(例えば、参考文献16に記載される、グルクロン酸のカルボキシル基を介して脱アシルサポニンに脂肪族アミンを付加することにより産生されるGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが挙げられ得る。
−サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)がらせん状のミセルとして会合されるエマルション[17]。
−鉱油、非イオン性の脂肪親和性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性の親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルション[18]。
−鉱油、非イオン性の親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性の脂肪親和性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルション[18]。
【0019】
上記エマルションは、好ましくは、送達時、即時に抗原と混合される。従って、アジュバントおよび抗原は、代表的に包装されたワクチンまたは配布されたワクチンに別個に保たれ、使用時に最終処方物に準備される。この抗原は一般的に水性の形態であり、このワクチンは最終的に2つの液体の混合により調製される。混合のための2つの液体の容積比は、変更し得る(例えば、5:1と1:5の間で)が、一般的に約1:1である。
【0020】
上記抗原およびアジュバントが混合された後、赤血球凝集素抗原は、一般に、水溶液中に残るが、その赤血球凝集素抗原は、それ自体、油/水界面付近に分布し得る。一般に、任意の赤血球凝集素が上記エマルションの油相に進入することは、ほとんどない。
【0021】
組成物がトコフェロールを含む場合、α、β、γ、δ、εまたはζトコフェロールのいずれかが使用され得るが、α−トコフェロールが好ましい。このトコフェロールは、いくつかの形態をとり得る(例えば、異なる塩および/または異性体)。塩として、有機塩(例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が挙げられる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールの両方が使用され得る。トコフェロールは、有益に、高齢患者(例えば、60歳以上)において使用するためのワクチンに含まれる。なぜならば、ビタミンEは、この患者群における免疫応答に対するポジティブな効果[19]、およびTh1/Th2バランスに関与する遺伝子の発現に対する顕著な影響[20]を有することが報告されているからである。それらはまた、上記エマルションを安定化するために役立ち得る抗酸化剤特性を有する[21]。好ましいα−トコフェロールはDL−α−トコフェロールであり、このトコフェロールの好ましい塩は、コハク酸塩である。そのコハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協同することが見出されている。さらに、コハク酸α−トコフェロールは、インフルエンザワクチンと適合性であり、そして水銀化合物に代わるものとして有用な保存剤であることが公知である[88]。
【0022】
(サイトカイン誘導剤)
本発明の組成物は、サイトカイン誘導剤を含み、そしてこの薬剤と水中油型エマルションとの組み合わせはT細胞応答に対する相乗効果を伴う予想外に有効な免疫原性組成物を与えることが、見出されている。T細胞応答は、抗体応答よりもインフルエンザウイルス抗原連続変異に抵抗することが報告されている。さらに、T細胞エフェクター機構は、高齢患者における重篤な疾病に対するワクチン誘導性の防御の重要な決定因子であり得[22]、そしてインフルエンザに対する加齢性の感受性をより強力なインターフェロン−γ応答を誘導することによって減少させることが、可能であり得る[23]。
【0023】
本発明の組成物に含めるためのサイトカイン誘導剤は、患者に投与される場合、サイトカイン(インターフェロンおよびインターロイキンを含む)を放出する免疫系を誘発し得る。好ましい薬剤は、インターフェロン−γ;インターロイキン−1;インターロイキン−2;インターロイキン−12;TNF−α;TNF−β;およびGM−CSFのうちの1つ以上の放出を誘発し得る。好ましい薬剤は、Th1型免疫応答に関連したサイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、TNF−α、インターロイキン−2)の放出を誘発する。インターフェロン−γおよびインターロイキン−2の両方の刺激が、好ましい。
【0024】
本発明の組成物を受容する結果として、それ故、患者は、インフルエンザ抗原によって刺激される場合に抗原特異的様式で所望のサイトカインを放出するT細胞を有する。例えば、それらの患者の血液から精製されたT細胞は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素にインビトロで曝された場合、γ−インターフェロンを放出する。末梢血単核細胞(PBMC)におけるそのような応答を測定するための方法は、当該分野において公知であり、そしてその方法としては、ELISA、ELISPOT、フローサイトメトリーおよびリアルタイムPCRが挙げられる。例えば、参考文献24は、破傷風トキソイドに対する抗原特異的T細胞媒介性免疫応答(特に、γ−インターフェロン応答)がモニタリングされ、そしてELISPOTが抗原特異的TT誘導性応答を自発的応答から区別する最も感度の高い方法であるが、フローサイトメトリーによる細胞質内サイトカイン検出が再刺激効果を検出するために最も効率的な方法であったことを見出した研究を報告する。
【0025】
適切なサイトカイン誘導剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
−免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシンに結合された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)または二本鎖RNAを含むもの、あるいはパリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、あるいはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド)。
−3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(「MPLTM」としても公知である「3dMPL」)[25〜28]。
−イミダゾキノリン化合物(例えば、イミキモッド(Imiquimod)(「R837」)[29、30]、レシキモッド(Resiquimod)(「R−848」)[31]、およびそれらのアナログ;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参考文献32〜36に見出され得る。
−チオセミカルバゾン化合物(例えば、参考文献37に開示されるもの)。活性化合物についての処方、製造、およびスクリーニングの方法はまた、参考文献37に記載される。上記チオセミカルバゾンは、特に、サイトカイン(例えば、TNF−α)の産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に有効である。
−トリプタントリン化合物(例えば、参考文献38に開示されるもの)。活性化合物についての処方、製造、およびスクリーニングの方法はまた、参考文献38に記載される。上記チオセミカルバゾンは、特に、サイトカイン(例えば、TNF−α)の産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に有効である。
−(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0026】
【化1】

などのヌクレオシドアナログ、およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献39〜41に開示される化合物;(f)式:
【0027】
【化2】

を有する化合物(ここで、
およびRは、各々独立して、H、ハロ、−NR、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリ
ール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
は、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
およびRは、各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−R、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、または一緒に結合されてR4−5
【0028】
【化3】

のような5員環を形成し、この結合は、
【0029】
【化4】

によって示される結合において達成され、XおよびXは、各々独立して、N、C、O、またはSであり;
は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NR、−(CH−O−R、−0−(C1−6アルキル)、−S(O)、または−C(O)−R11であり;
は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルまたはR9aであり、R9aは、
【0030】
【化5】

であり、この結合は、
【0031】
【化6】

によって示される結合において達成され;
10およびR11は、各々独立して、H、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NR、または−OHであり;
各々のRおよびRは、独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、C6−10アリールであり;
各Rは、独立して、H、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
各Rは、独立して、H、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−N(置換C1−6アルキル)、C6−I0アリール、またはヘテロシクリルであり;
各Rは、独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
各Rは、独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、ホスフェート、ジホスフェート、またはトリホスフェートであり;
各nは、独立して、0、1、2、または3であり;
各pは、独立して、0、1、または2である);あるいは(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に受容可能な塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体、またはその互変異性体の薬学的に受容可能な塩。
−ロキソリビン(Loxoribine)(7−アリル−8−オキソグアノシン)[42]。
−参考文献43に開示される化合物(アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンゾイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[44、45]、ヒドラフタラミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[46]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン(Pyrazalopyrimidine)化合物、およびベンザゾール(Benzazole)化合物[47]を含む)。
−ポリオキシドニウム(polyoxidonium)ポリマー[48、49]または他のN−酸化ポリエチレン−ピペラジン誘導体。
−参考文献50に開示される化合物。
−参考文献51に規定されるような、式I、IIまたはIII:
【0032】
【化7】

の化合物、あるいはその塩、例えば、「ER 803058」、「ER 803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER
804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 804057」(以下に示される構造):
【0033】
【化8】

またはER−803022(以下に示される構造):
【0034】
【化9】

−アミノアルキルグルコサミニドグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529[52、53])。CD4 T細胞におけるサイトカイン応答を刺激するRC−529の能力は、参考文献54に報告される。
−例えば、参考文献55および56に記載されるようなポリ[ジ(カルボキシレートフェノキシ(carboxylatophenoxy))ホスファゼン](「PCPP」)などのホスファゼン。
−TLR4アンタゴニストE5564[57、58]:
【0035】
【化10】

などの、ホスフェート含有非環式骨格に結合された脂質を含む化合物。
−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−254−ジアミン;
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール;
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチルアセテート;
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン;
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール;
1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール;
N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
などの低分子免疫増強物質(SMIP)。
【0036】
本発明において使用するためのサイトカイン誘導剤は、Toll様レセプター(TLR)のモジュレーターおよび/またはアゴニストであり得る。例えば、それらは、ヒトTLR1タンパク質、ヒトTLR2タンパク質、ヒトTLR3タンパク質、ヒトTLR4タンパク質、ヒトTLR7タンパク質、ヒトTLR8タンパク質、および/またはヒトTLR9タンパク質のうちの1つ以上のアゴニストであり得る。好ましい薬剤は、TLR7のアゴニスト(例えば、イミダゾキノロン(imidazoquinilone)および/またはTLR9のアゴニスト(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)である。これらの薬剤は、先天免疫経路を活性化するために有用である。
【0037】
上記サイトカイン誘導剤は、上記組成物に、その組成物の産生の間の種々の段階において添加され得る。例えば、そのサイトカイン誘導剤は、抗原組成物内にあり得、次いでこの混合物は、水中油型エマルションに添加され得る。その代わりとして、そのサイトカイン誘導剤は、水中油型エマルション内にあり得、その場合において、その薬剤は、乳化前に上記エマルション成分に添加され得るか、またはそのサイトカイン誘導剤は、乳化後に上記エマルションに添加され得るかのいずれかである。同様に、上記薬剤は、エマルション小滴内にコアセルベート化され得る。最終組成物内の上記サイトカイン誘導剤の配置および分布は、そのサイトカイン誘導剤の親水/脂肪親和性に依存する(例えば、上記薬剤は、水相中、油相中、および/または油−水界面に位置し得る)。
【0038】
上記サイトカイン誘導剤は、抗原などの別個の因子に結合体化され得る(例えば、CRM197)。低分子に対する結合体化技術の総説は、参考文献59に提供される。その代わりとして、上記アジュバントは、疎水性相互作用またはイオン性相互作用などによってさらなる因子と非共有結合され得る。
【0039】
2つの好ましいサイトカイン誘導剤は、(a)免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび(b)3dMPLである。
【0040】
(免疫刺激性オリゴヌクレオチド)
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド改変/アナログ(例えば、ホスホロチオエート改変)を含み得、そして二本鎖であっても(dsRNAを除いて)一本鎖であってもよい。参考文献60、61および62は、可能なアナログ置換(例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによるグアノシンの置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献63〜68においてさらに考察される。上記CpG配列は、TLR9に関し得る(例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTT)[69]。上記CpG配列は、Th1免疫応答の誘導について特異的であり得る(例えば、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド))か、またはその配列は、B細胞応答の誘導について、より特異的であり得る(例えば、CpG−B ODN)。CpG−A
ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献70〜72において考察される。好ましくは、上記CpGは、CpG−A ODNである。好ましくは、上記CpG オリゴヌクレオチドは、その5’末端がレセプター認識を達成可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、「イムノマー(immunomer)」を形成するようにそれらの3’末端において結合され得る。例えば、参考文献69および参考文献73〜75を参照のこと。有用なCpGアジュバントは、ProMuneTM(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知であるCpG7909である。
【0041】
CpG配列を使用する代わりか、またはそれに加えて、TpG配列が、使用され得る[76]。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まない可能性がある。
【0042】
上記免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンが豊富であり得る。例えば、その免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1個より多くの連続したチミジンヌクレオチド(例えば、参考文献76に開示されるようなTTTT)を含み得るか、そして/または免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のチミジンを含むヌクレオチド組成を有し得る。例えば、その免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1個より多くの連続したシトシンヌクレオチド(例えば、参考文献76に開示されるようなCCCC)を含み得るか、そして/またはその免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のシトシンを含むヌクレオチド組成を有し得る。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まない可能性がある。
【0043】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、代表的に、少なくとも20個のヌクレオチドを含む。それらは、100個よりも少ないヌクレオチドを含み得る。
【0044】
(3dMPL)
3dMPL(また、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAまたは3−O−脱アシル−4’−モノホスホリルリピドAと称される)は、モノホスホリルリピドA中の還元末端グルコサミンの3位が脱アシル化されるアジュバントである。3dMPLは、Salmonella minnesotaのヘプトース欠損(heptoseless)変異体から調製され、そして化学的にリピドAに類似しているが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基を欠いている。それは、単球/マクロファージ系統の細胞を活性化し、そしてIL−1、IL−12、TNF−αおよびGM−CSFを含む数種のサイトカインの放出を刺激する(参考文献54も参照のこと)。3dMPLの調製は、最初に、参考文献77に記載された。
【0045】
3dMPLは、それらのアシル化によって変動する(例えば、異なる長さであり得る3、4、5または6のアシル鎖を有する)関連分子の混合物の形態をとり得る。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしても公知の)単糖は、それらの2位の炭素(すなわち、2位および2’位)でN−アシル化され、そしてまた3’位でO−アシル化されている。炭素2に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR1’を有する。炭素2’に結合する基は、式−NH−CO−CH−CR2’を有する。炭素3’に結合する基は、式−O−CO−CH−CR3’を有する。代表的な構造は以下:
【0046】
【化11】

である。
【0047】
基R、RおよびRは、各々独立して−(CH−CHである。nの値は、好ましくは、8〜16の間であり、より好ましくは、9〜12の間であり、そして最も好ましくは、10である。
【0048】
基R1’、R2’およびR3’は、各々独立して、(a)−H;(b)−OH;または(c)−O−CO−R;であり得、ここでRは−Hまたは−(CH−CHのいずれかであり、ここでmの値は、好ましくは、8〜16の間であり、そしてより好ましくは、10、12または14である。2位では、mは、好ましくは、14である。2’位では、mは、好ましくは、10である。3’位では、mは、好ましくは、12である。したがって、基R1’、R2’およびR3’は、好ましくは、ドデカン酸、テトラデカン酸またはヘキサデカン酸由来の−O−アシル基である。
【0049】
1’、R2’およびR3’のすべてが−Hである場合、上記3dMPLは3つのアシル鎖のみを有する(2位、2’位および3’位の各々に1つ)。R1’、R2’およびR3’のうち2つのみが−Hである場合、上記3dMPLは4つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’のうち1つのみが−Hである場合、上記3dMPLは5つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’のいずれもが−Hではない場合、上記3dMPLは、6つのアシル鎖を有し得る。本発明に従って用いられる3dMPLアジュバントは、3〜6つのアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3dMPLを含むことが好ましく、そして特に6つのアシル鎖形態が総3dMPLの少なくとも10重量%、例えば、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上またはさらに多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3dMPLは、最もアジュバント活性な形態であることが見出された。
【0050】
従って、本発明の組成物に含めるために3dMPLの最も好ましい形態は、
【0051】
【化12】

である。
【0052】
3dMPLが混合物の形態で使用される場合、本発明の組成物中の3dMPLの量または濃度に関する言及は、混合物中の合わせた3dMPL種をいう。
【0053】
水性条件では、3dMPLは、異なるサイズを備えた(例えば、直径<150nmまたは>500nmを備えた)ミセル凝集体または粒子を形成し得る。これらのいずれか、または両方は、本発明とともに使用され得、そしてより良好な粒子が通常のアッセイによって選択され得る。より小さな粒子(例えば、3dMPLの透明な水性懸濁物を与えるに十分小さい)が、より優れた活性[78]に起因して、本発明に従う使用に好ましい。好ましい粒子は、220nmより小さい、より好ましくは200nmより小さい、150nmより小さい、あるいは120nmより小さい平均直径を有し、100nmより小さい平均直径を有しさえし得る。しかしながら、大部分の場合において、この平均直径は、50nmより小さくはない。これらの粒子は、濾過滅菌に適するほどに十分小さい。粒子直径は、通常の動的光散乱法の技法によって評価され得、平均粒子直径が明らかとなる。粒子がxnmの直径を有するといわれる場合、一般的にはおおよそこの平均の粒子の分布が存在するが、粒子の数で少なくとも50%(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはそれより多く)がx±25%の範囲内の直径を有する。
【0054】
実質的に全ての3dMPLは、好ましくは、上記エマルションの水相に位置する。
【0055】
ワクチン中の3dMPLの代表的な量は、10〜100μg/用量(例えば、約25μgまたは約50μg)である。
【0056】
3dMPLはそれ自体でアジュバントとして使用され得るか、またはさらに1つ以上のアジュバント化合物と組み合わせて使用され得る。例えば、QS21サポニン[79](エマルション[80]を含む)、リン酸アルミニウム[81]、または水酸化アルミニウム[82]と組み合わせて3dMPLを使用することが公知である。
【0057】
(インフルエンザウイルス抗原)
本発明の組成物は、インフルエンザウイルス抗原を含む。上記抗原は、代表的に、インフルエンザビリオンから調製されるが、その代わりとして、赤血球凝集素などの抗原が、組換え宿主(例えば、バキュロウイルスベクターを使用した昆虫細胞株)において発現され、そして精製された形態で使用され得る[83、84]。しかし、一般に、抗原は、ビリオン由来である。
【0058】
上記抗原は、生ウイルスの形態、またはより好ましくは、不活化ウイルスの形態をとり得る。ウイルスを不活化するための化学的手段としては、以下の因子の1種以上の有効量による処理が挙げられる:洗浄剤、ホルムアルデヒド、ホルマリン、β−プロピオラクトン、またはUV光。不活化のためのさらなる化学的手段としては、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)または任意のその組合せによる処理が挙げられる。ウイルス不活化の他の方法は、当該分野において公知である(例えば、第二級エチルアミン、アセチルエチレンイミン、またはγ線照射など)。INFLEXALTM製品は、全ビリオン不活化ワクチンである。
【0059】
不活化ウイルスが使用される場合、上記ワクチンは、全ウイルス、スプリットウイルス、または精製された表面抗原(赤血球凝集素を含み、そして通常は、ノイラミニダーゼをまた含む)を含み得る。
【0060】
ビリオンは、種々の方法によってウイルス含有流体から回収され得る。例えば、精製プロセスは、ビリオンを破壊するための洗浄剤を含む直線ショ糖勾配溶液を使用したゾーン遠心分離を含み得る。次いで、抗原は、必要に応じた希釈後に、透析濾過(diafiltration)によって精製され得る。
【0061】
スプリットビリオン(split virion)は、ビリオンを洗浄剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコール酸塩、トリ−N−ブチルホスフェート、Triton X−100、Triton N101、臭化セチルトリメチルアンモニウム、Tergitol NP9など)により処理(「Tween−エーテル」分解(splitting)プロセスを含む)してサブビリオン調製物を産生することによって得られる。インフルエンザウイルスを分解する方法は、当該分野において周知である(例えば、参考文献85〜90などを参照のこと)。ウイルスの分解は、代表的に、破壊する濃度の分解剤(splitting agent)によって全ウイルスを破壊または断片化する(感染性であっても非感染性であってもよい)ことによって行わる。上記破壊は、ウイルスタンパク質の完全または部分的な可溶化をもたらし、ウイルスの完全性を変化させる。好ましい分解剤は、非イオン性界面活性剤およびイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤(例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖(acyl sugar)、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド(Glucamide)、Hecameg、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ−N−ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリストイルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン(lipofectin)、リポフェクタミン(lipofectamine)、およびDOT−MA、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100またはTriton N101などのTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどである。1つの有用な分解手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの継続的な効果を使用し、そして分解は、(例えば、ショ糖密度勾配溶液における)最初のビリオン精製の間に行われ得る。スプリットビリオンは、通常、リン酸ナトリウムによって緩衝化された等張塩化ナトリウム溶液に再懸濁され得る。BEGRIVACTM製品、FLUARIXTM製品、FLUZONETM製品およびFLUSHIELDTM製品は、スプリットワクチン(split vaccine)である。
【0062】
精製された表面抗原ワクチンは、インフルエンザ表面抗原の赤血球凝集素、および代表的には、ノイラミニダーゼをまた含む。精製された形態でこれらのタンパク質を調製するためのプロセスは、当該分野において周知である。FLUVIRINTM製品、AGRIPPALTM製品およびINFLUVACTM製品は、サブユニットワクチンである。
【0063】
インフルエンザ抗原はまた、ビロソームの形態で提供され得る[91]。
【0064】
上記インフルエンザウイルスは、弱毒化され得る。上記インフルエンザウイルスは、温度感受性であり得る。上記インフルエンザウイルスは、低温適応性であり得る。これらの3つの可能性は、特に、生ウイルスに適合する。
【0065】
ワクチンに使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節により変化する。最近の大流行間期において、ワクチンは、代表的に、2種のインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2)および1種のインフルエンザB型株を含み、そして三価ワクチンが、代表的である。本発明はまた、(特に、インフルエンザA型ウイルスの)H2サブタイプ株、H5サブタイプ株、H7サブタイプ株またはH9サブタイプ株などの流行株(すなわちワクチンのレシピエントおよび一般的なヒト集団が免疫学的にナイーブである株)に由来するウイルスを使用し得、そして流行株に対するインフルエンザワクチンは、一価であっても、流行株によって補充された通常の三価ワクチンに基づいてもよい。しかし、季節および上記ワクチンに含まれる抗原の性質に依存して、本発明は、インフルエンザA型ウイルスHAサブタイプであるH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16の1種以上を防御し得る。
【0066】
上記組成物に通常含まれ得る他の株は、抗ウイルス療法に対して抵抗性(例えば、オセルタミビル[92]および/またはザナミビルに対して抵抗性)の株であり得、その株は、抵抗性の流行株を含む[93]。
【0067】
本発明のアジュバント添加組成物は、流行株に対して免疫感作するために特に有用である。流行の発生を引き起こす可能性をインフルエンザ株に与えるインフルエンザ株の特性は、以下である:(a)そのインフルエンザ株が、最近広まっているヒト株における赤血球凝集素と比較して新規の赤血球凝集素(すなわち、10年以上にわたってヒト集団において顕性でない赤血球凝集素(例えばH2))を含むか、またはヒト集団において先に全く見出されていない(例えば、一般には鳥類集団においてのみ見出されているH5、H6またはH9)ことにより、ヒト集団がその株の赤血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであること;(b)そのインフルエンザ株が、ヒト集団において水平伝播し得ること;および(c)そのインフルエンザ株が、ヒトに対して流行性であること。H5型赤血球凝集素を有するウイルスは、流行性インフルエンザ(例えば、H5N1株)に対する免疫感作のために好ましい。他の可能性のある株としては、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、および任意の他の顕在する潜在的な流行株が挙げられる。H5サブタイプにおいて、ウイルスは、HAクレード1、HAクレード1’、HAクレード2またはHAクレード3に分類され得[94]、クレード1およびクレード3は、特に、関連性がある。
【0068】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含む1種以上(例えば1種、2種、3種、4種またはそれ以上)のインフルエンザウイルス株由来の抗原を含み得る。ワクチンが、1種より多い株のインフルエンザを含む場合、それらの異なる株は、代表的に、別個に増殖され、かつそれらのウイルスが回収された後に混合され、そして抗原が、調製される。したがって、本発明の方法は、1種より多いインフルエンザ株由来の抗原を混合する工程を含み得る。
【0069】
上記インフルエンザウイルスは、リアソータント(reassortant)株であり得、そして逆方向遺伝学技術によって得ることができた。逆方向遺伝学技術[例えば、95〜99]は、プラスミドを使用してインビトロで調製される所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスを可能にする。代表的に、それは、(a)例えば、polIプロモーターにより、所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子を発現すること、および(b)例えば、polIIプロモーターにより、ウイルスタンパク質をコードするDNA分子を発現することを含むことで、細胞における両方の型のDNAの発現が、完全なインタクト感染性ビリオンの構築を生じる。上記DNAは、好ましくは、全ての上記ウイルスRNAおよびウイルスタンパク質の全てを提供するが、そのRNAおよびタンパク質のいくつかを提供するためにヘルパーウイルスを使用することもまた、可能である。各ウイルスRNAを産生するために別個のプラスミドを使用するプラスミドベースの方法が、好ましく[100〜102]、そしてこれらの方法はまた、上記ウイルスタンパク質の全てまたはいくつか(例えば、PB1タンパク質、PB2タンパク質、PAタンパク質およびNPタンパク質だけ)を発現するためのプラスミドの使用を包含し、12種のプラスミドが、いくつかの方法において使用される。
【0070】
必要とされるプラスミドの数を減少させるために、最近のアプローチ[103]は、(ウイルスRNA合成のための)同じプラスミド上の複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(例えば、種、2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種全てのインフルエンザA型vRNAセグメントをコードする配列)と、別のプラスミド上のRNAポリメラーゼIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種全てのインフルエンザA型mRNA転写物をコードする配列)を合わせる。参考文献103の方法の好ましい局面は、以下を含む:(a)単一プラスミド上のPB1 mRNAコード領域、PB2 mRNAコード領域およびPA mRNAコード領域;および(b)単一プラスミド上の全8種のvRNAコードセグメント。1つのプラスミド上にNAセグメントおよびHAセグメントを含み、そして別のプラスミド上に6種の他のセグメントを含むこともまた、問題を容易にし得る。
【0071】
上記ウイルスRNAセグメントをコードするためにpolIプロモーターを使用する代わりに、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターを使用することが、可能である[104]。例えば、SP6ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼまたはT7ポリメラーゼのためのプロモーターが、慣用的に使用され得る。polIプロモーターの種特異性に起因して、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターは、多くの細胞型(例えばMDCK)に関してより慣用的であり得るが、細胞はまた、外因性ポリメラーゼ酵素をコードするプラスミドによってトランスフェクトされる必要がある。
【0072】
他の技術において、単一の鋳型に由来して上記ウイルスRNAおよび発現可能なmRNAを同時にコードするために二重のpolIプロモーターおよびpolIIプロモーターを使用することが、可能である[105、106]。
【0073】
したがって、インフルエンザA型ウイルスは、特に、そのウイルスが卵において増殖される場合、A/PR/8/34ウイルス由来の1種以上のRNAセグメント(代表的に、6セグメントは、A/PR/8/34に由来し、上記HAセグメントおよびNセグメントは、ワクチン株に由来する、すなわち、6:2リアソータント)を含み得る。それはまた、ワクチン調製物のためのリアソータントウイルスを産生するために、A/WSN/33ウイルス由来の1種以上のRNAセグメント、または有用な任意の他のウイルス株の1種以上のRNAセグメントを含み得る。代表的に、上記株のゲノムは、通常、哺乳動物(例えば、ヒト)インフルエンザウイルスに由来する少なくとも1種のRNAセグメントを含むので、本発明は、ヒト同士の伝染が可能である株から防御する。それは、鳥インフルエンザウイルスに由来するNSセグメントを含み得る。
【0074】
上記抗原の供給源として使用されるウイルスは、卵(通常は、SPF卵)または細胞培養のいずれかにおいて増殖され得る。インフルエンザウイルス増殖についての現在の標準的な方法は、有胚の鶏卵を使用し、そのウイルスは、その卵の内容物(尿膜腔液)から精製される。しかし、さらに最近、ウイルスは、動物細胞培養において増殖され、そして速さおよび患者のアレルギーの理由に起因して、この増殖方法が、好ましい。卵ベースのウイルス増殖が使用される場合、1種以上のアミノ酸がウイルスと一緒に卵の尿膜の流体中に導入され得る[89]。
【0075】
細胞基質は、代表的に、哺乳動物細胞株である。適切な哺乳動物細胞の起源としては、ハムスター細胞、ウシ細胞、霊長類細胞(ヒト細胞およびサル細胞を含む)およびイヌ細胞が挙げられるが、これらに限定されない。腎細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞などのような種々の細胞型が、使用され得る。適切なハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCの名前を有する細胞株である。適切なサル細胞は、例えば、アフリカミドリザル細胞(例えば、Vero細胞株のような腎細胞)である。適切なイヌ細胞は、例えば、MDCK細胞株のような腎細胞である。したがって、適切な細胞株としては、MDCK;CHO;293T;BHK;Vero;MRC−5;PER.C6;WI−38;などが挙げられるが、これらに限定されない。インフルエンザウイルスを増殖させるために好ましい哺乳動物細胞株としては、以下が挙げられる:Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞[107−110];アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓に由来するVero細胞[111−113];またはヒト胚性網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[114]。これらの細胞株は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)コレクション[115]、Coriell Cell Repositories[116]、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広範に入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586およびCRL−1587の種々の異なるVero細胞を提供し、そしてATCCは、カタログ番号CCL−34のMDCK細胞を提供する。PER.C6は、寄託番号96022940においてECACCから入手可能である。あまり好ましくない哺乳動物細胞株の代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)または雌鶏(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF))などに由来する細胞株を含む鳥類細胞株[例えば、参考文献117〜119]において増殖され得る。例としては、ニワトリ胚性幹細胞、EB45、EB14、およびEB14−074に由来するEBx細胞株[121]を含む鳥類胚性幹細胞[117,120]が挙げられる。
【0076】
インフルエンザウイルスを増殖させるために最も好ましい細胞株は、MDCK細胞株である。元のMDCK細胞株は、CCL−34としてATCCから入手可能であるが、この細胞株の派生物もまた、使用され得る。例えば、参考文献107は、懸濁培養物における増殖に適合したMDCK細胞株(DSM ACC 2219として寄託された「MDCK
33016」)を開示する。同様に、参考文献122は、無血清培養の懸濁物において増殖するMDCK由来細胞株(FERM BP−7449として寄託された「B−702」)を開示する。参考文献123は、非腫瘍形成性MDCK細胞(「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)および「MDCK−SF103」(PTA−6503)を含む)を開示する。参考文献124は、感染に対して高い感受性を有するMDCK細胞株(「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL−12042)を含む)を開示する。任意のこれらのMDCK細胞株が、使用され得る。
【0077】
ウイルスが哺乳動物細胞株において増殖された場合、上記組成物は、有益に、卵タンパク質(例えばオボアルブミンおよびオボムコイド)およびニワトリDNAを含まず、それによってアレルゲン性を減少させる。
【0078】
ウイルスが細胞株において増殖された場合、増殖のための培養物、およびまた、培養を開始するために使用されるウイルス接種物は、好ましくは、単純ヘルペスウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス3型、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、および/またはパルボウイルスを含まない[125](すなわち、それらの培養物および接種物は、これらのウイルスについて試験され、そしてこれらのウイルスによる汚染についてネガティブな結果を得る)。単純ヘルペスウイルスが無いことは、特に好ましい。
【0079】
ウイルスが細胞株において増殖された場合、上記組成物は、好ましくは、1用量あたり10ng未満(好ましくは、1ng未満、およびより好ましくは、100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含むが、微量の宿主細胞DNAが、存在し得る。一般に、上記宿主細胞DNA(それは、本発明の組成物から取り除くことが望ましい)は、100bpよりも長いDNAである。
【0080】
残留宿主細胞DNAの測定は、現在、生物製剤についての慣用的な管理要件(regulatory requirement)であり、そして当業者の通常の能力の範囲内である。DNAを測定するために使用されるアッセイは、代表的に、確認されたアッセイである[126、127]。確認されたアッセイの性能の特徴は、数学的項目および定量可能な項目において記載され得、そしてその考えられる誤差の供給源は、同定されている。上記アッセイは、一般に、正確度、精度、特異性などの特徴について試験された。一旦アッセイが、(例えば、宿主細胞DNAの既知の標準量に対して)較正され、そして試験された場合、定量的DNA測定は、慣用的に行われ得る。DNA定量についての以下の3つの主要な技術が、使用され得る:サザンブロットまたはスロットブロットなどのハイブリダイゼーション法[128];ThresholdTM Systemなどのイムノアッセイ法[129];および定量的PCR[130]。これらの方法は全て、当業者によく知られているが、各方法の正確な特徴は、目的とする宿主細胞に依存し得る(例えば、ハイブリダイゼーションのためのプローブの選択、増幅のためのプライマーおよび/またはプローブの選択など)。Molecular Devices製のThresholdTMシステムは、ピコグラムレベルの全DNAについての定量的アッセイであり、そして生物製剤中の混入したDNAのレベルをモニタリングするために使用されている[129]。代表的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ結合体化抗ssDNA抗体と、DNAとの間における反応複合体の配列非特異的形成を包含する。全てのアッセイ成分は、上記製造業者から入手可能である完全なTotal DNA Assay Kitに含まれる。種々の商業的な製造業者は、残留宿主細胞DNAを検出するための定量的PCRアッセイを提供する(例えば、AppTecTM Laboratory Services、BioRelianceTM、Althea Technologiesなど)。ヒトウイルスワクチンの宿主細胞DNAの混入を測定することについての化学発光ハイブリダイゼーションアッセイと全DNA ThresholdTMシステムとの比較は、参考文献131に見出され得る。
【0081】
汚染するDNAは、標準的な精製手順(例えば、クロマトグラフィーなど)を使用して、ワクチン調製の間に除去され得る。残留宿主細胞DNAの除去は、例えば、DNaseを使用することによるヌクレアーゼ処理によって増強され得る。宿主細胞DNA汚染を減少させるために好都合な方法は、参考文献132および133に開示され、その方法は、最初に、ウイルス増殖の間に使用され得るDNase(例えば、ベンゾナーゼ(Benzonase))を使用し、次いで、ビリオンの破壊の間に使用され得るカチオン性洗浄剤(例えばCTAB)を使用する、2工程の処理を含む。アルキル化剤(例えば、β−プロピオラクトン)による処理がまた、宿主細胞DNAを除去するために使用され得、そして有益に、ビリオンを不活化するために使用され得る[134]。
【0082】
0.25ml容量あたり<10ng(例えば<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンであるような、15μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンが、好ましい。0.5ml容量あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンであるような、50μgの赤血球凝集素あたり<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンが、より好ましい。
【0083】
任意の残留宿主細胞DNAの平均の長さは500bp未満(例えば、400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満など)であることが、好ましい。
【0084】
細胞株(例えば、MDCK細胞)における増殖について、ウイルスは、懸濁物における細胞[107、135、136]または付着培養(adherent culture)中の細胞において増殖され得る。懸濁培養のための1つの適切なMDCK細胞株は、MDCK 33016(DSM ACC 2219として寄託された)である。代替物として、マイクロキャリア培養(microcarrier culture)が、使用され得る。
【0085】
インフルエンザウイルス複製を補助する細胞株は、好ましくは、無血清培地および/またはタンパク質を含まない培地において増殖される。培地は、ヒト起源または動物起源の血清に由来する添加物が存在しない本発明の文脈において、無血清培地と称される。タンパク質を含まないは、上記細胞の増殖がタンパク質、成長因子、他のタンパク質添加物および非血清タンパク質の排除によって生じるが、ウイルス増殖に必要であり得るトリプシンまたは他のプロテアーゼなどのタンパク質を必要に応じて含み得る培養を意味すると理解される。そのような培養物において増殖する細胞は、培養物自体のタンパク質を天然に含む。
【0086】
インフルエンザウイルス複製を補助する細胞株は、好ましくは、例えば、ウイルス複製の間に、37℃未満(例えば、30〜36℃、または約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃)で増殖される[137]。
【0087】
培養された細胞においてウイルスを増殖させるための方法は、一般に、その培養された細胞に培養されるべき株を接種する工程、ウイルス増殖(例えば、ウイルス力価または抗原発現によって決定される)のために所望の期間(例えば、接種の24時間後と168時間後との間)にわたって、感染された細胞を培養する工程、および増殖されたウイルスを回収する工程を包含する。上記培養された細胞は、1:500〜1:1、好ましくは、1:100〜1:5、より好ましくは、1:50〜1:10の細胞比まで、ウイルス(PFUまたはTCID50によって測定される)を接種される。上記ウイルスは、上記細胞の懸濁物に添加されるか、または上記細胞の単一層に適用され、そしてそのウイルスは、25℃〜40℃(好ましくは、28℃〜37℃)にて、少なくとも60分間(しかし通常は、300分未満(好ましくは、90分間と240分間との間))にわたってその細胞上に吸着される。上記感染された細胞の培養物(例えば、単一層)は、回収される培養上清のウイルス含量を増大させるために、凍結解凍または酵素作用のいずれかによって除去され得る。次いで、回収された流体は、凍結されて不活化または保存のいずれかが行われる。培養された細胞は、約0.0001〜10、好ましくは、0.002〜5、より好ましくは、0.001〜2の感染多重度(「m.o.i.」)にて感染され得る。よりさらに好ましくは、上記細胞は、約0.01のm.o.iにて感染される。感染された細胞は、感染後30時間〜60時間で回収され得る。好ましくは、上記細胞は、感染後34時間〜48時間で回収される。よりさらに好ましくは、上記細胞は、感染後38時間〜40時間で回収される。プロテアーゼ(代表的に、トリプシン)は、一般に、ウイルスの放出を可能にするために細胞培養の間に添加され、そしてそのプロテアーゼは、その培養の間の任意の適切な段階において添加され得る。
【0088】
赤血球凝集素(HA)は、不活化インフルエンザワクチン中の主要な免疫原であり、そしてワクチン用量は、代表的に、一次元放射状免疫拡散(SRID)アッセイによって測定されるようなHAレベルを参照することによって標準化される。ワクチンは、代表的に、1株あたり約15μgのHAを含むが、より低い用量がまた、例えば、小児のためかまたは流行性の状況において使用される。1/2(すなわち、1株あたり7.5μgのHA)、1/4および1/8のような分割量が、より高い用量(例えば、3×用量または9×用量[138、139])を有する場合に使用されている[4、5]。したがって、ワクチンは、1つのインフルエンザ株あたり0.1μgと150μgとの間のHA、好ましくは、0.1μgと50μgとの間(例えば、0.1μg〜20μg、0.1μg〜15μg、0.1μg〜10μg、0.1μg〜7.5μg、0.5μg〜5μgなど)のHAを含み得る。特定の用量は、例えば、1株あたり約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5などを含む。これらのより低い用量は、本発明のようにアジュバントがワクチン中に存在する場合、最も有用である。
【0089】
生ワクチンについて、投薬量は、HA含量よりもむしろ50%組織培養感染量(TCID50)によって測定され、そして1株あたり10と10との間(好ましくは、106.5〜107.5)のTCID50が、代表的である。
【0090】
本発明で使用されるHAは、ウイルスにおいて見出されるような天然のHAであっても、改変されていてもよい。例えば、ウイルスを鳥類種において非常に病原性にする決定因子(例えば、HA1とHA2との切断部位周辺の超塩基性領域(hyper−basic
region))を除去するためにHAを改変することが、公知である。なぜならば、これらの決定因子は、そうでなければウイルスが卵において増殖されることを妨げ得るからである。
【0091】
本発明の組成物は、特に、スプリットワクチンまたは表面抗原ワクチンのために、洗浄剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tweens」として公知である)、オクトキシノール(例えば、オクトキシノール−9(Triton X−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウム)を含み得る。上記洗浄剤は、微量でのみ存在し得る。したがって、上記ワクチンは、各々1mg/ml未満のオクトキシノール−10、α−コハク酸水素トコフェロールおよびポリソルベート80を含み得る。残りの他の微量成分は、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0092】
不活化されている非全細胞ワクチン(例えば、ウイルス成分ワクチンまたは精製された表面抗原ワクチン)は、この抗原内に位置するさらなるT細胞エピトープからの利益を受けるために、マトリックスタンパク質を含み得る。したがって、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む非全細胞ワクチン(特に、スプリットワクチン)は、M1および/またはM2マトリックスタンパク質をさらに含み得る。マトリックスタンパク質が存在する場合、検出可能なレベルのM2マトリックスタンパク質を含むことが、好ましい。核タンパク質もまた、存在し得る。
【0093】
(薬学的組成物)
本発明の組成物は、薬学的に受容可能である。それらの組成物は、抗原、アジュバントおよびサイトカイン誘導剤に加えて、成分を含み得る(例えば、それらの組成物は、代表的に、1つ以上の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含有する)。そのような成分の徹底的な考察は、参考文献140において入手可能である。
【0094】
上記組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含み得る。しかし、上記ワクチンは実質的に水銀物質を含まない(すなわち、5μg/ml未満)(例えば、チオメルサールを含まない)べき[88、141]であることが、好ましい。水銀を含まないワクチンが、より好ましい。保存剤を含まないワクチンが、特に好ましい。
【0095】
張度を制御するために、生理的塩(例えば、ナトリウム塩)を含有することが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、その塩化ナトリウムは、1mg/mlと20mg/mlとの間で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、二水素リン酸カリウム、無水二ナトリウムリン酸塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0096】
組成物は、一般に200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間、好ましくは240mOsm/kg〜360mOsm/kgとの間の浸透圧モル濃度を有し、より好ましくは290〜310mOsm/kgとの範囲内となる。浸透圧モル濃度は、ワクチン接種により引き起こされる痛みに対して影響を有しないことが以前に報告されている[142]が、この範囲に浸透圧モル濃度を維持することが、やはり好ましい。
【0097】
組成物は、1つ以上の緩衝剤を含有し得る。代表的な緩衝剤としては、以下が挙げられる:リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤;またはクエン酸緩衝剤。緩衝剤は、代表的に5〜20mMの範囲で含有される。
【0098】
組成物のpHは、一般に、5.0と8.1との間、より代表的には6.0と8.0との間、例えば、6.5と7.5との間、または7.0と7.8との間である。したがって、本発明の方法は、包装前にバルクワクチンのpHを調整する工程を包含し得る。
【0099】
上記組成物は、好ましくは、無菌である。上記組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、1用量あたり<1EU(エンドトキシン単位、標準的な測定単位)、そして好ましくは1用量あたり<0.1EUを含む)。上記組成物は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0100】
上記組成物は、単回免疫感作のための物質を含んでも、複数回免疫感作(すなわち、「複数回用量」キット)のための物質を含んでもよい。保存剤を含むことが、複数回用量の準備において好ましい。複数回用量組成物中に保存剤を含むことの代わりとして(またはそれに加えて)、その組成物は、物質を除去するための無菌のアダプターを有する容器中に含まれ得る。
【0101】
インフルエンザワクチンは、代表的に、約0.5mlの投薬容量で投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)が、小児に投与され得る。
【0102】
組成物中の抗原、エマルションおよびサイトカイン誘導剤は、代表的に、混合物中にある。
【0103】
組成物およびキットは、好ましくは、2℃と8℃との間にて保存される。それらは、凍結されるべきではない。それらは、理想的には、直接的な光から免れるべきである。
【0104】
(本発明のキット)
上述の通り、本発明の組成物は、好ましくは、送達時において即座に調製される。したがって、本発明は、混合のために調整された種々の成分を備えるキットを提供する。上記キットは、上記水中油型エマルションおよび上記抗原が使用時まで別々に保持されることを可能にする。上記サイトカイン誘導剤は、これら2つのキット成分の一方に含まれても、第3のキット成分の部分であってもよい。
【0105】
上記成分は、上記キット内で、互いから物理的に分離した形態であり、そしてこの分離は、種々の手段で達成され得る。例えば、上記成分は、2つの分離したバイアルなどの容器中にあり得る。次いで、上記2つのバイアルの成分は、例えば、一方のバイアルの成分を取り出し、そしてそれらを他方のバイアルに添加すること、または両方のバイアルの成分を別々に取り出し、そしてそれらを第3の容器中で混合することによって混合され得る。
【0106】
好ましい構成(arrangement)において、キット成分のうちの一方は、注射器中にあり、そして他方は、バイアルなどの容器中にある。注射器(例えば、針を有する)が、その成分を混合のための第2の容器中に挿入するために使用され得、次いでその混合物は、その注射器中に引かれ得る。次いで、その注射器の混合された成分は、代表的に、新規の滅菌針を通して患者に投与され得る。したがって、注射器中に1つの成分を包装することは、患者への投与のために別個の注射器を使用する必要性を排除する。
【0107】
別の好ましい構成において、上記2つのキット成分は、同じ注射器(例えば、二重室注射器(dual−chamber syringe)(例えば、参考文献143〜150などに開示されるもの))において、一緒であるが分離して保持される。その注射器が、作動される場合(例えば、患者に対する投与の間)、その2つの室の成分は、混合される。この構成は、使用時における別個の混合工程に対する必要性を回避する。その2つの室の成分は、一般に、両方とも水性形態である。
【0108】
種々のキット成分の内容は、一般には全て、水性形態にある。いくつかの構成において、一方の成分(代表的に、エマルション成分よりもむしろ抗原成分)は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥された形態)であり、他方の成分は、水性形態である。上記2つの成分は、上記乾燥成分を再活性化し、そして患者に対する投与のための水性組成物を得るために混合され得る。凍結乾燥された成分は、代表的に、注射器よりもむしろバイアル内におかれる。乾燥された成分は、安定剤(例えば、乳糖、ショ糖またはマンニトール、およびそれらの混合物(例えば、乳糖/ショ糖混合物、ショ糖/マンニトール混合物)など)を含み得る。1つの可能な構成は、予め充填された注射器中の水性エマルション成分およびバイアル中の凍結乾燥された抗原成分を使用する。
【0109】
(組成物またはキット成分の包装)
本発明の組成物(またはキット成分)に適した容器としては、バイアル、注射器(例えば、使い捨て可能な注射器)、点鼻スプレーなどが挙げられる。これらの容器は、無菌であるべきである。
【0110】
組成物/成分が、バイアル中におかれる場合、そのバイアルは、好ましくは、ガラス材料またはプラスチック材料から作製される。上記バイアルは、好ましくは、上記組成物がそのバイアルに添加される前に滅菌される。ラテックス感受性患者に関する懸案事項を回避するために、バイアルは、好ましくは、ラテックスを含まないストッパーによって密封され、そして全ての包装用物質中にラテックスが存在しないことが、好ましい。上記バイアルは、単回用量のワクチンを含み得るか、またはそのバイアルは、1つよりも多い用量(例えば10用量)を含み得る(「複数回用量」バイアル)。好ましいバイアルは、無色のガラスから作製される。
【0111】
バイアルは、予め充填された注射器がそのキャップ中に挿入され得るように適合したキャップ(例えば、Luerロック)を有し得、その注射器の内容物は、(例えば、その中の凍結乾燥された物質を再構成するために)そのバイアル中に排出され得、そしてそのバイアルの内容物は、その注射器中に戻され得る。上記バイアルから上記注射器を取り外した後、次いで針が、接続され得、そして組成物が、患者に投与され得る。上記キャップが、好ましくは、シールまたはカバーの内側に配置されて、そのシールまたはカバーは、そのキャップが接触され得る前に取り外される必要がある。バイアルは、特に、複数回用量バイアルに関して、その内容物の無菌的な取り出しを可能にするキャップを有し得る。
【0112】
成分が、注射器中に包装される場合、その注射器は、それに接続された針を有し得る。針が接続されない場合、別個の針が、組み立ておよび使用のために注射器とともに提供され得る。そのような針は、シースで覆う(sheathe)ことができる。安全針が、好ましい。1インチ23ゲージの針、1インチ25ゲージの針および5/8インチ25ゲージの針が、代表的である。注射器には、その上に内容物のロット番号および使用期限日がプリントされ得る剥ぎ取りラベルが提供され得、記録維持を容易にする。上記注射器中のプランジャーは、好ましくは、ストッパーを有し、プランジャーが吸引の間に偶発的に外れることを防ぐ。上記注射器は、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有し得る。使い捨て可能な注射器は、単回用量のワクチンを含む。上記注射器は、一般に、針の接続前に先端を密封するために先端キャップを有し、そしてその先端キャップは、好ましくは、ブチルゴムから作製される。上記注射器と針とが別個に包装される場合、その針は、好ましくは、ブチルゴムシールドが取り付けられる。好ましい注射器は、商標名「Tip−Lok」TMで市販されるものである。
【0113】
容器は、半用量の容量を示して小児に対する半用量の送達を容易にするために、標識され得る。例えば、0.5ml用量を含む注射器は、0.25ml容量を示す標識を有し得る。
【0114】
ガラス容器(例えば、注射器またはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラス製のよりもホウケイ酸ガラス製の容器を用いることが好ましい。
【0115】
キットまたは組成物は、上記ワクチンの詳細(例えば、投与のための指示書、ワクチン内の抗原の詳細など)を含む印刷物と一緒に(例えば、同じ箱中に)含まれ得る。その指示書はまた、警告、例えば、ワクチン接種の後のアナフィラキシー反応の場合、直ちに利用できるようにアドレナリンの溶液を準備しておくことなどを含み得る。
【0116】
(処置およびワクチンの投与の方法)
本発明の組成物は、ヒト患者への投与に適しており、そして本発明は、患者における免疫応答を惹起する方法を提供し、本発明の組成物をその患者に投与する工程を包含する。
【0117】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0118】
本発明はまた、患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤を提供する。
【0119】
これらの方法および使用によって惹起された免疫応答は、一般に、抗体応答(好ましくは、防御的な抗体応答)を含む。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および防御を評価するための方法は、当該分野において周知である。ヒト研究は、ヒトインフルエンザウイルスの赤血球凝集素に対する抗体力価は防御と相関することを示している(約30〜40の血清サンプル赤血球凝集−抑制力価は、同種のウイルスによる感染に対する約50%の防御を与える)[151]。抗体応答は、代表的に、赤血球凝集抑制、マイクロ中和、一次元放射状免疫拡散(SRID)、および/または単純放射溶血(single radial hemolysis)(SRH)によって測定される。これらのアッセイ技術は、当該分野において周知である。
【0120】
本発明の組成物は、種々の手段で投与され得る。最も好ましい免疫感作経路は、筋肉内注射(例えば、腕または脚)によるものであるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻腔内[152〜154]、経口[155]、皮内[156、157]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[158]などが挙げられる。
【0121】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人の両方を処置するために使用され得る。インフルエンザワクチンは、最近、小児および成人の免疫感作における6月齢からの使用について推奨される。したがって、上記患者は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。上記ワクチンを受容するための好ましい患者は、高齢者(例えば、50歳以上、60歳以上、および好ましくは65歳以上)、若年者(例えば5歳以下)、入院患者、医療従事者、国軍および軍人、妊婦、慢性疾患患者、免疫不全患者、そのワクチンを受容する前の7日間において抗ウイルス化合物(例えば、リン酸オセルタミビルなどのオセルタミビルまたはザナミビル化合物;以下を参照のこと)を摂取している患者、および海外渡航者である。上記ワクチンは、これらの群に対してのみ適しているわけではないが、より一般的には集団において使用され得る。流行株に関して、全ての年齢群に対する投与が、好ましい。
【0122】
本発明の好ましい組成物は、効力に関してCPMP判定基準の1、2または3を満たす。成人(18〜60歳)において、これらの基準は、(1)70%以上のセロプロテクション(seroprotection);(2)40%以上のセロコンバージョン;および/または(3)2.5倍以上のGMT増加である。高齢者(>60歳)において、これらの判定基準は、(1)60%以上のセロプロテクション;(2)30%以上のセロコンバージョン;および/または(3)2倍以上のGMT増加である。これらの判定基準は、少なくとも50人の患者による非盲検研究に基づく。
【0123】
処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールによるものであり得る。複数回用量は、一次免疫感作スケジュールおよび/または追加免疫感作スケジュールにおいて使用され得る。複数回用量スケジュールにおいて、種々の用量は、同じかまたは異なる経路(例えば、非経口によるプライム(prime)および粘膜によるブースト(boost)、粘膜によるプライムおよび非経口によるブーストなど)によって与えられ得る。1つより多い用量(代表的に、2用量)の投与は、特に、免疫学的にナイーブな患者において有用である(例えば、以前にインフルエンザワクチンを受容したことがない者のためか、または新規のHAサブタイプに対してワクチン接種するため(流行の発生において))。複数回用量は、代表的に、少なくとも1週間(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)の間隔を空けて投与される。
【0124】
本発明のワクチンは、他のワクチン(麻疹ワクチン、流行耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合体化b型H.influenzaeワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合体ワクチン(例えば、四価A−C−W135−Yワクチン)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合体ワクチンなど)と実質的に同時(例えば、医療専門家への同一の医学的な対診または診察の間)に患者に対して投与され得る。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、特に、高齢患者において有用である。
【0125】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、および特に、インフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時(例えば、医療専門家による同一の医学的な対診または診察の間)に患者に対して投与され得る。これらの抗ウイルス剤としては、ノイラミニダーゼインヒビター(例えば、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸、または5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸(そのエステル(例えば、エチルエステル)およびその塩(例えば、リン酸塩)を含む))が挙げられる。好ましい抗ウイルス剤は、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸,エチルエステル,ホスフェート(1:1)(リン酸オセルタミビル(TAMIFLUTM)としても公知である)である。
【0126】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する(including)」および「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、専らXからなり得るか、またはさらなる何かを含有し得る(例えば、X+Y)。
【0127】
語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくても良い。必要である場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0128】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0129】
詳細に述べられていなければ、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、混合の任意の特定の順序を要求しない。したがって、成分は任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在するとき、そのときは、2つの成分が互いと組み合わされ得、そして次にこの組み合わせが、第3の成分と組み合わされ得るなどである。
【0130】
動物(および特にウシ)材料が細胞の培養に使用される場合、それらを、伝染性海綿状脳症(TSE)のない、および特にウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から取得しなければならない。総合的に、動物に由来する材料の完全な非存在下で細胞を培養することが、好ましい。
【0131】
化合物が、組成物の部分として投与される場合、その化合物は、代替的に、適切なプロドラッグによって置換され得る。
【0132】
細胞基質が、リアソータント手順または逆方向遺伝学手順のために使用される場合、それは、好ましくは、例えば、Ph Eur総論(general chapter)5.2.3にあるようなヒトワクチン生産における使用について承認されているものである。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤;を含む免疫原性組成物。
(項目2)
前記インフルエンザウイルス抗原は、不活化ウイルスである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記インフルエンザウイルス抗原は、全ウイルス、スプリットウイルス、または精製された表面抗原を含む、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記インフルエンザウイルス抗原は、H1、H2、H3、H5、H7またはH9のインフルエンザA型ウイルスサブタイプ由来である、項目1〜3のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記インフルエンザウイルス抗原は、卵において増殖されたインフルエンザウイルスから調製される、項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記インフルエンザウイルス抗原は、細胞培養物において増殖されたインフルエンザウイルスから調製される、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記組成物は、オボアルブミン、オボムコイドおよびニワトリDNAを含まない、項目1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目8)
前記組成物は、前記細胞培養物の宿主由来の10ng未満の細胞DNAを含む、項目6または項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記組成物は、100ヌクレオチド以上である10ng未満のDNAを含む、項目6または項目7に記載の組成物。
(項目10)
前記インフルエンザウイルス抗原は、A/PR/8/34インフルエンザウイルス由来の1つ以上のRNAセグメントを有するインフルエンザウイルスから調製される、項目1〜9に記載の組成物。
(項目11)
前記インフルエンザウイルス抗原は、逆方向遺伝学技術によって得られたインフルエンザウイルスから調製される、項目1〜10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
前記細胞培養は、マイクロキャリア培養、付着培養、または懸濁培養である、項目6〜11のいずれか1項に記載の組成物。
(項目13)
前記細胞培養は、血清を含まない、項目6〜12のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
前記インフルエンザウイルス抗原は、MDCK細胞において増殖されたインフルエンザウイルスから調製される、項目6〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目15)
前記組成物は、1ウイルス株あたり0.1μgと20μgとの間の赤血球凝集素を含む、項目1〜14のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
前記エマルション中の油および界面活性剤は、生分解性であり、そして生体適合性である、項目1〜15のいずれかに記載の組成物。
(項目17)
前記エマルションは、サブミクロンの直径を有する小滴を有する、項目1〜16のいずれかに記載の組成物。
(項目18)
前記エマルションは、テルペノイドを含む、項目1〜17のいずれかに記載の組成物。
(項目19)
前記エマルションは、スクアレンを含む、項目1〜18のいずれかに記載の組成物。
(項目20)
前記エマルションは、トコフェロールを含む、項目1〜19のいずれかに記載の組成物。
(項目21)
前記トコフェロールは、DL−α−トコフェロールである、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記エマルションは、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、オクトキシノール界面活性剤、および/またはソルビタンエステルを含む、項目1〜21のいずれかに記載の組成物。
(項目23)
前記サイトカイン誘導剤は、インターフェロン−γの放出を誘発する、項目1〜22のいずれかに記載の組成物。
(項目24)
前記サイトカイン誘導剤は、ヒトTLR1、ヒトTLR2、ヒトTLR3、ヒトTLR4、ヒトTLR7、ヒトTLR8、および/またはヒトTLR9のうちの1つ以上のアゴニストである、項目1〜23のいずれかに記載の組成物。
(項目25)
前記サイトカイン誘導剤は、免疫刺激性オリゴヌクレオチド;3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3dMPL);イミダゾキノリン化合物;および/またはアミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体から選択される、項目1〜24のいずれかに記載の組成物。
(項目26)
前記サイトカイン誘導剤は、3dMPLであり、そして該3dMPLの少なくとも10重量%は、ヘキサアシル鎖形態である、項目25に記載の組成物。
(項目27)
前記サイトカイン誘導剤は、3dMPLであり、そして該3dMPLは、150nm未満の直径を有する粒子の形態にある、項目25または項目26に記載の組成物。
(項目28)
前記サイトカイン誘導剤は、3dMPLであり、そして該3dMPLは、前記エマルションの水相中にある、項目25または項目26または項目27に記載の組成物。
(項目29)
水銀物質を実質的に含まない、項目1〜28のいずれかに記載の組成物。
(項目30)
1mg/mlと20mg/mlとの間の塩化ナトリウムを含む、項目1〜29のいずれかに記載の組成物。
(項目31)
200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間の浸透圧モル濃度を有する、項目1〜30のいずれかに記載の組成物。
(項目32)
1種以上の緩衝剤を含む、項目1〜31のいずれかに記載の組成物。
(項目33)
前記緩衝剤は、リン酸緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸緩衝剤;コハク酸緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤;またはクエン酸緩衝剤を含む、項目32に記載の組成物。
(項目34)
5.0と8.1との間のpHを有する、項目1〜33のいずれかに記載の組成物。
(項目35)
1用量あたり1未満のエンドトキシン単位を含む、項目1〜34のいずれかに記載の組成物。
(項目36)
グルテンを含まない、項目1〜35のいずれかに記載の組成物。
(項目37)
前記組成物は、2種のインフルエンザA型株および1種のインフルエンザB型株を含む、項目1〜36のいずれかに記載の組成物。
(項目38)
前記組成物は、流行性インフルエンザウイルス株に対する一価ワクチンである、項目1〜36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目39)
(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤を合わせる工程を包含する、免疫原性組成物を調製するための方法。
(項目40)
(i)インフルエンザウイルス抗原を含む第1のキット成分;と(ii)水中油型エマルションアジュバントを含む第2のキット成分;とを備えるキットであって、(a)該第1の成分または該第2の成分は、サイトカイン誘導剤を含むか、または(b)該キットは、サイトカイン誘導剤を含む第3のキット成分を含むかのいずれかである、キット。
(項目41)
前記第1の成分および前記第2の成分は、別個の容器中にある、項目40に記載のキット。
(項目42)
前記第1の成分および第2の成分は、バイアル中にある、項目41に記載のキット。
(項目43)
前記第1の成分および第2の成分のうちの一方は、注射器中にあり、そして他方の成分は、バイアル中にある、項目41に記載のキット。
(項目44)
前記バイアルは、ガラスまたはプラスチック材料から作製される、項目42または項目43に記載のキット。
(項目45)
前記バイアルは、ラテックスを含まないストッパーによって密封される、項目42、項目43または項目44に記載のキット。
(項目46)
患者における免疫応答を惹起する方法であって、該方法は、該患者に医薬を投与する工程を包含し、該医薬は、項目1〜35のいずれか1項に記載の組成物である、方法。
(項目47)
患者における免疫応答を惹起するための医薬の製造における、(i)インフルエンザウイルス抗原;(ii)水中油型エマルションアジュバント;および(iii)サイトカイン誘導剤の、使用。
(項目48)
前記医薬は、肺炎球菌結合体ワクチンと実質的に同時に患者に対して投与される、項目46に記載の方法、または項目47に記載の使用。
(項目49)
前記医薬は、インフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物と実質的に同時に患者に対して投与される、項目46に記載の方法、または項目47に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、異なる組成物によって免疫感作されたマウスについてのLog10血清抗体力価(ELISA)を示す。矢印は、MF59エマルションを含んだ組成物を示す。左から右へ、バーは、以下の通りにグループ分けされる:4種のアジュバント(i)〜(iv)単独;4種のCpGの組合せ;4種のR−848の組合せ;4種のER−57の組合せ;添加物を含まないコントロール;および2つの成分(a)単独および(b)単独。したがって、最も左の矢印は、MF59単独についての結果を示す。
【図2】図2は、異なる組成物によって免疫感作されたマウスについてのLog10血清抗体力価(ELISA)を示す。矢印は、MF59エマルションを含んだ組成物を示す。左から右へ、バーは、以下の通りにグループ分けされる:4種のアジュバント(i)〜(iv)単独;4種のCpGの組合せ;4種のR−848の組合せ;4種のER−57の組合せ;添加物を含まないコントロール;および2つの成分(a)単独および(b)単独。したがって、最も左の矢印は、MF59単独についての結果を示す。
【図3】図3は、異なる組成物によって免疫感作されたマウスについてのLog10血清抗体力価(ELISA)を示す。矢印は、MF59エマルションを含んだ組成物を示す。左から右へ、バーは、以下の通りにグループ分けされる:4種のアジュバント(i)〜(iv)単独;4種のCpGの組合せ;4種のR−848の組合せ;4種のER−57の組合せ;添加物を含まないコントロール;および2つの成分(a)単独および(b)単独。したがって、最も左の矢印は、MF59単独についての結果を示す。
【図4】図4は、HAによって刺激された場合に抗原特異的サイトカイン応答を与えたCD4 T細胞の%(各対における左のバー)、およびγ−インターフェロン陽性であった%(各対における右のバー)を示す。X軸上のグループは、図1〜3における通りである。
【図5】図5は、H3N2株に対するIgGについてのGMT(AU/ml)を示す。各対における左のバーは、IgG1を示し;右は、IgG2aを示す。
【図6】図6は、三価の卵増殖(egg−grown)抗原を受容するマウスにおける血清抗HA ELISA応答(2用量後)を示す。実験は、アジュバントを伴わないか、またはMF59および/もしくはCpG7909を伴うものであった。
【図7】図7は、同様に、同じマウスにおける抗HA HI応答を示す。
【図8】図8は、ELISAによって評価された抗H3N2 IgG1および抗H3N2 IgG2aの割合を示す。
【図9】図9は、サイトカイン陽性細胞の数を、全CD4+細胞のうちの%として示す。2匹の個々のマウス由来の応答が、示される。マウスは、アジュバント添加されていないか、またはアジュバント(1)、(2)もしくは(3)によってアジュバント添加されたかのいずれかであるスプリットワクチン「A」または「B」によって免疫感作された。
【発明を実施するための形態】
【0134】
(本発明を実施するための様式)
インフルエンザウイルス株Wyoming H3N2(A)、New−Caledonia H1N1(A)およびJiangsu(B)を、MDCK細胞において個別に増殖させた。三価表面糖タンパク質ワクチンを、調製し、そしてそれを使用して、2用量(1株あたり0.1μgおよび1μgのHA)にて0日目および28日目に免疫ナイーブBalb/Cマウスを免疫感作した。動物を、42日目に採血し、そして種々のアッセイを、その血液を用いて行った:HI力価;ELISAによって測定した抗HA応答;および抗原特異的様式でサイトカインを放出するCD4 T細胞のレベル(γ−インターフェロンを放出するCD4 T細胞の分離した測定を含む)。IgG応答を、特に、IgG1およびIgG2aに関して測定した。
【0135】
免疫感作のために使用した組成物は、以下のうちの1つを含んだ(ネガティブコントロールを除く):(i)抗原溶液と1:1の容量比で混合されたMF59エマルション;(ii)1mg/mlで使用され、かつ5mMヒスチジン緩衝剤を含む水酸化アルミニウム;(iii)1mg/mlで使用され、かつ5mMヒスチジン緩衝剤を含むリン酸カルシウム;または(iv)ポリ(ラクチドco−グリコリド)50:50コポリマー組成物(固有粘度0.4(「PLG」))と吸着された抗原とから形成された微粒子。さらに、上記組成物は、以下のうちの1つを含んだ(再び、ネガティブコントロールを除く):(a)ホスホロチオエート骨格を有する免疫刺激性CpG ODN;または(b)R−848。
【0136】
これら6種の成分の各々を個別に試験したところ、MF59エマルションのみが、両方の用量にて、全3種の株に対するHI力価の有用な上昇を一貫して与えた。上記H1N1株について、力価は、アジュバント添加しなかったコントロールよりも、10倍を超えて高かった。上記H3N2株に対する上昇は、より低い抗原用量において5倍より高かったが、より高い用量において10倍より高かった。上記インフルエンザB型ウイルス株に対する上昇は、より低い抗原用量において3倍より高かったが、より高い用量において5倍より高かった。
【0137】
次いで、上記インフルエンザB型ウイルスについて上記組合せを見たところ、0.1μgの抗原を使用する場合、2つの組合せだけが、42日目にてHI力価を、(添加しなかったコントロールワクチンと比較して)3倍よりも高く上昇させ、そしてこれらは、2つのMF59ベースの組合せであった。
【0138】
次いで、上記H1N1株について、CpGを含む組合せの全て(CpG/PLGの組合せを除く)は、少なくとも5倍のHI力価の上昇を与え、そしてその上昇は、MF59/CpGの組合せを使用する場合、10倍よりも高かった。他のMF59ベースの組合せは、5倍よりも高い上昇を示した。
【0139】
次いで、上記H3N2株について、再び、CpGを含む組合せの全て(3倍よりも高い上昇を与えたCpG/PLGの組合せを除く)は、少なくとも5倍のHI力価の上昇を与えた。MF59/R−848および水酸化アルミニウム(Alum)/R−848の組合せは、3倍よりも高い上昇を与えた。
【0140】
したがって、総合的に、HI力価を上昇させるための最良のアジュバント(選択肢(i)〜(iv)由来)は、水中油型エマルションであった。より良好な添加物((a)または(b)由来)は、CpGであったが、CpG単独では、HI力価を増強しなかった。最良の組合せは、全て水中油型エマルションに基づいた。
【0141】
図1〜3は、以下の15グループについての抗HA ELISA応答を示す:アジュバントを含まない1グループ;(a)および(b)を用いた3グループ;(i)〜(iv)を用いた4グループ;および(i)〜(iv)/(a)〜(b)の組合せを用いた8グループ。矢印は、MF59水中油型エマルションを含む3つの組成物を示す。エマルションベースの組成物が最良の抗HA応答を与えたことは、直ちに明らかである。
【0142】
図4は、最良のT細胞応答を与えたアジュバントを示す。再び、エマルションベースの組成物が最良の応答を与えたことは、直ちに明らかである。(a)単独および(b)単独について、T細胞応答は、あまり大きくなく、そして最良の結果は、それらをMF59と組み合わせた場合に見られた。γ−インターフェロン分泌細胞の最も高いレベルは、星印によって標識した、MF59/CpGの組合せによって達成された。γ−インターフェロン分泌細胞の数は、MF59/CpGの組合せによるもののほうが、それ自体の成分のうちのいずれかによるものよりも良好であった。
【0143】
γ−インターフェロン分泌の増加は、単独のMF59アジュバントが主にTh2型応答を誘発したのに対して、CpGの添加がその応答をTh1型に移行させたことを示す。Th1型応答は、異種サブタイプに対する免疫(heterosubtypic immunity)を改良することが報告されている[159]。Th1型応答への移行はまた、IgG型を調べたときに見られた。図5に示す通り、単独のMF59は、強力なIgG1応答(Th2)および低いIgG2a応答(Th1)を示す。CpGは、弱いIgG1応答およびIgG2a応答を示す。対照的に、MF59/CpGの組合せは、優勢なIgG2a応答を示す。
【0144】
さらなる実験において、卵において増殖されたウイルスから調製した精製表面糖タンパク質を使用して、MF59/CpGの組合せを、異なる免疫刺激性オリゴヌクレオチドを使用するために改変した(すなわち、(c)CpG7909)。図6〜8に示す通り、これらの実験において得られた結果は、先の結果と同一であった。特に、図6は、抗HA血清ELISA IgG力価が上記抗原に対するMF59の添加によって劇的に上昇したのに対して、CpG7909単独の添加が匹敵する増強をもたらさなかったことを示す。同様に、MF59によって得られた力価は、CpG7909の添加によって顕著には上昇させなかった。本質的に、同じ様式は、血清HI力価に関して見られる(図7)。しかし、抗体応答の質を見る場合、CpG7909の添加は、Th1関連アイソタイプの相対的寄与を増大させる(図8)。
【0145】
抗体のデータは、抗原の再刺激に対して特異的に応答するCD4 T細胞のサイトカインプロフィールと良好に相関した。また、MF59は、Ag応答性T細胞の頻度の増加をもたらした。CpG7909の添加は、応答性T細胞の全体的な%を大きく増加させなかったが、これらの応答性細胞によって産生されたサイトカインの組成を変化させる。したがって、より高い割合のAg特異的T細胞が、CpG7909が含まれる場合にIFN−γを産生したのに対して、より低い割合のAg特異的T細胞は、IL−5を産生した。
【0146】
さらなる実験において、2種の市販のアジュバント添加しなかったスプリットビリオン三価インフルエンザワクチン(「SPLIT(A)」および「SPLIT(B)」)を、入手し、そしてマウスを免疫感作するために使用した。上記ワクチンを、希釈して、0.2μgの各HAの用量を得た。ワクチンは、アジュバント添加されなかったか、または(1)水酸化アルミニウム、(2)MF59エマルション、もしくは(3)MF59エマルションおよび免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドを用いてアジュバント添加されたかのいずれかであった。8匹の雌Balb/Cマウス(8週齢)の群を、0日目および28日目において、50μl用量の上記ワクチンを用いて筋肉内に免疫感作した。血清を、14日目および42日目に入手し、そしてその血清を、抗HA力価(IgG)、HI力価およびT細胞について分析した。
【0147】
42日目における血清IgG抗体力価(ELISA)は、各ウイルスを個別に見る以下の表Iに与えられる。HI血清抗体力価は、表IIにある。図9は、上記マウスにおけるT細胞応答を示す。精製された表面糖タンパク質ワクチンに関して見られる通り、MF59は、水酸化アルミニウム(alum)よりも良好な結果を与えたが、MF59に対する上記CpGオリゴヌクレオチドの添加は、一般に、より良好なT細胞応答をもたらす。例えば、MF59「split(A)」にCpGを添加することは、MF59単独によって達成されるものよりも高い割合の抗原特異的T細胞をもたらした。
【0148】
したがって、水中油型エマルションは、インフルエンザワクチン(表面糖タンパク質ワクチンおよびスプリットワクチンの両方を含む)のための優れたアジュバントであるが、サイトカイン応答(特に、γ−インターフェロン応答)を誘発するそれらの能力は、免疫刺激剤(例えば、CpG)をさらに含むことによって改良され得る。
【0149】
水中油型エマルションは、ワクチン株が循環する株(circulating strain)と一致しない場合でさえワクチンが防御免疫を誘導し得るように、ヘテロ改変体インフルエンザ株の中和の増強を提供する[160]。ここで、サイトカイン誘導剤の添加は、良好なHI力価が維持され、そしてT細胞応答およびサイトカイン応答が増強されるワクチンを与え得ることが、示された。HI力価は、インフルエンザウイルスの血清中和と相関し、したがって、高いHI力価を維持することは、特に、集団がナイーブである株、または宿主サイトカイン応答を回避し得る株に対して有用である[161]。T細胞応答およびサイトカイン応答の増大は、それらがインフルエンザ感染に対する宿主防御の早期でありかつ決定的な段階に関与し[7]、そしてインフルエンザに対する加齢性の感受性をより強力なインターフェロン−γ応答を誘導することによって減少させることが可能であり得る[23]ので、有用である。したがって、水中油型エマルションとサイトカイン誘導剤との組合せは、有益である。
【0150】
本発明は例示のみによって記載され、そして改変は本発明の範囲および精神の中にあるままでもなされ得ることが、理解される。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

(参考文献(その内容は、本明細書によって参考として援用される))
【0153】
【化13−1】

[35]米国特許第4689338号、同第4929624号、同第5238944号、同第5266575号、同第5268376号、同第5346905号、同第5352784号、同第5389640号、同第5395937号、同第5482936号、同第5494916号、同第5525612号、同第6083505号、同第6440992号、同第6627640号、同第6656938号、同第6660735号、同第6660747号、同第6664260号、同第6664264号、同第6664265号、同第6667312号、同第6670372号、同第6677347号、同第6677348号、同第6677349号、同第6683088号、同第6703402号、同第6743920号、同第6800624号、同第6809203号、同第6888000号および同第6924293号.
【0154】
【化13−2】

【0155】
【化14】

【0156】
【化15】

【0157】
【化16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−167123(P2012−167123A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−129920(P2012−129920)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2008−538418(P2008−538418)の分割
【原出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】