説明

サイトメガロウイルスワクチンおよび製造方法

サイトメガロウイルスを増殖する細胞型の選択によりサイトメガロウイルスワクチンの多様性を増大する方法、およびワクチン組成物の開発における該方法により生成されたサイトメガロウイルスの使用が開示される。上皮細胞から分離されたCMVを含むワクチン組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月10日に出願された米国特許仮出願第60/998,426号の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書において援用される。
【0002】
35 U.S.C. §202(c)に準じて、認可第CA85786号、CA82396号、AI54430号およびGM71508号のもとで国立衛生研究所の基金によって一部がなされた本明細書に記載される発明において、米国政府が一定の権利を有し得ると認める。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般的にワクチン開発の分野に関する。より具体的に、本発明は、サイトメガロウイルスが増殖する細胞型の選択によりサイトメガロウイルスワクチンの多様性を増大する方法、およびワクチン組成物の開発における、これらの方法により生成されたサイトメガロウイルスの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
本明細書全体において特許、公開特許出願、技術文献および学術文献などの種々の刊行物が引用される。これらの引用文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用される。括弧内の番号によって参照される刊行物についての完全な引用または本明細書において完全には引用されない他のものは本明細書の末尾に記載される。
【0005】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科のβサブファミリーの一員と分類されるヘルペスウイルスである。疾病対策予防センターによると、CMV感染はヒト集団においてほとんど偏在的に見られ、米国の成人の40〜80%が感染していると推定される。このウイルスは、最初に体液を通じて拡散し、多くの場合妊娠中の母体から胎児または新生児へと伝わる。ほとんどの個体において、CMV感染は潜伏性であるが、ウイルス活性化により高熱、悪寒、疲労、頭痛、悪心および脾腫が引き起こされ得る。
【0006】
ほとんどのヒトCMV感染は無症候性であるが、新生児、HIV陽性患者、同種移植患者および癌患者などの免疫学的に未成熟または免疫無防備状態の個体におけるCMV感染が特に問題である。このような個体でのCMV感染は、肺炎、肝炎、脳炎、大腸炎、ブドウ膜炎、網膜炎、失明および神経障害などの重度の病状、特に有害な状態を引き起こし得る。また、CMVは出生異常の原因となる。現在、CMV感染に対する治療または予防ワクチンはない。
【0007】
ヘルペスウイルスの細胞への進入は複雑なプロセスであり、吸着およびレセプター結合によって開始された後、ウイルスエンベロープと細胞膜が融合する。融合は、細胞膜またはエンドソーム膜のいずれかで生じる。例えば、エプスタイン-バールウイルス(EBV)は、レセプター媒介性エンドサイトーシスを介して原発性B細胞に侵入するが(1、2)、ビリオンエンベロープと細胞膜の融合により上皮細胞または形質転換B細胞に感染する(1)。ヘルペス単純ウイルスは、いくつかの細胞型の細胞膜と融合するが、他のものにはエンドサイトーシスにより進入する(3〜6)。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、インビボで、上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞など多くの種類の細胞に感染する(7)。このウイルスは線維芽細胞の細胞膜と融合するが(8)、網膜色素上皮細胞および臍帯静脈内皮細胞にはエンドサイトーシスを介して進入する(9、10)。
【0008】
ヘルペスウイルスがその進入経路を「選ぶ」機構はわかっていない。一般に、進入経路は主に宿主細胞によって決定されると推定されるが、ビリオン糖タンパク質の向性の役割については先例がある(11)。EBVビリオンは、2種類のgH複合体、gH/gLおよびgH/gL/gp42を含み(12、13)、互いに相対する機能を有する(11)。B細胞の細胞膜との融合は、gH/gL/gp42によって媒介されるが(14〜16)、上皮細胞への進入はgH/gLによって誘発される(11、12、17)。EBVが産生された細胞型はその向性が変化し得る。B細胞由来EBVビリオンは、上皮細胞由来ビリオンよりも少ないgH-gL-gp42を含む。結果的に、B細胞に産生されたウイルスは、上皮細胞に対してより感染性となり、上皮細胞由来ウイルスはB細胞向性となる(18)。
【0009】
HCMVはまた、2種類のgH/gL複合体:gH/gL/gOおよびgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131をコードする(19、20)。gO含有複合体は線維芽細胞感染に十分であり、pUL128/pUL130/pUL131含有複合体は内皮細胞および上皮細胞への感染に必要である(19〜21)。AD169実験室株はそのビリオン中にgH/gL/gO複合体のみを含む(19)。第2のgH/gL複合体の非存在はHCMV実験室株における上皮細胞および内皮細胞向性の欠損の原因となる(19〜22)。
【0010】
特に免疫無防備状態の個体および妊娠中の女性におけるCMVの拡散および活性化を制御するために、CMVワクチンの変化および多様性、ならびに効果的な手段が必要である。本発明はかかる必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0011】
(発明の概要)
本発明の一局面は、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンの作製方法を特徴とする。該方法は、選択された細胞型の培養細胞中でCMVの株または分離物を増殖して、細胞型条件付けCMVを生成する工程、および細胞型条件付けCMVからCMVワクチンを製造する工程を含む。特定の態様において、CMV株または分離物はヒトCMV(HCMV)株または分離物である。該方法には種々の細胞型が適しており、限定されないが、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、樹状細胞およびストロマ細胞が挙げられる。具体的な態様において、選択された細胞型は上皮細胞である。
【0012】
上述の方法はさらに、2種類以上の異なる選択された細胞型中で細胞型条件付けCMVを生成する工程、およびこれらのCMVを組み合わせてCMVワクチンを製造する工程を含み得る。代替的に、または追加的に、該方法は、2種類以上のCMV株または分離物を提供する工程、選択された細胞型または2種類以上の異なる選択された細胞型を含む培養細胞中で株もしくは分離物のそれぞれを増殖させる工程、およびそこから生成された全てのCMVを組み合わせてCMVワクチンを作製する工程を含む。
【0013】
特定の態様において、該方法は、弱毒化生CMVワクチンを製造する工程を含む。他の態様において、該方法は、不活性化または死滅CMVワクチンを製造する工程を含む。さらに他の態様において、該方法は、1種類以上の弱毒化生ウイルス、不活性化ウイルスならびに他の免疫原成分、例えば免疫原CMVタンパク質およびペプチド等を含む組合せワクチンを製造する工程を含む。
【0014】
上述の方法により製造されたCMVワクチンも本発明の範囲内にある。
【0015】
本発明の別の局面は、本発明の方法を実施するためのキットを特徴とする。典型的に、かかるキットは1つまたは複数のCMV株もしくは臨床分離物、1つ以上の選択された細胞型の培養細胞、ならびにCMVワクチンにおける使用のための細胞型条件付けCMVを生成する培養細胞およびCMV株もしくは分離物の使用のための指示書が含まれたパッケージを含む。
【0016】
本発明の別の局面は、適切な医薬担体またはアジュバントと合わされたサイトメガロウイルス(CMV)集団またはそのビリオン成分を含むワクチン組成物を特徴とし、CMV集団は選択された細胞型の培養細胞から分離される。一態様において、選択された細胞型は上皮細胞型である。一態様において、ワクチン組成物はHCMVを含む。
【0017】
ワクチン組成物の種々の態様において、上皮細胞培養物から分離されたCMV集団は、その後の感染宿主細胞において1つ以上の性質、限定されないが、例えば:(a)宿主細胞の細胞膜との融合による宿主細胞への進入;(b)培養線維芽細胞から分離した同等のCMV集団より大きな宿主細胞のビリオン媒介性細胞-細胞融合;(c)培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団と比べて早くなった宿主細胞中のウイルス増殖;(d)感染の10時間後に、培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団により誘起されるよりも約2/3少ない遺伝子の2.5倍以上大きい発現の変化を含む細胞応答の誘起;または(e)本明細書の表2および表4に示される1つ以上の遺伝子(後者はGenBank 受託番号:AK094860、NM_145023、NM_133492、NM_001039580、NM_001004301、NM_001034、AI369525、AK123066、NM_005345、NM_020731、BC071797、NM_003414、NM_000800、NM_138467、AK090803、AL133118、NM_001165、BG001037、NM_024861、NM_001043、NM_016239、NM_001018084、NM_001037442、NM_017600、NM_022097、NM_175868、NM_032266、NM_003841、NM_005039、NM_145051、NM_004294、AW856073、NM_024050、AF085968、NM_1380927、NM_022115、AK056703、NM_000808、NM_012377、NM_006793、NM_031466、NM_005185、NM_139173、BX360933、NM_016125、NM_002104、NM_032188、NM_004185、NM_004843またはNM_173550で表される)の発現の変化を含む細胞応答の誘起を特徴とする。
【0018】
特定の態様において、ワクチン組成物は2種類以上の異なる選択された細胞型の培養細胞から分離されたCMV集団またはそのビリオン成分を含む。例えば、CMV集団は上皮細胞および線維芽細胞型などの別の細胞型の細胞から分離され得る。他の態様において、CMV集団は、選択された細胞型中で増殖された2種類以上のCMV株または臨床分離物を含む。特定の態様は、複数の異なる細胞型の培養細胞中で増殖された複数のCMV株または臨床分離物を含み得る。
【0019】
一態様において、ワクチン組成物は、生きた弱毒化CMVワクチンを含む。別の態様において、ワクチン組成物は不活性化されたCMVワクチンを含む。さらに他の態様において、ワクチン組成物は、1つ以上の株の生きた弱毒化ウイルスもしくはその成分、不活性化ウイルスもしくはその成分、および/または他の免疫原CMVペプチドもしくはタンパク質を含む組合せワクチンであり得る。
【0020】
本発明の別の局面は、上述の方法で製造されたCMVワクチン組成物を個体に投与する工程を含むおよび/または上述の特徴を含む、CMVに対して個体を免疫する方法を特徴とする。一態様において、免疫される個体はヒトである。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例を参照して理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ARPE-19細胞におけるHCMV IE1発現の動態である。(A)感染細胞(0.1pfu/細胞)を表示の時間で固定して、IE1(カラー写真で緑色、白黒写真で明るい灰色)、Sp100(カラー写真で赤色、白黒写真で非常に暗い灰色)およびDNA(カラー写真で青色、白黒写真で暗い灰色)について染色した。(B)感染(0.1pfu/細胞)後種々の時点で、IE1発現細胞の割合を定量した;結果をグラフに示す。
【図2】図2は、ARPE-19細胞へのHCMV進入の電子顕微鏡解析である。epiBADrUL131またはfibroBADrUL131粒子(50pfu/細胞)は、4℃で細胞に結合し、37℃、15分間で内在化された。代表的な画像を示す。
【図3】図3は、ARPE-19細胞へのHCMV進入に対するエンドソーム酸性化およびビリオン供給源のインヒビターの効果である。実験は3回行い、未処理培養に対する薬物処理の陽性細胞数を記録する。(A)細胞をNH4ClまたはBFAで1時間前処理し、epiBADrUL131またはfibroBADrUL131(1pfu/細胞)で接種して16時間後にIE1について染色した。(B)細胞を50mM NH4Clまたは40nM BFAで1時間前処理し、次いで表示される細胞型で製造したBADrUL131(0.1pfu/細胞)またはFIXwt(0.01pfu/細胞)で接種して16時間後にIE1について染色した。
【図4】図4は、上皮細胞由来ウイルスで誘導されたARPE-19細胞の外部からの融合である。(A)細胞をepiBADrUL131またはfibroBADrUL131(20pfu/細胞)で接種し、次いで200μg/mlのPFAを含む培地中で維持した。感染の16時間後に位相差顕微鏡画像を得た。(B)レポーターおよびエフェクター細胞の混合物をepiBADrUL131またはfibroBADrUL131(20pfu/細胞)で、4℃にて1時間感染させた。次いで、培養を37℃6時間にシフトし、その後相対的ルシフェラーゼ活性を測定した。
【図5】図5は、HCMV感染および進入に対するpUL130特異的中和抗体の効果である。(A)上皮細胞または線維芽細胞由来のウイルスを種々の濃度の抗pUL130とインキュベートし、残留感染性を測定した。(B)上皮細胞または線維芽細胞由来のウイルス粒子を終濃度20μg/mlの抗pUL130、またはPBSで前処理し、次いで4℃、1時間でARPE-19細胞に吸着させた。細胞を冷PBSで2回洗浄し、細胞に結合したウイルスDNAを抽出して細胞に結合した粒子の相対数を測定した。代替的に、細胞を37℃、2時間にシフトしてウイルスを進入させた。細胞を通過しなかったビリオンを、EDTA-トリプシン処理で除去した。その後内在化されたウイルスDNAをリアルタイムPCRで定量した。
【図6】図6は、線維芽細胞に対して上皮細胞で生成されたHCMVによる、ARPE-19トランスクリプトームの調節である。(A)ベン図は、偽感染(mock infection)に対するepiBADrUL131またはfibroBADpUL131(3pfu/細胞)を用いた感染後6時間または10時間の差異的に制御された遺伝子の分布を示す。(B)リアルタイムPCRでアッセイした相対的RNAの変化。試験した遺伝子は、ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS、NM_000190)GLI病因関連1(神経膠腫)(GliPR、NM_006851)、IL-1βにより迅速に誘導されるペントラキシン関連遺伝子(PTX3、NM_002852)、2'-5'-オリゴアデニレートシンテターゼ3(OAS3、NM_006187)、インターフェロン誘導タンパク質44(IFI44、NM_006417)、v-rel細網内皮症ウイルス癌遺伝子ホモログB、B細胞3におけるκ軽ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子(relB、NM_006509)およびATP結合カセットサブファミリーC(CFTR/MRP)メンバー3(MRP3、NM_003786)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(例示的態様の詳細な説明)
本発明の方法および本発明の他の局面に関連する種々の用語が明細書および特許請求の範囲を通して使用される。特に定義されなければ、本明細書に使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の試験の実施に使用可能であるが、本明細書には好ましい材料および方法が記載される。本発明を説明および特許請求する際に、以下の用語が使用される。本明細書に使用される用語は特定の態様を説明するためだけのものであり、限定を意図しないことが理解されよう。
【0024】
定義:
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、内容が他のものを明確に示さない限りは、単数形「a」、「an」および「the」は複数の指示物を含む。したがって、例えば「細胞(a cell)」についての指示は、2つ以上の細胞の組合せ等を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、量、時間等の測定可能な値についていう「約」は、特定の値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変化、例えば開示される方法を実施するために適切な変化を包含することを意味する。
【0026】
用語「増幅すること」、「増殖すること(propagating)」および「増殖すること(growing)」または「増幅」、「増殖(propagation)」および「増殖(growth)」は、ウイルス学者および医学生物学者に周知の方法に従って、細胞中でウイルスが複製および倍化可能な条件下で、ウイルスを培養細胞に導入するかまたは細胞にウイルスを感染させる一般的な方法のことをいうために、本明細書において互換的に使用される。特に、本明細書においてこれらの用語は、ワクチンの製造のために条件付けCMVを使用する前の工程として、選択された細胞型でCMVが増殖により「条件付け(conditioned)」される、本発明の方法の工程のことをいう。
【0027】
「生体分子」としては、タンパク質、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖、単糖、およびその全ての断片、アナログ、ホモログ、コンジュゲートおよび誘導体が挙げられる。
【0028】
一般的に、「細胞培養物」は、生体から採取して制御された条件(「培養中」または「培養された」)下で増殖された細胞のことをいう。「初代細胞培養物」は、一回目の継代培養の前の、(1つまたは複数の)生物から直接採取した細胞、組織または臓器の培養物である。「細胞株」は、初代細胞培養物の一回以上の継代培養により形成された細胞の集団である。
【0029】
遺伝子の「コーディング領域」は、遺伝子の転写により生成されるmRNA分子のコーディング領域に相同または相補的な、遺伝子のコーディング鎖のヌクレオチド残基および遺伝子のノンコーディング鎖のヌクレオチドからなる。
【0030】
mRNA分子の「コーディング領域」はまた、mRNA分子の翻訳の際の翻訳RNA分子のアンチコドン領域に適合するかまたはストップコドンをコードするmRNA分子のヌクレオチド残基からなる。したがって、コーディング領域は、mRNAにコードされ、成熟タンパク質中には存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質輸送シグナル配列中のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基を含み得る。
【0031】
用語「条件付けウイルス」、「細胞型条件付けウイルス」、「条件付けCMV」または「細胞型条件付けCMV」は、本明細書に記載される方法に従って、ワクチン製造におけるCMVの使用前に選択された細胞型で増殖されたCMVのこという。これらの用語は、特定の細胞型または細胞株を増殖させた後除去される培養培地であって、細胞により産生される成分または因子を含み、それにより該培地の機能を変化させる培養培地を示す用語「条件付け培地」と類似であることを意図する。本願の目的で、用語「条件付けウイルス」は同様に、選択された細胞型で増殖され、その後それらの細胞から取り出されるウイルスのことをいい、ここでその後ウイルスは、かかる細胞型で増殖されたウイルスによって生じる1つ以上の改変された機能的特徴を発揮する。
【0032】
「コードすること」は、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列が、規定されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の規定された配列を有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマーおよび巨大分子の合成のために鋳型として機能するための固有の性質、ならびにそれらにより生じる生物学的性質のことをいう。したがって、遺伝子は、該遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳により、細胞または他の生物系においてタンパク質が生成される場合にタンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用され、mRNA配列と同一で一般的に配列表中に示されるコーディング鎖およびノンコーディング鎖の両方のヌクレオチド配列は、該遺伝子またはcDNAのタンパク質もしくは他の産物をコードするといえる。他に特定されなければ、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重した種類であり同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含み得る。
【0033】
「有効量」および「治療有効量」は、本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な、本明細書に記載される化合物、製剤、物質または組成物の量のことをいう。かかる結果としては、限定されないが、当該技術分野に適した任意の手段により決定されるウイルス感染の阻害が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「内因性」は、生物、細胞、組織もしくは系由来であるか、またはその内側で産生される任意の物質のことをいう。「外因性」は、生物、細胞、組織もしくは系の外側から導入されるか、またはその外側で産生される任意の物質のことをいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「発現」は、プロモーターにより誘導される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳のことと定義される。
【0036】
本明細書で使用する場合、「免疫」または「ワクチン接種」は本明細書において互換的に使用され、予防または治療的な免疫もしくはワクチン接種を意図する。「治療的ワクチン接種」はCMV感染を有する患者のワクチン接種を意味する。
【0037】
「分離(単離)された」は、天然の状態から改変または取り出された状態を意味する。例えば、生体動物中に天然に存在する核酸またはペプチドは「分離」されていないが、同時に存在する天然状態の物質から部分的または完全に切り離された同じ核酸またはペプチドは「分離」されている。分離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境下で存在し得る。本明細書において他に具体的に特定されなければ、本発明の目的の物体を形成するタンパク質、ビリオン複合体、抗体および他の生物学的分子は分離されているか、または分離され得る。
【0038】
用語「患者」、「被験体」、「個体」等は、本明細書において互換的に使用され、インビトロまたはインサイチュのいずれかでCMVに感染され得る任意の動物またはその細胞のことをいう。特定の非限定的な態様において、患者、被験体または個体はヒトである。
【0039】
免疫原性またはワクチン組成物の「非経口」投与としては、例えば皮下(s.c)、静脈内(i.v.)、筋内(i.m.)または胸骨内の注射または注入技術が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」はヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用する場合、核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るという一般的な知識を有する。単量体ヌクレオチドはヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドとしては、限定されないが、当該技術分野で利用可能な任意の手段、例えば、限定されないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニングおよび増幅技術等を使用したリコンビナントライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングおよび合成手段により得られる全ての核酸配列が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基からなる化合物のことをいう。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含み、タンパク質配列またはペプチド配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドとしては、互いにペプチド結合により連結した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。本明細書で使用する場合、該用語は、当該技術分野において一般的に、例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当該技術分野において一般的にタンパク質と称される長鎖の両方のことをいい、多くの種類がある。「ポリペプチド」としては、例えば、特に生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチドまたはその組合せを含む。
【0042】
「薬学的に許容され得る」とは、組成、配合、安定性、患者許容性および生物利用性に関して、薬学的/毒物的な観点から患者に許容され得、物理的/化学的な観点から製薬者に許容され得る特性および/または物質のことをいう。「薬学的に許容され得る担体」とは、(1つまたは複数の)活性成分の生物学的活性の効果を妨害せず、該担体を投与される宿主に毒性でない媒体のことをいう。
【0043】
用語「単回パッケージ」は、キットの構成要素が物理的に1つ以上の容器内で結合しているかまたは1つ以上の容器と結合し、製造、分配、販売または使用のための単位と見なされることを意味する。容器としては限定されないが、バッグ、箱、ビン、収縮包装パッケージ、ステープルで留められたかもしくは他の方法で固定された成分、またはそれらの組合せが挙げられる。「単回パッケージ」はまた、仮想の構成要素を含み得る。例えば、キットは、物理的パッケージに含まれる簡略化された物理的指示書および仮想の環境、例えばウェブサイトからより詳細な指示にアクセスするための指示書を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「治療」は処置および/または予防を意味する。治療効果は、CMV感染に関係する疾患状態の回避、遅延、抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0045】
本発明の文脈において使用する場合、用語「処置」は、疾患または障害の治療的処置ならびに予防的もしくは抑制的手段を含むことを意味する。したがって、例えば用語、処置は、疾患または障害の開始の前後に薬剤を投与して、疾患または障害の全ての徴候を予防または除去することを含む。別の例として、疾患の症状に対抗するために疾患の臨床的発症後に薬剤を投与することは、疾患の「処置」を含む。例えば、このことは、生物体の未感染細胞へのCMVの伝播の予防を含む。句「CMV感染を減少する工程」はしばしば、本明細書において、臨床医によく知られた手段で決定されるCMVに感染した患者の感染のレベルを低減することを含む処置方法のことを言及するために使用される。
【0046】
説明:
サイトメガロウイルス(CMV)は、インビボにおいて、上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞などの多くの細胞型に感染する。上述の背景の題材で要約されるように、該ウイルスは線維芽細胞の細胞膜と融合するが、網膜色素上皮細胞および臍帯静脈内皮細胞にはエンドサイトーシスを介して進入するという種々の研究が報告されている。上皮もしくは培養内皮細胞と比較して培養線維芽細胞中のCMV増殖は比較的容易であるために、上記で要約された研究などの研究は、線維芽細胞増殖CMV株を使用して結論付けられている。同様に、培養線維芽細胞は典型的に、ワクチン用の弱毒化ウイルス株の開発などの臨床的応用のためにCMV増殖において、えり抜きの細胞型である。
【0047】
ここで、本発明により、CMV粒子が産生される細胞型はその後の感染においてCMVの行動に大きな影響を有することが示された。したがって、例えばCMVがエンドサイトーシスによって上皮細胞に進入することがこれまでに報告されているが、本発明では、これが培養上皮細胞中で増殖したCMVではなく線維芽細胞中で増殖したCMVの進入形態であることを説明する。上皮細胞増殖CMVは、主に細胞膜との融合により上皮細胞に進入する。この異なる進入形態は、種々の生理学的な結果を有する:これは感染が進行する動態に影響し、感染に対する細胞応答に顕著に影響する。例えば、上皮細胞中で増殖したウイルスは、線維芽細胞中で増殖したウイルスに感染した細胞と比較して劇的に弱められた細胞応答を生じる。線維芽細胞増殖ウイルスに感染した後に発現する多くの細胞抗ウイルス遺伝子は、上皮細胞増殖ウイルスの感染後には発現しない。結果的に、上皮細胞中で増殖したCMVは、線維芽細胞中で増殖したCMVとは異なるワクチンの振る舞いをすることが予想されるので、CMVワクチンの製造について新規で予期されない多様性の供給源がもたらされる。同様に、内皮細胞またはCMVが感染し得る特殊化された細胞型(例えば、ニューロン、中枢神経系もしくは末梢神経系の他の細胞、平滑筋細胞、肝細胞、ストロマ細胞、マクロファージまたは樹状細胞)などの他の細胞型におけるCVの増殖は、CMVワクチンの製造についてさらなる新規の多様性の供給源を生じるはずである。
【0048】
したがって、本発明の一局面は、CMVを増殖させる細胞型の選択に関連する変動性を活かしたCMVワクチンの作製方法を特徴とする。別の局面は、上述の方法を実施するためのキットを特徴とする。本発明の別の局面は、CMV感染の予防または治療のためのワクチン組成物、およびかかる組成物を使用した個体の免疫方法を特徴とする。本発明のこれらの局面の種々の態様を以下に記載する。
【0049】
CMVワクチンの製造方法:
本発明の局面による方法は、(1)CMV株または分離物を提供する工程、(2)該株または分離物を選択された細胞型の培養細胞で増殖する工程、および(3)CMVワクチンの製造における使用のために、かかる細胞型において増殖して生成したCMVビリオン(本明細書において「細胞型条件付けCMV」という)を回収する工程を含む。
【0050】
ワクチン開発のための使用前のCMVを増殖するために選択された細胞型は、ウイルス粒子の産生を生じるCMV感染を可能にする任意の細胞株であり得る。該ウイルス粒子はいくつかのアッセイにおいて高度に感染性であり得るか、または該粒子は多くのアッセイにおいて制限された感染性もしくは非感染性を示し得る。適切な細胞型としては、限定されないが、(1)上皮細胞株、例えば本明細書に例示されるARPE-19および他の網膜色素上皮細胞株、例えば上皮細胞株K-1034(Ando, Y., et al. 1997, Arch. Virol.142(8): 1645-1658);正常ヒト結腸粘膜由来のHCMC(Smith, JD, 1986, J Virol. 60(2): 583-588);Caco-2腸上皮細胞(Esclatine, A., et al., 2000, J. of Virol. 74(1): 513-51);SW480、HCT116、HeLa、H1299およびMCF-7(後者の5種類に関してはWang. D. & T. Shenk, 2005. J. Virol. 79: 10330を参照)、(2)内皮細胞株、例えばSV-40ウイルス巨大T抗原により不死化されたヒト微小血管内皮細胞株、HMEC-1(Guetta, E., et al., 2001, Cardiovascular Research 50: 538-546);HUVECおよびLMVEC(後者の2種類に関してはWang. D. & T. Shenk, 2005, J. Virol. 79: 10330を参照)、(3)ニューロン細胞、例えばSK-N-SH、SK-N-ASおよびIMR-32(Wang, D. & T. Shenk, 2005. J. Virol. 79: 10330参照)ならびに種々の組織/臓器供給源由来の始原上皮、内皮、平滑筋、マクロファージおよび樹状細胞が挙げられる。
【0051】
ワクチンとして開発しやすい任意のCMVまたはCMVの組合せは、それらが少なくとも1つの選択された細胞型において増殖可能である限り、該方法のためのCMVの供給源としての使用に適切である。一態様において、CMVはヒトCMV(HCMV)であり、先に単離および特徴付けされた分離物またはHCMVもしくはHCMV様ウイルスの新規の分離物のいずれかである。別の態様において、CMVは別の霊長類起源であり、限定されないが、チンパンジー(Davison, AJ et al. 2003, J. Gen. Virol. 84: 17-28)およびアカゲザル(Hansen, SG et al. 2003. J. Virol. 77:6620-36;Rivailler. P et al, 2006. J. Virol. 80:4179-82)が挙げられる。CMVは選択された供給源由来の改変されないウイルスであり得るか、あるいは遺伝的改変または2種類以上の異なるCMV株もしくは分離物由来の因子の組合せにより生成されるキメラウイルスであり得る。
【0052】
キメラウイルスの作製方法は当該技術分野で公知である。このために、少なくとも6種類のヒトCMV株が感染性の細菌人工染色体(BAC)としてクローニングされ配列決定されている(Murphy, E et al. 2003. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 14976-14981)。このBAC配列は、GenBank受託番号AC146999(本明細書に記載されるBADrUL131バリアントを作製した実験室株AD169);AC146851(実験室株Towne);AC146904(臨床分離物PH);AC146905(臨床様分離物Toledo);AC146906(臨床分離物TR);およびAC146907(臨床分離物FIX)で利用可能である。少なくとも2種類のヒトCMV株がBACクローニンされる前に配列決定されており、GenBank受託番号BK000394(実験室株AD169)およびAY446894(臨床分離物Merlin)で利用可能である。チンパンジーCMV株の全ゲノムはGenBank受託番号AF480884で利用可能である。2種類のアカゲザルCMV株のゲノム配列も利用可能である(受託番号AY186194およびDQ205516)。本願の技術を利用して、当業者は、前述の配列のいずれか、または任意の他の公開利用可能CMV配列を、キメラCMVを調製するため、またはCMVを他の方法で遺伝的に改変するために使用し得る。
【0053】
本発明によると、線維芽細胞中で繰り返し継代されたCMVの実験室株は、選択された細胞株での増殖により成功裡に条件付けできることが示された。例えば、本明細書の実施例に記載するように、UL131 ORFが修復された反復継代AD169 HCMV株のBACクローンであるBADrUL131は、エレクトロポレーションにより培養ヒト包皮線維芽細胞中に導入され、得られたウイルス調製物は一度上皮細胞株ARPE-19中で増幅された。したがって、本発明の種々の態様は、条件付け工程で選択された細胞型とは異なる細胞型で継代されたCMV(またはCMVのゲノム)の使用を含む。例えば、CMV株は線維芽細胞中で複数回継代されて上皮細胞で増幅され、その後ワクチンの製造に使用され得る。CMVは選択された細胞型において一回以上増幅/増殖され得ることが理解されよう。
【0054】
好ましい態様において、本発明の方法を使用して、ワクチンとしての使用のために弱毒化生CMVを生成する。ウイルスの弱毒化方法は当該技術分野で公知である。好ましくは、弱毒化されたCMVは低い感染能および/または病原性、例えば潜伏および活性化を示すが、CMV感染に対し宿主を治療または保護する免疫応答を誘導する能力は維持する。弱毒化されたCMV株の例としては、限定されないが、実験室株、例えば線維芽細胞においてほぼ優先的に複製するAD169およびTowneが挙げられる。必要に応じて改変されて適当な向性に必要な表面タンパク質またはタンパク質複合体を生成するかかる弱毒化された株は、上述のように上皮細胞または線維芽細胞、その後上皮細胞中で、本発明のワクチン組成物における使用のために増殖され得る。
【0055】
培養細胞、特に線維芽細胞中の連続継代は、CMVの弱毒化のために使用され得る。ウイルス感染宿主細胞の反復継代は、ウイルスの十分な弱毒化が達成されるまでインビトロで行われる。感染性または病原性が低減されたウイルスを選択するために、継代は、特異的な環境条件、例えば調整された温度、pH、湿度下で行われ得る。この弱毒化の方法が使用される場合、その後連続的に継代されたウイルスは1回以上の継代の間に選択された細胞型で増幅され、本発明のワクチン組成物に使用されるCMVが生成される。
【0056】
突然変異誘発を使用してウイルスを弱毒化することも可能である。例えば、当該技術分野に公知の技術に従い、CMVビリオンを紫外線または電離放射線または化学突然変異誘発物質に曝露し得る。キメラウイルスを生成するためのそれらの使用に加えて、組換え技術を使用して弱毒化されたCMVビリオンを生成することも可能である。例えば、部位特異的突然変異誘発、遺伝子置き換えまたは遺伝子ノックアウト技術を使用して、感染性、病原性または潜伏期が減衰されたウイルスを生じ得る。ノックアウト突然変異誘発によるCMVの改変の例はWO/2007/038316に記載され、1つ以上の潜伏性促進遺伝子中のゲノムが欠損した、改変された進入または潜伏状態の保持の能力を示すCMVが記載される。
【0057】
他の態様において、選択された培養細胞から分離されたCMVは、不活性化または死滅されてワクチン組成物に使用される。例えばホルマリンなどの化学物質を用いたウイルスの不活性化または死滅の方法は当該技術分野で周知である。死滅または不活性化されたCMVは、ウイルス粒子の成分の全てまたは実質的な部分を含むので、選択された細胞型における増幅によって生じる多様性はワクチン組成物に維持されることが当業者には理解されよう。
【0058】
本発明の方法を使用して、異なる選択された細胞型で増殖されたCMVの組合せが生成され、それにより、製造されるワクチンにさらなるレベルの多様性が付与され得る。一態様において、1つのCMV分離物または株を使用して、2種類以上の異なる培養細胞株、例えば網膜上皮細胞および内皮細胞に感染させる。その後、それぞれの細胞型で増幅して生成したCMVを、1つのワクチンでの使用のために合わせる。別の態様において、CMVの2種類以上の異なる臨床分離物または株を使用して1つの選択された細胞株に感染させ、かかる細胞型で増幅して生成したCMV集団の複数の株または複数の分離物を使用してワクチンを製造する。さらに別の態様において、複数の分離物または株を使用して2種類以上の異なる培養細胞株に感染させ、それぞれの細胞型で増幅して生成したCMV集団を、ワクチンでの使用のために組み合わせる。
【0059】
本発明の別の局面は、上述の方法によるCMVワクチン材料の製造のためのキットを特徴とする。該キットは、1つのパッケージ中の別々の容器、または使用に適切な場合は仮想のパッケージ中の別々の容器、およびキット構成要素、1つ以上の選択された細胞型の細胞株のアリコート、ならびに1つ以上のCMV分離物もしくは株、または選択された培養細胞株に導入されその中で増幅されるかかるCMV株のゲノムを有するベクターを含む。かかるキットはまた、典型的に、方法の種々の工程を実施する方法のための指示書または指示書へのリンクを含む。任意に、キットはまた、培養培地、ならびに細胞培養およびウイルス操作の実施に適した他の試薬を含み得る。
【0060】
ワクチン組成物および使用方法:
本発明の別の局面は、適切な医薬担体もしくはアジュバントと組み合わせたサイトメガロウイルス(CMV)集団またはそのビリオン成分を含む免疫原性組成物(本明細書において互換的にワクチン組成物という)を特徴とし、ここでCMVは、選択された細胞型、例えば培養上皮細胞中の増殖により得られる。上述のように、これまで、CMVワクチンは通常線維芽細胞中で増殖されたCMVを使用して調製されていた。しかしながら、本発明によると、上皮細胞中での増殖により多くの異なる様式で線維芽細胞増殖ウイルスとは異なるウイルスが生じることが示される。上皮細胞中で生成されたウイルスは主に細胞膜と融合するが線維芽細胞由来のウイルスのほとんどはレセプター媒介性エンドサイトーシスにより進入する。また、上皮細胞生成ビリオンは、線維芽細胞生成粒子よりも高い固有の「外部からの融合(fusion from without)」活性を有し、感染の動態に影響を及ぼした。さらに、これらの2つのウイルス調製物は、感染上皮細胞の転写プロフィールの著しく異なる変化で示されるように、異なる細胞シグナル応答を誘発する。
【0061】
特に、上皮細胞中の増殖で生成されたCMVは、線維芽細胞中の増殖で生成されたウイルスの同等の株または分離物と比較して、1つ以上の以下の特徴を有する。第1に、上述のように、該CMVは、宿主細胞の細胞膜との融合による宿主細胞への進入で区別され得る。また、上皮細胞で生成されたCMVは、培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団と比較して、宿主細胞のより大きなビリオン媒介性細胞-細胞融合、ならびに培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団と比較して、宿主細胞において速められたウイルス増殖を示す。また、該CMVは、線維芽細胞中で増殖された同等のCMVと比較して、弱い細胞応答を誘起する。感染の10時間後、約2/3少ない遺伝子(約50対約150遺伝子)は、発現レベルにおいて2.5倍以上の変化を示す。また、上皮増殖CMVは、感染後に発現が変化する(増大または減少する)宿主遺伝子の特定のプロフィールで特徴付けられ得る。これらの遺伝子発現プロフィールは実施例に詳述され、GenBank受託番号AK094860、NM_145023、NM_133492、NM_001039580、NM_001004301、NM_001034、AI369525、AK123066、NM_005345、NM_020731、BC071797、NM_003414、NM_000800、NM_138467、AK090803、AL133118、NM_001165、BG001037、NM_024861、NM_001043、NM_016239、NM_001018084、NM_001037442、NM_017600、NM_022097、NM_175868、NM_032266、NM_003841、NM_005039、NM_145051、NM_004294、AW856073、NM_024050、AF085968、NM_080927、NM_022115、AK056703、NM_000808、NM_012377、NM_006793、NM_031466、NM_005185、NM_139173、BX360933、NM_016125、NM_002104、NM_032188、NM_004185、NM_004843またはNM_173550で示される1つ以上の遺伝子の発現の変化を伴い得る。
【0062】
本発明のこの局面において、本発明の前述の局面と同様に、ワクチンとして開発しやすいCMVまたはCMVの組合せは、CMVが少なくとも1つの上皮細胞株または別の選択された細胞型において増殖可能であるならば、前述のCMV集団の供給源としての使用に適切である。一態様において、CMVはHCMVまたはHCMV様ウイルスである。別の態様において、CMVは別の霊長類由来であり、限定されないが、上述のようにチンパンジーおよびアカゲザルが挙げられる。CMVは選択された供給源由来の未改変ウイルスであり得るか、あるいは上述のように遺伝的改変または2種類以上の異なるCMV株もしくは分離物由来の因子の組合せにより生成されるキメラウイルスであり得る。
【0063】
好ましい態様において、ワクチン組成物は、全てが当業者に公知である上述に概略される方法で生成され得る弱毒化生CMVを含む。他の態様において、選択された培養細胞から分離されたCMVは、不活性化または死滅されてワクチン組成物に使用される。
【0064】
ワクチン組成物は、さらなる多様性を生じるために1つの培養上皮細胞もしくは複数の異なる培養上皮細胞、または別の細胞型の細胞で増殖され得るCMVの異なる株または分離物の組合せを含み得る。さらに、生きた弱毒化CMVを、死滅もしくは不活性化CMV、またはCMVの免疫原性成分と組み合わせて、組合せワクチン、例えば熱死滅CMVと組み合わせた弱毒化生CMVもしくはサブユニットワクチンのための物質と組み合わせた弱毒化生CMV、または3種類全ての物質の組合せが製造され得る。サブユニットワクチンに適した免疫原CMVポリペプチドおよび複合体の例は、発明の名称「Cytomegalovirus Surface Protein Complex for Use in Vaccines and as a Drug Target」のWO2007/146024に記載される。
【0065】
ワクチン組成物はさらに、1つ以上のアジュバントを含み得る。アジュバントは、ワクチンの抗原に対する免疫応答を増強する任意の物質であり得る。本発明での使用に適したアジュバントの非限定的な例としては、フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、界面活性剤、例えばヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、デメチルジオアクタデシル(demethyldioactadecyl)臭化アンモニウム、N,N-ジオアクタデシル-N'-N-ビス(2-ヒドロキシエチルプロパンジアミン)、メトキシヘキサ-デシル-グリセロール、プルロニックポリオール、ポリアニオン、例えばピラン、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン、デキストランサルフェート、ポリブレン、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポール、マレイン酸エチレン、水酸化アルミニウムおよびリン酸化アルミニウムペプチド、油または炭水化物エマルジョン等が挙げられる。
【0066】
ワクチンは、水またはアルコールなどの水溶液中、またはハンクス液、リンゲル液、もしくは生理食塩水バッファ、例えばPBSなどの生理学的に適合性のバッファ中に調製され得る。また、ワクチン製剤は、例えば使用前に滅菌水、食塩水またはアルコールなどの適切なビヒクルで再構成することにより、使用の少し前に被験体への投与に適した液体製剤に変換されることを目的とする固形製剤として調製され得る。
【0067】
ワクチン組成物はまた、徐放性ビヒクルまたは貯蔵調製物を使用して調製され得る。かかる長期作用製剤は、埋め込み(例えば皮下もしくは筋内)または筋内注射により投与され得る。したがって、例えば、ワクチンは適切なポリマー物質もしくは疎水性物質(例えば許容され得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは溶解しにくい誘導体、例えば溶解しにくい塩として調製され得る。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性製剤との使用に適した送達ビヒクルとして使用され得る。化学的性質に依存して、徐放性ビヒクルは、数時間〜数日〜数週間〜数ヶ月に渡り抗原を放出し得る。
【0068】
ワクチン組成物はさらに、1つ以上の抗酸化剤を含み得る。例示的な還元剤としては、メルカプトプロピオニルグリシン、N-アセチルシステイン、β-メルカプトエチルアミン、グルタチオン、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸塩、もしくはメタ重亜硫酸ナトリウム、または類似の種が挙げられる。また、抗酸化剤としては、ビタミンE、C、ルテイン(leutein)、キサンタン、βカロチンならびに亜鉛およびセレンなどのミネラルなどの天然の抗酸化剤が挙げられ得る。
【0069】
ワクチン組成物はさらに、安定化剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤および単糖類、多糖類、ならびに浸透圧バランスを変化させる塩として機能するためのさらなる物質を組み込み得る。ワクチンはさらに、ワクチン効力を高めるための免疫刺激分子を含み得る。かかる分子は、免疫応答を強化し得、炎症を誘導し得、かつ任意のリンフォカインまたはサイトカインであり得る。サイトカインの非限定的な例としては、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、マクロファージ炎症因子等が挙げられる。
【0070】
ワクチンは、注入または注射(静脈内、動脈内、筋内、皮内、皮下、鞘内、十二指腸内、腹腔内等)用に調製され、注入または注射により投与され得る。ワクチンはまた、鼻腔、膣、直腸、経口、局所、口腔、経粘膜または経皮により投与され得る。
【0071】
CMV感染の治療に効果的な抗原用量は、経験的に、当該技術分野で十分に確立された手段により決定され得る。ワクチンの効果的な用量は、任意の数の変形物、例えば限定されないが、被験体の大きさ、身長、体重、年齢、性別、全体的な健康状態、製剤の種類、投与の形態もしくは様式、ウイルスが活性か潜伏性か、患者が二次感染に苦しんでいるかどうか、またはその他の関連する状態に依存し得る。
【0072】
ワクチン養生法も上述の要因に基づき得る。ワクチン接種は、被験体の生涯、例えば胎児の発生から成人までの任意の時点に行い得る。完全な保護のためには追加投与、つまりブースターが必要とされることもある。適切な免疫保護が達成されているかどうかを決定するために、ワクチン接種後に患者のセロコンバージョンおよび抗体力価がモニターされ得る。
【0073】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するために示される。本実施例は本発明の説明を目的とし、限定を目的とはしない。
【実施例】
【0074】
(実施例)
ヒトサイトメガロウイルスは2つの異なる経路を使用して網膜色素上皮細胞に進入する
本実施例に示される実験結果により、2種類の異なる細胞型で生成されたHCMVは異なる経路を介して上皮細胞に進入することが示される。主に上皮細胞中で生成されたビリオンは細胞膜での融合を介して進入するが、線維芽細胞由来のビリオンはpH依存性エンドサイトーシスによって進入する。2つのウイルス調製物は明らかに異なる細胞応答を誘導した。
【0075】
材料および方法
生物学的試薬. 10〜15回継代のヒト包皮線維芽細胞(HFF)を、10%新生児ウシ血清を含む培地中で維持した。24〜34回継代のヒトMRC-5胎児肺線維芽細胞およびARPE-19網膜色素上皮細胞(American Type Culture Collection)を、10%ウシ胎仔血清を含む培地中で維持した。ヒト腎臓近位管上皮細胞(hRPTEC)(Cambrex)を、10%ウシ胎仔血清を含む培地中で増殖させて継代4〜5回で使用した。
【0076】
BADwtはAD169 HCMV株のBACクローン由来である;BADrUL131(19、21)は、UL131 ORFが修復されたBADwtの派生物である;BFXwtはVR1814臨床HCMV分離物のBACクローン由来である。ウイルスはBAC DNAをHFFにエレクトロポレーションして調製され、得られたウイルス調製物は、他に特定されなければ、ARPE-19細胞またはHFFで一度増幅した。無細胞ビリオンはソルビトールクッションを介した遠心分離により部分的に精製し、血清非含有培地に再懸濁した。MRC-5細胞のプラークアッセイでウイルス力価を測定した。BADrUL131の中和は、精製抗pUL130モノクローナル抗体(3E3)を使用して(19)、プラーク減少アッセイによりアッセイした(19)。
【0077】
抗IE1モノクローナル抗体IB12は以前に記載されていた(21)。ウサギ抗Sp100ポリクローナル抗体(Chemicon)を使用してND10を可視化した。
【0078】
電子顕微鏡検査. ARPE-19細胞を4℃で1時間ウイルスに曝露し、冷PBSを用いて2回洗浄し、結合しなかったウイルスを除去し、増殖培地(37℃)を15分間添加し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞をすすぎ、電子顕微鏡検査のために固定および処理し、80kvでFEI Tecnai-T12顕微鏡で検査した。
【0079】
エンドソーム酸性化に対する感染の依存性についてのアッセイ. 37℃で1時間、ARPE-19をNH4ClまたはバフィロマイシンA1(BFA)(Sigma)で前処理し、その後インヒビターの継続存在下で感染させた。16時間後、培養物を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100で浸透性にした。モノクローナル抗体IB12(21)およびAlexa 546コンジュゲート二次抗体を使用してIE1を免疫蛍光により同定し、DAPIで核を染色した。未処理細胞に対する薬物処理IE1発現のパーセントで阻害を計算した。
【0080】
ビリオンタンパク質の融合活性の解析. 「外部からの融合」をアッセイするために、ARPE-19細胞を90%コンフルエントまで増殖させて感染させた。37℃で1時間後、接種物を除去し、200μg/mlのホスホノギ酸(PFA)を含む培地を添加してウイルスのDNA合成を阻害した。合胞体形成の視覚的観察により融合をモニターした。
【0081】
ビリオン融合活性の定量的解析にルシフェラーゼレポーターアッセイを適合させた。それぞれT7プロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を有するプラスミドおよびpcDNA3-T7ポリメラーゼプラスミドを用いたエレクトロポレーション(90〜95%効率)により、レポーターおよびエフェクターのARPE-19細胞を調製した。トランスフェクションの24時間後、細胞を1:1の比で混合し、37℃でさらに16時間インキュベートした。次いで、混合した集団を4℃で1時間HCMVビリオンに曝露し、その後冷PBSで単層を2回洗浄し、終pH4.5〜8の範囲のバッファ(10mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸および10mM HEPESを加えたPBS)を添加した。37℃で3分後、バッファを除去して正常増殖培地を添加した。感染の6時間後、細胞を溶解して、ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性をアッセイした。
【0082】
細胞転写応答のアッセイ. コンフルエントなARPE-19細胞を24時間血清飢餓状態にして、偽感染または感染を行った。感染の6または10時間後、Trizol(Invitrogen)を使用して全RNAを抽出し、RNeasyカラム(Qiagen)で精製した。RNA試料を増幅して、Agilent低RNAインプット蛍光直鎖増幅キットを用いて標識した(シアニン-3)。チップごとの違いを調整するために、参照RNA(Clontech)を標識して(シアニン-5)、偽感染またはHCMV感染細胞から調製したプローブと共にハイブリダイズさせた。Aligentヒト44Kオリゴヌクレオチドアレイを用いてハイブリダイゼーションを2回行った。5ミクロン解像でAgilentスキャナーを使用してアレイをスキャンし、Agilent Feature Extractionソフトウェアで画像を解析してハイブリダイズスポットおよびバックグラウンドサブトラクションについての蛍光シグナルの強度を測定した。相対的RNA変化の標準化および定量のためにAgilent GeneSpring GXソフトウェアを使用した。
【0083】
結果
線維芽細胞由来ビリオンは、上皮細胞由来ビリオンよりも遅い反応速度でARPE-19細胞における前初期遺伝子発現を活性化する。AD169 HCMV株(BADwt)は、そのUL131遺伝子の変異のためにARPE-19上皮細胞において不充分に複製する(10. 21)。BADrUL131をもたらすAD169における変異の修復は、これらの細胞内への良好な進入に必要とされるgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131ビリオン糖タンパク質複合体(19. 20)の作製を可能にすることにより上皮細胞向性を回復させる(21)。
【0084】
ARPE-19上皮細胞(epiBADrUL131)中で増殖させたBADrUL131は、その上皮細胞における遺伝子発現のプログラムを、HFF線維芽細胞(fibroBADrUL131)中で増殖させたBADrUL131よりも急速に開始する(図1A)。ARPE-19細胞を、epiBADrUL131で感染させた場合、細胞の約17%が感染6時間後(hpi)に、検出可能なIE1タンパク質を発現した。IE1発現は、核内のND10の破壊を伴った。対照的に、fibroBADrUL131での感染により、6hpiにARPE-19細胞の2.8%のみにおいてIE1発現がもたらされた。しかしながら、IE1発現細胞の数は時間とともに増加した。2つの細胞型で生成させたウイルスでの24hpiにおいて、IE1発現ARPE-19細胞のパーセンテージに有意差はなかった(図1B)。
【0085】
HFF対ARPE-19細胞において生成させたビリオンは、異なる経路によってARPE-19細胞内に進入する。ARPE-19細胞由来ウイルス対HFF由来ウイルスのIE1蓄積の異なる反応速度が、ウイルスの遺伝子発現が起こる前の事象によって生じるのかどうかを調べるため、ウイルス進入の電子顕微鏡検査を行なった。epiBADrUL131またはfibroBADrUL131とともにインキュベートしたARPE-19細胞が、4℃で細胞表面に結合するのを可能にし、培養物を15分間 37℃にシフトし、顕微鏡検査のための処理前に内在化を可能にした。各試料について、40〜50細胞を検査し、細胞の少なくとも90% がそのままのビリオンまたはキャプシドのいずれかを示した。各細胞内のウイルス粒子の数は2〜8個で異なり、ほとんどの細胞は2〜3個の粒子を示した。
【0086】
epiBADrUL131感染ARPE-19細胞において、ビリオンは、もっぱら細胞表面に見られ、ビリオンの約97%が先端膜に存在した。一部の粒子は細胞に近接していたが、切片では接触の証拠が示されなかった(図2A、パネルa)、他の一部のものは、原形質膜での融合プロセスにおいて捕捉された(図2A、パネルbおよびc)。稀に膜の内側表面下にキャプシドが観察された: 実際、2つの実施例のみで同定された(図2A、パネルdおよびe)。エンベロープを有するビリオンは、細胞内部に見られなかった。この結果は、epiBADrUL131が原形質膜との融合によってARPE-19細胞内に進入することを示す。対照的に、fibroBADrUL131感染細胞は、ビリオンを、細胞膜 (全体の約65%)および小胞内の細胞内部(全体の約35%)含んだ(図2B)。小胞内の粒子はエンベロープを有し、これは、粒子がエンドサイトーシスによって進入したことを示す。
【0087】
線維芽細胞内で増殖したBFXwt臨床分離物の進入もまた検査した。この臨床分離物は、ARPE-19細胞内の小胞内に蓄積し(図2C)、HCMVの臨床分離物による細胞進入のモデルとしてのBADrUL131の妥当性を支持する。
【0088】
線維芽細胞由来ウイルスによるARPE-19細胞の感染はpH依存性であるが、上皮細胞由来ウイルスはそうでない。エンドサイトーシス(1、4、10)によって細胞に進入する多くのウイルスは、ビリオンエンベロープがエンドソーム膜と融合し、キャプシドを細胞質内に放出するためにエンドソームの酸性化を必要とする。エンドソームのpHを緩衝化するNH4ClおよびエンドソームのATPaseプロトンポンプをブロックするバフィロマイシンA1(BFA)を、ARPE-19細胞の感染に対する効果について試験した。いずれかの薬剤での前処理後、細胞を感染させ、薬物含有培地中でさらに16時間培養し、成功裡の感染を、IE1陽性細胞についてアッセイすることによりスコア化した。上記の超微細構造解析と一致して、いずれかの薬剤での前処理はepiBADrUL131感染に対してわずかに中程度の効果を有した(図3A)。対照的に、両方の薬剤は、fibroBADrUL131感染後のIE1発現を用量依存的様式で阻害し、これは、線維芽細胞で生成されたウイルスの進入がエンドソームの酸性化に依存性であることを示す。該薬剤がepiBADrUL131による進入に対してほとんど効果を有しなかったという事実は、fibroBADrUL131の阻害が毒性によって生じたものでないことを示す。
【0089】
次に、他の型の上皮細胞および線維芽細胞において増殖したウイルスがARPE 19-およびHFF由来ビリオンと同じ性質を示すかどうかを調べた。hRPTEC上皮細胞およびMRC-5線維芽細胞由来のウイルスストックを用いて、NH4ClまたはBFAでの処理後のARPE-19細胞を感染させ、これらの細胞は、インヒビターに、ARPE-19細胞またはHFFにおいて増殖したウイルスと全く同様に応答した(図3B、左パネル)。したがって、2つの異なる線維芽細胞において生成されたBADrUL131は、2つの異なる上皮細胞株において生成されたウイルスよりもインヒビターに対して相当感受性であった。
【0090】
また、ARPE-19細胞内へのBFXwt臨床分離物の進入に対するエンドソームのpHの効果もアッセイした(図3B. 右パネル)。NH4ClまたはBFAは、線維芽細胞で生成されたBFXwtでの感染によって生成したIE1陽性ARPE-19細胞の数を有意に減少させたが、上皮細胞由来BFXwtでの感染後では、わずかな阻害のみ観察された。
【0091】
上皮細胞において生成されたビリオンは、線維芽細胞由来ビリオンよりも高い固有融合活性を有する。他のヘルペスウイルスの場合と同様、HCMV臨床分離物は、3〜5hpiという初期に検出され得る細胞-細胞融合を促進する。ウイルスエンベロープタンパク質の新規合成なしでのシンシチウムの急速な生成は、これが、エンベロープを有するビリオンが標的細胞と直接融合するプロセスである「外部からの融合」によって促進されることを示す。上皮細胞対線維芽細胞において生成されるBADrUL131は異なるように上皮細胞に進入するため、これらが異なる「外部からの融合」活性を示し得る可能性を試験した。
【0092】
Mock感染ARPE-19細胞は、シンシチウムを示さず(図4A)、シンシチウムは、fibroBADrUL131での感染後に稀に見られた(図4B)。対照的に、epiBADrUL131への曝露後、細胞-細胞融合は6hpiという早期に検出され、核の20〜30%が24hpiまでにシンシチウム内で凝集した(図4C)。感染後期への進行をブロックするPFAで細胞を処理したため、融合は、epiBADrUL131粒子によって誘導されたはずであり、新たに発現されたビリオンタンパク質によって誘導されたものでないはずであった。
【0093】
ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用し、ウイルスの粒子の融合活性ならびに外部からの融合に対するpHの効果を定量した。レポーターおよびエフェクター細胞は、それぞれ、T7プロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドまたはT7 RNAポリメラーゼ発現プラスミドを受けた。2つのARPE-19誘導体を混合し、ルシフェラーゼ発現をアッセイすることにより感染依存性融合を定量した。epiBADrUL131は、一貫してfibroBADrUL131よりも高い融合活性を誘導した(図4D)。pH7〜8において、fibroBADrUL131の活性は、epiBADrUL131よりも約3倍低かった。ウイルス吸着後に細胞を低pHバッファーで処理すると、両方のウイルス調製物は中程度に増強された融合を媒介した。このアッセイにおいて、BADwtは融合を誘導しなかった。
【0094】
進入様式は、HCMV細胞向性を改変しない。上記のように、ヘルペスウイルスは、感染ウイルスが生成される細胞に応じて特定の細胞型への進入を好むという先例がある。この現象は、上記で観察されたものとは異なる、すなわち異なる細胞型由来のHCMV調製物は上皮細胞に異なる機構によって進入する。それでもなお、異なる進入機構が複製効率および収率に影響を及ぼし、向性効果をもたらす可能性が残った。したがって、線維芽細胞と比べて、進入様式が上皮細胞におけるHCMVプラーク生成に影響するかどうかを調べるための実験を行なった(表1)。BADrUL131のストックをARPE-19、hRPTEC、HFFまたはMRC-5細胞において作製し、ARPE-19またはMRC-5細胞でのプラーク形成についてアッセイした(表1)。MRC-5細胞よりもわずかに多くのプラークがARPE-19において生成されたが、上皮細胞由来ウイルスも線維芽細胞由来ウイルスも、一方の細胞型において他方と比べてプラークは優先的に生成されなかった。
【0095】


a最初にHFFにおいて滴定した2×105pfuのBADrUL131を用いてARPE-19またはMRC5細胞を感染させた。
b MRC5力価に対するARPE-19力価の比。
【0096】
pUL130特異的抗体は、上皮由来ウイルスおよび線維芽細胞由来ウイルスの両方によるARPE-19感染をブロックする。上皮細胞(19)のHCMV感染を中和するpULl30特異的抗体は、いずれかの進入様式によるARPE-19感染をブロックすることができた(図5A)。該抗体は、用量依存的様式で両方のウイルスによる感染を阻害したが、epiBADrUL131はfibroBADrUL131よりもいくぶん、中和に対して感受性であった。抗体が両方の進入様式を阻害する能力は、融合が原形質膜で起ころうとエンドソーム膜で起ころうとpUL130含有複合体は機能を果たすという結論を強化する。
【0097】
以前に、gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体は、この複合体を欠く実験室株が効率的にエンドサイトーシスを受けるため、HCMVが内皮または上皮細胞によって内在化されるのに重要でないことが報告された(10)。しかしながら、その後のエンドソーム膜との融合および細胞質内への離脱には、該複合体が必要とされる。これらの以前の結果と一致して、pUL130に対する抗体は、ARPE-19細胞においてアッセイした場合、epiBADrUL131、fibroBADrUL131またはBADwtの結合または内在化をブロックしなかった(図5B)。しかしながら、内在化された線維芽細胞由来ウイルスの総量は、上皮細胞由来ウイルスのものより少なかった。これは、内在化速度の低下を反映している可能性があり、線維芽細胞由来ウイルスによるIE1発現の開始の遅延と一致し得る(図1)。
【0098】
epiBADrUL131およびfibroBADrUL131は、ARPE-19細胞において異なる転写応答を誘導する。多くの他のウイルスと同様、HCMVは、進入中に細胞シグナル伝達経路を調節する。細胞内シグナル伝達の改変の結果の1つは、実質的にビリオン糖タンパク質と宿主細胞との接触によって生じる細胞トランスクリプトームにおける劇的な変化である。
【0099】
したがって、ARPE-19細胞の転写応答に対する2つの進入経路の影響を調べた。細胞を偽感染させるか、またはepiBADrUL131もしくはfibroBADrUL131に感染させ、6または10時間後に全RNAを精製した。マイクロアレイを使用することにより相対RNAレベルを解析し、レベルが偽感染対照と比べて≧2.5倍変化した感染細胞RNAを同定した(表2〜5)。発現が増大または減少したRNAの分布を図6Aにベン図によって示す。
【0100】



【0101】





【0102】



【0103】







【0104】
epiBADrUL131感染の6時間後の時点で、偽感染細胞と比べて47個のRNAのレベルが変化し、121個のRNAが偽感染細胞と比べてfibroBADrUL131感染において改変された。調節されたRNAの組は、2つのウイルスで実質的に異なった; epiBADrUL131またはfibroBADrUL131いずれかでの感染後、19個のみのRNAが改変された。一方のウイルスによって遺伝子が≧2.5倍改変されたが、他方のウイルスではカットオフ未満に含まれるより中程度の改変が誘導された場合がいくつかあり得たが、データの検討により、これは一般的でないことが明らかになった。10hpiで、epiBADrUL131によって調節された宿主細胞RNAの数はわずかに増加した(50RNA)が、より実質的な増加がfibroBADrUL131で観察された(153 RNA)。後の時点で、両方のウイルスによって調節されたRNAの数は限定的な程度まで増加した(28 RNA)。マイクロアレイの結果は、感染によって改変されなかった1つのRNAおよび改変された6つのRNAのリアルタイムRT-PCRによって確認された(図6B)。
【0105】
fibroBADrUL131対epiBADrUL131によるRNAレベルの調節をさらに比較するため、4つの遺伝子存在学(Gene Ontology)群: 宿主-病原体相互作用(GO:0030383)、細胞連絡(GO:0007154)、ウイルスの生活環(GO:0016032)および細胞-細胞シグナル伝達(GO:0007267)で構成された遺伝子リストを用いてアレイの結果をフィルタリングした。fibroBADrUL131感染ARPE-19細胞において2.5倍より大きく調節されたmRNAのほぼ3分の1(222のうち70)は、併合群に存在した(表6)。著しく対照的に、epiBADrUL131によって誘導された86個のRNAのうち1個のみがこれらの4つ遺伝子存在学群において見られた。2つのウイルス調製物は、上皮細胞に感染させると実質的に異なる転写応答を生じた。
【0106】





【0107】
考察
ARPE-19上皮細胞は、2つの異なる経路: 原形質膜における融合、またはエンドサイトーシスの後エンドソーム膜での融合でHCMVによって感染され得る。両方の進入様式によって産生性の感染が開始される。進入経路は、ウイルスが増殖する細胞型に依存する。上皮細胞由来のHCMVは前者の経路によって侵入し、線維芽細胞中で増殖したウイルスは後者の経路に従う。この結論は、超微細構造解析およびエンドソームの酸性化をブロックする薬剤に対する感染の差異的な感受性から得られる。上皮細胞において増殖したウイルスが線維芽細胞において生成されたウイルスよりも大きな「外部からの融合」活性を有するという観察結果は、2つのウイルス調製物はARPE-19細胞と根本的に異なる様式で相互作用するという見解を強化する。重要なことに、pUL130抗体は、いずれかの供給源から生成されたウイルスによる感染を中和したため、両方の進入様式ともpUL130機能を必要とする。gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体は、感染ウイルスが上皮細胞において生成された場合はARPE-19 原形質膜において機能を果たし、該ウイルスが線維芽細胞において増殖した場合はエンドソーム膜において機能を果たす。エンドソーム内で中和されたウイルスは脱出することができず、おそらく、pUL130含有複合体がなく、産生性感染が起こることなく上皮細胞エンドソーム内に蓄積するAD169と同じ運命に苦しむ(10)。
【0108】
線維芽細胞中で増殖したウイルスは、上皮細胞由来のウイルスと比べて遅れてARPE-19細胞においてIE1タンパク質蓄積を誘導し、これは、エンドサイトーシスによる進入のいくつかの局面が原形質膜での融合による進入よりもゆっくり進行することを示す。多くのビリオンはエンドソーム内で明白であるが、線維芽細胞で生成されたウイルスの進入後、細胞質内にキャプシドは見られず;キャプシドは、上皮細胞生成ウイルスに感染させた細胞の細胞質内では稀に見られた。明らかに、ビリオンはエンドソーム内に長期間存在するが、いったんそのエンベロープから遊離されて細胞質に達すると、キャプシドは急速に分解される。
【0109】
2つの細胞型で生成されたHCMVビリオンはどのように異なるのか?異なる「外部からの融合」活性は、表示をもたらすようである。epiBADrUL131はfibroBADrUL131よりも効率的に融合を誘導しただけでなく、低pHによって両方のウイルス調製物の活性が向上した。いずれかの機構の説明に拘束または限定されることを意図しないが、 膜の融合には融合活性の閾値が必要とされる可能性がある。両方のウイルス調製物を中和するpUL130抗体の能力は、両者が融合に関してgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131複合体に依存していることを示し、そのため、ウイルスが異なる量の該複合体を含むという仮説に対する実験を考案した。その構成要素のいくつかをアッセイし、gH/gL/gOに対するgH/gL/pUL128/pUL130/pUL131の比は、fibroBADrUL131粒子よりもepiBADrUL131粒子においてわずかに高いこと(約2倍)がわかった。gB、pp28およびpp65のレベルは2つのビリオン調製物において同様であった。
【0110】
EBVにおいて異なる相対量のgH複合体を有するウイルスの生成に関する先例がある:B細胞によって生成される粒子はgH/gL/gp42に欠陥がある(18)。しかしながら、他の因子が関与しているかもしれない。おそらくアッセイしなかった複合体の構成要素が改変される。あるいは、1種類以上のさらなるビリオン糖タンパク質複合体に対するgH複合体の比によって融合活性が改変されるもかもしれない。最後に、上皮細胞または線維芽細胞内で生成される際にビリオンに供給される未同定細胞タンパク質によって複合体が改変され得るのかもしれない。
【0111】
該2つの進入様式に生理学的な因果関係はあるのか?epiBADrUL131およびfibroBADrUL131は、ARPE-19細胞の感染後、著しく異なる細胞転写応答を誘導した。この差が実際にはビリオンまたはビリオン+特定の関連のある細胞因子によるものであると仮定すると、マイクロアレイ実験により感染に対して顕著に異なる転写応答が示される。エンドサイトーシスは、細胞表面分子によるシグナル伝達の調節に深く関与している。その結果、原形質膜での融合によって進入した場合とエンドサイトーシスによって進入した場合とでは、ウイルスによって細胞シグナル伝達および細胞トランスクリプトームが異なって調節されるのかもしれない。細胞シグナル伝達における差は、ウイルス蔓延、免疫回避またはビルレンスに対する効果などの培養細胞では検出されない生理学的因果関係を有する可能性がある。
【0112】

【0113】
本発明は、上記で説明および例示した態様に限定されず、添付の特許請求の範囲において変形および修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンの作製方法であって、
a) 選択された細胞型の培養細胞中でCMVの株または分離物を増殖させ、それにより細胞型条件付けCMVを作製する工程;および
b) 細胞型条件付けCMVからCMVワクチンを作製する工程
を含む、方法。
【請求項2】
CMVの株または分離物がヒトCMV株または分離物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
選択された細胞型が、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、樹状細胞およびストロマ細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
選択された細胞型が上皮細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の異なる選択された細胞型において細胞型条件付けCMVを作製する工程、および該CMVを合わせてCMVワクチンを作製する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
2つ以上のCMV株または分離物を提供する工程、株または分離物のそれぞれを、選択された細胞型または2つ以上の異なる選択された細胞型を含む培養細胞中で増殖させる工程、およびこれらから作製された細胞型条件付けCMVを合わせてCMVワクチンを作製する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
弱毒化生CMVワクチンを作製する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
不活性化または死CMVワクチンを作製する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法によって作製されるCMVワクチン。
【請求項10】
a) 1つ以上(one or)のCMV株または臨床分離物;
b) 1つ以上の選択された細胞型の培養細胞;ならびに
c) CMVワクチンにおける使用のための細胞型条件付けCMVを作製するために、培養細胞およびCMV株または分離物を使用するための使用説明書
が含まれた容器を備えるキット。
【請求項11】
適当な医薬用担体またはアジュバントと混合されたサイトメガロウイルス(CMV)集団またはそのビリオン成分を含むワクチン組成物であって、CMV集団が上皮細胞培養物から分離される、ワクチン組成物。
【請求項12】
CMVがヒトCMVである、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項13】
上皮細胞培養物から分離されたCMV集団が、後に感染させる宿主細胞において、
a) 宿主細胞原形質膜との融合による宿主細胞への進入:
b) 培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団と比べて大きい、宿主細胞のビリオン媒介性細胞-細胞融合:
c) 培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団と比べて加速された、宿主細胞におけるウイルス増殖:
d) 感染10時間後、培養線維芽細胞から分離された同等のCMV集団によって惹起された応答より2.5倍以上高い、約3分の2未満の遺伝子の発現の変化を伴う細胞応答の惹起:または
e) GenBankアクセッション番号: AK094860、NM_145023、NM_133492、NM_001039580、NM_001004301、NM_001034、AI369525、AK123066、NM_005345、NM_020731、BC071797、NM_003414、NM_000800、NM_138467、AK090803、AL133118、NM_001165、BG001037、NM_024861、NM_001043、NM_016239、NM_001018084、NM_001037442、NM_017600、NM_022097、NM_175868、NM_032266、NM_003841、NM_005039、NM_145051、NM_004294、AW856O73、NM_024050、AF085968、NM_080927、NM_022115、AK056703、NM_000808、NM_012377、NM_006793、NM_031466、NM_005185、NM_139173、BX360933、NM_016125、NM_002104、NM_032188、NM_004185、NM_004843もしくはNM_173550で表される1つ以上の遺伝子の発現の変化を伴う細胞応答の惹起
を含む1つ以上の特徴を特徴とする、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項14】
さらに、別の細胞型の細胞培養物から分離されたCMV集団またはそのビリオン成分を含む、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項15】
別の細胞型が線維芽細胞の細胞型である、請求項14記載のワクチン組成物。
【請求項16】
CMV集団が、上皮細胞培養物中で増殖した2つ以上のCMV株または臨床分離物を含む、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項17】
弱毒化生CMVワクチンを含む、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項18】
不活性化CMVワクチンを含む、請求項11記載のワクチン組成物。
【請求項19】
個体に、適当な医薬用担体またはアジュバントと混合されたサイトメガロウイルス(CMV)集団またはそのビリオン成分を含むCMVワクチン組成物を投与する工程を含む、CMVに対して個体を免疫化する方法であって、CMV集団が上皮細胞培養物から分離される、方法。
【請求項20】
個体がヒトである、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−500592(P2011−500592A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529076(P2010−529076)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079494
【国際公開番号】WO2009/049138
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098319)ザ トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】