説明

サイトカイン送達のためのヴォールト(VAULT)複合体

本発明は、サイトカインとヴォールト標的化ドメインとを含む組換えサイトカイン融合タンパク質を含有するヴォールト複合体の組成物、ならびに細胞または対象に該サイトカインを送達するために該ヴォールト複合体を使用する方法、および肺がんなどのがんを処置するために該組成物を使用するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年11月2日付で出願された米国特許仮出願第61/257,358号の恩典を主張するものであり、この全開示は全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究または開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号5R01CA126944の下での政府支援によりなされ、米退役軍人省によって支援された。政府は本発明において特定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、201X年XX月に作製された、XXX,XXXバイトのサイズを有する、11111US_sequencelisting.txtという名前のテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含む。この配列表は参照により組み入れられる。
【0004】
発明の分野
本発明は、ケモカインCCL-21などのサイトカインを含むヴォールト(vault)複合体の組成物、および細胞へ該サイトカインを送達するためのヴォールト複合体の使用に関する。ヴォールト複合体は、主要ヴォールト相互作用ドメインに融合された関心対象のサイトカインの融合タンパク質を含む。本発明においてまた含まれるのは、腫瘍に対する免疫反応を活性化するための、および肺がんを含むがんを処置するためのがん免疫療法剤としての組成物の使用である。
【背景技術】
【0005】
関連技術の記載
ヴォールトは、全ての真核細胞において見られる、1986年に初めて記述された細胞質遍在性のリボヌクレオタンパク質粒子である[1]。天然ヴォールトは、おおよそ幅40 nmおよび長さ70 nmの全体寸法を有する12.9±1 MDaの卵形球体であり[2、3]、ほぼ全ての真核生物に細胞1個あたり粒子104〜107個で存在する[4]。ヴォールトの機能は、先天性免疫反応、がん細胞における多剤耐性、多面的なシグナル伝達経路および細胞内輸送を含む多くの細胞過程に結び付けられているが、その細胞存在量にもかかわらず、謎のままである[5]。
【0006】
ヴォールトはインビトロにおいて非常に安定な構造であり、いくつかの研究から、この粒子が非免疫原性であることが示されている[6]。ヴォールトを遺伝子操作することおよびバキュロウイルス発現システムによって発現させることができ、かつヴォールトの相互作用(INTeraction)のためのINTと名付けられたタンパク質標的化ドメインを用いて、これらの組換え粒子の内部に異種タンパク質を封入することができる。いくつかの異種タンパク質(例えば、蛍光タンパク質および酵素タンパク質)がINTドメインに融合されており、これらの融合タンパク質は、組換えヴォールトで発現させても、その天然の特徴を保持しており、したがってこれらのヴォールトに新規特性を付与している[7、8]。
【0007】
CCL-21は、リンパ節およびパイエル板における高内皮細静脈によって、ならびにリンパ管、脾臓中の間質細胞および虫垂によって主におよび構成的に発現されるリンパ系ケモカインとして同定された[9]。CCL-21はケモカイン受容体CCR7に結合し、成熟DC、無感作T細胞および記憶T細胞に対する化学誘引物質である[10、11]。このケモカインは、CCL-19とともに、効果的なT細胞-DC相互作用のために最終的に不可欠な正常リンパ系組織の構築に必要とされる。ナチュラルキラー(NK)およびナチュラルキラーT (NKT)抗腫瘍エフェクタはCCR7受容体を発現し、CCL-21によって化学的に誘引される。腫瘍内にDC、リンパ球、ならびにNKおよびNKTエフェクタを引き付けるケモカインの使用は、有効な抗腫瘍戦略となりうる。この概念に基づき、組換えCCL-21の腫瘍内投与はネズミ肺がんモデルにおいて全身腫瘍組織量を低減することがこれまでに示されている[12]。しかしながら、組換えCCL-21により誘導される抗腫瘍反応には、腫瘍内に投与されたタンパク質が長時間局所的に保持されないため、高用量かつ頻回の投薬が必要とされた。これらの研究は効果的な抗腫瘍剤としてのCCL-21の役割を描出したが、頻繁な高用量の腫瘍内投与は不必要な全身毒性の可能性を伴い臨床的に限界がある。この手法の限界に基づき、腫瘍内CCL-21送達のための自家樹状細胞の使用について調べられている[13、14]。前臨床試験において、CCL-21遺伝子改変樹状細胞の腫瘍内投与がネズミ肺がんモデルにおいて腫瘍根絶をもたらすことが実証された。CCL-21の抗腫瘍特性に関するこの初期の記述の後に、いくつかの他の研究グループが、CCL-21は種々のモデルシステムにおいて強力な抗腫瘍特性を有することを報告している[15〜19]。全てのモデルにおいて、CCL-21は強力な腫瘍退縮を示したが、これは宿主T細胞免疫に依ることが明らかにされた。大規模な前臨床評価に基づき、二次リンパケモカイン遺伝子を発現するアデノウイルスベクターで形質導入されたDC (Ad-CCL-21-DC)の腫瘍内注射が進行性非小細胞肺がん(NSCLC)での第1相試験において評価された。
【0008】
ケモカイン遺伝子改変DCの腫瘍内投与を用いる臨床試験は有効な治療法としての将来性を発揮するとはいえ、CCL-21を発現する自家樹状細胞の調製は煩雑であり、高価であり、かつ時間がかかる。効果的でありかつ類似の治療機構を通じて働く試薬が大変望ましい。自家DCの調製を回避する、バッチ間のばらつきを最小化する、かつ比較可能性および標準化を可能にする組成物および方法が必要とされる。抗腫瘍免疫反応を開始するという目的でサイトカインの送達、例えば、腫瘍内CCL-21の送達のための非DCに基づく手法が必要である。
【0009】
ヴォールトは、2004年3月10日付で出願された米国特許第7,482,319号; 2008年10月15日付で出願された米国特許出願第12/252,200号; 2004年3月10日付で出願された国際出願番号PCT/US2004/007434; 2003年3月20日付で出願された米国特許仮出願第60/453,800号; 1998年6月3日付で出願された米国特許第6,156,879号; 2000年6月28日付で出願された米国特許第6,555,347号; 1999年3月26日付で出願された米国特許第6,110,740号; 1999年3月26日付で出願された国際出願番号PCT/US1999/06683; 1998年3月27日付で出願された米国特許仮出願第60/079,634号; および1998年6月3日付で出願された国際出願番号PCT/US 1998/011348に一般的に記述されている。性器クラミジア感染症に対する免疫のためのヴォールト複合体が、2009年5月15日付で出願された米国特許出願第12/467,255号に記述されている。これらの出願の全内容は全ての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。
【発明の概要】
【0010】
本明細書において開示されるのは、サイトカインおよびヴォールト標的化ドメイン、例えば、mINTの融合タンパク質を有するヴォールト複合体を含む組成物である。1つの態様において、ヴォールト複合体は、SEQ ID NO: 1 (マウスCCL21アミノ酸配列)からなるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21 (CCL-21)とSEQ ID NO: 9 (マウスmINTアミノ酸配列)からなる主要ヴォールトタンパク質相互作用ドメイン(mINT)とを有する、ケモカイン融合タンパク質を含む。別の態様において、ヴォールト複合体は、SEQ ID NO: 2 (ヒトCCL21アミノ酸配列)からなるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21 (CCL-21)とSEQ ID NO: 8 (ヒトmINTアミノ酸配列)からなる主要ヴォールトタンパク質相互作用ドメイン(mINT)とを有する、ケモカイン融合タンパク質を含む。
【0011】
したがって、本発明の1つの局面において、サイトカインはケモカインである。1つの局面において、サイトカインはシステイン-システイン(CC)ケモカインである。別の局面において、サイトカインはCCL-21ケモカインである。ケモカインはヒトまたはマウスCCL-21、例えば、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2の全部または一部を含むことができる。いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質は蛍光タンパク質、例えば、mチェリー(mCherry)蛍光タンパク質を含む。
【0012】
1つの態様において、ヴォールト標的化ドメインは、ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)由来のヴォールト相互作用ドメインである。1つの態様において、ヴォールト標的化ドメインは、主要ヴォールトタンパク質相互作用(mINT)ドメインである。別の態様において、ヴォールト標的化ドメインは、SEQ ID NO: 8 (ヒトアミノ酸配列)を含むか、またはそれからなる。さらに別の態様において、ヴォールト標的化ドメインは、SEQ ID NO: 9 (マウスアミノ酸配列)を含む。
【0013】
いくつかの態様において、ヴォールト複合体はMVPを含む。MVPはヒトMVP、例えばSEQ ID NO: 16でありうる。
【0014】
本発明のヴォールト複合体は、ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)、および/またはテロメラーゼヴォールト会合タンパク質1 (TEP1)、および/または非翻訳RNA分子(vRNA)を含むことができる。
【0015】
さらに、本発明は、サイトカインコード配列とmINTコード配列とを含むサイトカイン融合タンパク質をコードする単離された核酸を提供する。1つの態様において、mINTコード配列はSEQ ID NO: 7 (ヒト配列)またはSEQ ID NO:6 (マウス配列)である。別の態様において、サイトカインコード配列はSEQ ID NO: 5 (ヒト)であり、かつmINTコード配列はSEQ ID NO: 7 (ヒト)からなる。1つの態様において、サイトカインコード配列はSEQ ID NO: 3 (マウス配列)であり、かつmINTコード配列はSEQ ID NO: 6 (マウス配列)である。
【0016】
いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質はSEQ ID NO: 13 (ヒト)である。他の態様において、サイトカイン融合タンパク質はSEQ ID NO: 12 (マウス)である。本発明においてまた含まれるのは、本明細書において記述される単離された核酸を含むベクター、本明細書において記述される単離された核酸を有する細胞、および本明細書において記述されるベクターを有する細胞である。
【0017】
本発明はまた、本発明のヴォールト複合体を細胞へ導入する段階を含む、該細胞へサイトカインを送達する方法も含む。いくつかの態様において、該方法は、細胞の周囲の細胞外環境へヴォールト複合体を導入する段階を含む。本発明は、本発明のヴォールト複合体と細胞を接触させる段階により細胞における免疫反応を刺激するための方法を含む。いくつかの態様において、細胞はヒト細胞である。他の態様において、免疫反応はT細胞および樹状細胞の遊走を誘導する。別の態様において、本発明のヴォールト複合体と細胞を接触させる段階は、該細胞へのT細胞の遊走を、CCL-21サイトカイン単独の投与と比べて少なくとも5%増大させる。
【0018】
さらに、本発明は、本発明のヴォールト複合体を対象に投与する段階により対象における免疫反応を刺激するための方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。
【0019】
別の態様において、本発明は、治療的に有効な量の、本明細書において記述されるヴォールト複合体を対象に投与する段階を含む、がんの処置または管理を必要としている対象においてがんを処置または管理する方法を含む。いくつかの態様において、投与する段階は、対象における腫瘍への組成物の腫瘍内注射を含む。1つの態様において、がんは肺がんである。別の態様において、投与する段階は、腫瘍体積を低減し、かつ/または腫瘍増殖を低減する。いくつかの態様において、投与する段階は、インターロイキン-2 (IL-2)発現を増大させる。1つの態様において、該方法は、哺乳類またはヒトである対象を含む。
【0020】
本発明は、(a) Sf9細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、Sf9細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによってヴォールト複合体を生成する段階を含む、本発明のヴォールト複合体を調製する方法を含む。
【0021】
さらに別の態様において、本発明はまた、(a) 昆虫の幼虫細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、昆虫の幼虫細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって本明細書において記述されるヴォールト複合体を生成する段階を含む、本発明のヴォールト複合体を調製する方法も提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、(a) Sf9細胞中または昆虫の幼虫細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、Sf9細胞中または昆虫の幼虫細胞中で生成されたヒトMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって本明細書において記述されるヴォールト複合体を生成する段階を含む、本発明の組成物を調製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のこれらおよびその他の特徴、局面および利点は、以下の説明および添付の図面に関してさらによく理解されるようになるであろう。
【図1】図1Aは、CCL-21融合タンパク質を作製するために融合されたCCL-21およびmチェリー-INT構築体の略図を示す。図1Bは、制限消化によるpFastBac発現ベクターへの組み込みおよびゲル電気泳動によって分析した場合のCCL-21融合タンパク質の発現を示す。図1Cは、ショ糖勾配によって精製されたパッケージングCCL-21-mチェリー-mINTを含むMVP組換えヴォールトを示す。40%画分および45%画分をSDS-PAGEによって分析した。図1Dは、ショ糖勾配によって精製され、クマシーでの染色によって分析されたパッケージングCCL-21-mチェリー-mINTを含むMVP組換えヴォールトを示す。図1Eは、ネガティブ染色透過型電子顕微鏡によって調べられた精製ヴォールト複合体を示す。
【図2】図2Aは、CCL-21ヴォールト複合体がT2細胞の遊走を増大させることを示すグラフである。図2Bは、IL-2産生によって測定されたCCL-21ヴォールト複合体によるT細胞活性化を示すグラフである。
【図3】空のヴォールトと比べてCCL-21ヴォールト複合体(200 ng)の腫瘍内注射による全身腫瘍組織量の減少を示すグラフである。
【図4】図4Aは、対照ヴォールトで処理された細胞での白血球浸潤を示す。図4Bは、CCL-21ヴォールト複合体で処理された細胞での白血球浸潤を示す。
【図5】図5Aは、希釈剤による3LL肺がん細胞の処置の効果を示す写真である。図5Bは、対照ヴォールトによる3LL肺がん細胞の処置の効果を示す写真である。図5Cは、CCL-21ヴォールト複合体による3LL肺がん細胞の処置の効果を示す写真である。
【図6】図6Aは、フローサイトメトリーアッセイ法において測定した場合の未処置3LL細胞、および希釈剤、対照ヴォールト(VC)またはCCL-21ヴォールトで処理した3LL細胞の全身腫瘍組織量%を示す写真のセットである。全身腫瘍組織量は、全肺消化物におけるGFPおよびEpcam発現腫瘍細胞の全体の百分率で計算された。図6Bは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による処理後の3LL細胞の全身腫瘍組織量%を示す棒グラフである。
【図7】図7Aは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による注射後の腫瘍部位における腫瘍内白血球集団(CD4、CD8、CD3 CXCR3、CD3 CCR7、DEC205、MDSCおよびT調節性(Treg))の百分率を示すグラフである。CCL-21ヴォールト複合体はCD4、CD8、CXCR3+CD3+T、CCR7+CD3+TおよびDEC205+DC浸潤を増強し、MDSCおよびT調節性を低減した。図7Bは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による処理後のIFNγおよびIL-10発現を有するCD4+細胞の百分率のグラフである。CCL-21ヴォールト複合体処置マウス由来の腫瘍Tリンパ球浸潤物は、細胞質内IFNγを増大させ、IL-10発現を低減した。図7Cは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による処理後のIFNγおよびIL-10発現を有するCD8+細胞の百分率のグラフである。図7Dは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による腫瘍内注射後の脾臓T細胞の腫瘍溶解率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明のさまざまな局面の説明は、例示の目的のために提示されており、かつ網羅的であることまたは開示される形態に本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、態様の教示に照らして多くの変更および変形が可能であることを理解することができる。
【0025】
本明細書において用いられる言い回しは、読み易さおよび指示上の目的のために主として選択されており、発明の主題を線引きまたは制限するようには選択されえないことに留意すべきである。したがって、本開示は、本発明の範囲の例示であるが、本発明の範囲の限定ではないことが意図される。
【0026】
本明細書において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数のものを含むことに留意しなければならない。
【0027】
本明細書において直接定義されていない任意の用語は、本発明の技術分野の範囲内で理解される通り、その用語から一般的に連想される意味を有すると理解されるものとする。本発明の態様の組成物、装置、方法など、およびそれらを作製または使用する方法について記述するうえで実施者に対するさらなる手引きを提供するように本明細書においてある種の用語が論じられる。同一のものが複数の呼び方で呼ばれうることが理解されよう。したがって、他の言い回しおよび同義語が、本明細書において論じられるいずれか1つまたは複数の用語について使用されうる。用語が推敲されているか否か、または本明細書において論じられているか否かについては、重要性はない。いくつかの同義のまたは代用可能な方法、物質などが提供される。1つまたはほんの少しの同義語または相当語句の記載は、それが明白に記載されていない限り、他の同義語または相当語句の使用を除外しない。用語の例を含む例の使用は、例示のみを目的とし、本明細書における本発明の態様の範囲および意味を限定するものではない。
【0028】
手短に言えば、および以下でさらに詳細に記述される通り、本明細書において記述されるのは、CCL-21などのサイトカインを含むヴォールト複合体の組成物、および細胞へのサイトカインの送達でのその使用である。ヴォールト粒子は、主要ヴォールト相互作用ドメインに融合された関心対象のサイトカインの融合タンパク質を含む。本発明においてまた含まれるのは、腫瘍に対する免疫反応を活性化するための、および肺がんを含むがんを処置するためのがん免疫療法剤としての組成物の使用である。
【0029】
CCL-21および他のサイトカインはがん免疫療法剤として有効であることが示されている。しかしながら、CCL-21などの、サイトカインによるがん療法処置の従来の手法では、改変された樹状細胞の使用を伴う。これらの調製物および処置は煩雑であり、高価であり、かつ時間がかかる。従来の方法での困難には、自家DCの調製、バッチ間のばらつき、ならびに比較可能性および標準化の欠如が含まれる。サイトカイン試薬による送達および処置のためのさらに簡便かつ有効な選択肢が必要である。
【0030】
本発明は、従来のDCに基づく方法の不足しているものを補うものである。ヴォールト複合体は、抗腫瘍免疫反応の開始のために効果的かつ効率的な腫瘍内サイトカイン、例えば、CCL-21の送達をもたらす。
【0031】
定義
特許請求の範囲および明細書において用いられる用語は、特別の定めのない限り以下に記載されるように定義される。
【0032】
「サイトカイン」という用語は、免疫調節性および炎症性の過程に関与する分泌型細胞シグナル伝達タンパク質のファミリーの一員であるタンパク質である。「ケモカイン」は、ジスルフィド結合を形成する不変のシステイン残基によって定義されるサイトカインのファミリーの一員である。ケモカインの一例は、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21をいう「CCL-21」である。C-Cモチーフはシステイン-システインモチーフである。
【0033】
本明細書において用いられる場合、「ヴォールト」または「ヴォールト粒子」という用語は、真核細胞において見出される大きな細胞質リボヌクレオタンパク質(RNP)粒子をいう。ヴォールトまたはヴォールト粒子は、MVP、VPARPおよび/またはTEP1タンパク質ならびに1つまたは複数の非翻訳vRNA分子から構成される。
【0034】
本明細書において用いられる場合、「ヴォールト複合体」という用語は、関心対象の小分子またはタンパク質をカプセル封入する組換えヴォールトをいう。本発明のヴォールト複合体は融合タンパク質、例えば、サイトカイン融合タンパク質を含む。
【0035】
本明細書において用いられる場合、「サイトカイン融合タンパク質」という用語は、ヴォールト標的化ドメインにインフレームで融合されたサイトカインをコードするヌクレオチドから発現される組換えタンパク質である。
【0036】
本明細書において用いられる場合、「ヴォールト標的化ドメイン」または「ヴォールト相互作用ドメイン」という用語は、ヴォールトタンパク質との異種融合タンパク質の相互作用もしくは結合、またはMVPなどのヴォールトタンパク質とのVPARPの相互作用に関与するドメインである。本明細書において用いられる場合、「mINTドメイン」という用語は、主要ヴォールトタンパク質(MVP)とのVPARPの相互作用に関与するヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)由来のヴォールト相互作用ドメインである。「mINTドメイン」という用語は主要ヴォールトタンパク質(MVP)相互作用ドメインをいう。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「MVP」という用語は主要ヴォールトタンパク質である。「cp-MVP」という用語は高システインペプチド主要ヴォールトタンパク質である。
【0038】
「VPARP」という用語はヴォールトポリADPリボースポリメラーゼをいう。
【0039】
本明細書において用いられる場合、「TEP-1」という用語はテロメラーゼ/ヴォールト会合タンパク質1である。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「vRNA」という用語はヴォールトにおいて見出される非翻訳RNA分子である。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「蛍光タンパク質」という用語は、そのポリペプチド配列内から可視波長の発色団を形成する特性を有したタンパク質である。蛍光タンパク質は、他のタンパク質とともに発現されるように遺伝子操作することができ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(mチェリー)、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、アズライト(Azurite)、mカラマ(mKalama)1)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、セルリアン(Cerulean)、CyPet)および黄色蛍光タンパク質誘導体(YFP、シトリン(Citrine)、ビーナス(Venus)、YPet)を含むが、これらに限定されることはない。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「ベクター」という用語は、細胞の中に外来遺伝物質を移入するための媒体として使われるDNA分子またはRNA分子である。4つの主要なタイプのベクターは、プラスミド、バクテリオファージおよび他のウイルス、コスミドならびに人工染色体である。ベクターは複製起点、マルチクローニング部位および選択マーカーを含むことができる。
【0043】
本明細書において用いられる場合、「細胞」は真核細胞および原核細胞を含む。
【0044】
本明細書において用いられる場合、「生物」、「組織」および「細胞」という用語は、天然に存在する生物、組織および細胞、遺伝的に改変された生物、組織および細胞、ならびに病的な組織および細胞、例えばインビトロの腫瘍細胞株およびインビボの腫瘍などを含む。
【0045】
本明細書において用いられる場合、「T細胞」またはTリンパ球という用語は、リンパ球として公知の白血球であり、細胞性免疫において中心的な役割を果たす。
【0046】
本明細書において用いられる場合、「細胞外環境」という用語は、細胞の外側の環境である。
【0047】
本明細書において用いられる場合、「インビボ」という用語は、生物体内で行われる過程について言及する。
【0048】
本明細書においていう「対象」は、哺乳類(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、霊長類などのような実験動物)、家畜もしくは商用動物(例えば、ウシ、ウマ、ヤギ、ロバ、ヒツジなど)、家庭内動物(例えば、ネコ、イヌ、フェレットなど)、鳥類、またはヒトを含む、任意の動物でありうる。
【0049】
本明細書において用いられる「哺乳類」という用語は、ヒトも非ヒトもともに含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマおよびブタを含むが、これらに限定されることはない。
【0050】
本明細書において用いられる場合、「ヒト」という用語は「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」をいう。
【0051】
本明細書において用いられる場合、「十分な量」という用語は、所望の効果をもたらすのに十分な量、例えば、細胞におけるタンパク質凝集を調節するのに十分な量である。
【0052】
本明細書において用いられる場合、「治療的に有効な量」という用語は、がんなどの疾患の症状を改善するのに有効な量である。
【0053】
「予防的に有効な量」は、予防のために有効な量をいう。
【0054】
「免疫反応」は、外来免疫原または抗原に対する宿主による反応である。「細胞性免疫反応」は、細胞性免疫につながる、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)の産生を伴ったヘルパーT細胞反応をいう。
【0055】
本明細書において用いられる場合、「刺激」という用語とは、細胞内または生物内からの分子、細胞または酵素の活性または反応を活性化するか、増大させるかまたは誘発することをいう。
【0056】
本明細書において用いられる場合、「投与」という用語は、固形臓器への直接的な注射、腫瘍などの細胞塊への直接的な注射、吸入、腹腔内注射、静脈内注射、粘膜上の局所適用、または環境媒体への適用もしくは環境媒体内での分散、および前記の組み合わせを含む、本開示に関連して当業者により理解される通りの、任意の適した投与経路を含む。
【0057】
本開示において用いられる場合、「改変された」という用語および「改変」などのこの用語の変化形は、C末端へのポリペプチド配列の付加、N末端へのポリペプチド配列の付加、C末端からの約1〜100アミノ酸残基の欠失、N末端からの約1〜100アミノ酸残基の欠失、例えばアラニンからグリシンへの置換などの、本開示に関連して当業者により理解される通りの、ポリペプチドの機能を変化させない1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、および前記の組み合わせからなる群より選択される、MVP、VPARPまたはTEP1の天然配列に対する1つまたは複数の変化を意味する。
【0058】
本明細書において用いられる場合、2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈におけるパーセント「同一性」という用語は、最大の対応関係が得られるように比較およびアライメントを行った場合に、以下に記述した配列比較アルゴリズムの1つ(例えば、BLASTPおよびBLASTNまたは当業者が利用できる他のアルゴリズム)を用いた、または目視検査による計測で、指定された割合のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同じである2つまたはそれ以上の配列または部分配列に対して言及する。用途に応じて、パーセント「同一性」は、比較される配列のある領域にわたって、例えば、ある機能的ドメインにわたって存在することもできるか、またはその代わりに、比較しようとする2つの配列の全長にわたって存在することもできる。
【0059】
配列比較のためには、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として用いることが一般的である。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対する被験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0060】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または目視検査により行うことができる(一般的にはAusubel et al.、下記を参照のこと)。
【0061】
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記述されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) (www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公開されている。
【0062】
本開示において用いられる場合、「含む(comprise)」という用語ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などの、この用語の変化形は、他の付加物、成分、整数または段階を除外するように意図されない。
【0063】
本明細書および添付した特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数のものを含むことに留意しなければならない。
【0064】
本発明の組成物
以下でさらに詳細に記述される通り、本発明は、ヴォールト粒子を用いた組成物および方法を含む。ヴォールト粒子は、MVPならびに融合タンパク質かつmINTおよび関心対象のタンパク質、例えば、サイトカイン、例えば、CCL-21を有する組換え粒子である。ヴォールト粒子は、細胞もしくは腫瘍または対象への関心対象のタンパク質、例えば、サイトカインの送達のために用いることができる。
【0065】
ヴォールトおよびヴォールト複合体
本発明の組成物はヴォールト複合体を含む。ヴォールト複合体は、小分子(薬物、センサー、毒素など)、または関心対象のタンパク質、例えば、ペプチド、または内因性タンパク質、異種タンパク質、組換えタンパク質もしくは組換え融合タンパク質を含む、タンパク質をカプセル封入する組換え粒子である。本発明のものであるヴォールト複合体は、サイトカイン組換え融合タンパク質を含む。ヴォールト複合体はヴォールト粒子に由来する。
【0066】
ヴォールト、例えば、ヴォールト粒子は、樹状細胞(DC)、子宮内膜および肺を含む、ほぼ全ての真核組織および細胞において、ならびに哺乳類、鳥類、両生類、粘菌キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)および原生動物トリパノソーマブルセイ(Trypanosoma brucei)といった多様な系統発生において見られる遍在性の、高度に保存されたリボヌクレオタンパク質粒子である(Izquierdo et al., Am. J. Pathol., 148(3):877-87 (1996))。ヴォールトは、突出した2つの末端キャップ、陥入したくびれ、およびヴォールトキャップ周囲の規則的な小開口部を有する中空の、樽様構造を持つ。これらの開口部は、小分子およびイオンをヴォールトの内部に進入させるのに十分な程の大きさがある。ヴォールトは約12.9±1 MDaの質量(Kedersha et al., J. Cell Biol., 112(2):225-35 (1991))および約42×42×75 nmの全体寸法(Kong et al., Structure, 7(4):371-9 (1999))を有する。内部ヴォールト空洞の体積はおよそ50×103 nm3であり、これはリボソームタンパク質全体を包み込むのに十分な程の大きさがある。
【0067】
ヴォールトは、MVP、VPARPおよびTEP1と名付けられた3つの異なるタンパク質を含み、vRNAと名付けられた、1つまたは複数の異なる非翻訳RNA分子を含む。vRNAの数は変わりうる。例えば、ラットのドブネズミ(Rattus norvegicus)はヴォールト1つにつき1形態のvRNAしか持たないのに対し、ヒトはヴォールト1つにつき3形態のvRNAを持つ。最も豊富なタンパク質である主要ヴォールトタンパク質(MVP)は、ドブネズミでは95.8 kDaのタンパク質およびヒトでは99.3 kDaのタンパク質であり、これはヴォールト1つにつき96コピーが存在し、ヴォールト粒子の全タンパク質量の約75%を占める。他の2つのタンパク質の、ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ; VPARP、ヒトでは193.3 kDaのタンパク質、ならびにテロメラーゼ/ヴォールト会合タンパク質1; TEP1、ドブネズミでは292 kDaのタンパク質およびヒトでは290 kDaのタンパク質はそれぞれ、ヴォールト1つにつき約2〜16コピーが存在する。
【0068】
VPARP、mINTドメインおよびmINT融合タンパク質
ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)は、DNA損傷に応答してADPリボースポリマーの形成を触媒する核タンパク質であるポリADPリボシルポリメラーゼ; PARPの触媒ドメインと28%の同一性を共有する約350アミノ酸の領域を含む。VPARPはNAD依存的なポリADPリボシル化反応を触媒し、精製されたヴォールトは、MVP、およびVPARPそれ自体を標的とするポリADPリボシル化活性を有する。VPARPはmINTドメイン(主要ヴォールトタンパク質(MVP)相互作用ドメイン)を含む。mINTドメインは、主要ヴォールトタンパク質(MVP)とのVPARPの相互作用に関与する。
【0069】
本発明のヴォールト複合体はmINTドメインを含む。mINTドメインは、MVPなどのヴォールトタンパク質との関心対象のタンパク質、例えば、サイトカインの相互作用に関与する。一般に、mINTドメインは関心対象のタンパク質、例えば、サイトカインとの融合タンパク質として発現される。本発明のヴォールト複合体のmINTはVPARP配列に由来する。例示的なVPARP配列およびmINT配列は、表1に見出すことができる。当業者は、mINTが天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、mINTは、表1に開示されているVPARP配列および/またはmINT配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0070】
1つの態様において、mINTは、cDNA、SEQ ID NO: 15、GenBankアクセッション番号AF158255によりコードされるヒトVPARP、SEQ ID NO: 14、GenBankアクセッション番号AAD47250に由来する。いくつかの態様において、ヴォールト標的化ドメインは、ヒトVPARPタンパク質配列の残基1473-1724位 (SEQ ID NO: 69)に対応するINTドメインを含むか、またはそれからなる(全ヒトVPARPアミノ酸配列はSEQ ID NO: 14である)。他の態様において、ヴォールト標的化ドメインは、ヒトVPARPタンパク質配列の残基1563-1724位 (SEQ ID NO: 8)を含むmINTドメインを含むか、またはそれからなる。ある種の態様において、ヴォールト標的化ドメインは、mINTドメイン(SEQ ID NO: 6) (マウスmINT)を含むか、またはそれからなる。いくつかの態様において、ヴォールト標的化ドメインは、SEQ ID NO: 7 (ヒトmINT)を含むか、またはそれからなる。ある種の態様において、ヴォールト標的化ドメインは、SEQ ID NO: 6または7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0071】
代替的な態様において、mINTドメインはTEP1配列に由来する。当業者は、mINTがTEP1におけるヴォールト相互作用ドメインの天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。
【0072】
MVP
本発明のヴォールト複合体は、通常、MVPを含む。例示的なMVP配列は表1に見出すことができる。当業者は、MVPが天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、MVPは、表1に開示されているMVP配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0073】
1つの態様において、MVPは、cDNA、SEQ ID NO: 17、GenBankアクセッション番号X79882によりコードされるヒトMVP、SEQ ID NO: 16、GenBankアクセッション番号CAA56256である。別の態様において、MVPは、cDNA、SEQ ID NO: 19、GenBankアクセッション番号U09870によりコードされるドブネズミMVP、SEQ ID NO: 18、GenBankアクセッション番号AAC52161である。他の態様において、MVPは、本明細書において記述されるMVP配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0074】
1つの態様において、N末端にペプチドを付加して、1つまたは複数の重金属結合ドメインを作製することにより改変されたMVPを含むか、そのMVPから本質的になるか、またはそのMVPからなるヴォールト複合体が提供される。好ましい態様において、重金属結合ドメインは、カドミウム、銅、金および水銀からなる群より選択される重金属を結合する。好ましい態様において、N末端に付加されるペプチドは、例えば、SEQ ID NO:20などの高システインペプチド(CP)であり、MVPはヒトMVP、SEQ ID NO: 16であり、かつ改変はcDNA、SEQ ID NO:22によってコードされるCP-MVP、SEQ ID NO:21をもたらす。別の好ましい態様において、高システインペプチドはSEQ ID NO:20であり、MVPはドブネズミMVP、SEQ ID NO: 18であり、かつ改変はcDNA、SEQ ID NO:24によってコードされるCP-MVP、SEQ ID NO:23をもたらす。これらの態様は、CP-MVP、SEQ ID NO:21またはSEQ ID NO:23からなるヴォールト粒子が他のヴォールトタンパク質の存在なしで安定であるため、特に有用である。
【0075】
本明細書において記述されるヴォールト複合体のいずれも、本明細書において開示されるMVPまたは改変MVPを含むことができる。
【0076】
TEP1
いくつかの態様において、本発明のヴォールト粒子はTEP1タンパク質を含む。例示的なTEP1配列は表1に見出すことができる。当業者は、TEP1が天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、TEP1は、表1に開示されているTEP1配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。
【0077】
TEP1は、cDNA、SEQ ID NO: 26、GenBankアクセッション番号U86136によりコードされるヒトTEP1、SEQ ID NO: 25、GenBankアクセッション番号AAC51107でありうる。別の態様において、TEP1は、cDNA、SEQ ID NO: 28、GenBankアクセッション番号U89282によりコードされるドブネズミTEP1、SEQ ID NO: 27、GenBankアクセッション番号AAB51690である。本明細書において記述されるヴォールト複合体のいずれも、TEP1またはその改変形を含むことができる。
【0078】
vRNA
本発明のヴォールト複合体はvRNAを含むことができる。例示的なvRNA配列は表1に見出すことができる。当業者は、vRNAが天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、vRNAは、表1に開示されているvRNA配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0079】
1つの態様において、vRNAは、ヒトvRNA、SEQ ID NO:29、GenBankアクセッション番号AF045143、SEQ ID NO:30、GenBankアクセッション番号AF045144もしくはSEQ ID NO:31、GenBankアクセッション番号AF045145または前記の組み合わせでありうる。別の態様において、vRNAは、ドブネズミvRNA、SEQ ID NO:32、GenBankアクセッション番号Z1171である。
【0080】
本開示に関連して当業者により理解される通り、特定の種由来の配列が参照されていようとまたは実例にされていようと、MVP、VPARP、TEP1およびvRNAのいずれの実際の配列は本開示において開示される目的に適した任意の種由来であってよい。例えば、ケモカインまたはサイトカインをヒト臓器または組織に送達する場合、MVP、VPARP、TEP1およびvRNAに対するヒト配列を含むヒトヴォールトまたはヴォールト様粒子を用いることが好ましい。さらに、本開示に関連して当業者により理解される通り、MVP、VPARP、TEP1およびvRNAの配列には、本発明の目的にとって関係のない種内変異がいくらか存在する。それゆえ、MVP、VPARP、TEP1およびvRNAに対する言及は、そのような種内変異を含むように意図される。
【0081】
サイトカイン
本発明の組成物は、サイトカインを含むヴォールト複合体を含む。通例、ヴォールト複合体はサイトカイン融合タンパク質を含む。
【0082】
サイトカインは、免疫調節性および炎症性の過程に関与する分泌型細胞シグナル伝達タンパク質のファミリーであり、これは神経システムのグリア細胞によっておよび免疫システムの多数の細胞によって分泌される。サイトカインは、タンパク質、ペプチドまたは糖タンパク質に分類することができ、大きくて多様な調節因子ファミリーを包含する。サイトカインは細胞表面受容体に結合して細胞内シグナル伝達を誘発し、これによっていくつかの遺伝子およびその転写因子の上方制御もしくは下方制御、またはフィードバック阻害が起こりうる。
【0083】
ある種の態様において、本発明のサイトカインは、インターロイキン(IL)およびインターフェロン(IFN)などの免疫調節剤を含む。適したサイトカインは以下のタイプの1つまたは複数由来のタンパク質を含むことができる: 4つのα-ヘリックスバンドルファミリー(これはIL-2サブファミリー、IFNサブファミリーおよびIL-10サブファミリーを含む; IL-1ファミリー(これはIL-1およびIL-8を含む)、ならびにIL-17ファミリー。サイトカインは、細胞免疫反応を増強する1型サイトカイン(例えば、IFN-γ、TGF-βなど)、または抗体反応に有利に働く2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-10、IL-13など)に分類されるものを含むこともできる。
【0084】
1つの態様において、サイトカインはケモカインである。ケモカインは、最も大きなサイトカインファミリーであり、ジスルフィド結合を形成する4つの不変のシステイン残基によって定義される。ケモカインは特異的なGタンパク質共役受容体を活性化することによって機能し、これによって適切な組織または組織内区画への炎症性細胞および非炎症性細胞の遊走が引き起こされる。ケモカインの役割は化学誘引物質として作用し、細胞の遊走を導くこと、およびケモカイン産生の供給源での細胞の蓄積を促進することである。
【0085】
いくつかの態様において、本発明のサイトカインは、構成的に産生および分泌される恒常性ケモカインを含む。恒常性ケモカインは、リンパ組織へのリンパ球の輸送を指令し、免疫学的監視に関わっており、リンパシステムの中に抗原を有するT細胞またはB細胞を局在化させるように機能する。他の態様において、本発明のケモカインは、炎症および感染の部位への樹状細胞の動員および局在化を促進する炎症性ケモカインを含む。いくつかのケモカインが、CCR1、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7およびCXCR2などのケモカイン受容体を発現する単球および未成熟樹状細胞の遊走に関与している。これらの樹状細胞上では、ケモカイン受容体の発現が調節される。成熟シグナルへの曝露によって、樹状細胞はケモカイン受容体の切り換えを起こし、炎症性ケモカイン受容体の下方制御と、それに続いてCCR7の誘導を起こす。これによって未成熟樹状細胞は組織を離れ、リンパ器官中に局在化することが可能となり(CCR7アゴニストによって)、そこで抗原提示が行われる。
【0086】
ある種の態様において、サイトカインは、互いと隣接する最初の2つのシステインを持つβ-ケモカインまたはCCを含む。他の態様において、ケモカインは、最初の2つのシステインの間に介在アミノ酸を有するケモカインまたはCXCを含む。他の態様において、ケモカインは、分類上、単一のタンパク質を保有し、最初の2つのシステイン間の3つの介在残基によって定義されるγ-ケモカインまたはCX3Cを含む。4つのシステインのパラダイムに対する2つの例外の1つは、ポリペプチドが4つのシステインのうち2つしか持たない、δ-ケモカインまたはCである。
【0087】
いくつかの態様において、サイトカインはCCケモカインを含む。CCケモカインは、アミノ末端近傍の2つの隣接システインにより特徴付けられ、β-ケモカインまたは17qケモカインとも呼ばれる。CCサブファミリーは哺乳類ではサブファミリーのうちの少なくとも27種の異なる成員を含む。これらは以下のCCケモカインを含むが、それらに限定されることはない: CCL-1、CCL-2、CCL-3、CCL-4、CCL-5、CCL-7、CCL-8、CCL-9/CCL-10、CCL-11、CCL-12、CCL-13、CCL-14、CCL-15、CCL-16、CCL-17、CCL-18、CCL-19、CCL-20、CCL-21、CCL-22、CCL-23、CCL-24、CCL-25、CCL-26、CCL-27およびCCL-28。このサブファミリーのケモカインは、通常、4つのシステインを含む(C4-CCケモカイン)が、少数のCCケモカインでは6つのシステインを保有する(C6-CCケモカイン)。C6-CCケモカインはCCL1、CCL15、CCL21、CCL23およびCCL28を含む。CCケモカインは、造血を阻害し、単球ならびに他の細胞種、例えばナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞などの遊走を誘導する。CCケモカインはインビトロで胸腺細胞および活性化T細胞に対して走化性であるが、B細胞、マクロファージまたは好中球に対して走化性ではない。CCケモカインはまた、二次リンパ器官へのリンパ球のホーミングの媒介に関与しうる。
【0088】
他の態様において、サイトカインはCXCケモカインを含む。CXCケモカインはアミノ酸「X」によって隔てられた2つのN末端システインを有する。哺乳類では17種の異なるCXCケモカインが存在しており、2つの部類、つまりCXCモチーフの最初のシステインの直前にグルタミン酸-ロイシン-アルギニン(または略してELR)の特異的アミノ酸配列(またはモチーフ)を有するもの(ELR陽性)、およびELRモチーフのないもの(ELR陰性)に分けられている。CXCL13などの、ELRモチーフを欠く他のCXCケモカインは、リンパ球に対して化学走化性を示す傾向がある。CXCケモカインはCXCケモカイン受容体に結合するが、そのうちの7つが今日までに発見されており、CXCR1〜7と名付けられている。
【0089】
別の態様において、サイトカインはCケモカイン(γケモカインとも呼ばれる)を含むが、これは2つのシステイン(N末端のシステインが1つおよび下流のシステインが1つ)しか持たない。この部分群には2つのケモカイン(XCL1 (リンホタクチン-α)およびXCL2 (リンホタクチン-β))が含まれる。これらのケモカインはT細胞前駆体を胸腺に引き付ける。
【0090】
さらに別の態様において、サイトカインはCX3Cケモカイン(またはd-ケモカイン)を含む。CX3Cケモカインは2つのシステインの間に3つのアミノ酸を有する。今日までに発見されている唯一のCX3Cケモカインはフラクタルカイン(またはCX3CL1)と呼ばれる。
【0091】
いくつかの態様において、サイトカインはCCL-21タンパク質を含む。CCL-21はケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21を表しており、CCケモカインファミリーの一員である。CCL-21はScya21遺伝子によりコードされ、二次リンパ器官ケモカイン(SLC)、6Ckine、エキソドス(Exodus)-2、Ckβ9およびTCA-4とも呼ばれる。CCL-21はCCR7受容体、つまり細胞表面ケモカイン受容体に結合する。ヒトCCL-21遺伝子は第9染色体のp腕上に見出されており、Genbankアクセッション番号NP_002980を有する。
【0092】
例示的なサイトカイン配列は表1に見出すことができる。当業者は、サイトカインが天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、サイトカインは、表1に開示されているサイトカイン配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0093】
いくつかの態様において、サイトカインは、SEQ ID NO: 1 (マウスCCL-21タンパク質配列)を含むか、またはそれからなる。他の態様において、サイトカインはSEQ ID NO: 2 (ヒトCCL-21タンパク質配列)を含むか、またはそれからなる。他の態様において、サイトカインはSEQ ID NO: 1または2に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。別の態様において、本発明のサイトカインは、SEQ ID NO:3 (停止コドンの3アミノ酸のないマウスCCL-21 DNA配列)またはSEQ ID NO:4 (全長マウスCCL-21 DNA配列)を含む核酸によってコードされる。さらに別の態様において、本発明のサイトカインは、SEQ ID NO: 5 (ヒトCCL-21 DNA配列)を含む核酸によってコードされる。ある種の態様において、本発明のサイトカインは、天然DNA配列の全体もしくは該DNA配列の一部またはその断片を含む。いくつかの態様において、本発明のサイトカインは、SEQ ID NO:3、4または5に対して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を含む核酸によってコードされる。
【0094】
さらに別の態様において、サイトカインは、以下に示される表1中のサイトカインまたはケモカインの配列のいずれかの1つを含む。本発明の組成物および方法で用いるのに適したヒト由来サイトカインは、インターロイキン-2 (IL-2) (DNA配列はSEQ ID NO:33であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:34である)、インターロイキン-7 (IL-7) (DNA配列はSEQ ID NO:35であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:36である)、インターロイキン15 (IL-15) (DNA配列はSEQ ID NO:37であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:38である)、インターロイキン12B (IL-12B) (DNA配列はSEQ ID NO:39であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:40である)、インターロイキン12A (IL-12A) (DNA配列はSEQ ID NO:41であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:42である)、コロニー刺激因子2 (DNA配列はSEQ ID NO:43であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:44である)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド9 (CXCL9) (DNA配列はSEQ ID NO:45であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:46である)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10 (CXCL10) (DNA配列はSEQ ID NO:47であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:48である)、インターフェロンα-d (IFN-α) (DNA配列はSEQ ID NO:49であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:50である)、インターフェロン-γ IEF SSP 5111 (DNA配列はSEQ ID NO:51であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:52である)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド19 (CCL-19) (DNA配列はSEQ ID NO:53であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:54である)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21 (CCL-21) (DNA配列はSEQ ID NO:55であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:56である)、腫瘍壊死因子(TNF) (DNA配列はSEQ ID NO:57であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:58である)、およびインターロイキン27 (IL-27) (DNA配列はSEQ ID NO:59であり、タンパク質配列はSEQ ID NO:60である)を含むが、これらに限定されることはない。
【0095】
本開示に関連して当業者により理解される通り、特定の種由来の配列が参照されていようとまたは実例にされていようと、サイトカインのいずれの実際の配列は本開示において開示される目的に適した任意の種由来であってよい。例えば、ケモカインまたはサイトカインをヒト臓器または組織に送達する場合、サイトカインに対するヒト配列を含むヒトヴォールトまたはヴォールト様粒子を用いることが好ましい。さらに、本開示に関連して当業者により理解される通り、サイトカインの配列には、本発明の目的にとって関係のない種内変異がいくらか存在する。それゆえ、サイトカインに対する言及は、そのような種内変異を含むように意図される。
【0096】
融合タンパク質
通例、本発明のヴォールト複合体は、融合タンパク質、例えば、サイトカイン融合タンパク質を含む。サイトカイン融合タンパク質は、ヴォールト標的化ドメイン、例えば、mINTにインフレームで融合されたケモカインまたはサイトカインをコードするヌクレオチドから発現される組換えタンパク質である。いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質は、ケモカインタンパク質配列に融合されたmINTドメインを含む。他の態様において、サイトカイン融合タンパク質は、CCL-21タンパク質に融合されたmINTドメインを含む。別の態様において、サイトカインはMVPタンパク質のN末端に融合される。1つの態様において、サイトカインはMVPタンパク質のC末端に融合される。
【0097】
例示的なサイトカイン融合配列は表1に見出すことができる。当業者は、サイトカイン融合配列が天然配列の全体もしくは該配列の一部またはその断片を持ちうることを理解する。他の態様において、サイトカイン融合配列は、表1に開示されているサイトカイン融合配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0098】
ある種の態様において、サイトカイン融合タンパク質はSEQ ID NO: 10 (マウスCCL21-mINT融合DNA配列)の核酸配列によってコードされる。他の態様において、サイトカイン融合タンパク質はSEQ ID NO: 11 (ヒトCCL21-mINT融合DNA配列)の核酸配列によってコードされる。いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12 (マウスCCL-21-mINT融合タンパク質配列)を含むか、またはそれからなる。いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質は、SEQ ID NO: 13 (ヒトCCL-21-mINT融合タンパク質配列)を含むか、またはそれからなる。
【0099】
1つの態様において、サイトカイン融合タンパク質は天然サイトカインタンパク質配列の全体、該サイトカインタンパク質配列の一部またはその断片を含む。他の態様において、サイトカイン融合タンパク質はSEQ ID NO: 12または13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。別の態様において、サイトカイン融合組換えDNA配列は天然サイトカインDNA配列の全体、該サイトカインDNA配列の一部またはその断片を含む。
【0100】
本明細書において記述されるサイトカインのいずれも、本明細書において開示されるmINTドメインのいずれかとの融合タンパク質として発現させることができる。
【0101】
蛍光タンパク質
ある種の態様において、本発明のヴォールト複合体は蛍光タンパク質を含む。いくつかの態様において、サイトカイン融合タンパク質は蛍光タンパク質を含む。蛍光タンパク質は、他のタンパク質とともに発現されるように遺伝子操作することができ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(mチェリー)、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、アズライト(Azurite)、mカラマ1)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、セルリアン(Cerulean)、CyPet)および黄色蛍光タンパク質誘導体(YFP、シトリン(Citrine)、ビーナス(Venus)、YPet)を含むが、これらに限定されることはない。1つの態様において、サイトカイン融合タンパク質はmチェリー蛍光タンパク質またはmチェリー蛍光タンパク質の一部を含む。
【0102】
単離された核酸およびベクター
本発明はまた、サイトカインコード配列とヴォールト標的化ドメインコード配列とを含むサイトカイン融合タンパク質をコードする単離された核酸も含む。1つの態様において、単離された核酸は、CCL-21コード配列とmINTコード配列とを含むケモカイン融合タンパク質をコードする。別の態様において、ケモカインコード配列はSEQ ID NO:5 (ヒト)を含むか、またはそれからなり、mINTコード配列はSEQ ID NO: 7 (ヒト)からなる。別の態様において、ケモカインコード配列はSEQ ID NO:3 (マウス)を含むか、またはそれからなり、mINTコード配列はSEQ ID NO: 6 (マウス)からなる。1つの態様において、単離された核酸は、全長サイトカインタンパク質およびSEQ ID NO: 6または7 (ヒトおよびマウスmINT)を含むか、またはそれからなるmINTドメインをコードするcDNAプラスミド構築体である。表1には、いくつかの例示的なケモカインまたはサイトカイン融合タンパク質をコードする核酸配列が載せてある。
【0103】
本発明のサイトカイン融合タンパク質をコードする核酸分子は、組換えウイルスベクターなどのベクターから発現させることができる。本発明の組換えウイルスベクターは、本発明のサイトカイン融合タンパク質をコードする配列およびサイトカイン融合配列を発現させるのに適した任意のプロモーターを含む。適したプロモーターは、例えば、U6またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターを含む。他の適したプロモーターの選択は当技術分野における技術の範囲内である。本発明の組換えウイルスベクターは、特定の組織におけるまたは特定の細胞内環境におけるサイトカイン融合組換え遺伝子の発現のための誘導性または調節性プロモーターを含むこともできる。1つの態様において、pFastBacプラスミドおよびBac-to-Bacプロトコール(Invitrogen, Gaithersburg, MD, カタログ番号13459-016または10608-016)から組換えバキュロウイルスおよびプロモーターを用いることができる。
【0104】
適した発現ベクターは一般に、DNAプラスミドまたはウイルスベクターを含む。真核細胞に互換性がある発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞に互換性があるものを用いて、本明細書において記述されるiRNAの発現用の組換え構築体を産生することができる。真核細胞発現ベクターは、当技術分野において周知であり、いくつかの商業的供給源から利用可能である。典型的には、所望の核酸セグメントの挿入のために簡便な制限部位を含むそのようなベクターが提供される。発現ベクターの送達は、静脈内投与もしくは筋肉内投与によって、患者から外植された後に、患者へ再導入される標的細胞への投与によって、または所望の標的細胞への導入を可能にするその他任意の手段によってなど、全身性であってよい。
【0105】
サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸配列を発現するプラスミドを、陽イオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクトアミン)または非陽イオン性脂質に基づく担体(例えば、Transit-TKO(商標))との複合体として標的細胞へトランスフェクトすることができる。さまざまな公知の方法を用いて宿主細胞へのベクターの導入の成功をモニタリングすることができる。例えば、一過性のトランスフェクションをレポーター、例えば蛍光マーカー、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)でシグナル化することができる。トランスフェクト細胞にハイグロマイシンB耐性などの、特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬物)に対する耐性を与えるマーカーを用いて、エクスビボでの細胞の安定的なトランスフェクションを確実にすることができる。
【0106】
本明細書において記述される方法および組成物とともに用いることができるウイルスベクターシステムは、(a) アデノウイルスベクター; (b) レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどを含むが、これらに限定されない、レトロウイルスベクター; (c) アデノ随伴ウイルスベクター; (d) 単純ヘルペスウイルスベクター; (e) SV 40ベクター; (f) ポリオーマウイルスベクター; (g) パピローマウイルスベクター; (h) ピコルナウイルスベクター; (i) オルソポックスなどのポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスベクターまたはアビポックス、例えばカナリア痘または鶏痘; および(j) ヘルパー依存型アデノウイルスまたはガットレス(gutless)アデノウイルスを含むが、これらに限定されることはない。複製欠損ウイルスもまた有利でありうる。異なるベクターが細胞のゲノムへ組み入れられるようになるかまたはそうならないと考えられる。構築体は必要に応じて、トランスフェクションのためのウイルス配列を含むことができる。あるいは、構築体は、エピソーム複製能力があるベクター、例えば、EPVベクターおよびEBVベクターへ組み入れられてもよい。サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸の組換え発現用の構築体は、通例、標的細胞におけるサイトカイン融合核酸の発現を確実にするために、調節要素、例えば、プロモーター、エンハンサーなどを必要とする。ベクターおよび構築体について考慮すべき他の局面を以下でさらに記述する。
【0107】
サイトカイン融合核酸の送達に有用なベクターは、所望の標的細胞または標的組織におけるサイトカイン融合核酸の発現に十分な調節要素(プロモーター、エンハンサーなど)を含むことができる。調節要素は、構成性または調節性/誘導性の発現のいずれかを与えるように選択することができる。当業者は導入遺伝子の使用目的に基づいて適切な調節/プロモーター配列を選択することができよう。
【0108】
特定の態様において、組換え遺伝子を含むウイルスベクターを用いることができる。例えば、レトロウイルスベクターを用いることができる(Miller et al., Meth. Enzymol. 217:581-599 (1993)を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの適正なパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組み込みに必要な成分を含む。サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸配列を、患者への核酸の送達を容易にする1つまたは複数のベクターにクローニングする。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、例えば、Boesen et al., Biotherapy 6:291-302 (1994)の中で見出すことができるが、これには、幹細胞を化学療法に対してさらに耐性とするために造血幹細胞へmdrl遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用が記述されている。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例示している他の参考文献は、Clowes et al., J. Clin. Invest. 93:644-651 (1994); Kiem et al., Blood 83: 1467-1473 (1994); Salmons and Gunzberg, Human Gene Therapy 4:129-141 (1993); およびGrossman and Wilson, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3: 110-114 (1993)である。使用を企図するレンチウイルスベクターは、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,143,520号; 同第5,665,557号; および同第5,981,276号に記述されているHIVに基づくベクターを含む。
【0109】
細胞へのサイトカイン融合タンパク質をコードする単離された核酸の送達で用いるために、アデノウイルスも企図される。気道上皮へ遺伝子を送達するために、または肝臓、中枢神経システム、内皮細胞および筋肉への送達などのアデノウイルスに基づく送達システムで用いるために、アデノウイルスは特に魅力的な媒体である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できるという利点を有する。Kozarsky and Wilson, Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503 (1993)には、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の概説が提示されている。Bout et al., Human Gene Therapy 5:3-10 (1994)は、アカゲザルの気道上皮へ遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用について実証している。遺伝子治療でのアデノウイルスの使用に関する他の例は、Rosenfeld et al., Science 252:431-434 (1991); Rosenfeld et al., Cell 68: 143-155 (1992); Mastrangeli et al., J. Clin. Invest. 91:225-234 (1993); PCT公報WO94/12649; およびWang, et al., Gene Therapy 2:775-783 (1995)の中で見出すことができる。本発明の特徴である核酸分子を発現するのに適したAVベクター、組換えAVベクターを構築するための方法、およびベクターを標的細胞へ送達するための方法は、Xia H et al. (2002), Nat. Biotech. 20: 1006-1010に記述されている。
【0110】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用も企図される(Walsh et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300 (1993); 米国特許第5,436,146号)。本発明の特徴であるdsRNAを発現するのに適したAAVベクター、組換えAVベクターを構築するための方法、およびベクターを標的細胞へ送達するための方法は、Samulski R et al. (1987), J. Virol. 61: 3096-3101; Fisher K J et al. (1996), J. Virol, 70: 520-532; Samulski R et al. (1989), J. Virol. 63: 3822-3826; 米国特許第5,252,479号; 米国特許第5,139,941号; 国際特許出願番号WO 94/13788; および国際特許出願番号WO 93/24641に記述されており、これらの開示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0111】
別の好ましいウイルスベクターは、ワクシニアウイルス、例えば改変ウイルスアンカラ(MVA)またはNYVACなどの弱毒化ワクシニアなどのポックスウイルス、鶏痘またはカナリア痘などのアビポックスである。
【0112】
ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤の中にベクターを含むことができるか、または遺伝子送達媒体が埋め込まれた徐放マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞からインタクトな状態で産生できる場合、例えば、レトロウイルスベクターの場合、薬学的調製物は、遺伝子送達システムをもたらす1つまたは複数の細胞を含むことができる。
【0113】
本発明において使用できるさらなる発現ベクターの例としては、pFASTBAC発現ベクターおよび大腸菌(E. coli) pET28a発現ベクターが挙げられる。
【0114】
一般に、組換えサイトカイン融合タンパク質に対する遺伝子を発現できる組換えベクターは、標的細胞へ送達され、かつ標的細胞中に存続する。ベクターまたはプラスミドは、リポフェクトアミンなどのトランスフェクション剤により標的細胞へトランスフェクトすることができる。本発明のサイトカイン融合タンパク質をコードする核酸配列を発現するのに有用な細胞の例としては、Sf9細胞または昆虫の幼虫細胞が挙げられる。MVPタンパク質のみの発現に基づく組換えヴォールトを昆虫細胞中で産生させることができる。Stephen, A.G. et al. (2001). J. Biol. Chem. 276:23217:23220; Poderycki, M.J., et al. (2006). Biochemistry (Mosc). 45: 12184-12193。
【0115】
本発明の薬学的組成物
1つの態様において、本発明は、本発明のヴォールト複合体を含む薬学的組成物を用いた方法を提供する。これらの組成物は、ヴォールト複合体の1つまたは複数に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は無毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきではない。担体またはその他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば経口経路、静脈内経路、皮膚経路または皮下経路、鼻経路、筋肉内経路、腹腔内経路に依ることができる。
【0116】
ある種の態様において、腫瘍内に注射される薬学的組成物は、等張なまたはその他適した担体液体または溶液を含む。
【0117】
静脈内注射、皮膚注射もしくは皮下注射、または苦痛部位での注射の場合、活性成分は、発熱性物質を含まず、かつ適したpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であるであろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張媒体を用いて適した溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤を含むことができる。
【0118】
他の態様において、経口投与のための薬学的組成物は錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であってよい。錠剤はゼラチンなどの固体担体または補助剤を含むことができる。液体の薬学的組成物は一般に、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水溶液、デキストロースもしくは他のサッカライド溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含むことができる。
【0119】
いくつかの態様において、薬学的組成物の投与は、例えば、粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは注入によって、例えば噴霧器によってなど、局所投与、肺投与であってよく、気管内、鼻腔内、表皮性および経皮性、経口または非経口の投与であってよい。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内の注射もしくは注入; または頭蓋内投与、例えば、実質内投与、くも膜下腔内投与もしくは脳室内投与を含む。非経口投与のための製剤は、緩衝液、希釈剤および他の適した添加剤も含有してよい滅菌水溶液を含んでもよい。静脈内使用の場合、溶質の総濃度は、調製物を等張性とするように制御されるべきである。
【0120】
使用の方法
本明細書において記述されるヴォールト複合体を用いて、関心対象のタンパク質、例えば、サイトカインを細胞、組織、細胞外の環境、腫瘍、生物または対象へ送達することができる。1つの態様において、ヴォールト複合体は本明細書において記述されるサイトカイン、例えば、CCL-21を含み、ヴォールト複合体は細胞、組織または腫瘍に導入される。いくつかの態様において、ヴォールト複合体は細胞の周囲の細胞外環境へ導入される。他の態様において、ヴォールト複合体は生物または対象へ導入される。本発明のヴォールト複合体の送達は、ヴォールト複合体を特定の組織、特定の細胞、環境媒体に、または生物に投与する段階を含むことができる。いくつかの態様において、ヴォールト複合体の送達は細胞、組織または生物内のセンサーによって検出することができる。例えば、検出は蛍光定量法または分光光度法などの、標準的な技術を用いて行うことができる。本開示に関連して当業者により理解される通り、この方法を用いて、例えば、センサーをpH依存的な蛍光センサーとしてある細胞内のpHを判定することができる。
【0121】
本発明の方法は、本明細書において記述されるヴォールト複合体のいずれかと細胞を接触させることにより細胞に対する免疫反応を刺激する段階を含む。本発明の細胞は腫瘍細胞を含む、任意の真核細胞、哺乳類細胞、またはヒト細胞を含むことができるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、ヴォールト複合体と細胞を接触させる段階は、該細胞へのT細胞および/または樹状細胞の遊走を誘導する。
【0122】
本発明の方法は対象へのヴォールト複合体の送達を含む。ヴォールト複合体の、それを必要としている対象への送達は、いくつかの異なる方法で達成することができる。インビボでの送達は、対象にヴォールト複合体を投与することによって直接的に行うことができる。あるいは、送達は、ヴォールト複合体またはヴォールト複合体の成分をコードし、かつその発現を指令する1つまたは複数のベクターを投与することによって間接的に行うこともできる。1つの態様において、ヴォールト複合体は、マウスまたはラットなどの哺乳類に投与される。別の態様において、ヴォールト複合体はヒトに投与される。
【0123】
1つの態様において、本発明の送達の方法は、血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を生み出す、腫瘍へのヴォールト複合体の全身注射を含む。Maeda et al., J. of Controlled Release 2000, 65: 271-284; Griesh, K., J. of Drug Targeting 2007, 15(7-8): 457-464; Allen et al., Science 2004, 303: 1818-1822を参照されたい。固形腫瘍は広範な血管形成、ゆえに、血管過形成、欠陥脈管構造、リンパ排液/回収システムの障害およびいくつかの透過性メディエータの産生の大幅増加を有する。固形腫瘍の生物学に起因して、静脈内に投与されヴォールト複合体を含む高分子の抗がん薬および抗がん剤は、固形腫瘍における効率的なリンパ排液の欠如によって腫瘍内に、蓄積することがありかつ保持される。本発明は、肺がんにおいて見られる固形腫瘍などの固形腫瘍への本明細書において記述されるヴォールト複合体の全身送達または標的化送達の方法を含む。
【0124】
本発明の他の方法は、対象における免疫反応を刺激する段階を含む。該方法は、ヴォールト複合体を対象に投与する段階を含む。投与する段階は、本明細書において詳述する、対象におけるヴォールト複合体の腫瘍内注射を含むことができる。
【0125】
処置の方法
本発明は、対象(例えば、患者)に本発明のヴォールト複合体を投与することにより、がんなどの疾患を処置または管理する方法を特徴とする。いくつかの態様において、本発明のヴォールト複合体は肺がんを処置または管理するために用いることができる。別の態様において、本発明の方法は、治療的に有効な量の、本明細書において記述されるヴォールト複合体を対象に投与する段階を含む、がんの処置または管理を必要としている対象においてがんを処置または管理する段階を含む。1つの態様において、該方法は、肺がんを有するとまたは肺がんを発症するリスクがあると診断されたヒトを特定することによりヒトを処置する段階、および治療的または予防的に有効な量のCCL-21ヴォールト複合体をヒトに投与する段階を伴う。別の態様において、該方法は腫瘍内注射により治療的または予防的に有効な量のCCL-21ヴォールト複合体をヒトに投与する段階を含む。
【0126】
本発明のヴォールト複合体を用いて、任意の固形腫瘍、例えば、肺がん、乳がん、頭頸部がん、前立腺がんなどを処置することができる。マウス遺伝学の進歩によって肺がんの処置などの、さまざまなヒト疾患の研究用マウスモデルのいくつかが作出されている。そのようなモデルはヴォールト複合体のインビボでの試験のために、および治療的に有効な用量を判定するために用いられる。適したマウスモデルは、例えば、CCL-21ヴォールト複合体の腫瘍内注射を施される腫瘍担持マウスである。
【0127】
細胞培養アッセイ法および動物実験から得られたデータを、ヒトで用いるための投与量の範囲を策定する際に用いることができる。本発明の特徴である方法において用いられる任意の化合物について、治療的に有効な用量は細胞培養アッセイ法から最初に推定することができる。用量を動物モデルにおいて策定し、ヴォールト複合体の循環血漿濃度範囲を得てもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をさらに的確に判定することができる。ヴォールト複合体を投与されたマウスの腫瘍細胞試料の分析によって、治療的に有効な用量を示すこともできる。
【0128】
対象に与えられる本発明による薬学的組成物において、投与は、「治療的に有効な量」または「予防的に有効な量」(予防を治療と考えることもできるが、場合によって)が好ましく、これは個体において有益性を示すのに十分である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間的経過は、処置されているタンパク質凝集疾患の性質および重症度に依るであろう。処置の処方、例えば、投与量などに関する決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達の部位、投与の方法および施術師に公知のその他の要因が考慮される。上記の技術およびプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed), 1980の中で見出すことができる。組成物は単独でまたは他の処置との組み合わせで、処置される状態に依って同時にまたは連続的に投与することができる。
【0129】
ある種の態様において、ヴォールト複合体の投与量は体重または環境媒体1キログラムあたり約0.1〜10,000マイクログラムである。別の態様において、ヴォールト複合体の投与量は体重または環境媒体1キログラムあたり約1〜1,000マイクログラムである。別の態様において、ヴォールト複合体の投与量は体重または環境媒体1キログラムあたり約10〜1,000マイクログラムである。静脈内注射および腹腔内注射の場合、投与量は約0.1〜10 mlの最終体積で投与されることが好ましい。吸入の場合、投与量は約0.01〜1 mlの最終体積で投与されることが好ましい。本開示に関連して当業者により理解される通り、用量は、本開示において開示される目的を達成するために同じパラメータを用い必要に応じて1回または複数回繰り返されてもよい。
【0130】
例えば、薬学的組成物は対象において腫瘍ごとに1回投与されても、またはヴォールト複合体は適切な間隔で2回、3回もしくはそれ以上の副用量もしくは注射として投与されてもよい。その場合、ヴォールト複合体は必要な全投与量を達成するために副用量で注射されてもよい。
【0131】
本発明の特徴であるヴォールト複合体は、肺がんを含むがんの処置において有効な他の公知の剤と組み合わせて投与することができる。投与にあたる医師は、当技術分野において公知のまたは本明細書において記述の有効性に関する標準的手段を用いて観察された結果に基づきヴォールト複合体の投与または注射の量およびタイミングを調整することができる。当業者はまた、疾患または障害の重症度、前処置、対象の全般的健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、これらに限定されない、ある種の要因は対象を効果的に処置するために必要な投与量およびタイミングに影響を与えることがあることを理解するであろう。
【0132】
ヴォールト複合体を調製する方法
本発明の方法は、本明細書において記述されるヴォールト複合体を調製する段階を含む。
【0133】
1つの態様において、ヴォールト複合体は、例えば組織ホモジナイゼーション、分画遠心分離、不連続ショ糖勾配分画および塩化セシウム勾配分画などの当業者に公知の方法を用いて、哺乳類肝臓または脾臓組織などの天然供給源から得られるかまたは精製される。別の態様において、ヴォールト複合体は組換え技術を用いて作製される。組換えヴォールト複合体のための方法に関する詳細は、以下に記述されている。
【0134】
いくつかの態様において、関心対象の標的、すなわち、関心対象のタンパク質は、ヴォールト複合体中でのパッケージングのために選択される。関心対象の標的は、酵素、薬剤、プラスミド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、センサーおよび前記の組み合わせからなる群より選択することができる。好ましい態様において、関心対象の標的は、組換えタンパク質、例えば、サイトカイン融合タンパク質、例えばCCL-21融合タンパク質である。
【0135】
好ましくは、関心対象の標的が組換えタンパク質である場合には、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を用いてバクミドDNAを生成し、バクミドDNAを用いて、該配列を含むバキュロウイルスを生成する。次いで、本開示に関連して当業者により理解される通り、標準的な技術にしたがって、バキュロウイルスタンパク質発現システムなどのインサイチューアッセンブリシステムを用いたタンパク質産生のために、バキュロウイルスを用いて昆虫細胞に感染させる。有利なことには、バキュロウイルスタンパク質発現システムを用いてヴォールト複合体のミリグラム量を産生させることができ、このシステムをスケールアップして、本発明によるヴォールト複合体のグラム量の産生を可能にすることができる。
【0136】
別の態様において、関心対象の標的は、提供されるヴォールトへ組み入れられる。好ましい態様において、本開示に関連して当業者により理解される通り、組み入れは、適切な温度においてかつ適切な時間、ヴォールトを関心対象の標的とともにインキュベートすることによって達成される。次いで、本開示に関連して当業者により理解される通り、例えばショ糖勾配分画などで、関心対象のタンパク質を含有するヴォールトを精製する。
【0137】
他の態様において、関心対象の標的を含むヴォールトは、生物に、特定の組織に、特定の細胞に、または環境媒体に投与される。本開示に関連して当業者により理解される通り、投与は任意の適した経路を用いて達成される。
【0138】
1つの態様において、本方法は、本発明の組成物を、(a) Sf9細胞中で生成されたmINTに融合されたケモカインを含む融合タンパク質を、Sf9細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成すること; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって該組成物を生成することにより調製する段階を含む。Sf9細胞にCCL-21-mチェリー-mlNTまたはCP-MVPをコードする組換えバキュロウイルスを感染させる。Sf-9細胞中で生成された組換えCCL-21-mINTおよびラットMVPを含有する溶解物を混合して、CCL-21融合タンパク質を含む高分子ヴォールト複合体の形成を可能にすることができる。
【0139】
別の態様において、組成物は、(a) 昆虫の幼虫細胞中で生成されたmINTに融合されたケモカインを含む融合タンパク質を、昆虫の幼虫細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成すること; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートすることにより調製される。
【0140】
ヴォールト複合体を調製する方法に関する詳細は、実施例においてさらに記述されている。
【実施例】
【0141】
以下は、本発明を実施するための具体的な態様の実施例である。実施例は、説明のためのみに提供されるのであって、決して本発明の範囲を限定することを意図されるものではない。用いた数字(例えば、量、温度など)に関しては正確さを確保するよう努めたが、ある程度の実験誤差および偏差は、当然、考慮されるべきである。
【0142】
本発明の実施では、他に指定のない限り、当技術分野の技術の範囲内である、タンパク質化学、生化学の従来の方法、組換えDNA技術および薬理学を用いる。そのような技術は文献の中で十分に説明されている。例えばT.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0143】
方法
ヴォールト複合体のクローニング、発現および精製
CCL-21をコードするcDNAをmINTまたはmチェリー-mINTのいずれかにインフレームで融合した[21]。以下のプライマー:

を用いてネズミCCL-21をPCR増幅した。pFastBac中でmCCL-21-mチェリー-mINTを形成させるために、CCL21 PCR産物を、Qiagenカラムで精製し、BamH1およびBgl Iで消化し、ゲル精製し、かつBamH1ホスファターゼ処理したmチェリー-mINT pFastBacに連結した。ヒトCCL21を以下のプライマー:

でPCR増幅して、hCCL-21-mINTを形成させた。
【0144】
Bac-to-Bacプロトコール(Invitrogen, Gaithersburg, MD)を用いて組換えバキュロウイルスを生成した。65時間0.01の感染多重度(MOI)において、CCL-21-mチェリー-mINTまたはCP-MVPをコードする組換えバキュロウイルスをSf9細胞に感染させた。感染細胞をペレット化し、氷上、1% Triton X-100、1 mMジチオスレイトール、0.5 mM PMSFおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma P8849)を含む緩衝液A [50 mM Tris-HCl (pH 7.4)、75 mM NaClおよび0.5 mM MgCl2]中で溶解させた。CP-MVPヴォールトを含有する溶解物を、mCCL-21-mチェリー-mINT、hCCL-21-mINTを含有する溶解物と混合し、氷上で30分間インキュベートして、INT融合タンパク質をヴォールトの内部にパッケージングさせた。既述[7]の通りに組換えヴォールト複合体を精製した。精製された組換えヴォールト複合体を滅菌リン酸緩衝生理食塩水100〜200 μl中に再懸濁した。BCAアッセイ法(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いてタンパク質濃度を決定し、ネガティブ染色電子顕微鏡観察およびSDS-PAGE、その後、クマシー染色およびウエスタンブロット分析を行って試料の完全性を分析した。
【0145】
抗体
ウエスタンブロット分析のための一次抗体は、ウサギ抗MVPポリクローナル抗体(1/1000希釈)またはウサギ抗VPARPポリクローナル抗体(1/500希釈、終夜)および二次ヤギ抗ウサギHRP結合抗体(2000分の1希釈) (Amersham)であった。抗CCL-21抗体はR&D Systems, (Minneapolis, MN)から購入した。CD3の免疫染色のための一次抗体はDAKOから購入した。CD3 (145-2C11)、CD4 (RM4-5)、CD8a (53-6.7)に対するフルオレセインイソチオシアネート結合、フィコエリトリン結合、アロフィコシアニン結合、PerCP結合またはPerCP-Cy7結合抗マウスmAbおよびサブクラス対照抗体は、BD Biosciences (San Diego, CA)から購入した。細胞表面CD4 (GK1.5)、CD25 (PC61)を有するTreg、核内Foxp3 (FJK-16s)、IL-10 (JES5-16E3)およびIFNγ (XMG1.2)を検出するための抗マウスmAbは、eBioScience (San Diego, CA)から購入した。DEC205 (205yekta)、CCR7 (4B12)およびEpCam (G8.8)に対する抗体はeBioScienceからのものであった。マウスCD11b (M1/70)、Gr1 (RB6-8C5)に対する抗体はBioLegend (San Diego)から購入した。抗マウスCXCR3 mAb (220803)はR&D Systems (Minneapolis, MN)から購入した。オボアルブミンタンパク質およびBradfordタンパク質定量色素はSigma (St. Louis, MO)から入手した。組織消化用緩衝液はRPMI中[0.2 mg/mlのコラゲナーゼA (Boehringer Mannheim/Roche, Indianapolis, IN)、DNase 25 U/ml (Sigma)および0.3 U/mlのディスパーゼ(Invitrogen, Carlsbad, Ca)]からなった。
【0146】
走化性アッセイ法
デュアルチャンバ走化性アッセイ法は、製造元の指示にしたがい孔径3 μmの挿入体を有する24ウェルプレート(Costar/Corning, Corning, New York, United States)を用いて行った。手短に言えば、T2細胞2.0×105個を無血清培地中に再懸濁し、上側のチャンバに負荷した。200 ng/mlのCCL-21-mチェリー-ヴォールト、600 ng/mlの組換えCCL-21 (R&D Systems)、200 ng/mlのCCL-21-mチェリー-ヴォールト、その上に中和抗CCL-21組換え抗体(5 μg/ml)、600 ng/mlのCCL-21、その上に中和抗CCL-21抗体(5 μg/ml)をウェルの下側のチャンバに(三通り)添加した。これらの研究において用いた抗CCL-21抗体(R&D)の中和濃度(5 μg/ml)は、ND50 (CCL-21が最大反応を引き起こすのに十分に高い濃度で存在する場合のサイトカイン活性の50%最大阻害)に基づいた。37℃で2時間のインキュベーションの後、遊走した細胞を製造元の指示にしたがって下側のチャンバおよび挿入体から回収した。遊走したT2細胞をFACS緩衝液に再懸濁し、リンパ球の数をカウントすることによって評価した。
【0147】
抗原プロセッシングおよび提示アッセイ法
細胞(DC2.4 (細胞5×104個/ウェル))を24時間、対照ヴォールト(200 ng/ml)、またはCCL-21ヴォールト複合体(200 ng/ml)もしくはrCCL-21 (200 ng/ml)の存在下、OVAタンパク質(350 μg/ml)、MHCクラスI拘束性CD8 T細胞株B3Z (細胞105個/ウェル)を有する96ウェルプレート中に三通りプレーティングした。APC活性に及ぼすCCL-21の影響について判定するために、CCL-21を抗CCL-21 Ab (5 μg/ml) (R&D)で中和した。上清中の活性化CD8 T細胞によって分泌されたIL-2をELISA (eBioScience)によって定量化した。
【0148】
細胞培養
ネズミルイス肺がん細胞株(3LL, H2b)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection; ATCC, Manassas, VA)から入手した。細胞は、10% FBS (Gemini Bioproducts, Calabasas, CA)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(0.1 mg/ml)および2 mMグルタミン(JRH Biosciences, Lenexa, KS)を補充したRPMI 1640培地(Irvine Scientific, Santa Ana, CA)を含有する25 cm2の組織培養フラスコ中で単層として日常的に培養し、空気中5%のCO2を含有する加湿雰囲気中37℃で維持した。細胞株はマイコプラズマを含まず、10回目の継代の前の細胞を用いた。
【0149】
腫瘍形成モデル
病原体が存在していないC57BL/6マウスおよびUBC-GFP/BL6 (6〜8週齢; Jackson Laboratory)は、West Los Angeles Veterans Affairs Animal Research生態動物園において維持された。腫瘍形成実験のため、3LL腫瘍細胞1.5×105個をC57BL/6マウスの右肩甲上部に皮下(s.c.)注射した。樹立された9日齢の腫瘍を担持するマウスを200 μl中のmCCL-21-mチェリー-CP-MVPヴォールト(200 ng)、CP-MVPヴォールト(200 ng)または生理食塩水希釈剤の一回の腫瘍内注射で処置した。測径器で各腫瘍の2つの交差直径を測定することにより腫瘍体積をモニタリングした。腫瘍体積は、「a」を大きい方の直径とし「b」を小さい方の直径とし、式: V = 0.4ab2を用いて計算した。腫瘍に浸潤しているリンパ球の程度を判定するため、9日齢の腫瘍を担持するUBC-GFP/BL6マウスを記述の通りに処置し、処置から7日後、非壊死腫瘍を分離し、OCT中で凍結した。凍結組織を5 μm厚の薄片にし、スライド上へ固定し、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)固定剤で対比染色した。電荷結合素子カメラに取り付けられた1X71 Olympus蛍光顕微鏡の下で、スライドを観察した。Image Proソフトウェアを用いて×10および×40の対物レンズの下で画像を得た。
【0150】
同所性モデル
肺での腫瘍の移植は、Andersson, A. et al. J Immunol 2009, 182(11):6951-6958 [24]に既述の通りに行った。手短に言えば、NS希釈剤25 μl中5×103個の3LL-GFP細胞をC57BL/6マウスの経胸腔経路により、ケタマイシン/キシラジン麻酔の下、30ゲージの注射針の付いたツベルクリン注射器を用いて左肺に注射した。腫瘍接種から1週間後に、経胸腔注射により希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体でマウスを処置した。腫瘍接種から4週間後に、全身腫瘍組織量および白血球浸潤の評価のために肺を回収した。肺腫瘍消化物の単個細胞浮遊液中のGFPおよびEpCam発現3LL腫瘍細胞に対するゲーティングにより全身腫瘍組織量を定量化した。
【0151】
免疫染色
免疫組織化学染色を行って浸潤細胞の判定および特徴付けを行った。具体的には、標準的なプロトコールにしたがって5 μmのパラフィン切片をキシレン中で脱パラフィン化し、漸減濃度のエタノール中で再水和した[25]。クエン酸緩衝液中での熱による抗原回復(スチーマーの中で3分)の後に、TBS中3%の過酸化水素で10分間の内因性ペルオキシダーゼ活性の遮断を行った。全ての組織を室温(RT)で20分間ブロッキングした(TBS中4%のBSA、10%のショ糖、1%の正常ブタ血清)。一次抗体(DAKO, Cytomation, Carpinteria, CA, USA)をブロッキング溶液中で以下の濃度にまで希釈した: CD3 200分の1。切片を4℃で終夜抗体とともにインキュベートした。2日目に、0.02% Tweenを含有するTris緩衝生理食塩水でスライドを洗浄した。これに引き続いて、室温の二次ビオチン化ヤギ抗マウス抗体、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ(Vectastain ABC-APキット; Vector Laboratories, Burlingame, California)とのインキュベーション、およびVector Red基質溶液(Vector Laboratories)での色素原発色を行った。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、分析および写真撮影のために標本にした。
【0152】
フローサイトメトリー
上記の通りに処置後の腫瘍の単個細胞浮遊液に対する以下の白血球マーカーCD3、CD4、CD8、CCR7、CD11b、Gr1、DEC205、CD25、FOXP3およびCXCR3についてフローサイトメトリーを行った。T細胞を細胞質内IFNγおよびIL-10について染色した。腫瘍組織における分析のため、腫瘍をワイヤメッシュ上において、10 mlの注射器で押しつぶすことにより機械的にバラバラにし、組織消化用緩衝液中37℃で25分間インキュベートした。細胞を、70 μmのナイロンろ過器(BD Biosciences, Bedford, MA)を通してろ過し、特異的マーカーで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。University of California, Los Angeles, Jonsson Cancer Center Flow Cytometry Core FacilityでFACSCanto (BD Biosciences/FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson, San Jose, CA)によって試料を得た。FCS Express 3 (De Novo Software, Canada)を用いて計10,000〜25,000のゲート通過事象を分析した。無関係のアイソタイプ適合抗体とともにインキュベートされた細胞および無染色細胞を対照として役立てた。カットオフは対照の染色にしたがって設定した。
【0153】
T細胞の細胞溶解
Tリンパ球の溶解反応を治療後に評価した。Miltenyi Biotecビーズを用いて陰性選択により脾臓からT細胞を精製し、細胞溶解活性を自家3LL腫瘍細胞株および同系対照B16メラノーマ腫瘍細胞株に対して評価した。T細胞エフェクタを96ウェルプレートの四通りのウェル中で腫瘍細胞標的(20:1および40:1のE:T)とともに共培養し、18時間のインキュベーション後にアラマーブルー20 μlを各ウェルに添加した。アラマーブルー添加から3時間後に、Wallac 1420蛍光プレートリーダー(Perkin-Elmer Life Science, Turku, Finland)により励起/放射を530/590 nmに設定してプレートを読み取った。
【0154】
実施例1: 組換えヴォールトへのCCL-21のパッケージング
マウスケモカインCCL-21をマウスmINTに融合してCCL-21融合タンパク質を作製し、これをヴォールト複合体へパッケージングした。図1Aは、マウスCCL-21-mチェリー-mINT融合タンパク質(SEQ ID NO: 61)を作製するために融合されたCCL-21およびmチェリー-INT構築体(SEQ ID NO: 60)の略図を示す。Sf-9細胞中で生成された組換えCCL-21-mINTおよびラットMVPを含有する溶解物の混合によって、密度勾配超遠心分離により単離できるCCL-21融合タンパク質を含む高分子ヴォールト複合体の形成が可能となった。精製されたヴォールト複合体にはMVPおよびCCL-21-mINTの両方が含まれていた(以降、CCL-21ヴォールト複合体という)。図1Bは、制限消化によるpFastBac発現ベクターへの組換えCCL-21-mINTの組み込み、および電気泳動ゲル上で分析した場合のCCL-21融合タンパク質の発現を示す。パッケージングされたCCL-21-mチェリー-mINTを含むMVP組換えヴォールトをショ糖勾配によって精製し、40%および45%の画分をSDS-PAGE (図1C)、その後、クマシーでの染色(図1D)により分析した。図1EはCCL-21-mチェリー-mINTを含むヴォールトの陰性染色TEM画像を示す。
【0155】
各ヴォールト複合体の中には推定20〜30分子のCCL-21-mINTタンパク質が存在するとされたのは、クマシー染色後のSDS-PAGEゲルの濃度分析からの外挿に基づく。これは組換えヴォールト複合体への他のmINT融合タンパク質の複数コピーのパッケージングでの過去の研究と一致している[21]。ヴォールト1個あたりのCCL-21-mINTタンパク質は20〜30個と推定されるので、これは、このサイズのタンパク質のパッケージングに対する飽和レベルにあるか、または該レベルに近い可能性が高い。CCL-21ヴォールト複合体はまた、ルシフェラーゼに融合されたINTドメインを含むヴォールト粒子と非常に似通ったショ糖勾配に対する沈降プロファイルを示したことから[6、8、21]、CCL-21-mINTの組み入れが組換えヴォールト複合体の正常構造に影響を与えなかったことが示唆された。図1Eは、ネガティブ染色透過型電子顕微鏡によって調べられた精製ヴォールト複合体を示す。
【0156】
これらの結果は、CCL-21ヴォールト複合体が、組換えINT融合タンパク質を含むヴォールトのこれまでに確立されている形態と一致して、ヴォールトに特徴的な樽状形態を示すことを実証している[8、26]。
【0157】
実施例2: CCL-21ヴォールト複合体はインビトロで生物学的に活性でありかつT2細胞の遊走を誘導する
CCL-21がヴォールトの内部にパッケージングされた場合にその生物学的機能を保持するかどうか判定するために、走化性アッセイ法を用いた。CCL-21の走化性活性はその受容体CCR7を介して媒介され、T細胞および樹状細胞の遊走を誘導する。ヴォールトにおけるCCL-21の生物学的活性を評価するために、CCR7を構成的に発現するT2ハイブリドーマ細胞を用いた。2種類の異なる濃度のCCL-21ヴォールト複合体(200 ngおよび600 ng)、空のヴォールト(600 ng)、ならびに組換えCCL-21 (600 ng)を24ウェルのトランスウェルプレートの下側チャンバの中に入れ、2×105個のT2細胞を上側チャンバの中に負荷した。
【0158】
図2Aにおいて、インキュベーション後に下側チャンバへ遊走した細胞の数をフローサイトメトリーによって決定し、遊走%として表した。2.0×105個のT2細胞を上側チャンバの無血清培地中にプレーティングした。CCL-21-mチェリー-ヴォールト複合体(200 ng/mlもしくは600 ng/ml)、組換えCCL-21 (600 ng/ml)、対照ヴォールト(600 ng/ml)または中和抗CCL-21組換え抗体(5 μg/ml)をウェルの下側チャンバに添加した。2時間のインキュベーションの後、T2細胞の遊走をフローサイトメトリーによって分析した。CCL-21ヴォールト複合体は対照と比べてT2遊走を効果的に増大させ、抗CCL-21中和Abは遊走の増大を抑止したことから、CCL-21ヴォールト複合体は生物活性であり、T細胞の走化性遊走を媒介できることが示唆された。パネル中のデータは2回の独立した実験の代表である(棒; 平均±SEM、CCL-21ヴォールト複合体と対照ヴォールトまたは抗CCL-21抗体処置群との間のp<0.05)。
【0159】
組換えCCL-21 600 ngとともにインキュベートされたT2細胞の2.5%以下と比べて、7.5%超のT2細胞がCCL-21ヴォールト複合体200 ngに反応した。これは、所与の濃度がCCL-ヴォールト複合体のものであり、ヴォールト内部のCCL-21の実際の濃度が20 ng以下であるものと推定されうることを考えると、驚くべき反応である。CCL-21ヴォールト複合体の生物活性の増大は、ヴォールト内腔の防御環境へのタンパク質のパッケージングによるCCL-21の安定化の増大に起因している可能性がある。融合タンパク質は、ヴォールトの内部で非共有結合的に会合するので、溶液中でかすかに動いているヴォールトが勾配によってCCL-21を放出し、急勾配が形成されるため、遊走した細胞の数が組換えCCL-21よりも高かったことは妥当である。T2細胞の遊走がCCL-21依存的であったことを実証するために、中和抗体(CCL-21に対する)が組換えCCL-21とCCL-21ヴォールト複合体の両方の走化性活性を効率的に遮断することが示された。これは、CCL-21ヴォールト複合体がインビトロでのT2細胞の遊走の誘導で機能的に活性であるという結論につながった。
【0160】
これらの結果は、CCL-21サイトカインが、ヴォールト複合体内部にパッケージングされた場合にその生物学的機能を保持していることを実証する。
【0161】
実施例3: CCL-21ヴォールト複合体はDC APC活性を増強する
樹状細胞(DC)の抗原提示細胞(APC)活性に及ぼすCCL-21ヴォールト複合体の効果を判定するために、DC APC活性に及ぼすCCL-21-ヴォールト複合体の影響をインビトロで研究した。対照ヴォールトと比べて、CCL-21-ヴォールト複合体は、オボアルブミンをプロセッシングし、提示し、CD8 T細胞を活性化してIL-2を分泌するDCの能力を増強した(図2B)。
【0162】
図2Bは、CCL-21ヴォールト複合体がDC APC活性を増強し、CCL-21の遮断によってAPC活性の増大が逆転したことを示す。B3Z細胞(細胞1×105個/200 ul/ウェル)をCCL21ヴォールト(200 ng/ml)および抗CCL-21抗体(5 ug/ml)または対照抗体(5 ug/mlのヤギIgG)の存在下または非存在下でDC 2.4 (細胞5×104個/ 200 ul/ウェル)およびオボアルブミン(350 ug/ml)とともに24時間共培養した。対照ヴォールトは200 ng/mlの濃度で用いた。ELISAでIL-2の産生を測定することにより、T細胞活性化を分析した。データは2回の独立した実験の代表である。(棒; 平均±SEM、CCL21ヴォールトと対照ヴォールトまたは抗CCL21抗体処置群との間のp<0.05)。CCL-21の中和はDC APC活性の増加を対照レベルにまで抑止した。
【0163】
これらの結果は、CCL-21ヴォールト複合体がインビトロでDC APC活性を増強することを実証している。
【0164】
実施例4: CCL-21ヴォールト複合体はインビボで抗腫瘍白血球浸潤物の動員を増強しかつ3LL全身腫瘍組織量を低減する
インビボでのCCL-21ヴォールト複合体の抗腫瘍活性を判定するために、3LL腫瘍担持マウスにおいて樹立された全身腫瘍組織量に及ぼす効果についてCCL-21ヴォールト複合体を試験した。
【0165】
図3に示される通り、CCL-21ヴォールト複合体(200 ng)の一回の腫瘍内注射は空のヴォールトと比べて全身腫瘍組織量の顕著な減少をもたらした。C57BL/6マウス(n = 5)に1.5×105個の3LL腫瘍細胞を皮下注射し、腫瘍増殖を毎日モニタリングした。腫瘍移後5日の後に、CCL-21-mチェリー-mINTを含有するヴォールト(200 ng)、ヴォールトのみ(200 ng)または生理食塩水(希釈剤)で腫瘍内注射によってマウスを処置し、実験の間、腫瘍増殖をモニタリングした。本明細書において記述される通りに腫瘍サイズを測定し、腫瘍体積を計算した。交差腫瘍直径を測径器で測定した。CCL-21-mチェリー-mINTを含有するヴォールトの腫瘍内投与は、未処置腫瘍担持マウスと比べて腫瘍体積の顕著な低減をもたらした(p<.001)。
【0166】
図4A〜4Bは、CCL-21-ヴォールト複合体処置群(図4B)が対照ヴォールト(図4A)と比べて白血球浸潤を増進したことを示し、免疫染色によって浸潤物が主にCD3発現T細胞であることが示された(図4B、右下パネル)。パラフィン包埋組織からの切片をヘマトキシリン・エオシン(H&E)により染色し、市販の抗体を用いて免疫組織化学によりCD3、CD4、CD8およびS-100を染色した。図4Aおよび4Bの各パネルは、異なる原発腫瘍およびリンパ節内の代表的な領域の、400×で撮影された写真を示す。このように、CCL-21ヴォールトは、対照ヴォールトと比べて全身腫瘍組織量を低減し、腫瘍におけるCD3発現T細胞の流入を増大させた。(データ; 平均±SEM、CCL-21ヴォールトと対照群との間のp<0.05、マウスn=8/群)。
【0167】
さらなる実験において、CCL-21-ヴォールト複合体の抗腫瘍有効性を7日の樹立同所性3LL肺がんモデルにおいて判定した。CCL-21-ヴォールト複合体は対照と比べて全身腫瘍組織量を7倍低減した。図5A〜5Cにおいて、希釈剤または対照ヴォールト由来の肺腫瘍切片のH&E染色から、CCL-21ヴォールト複合体処置群における腫瘍量の低減と比べて腫瘍量の増大が示された。図5Aは希釈剤のみでの3LL肺がん細胞の処置の効果を例示する。図5Bは対照ヴォールトでの処置を示し、図5CはCCL-21ヴォールトでの処置を示す。
【0168】
図6Aは、フローサイトメトリーアッセイ法における未処置細胞、および希釈剤、対照ヴォールト(CV)またはCCL-21ヴォールト複合体で処理した3LL細胞の全身腫瘍組織量%を示す。全身腫瘍組織量は、全肺消化物におけるGFPおよびEpcam発現腫瘍細胞の全体の百分率で計算された。未処置肺を対照として用い、ゲートを設定した。CCL-21ヴォールト複合体による処置は全身腫瘍組織量を低減した。図6Bは、希釈剤、対照ヴォールトまたはCCL-21ヴォールト複合体による処理後の3LL細胞の全身腫瘍組織量%を例示するグラフである。
【0169】
実施例5: CCL-21ヴォールト複合体は腫瘍浸潤T細胞IFNγを誘導するが、IL-10を低減しかつ全身のT細胞の細胞溶解活性を増進する
腫瘍浸潤物およびIL-10発現の誘導に及ぼすCCL-21ヴォールト複合体の効果をインビボで研究した。
【0170】
全身腫瘍組織量の低減に加えて、腫瘍内白血球集団の評価から、CD4、CD8、CD3 CXCR3、CD3 CCR7およびDEC205の頻度の増加、しかしMDSCおよびT調節性のレベルの低減が示された(図7A〜7D)。図7Aにおいて、CCL-21ヴォールト複合体はCD4、CD8、CXCR3+CD3+T、CCR7+CD3+TおよびDEC205+DC浸潤物を増加させ、希釈剤または対照ヴォールトのみによる処置と比べてMDSCおよびT調節性を低減した。図7Bおよび7Cは、CCL-21ヴォールト複合体処置マウスのT細胞浸潤物が対照と比べてIFNγを増大させ、IL-10発現を低減したことを示す。図7Dは、CCL-21ヴォールト処置がインビトロで親3LL腫瘍に対する精製脾臓T細胞(20:1および40:1のE:T)の細胞溶解活性を増強したことを例示する。
【0171】
図6A〜7Dは、CCL-21ヴォールトが全身腫瘍組織量および免疫抑制因子を低減し、TおよびDC浸潤物を増強し、全身T細胞抗腫瘍活性を誘導したことを実証する。具体的には、CCL-21ヴォールトは、3LL同所性肺がんモデルにおいて全身腫瘍組織量ならびに免疫抑制因子(MDSCおよびT調節性)を低減し、腫瘍内免疫細胞浸潤物を増大させた。図6A〜7Dに示される実験の場合、5×103個の3LL-GFP腫瘍細胞を経胸腔経路によって左肺に注射した。腫瘍注射から1週間後に、マウスを左肺の経胸腔経路によって希釈剤(NS)、対照ヴォールト(2 ug)またはCCL-21ヴォールト(2 ug)で処置した。腫瘍移植後28日目に、全身腫瘍組織量および腫瘍白血球浸潤物の分析のために肺腫瘍を回収した。(データ棒、平均 ± SEM、CCL-21ヴォールトと対照ヴォールト群との間のp<0.05、マウスn=8/群)。
【0172】
これらの結果は、CCL-21ヴォールト複合体が、腫瘍浸潤T細胞IFNγを誘導するが、IL-10を低減し、かつ全身T細胞の細胞溶解活性を増進することを実証している。
【0173】
実施例6: ヒトにおけるがんの処置のためのCCL-21ヴォールト複合体の使用
ヒトにおけるがんの処置のため、本発明において用いられる薬学的組成物は処置の侵襲性に依っておよび局所または全身処置が望まれるかどうかに基づいていくつかの方法で投与することができる。好ましい初期処置は患者の腫瘍へのCCL-21ヴォールト複合体の腫瘍内注射によって行うことができる。いくつかの態様において、CCL-21ヴォールト複合体の腫瘍内注射は、肺がんの処置を必要としている患者の肺中の腫瘍に対して行われる。
【0174】
ある種の態様において、CCL-21ヴォールト複合体を含む薬学的組成物のさまざまな投与量を、患者に投与することができる。
【0175】
本発明を好ましい態様およびさまざまな別の態様に関して特に示し、記述してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本発明において形態および詳細のさまざまな変更を行えることを当業者は理解するであろう。
【0176】
本明細書の本体のなかで引用されている全ての参考文献、交付済み特許および特許出願は、全ての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0177】
(表1)配列



























【0178】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 2 (ヒト)のアミノ酸配列からなるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド21 (CCL-21)とSEQ ID NO: 8 (ヒト)のアミノ酸配列からなる主要ヴォールトタンパク質相互作用ドメイン(mINT)とを含むケモカイン融合タンパク質を含むヴォールト(vault)複合体を含む、組成物。
【請求項2】
サイトカインとヴォールト標的化ドメインとを含む融合タンパク質を含むヴォールト複合体を含む、組成物。
【請求項3】
前記サイトカインがケモカインである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記サイトカインがシステイン-システイン(CC)ケモカインである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記サイトカインがCCL-21ケモカインである、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記サイトカインがSEQ ID NO: 2 (ヒト)のアミノ酸配列を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
前記サイトカインがSEQ ID NO: 2 (ヒト)のアミノ酸配列からなる、請求項2記載の組成物。
【請求項8】
前記サイトカインがSEQ ID NO: 1 (マウス)のアミノ酸配列を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項9】
前記ヴォールト標的化ドメインが、ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)由来のヴォールト相互作用ドメインである、請求項2〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記ヴォールト標的化ドメインが主要ヴォールトタンパク質相互作用(mINT)ドメインである、請求項2〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記ヴォールト標的化ドメインがSEQ ID NO: 8 (ヒト)のアミノ酸配列を含む、請求項2〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記ヴォールト標的化ドメインがSEQ ID NO: 8 (ヒト)のアミノ酸配列からなる、請求項2〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記ヴォールト標的化ドメインがSEQ ID NO: 9 (マウス)のアミノ酸配列を含む、請求項2〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記ヴォールト複合体がMVPを含む、請求項2〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記融合タンパク質がSEQ ID NO: 13 (ヒト)のアミノ酸配列を含む、請求項2〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
前記融合タンパク質がSEQ ID NO: 13 (ヒト)のアミノ酸配列からなる、請求項2〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
前記融合タンパク質がSEQ ID NO: 12 (マウス)のアミノ酸配列を含む、請求項2〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
ヴォールトポリADPリボースポリメラーゼ(VPARP)、テロメラーゼヴォールト会合タンパク質1 (TEP1)、または非翻訳RNA分子(vRNA)をさらに含む、請求項2〜17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
前記融合タンパク質が蛍光タンパク質をさらに含む、請求項2〜18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
前記蛍光タンパク質がmチェリー(mCherry)蛍光タンパク質である、請求項2〜18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
サイトカインコード配列とmINTコード配列とを含むケモカイン融合タンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項22】
前記mINTコード配列がSEQ ID NO: 7 (ヒト)の核酸配列を含む、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項23】
前記mINTコード配列がSEQ ID NO: 7 (ヒト)の核酸配列からなる、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項24】
前記mINTコード配列がSEQ ID NO: 6 (マウス)の核酸配列を含む、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項25】
前記サイトカインコード配列がSEQ ID NO: 5 (ヒト)の核酸配列からなり、かつ前記mINTコード配列がSEQ ID NO: 7 (ヒト)の核酸配列からなる、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項26】
前記サイトカインコード配列がSEQ ID NO: 3 (マウス)の核酸配列からなり、かつ前記mINTコード配列がSEQ ID NO: 6 (マウス)の核酸配列からなる、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項27】
前記サイトカインの融合タンパク質がSEQ ID NO: 11 (ヒト)の核酸配列を含む、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項28】
前記サイトカインの融合タンパク質がSEQ ID NO: 11 (ヒト)の核酸配列からなる、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項29】
前記サイトカインの融合タンパク質がSEQ ID NO: 10 (マウス)の核酸配列を含む、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項30】
前記サイトカインの融合タンパク質がSEQ ID NO: 62 (マウス)の核酸配列を含む、請求項21記載の単離された核酸。
【請求項31】
請求項21〜30のいずれか一項記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項32】
バキュロウイルス発現ベクターである、請求項30記載のベクター。
【請求項33】
請求項21〜30のいずれか一項記載の核酸または請求項31もしくは32記載のベクターを含む、細胞。
【請求項34】
請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を細胞へ導入する段階を含む、該細胞へサイトカインを送達する方法。
【請求項35】
前記組成物を前記細胞の周囲の細胞外環境へ導入する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物と細胞を接触させる段階を含む、該細胞における免疫反応を刺激するための方法。
【請求項37】
前記細胞がヒト細胞である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記免疫反応がT細胞および樹状細胞の遊走を誘導する、請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
請求項2記載の組成物と前記細胞を接触させる段階が、該細胞へのT細胞の遊走をCCL-21サイトカイン単独の投与と比べて少なくとも5%増大させる、請求項36〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を対象に投与する段階を含む、該対象における免疫反応を刺激するための方法。
【請求項41】
前記対象がヒトである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
治療的に有効な量の請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を対象に投与する段階を含む、がんの処置または管理を必要としている対象においてがんを処置または管理する方法。
【請求項43】
投与する段階が、前記対象における腫瘍への前記組成物の腫瘍内注射を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記がんが肺がんである、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
投与する段階が腫瘍体積を低減する、請求項42〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
投与する段階が腫瘍増殖を低減する、請求項42〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
投与する段階がインターロイキン-2 (IL-2)発現を増大させる、請求項42〜46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記対象が哺乳類である、請求項42〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記対象がヒトである、請求項42〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
(a) Sf9細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、Sf9細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を生成する段階を含む、請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を調製する方法。
【請求項51】
(a) 昆虫の幼虫細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、昆虫の幼虫細胞中で生成されたラットMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって請求項2〜20記載の組成物を生成する段階を含む、請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を調製する方法。
【請求項52】
(a) Sf9細胞中または昆虫の幼虫細胞中で生成されたmINTに融合されたサイトカインを含む融合タンパク質を、Sf9細胞中または昆虫の幼虫細胞中で生成されたヒトMVPと混合して、混合物を生成する段階; (b) ヴォールト複合体の内部への該融合タンパク質のパッケージングを可能にするのに十分な時間、該混合物をインキュベートし、それによって請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を生成する段階を含む、請求項2〜20のいずれか一項記載の組成物を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509202(P2013−509202A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537196(P2012−537196)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055146
【国際公開番号】WO2011/053991
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(500210903)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニア (31)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【出願人】(508229390)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】