サイトカイン調節性を有する化合物
本発明は、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、1又は複数の免疫制御性サイトカイン、例えば炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインを調節する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、サイトカイン調節性を有する化合物に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、オーストラリア仮特許出願第2005907306号(2005年12月23日出願)とオーストラリア仮特許出願第2006901179号(2006年3月8日出願)の優先権を主張する、これらの全開示内容を参照することにより本願明細書中に援用する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書において、文書、行為、又は知識の項目が参照又は考察される場合、その参照又は考察は、その文書、行為、又は知識の項目、又はこれらの任意の組合せが、優先日に、技術常識の一部であること、又は本明細書が関連する問題を解決する試みに関連することが公知であったこと、を認めるものではない。
【0004】
サイトカインは、免疫系の相互作用を制御する分子の大きな群である。サイトカインは、局所性及び全身性免疫調節、炎症反応、創傷治癒、血液細胞の生成、及び多くの他の生物学的プロセスを制御する生化学的シグナルを有するメッセンジャーである。100を超えるサイトカインが同定されている。
【0005】
サイトカインは免疫刺激に応答して新たに(de novo)産生されなければならない。これらは(必ずしもいつもではないが)一般に、短い距離で、短時間に、かつ非常に低濃度で作用する。これらは特異的膜受容体に結合することにより作用し、これらの受容体は次に2次メッセンジャー(しばしばチロシンキナーゼ)を介して細胞に、その挙動(遺伝子発現)を変えるようにシグナルを送る。サイトカインに対する応答には、膜タンパク質(サイトカイン受容体を含む)の発現の上昇又は低下、増殖、及びエフェクター分子の分泌がある。
【0006】
サイトカインは一般的な名前であり、他の名前には、リンホカイン(リンパ球により作られるサイトカイン)、モノカイン(単球により作られるサイトカイン)、ケモカイン(化学走化性を有するサイトカイン)、及びインターロイキン(1つの白血球により作られ他の白血球に作用するサイトカイン)がある。サイトカインは、これらを分泌する細胞に(自己分泌作用)、近くの細胞に(傍分泌活性)、又はある場合には遠くの細胞に(内分泌作用)作用する。
【0007】
ケモカインは、小さいサイトカインのファミリー、又は細胞に分泌されるタンパク質である。ケモカインは、近くの応答性細胞で有向化学走化性を有する。一部のケモカインは炎症促進性であると考えられ免疫応答中に誘導することができるが、他のケモカインはホメオスタティックであると考えられる。炎症性ケモカインは、細菌感染、ウイルス、及び物理的傷害を引き起こす物質に応答して多種類の細胞から放出される。これらは主に白血球の化学誘引物質として機能し、単球、好中球、及び他のエフェクター細胞を血液から感染又は傷害部位に動員する。これらは多くの異なるタイプの細胞により放出され、固有の免疫に関与する細胞及び適応免疫系のリンパ球を誘導する作用をする。一部のケモカインはまた、リンパ球の発生、遊走、及び血管形成(新しい血管の成長)における役割を有する。
【0008】
リンホカインは、免疫細胞により産生されるサイトカインのサブセットである。
【0009】
モノカインは免疫応答を仲介する可溶性サイトカインである。モノカインは単球性食細胞の生成物であり、リンパ球機能に対する制御作用を有する。
【0010】
異なるタイプの細胞が同じサイトカインを分泌すること、又は1つのサイトカインがいくつかの異なるタイプの細胞に作用すること(多面作用性)は一般的である。サイトカインはその活性が重複性であり、すなわち異なるサイトカインにより同様の機能が刺激されることがある。サイトカインはしばしばカスケードで産生され、あるサイトカインがその標的細胞を刺激して追加のサイトカインを作らせる。サイトカインはまた相乗的に作用(2つまたはそれ以上のサイトカインが一緒に作用)するか、又は拮抗的に作用(反対の作用を引き起こすサイトカイン)することもある。
【0011】
サイトカインの活性は、組換えサイトカイン及び精製細胞集団をインビトロで使用して特徴づけられるか、又は個々のサイトカイン遺伝子についてノックアウトマウスを使用して、サイトカイン機能がインビボで特徴づけられる。サイトカインは多くの細胞集団により作成されるが、主要な産生物質はヘルパーT細胞(Th)とマクロファージである。
【0012】
炎症促進性サイトカインは一般に炎症性応答を刺激して、これが次に、免疫不全症や自己免疫疾患に関連する多くの臨床的問題を引き起こす。従ってサイトカインは、固有の免疫応答及び適応免疫応答の両方の機能にとって決定的に重要である。免疫系の進行と機能におけるこれらの重要性以外に、サイトカインは、種々の免疫学的、炎症性、及び感染性疾患で大きな役割を果たす。これらの活性の結果として、サイトカインはまた、癌や腫瘍増殖を含む細胞増殖性障害において重要な役割を果たすと考えられる。
【0013】
免疫応答や炎症におけるサイトカインの参加はまた、癌におけるこれらのタンパク質の役割を示唆する。炎症と癌との因果関係が長い間疑われている。実際悪性腫瘍組織中の白血球の存在が証明されており、従って一部の腫瘍は慢性炎症の領域から発生すると言われている。
【0014】
腫瘍内及びその周りの微小環境は、固有の免疫系の細胞を含む。この環境は細胞増殖、遊走、及び生存を増強し、さらに血管形成を増強して、これが最終的に腫瘍成長を促進する。さらに炎症性応答は多くの点で創傷治癒応答に似ており、腫瘍は治癒できない創傷であると見なされる。
【0015】
慢性炎症及び継続性炎症は細胞に直接影響を与え、これは最終的に形質転換される。例えばMALTリンパ腫では、慢性炎症が持続性のB細胞活性化を引き起こし、癌を引き起こす染色体再配置に至る。間接的機構も存在し、例えば上皮由来腫瘍では、炎症が周りの炎症性細胞の活性化を含む間接的機構を介して腫瘍増殖を刺激する。
【0016】
従ってサイトカインの機能を調節する能力は、異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療のための機構を提供する。
【発明の開示】
【0017】
要約
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体又はその複合体が、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカインの機能を調節すること、従ってこれらが異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療及び/又は予防に有用であることがわかっている。
【0018】
第1の態様において、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0019】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0020】
さらに、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用が提供される。
【0021】
好適な実施態様において免疫制御性サイトカインは、炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインである。
【0022】
免疫制御性サイトカインは免疫系における相互作用を調節し、例えば炎症応答を阻害することにより及び/又は抗炎症応答を刺激することにより、免疫機能とプロセスを制御する。
【0023】
本発明の第2の態様において、炎症応答を阻害し及び/又は抗炎症応答を刺激する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいは、その複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0024】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいその複合体の使用も提供される。
【0025】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用がさらに提供される。
【0026】
異常なサイトカイン活性から発生する具体的な障害には、免疫障害、炎症性障害、及び細胞増殖障害がある。
【0027】
第3の態様において、免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0028】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0029】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用がさらに提供される。
【0030】
第4の態様において、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体を含む、免疫調節剤、抗炎症剤、又は抗癌剤が提供される。
【0031】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤としての、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0032】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤として使用するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体がさらに提供される。
【0033】
用語「免疫調節剤」は、「免疫刺激剤」、並びに「免疫抑制剤」を包含することを理解されたい。
【0034】
用語「抗癌」は、「抗腫瘍」を含むことも理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
詳細な説明
本発明は、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカインの機能を調節するヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体に関し、従って異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療及び/又は予防の機構を提供する。
【0036】
ヒドロキシクロマン
本明細書において用語「ヒドロキシクロマン」は、エナンチオマー型でもラセミ体型でも、トコールとトコトリエノールのすべての異性体を含む。
【0037】
トコールは、以下の式(I)を有する6:ヒドロキシ2:メチルクロマンの誘導体のすべての異性体を含み、α−5:7:8トリメチル、β−5:8ジメチル、γ−7:8ジメチル、及びδ−8メチル誘導体を含む。
【化1】
【0038】
ここで、式中、R1、R2、及びR3は、水素とC1-6アルキル、好ましくはメチルよりなる群から選択される独立に選択される。
【0039】
用語「C1-6アルキル」は単独又は組合せ(例えば、C(=O)−C1-6アルキル)で使用される時、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。例には、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルがある。
【0040】
トコフェロールでは、R4は4:8:12トリメチルトリデカン(上記参照)により置換され、2、4、及び8位(*を参照)は、R又はS活性を有する立体異性体若しくはラセミ性でもよい。
【0041】
トコトリエノールでは、R4は4:8:12トリメチルトリデカン−3:7:11トリエン(上記参照)により置換され、2位(*を参照)は、R又はS活性を有する立体活性若しくはラセミ性でもよい。
【0042】
好適な実施態様において、ヒドロキシクロマン誘導体は、α、β、δ、及びγトコール、並びにこれらの混合物、さらに好ましくはα−トコフェロール又はトコトリエノールよりなる群から選択される。
【0043】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体
本明細書において用語「リン酸エステル誘導体」は、リン酸化ヒドロキシクロマンの酸型、金属塩(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、及びカルシウム)を含むリン酸塩の塩、及びリン酸塩プロトンが他の置換基(例えば、C1-6アルキル又はホスファチジル基)により置換された他の誘導体を含む。
【0044】
ある場合に、追加の性質(例えば水溶性の上昇)が好ましい場合、ホスファチドのようなリン酸エステル誘導体を使用することが必要なことがある。ホスファチジル誘導体は、有機リン酸塩のアミノアルキル誘導体である。これらの誘導体は、R1R2N(CH2)nOH(ここで、nは1〜6の整数であり、R1とR2はH又はC1-6アルキルである)の構造を有するアミンから調製されてもよい。R1とR2は同じか又は異なる。
【0045】
ホスファチジル誘導体は、ヒドロキシクロマンのヒドロキシルプロトンをリン酸塩で置換し、次にこれをアミン(例えばエタノールアミン又はN,N’ジメチルエタノールアミン)と反応させて、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を生成することにより調製される。ホスファチジル誘導体の1つの調製法は、塩基性溶媒(例えば、ピリジン又はトリエチルアミン)をオキシ塩化リンとともに使用して中間体を調製し、次にアミンのヒドロキシ基と反応させて対応するホスファチジル誘導体(例えばPコリルPトコフェリルリン酸2水素)を生成する。
【0046】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、リン酸ジトコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される。好適な実施態様においてヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、及び/又はリン酸ジトコトリエニル誘導体の混合物である。好適な実施態様においてヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体とリン酸ジトコフェリル誘導体との混合物、最も好ましくはリン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)との混合物である。
【0047】
リン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)との比は、好ましくは4:1〜1:4、さらに好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは2:1である。
【0048】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体
ある場合には、追加の性質(例えば改良された安定性又は配送性)が有用なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体も使用してもよい。
【0049】
用語「ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体」は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及びこれらのアミノ酸が豊富なタンパク質よりなる群から選択される1又は複数の複合体形成剤との反応生成物を意味する。窒素官能基を有するアミノ酸が豊富なタンパク質の例には、62のアミノ酸の少なくとも1つをアルギニンとして有するか、又は83の少なくとも1つをヒスチジンとして有するか、又は65の少なくとも1つをリジンとして有するタンパク質であり、例えば種々の型のタンパク質カゼインである。
【0050】
好適な複合体形成剤は、アルギニンやリジンのようなアミノ酸及び3級置換アミン、例えば式(II):
【化2】
【0051】
{式中、
R7は、カルボニルにより随時中断されるC1-22アルキルよりなる群から選択され;そして、
【0052】
R8とR9は、独立にH、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3X(ここでXはH、Na、K、又はアルカノールアミンである)よりなる群から選択されるが、
【0053】
ただし、R8とR9は両方がHであることはなく、R7がRCOである時、R8はCH3でR9は(CH2CH2)N(C2H4OH)−HCHOPO3であるか、あるいはR8とR9は一緒にN(CH2)2N(C2H4OH)CH2COO−である}
よりなる群から選択される。
【0054】
用語「C1-22アルキル」は、1〜22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であるか、あるいは6〜22個の炭素原子を有する環状炭化水素基を意味する。例としては、ヘキシル、シクロヘキシル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及びオクタデシルを含む。
【0055】
好適な複合体形成剤には、アルギニン、リジン、及び/又はラウリルイミノジプロピオン酸があり、ここで複合体形成は、アルカリ性窒素中心とリン酸エステルとの間で起きて、安定な複合体を生成する。
【0056】
併用療法に適した複合体形成剤
併用療法が好ましい時は、複合体形成剤として特定のタンパク質を使用することができる。かかるタンパク質の例には、インスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチン、インターフェロン−αと−βと−γ、黄体形成ホルモン(LH)(ゴナドトロピン放出ホルモンとしても知られている)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、コロニー刺激因子(CSF)、及び成長ホルモン(GH)がある。これらの例のアミノ酸組成を以下の表に示す。
【0057】
【表1】
【表2】
【0058】
併用療法が好ましい時は、これらのタンパク質もまた複合体形成剤として使用されることも理解されたい。
【0059】
用語「ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体」は時に、より一般的に「1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、又はこれらの複合体」を意味するのに使用される。
【0060】
サイトカイン調節と活性
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカイン、例えば炎症促進性及び抗炎症性サイトカインを調節するための治療薬として作用する。従って、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはこれらの複合体を治療的有効量で被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0061】
本明細書において用語「調節する」、「調節性」、及び「調節」は、測定できるパラメータの変化を示す。パラメータは、客観的に測定され、通常生物学的プロセス、病理的プロセス、又は治療的介入に対する薬剤応答の指標として評価される。例えばある実施態様において「調節」は、調節前のサイトカインの活性と比較して、サイトカインの活性の上昇又は低下を示す。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体のサイトカインへの直接結合により活性は上昇又は低下し、又は間接的機構によりサイトカインの活性は調節される。例えばヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、サイトカインが相互作用するタンパク質(例えばサイトカイン受容体)の発現又は活性の上昇、若しくは低下を引き起こす。別の実施態様において「調節」は、調節前のT細胞の増殖レベルと比較してT細胞増殖の上昇を示す。
【0062】
用語「免疫制御性サイトカイン」は、免疫系の相互作用を調節する、例えば炎症応答を阻害及び/又は抗炎症応答を刺激することにより免疫機能とプロセスを制御する、サイトカインを示す。好適な実施態様において免疫制御性サイトカインは、炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインである。
【0063】
「炎症促進性サイトカイン」は、炎症を引き起こし易い免疫制御性サイトカインであり、炎症、免疫、タンパク質分解、細胞動員と増殖の重要なメディエーターである。早期応答に関与する主要な炎症促進性サイトカインには、インターロイキン型のサイトカイン、例えばインターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、及び腫瘍壊死因子型のサイトカイン、例えば腫瘍壊死因子−アルファ(カケキシン(cachexin)及びカケクチン(cachectin)ともいわれるTNFα)がある。他の炎症促進メディエーターには、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−11(IL−11)、及びインターロイキン−18(IL−18)がある。これらは内因性発熱物質(IL−1、IL−6、TNFα)として作用して、マクロファージと間葉細胞(繊維芽細胞、上皮細胞、及び内皮細胞を含む)による2次メディエーター及び炎症促進性サイトカインの合成をアップレギュレートし、急性相タンパク質の産生を刺激するか又は炎症性細胞を誘引する。
【0064】
「抗炎症性サイトカイン」は、炎症の種々の側面(例えば、細胞活性化と炎症促進性サイトカインの産生)に拮抗する免疫制御性サイトカインであり、従ってインビボでの炎症応答の程度を調節するのに寄与する。これらのメディエーターは、主に炎症促進性サイトカインの産生の阻害により、又は種々の方法での炎症促進性メディエーターの多くの生物学的作用の拮抗により作用する。主要な抗炎症性サイトカインはインターロイキン型のサイトカイン、例えばインターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−10(IL−10)、及びインターロイキン−13(IL−13)である。他の抗炎症性サイトカインには、インターフェロンサイトカイン、例えばIFNα、増殖因子サイトカイン、特にトランスフォーミング増殖因子サイトカイン、例えばTGFβ、及び顆粒球コロニー刺激因子サイトカイン、例えばG−CSF、並びにTNF若しくはIL−6の可溶性受容体がある。
【0065】
免疫制御性サイトカインを炎症促進性又は抗炎症性として一般的かつ明確に分類することは、誤解を招きやすいことに注意されたい。炎症応答の真の作用は、炎症促進性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスにより決定される。ある特定のサイトカインに誘導される細胞活性の種類、持続時間、及び程度は、標的細胞の性質、細胞の微小環境、例えば細胞の増殖と活性化状態、隣接細胞の種類、他のサイトカインの存在、及び同じ細胞に作用するいくつかのサイトカインの順序により大きく影響を受ける。
【0066】
「インターロイキン型のサイトカイン」は一般に、ある白血球により作られ他の白血球に作用するサイトカインとして記載される。インターロイキン型のサイトカインはまた、ケモカイン、モノカイン、及びリンホカインとして特徴付けられる。
【0067】
「腫瘍壊死因子型のサイトカイン」は、活性化マクロファージとリンパ球により発現される強力な炎症促進性サイトカインである。これらのサイトカインは、早期炎症応答と獲得免疫応答の両方に関与する遺伝子の発現に対して、アポトーシスとは異なる多様な細胞性応答を誘導する。
【0068】
「インターフェロンサイトカイン」は、ウイルス、細菌、寄生体、及び腫瘍細胞のような外来物質による抗原刺激に応答して、ほとんどの脊椎動物の免疫系の細胞により産生される天然のタンパク質である。
【0069】
「増殖因子サイトカイン」は、応答細胞の増殖と分化を調節する、ホルモン様制御シグナルとして機能する生物活性ポリペプチドの群である。
【0070】
サイトカインの重複性と多面作用性のために、これらはしばしばカスケードで産生され、相乗作用的又は拮抗的に作用し、従って1つのサイトカインがインビボで大きな作用を有することが難しい。
【0071】
炎症応答は、血管拡張、血管透過性亢進、炎症細胞(特に急性炎症における好中球)の動員、これらの細胞からの炎症メディエーター(血管作用性アミン、プロスタノイド、及び反応性酸素中間体を含む)の放出、及びサイトカイン放出に関連する。マクロファージ由来サイトカインであるIL−1とIL−6は主に、肝細胞による血しょうタンパク質産生における防御性変化を引き起こすことにより、急性相応答に関与する。
【0072】
より重要な急性相タンパク質の一部には以下がある:
1.プロテアーゼインヒビター(例えば、α1−アンチトリプシン、アンチキモトリプシン);
2.凝固タンパク質(例えば、アテローム性動脈硬化症、フィブリノゲン、プロトロンビン、及びプラスミノーゲン);
3.補体タンパク質(例えば、C2、C3、C4、及びC5);
4.輸送タンパク質(例えば、ハプトグロビン、及びヘモペキシン);
5.これらの群に属さない他のタンパク質、例えばC−反応性タンパク質(CRP)、フィブロネクチン、及び血清アミロイドA)。
【0073】
CRPは、体内で起きる炎症プロセス中に劇的にそのレベルが上昇するため、急性相タンパク質のクラスのメンバーである。これは、外来細胞及び傷害細胞への補体結合を助け、疾患に対する体液性応答に影響を与えると考えられている。これはまた、先天免疫において感染に対する早期防御系として重要な役割を果たすと考えられている。
【0074】
CRPレベルの大きな上昇に関連する最も一般的な症状は以下を含む:
1.感染の過敏症併発(例えば、リウマチ熱);
2.炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、ライター病、クローン病);
3.同種移植片拒絶(例えば、腎移植);
4.悪性腫瘍(例えば、リンパ腫、及び肉腫);
5.壊死(例えば、心筋梗塞、腫瘍塞栓症、及び急性相膵炎);
6.外傷(例えば、火傷又は骨折)。
【0075】
CRP値の上昇は特定の症状に特異的ではないが、進行している炎症の非常に高感度の指標であり、注意深い臨床的評価に対して貴重な補助となる。いったん診断が確立されると、CRPは治療に対する患者の応答を追跡するのに使用される。CRPレベルにより追跡される感染症には以下がある:腎盂腎炎、骨盤内感染症、髄膜炎、及び心内膜炎。
【0076】
サイトカイン関連障害の最も極端な例はおそらく、サイトカインストームであり、これは種々のサイトカインレベルが極めて上昇している、サイトカインと免疫細胞との正のフィードバックからなる致死的となり得る免疫反応である。サイトカインストームは、健康で活発な免疫系の全身性発現であり、150を超える炎症メディエーター(サイトカイン、酸素フリーラジカル、及び凝固因子)の放出を引き起こす。炎症促進性サイトカイン(例えばTNFα、IL−1、及びIL−6)と抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10及びIL−1)の両方とも、サイトカインストームを経験している患者の血清中で上昇している。サイトカインストームは、多くの感染症、及び移植片対宿主病(GVHD)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、インフルエンザ、及び全身性炎症応答症候群(SIRS)を含む非炎症性疾患で起きる。
【0077】
医薬組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与は、所望の治療又は予防応答を与えるのに有効なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の濃縮を引き起こす適切な手段かも知れない。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は任意の適切な量で任意の適切な担体中に含有され、一般的に医薬組成物の総重量の1〜95重量%の量で存在する。担体は、組成物の他の成分と適合性があり、被験体に障害を与えないという意味で「薬剤学的に許容される」ものでなければならない。
【0078】
薬剤学的に許容される担体は、好ましくは、有機溶媒、例えばアセトン、ベンゼン、アセトニトリル、クロロホルム、カノーラ油、DMSO又はアルコールであり、例えばメタノール又はエタノールである。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が低い水溶性の場合、水を有機溶媒と一緒にすると、安定な混合物が形成される。
【0079】
さらにヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を他の薬剤と組合せて、機能的組合せを得ることができる。組合せがヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の活性を排除しない限りは、薬剤活性物質の化学的に適合性のある組合せを含むことが企図される。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と他の薬剤は、別々に、順に、又は同時に投与してもよいことは理解されるであろう。他の薬剤には、例えば抗炎症剤及び/又は抗癌剤がある。
【0080】
組成物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、及び皮内を含む)、経腸、直腸内、膣内、鼻内、吸入、局所的、又は眼内投与経路に適した剤形で提供される。すなわち組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、エマルジョン、液剤、ヒドロゲルを含むゲル剤、ペースト、軟膏剤、クリーム剤、膏薬、飲薬、送達器具、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、噴霧剤、又はエアゾル剤の形でもよい。組成物は通常の薬剤学的慣行に従って調製される(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,(第19版)A R Gennaro, 1995, Mack Publishing Company, Easton, PA, 及び Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology, J Swarbrick and J C Boylan 編、1988-1999, Marcel Dekker, New York、を参照)。
【0081】
組成物は、投与の実質的に直後に、又は所定の時間に、又は投与後のある期間、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出するように調製される。後者のタイプの組成物は一般に、制御放出製剤として知られ、これらには、(i)ある長期間にわたって体内で活性化合物(例えばヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体)の実質的に一定の濃度を生じる調製物;(ii)所定の遅延時間後、ある長期間にわたって体内で活性化合物の実質的に一定の濃度を生じる調製物;(iii)体内で比較的一定の有効な活性化合物レベルを維持し、同時に活性化合物の血しょうレベルの変動が引き起こす好ましくない副作用を最小にすることにより、所定の期間、活性化合物の作用を維持する調製物(のこぎり波状動力学的パターン);(iv)活性化合物作用を局在化させる調製物(例えば、疾患組織又は臓器に隣接して又はその中に制御放出組成物を特に配置する);及び(v)担体又は化学的誘導体を使用して活性化合物を特定の標的細胞タイプに送達することにより、活性化合物を標的化する調製物がある。
【0082】
制御放出製剤の形のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、(i)狭い治療指数(すなわち、有害な副作用又は毒性反応に至る血しょう濃度と、治療作用に至る血しょう濃度との差が小さい;一般に治療指数(TI)は、致死量中央値(LD50)対有効投与量中央値(ED50)との比として定義される);(ii)消化管中で狭い吸収ウィンドウ;又は(iii)治療レベルで血しょうレベルを維持するために1日のうちに頻繁な投与が必要となる、非常に短い生物学的半減期、を有する場合に、特に好適である。
【0083】
問題のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の放出速度が代謝速度より速い制御放出製剤を得るために、種々の方策を適用することができる。ある例では、種々の調製パラメータと成分(例えば、種々のタイプの制御放出組成物とコーティング)の適切な選択により、制御放出が得られる。すなわちヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適切な賦形剤とともに医薬組成物に調製され、これは、被験体に投与されると、制御された方法でヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出する。例としては、単回又は多回単位の錠剤又はカプセル剤組成物、油状液剤、懸濁剤、エマルジョン、マイクロカプセル、微小球、ナノ粒子、パッチ、及びリポソームがある。
【0084】
経口投与用固体剤形
経口使用用の調製物は、非毒性の薬剤学的に許容されるエステルとの混合物でヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば不活性希釈剤もしくは増量剤(例えば、ショ糖、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸ナトリウム);顆粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、アルギン酸);結合剤(例えば、ショ糖、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、α化デンプン、微結晶性セルロース、珪酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール);及び滑沢剤、直打用滑沢剤、及び粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、珪酸、水素化植物油、タルク)でもよい。他の薬剤学的に許容されるエステルは、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などでもよい。
【0085】
錠剤はコーティングされないか、あるいは、随時消化管での崩壊と吸収とを遅延させ、従って長期間にわたって持続作用を得るために、既知の方法でコーティングしてもよい。コーティングは、あらかじめ決められたパターンでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出するように調整されるか、又は胃を通過するまでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出しないように調整してもよい(すなわち、腸溶コーティング)。コーティングは、糖コーティング、膜コーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン基づくもの)、又は腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック、エチルセルロースに基づくもの)でもよい。さらにモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセロールのような時間遅延物質が使用される。
【0086】
固体錠剤組成物は、好ましくない化学的変化(例えば、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の放出前の化学的崩壊)から組成物を防御するために調整したコーティングを含んでよい。コーティングは、Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology(前述)に記載のものと同じ方法で固体剤形に適用してもよい。
【0087】
経口投与用の調製物はまた、チューイング錠剤又は硬ゼラチンカプセル[ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、乳糖、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン)と混合される)、あるいは軟ゼラチンカプセル(ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、水又は油媒体、例えばピーナツ油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される)として提供されてよい。散剤や顆粒剤は、上記錠剤とカプセル剤で記載した成分を使用して通常方法で、例えばミキサー、流動床装置、又は噴霧乾燥装置を使用して調製される。
【0088】
経口投与用の液剤
水を添加することによる水性懸濁剤の調製に適した散剤、分散性散剤、又は顆粒剤は、経口投与用の便利な剤形である。懸濁剤としての調製は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1又は複数の保存剤との混合物のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を与える。適当な分散剤又は湿潤剤は、例えば天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン、又はエチレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、長鎖脂肪族アルコール、あるいは脂肪酸から得られる部分エステル)、及びヘキシトール若しくはヘキシトール無水物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。適当な懸濁剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0089】
非経口組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、投与型で、製剤で、又は通常の非毒性薬剤学的に許容される担体を含有する適当な送達器具又はインプラントを介して、非経口的に注射、注入、又は移植(静脈内、筋肉内、皮下など)により投与される。かかる組成物の製剤及び調製物は、医薬製剤の当業者に公知である。具体的な調製物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(前述)に記載されている。
【0090】
非経口使用用組成物は、単位投与剤型(例えば単回投与用アンプルで)又は数回投与用を含有し適当な保存剤が添加されたバイアルで提供される。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、移植用の注入器具又は送達器具の形でもよく、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルで復元される乾燥粉末として提供される。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体とは別に、組成物は適当な非経口的に許容される担体を含んでよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、制御放出のために微小球、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに取り込まれてよい。さらに組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含んでよい。
【0091】
上記したように医薬組成物は無菌注射に適した形でもよい。かかる組成物を調製するために、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解又は懸濁される。使用される許容されるビヒクル及び溶媒は、水、塩酸、水酸化ナトリウム、又は適切な緩衝液の適量を添加することにより適当なpHに調整した水、1,3−ブタンジオキシ、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。水性調製物はまた、1又は複数の保存剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、又はn−プロピル)を含有してもよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が水にほんのわずか又はわずかしか溶解しない場合、溶解増強剤又は可溶化剤が添加されるか、又は溶媒は10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含む。
【0092】
直腸組成物
直腸投与用に、組成物の適当な剤形には、坐剤(エマルジョン又は懸濁剤タイプ)及び直腸ゼラチンカプセル(液剤又は懸濁剤)がある。典型的な坐剤製剤では、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適切な薬剤学的に許容される坐剤基剤{ココア脂、エステル化脂肪酸、グリセリンゼラチン、及び種々の水溶性又は分散性基剤、例えば(ポリエチレングリコール)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル}と一緒にされる。種々の添加物、エンハンサー又は界面活性剤が取り込まれる。
【0093】
膣内組成物
膣内投与に適した組成物は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体以外に当該分野で適切であることが公知の担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又は噴霧剤として提供される。
【0094】
鼻内及び吸入組成物
気道への投与(鼻内投与を含む)用に、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、気道への投与について当該分野で使用される任意の方法と製剤により投与することができる。
【0095】
すなわち一般にヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、溶液又は懸濁液の形で又は乾燥粉末として投与してもよい。
【0096】
溶液又は懸濁液は一般に水性であり、例えば水(例えば無菌水又は発熱性物質を含まない水)のみ、及び生理学的に許容される共溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、又はPEG400のようなポリエチレングリコール)から調製される。
【0097】
かかる溶液又は懸濁液はさらに、他の賦形剤、例えば保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、可溶化剤/界面活性剤{例えば、ポリソルベート(例えば、ツイーン80、スパン80、塩化ベンザルコニウム)}、緩衝剤、等張性調整剤(例えば、塩化ナトリウム)、吸収増強剤、及び粘度増強剤を含んでよい。懸濁液はさらに懸濁剤(例えば、微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)を含んでよい。
【0098】
溶液又は懸濁液は、従来法(例えば、ドロッパー、ピペット、又は噴霧液)で直接鼻腔に適用される。調製物は単回投与型又は多回投与型で提供される。後者の場合、用量計量手段が提供されることが好ましい。ドロッパー又はピペットの場合、これは被験者が適宜、あらかじめ決められた量の溶液又は懸濁液を投与することにより行われる。噴霧液の場合、これは例えば計量噴霧ポンプにより行うことができる。
【0099】
気道への投与はまたエアゾル剤により行ってもよく、ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、適当な噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当な気体を有する加圧パックで提供される。エアゾル剤はまた、レシチンのような界面活性剤を含んでよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与量は、計量バルブを提供することにより調節できる。
【0100】
あるいはヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は乾燥粉末の形で、例えば適当な粉末基剤(例えば、乳糖、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP))中の化合物の粉末ミックスの形で提供される。粉末担体が、鼻腔中でゲルを生成することが便利であろう。粉末組成物は単位投与剤型で提供され、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又は吸入器により粉末が投与されるブリスターパックで提供されてもよい。
【0101】
気道への投与が企図される製剤(鼻内製剤)では、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は一般に、小さい粒子サイズ、例えば5ミクロン又はそれ以下のオーダーを有する。かかる粒子サイズは、当該分野で公知の手段(例えば微粉化)により得られる。
【0102】
所望であれば、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の持続放出を与えるように調整された製剤が使用される。
【0103】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、「Diskhaler」(Glaxo Wellcome plcの商標)又は計量エアゾル吸入器により粉末が投与されるブリスターパックを介して流動性の粉末として経口吸入により投与される。
【0104】
局所的組成物
医薬組成物はまた、通常の薬剤学的に許容される担体と賦形剤(微小球及びリポソームを含む)とを含有する剤形又は調製物で、経皮吸収用に皮膚に局所的に投与してもよい。調製物には、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、液剤、懸濁剤、スティック、噴霧剤、ペースト、膏薬、及び他の種類の経皮薬剤送達システムがある。薬剤学的に許容される担体は、乳化剤、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、浸透増強剤、キレート剤、ゲル生成剤、軟膏基剤、香料、及び皮膚防御剤がある。
【0105】
乳化剤の例には、天然のゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム)及び天然に存在するホスファチド(例えば、大豆レシチン、モノオレイン酸ソルビタン誘導体)である。抗酸化剤の例は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、及びこれらの誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びシステインである。保存剤の例は、パラベン、例えばメチル若しくはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル及び塩化ベンザルコニウムである。保湿剤の例は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、及び尿素である。浸透増強剤の例は、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、及びこれらの誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコール、及びアゾン(Azone).RTMである。キレート剤の例は、EDTAナトリウム、クエン酸、及びリン酸である。ゲル生成剤の例は、カルボポール(Carbopol)、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギン酸塩、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンである。軟膏基剤の例は、密蝋、パラフィン、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(スパン)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの縮合生成物{例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン)}である。
【0106】
皮膚への局所的投与について上記した医薬組成物はまた、治療すべき体の部分へ又はそのすぐ近くへの局所的投与と組合せて使用される。組成物は、体の関連する門口部(例えば、直腸、尿道、膣、又は口腔)への直接適用又は導入用に調整される。組成物は特殊な器具、例えば包帯、又は膏薬、パッド、スポンジ、ストリップ、又は他の型の適切な柔軟性材料により適用してもよい。
【0107】
眼内組成物
目への適用のためにヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適当な無菌水性もしくは非水性ビヒクル中の溶液又は懸濁液の形でもよい。添加剤、例えば緩衝剤、保存剤(殺菌剤及び殺真菌剤を含み、例えば酢酸若しくは硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、又はクロロヘキシジン)、及び増粘剤(ヒプロメロース)を含有してもよい。
【0108】
家畜用組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体はまた、家畜用組成物の形で使用するように提供され、これは、例えば当該分野で一般的な方法により調製される。かかる家畜用組成物の例には;
【0109】
(a)経口投与、外部適用、例えば飲薬(例えば、水性若しくは非水性液剤又は懸濁剤);錠剤/大型丸薬;飼料と混合するための散剤、顆粒剤又はペレット;舌への投与のためのペースト;
(b)非経口投与、例えば皮下、筋肉内又は静脈内注射、例えば無菌液剤又は懸濁剤として;又は(適宜)乳房内注射(乳首を介して乳房に導入される);
(c)局所適用、例えば皮膚に適用されるクリーム、軟膏剤又は噴霧剤;あるいは、
(d)直腸内又は膣内に、例えばペッサリー、クリーム又はフォーム、
に調整したものがある。
【0110】
治療または予防法
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、免疫疾患、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療並びに/又は予防に使用される。
【0111】
一般に用語「治療」及び「予防」は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るために、被験体、組織又は細胞に影響を与えることを意味し、以下を含む:(a)障害に対する素因を有するがまだその疾患を有すると診断されたことが無い被験体で、その障害が起きることを予防する;(b)障害を阻止する、すなわちその進行を止める;あるいは(c)障害の影響を緩和又は改善する、すなわち障害の影響の後退を引き起こす。
【0112】
本明細書において用語「被験体」は、薬剤活性物質による治療及び/又は予防が必要な障害を有する任意の動物を意味する。被験体は動物、例えば哺乳動物、好ましくはヒト又は非ヒト霊長類、あるいは動物モデル試験のような非霊長類でもよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体はヒトの医学的治療での使用に適することが特に企図されるが、家畜(イヌやネコのようなペット、及びウマ、小馬、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシ及びヒツジのような家畜、霊長類、ネコ科動物、イヌ科動物、ウシ科動物、及び有蹄動物のような動物園動物)の治療にも適用できる。
【0113】
用語「免疫障害」などは、被験体の免疫系により引き起こされる欠陥、疾患、障害又は症状(自己免疫疾患を含む)を意味する。免疫障害には、免疫成分を有する欠陥、疾患、障害又は症状、及び実質的に又は完全に免疫系によるものがある。自己免疫障害は、被験体の免疫系が誤って自身を攻撃し、被験体自身の体の細胞、組織、及び/又は臓器を標的とするものである。例えば自己免疫反応は、多発性硬化症における神経系、及びクローン病における消化管に向けられる。他の自己免疫障害、例えば全身性エリテマトーデス(ループス)では、患部組織や臓器は同じ疾患でも個体毎に変化する。ループスを有するある被験体は皮膚と組織が攻撃され、他の被験体は皮膚、腎臓、及び肺が攻撃されていることがある。最終的に免疫系によるある組織への傷害は永久的であり、I型糖尿病における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様である。改善される具体的な自己免疫障害には、特に限定されないが、神経系の自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、自己免疫神経障害、例えばギラン‐バレー、及び自己免疫ブドウ膜炎)、血液の自己免疫障害(例えば、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、及び自己免疫血小板減少症)、血管の自己免疫障害(例えば、側頭動脈炎、反リン脂質症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症及びベーチェット病のような脈管炎)、皮膚の自己免疫障害(例えば、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑)、消化管の自己免疫障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、及び自己免疫肝炎)、内分泌腺の自己免疫障害(例えば、I型又は免疫介在糖尿病)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫卵巣炎、睾丸炎、副腎の自己免疫障害、結合組織及び筋骨格系疾患を含む多臓器の自己免疫障害(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎のような脊椎関節症、及びシェーグレン症候群)がある。他の免疫系介在疾患、例えば移植片対宿主病、及び喘息やアナフィラキシーを含むアレルギー障害も、本明細書の免疫障害に含まれる。多くの免疫障害が炎症により引き起こされるため、免疫障害と炎症性障害と考えられる疾患にはある程度の重複がある。本発明の目的において、かかる重複障害の場合は、免疫障害と見なされる。
【0114】
免疫不全症は通常免疫系の傷害により発症し、体を、種々のウイルス、細菌又は真菌の日和見感染に罹りやすくする。免疫不全症の原因には、種々のウイルス疾患、慢性疾患、又は免疫系疾患(特にHIV/AIDS)がある。
【0115】
用語「炎症性障害」などは、体の組織の炎症、又は炎症成分を有することを特徴とする疾患、障害、あるいは症状を意味する。これらには、局所的炎症応答及び全身性炎症がある。かかる炎症性障害の例には、皮膚移植拒絶を含む移植拒絶;関節炎、慢性関節リウマチ、骨関節炎、及び骨吸収上昇に関連した骨疾患を含む関節の慢性炎症性障害;炎症性腸疾患、例えば回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、及びクローン病;炎症性肺障害、例えば、喘息、成人型呼吸窮迫症候群、及び慢性閉塞性気道疾患;角膜異栄養症、トラコーマ、回旋系状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎、及び眼内炎を含む炎症性障害;歯肉炎と歯膜炎を含む歯肉の慢性炎症性障害;結核;ハンセン病;尿毒症の併発症、糸球体腎炎及びネフローゼを含む腎臓の炎症性障害;強皮症、乾癬、及び湿疹を含む皮膚の炎症性障害;神経系の慢性の脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性、及びアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側策硬化症、及びウイルスもしくは自己免疫脳炎を含む、中枢神経系の炎症性障害;自己免疫疾患、免疫複合体脈管炎、全身性ループスと紅斑;全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、例えば心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症;ならびに、子癇前症、慢性の肝不全、脳、及び脊髄外傷を含む著しい炎症性成分を有する種々の他の疾患、及び癌がある。またグラム陽性もしくはグラム陰性ショック、出血あるいはアナフィラキシーショック、又は炎症促進性サイトカインに応答した癌化学療法により誘導されるショック、例えば炎症促進性サイトカインに関連するショックにより例示される、体の全身性炎症がある。かかるショックは、例えば癌の化学療法で使用される化学療法剤により誘導されることがある。
【0116】
用語「細胞増殖障害」は、細胞が正常な組織成長より急速に増殖するすべての細胞障害を意味する。細胞増殖障害は、特に限定されないが、新生物を含む。新生物は異常な組織成長であり、正常な組織成長より急速に成長する細胞増殖により明確な塊を生成する。新生物は正常な組織との構造的構築と機能協調の部分的又は完全な欠如を示す。これらは3つの主要なタイプに広く分類される。悪性新生物は、癌腫と呼ばれる上皮構造から生成し、筋肉、軟骨、脂肪、又は骨のような結合組織に由来する悪性新生物は肉腫と呼ばれ、免疫系の成分を含む造血構造(血球の生成に関連する構造体)に影響を与える悪性腫瘍は白血病及びリンパ腫と呼ばれる。腫瘍は、疾患である癌の新生物増殖である。本明細書において「新生物」(「腫瘍」とも呼ばれる)は、造血系新生物ならびに固形新生物を包含することを企図する。他の細胞増殖障害には、特に限定されないが、移植片拒絶、炎症性腸疾患、医学的処置(特に限定されないが、手術、血管形成などを含む)後に誘導される増殖がある。
【0117】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、皮膚、乳房、脳、子宮頚癌、睾丸癌などのような固形腫瘍の治療及び/又は予防に特に有用である。さらに詳しくは本発明のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体により治療される癌には、心臓:肉腫(血管肉腫、繊維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、繊維腫、脂肪腫、及び奇形腫;肺:気管支原生癌(扁平上皮、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌;リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管性腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、類癌腫、ビポーマ)、
【0118】
小腸(腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経繊維腫、繊維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱と尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺、(腺癌、肉腫)、睾丸(精上皮腫、奇形腫、胚の癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間細胞癌、繊維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽細胞腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨大細胞腫瘍脊索腫、オステオクロンフロマ(osteochronfroma)(骨軟骨腫)、良性の軟骨腫、軟骨芽細胞腫、
【0119】
軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨大細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎);髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症);臭素(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形神経膠芽細胞腫、乏突起細胞腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頚部(子宮頚癌、前腫瘍頚部形成障害)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、卵巣粘液性嚢腫、未分化癌)、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ‐ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形癌腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、繊維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液学:血液(骨髄性白血病(急性及び慢性)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、色素性異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎;神経芽腫がある。
【0120】
投与量
用語「治療的有効量」は、所望の治療応答を与えるのに有効なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の量を意味する。
【0121】
特定の被験体についての具体的な投与量レベルは、種々の要因(使用される具体的なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の活性、年齢、体重、全身の健康、性、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、製剤の種類、及び治療を受ける具体的な障害の重症度を含む)に依存することは理解されるであろう。
【0122】
単回投与量を生成するために担体物質と組合わされるヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の量もまた、治療される被験体と具体的な投与法により変動するであろう。例えば、ヒトへの経口投与用の製剤は、適切なかつ便利な量の担体物質(これは総組成物の約5〜95%で変化する)とともに約5mg〜2gのヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する。単位投与剤型は一般的に、約5mg〜500mgのヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する。
【0123】
ある実施態様において、ヒトへの投与について2:1の比のリン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)とを含有するリン酸アルファ−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の投与レベルは、体重1kg当たり約0.5mg〜約100mgのオーダーであり、好適な用量範囲は約0.5mg〜約30mg/kg体重/日(約0.5g〜約2g/患者/日)である。
【0124】
本発明は、以下の非限定例を参照してさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0125】
実施例1
本例は、IL−8、IL−1β、TNFα、及びIL−6の放出、スーパーオキシドアニオン放出、単球−内皮細胞接着、及び単球PKC活性に対する、リン酸トコフェロール混合物(TPm)の影響を調べる。
【0126】
【表3】
【0127】
方法:
単球分離:インフォームドコンセントに従って、健常ボランティアからヘパリン抗凝固剤試験管に絶食血液を得た。血液をフィコール−ハイパーク勾配に注意深く重相後、末梢血単核細胞を得た。2回洗浄後、Miltenyi BiotechのMACS試薬を使用して陰性磁性分離により単球を分離した。細胞を1×106細胞/mlで再懸濁した。
【0128】
細胞を、図面に記載のようにアルファ、デルタ、又はリン酸ガンマトコフェロール混合物又は組合せ、又はビヒクルと24時間プレインキュベートした後、LPSでスーパーオキシドアニオン放出の評価のために1時間、サイトカインとケモカイン放出のために8時間、そして単球−内皮細胞接着のために4時間活性化した。
【0129】
スーパーオキシドアニオン放出の測定は、SOD−阻害性フェリチトクロームC還元を使用して行い、nモル/分/mgタンパク質として表した。単球からのサイトカイン(IL−1βとTNFα)とケモカイン(IL−8)放出は、BDFACSアレイの特異的蛍光標識抗体を使用して処理単球の上清で行い、1mg細胞タンパク質について表した。単球−内皮細胞接着については、ヒト大動脈内皮細胞を2〜5回継代で使用した。処理単球と対照単球をCFDA−SEで37℃、1時間標識し、次に洗浄して非結合色素を除去した。次に標識単球をHAECに加え、さらに37℃で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、蛍光を485nmの励起と535nmの発光で定量し、総量と比較した結合%として表した。
【0130】
統計解析:すべてのデータは、二重測定での5回の実験の平均±SDとして表し、統計解析はGraphPad Prizmソフトウェアを使用して行った。ANOVAの後に、対応のあるt検定とWilcoxon符号順位検定を使用するノンパラメトリックデータを使用して解析し、p<0.05を有意とみなした。
【0131】
結果:
結果を図1〜7に示す。図1〜3では、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを意味し、aはLPSと比較してp<0.05であることを意味する。図4〜6では、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを意味し、*はLPSと比較してp<0.05であることを意味する。
【0132】
LPS活性化IL−8放出は、12.5μg/ml、25μg/ml、及び50μg/mlのGTPで有意に阻害された(図1)。LPS活性化IL−8放出もまた、DTP、ATP、及びGTPとATPの組合せにより不完全に阻害された。
【0133】
図2は、LPS活性化IL−1β放出が、50μg/mlのGTPで有意に阻害されたことを示す。
【0134】
図3は、LPS活性化TNFα放出が、12.5μg/ml、25μg/ml、及び50μg/mlのGTPで、及びATP、DTP、及びGTPとATPの組合せにより有意に阻害されたことを示す。
【0135】
図4は、ヒト単球(n=5)からのスーパーオキシドアニオン放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示す。
【0136】
図5は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−6放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示し、そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+GTP12.5、LPS+GTP25、LPS+GTP50、LPS+ATP25+GTP25、LPS+ATP25+DTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05);
【0137】
図6は、単球−内皮細胞接着(n=5)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示し、そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+ATP25+GTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05);
【0138】
図7は、単球PKC活性(n=3)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示す。
【0139】
考察:
LPS活性化HAECへの単球の接着、ATP(>25μg/ml、65%、p<0.05)、及びGTP(50μg/ml、71%、p<0.05)により有意に阻害された。これらの単球は、免疫応答機構において非常に重要な役割を果たす。
【0140】
ATP、DTP、及びGTPは、活性化単球中のPKC活性を有意に低下させた(それぞれ50μg/ml;44%、21%、及び56%、p<0.05)。
【0141】
単球LPS活性化スーパーオキシドアニオン放出は、ATP(≧25μg/ml、75%、p<0.05)、DTP(50μg/ml、61%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、75%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0142】
単球LPS活性化IL−8放出は、ATP(50μg/ml、65%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、61%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0143】
LPS活性化IL−1β放出は、GTP(50μg/ml、43%、p<0.05)のみにより、IL−6放出は、ATP(≧25μg/ml、46%、p<0.05)とGTP(≧25μg/ml、41%、p<0.05)により有意に阻害され、そしてTNFα放出は、ATP(50μg/ml、59%、p<0.05)、DTP(50μg/ml、44%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、48%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0144】
結論:
解析したすべてのバイオマーカーは、免疫系の制御において非常に重要な役割を果たす。結果は、リン酸トコフェロール混合物が、種々の濃度のこれらのマーカーの機能に有意に影響を与えることができたことを示す。
【0145】
ATPとGTPは、単球中で抗炎症性作用と免疫調節作用を示すようであり、GTPがATPより優れていた。
【0146】
GTPは、単球中で最大の抗炎症作用と免疫関連作用を示し、これはPKC活性化の阻害に仲介されるようである。
【0147】
データは、リン酸トコフェロールがサイトカインIL−8、IL−1β、IL−6、及びTNFαの調節に有効であることを示唆する。
【0148】
実施例2
この試験は、T細胞増殖に対するリン酸アルファ−トコフェロール混合物(ATP)の作用を調べた。T細胞増殖はサイトカインにより調節される。
【0149】
方法:
若い(4〜6ヶ月齢)C57BLマウス及び高齢(>22ヶ月齢)C57BLマウスからT細胞を単離し、Miltenyi BiotechからのPan T細胞単離キットを使用して陰性選択により脾臓細胞から精製した。
【0150】
Phosphagenics Limitedから提供されたリン酸トコフェロール混合物(アルファ−TP)は、約2/3リン酸モノトコフェリル(MW510.7)と1/3リン酸ジトコフェリル(MW923.3)からなり、これは化合物の分子量を598.0とする。エタノールを使用して固体アルファ−TP混合物を溶解して107.52mg/mlのストック溶液(158.11mM)を作成した。エタノール中34mg/mlのアルファ−トコフェロール(アルファ−T)をアルファ−Tのストック溶液として使用した(79.06mM)。プレインキュベーションとインキュベーションに使用した溶液は以下のように調製した:
【0151】
440.6μlのFBSに58.8μlの以下の溶液を加えた:100%エタノール(ビヒクル対照):アルファ−Tストック(34mg/ml)、アルファ−T溶液(53.76mg/ml)、アルファ−T溶液(26.88mg/ml)、アルファ−T溶液(13.44mg/ml)、アルファ−TP溶液(53.76mg/ml)、アルファ−TP溶液(26.88mg/ml)、及びアルファ−TP溶液(13.44mg/ml)。
【0152】
アルファ−T又はアルファ−TPを溶液中に充分取り込むために、これらをボルテックス混合し、37℃の水浴に5分間入れ、これをさらに2回繰り返し、全部で15分間インキュベートした。
【0153】
上記溶液のそれぞれの172μlを7.180mlのRPMI(+add)と648μlのFBSに加えて、ビヒクル対照、アルファ−T(86mg/ml、200μM)、アルファ−T(43mg/ml、100μM)、アルファ−T(21.5mg/ml、50μM)、アルファ−T(10.75mg/ml、25μM)、アルファ−T(136.09mg/ml、200μM)、アルファ−TP(68.04mg/ml、100μM)、アルファ−TP(34.02mg/ml、50μM)、又はアルファ−TP(17.01mg/ml、25μM)を有する10%FBS含有RPMIを作成した。
【0154】
T細胞(1.5×106細胞/処理)をビヒクル対照(エタノール)、アルファ−T(12.5μM、25μM、50μM、100μM)、又はアルファ−TP(12.5μM、25μM、50μM、100μM)と、35℃で2×106細胞/mlで4時間プレインキュベートした。
【0155】
プレインキュベーション後、5%FBS(最終濃度)とプレインキュベーションで使用した同じ濃度のビヒクル、アルファ−トコフェロール、又はリン酸アルファ−トコフェロールとを含有するRPMI培地中のプレート結合抗CD3(5μg/ml、抗CD3e(145−2C11)、Pharmingen Cat#553058)、及び可溶性抗CD28(2μg/ml、最終濃度、抗CD28(37.1)、Pharmingen Cat# 553294)を有する丸底96ウェルプレートで、細胞を三重試験で刺激(2×105細胞/ウェル)した。細胞を35℃、5%CO2で64時間インキュベートし、次に0.5μCiの[3H]チミジンで8時間パルスした。細胞をろ紙上に採取し、液体シンチレーションカウンター(Beckman Counter, Fullerton, CA)により測定して、DNA中に取り込まれた[3H]チミジンの量として、増殖を定量した。
【0156】
示した結果はn=6の5つの異なる実験からである。
【0157】
結果:
Fisherの最小有意差検定は、高齢のマウス(p<0.05)において、ビヒクルと比較してアルファ−TP 12.5μM処理(p=0.010)とすべてのアルファ−T処理で、増殖の有意な増加を示している。
【0158】
図8は、6匹の若いマウスと6匹の高齢のマウスの増殖応答の平均(平均+sd)を示す。
【0159】
図9は、若いマウスと高齢のマウス(n=11)からの新旧増殖応答の平均を示す。これらの結果について、前の実験からの5匹の若いマウスと5匹の高齢のマウスを、改訂プロトコールからの6匹の若いマウスと高齢のマウスに加えた。高齢のマウスでは、ビヒクル処理と比較して、アルファ−TP 25μM処理はT細胞増殖を有意に上昇させ(p=0.011)、一方アルファ−TP 100μM処理は増殖を有意に阻害した(p=0.029)。しかし若いマウスでは処理間に有意差はなかった。
【0160】
結論:
これらの実験において12.5μM アルファ−TPは、アルファ−TP処理の中で最も高い増殖応答を誘発し、一方すべてのアルファ−T処理は、図8に示すようにインビトロ比対照と比較して有意に高い増殖応答を与えた。
【0161】
実験からのすべてのデータを組合せると、結果は、古いT細胞では25μM アルファ−TPのインビトロ処理が最も高い増殖応答を誘発し、これは、各群n=5の我々の予備実験からの以前の知見を実証する。
【0162】
ここに記載した実験の結果は、TP混合物がサイトカイン活性及び/又は発現を調節することができ、T細胞増殖を誘発するのに非リン酸化トコフェロールより有効であり、従ってより強力な免疫エンハンサーであることを示す。
【0163】
実施例3
この試験は、高コレステロール血症ウサギ(2%コレステロール食を与えた)におけるリン酸アルファ−トコフェリル混合物(アルファ−TPm)の経口投与の影響を調べた。コレステロール量の多い食餌に誘導される炎症レベルとリン酸アルファ−トコフェリル混合物により与えられる利益を評価するための、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−6、IL−8、TNF)、及び抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10)、及び他の炎症性バイオマーカー(例えば、CRP)の血しょう評価。
【0164】
方法:
4〜8週齢の47羽のニュージーランドアルビノウサギを得た。これらを7つの処理群に分け、各群は5〜10羽からなった。すべての動物にビタミンE除去食餌を与え、すべての食餌は対照群(コレステロールを含有せず)以外は2%コレステロールを含有し4週間与えた(以下に概説する種々のTA又はTPm処理を含む)。
【表4】
【0165】
処理期間の最後に動物を屠殺し、血液を集めた。この血液から血しょうを得て、炎症の種々のマーカーのレベルを測定し、これらは以下を含んだ:IL−1β、IL−6、IL−8、TNF、PAI−1、及びCRP。炎症の他のマーカー(例えばCD36)は、ウサギの大動脈から単離したmRNAから測定し、発現レベルを決定した。
【0166】
結果:
図10〜15は、多くの炎症促進性サイトカインの血しょうレベルを示し、これらは、コレステロールの無い食餌のウサギ(#で示される)と比較して2%コレステロール食の添加により、すべて上昇した。これらの上昇した炎症促進性サイトカインは、炎症性障害になりやすい環境を示す。これらの高コレステロール血症ウサギを、300mg/kg食餌の酢酸トコフェロール(TA)で処理すると、これらの炎症促進性マーカーの弱い低下を示し、そのうちの3つは有意であると見なされた(CRP、IL−8、及びIL−6)。TPmは試験したすべての炎症促進性サイトカインで有意な低下を示し(*で示される)、同様にTA処理ウサギ(++で示される)と比較して有意な低下があった。
【0167】
図17は、種々の化合物で処理したこれらの高コレステロール血症ウサギの、ハウスキーピング遺伝子と比較した大動脈CD36発現を示す。炎症促進性マーカーとして再度、高コレステロール食餌は、これらのウサギにおけるCD36発現レベルを有意に上昇させることが証明された。TPmによる処理はCD36発現を低下させた。
【0168】
結論:
これらの実験においてTPm処理は、多くの炎症促進性サイトカインとマーカー(IL−1β、IL−6、IL−8、CRP、TNF、CRP、及びCD36を含む)の発現を有意に低下させた。この処理はまた、抗炎症性サイトカインの発現を上昇させ、抗炎症性サイトカインの上昇は、高コレステロール食により誘導される全体的炎症症状が、ある場合にはコレステロール制限の無い食事レベルまで低下するバランスの取れた環境を示す。試験した3つの最も高い用量(120、240、360mg TPm/kg食)は特に、これらのサイトカインとマーカーの最大の低下を示した。
【0169】
本明細書において、文脈上から明確な表現や必要な示唆がある場合以外は、用語「含む」又はその変化形「含んでなる」は、包括的に使用される、すなわち記載の特徴の存在を示すように使用され、すなわち本発明の種々の実施態様におけるさらなる特徴の追加の存在を示す。
【0170】
本明細書において、「a」、「an」、「the」という単数形は、特に明記しない場合は、複数形を含むことを注意されたい。
【0171】
本発明の本質と範囲を逸脱することなく多くの改良が可能であることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−8放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図2】図2は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−1β放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図3】図3は、実施例1のヒト単球(n=5)からのTNFα放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図4】図4は、実施例1のヒト単球(n=5)からのスーパーオキサイドアニオン放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;*はLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図5】図5は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−6放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+GTP12.5、LPS+GTP25、LPS+GTP50、LPS+ATP25+GTP25、LPS+ATP25+DTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05)。
【図6】図6は、実施例1の単球−内皮細胞接着(n=5)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+ATP25+GTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05)。
【図7】図7は、実施例1の単球PKC活性(n=3)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2の6匹の若いマウスと6匹の高齢マウスの増殖応答の平均(平均+sd)を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2の若いマウスと高齢マウス(n=11)からの新旧増殖応答の平均を示すグラフである。
【図10】図10は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のCRPレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図11】図11は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−8レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図12】図12は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のPAI−1レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図13】図13は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のTNFレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図14】図14は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−6レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図15】図15は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−1βレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図16】図16は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−10レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図17】図17は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の大動脈中のCD36発現に対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、サイトカイン調節性を有する化合物に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、オーストラリア仮特許出願第2005907306号(2005年12月23日出願)とオーストラリア仮特許出願第2006901179号(2006年3月8日出願)の優先権を主張する、これらの全開示内容を参照することにより本願明細書中に援用する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書において、文書、行為、又は知識の項目が参照又は考察される場合、その参照又は考察は、その文書、行為、又は知識の項目、又はこれらの任意の組合せが、優先日に、技術常識の一部であること、又は本明細書が関連する問題を解決する試みに関連することが公知であったこと、を認めるものではない。
【0004】
サイトカインは、免疫系の相互作用を制御する分子の大きな群である。サイトカインは、局所性及び全身性免疫調節、炎症反応、創傷治癒、血液細胞の生成、及び多くの他の生物学的プロセスを制御する生化学的シグナルを有するメッセンジャーである。100を超えるサイトカインが同定されている。
【0005】
サイトカインは免疫刺激に応答して新たに(de novo)産生されなければならない。これらは(必ずしもいつもではないが)一般に、短い距離で、短時間に、かつ非常に低濃度で作用する。これらは特異的膜受容体に結合することにより作用し、これらの受容体は次に2次メッセンジャー(しばしばチロシンキナーゼ)を介して細胞に、その挙動(遺伝子発現)を変えるようにシグナルを送る。サイトカインに対する応答には、膜タンパク質(サイトカイン受容体を含む)の発現の上昇又は低下、増殖、及びエフェクター分子の分泌がある。
【0006】
サイトカインは一般的な名前であり、他の名前には、リンホカイン(リンパ球により作られるサイトカイン)、モノカイン(単球により作られるサイトカイン)、ケモカイン(化学走化性を有するサイトカイン)、及びインターロイキン(1つの白血球により作られ他の白血球に作用するサイトカイン)がある。サイトカインは、これらを分泌する細胞に(自己分泌作用)、近くの細胞に(傍分泌活性)、又はある場合には遠くの細胞に(内分泌作用)作用する。
【0007】
ケモカインは、小さいサイトカインのファミリー、又は細胞に分泌されるタンパク質である。ケモカインは、近くの応答性細胞で有向化学走化性を有する。一部のケモカインは炎症促進性であると考えられ免疫応答中に誘導することができるが、他のケモカインはホメオスタティックであると考えられる。炎症性ケモカインは、細菌感染、ウイルス、及び物理的傷害を引き起こす物質に応答して多種類の細胞から放出される。これらは主に白血球の化学誘引物質として機能し、単球、好中球、及び他のエフェクター細胞を血液から感染又は傷害部位に動員する。これらは多くの異なるタイプの細胞により放出され、固有の免疫に関与する細胞及び適応免疫系のリンパ球を誘導する作用をする。一部のケモカインはまた、リンパ球の発生、遊走、及び血管形成(新しい血管の成長)における役割を有する。
【0008】
リンホカインは、免疫細胞により産生されるサイトカインのサブセットである。
【0009】
モノカインは免疫応答を仲介する可溶性サイトカインである。モノカインは単球性食細胞の生成物であり、リンパ球機能に対する制御作用を有する。
【0010】
異なるタイプの細胞が同じサイトカインを分泌すること、又は1つのサイトカインがいくつかの異なるタイプの細胞に作用すること(多面作用性)は一般的である。サイトカインはその活性が重複性であり、すなわち異なるサイトカインにより同様の機能が刺激されることがある。サイトカインはしばしばカスケードで産生され、あるサイトカインがその標的細胞を刺激して追加のサイトカインを作らせる。サイトカインはまた相乗的に作用(2つまたはそれ以上のサイトカインが一緒に作用)するか、又は拮抗的に作用(反対の作用を引き起こすサイトカイン)することもある。
【0011】
サイトカインの活性は、組換えサイトカイン及び精製細胞集団をインビトロで使用して特徴づけられるか、又は個々のサイトカイン遺伝子についてノックアウトマウスを使用して、サイトカイン機能がインビボで特徴づけられる。サイトカインは多くの細胞集団により作成されるが、主要な産生物質はヘルパーT細胞(Th)とマクロファージである。
【0012】
炎症促進性サイトカインは一般に炎症性応答を刺激して、これが次に、免疫不全症や自己免疫疾患に関連する多くの臨床的問題を引き起こす。従ってサイトカインは、固有の免疫応答及び適応免疫応答の両方の機能にとって決定的に重要である。免疫系の進行と機能におけるこれらの重要性以外に、サイトカインは、種々の免疫学的、炎症性、及び感染性疾患で大きな役割を果たす。これらの活性の結果として、サイトカインはまた、癌や腫瘍増殖を含む細胞増殖性障害において重要な役割を果たすと考えられる。
【0013】
免疫応答や炎症におけるサイトカインの参加はまた、癌におけるこれらのタンパク質の役割を示唆する。炎症と癌との因果関係が長い間疑われている。実際悪性腫瘍組織中の白血球の存在が証明されており、従って一部の腫瘍は慢性炎症の領域から発生すると言われている。
【0014】
腫瘍内及びその周りの微小環境は、固有の免疫系の細胞を含む。この環境は細胞増殖、遊走、及び生存を増強し、さらに血管形成を増強して、これが最終的に腫瘍成長を促進する。さらに炎症性応答は多くの点で創傷治癒応答に似ており、腫瘍は治癒できない創傷であると見なされる。
【0015】
慢性炎症及び継続性炎症は細胞に直接影響を与え、これは最終的に形質転換される。例えばMALTリンパ腫では、慢性炎症が持続性のB細胞活性化を引き起こし、癌を引き起こす染色体再配置に至る。間接的機構も存在し、例えば上皮由来腫瘍では、炎症が周りの炎症性細胞の活性化を含む間接的機構を介して腫瘍増殖を刺激する。
【0016】
従ってサイトカインの機能を調節する能力は、異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療のための機構を提供する。
【発明の開示】
【0017】
要約
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体又はその複合体が、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカインの機能を調節すること、従ってこれらが異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療及び/又は予防に有用であることがわかっている。
【0018】
第1の態様において、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0019】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0020】
さらに、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用が提供される。
【0021】
好適な実施態様において免疫制御性サイトカインは、炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインである。
【0022】
免疫制御性サイトカインは免疫系における相互作用を調節し、例えば炎症応答を阻害することにより及び/又は抗炎症応答を刺激することにより、免疫機能とプロセスを制御する。
【0023】
本発明の第2の態様において、炎症応答を阻害し及び/又は抗炎症応答を刺激する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいは、その複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0024】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいその複合体の使用も提供される。
【0025】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用がさらに提供される。
【0026】
異常なサイトカイン活性から発生する具体的な障害には、免疫障害、炎症性障害、及び細胞増殖障害がある。
【0027】
第3の態様において、免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0028】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0029】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用がさらに提供される。
【0030】
第4の態様において、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体を含む、免疫調節剤、抗炎症剤、又は抗癌剤が提供される。
【0031】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤としての、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用も提供される。
【0032】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤として使用するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体がさらに提供される。
【0033】
用語「免疫調節剤」は、「免疫刺激剤」、並びに「免疫抑制剤」を包含することを理解されたい。
【0034】
用語「抗癌」は、「抗腫瘍」を含むことも理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
詳細な説明
本発明は、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカインの機能を調節するヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体に関し、従って異常なサイトカイン活性から発生する障害の治療及び/又は予防の機構を提供する。
【0036】
ヒドロキシクロマン
本明細書において用語「ヒドロキシクロマン」は、エナンチオマー型でもラセミ体型でも、トコールとトコトリエノールのすべての異性体を含む。
【0037】
トコールは、以下の式(I)を有する6:ヒドロキシ2:メチルクロマンの誘導体のすべての異性体を含み、α−5:7:8トリメチル、β−5:8ジメチル、γ−7:8ジメチル、及びδ−8メチル誘導体を含む。
【化1】
【0038】
ここで、式中、R1、R2、及びR3は、水素とC1-6アルキル、好ましくはメチルよりなる群から選択される独立に選択される。
【0039】
用語「C1-6アルキル」は単独又は組合せ(例えば、C(=O)−C1-6アルキル)で使用される時、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。例には、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルがある。
【0040】
トコフェロールでは、R4は4:8:12トリメチルトリデカン(上記参照)により置換され、2、4、及び8位(*を参照)は、R又はS活性を有する立体異性体若しくはラセミ性でもよい。
【0041】
トコトリエノールでは、R4は4:8:12トリメチルトリデカン−3:7:11トリエン(上記参照)により置換され、2位(*を参照)は、R又はS活性を有する立体活性若しくはラセミ性でもよい。
【0042】
好適な実施態様において、ヒドロキシクロマン誘導体は、α、β、δ、及びγトコール、並びにこれらの混合物、さらに好ましくはα−トコフェロール又はトコトリエノールよりなる群から選択される。
【0043】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体
本明細書において用語「リン酸エステル誘導体」は、リン酸化ヒドロキシクロマンの酸型、金属塩(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、及びカルシウム)を含むリン酸塩の塩、及びリン酸塩プロトンが他の置換基(例えば、C1-6アルキル又はホスファチジル基)により置換された他の誘導体を含む。
【0044】
ある場合に、追加の性質(例えば水溶性の上昇)が好ましい場合、ホスファチドのようなリン酸エステル誘導体を使用することが必要なことがある。ホスファチジル誘導体は、有機リン酸塩のアミノアルキル誘導体である。これらの誘導体は、R1R2N(CH2)nOH(ここで、nは1〜6の整数であり、R1とR2はH又はC1-6アルキルである)の構造を有するアミンから調製されてもよい。R1とR2は同じか又は異なる。
【0045】
ホスファチジル誘導体は、ヒドロキシクロマンのヒドロキシルプロトンをリン酸塩で置換し、次にこれをアミン(例えばエタノールアミン又はN,N’ジメチルエタノールアミン)と反応させて、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を生成することにより調製される。ホスファチジル誘導体の1つの調製法は、塩基性溶媒(例えば、ピリジン又はトリエチルアミン)をオキシ塩化リンとともに使用して中間体を調製し、次にアミンのヒドロキシ基と反応させて対応するホスファチジル誘導体(例えばPコリルPトコフェリルリン酸2水素)を生成する。
【0046】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、リン酸ジトコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される。好適な実施態様においてヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、及び/又はリン酸ジトコトリエニル誘導体の混合物である。好適な実施態様においてヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、リン酸モノトコフェリル誘導体とリン酸ジトコフェリル誘導体との混合物、最も好ましくはリン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)との混合物である。
【0047】
リン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)との比は、好ましくは4:1〜1:4、さらに好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは2:1である。
【0048】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体
ある場合には、追加の性質(例えば改良された安定性又は配送性)が有用なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体も使用してもよい。
【0049】
用語「ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体」は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及びこれらのアミノ酸が豊富なタンパク質よりなる群から選択される1又は複数の複合体形成剤との反応生成物を意味する。窒素官能基を有するアミノ酸が豊富なタンパク質の例には、62のアミノ酸の少なくとも1つをアルギニンとして有するか、又は83の少なくとも1つをヒスチジンとして有するか、又は65の少なくとも1つをリジンとして有するタンパク質であり、例えば種々の型のタンパク質カゼインである。
【0050】
好適な複合体形成剤は、アルギニンやリジンのようなアミノ酸及び3級置換アミン、例えば式(II):
【化2】
【0051】
{式中、
R7は、カルボニルにより随時中断されるC1-22アルキルよりなる群から選択され;そして、
【0052】
R8とR9は、独立にH、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3X(ここでXはH、Na、K、又はアルカノールアミンである)よりなる群から選択されるが、
【0053】
ただし、R8とR9は両方がHであることはなく、R7がRCOである時、R8はCH3でR9は(CH2CH2)N(C2H4OH)−HCHOPO3であるか、あるいはR8とR9は一緒にN(CH2)2N(C2H4OH)CH2COO−である}
よりなる群から選択される。
【0054】
用語「C1-22アルキル」は、1〜22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であるか、あるいは6〜22個の炭素原子を有する環状炭化水素基を意味する。例としては、ヘキシル、シクロヘキシル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及びオクタデシルを含む。
【0055】
好適な複合体形成剤には、アルギニン、リジン、及び/又はラウリルイミノジプロピオン酸があり、ここで複合体形成は、アルカリ性窒素中心とリン酸エステルとの間で起きて、安定な複合体を生成する。
【0056】
併用療法に適した複合体形成剤
併用療法が好ましい時は、複合体形成剤として特定のタンパク質を使用することができる。かかるタンパク質の例には、インスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチン、インターフェロン−αと−βと−γ、黄体形成ホルモン(LH)(ゴナドトロピン放出ホルモンとしても知られている)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、コロニー刺激因子(CSF)、及び成長ホルモン(GH)がある。これらの例のアミノ酸組成を以下の表に示す。
【0057】
【表1】
【表2】
【0058】
併用療法が好ましい時は、これらのタンパク質もまた複合体形成剤として使用されることも理解されたい。
【0059】
用語「ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体」は時に、より一般的に「1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、又はこれらの複合体」を意味するのに使用される。
【0060】
サイトカイン調節と活性
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、サイトカイン、特に免疫制御性サイトカイン、例えば炎症促進性及び抗炎症性サイトカインを調節するための治療薬として作用する。従って、1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはこれらの複合体を治療的有効量で被験体に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0061】
本明細書において用語「調節する」、「調節性」、及び「調節」は、測定できるパラメータの変化を示す。パラメータは、客観的に測定され、通常生物学的プロセス、病理的プロセス、又は治療的介入に対する薬剤応答の指標として評価される。例えばある実施態様において「調節」は、調節前のサイトカインの活性と比較して、サイトカインの活性の上昇又は低下を示す。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体のサイトカインへの直接結合により活性は上昇又は低下し、又は間接的機構によりサイトカインの活性は調節される。例えばヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、サイトカインが相互作用するタンパク質(例えばサイトカイン受容体)の発現又は活性の上昇、若しくは低下を引き起こす。別の実施態様において「調節」は、調節前のT細胞の増殖レベルと比較してT細胞増殖の上昇を示す。
【0062】
用語「免疫制御性サイトカイン」は、免疫系の相互作用を調節する、例えば炎症応答を阻害及び/又は抗炎症応答を刺激することにより免疫機能とプロセスを制御する、サイトカインを示す。好適な実施態様において免疫制御性サイトカインは、炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインである。
【0063】
「炎症促進性サイトカイン」は、炎症を引き起こし易い免疫制御性サイトカインであり、炎症、免疫、タンパク質分解、細胞動員と増殖の重要なメディエーターである。早期応答に関与する主要な炎症促進性サイトカインには、インターロイキン型のサイトカイン、例えばインターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、及び腫瘍壊死因子型のサイトカイン、例えば腫瘍壊死因子−アルファ(カケキシン(cachexin)及びカケクチン(cachectin)ともいわれるTNFα)がある。他の炎症促進メディエーターには、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−11(IL−11)、及びインターロイキン−18(IL−18)がある。これらは内因性発熱物質(IL−1、IL−6、TNFα)として作用して、マクロファージと間葉細胞(繊維芽細胞、上皮細胞、及び内皮細胞を含む)による2次メディエーター及び炎症促進性サイトカインの合成をアップレギュレートし、急性相タンパク質の産生を刺激するか又は炎症性細胞を誘引する。
【0064】
「抗炎症性サイトカイン」は、炎症の種々の側面(例えば、細胞活性化と炎症促進性サイトカインの産生)に拮抗する免疫制御性サイトカインであり、従ってインビボでの炎症応答の程度を調節するのに寄与する。これらのメディエーターは、主に炎症促進性サイトカインの産生の阻害により、又は種々の方法での炎症促進性メディエーターの多くの生物学的作用の拮抗により作用する。主要な抗炎症性サイトカインはインターロイキン型のサイトカイン、例えばインターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−10(IL−10)、及びインターロイキン−13(IL−13)である。他の抗炎症性サイトカインには、インターフェロンサイトカイン、例えばIFNα、増殖因子サイトカイン、特にトランスフォーミング増殖因子サイトカイン、例えばTGFβ、及び顆粒球コロニー刺激因子サイトカイン、例えばG−CSF、並びにTNF若しくはIL−6の可溶性受容体がある。
【0065】
免疫制御性サイトカインを炎症促進性又は抗炎症性として一般的かつ明確に分類することは、誤解を招きやすいことに注意されたい。炎症応答の真の作用は、炎症促進性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスにより決定される。ある特定のサイトカインに誘導される細胞活性の種類、持続時間、及び程度は、標的細胞の性質、細胞の微小環境、例えば細胞の増殖と活性化状態、隣接細胞の種類、他のサイトカインの存在、及び同じ細胞に作用するいくつかのサイトカインの順序により大きく影響を受ける。
【0066】
「インターロイキン型のサイトカイン」は一般に、ある白血球により作られ他の白血球に作用するサイトカインとして記載される。インターロイキン型のサイトカインはまた、ケモカイン、モノカイン、及びリンホカインとして特徴付けられる。
【0067】
「腫瘍壊死因子型のサイトカイン」は、活性化マクロファージとリンパ球により発現される強力な炎症促進性サイトカインである。これらのサイトカインは、早期炎症応答と獲得免疫応答の両方に関与する遺伝子の発現に対して、アポトーシスとは異なる多様な細胞性応答を誘導する。
【0068】
「インターフェロンサイトカイン」は、ウイルス、細菌、寄生体、及び腫瘍細胞のような外来物質による抗原刺激に応答して、ほとんどの脊椎動物の免疫系の細胞により産生される天然のタンパク質である。
【0069】
「増殖因子サイトカイン」は、応答細胞の増殖と分化を調節する、ホルモン様制御シグナルとして機能する生物活性ポリペプチドの群である。
【0070】
サイトカインの重複性と多面作用性のために、これらはしばしばカスケードで産生され、相乗作用的又は拮抗的に作用し、従って1つのサイトカインがインビボで大きな作用を有することが難しい。
【0071】
炎症応答は、血管拡張、血管透過性亢進、炎症細胞(特に急性炎症における好中球)の動員、これらの細胞からの炎症メディエーター(血管作用性アミン、プロスタノイド、及び反応性酸素中間体を含む)の放出、及びサイトカイン放出に関連する。マクロファージ由来サイトカインであるIL−1とIL−6は主に、肝細胞による血しょうタンパク質産生における防御性変化を引き起こすことにより、急性相応答に関与する。
【0072】
より重要な急性相タンパク質の一部には以下がある:
1.プロテアーゼインヒビター(例えば、α1−アンチトリプシン、アンチキモトリプシン);
2.凝固タンパク質(例えば、アテローム性動脈硬化症、フィブリノゲン、プロトロンビン、及びプラスミノーゲン);
3.補体タンパク質(例えば、C2、C3、C4、及びC5);
4.輸送タンパク質(例えば、ハプトグロビン、及びヘモペキシン);
5.これらの群に属さない他のタンパク質、例えばC−反応性タンパク質(CRP)、フィブロネクチン、及び血清アミロイドA)。
【0073】
CRPは、体内で起きる炎症プロセス中に劇的にそのレベルが上昇するため、急性相タンパク質のクラスのメンバーである。これは、外来細胞及び傷害細胞への補体結合を助け、疾患に対する体液性応答に影響を与えると考えられている。これはまた、先天免疫において感染に対する早期防御系として重要な役割を果たすと考えられている。
【0074】
CRPレベルの大きな上昇に関連する最も一般的な症状は以下を含む:
1.感染の過敏症併発(例えば、リウマチ熱);
2.炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、ライター病、クローン病);
3.同種移植片拒絶(例えば、腎移植);
4.悪性腫瘍(例えば、リンパ腫、及び肉腫);
5.壊死(例えば、心筋梗塞、腫瘍塞栓症、及び急性相膵炎);
6.外傷(例えば、火傷又は骨折)。
【0075】
CRP値の上昇は特定の症状に特異的ではないが、進行している炎症の非常に高感度の指標であり、注意深い臨床的評価に対して貴重な補助となる。いったん診断が確立されると、CRPは治療に対する患者の応答を追跡するのに使用される。CRPレベルにより追跡される感染症には以下がある:腎盂腎炎、骨盤内感染症、髄膜炎、及び心内膜炎。
【0076】
サイトカイン関連障害の最も極端な例はおそらく、サイトカインストームであり、これは種々のサイトカインレベルが極めて上昇している、サイトカインと免疫細胞との正のフィードバックからなる致死的となり得る免疫反応である。サイトカインストームは、健康で活発な免疫系の全身性発現であり、150を超える炎症メディエーター(サイトカイン、酸素フリーラジカル、及び凝固因子)の放出を引き起こす。炎症促進性サイトカイン(例えばTNFα、IL−1、及びIL−6)と抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10及びIL−1)の両方とも、サイトカインストームを経験している患者の血清中で上昇している。サイトカインストームは、多くの感染症、及び移植片対宿主病(GVHD)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、インフルエンザ、及び全身性炎症応答症候群(SIRS)を含む非炎症性疾患で起きる。
【0077】
医薬組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与は、所望の治療又は予防応答を与えるのに有効なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の濃縮を引き起こす適切な手段かも知れない。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は任意の適切な量で任意の適切な担体中に含有され、一般的に医薬組成物の総重量の1〜95重量%の量で存在する。担体は、組成物の他の成分と適合性があり、被験体に障害を与えないという意味で「薬剤学的に許容される」ものでなければならない。
【0078】
薬剤学的に許容される担体は、好ましくは、有機溶媒、例えばアセトン、ベンゼン、アセトニトリル、クロロホルム、カノーラ油、DMSO又はアルコールであり、例えばメタノール又はエタノールである。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が低い水溶性の場合、水を有機溶媒と一緒にすると、安定な混合物が形成される。
【0079】
さらにヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を他の薬剤と組合せて、機能的組合せを得ることができる。組合せがヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の活性を排除しない限りは、薬剤活性物質の化学的に適合性のある組合せを含むことが企図される。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と他の薬剤は、別々に、順に、又は同時に投与してもよいことは理解されるであろう。他の薬剤には、例えば抗炎症剤及び/又は抗癌剤がある。
【0080】
組成物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、及び皮内を含む)、経腸、直腸内、膣内、鼻内、吸入、局所的、又は眼内投与経路に適した剤形で提供される。すなわち組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、エマルジョン、液剤、ヒドロゲルを含むゲル剤、ペースト、軟膏剤、クリーム剤、膏薬、飲薬、送達器具、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、噴霧剤、又はエアゾル剤の形でもよい。組成物は通常の薬剤学的慣行に従って調製される(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,(第19版)A R Gennaro, 1995, Mack Publishing Company, Easton, PA, 及び Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology, J Swarbrick and J C Boylan 編、1988-1999, Marcel Dekker, New York、を参照)。
【0081】
組成物は、投与の実質的に直後に、又は所定の時間に、又は投与後のある期間、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出するように調製される。後者のタイプの組成物は一般に、制御放出製剤として知られ、これらには、(i)ある長期間にわたって体内で活性化合物(例えばヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体)の実質的に一定の濃度を生じる調製物;(ii)所定の遅延時間後、ある長期間にわたって体内で活性化合物の実質的に一定の濃度を生じる調製物;(iii)体内で比較的一定の有効な活性化合物レベルを維持し、同時に活性化合物の血しょうレベルの変動が引き起こす好ましくない副作用を最小にすることにより、所定の期間、活性化合物の作用を維持する調製物(のこぎり波状動力学的パターン);(iv)活性化合物作用を局在化させる調製物(例えば、疾患組織又は臓器に隣接して又はその中に制御放出組成物を特に配置する);及び(v)担体又は化学的誘導体を使用して活性化合物を特定の標的細胞タイプに送達することにより、活性化合物を標的化する調製物がある。
【0082】
制御放出製剤の形のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、(i)狭い治療指数(すなわち、有害な副作用又は毒性反応に至る血しょう濃度と、治療作用に至る血しょう濃度との差が小さい;一般に治療指数(TI)は、致死量中央値(LD50)対有効投与量中央値(ED50)との比として定義される);(ii)消化管中で狭い吸収ウィンドウ;又は(iii)治療レベルで血しょうレベルを維持するために1日のうちに頻繁な投与が必要となる、非常に短い生物学的半減期、を有する場合に、特に好適である。
【0083】
問題のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の放出速度が代謝速度より速い制御放出製剤を得るために、種々の方策を適用することができる。ある例では、種々の調製パラメータと成分(例えば、種々のタイプの制御放出組成物とコーティング)の適切な選択により、制御放出が得られる。すなわちヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適切な賦形剤とともに医薬組成物に調製され、これは、被験体に投与されると、制御された方法でヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出する。例としては、単回又は多回単位の錠剤又はカプセル剤組成物、油状液剤、懸濁剤、エマルジョン、マイクロカプセル、微小球、ナノ粒子、パッチ、及びリポソームがある。
【0084】
経口投与用固体剤形
経口使用用の調製物は、非毒性の薬剤学的に許容されるエステルとの混合物でヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば不活性希釈剤もしくは増量剤(例えば、ショ糖、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸ナトリウム);顆粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、アルギン酸);結合剤(例えば、ショ糖、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、α化デンプン、微結晶性セルロース、珪酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール);及び滑沢剤、直打用滑沢剤、及び粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、珪酸、水素化植物油、タルク)でもよい。他の薬剤学的に許容されるエステルは、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などでもよい。
【0085】
錠剤はコーティングされないか、あるいは、随時消化管での崩壊と吸収とを遅延させ、従って長期間にわたって持続作用を得るために、既知の方法でコーティングしてもよい。コーティングは、あらかじめ決められたパターンでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出するように調整されるか、又は胃を通過するまでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を放出しないように調整してもよい(すなわち、腸溶コーティング)。コーティングは、糖コーティング、膜コーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン基づくもの)、又は腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック、エチルセルロースに基づくもの)でもよい。さらにモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセロールのような時間遅延物質が使用される。
【0086】
固体錠剤組成物は、好ましくない化学的変化(例えば、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の放出前の化学的崩壊)から組成物を防御するために調整したコーティングを含んでよい。コーティングは、Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology(前述)に記載のものと同じ方法で固体剤形に適用してもよい。
【0087】
経口投与用の調製物はまた、チューイング錠剤又は硬ゼラチンカプセル[ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、乳糖、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン)と混合される)、あるいは軟ゼラチンカプセル(ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、水又は油媒体、例えばピーナツ油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される)として提供されてよい。散剤や顆粒剤は、上記錠剤とカプセル剤で記載した成分を使用して通常方法で、例えばミキサー、流動床装置、又は噴霧乾燥装置を使用して調製される。
【0088】
経口投与用の液剤
水を添加することによる水性懸濁剤の調製に適した散剤、分散性散剤、又は顆粒剤は、経口投与用の便利な剤形である。懸濁剤としての調製は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1又は複数の保存剤との混合物のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を与える。適当な分散剤又は湿潤剤は、例えば天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン、又はエチレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、長鎖脂肪族アルコール、あるいは脂肪酸から得られる部分エステル)、及びヘキシトール若しくはヘキシトール無水物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。適当な懸濁剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0089】
非経口組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、投与型で、製剤で、又は通常の非毒性薬剤学的に許容される担体を含有する適当な送達器具又はインプラントを介して、非経口的に注射、注入、又は移植(静脈内、筋肉内、皮下など)により投与される。かかる組成物の製剤及び調製物は、医薬製剤の当業者に公知である。具体的な調製物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(前述)に記載されている。
【0090】
非経口使用用組成物は、単位投与剤型(例えば単回投与用アンプルで)又は数回投与用を含有し適当な保存剤が添加されたバイアルで提供される。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、移植用の注入器具又は送達器具の形でもよく、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルで復元される乾燥粉末として提供される。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体とは別に、組成物は適当な非経口的に許容される担体を含んでよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、制御放出のために微小球、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに取り込まれてよい。さらに組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含んでよい。
【0091】
上記したように医薬組成物は無菌注射に適した形でもよい。かかる組成物を調製するために、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解又は懸濁される。使用される許容されるビヒクル及び溶媒は、水、塩酸、水酸化ナトリウム、又は適切な緩衝液の適量を添加することにより適当なpHに調整した水、1,3−ブタンジオキシ、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。水性調製物はまた、1又は複数の保存剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、又はn−プロピル)を含有してもよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が水にほんのわずか又はわずかしか溶解しない場合、溶解増強剤又は可溶化剤が添加されるか、又は溶媒は10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含む。
【0092】
直腸組成物
直腸投与用に、組成物の適当な剤形には、坐剤(エマルジョン又は懸濁剤タイプ)及び直腸ゼラチンカプセル(液剤又は懸濁剤)がある。典型的な坐剤製剤では、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適切な薬剤学的に許容される坐剤基剤{ココア脂、エステル化脂肪酸、グリセリンゼラチン、及び種々の水溶性又は分散性基剤、例えば(ポリエチレングリコール)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル}と一緒にされる。種々の添加物、エンハンサー又は界面活性剤が取り込まれる。
【0093】
膣内組成物
膣内投与に適した組成物は、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体以外に当該分野で適切であることが公知の担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又は噴霧剤として提供される。
【0094】
鼻内及び吸入組成物
気道への投与(鼻内投与を含む)用に、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、気道への投与について当該分野で使用される任意の方法と製剤により投与することができる。
【0095】
すなわち一般にヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、溶液又は懸濁液の形で又は乾燥粉末として投与してもよい。
【0096】
溶液又は懸濁液は一般に水性であり、例えば水(例えば無菌水又は発熱性物質を含まない水)のみ、及び生理学的に許容される共溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、又はPEG400のようなポリエチレングリコール)から調製される。
【0097】
かかる溶液又は懸濁液はさらに、他の賦形剤、例えば保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、可溶化剤/界面活性剤{例えば、ポリソルベート(例えば、ツイーン80、スパン80、塩化ベンザルコニウム)}、緩衝剤、等張性調整剤(例えば、塩化ナトリウム)、吸収増強剤、及び粘度増強剤を含んでよい。懸濁液はさらに懸濁剤(例えば、微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)を含んでよい。
【0098】
溶液又は懸濁液は、従来法(例えば、ドロッパー、ピペット、又は噴霧液)で直接鼻腔に適用される。調製物は単回投与型又は多回投与型で提供される。後者の場合、用量計量手段が提供されることが好ましい。ドロッパー又はピペットの場合、これは被験者が適宜、あらかじめ決められた量の溶液又は懸濁液を投与することにより行われる。噴霧液の場合、これは例えば計量噴霧ポンプにより行うことができる。
【0099】
気道への投与はまたエアゾル剤により行ってもよく、ここでヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、適当な噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当な気体を有する加圧パックで提供される。エアゾル剤はまた、レシチンのような界面活性剤を含んでよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の投与量は、計量バルブを提供することにより調節できる。
【0100】
あるいはヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は乾燥粉末の形で、例えば適当な粉末基剤(例えば、乳糖、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP))中の化合物の粉末ミックスの形で提供される。粉末担体が、鼻腔中でゲルを生成することが便利であろう。粉末組成物は単位投与剤型で提供され、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又は吸入器により粉末が投与されるブリスターパックで提供されてもよい。
【0101】
気道への投与が企図される製剤(鼻内製剤)では、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は一般に、小さい粒子サイズ、例えば5ミクロン又はそれ以下のオーダーを有する。かかる粒子サイズは、当該分野で公知の手段(例えば微粉化)により得られる。
【0102】
所望であれば、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の持続放出を与えるように調整された製剤が使用される。
【0103】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、「Diskhaler」(Glaxo Wellcome plcの商標)又は計量エアゾル吸入器により粉末が投与されるブリスターパックを介して流動性の粉末として経口吸入により投与される。
【0104】
局所的組成物
医薬組成物はまた、通常の薬剤学的に許容される担体と賦形剤(微小球及びリポソームを含む)とを含有する剤形又は調製物で、経皮吸収用に皮膚に局所的に投与してもよい。調製物には、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、液剤、懸濁剤、スティック、噴霧剤、ペースト、膏薬、及び他の種類の経皮薬剤送達システムがある。薬剤学的に許容される担体は、乳化剤、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、浸透増強剤、キレート剤、ゲル生成剤、軟膏基剤、香料、及び皮膚防御剤がある。
【0105】
乳化剤の例には、天然のゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム)及び天然に存在するホスファチド(例えば、大豆レシチン、モノオレイン酸ソルビタン誘導体)である。抗酸化剤の例は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、及びこれらの誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びシステインである。保存剤の例は、パラベン、例えばメチル若しくはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル及び塩化ベンザルコニウムである。保湿剤の例は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、及び尿素である。浸透増強剤の例は、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、及びこれらの誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコール、及びアゾン(Azone).RTMである。キレート剤の例は、EDTAナトリウム、クエン酸、及びリン酸である。ゲル生成剤の例は、カルボポール(Carbopol)、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギン酸塩、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンである。軟膏基剤の例は、密蝋、パラフィン、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(スパン)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの縮合生成物{例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン)}である。
【0106】
皮膚への局所的投与について上記した医薬組成物はまた、治療すべき体の部分へ又はそのすぐ近くへの局所的投与と組合せて使用される。組成物は、体の関連する門口部(例えば、直腸、尿道、膣、又は口腔)への直接適用又は導入用に調整される。組成物は特殊な器具、例えば包帯、又は膏薬、パッド、スポンジ、ストリップ、又は他の型の適切な柔軟性材料により適用してもよい。
【0107】
眼内組成物
目への適用のためにヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は適当な無菌水性もしくは非水性ビヒクル中の溶液又は懸濁液の形でもよい。添加剤、例えば緩衝剤、保存剤(殺菌剤及び殺真菌剤を含み、例えば酢酸若しくは硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、又はクロロヘキシジン)、及び増粘剤(ヒプロメロース)を含有してもよい。
【0108】
家畜用組成物
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体はまた、家畜用組成物の形で使用するように提供され、これは、例えば当該分野で一般的な方法により調製される。かかる家畜用組成物の例には;
【0109】
(a)経口投与、外部適用、例えば飲薬(例えば、水性若しくは非水性液剤又は懸濁剤);錠剤/大型丸薬;飼料と混合するための散剤、顆粒剤又はペレット;舌への投与のためのペースト;
(b)非経口投与、例えば皮下、筋肉内又は静脈内注射、例えば無菌液剤又は懸濁剤として;又は(適宜)乳房内注射(乳首を介して乳房に導入される);
(c)局所適用、例えば皮膚に適用されるクリーム、軟膏剤又は噴霧剤;あるいは、
(d)直腸内又は膣内に、例えばペッサリー、クリーム又はフォーム、
に調整したものがある。
【0110】
治療または予防法
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、免疫疾患、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療並びに/又は予防に使用される。
【0111】
一般に用語「治療」及び「予防」は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るために、被験体、組織又は細胞に影響を与えることを意味し、以下を含む:(a)障害に対する素因を有するがまだその疾患を有すると診断されたことが無い被験体で、その障害が起きることを予防する;(b)障害を阻止する、すなわちその進行を止める;あるいは(c)障害の影響を緩和又は改善する、すなわち障害の影響の後退を引き起こす。
【0112】
本明細書において用語「被験体」は、薬剤活性物質による治療及び/又は予防が必要な障害を有する任意の動物を意味する。被験体は動物、例えば哺乳動物、好ましくはヒト又は非ヒト霊長類、あるいは動物モデル試験のような非霊長類でもよい。ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体はヒトの医学的治療での使用に適することが特に企図されるが、家畜(イヌやネコのようなペット、及びウマ、小馬、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシ及びヒツジのような家畜、霊長類、ネコ科動物、イヌ科動物、ウシ科動物、及び有蹄動物のような動物園動物)の治療にも適用できる。
【0113】
用語「免疫障害」などは、被験体の免疫系により引き起こされる欠陥、疾患、障害又は症状(自己免疫疾患を含む)を意味する。免疫障害には、免疫成分を有する欠陥、疾患、障害又は症状、及び実質的に又は完全に免疫系によるものがある。自己免疫障害は、被験体の免疫系が誤って自身を攻撃し、被験体自身の体の細胞、組織、及び/又は臓器を標的とするものである。例えば自己免疫反応は、多発性硬化症における神経系、及びクローン病における消化管に向けられる。他の自己免疫障害、例えば全身性エリテマトーデス(ループス)では、患部組織や臓器は同じ疾患でも個体毎に変化する。ループスを有するある被験体は皮膚と組織が攻撃され、他の被験体は皮膚、腎臓、及び肺が攻撃されていることがある。最終的に免疫系によるある組織への傷害は永久的であり、I型糖尿病における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様である。改善される具体的な自己免疫障害には、特に限定されないが、神経系の自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、自己免疫神経障害、例えばギラン‐バレー、及び自己免疫ブドウ膜炎)、血液の自己免疫障害(例えば、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、及び自己免疫血小板減少症)、血管の自己免疫障害(例えば、側頭動脈炎、反リン脂質症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症及びベーチェット病のような脈管炎)、皮膚の自己免疫障害(例えば、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑)、消化管の自己免疫障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、及び自己免疫肝炎)、内分泌腺の自己免疫障害(例えば、I型又は免疫介在糖尿病)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫卵巣炎、睾丸炎、副腎の自己免疫障害、結合組織及び筋骨格系疾患を含む多臓器の自己免疫障害(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎のような脊椎関節症、及びシェーグレン症候群)がある。他の免疫系介在疾患、例えば移植片対宿主病、及び喘息やアナフィラキシーを含むアレルギー障害も、本明細書の免疫障害に含まれる。多くの免疫障害が炎症により引き起こされるため、免疫障害と炎症性障害と考えられる疾患にはある程度の重複がある。本発明の目的において、かかる重複障害の場合は、免疫障害と見なされる。
【0114】
免疫不全症は通常免疫系の傷害により発症し、体を、種々のウイルス、細菌又は真菌の日和見感染に罹りやすくする。免疫不全症の原因には、種々のウイルス疾患、慢性疾患、又は免疫系疾患(特にHIV/AIDS)がある。
【0115】
用語「炎症性障害」などは、体の組織の炎症、又は炎症成分を有することを特徴とする疾患、障害、あるいは症状を意味する。これらには、局所的炎症応答及び全身性炎症がある。かかる炎症性障害の例には、皮膚移植拒絶を含む移植拒絶;関節炎、慢性関節リウマチ、骨関節炎、及び骨吸収上昇に関連した骨疾患を含む関節の慢性炎症性障害;炎症性腸疾患、例えば回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、及びクローン病;炎症性肺障害、例えば、喘息、成人型呼吸窮迫症候群、及び慢性閉塞性気道疾患;角膜異栄養症、トラコーマ、回旋系状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎、及び眼内炎を含む炎症性障害;歯肉炎と歯膜炎を含む歯肉の慢性炎症性障害;結核;ハンセン病;尿毒症の併発症、糸球体腎炎及びネフローゼを含む腎臓の炎症性障害;強皮症、乾癬、及び湿疹を含む皮膚の炎症性障害;神経系の慢性の脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性、及びアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側策硬化症、及びウイルスもしくは自己免疫脳炎を含む、中枢神経系の炎症性障害;自己免疫疾患、免疫複合体脈管炎、全身性ループスと紅斑;全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、例えば心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症;ならびに、子癇前症、慢性の肝不全、脳、及び脊髄外傷を含む著しい炎症性成分を有する種々の他の疾患、及び癌がある。またグラム陽性もしくはグラム陰性ショック、出血あるいはアナフィラキシーショック、又は炎症促進性サイトカインに応答した癌化学療法により誘導されるショック、例えば炎症促進性サイトカインに関連するショックにより例示される、体の全身性炎症がある。かかるショックは、例えば癌の化学療法で使用される化学療法剤により誘導されることがある。
【0116】
用語「細胞増殖障害」は、細胞が正常な組織成長より急速に増殖するすべての細胞障害を意味する。細胞増殖障害は、特に限定されないが、新生物を含む。新生物は異常な組織成長であり、正常な組織成長より急速に成長する細胞増殖により明確な塊を生成する。新生物は正常な組織との構造的構築と機能協調の部分的又は完全な欠如を示す。これらは3つの主要なタイプに広く分類される。悪性新生物は、癌腫と呼ばれる上皮構造から生成し、筋肉、軟骨、脂肪、又は骨のような結合組織に由来する悪性新生物は肉腫と呼ばれ、免疫系の成分を含む造血構造(血球の生成に関連する構造体)に影響を与える悪性腫瘍は白血病及びリンパ腫と呼ばれる。腫瘍は、疾患である癌の新生物増殖である。本明細書において「新生物」(「腫瘍」とも呼ばれる)は、造血系新生物ならびに固形新生物を包含することを企図する。他の細胞増殖障害には、特に限定されないが、移植片拒絶、炎症性腸疾患、医学的処置(特に限定されないが、手術、血管形成などを含む)後に誘導される増殖がある。
【0117】
ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体は、皮膚、乳房、脳、子宮頚癌、睾丸癌などのような固形腫瘍の治療及び/又は予防に特に有用である。さらに詳しくは本発明のヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体により治療される癌には、心臓:肉腫(血管肉腫、繊維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、繊維腫、脂肪腫、及び奇形腫;肺:気管支原生癌(扁平上皮、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌;リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管性腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、類癌腫、ビポーマ)、
【0118】
小腸(腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経繊維腫、繊維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱と尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺、(腺癌、肉腫)、睾丸(精上皮腫、奇形腫、胚の癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間細胞癌、繊維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽細胞腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨大細胞腫瘍脊索腫、オステオクロンフロマ(osteochronfroma)(骨軟骨腫)、良性の軟骨腫、軟骨芽細胞腫、
【0119】
軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨大細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎);髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症);臭素(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形神経膠芽細胞腫、乏突起細胞腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頚部(子宮頚癌、前腫瘍頚部形成障害)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、卵巣粘液性嚢腫、未分化癌)、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ‐ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形癌腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、繊維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液学:血液(骨髄性白血病(急性及び慢性)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、色素性異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎;神経芽腫がある。
【0120】
投与量
用語「治療的有効量」は、所望の治療応答を与えるのに有効なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の量を意味する。
【0121】
特定の被験体についての具体的な投与量レベルは、種々の要因(使用される具体的なヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の活性、年齢、体重、全身の健康、性、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、製剤の種類、及び治療を受ける具体的な障害の重症度を含む)に依存することは理解されるであろう。
【0122】
単回投与量を生成するために担体物質と組合わされるヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の量もまた、治療される被験体と具体的な投与法により変動するであろう。例えば、ヒトへの経口投与用の製剤は、適切なかつ便利な量の担体物質(これは総組成物の約5〜95%で変化する)とともに約5mg〜2gのヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する。単位投与剤型は一般的に、約5mg〜500mgのヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体を含有する。
【0123】
ある実施態様において、ヒトへの投与について2:1の比のリン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)とを含有するリン酸アルファ−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の投与レベルは、体重1kg当たり約0.5mg〜約100mgのオーダーであり、好適な用量範囲は約0.5mg〜約30mg/kg体重/日(約0.5g〜約2g/患者/日)である。
【0124】
本発明は、以下の非限定例を参照してさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0125】
実施例1
本例は、IL−8、IL−1β、TNFα、及びIL−6の放出、スーパーオキシドアニオン放出、単球−内皮細胞接着、及び単球PKC活性に対する、リン酸トコフェロール混合物(TPm)の影響を調べる。
【0126】
【表3】
【0127】
方法:
単球分離:インフォームドコンセントに従って、健常ボランティアからヘパリン抗凝固剤試験管に絶食血液を得た。血液をフィコール−ハイパーク勾配に注意深く重相後、末梢血単核細胞を得た。2回洗浄後、Miltenyi BiotechのMACS試薬を使用して陰性磁性分離により単球を分離した。細胞を1×106細胞/mlで再懸濁した。
【0128】
細胞を、図面に記載のようにアルファ、デルタ、又はリン酸ガンマトコフェロール混合物又は組合せ、又はビヒクルと24時間プレインキュベートした後、LPSでスーパーオキシドアニオン放出の評価のために1時間、サイトカインとケモカイン放出のために8時間、そして単球−内皮細胞接着のために4時間活性化した。
【0129】
スーパーオキシドアニオン放出の測定は、SOD−阻害性フェリチトクロームC還元を使用して行い、nモル/分/mgタンパク質として表した。単球からのサイトカイン(IL−1βとTNFα)とケモカイン(IL−8)放出は、BDFACSアレイの特異的蛍光標識抗体を使用して処理単球の上清で行い、1mg細胞タンパク質について表した。単球−内皮細胞接着については、ヒト大動脈内皮細胞を2〜5回継代で使用した。処理単球と対照単球をCFDA−SEで37℃、1時間標識し、次に洗浄して非結合色素を除去した。次に標識単球をHAECに加え、さらに37℃で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、蛍光を485nmの励起と535nmの発光で定量し、総量と比較した結合%として表した。
【0130】
統計解析:すべてのデータは、二重測定での5回の実験の平均±SDとして表し、統計解析はGraphPad Prizmソフトウェアを使用して行った。ANOVAの後に、対応のあるt検定とWilcoxon符号順位検定を使用するノンパラメトリックデータを使用して解析し、p<0.05を有意とみなした。
【0131】
結果:
結果を図1〜7に示す。図1〜3では、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを意味し、aはLPSと比較してp<0.05であることを意味する。図4〜6では、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを意味し、*はLPSと比較してp<0.05であることを意味する。
【0132】
LPS活性化IL−8放出は、12.5μg/ml、25μg/ml、及び50μg/mlのGTPで有意に阻害された(図1)。LPS活性化IL−8放出もまた、DTP、ATP、及びGTPとATPの組合せにより不完全に阻害された。
【0133】
図2は、LPS活性化IL−1β放出が、50μg/mlのGTPで有意に阻害されたことを示す。
【0134】
図3は、LPS活性化TNFα放出が、12.5μg/ml、25μg/ml、及び50μg/mlのGTPで、及びATP、DTP、及びGTPとATPの組合せにより有意に阻害されたことを示す。
【0135】
図4は、ヒト単球(n=5)からのスーパーオキシドアニオン放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示す。
【0136】
図5は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−6放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示し、そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+GTP12.5、LPS+GTP25、LPS+GTP50、LPS+ATP25+GTP25、LPS+ATP25+DTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05);
【0137】
図6は、単球−内皮細胞接着(n=5)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示し、そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+ATP25+GTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05);
【0138】
図7は、単球PKC活性(n=3)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示す。
【0139】
考察:
LPS活性化HAECへの単球の接着、ATP(>25μg/ml、65%、p<0.05)、及びGTP(50μg/ml、71%、p<0.05)により有意に阻害された。これらの単球は、免疫応答機構において非常に重要な役割を果たす。
【0140】
ATP、DTP、及びGTPは、活性化単球中のPKC活性を有意に低下させた(それぞれ50μg/ml;44%、21%、及び56%、p<0.05)。
【0141】
単球LPS活性化スーパーオキシドアニオン放出は、ATP(≧25μg/ml、75%、p<0.05)、DTP(50μg/ml、61%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、75%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0142】
単球LPS活性化IL−8放出は、ATP(50μg/ml、65%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、61%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0143】
LPS活性化IL−1β放出は、GTP(50μg/ml、43%、p<0.05)のみにより、IL−6放出は、ATP(≧25μg/ml、46%、p<0.05)とGTP(≧25μg/ml、41%、p<0.05)により有意に阻害され、そしてTNFα放出は、ATP(50μg/ml、59%、p<0.05)、DTP(50μg/ml、44%、p<0.05)、及びGTP(≧12.5μg/ml、48%、p<0.05)により有意に阻害された。
【0144】
結論:
解析したすべてのバイオマーカーは、免疫系の制御において非常に重要な役割を果たす。結果は、リン酸トコフェロール混合物が、種々の濃度のこれらのマーカーの機能に有意に影響を与えることができたことを示す。
【0145】
ATPとGTPは、単球中で抗炎症性作用と免疫調節作用を示すようであり、GTPがATPより優れていた。
【0146】
GTPは、単球中で最大の抗炎症作用と免疫関連作用を示し、これはPKC活性化の阻害に仲介されるようである。
【0147】
データは、リン酸トコフェロールがサイトカインIL−8、IL−1β、IL−6、及びTNFαの調節に有効であることを示唆する。
【0148】
実施例2
この試験は、T細胞増殖に対するリン酸アルファ−トコフェロール混合物(ATP)の作用を調べた。T細胞増殖はサイトカインにより調節される。
【0149】
方法:
若い(4〜6ヶ月齢)C57BLマウス及び高齢(>22ヶ月齢)C57BLマウスからT細胞を単離し、Miltenyi BiotechからのPan T細胞単離キットを使用して陰性選択により脾臓細胞から精製した。
【0150】
Phosphagenics Limitedから提供されたリン酸トコフェロール混合物(アルファ−TP)は、約2/3リン酸モノトコフェリル(MW510.7)と1/3リン酸ジトコフェリル(MW923.3)からなり、これは化合物の分子量を598.0とする。エタノールを使用して固体アルファ−TP混合物を溶解して107.52mg/mlのストック溶液(158.11mM)を作成した。エタノール中34mg/mlのアルファ−トコフェロール(アルファ−T)をアルファ−Tのストック溶液として使用した(79.06mM)。プレインキュベーションとインキュベーションに使用した溶液は以下のように調製した:
【0151】
440.6μlのFBSに58.8μlの以下の溶液を加えた:100%エタノール(ビヒクル対照):アルファ−Tストック(34mg/ml)、アルファ−T溶液(53.76mg/ml)、アルファ−T溶液(26.88mg/ml)、アルファ−T溶液(13.44mg/ml)、アルファ−TP溶液(53.76mg/ml)、アルファ−TP溶液(26.88mg/ml)、及びアルファ−TP溶液(13.44mg/ml)。
【0152】
アルファ−T又はアルファ−TPを溶液中に充分取り込むために、これらをボルテックス混合し、37℃の水浴に5分間入れ、これをさらに2回繰り返し、全部で15分間インキュベートした。
【0153】
上記溶液のそれぞれの172μlを7.180mlのRPMI(+add)と648μlのFBSに加えて、ビヒクル対照、アルファ−T(86mg/ml、200μM)、アルファ−T(43mg/ml、100μM)、アルファ−T(21.5mg/ml、50μM)、アルファ−T(10.75mg/ml、25μM)、アルファ−T(136.09mg/ml、200μM)、アルファ−TP(68.04mg/ml、100μM)、アルファ−TP(34.02mg/ml、50μM)、又はアルファ−TP(17.01mg/ml、25μM)を有する10%FBS含有RPMIを作成した。
【0154】
T細胞(1.5×106細胞/処理)をビヒクル対照(エタノール)、アルファ−T(12.5μM、25μM、50μM、100μM)、又はアルファ−TP(12.5μM、25μM、50μM、100μM)と、35℃で2×106細胞/mlで4時間プレインキュベートした。
【0155】
プレインキュベーション後、5%FBS(最終濃度)とプレインキュベーションで使用した同じ濃度のビヒクル、アルファ−トコフェロール、又はリン酸アルファ−トコフェロールとを含有するRPMI培地中のプレート結合抗CD3(5μg/ml、抗CD3e(145−2C11)、Pharmingen Cat#553058)、及び可溶性抗CD28(2μg/ml、最終濃度、抗CD28(37.1)、Pharmingen Cat# 553294)を有する丸底96ウェルプレートで、細胞を三重試験で刺激(2×105細胞/ウェル)した。細胞を35℃、5%CO2で64時間インキュベートし、次に0.5μCiの[3H]チミジンで8時間パルスした。細胞をろ紙上に採取し、液体シンチレーションカウンター(Beckman Counter, Fullerton, CA)により測定して、DNA中に取り込まれた[3H]チミジンの量として、増殖を定量した。
【0156】
示した結果はn=6の5つの異なる実験からである。
【0157】
結果:
Fisherの最小有意差検定は、高齢のマウス(p<0.05)において、ビヒクルと比較してアルファ−TP 12.5μM処理(p=0.010)とすべてのアルファ−T処理で、増殖の有意な増加を示している。
【0158】
図8は、6匹の若いマウスと6匹の高齢のマウスの増殖応答の平均(平均+sd)を示す。
【0159】
図9は、若いマウスと高齢のマウス(n=11)からの新旧増殖応答の平均を示す。これらの結果について、前の実験からの5匹の若いマウスと5匹の高齢のマウスを、改訂プロトコールからの6匹の若いマウスと高齢のマウスに加えた。高齢のマウスでは、ビヒクル処理と比較して、アルファ−TP 25μM処理はT細胞増殖を有意に上昇させ(p=0.011)、一方アルファ−TP 100μM処理は増殖を有意に阻害した(p=0.029)。しかし若いマウスでは処理間に有意差はなかった。
【0160】
結論:
これらの実験において12.5μM アルファ−TPは、アルファ−TP処理の中で最も高い増殖応答を誘発し、一方すべてのアルファ−T処理は、図8に示すようにインビトロ比対照と比較して有意に高い増殖応答を与えた。
【0161】
実験からのすべてのデータを組合せると、結果は、古いT細胞では25μM アルファ−TPのインビトロ処理が最も高い増殖応答を誘発し、これは、各群n=5の我々の予備実験からの以前の知見を実証する。
【0162】
ここに記載した実験の結果は、TP混合物がサイトカイン活性及び/又は発現を調節することができ、T細胞増殖を誘発するのに非リン酸化トコフェロールより有効であり、従ってより強力な免疫エンハンサーであることを示す。
【0163】
実施例3
この試験は、高コレステロール血症ウサギ(2%コレステロール食を与えた)におけるリン酸アルファ−トコフェリル混合物(アルファ−TPm)の経口投与の影響を調べた。コレステロール量の多い食餌に誘導される炎症レベルとリン酸アルファ−トコフェリル混合物により与えられる利益を評価するための、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−6、IL−8、TNF)、及び抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10)、及び他の炎症性バイオマーカー(例えば、CRP)の血しょう評価。
【0164】
方法:
4〜8週齢の47羽のニュージーランドアルビノウサギを得た。これらを7つの処理群に分け、各群は5〜10羽からなった。すべての動物にビタミンE除去食餌を与え、すべての食餌は対照群(コレステロールを含有せず)以外は2%コレステロールを含有し4週間与えた(以下に概説する種々のTA又はTPm処理を含む)。
【表4】
【0165】
処理期間の最後に動物を屠殺し、血液を集めた。この血液から血しょうを得て、炎症の種々のマーカーのレベルを測定し、これらは以下を含んだ:IL−1β、IL−6、IL−8、TNF、PAI−1、及びCRP。炎症の他のマーカー(例えばCD36)は、ウサギの大動脈から単離したmRNAから測定し、発現レベルを決定した。
【0166】
結果:
図10〜15は、多くの炎症促進性サイトカインの血しょうレベルを示し、これらは、コレステロールの無い食餌のウサギ(#で示される)と比較して2%コレステロール食の添加により、すべて上昇した。これらの上昇した炎症促進性サイトカインは、炎症性障害になりやすい環境を示す。これらの高コレステロール血症ウサギを、300mg/kg食餌の酢酸トコフェロール(TA)で処理すると、これらの炎症促進性マーカーの弱い低下を示し、そのうちの3つは有意であると見なされた(CRP、IL−8、及びIL−6)。TPmは試験したすべての炎症促進性サイトカインで有意な低下を示し(*で示される)、同様にTA処理ウサギ(++で示される)と比較して有意な低下があった。
【0167】
図17は、種々の化合物で処理したこれらの高コレステロール血症ウサギの、ハウスキーピング遺伝子と比較した大動脈CD36発現を示す。炎症促進性マーカーとして再度、高コレステロール食餌は、これらのウサギにおけるCD36発現レベルを有意に上昇させることが証明された。TPmによる処理はCD36発現を低下させた。
【0168】
結論:
これらの実験においてTPm処理は、多くの炎症促進性サイトカインとマーカー(IL−1β、IL−6、IL−8、CRP、TNF、CRP、及びCD36を含む)の発現を有意に低下させた。この処理はまた、抗炎症性サイトカインの発現を上昇させ、抗炎症性サイトカインの上昇は、高コレステロール食により誘導される全体的炎症症状が、ある場合にはコレステロール制限の無い食事レベルまで低下するバランスの取れた環境を示す。試験した3つの最も高い用量(120、240、360mg TPm/kg食)は特に、これらのサイトカインとマーカーの最大の低下を示した。
【0169】
本明細書において、文脈上から明確な表現や必要な示唆がある場合以外は、用語「含む」又はその変化形「含んでなる」は、包括的に使用される、すなわち記載の特徴の存在を示すように使用され、すなわち本発明の種々の実施態様におけるさらなる特徴の追加の存在を示す。
【0170】
本明細書において、「a」、「an」、「the」という単数形は、特に明記しない場合は、複数形を含むことを注意されたい。
【0171】
本発明の本質と範囲を逸脱することなく多くの改良が可能であることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−8放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図2】図2は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−1β放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図3】図3は、実施例1のヒト単球(n=5)からのTNFα放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、*はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;aはLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図4】図4は、実施例1のヒト単球(n=5)からのスーパーオキサイドアニオン放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;*はLPSと比較してp<0.05であることを示す。
【図5】図5は、実施例1のヒト単球(n=5)からのIL−6放出に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+GTP12.5、LPS+GTP25、LPS+GTP50、LPS+ATP25+GTP25、LPS+ATP25+DTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05)。
【図6】図6は、実施例1の単球−内皮細胞接着(n=5)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。図中、#はビヒクル対照と比較してp<0.01であることを示し;そして、LPS+ATP25、LPS+ATP50、LPS+DTP50、LPS+ATP25+GTP25は、LPSと比較して有意に異なる(p<0.05)。
【図7】図7は、実施例1の単球PKC活性(n=3)に対するリン酸トコフェロール混合物の影響を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2の6匹の若いマウスと6匹の高齢マウスの増殖応答の平均(平均+sd)を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2の若いマウスと高齢マウス(n=11)からの新旧増殖応答の平均を示すグラフである。
【図10】図10は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のCRPレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図11】図11は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−8レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図12】図12は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のPAI−1レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図13】図13は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のTNFレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図14】図14は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−6レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、#は2%コレステロール処理と比較したp<0.05の対照を示し;*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示し;そして++はTPm処理と比較したp<0.05のTA25を示す。
【図15】図15は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−1βレベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図16】図16は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の血しょう中のIL−10レベルに対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【図17】図17は、高コレステロール血症ウサギ(n=5〜8)の大動脈中のCD36発現に対するリン酸α−トコフェロール混合物(アルファ−TPm)の影響を示すグラフである。図中、*は種々の処理と比較したp<0.05の2%コレステロール投与動物を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記免疫調節性サイトカインが、炎症促進性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症促進性サイトカインが、インターロイキン型のサイトカイン又は腫瘍壊死因子型のサイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インターロイキン型のサイトカインが、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−11(IL−11)、及びインターロイキン−18(IL−18)よりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍壊死因子型のサイトカインが、腫瘍壊死因子−アルファである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗炎症性サイトカインが、インターロイキン型のサイトカイン、腫瘍壊死因子型のサイトカイン、インターフェロンサイトカイン、又は増殖因子サイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記インターロイキン型のサイトカインが、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−10(IL−10)、及びインターロイキン−13(IL−13)よりなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インターフェロンサイトカインが、IFNαである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記増殖因子サイトカインが、トランスフォーミング増殖因子サイトカイン、又は顆粒球コロニー刺激因子サイトカインである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記トランスフォーミング増殖因子が、TGFβである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記顆粒球コロニー刺激因子が、G−CSFである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、エナンチオマー型及びラセミ体型のアルファ、ベータ、デルタ、及びガンマトコールのリン酸エステル誘導体よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸トコフェリル誘導体、リン酸トコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、リン酸ジトコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、及び/又はリン酸ジトコトリエニル誘導体の混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体とリン酸ジトコフェリル誘導体の混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)の混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記リン酸モノトコフェリル(TP)対リン酸ジトコフェリル(T2P)との比が、4:1〜1:4、又は2:1〜1:2、又は2:1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体が、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と複合体形成剤との反応物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記複合体形成剤が、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、窒素官能基を有するアミノ酸を含有するタンパク質、並びにインスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチン、インターフェロン−αと−βと−γ、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、コロニー刺激因子(CSF)、及び成長ホルモン(GH)よりなる群から選択されるタンパク質、よりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記窒素官能基を有するアミノ酸を含有するタンパク質が、62のアミノ酸のうちの少なくとも1つをアルギニンとして又は83のうちの少なくとも1つをヒスチジンとして又は65うちの少なくとも1つをリジンとして有するか、あるいはカゼインの形を有するタンパク質である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複合体形成剤が、式(II):
【化1】
{式中、
R7は、場合によりカルボニルにより中断される、C1-22アルキルよりなる群から選択され;そして
R8とR9は、独立して、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3Xよりなる群から選択される、ここで、XはH、Na、K、又はアルカノールアミンである、ただしR8とR9は両方がHではなく、R7がRCOである時、R8はCH3であり、R9は(CH2CH2)N(C2H4OH)−H2CHOPO3であるか、又はR8とR9は一緒にN(CH2)2N(C2H4OH)CH2COO−である}、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体形成剤が、アルギニン、リジン、又はラウリルイミノジプロピオン酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、及び薬剤学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、経口、非経口、経腸、直腸内、膣内、鼻内、吸入、局所的、又は眼内投与経路により投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項27】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項28】
炎症応答を調節阻害し、及び/又は抗炎症応答を刺激する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項29】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項30】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項31】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項32】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項33】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項34】
1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体を含む、免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤。
【請求項35】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤としての、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項36】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤として使用するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体。
【請求項1】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記免疫調節性サイトカインが、炎症促進性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症促進性サイトカインが、インターロイキン型のサイトカイン又は腫瘍壊死因子型のサイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インターロイキン型のサイトカインが、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−11(IL−11)、及びインターロイキン−18(IL−18)よりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍壊死因子型のサイトカインが、腫瘍壊死因子−アルファである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗炎症性サイトカインが、インターロイキン型のサイトカイン、腫瘍壊死因子型のサイトカイン、インターフェロンサイトカイン、又は増殖因子サイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記インターロイキン型のサイトカインが、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−10(IL−10)、及びインターロイキン−13(IL−13)よりなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インターフェロンサイトカインが、IFNαである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記増殖因子サイトカインが、トランスフォーミング増殖因子サイトカイン、又は顆粒球コロニー刺激因子サイトカインである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記トランスフォーミング増殖因子が、TGFβである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記顆粒球コロニー刺激因子が、G−CSFである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、エナンチオマー型及びラセミ体型のアルファ、ベータ、デルタ、及びガンマトコールのリン酸エステル誘導体よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸トコフェリル誘導体、リン酸トコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、リン酸ジトコトリエニル誘導体、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体、リン酸ジトコフェリル誘導体、リン酸モノトコトリエニル誘導体、及び/又はリン酸ジトコトリエニル誘導体の混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル誘導体とリン酸ジトコフェリル誘導体の混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リン酸トコール誘導体が、リン酸モノトコフェリル(TP)とリン酸ジトコフェリル(T2P)の混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記リン酸モノトコフェリル(TP)対リン酸ジトコフェリル(T2P)との比が、4:1〜1:4、又は2:1〜1:2、又は2:1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体の複合体が、ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体と複合体形成剤との反応物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記複合体形成剤が、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、窒素官能基を有するアミノ酸を含有するタンパク質、並びにインスリン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチン、インターフェロン−αと−βと−γ、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、コロニー刺激因子(CSF)、及び成長ホルモン(GH)よりなる群から選択されるタンパク質、よりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記窒素官能基を有するアミノ酸を含有するタンパク質が、62のアミノ酸のうちの少なくとも1つをアルギニンとして又は83のうちの少なくとも1つをヒスチジンとして又は65うちの少なくとも1つをリジンとして有するか、あるいはカゼインの形を有するタンパク質である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複合体形成剤が、式(II):
【化1】
{式中、
R7は、場合によりカルボニルにより中断される、C1-22アルキルよりなる群から選択され;そして
R8とR9は、独立して、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3Xよりなる群から選択される、ここで、XはH、Na、K、又はアルカノールアミンである、ただしR8とR9は両方がHではなく、R7がRCOである時、R8はCH3であり、R9は(CH2CH2)N(C2H4OH)−H2CHOPO3であるか、又はR8とR9は一緒にN(CH2)2N(C2H4OH)CH2COO−である}、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体形成剤が、アルギニン、リジン、又はラウリルイミノジプロピオン酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロキシクロマンのリン酸エステル誘導体が、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、及び薬剤学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、経口、非経口、経腸、直腸内、膣内、鼻内、吸入、局所的、又は眼内投与経路により投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項27】
1又は複数の免疫制御性サイトカインを調節する薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項28】
炎症応答を調節阻害し、及び/又は抗炎症応答を刺激する方法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項29】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項30】
炎症応答を阻害する、及び/又は抗炎症応答を刺激するための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項31】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防法であって、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の治療的有効量を被験体に投与することを含む、上記方法。
【請求項32】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項33】
免疫障害、炎症性障害、及び/若しくは細胞増殖障害の治療、並びに/又は予防のための薬剤の製造における、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項34】
1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体を含む、免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤。
【請求項35】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤としての、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体の使用。
【請求項36】
免疫調節剤、抗炎症剤又は抗癌剤として使用するための、1又は複数のヒドロキシクロマンの1又は複数のリン酸エステル誘導体、あるいはその複合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−520697(P2009−520697A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546038(P2008−546038)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001997
【国際公開番号】WO2007/070981
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001997
【国際公開番号】WO2007/070981
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】
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