説明

サイドウォール用ゴム組成物、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】環境に配慮しながら、フィラー分散性、耐オゾン性を改善できるサイドウォール用ゴム組成物、及び環境に配慮しながら、耐摩耗性、フィラー分散性を改善できるトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むサイドウォール用ゴム組成物に関する。また、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物、トレッド用ゴム組成物及びこれらを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物には、従来から可塑剤として、アロマオイルが一般的に用いられているが、アロマオイルはその発癌性の問題などから代替が求められている。しかし、現在代替材料として提案されているものは石油由来のオイルで、石油資源に依存しているため、将来の化石資源枯渇の際には入手困難になる、環境への配慮が不充分である、などの問題がある。
【0003】
これに対し、大豆油やパーム油などの植物性油脂を配合することが提案されているが、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また特許文献1では、テルペン系重合体を配合することが検討されているが、耐摩耗性、フィラー分散性の点で未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、環境に配慮しながら、フィラー分散性、耐オゾン性を改善できるサイドウォール用ゴム組成物、及び環境に配慮しながら、耐摩耗性、フィラー分散性を改善できるトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、これらを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0007】
ゴム成分100質量%中の天然ゴム及び改質天然ゴムの合計含有量が30質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量が1〜50質量部であることが好ましい。
【0008】
直鎖状イソプレノイドが下記式(1)で表されることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、mは1〜3の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基又は下記式(2)で表される基を表す。)
【化2】

【0009】
直鎖状イソプレノイドが水添されたものであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むトレッド用ゴム組成物に関する。
【0011】
ゴム成分100質量%中の天然ゴム及び改質天然ゴムの合計含有量が30質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量が1〜40質量部であることが好ましい。
【0012】
直鎖状イソプレノイドが下記式(1)で表されることが好ましい。
【化3】

(式(1)中、mは1〜3の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基又は下記式(2)で表される基を表す。)
【化4】

【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むサイドウォール用ゴム組成物であるので、環境に配慮しながら、フィラー分散性、耐オゾン性を改善できる。本発明はまた、同様の成分を含むトレッド用ゴム組成物であるので、環境に配慮しながら、耐摩耗性、フィラー分散性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のサイドウォール及びトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含む。
天然ゴムは、イソプレン単位が2〜4個1,4−トランス結合した後、1000個以上1,4−シス結合した構造であるところ、直鎖状イソプレノイドは天然ゴムに近い構造(部分的に同一の構造)をしているため、天然ゴム本来の物性(ガラス転移点など)に影響を与えず、天然ゴム分子と完全に相溶した構造を形成できる。このため、上記成分を併用することで、前述の性能が得られる。また、直鎖状イソプレノイドは、通常、石油外資源に由来することから、環境への配慮という面から望ましく、将来の化石資源枯渇にも対応できる。
【0016】
本発明では、ゴム成分として、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムを含むが、天然ゴムを含むことが好ましく、天然ゴムと改質天然ゴムとを併用してもよい。
【0017】
天然ゴム(NR)としては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0018】
改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、エピスルフィド化天然ゴム、水素添加天然ゴム(H−NR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性、フィラー分散性、耐オゾン性がバランスよく得られるという理由から、ENRが好ましい。
【0019】
ENRとしては特に限定されず、市販のエポキシ化天然ゴムでも、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものでもよい。NRをエポキシ化する方法は、特に限定されず、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などがあげられる。
【0020】
ENRのエポキシ化率は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上である。30モル%未満であると、改質の効果が充分に発揮されない傾向がある。また、ENRのエポキシ化率は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下である。60モル%を超えると、ゴム成分のゲル化が生じるおそれがあり、また、転がり抵抗が大きくなる傾向がある。
なお、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム成分中の炭素間二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合の平均値を意味し、例えば、滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析などにより求められる。
【0021】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、耐酸化老化性及び耐屈曲性の点から、ゴム成分100質量%中のNRの含有量の下限は好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、上限は好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0022】
トレッド用ゴム組成物の場合、耐摩耗性の点から、ゴム成分100質量%中のNRの含有量の下限は好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、上限は好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0023】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、耐クラック性の点から、ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量の下限は好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、上限は好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0024】
トレッド用ゴム組成物の場合、グリップ性能の点から、ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量の下限は好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、上限は好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0025】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のNR及び改質天然ゴムの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。30質量%未満であると、環境への配慮が充分でなく、フィラー分散性、耐オゾン性の充分な改善効果が得られないおそれがある。該合計含有量は100質量%であってもよいが、所望のタイヤ特性に応じて、例えば80質量%以下としてNR、改質天然ゴム以外のゴム成分を加えてもよい。
【0026】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のNR及び改質天然ゴムの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。30質量%未満であると、環境への配慮が充分でなく、耐摩耗性、フィラー分散性の充分な改善効果が得られないおそれがある。該合計含有量は100質量%であってもよいが、所望のタイヤ特性に応じて、例えば80質量%以下としてNR、改質天然ゴム以外のゴム成分を加えてもよい。
【0027】
NR及び改質天然ゴム以外に、本発明に使用できるゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性、耐屈曲性に優れるという点から、BR、SBRが好ましい。
【0028】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。30質量%未満であると、耐屈曲性が劣る傾向がある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0029】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。20質量%未満であると、グリップ性能が劣る傾向がある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、NR、改質天然ゴムの含有量が低く、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。
【0030】
直鎖状イソプレノイドとしては、炭素数5のイソプレン単位が直鎖状に結合した鎖状構造を基本骨格に持つイソプレノイドであれば特に限定されないが、可塑剤として良好な粘度が得られるという点から、炭素数25以下のものを好適に使用でき、イソプレン単位がトランス型に縮合したもの、該縮合物に更にイソプレン単位がシス型に縮合したものをより好適に使用できる。
なかでも、ゴムとの相溶性に優れ、耐摩耗性、フィラー分散性、耐オゾン性が高い次元で得られるという点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【化5】

(式(1)中、mは1〜3の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基又は下記式(2)で表される基を表す。)
【化6】

【0031】
mは、フィラー分散性の点から、1〜3が好ましく、2〜3がより好ましい。
nは、合成の容易さという点から、0が好ましい。
【0032】
Yは、水酸基(−OH)、ホルミル基(−CHO)、カルボキシ基(−COOH)、エステル基(−COOR)、カルボニル基(−COR)又は上記式(2)で表される基を表す。
エステル基(−COOR)、カルボニル基(−COR)のRは、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基を表す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
Yとしては、天然ゴムとの相溶性及び合成の容易さという理由から、上記式(2)で表される基、水酸基が好ましい。
【0033】
直鎖状イソプレノイドの具体例としては、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸、ゲラニルゲラニオールなどが挙げられる。
【0034】
直鎖状イソプレノイドの製法としては、石油以外を用いて製造(生産)する方法であれば特に限定されず、例えば、植物などの生物から抽出する方法、酵素反応により合成する方法などが挙げられる。使用できる酵素としては、ファルネシル二リン酸合成酵素、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素などの直鎖プレニル二リン酸合成酵素が挙げられる。なお、酵素反応による直鎖状イソプレノイドの合成については、特開2004−24275号公報、特開平11−178590号公報、特開2005−52037号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0035】
また、直鎖状イソプレノイドを水添したもの(水添物)を使用することが好ましい。これにより、二重結合が少なくなり、耐オゾン性を一層改善できる。
【0036】
直鎖状イソプレノイドの水添反応は、公知の水添方法により行うことができ、例えば、水素化触媒(均一系水素化触媒、不均一系水素化触媒)を使用し、1〜100気圧の加圧水素下で水素化することで実施できる。水素化触媒としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、1〜3族の有機金属から選択される少なくとも一種の金属を含有する化合物が挙げられ、具体的には、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸コバルトなどを使用できる。
【0037】
水添物の二重結合の水素添加率は、もとの二重結合の数に対して、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。水素添加率が30モル%未満では、二重結合が多すぎて水添による耐オゾン性の改善効果を得られないおそれがある。また、水素添加率は、上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
ここで、水素添加率は、プロトンNMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0038】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量は好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満であると、フィラー分散性を充分に改善できず、クラック発生防止などの所望の効果が得られない可能性がある。該含有量は好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。50質量部を超えると、ゴムの強度が低下しすぎる傾向がある。
【0039】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量は好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満であると、フィラー分散性が充分に改善できず、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。40質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0040】
本発明のゴム組成物は、植物油脂、テルペン系重合体を配合してもよく、これらを併用してもよい。併用すると、耐摩耗性、フィラー分散性を顕著に改善できる。
【0041】
植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油などが挙げられる。
【0042】
植物油脂のヨウ素価(gI/100g)は、好ましくは5以上、より好ましくは40以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは140以下である。ヨウ素価が上記範囲内であると、耐熱老化性に優れたゴム組成物を得ることができる。
本明細書において、ヨウ素価とは、植物油脂100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0043】
テルペン系重合体は、テルペン化合物を重合して得られる重合体及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、ターピノーレンなどが挙げられる。なかでも、NRとの相溶性が比較的高いという点から、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ターピノーレンが好ましく、β−ピネン、リモネンがより好ましい。
【0044】
テルペン系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは150以上、より好ましくは250以上である。150未満であると、加硫時に揮発してゴムが発泡する傾向がある。該Mnは、好ましくは700以下、より好ましくは500以下である。700を超えると、粘度が上昇し可塑剤としての使用が難しくなるおそれがある。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0045】
テルペン系重合体の軟化点は、好ましくは30℃以下、より好ましくは室温(25℃)以下である。30℃を超えると、ゴム組成物の脆化性に問題が生じる傾向がある。また、テルペン系重合体の軟化点の下限は特に限定されない。
なお、テルペン系重合体の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0046】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、植物油脂の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満であると、ゴムの硬度が硬くなり過ぎる傾向がある。該含有量は好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。30質量部を超えると、低燃費性、耐熱老化性が低下する傾向がある。
【0047】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、植物油脂の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満であると、加工性の改善効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。25質量部を超えると、ゴム強度が低下する傾向がある。
【0048】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、テルペン系重合体の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満であると、テルペン系重合体を配合することによる性能の改善効果が得られないおそれがある。該含有量は30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。30質量部を超えると、加工性が低下する傾向がある。
【0049】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、テルペン系重合体の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満であると、テルペン系重合体を配合することによる性能の改善効果が得られないおそれがある。該含有量は30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。30質量部を超えると、耐熱老化性が低下する傾向がある。
【0050】
サイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイド、植物油脂及びテルペン系重合体の合計含有量は好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満であると、充分な耐屈曲性が得られないおそれがある。該合計含有量は好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、充分なゴム強度、低燃費性が得られないおそれがある。
【0051】
トレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイド、植物油脂及びテルペン系重合体の合計含有量は好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満であると、本発明の効果やグリップ性能が充分に得られないおそれがある。該合計含有量は好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。50質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0052】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することができるが、環境に配慮するという点から、カーボンブラックを使用しない/または木タールなどの天然由来カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0053】
本発明のゴム組成物は、通常、シリカを含有する。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0054】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、70m/g以上が好ましく、130m/g以上がより好ましい。70m/g未満では、補強効果が小さく、充分なゴム強度が得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、220m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。220m/gを超えると、分散性が低く、低燃費性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0055】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。10質量部未満では、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。120質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0056】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。ここで、シランカップリング剤の含有量の下限はシリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、上限は好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0057】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
【0058】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。本発明のゴム組成物は、サイドウォール、トレッド(キャップトレッド)に使用される。
【0059】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(サイドウォール、トレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0060】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0061】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:SIR20
ENR:クンプーランガスリー社製のENR50(エポキシ化率:50モル%)
BR:宇部興産(株)製のハイシスBR150B
SBR:日本ゼオン(株)製のニッポールNS116
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製Si266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(6PPD)(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
アロマオイル:JOMO(株)製のアロマオイル
植物油:日清オイリオ(株)製の大豆白絞油(ヨウ素価:131gI/100g)
テルペン系重合体:ヤスハラケミカル(株)製のダイマロン(Mn:390、軟化点:30℃以下)
直鎖状イソプレノイド1:下記製造例1で得られるファルネシル二リン酸
直鎖状イソプレノイド2:下記製造例2で得られるファルネシル二リン酸の水添物
直鎖状イソプレノイド3:下記製造例3で得られるゲラニルゲラニル二リン酸
直鎖状イソプレノイド4:下記製造例4で得られるゲラニルゲラニル二リン酸の水添物
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸 椿
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内振興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0062】
<製造例1> 直鎖状イソプレノイド1の調製
(ファルネシル二リン酸の生産)
YM培地(Difco社製)10Lを2L三角フラスコ10個に小分けして、121℃、1.2気圧で20分オートクレーブ滅菌を行った。この培地に5%グルコースと1%大豆油を無菌的に添加し、Saccharomyces cerevisiae(NBRC 0262)を植菌し、30℃、130rpmの回転培養で72時間培養した。培養液中の菌体をプラスチックチューブに移し、ガラスビーズ(シグマ社製)を加え、安井器械社製マルチビーズショッカー(30秒間2500rpm、30秒間停止を20サイクル繰り返す)で4℃冷却破砕した。なお、Saccharomyces cerevisiae(NBRC 0262)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構より分譲購入した。
(抽出)
冷却破砕液に対し、10000rpm、15分の遠心分離操作を行った。遠心分離後の上清に1−ブタノール250mLを数回に分けて加える事でファルネシル二リン酸を抽出し、エバポレーターを用いて濃縮を行った。その結果、15.1gの濃縮物(直鎖状イソプレノイド1)を得た。ファルネシル二リン酸の生成は、薄層クロマトグラフィーによるヨウ素呈色、及びGC/MSにより確認した。
【0063】
<製造例2> 直鎖状イソプレノイド2の調製
製造例1で得られたファルネシル二リン酸15.0gに、ニッケルを主体として珪藻土に保持したフレークニッケル水添触媒を0.2%量加えて反応溶液を130℃にし、水素圧力0.7Mpaで15分間、水素添加反応を行った。50℃まで冷却した後、ろ過により触媒を除去することで、直鎖状イソプレノイド2(ファルネシル二リン酸の水添物)12.1gを得た。
【0064】
<製造例3> 直鎖状イソプレノイド3の調製
(ゲラニルゲラニル二リン酸の生産)
製造例1で使用した培地に、Saccharomyces cerevisiae(NBRC 0565)を植菌し、30℃、130rpmの回転培養で72時間培養した。製造例1と同じ条件で細胞破砕を行った。Saccharomyces cerevisiae(NBRC 0565)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構より分譲購入した。
(抽出)
冷却破砕液に対し、10000rpm、15分の遠心分離操作を行った。遠心分離後の上清に1−ブタノール250mLを数回に分けて加える事でゲラニルゲラニル二リン酸を抽出し、エバポレーターを用いて濃縮を行った。その結果、60.2gの濃縮物(直鎖状イソプレノイド3)を得た。ゲラニルゲラニル二リン酸の生成は、薄層クロマトグラフィーによるヨウ素呈色、及びGC/MSにより確認した。
【0065】
<製造例4> 直鎖状イソプレノイド4の調製
製造例3で得られたゲラニルゲラニル二リン酸を用いた点以外は、製造例2と同様の条件で水素添加反応を行い、直鎖状イソプレノイド4(ゲラニルゲラニル二リン酸の水添物)46.5gを得た。
【0066】
(水素添加率の測定)
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の溶液を調製して、100MHzのプロトンNMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出し、直鎖状イソプレノイド2(ファルネシル二リン酸の水添物)の水素添加率は99モル%、直鎖状イソプレノイド4(ゲラニルゲラニル二リン酸の水添物)の水素添加率は99モル%であった。
【0067】
<実施例及び比較例>
表1〜3に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りし、混練り物を得た。なお、シリカについては2回に分けて投入した。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を160℃で20分間、2mm厚の金型でプレスし、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、150℃で30分間加硫することにより、試験用タイヤを得た。
【0068】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて、以下の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。なお、表1の基準配合を比較例2、表2、3の基準配合を比較例5とした。
【0069】
(転がり抵抗の測定)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例2、5のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0070】
(耐摩耗性の測定)
ランボーン摩耗試験機を用いて、荷重2.5kgf、温度20℃、スリップ率40%の条件で、試験時間2分で各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。基準配合の容積損失量を100として、各配合の容積損失量を指数表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0071】
(フィラー分散性の測定)
加硫ゴム組成物から試験片を切り出し、JIS K6812に準じて試験片中のシリカの凝集塊をカウントして、基準配合(比較例2、5)の分散率(%)を100とし、各配合の分散率を指数表示した。フィラー分散指数が大きいほどフィラーが分散し、優れていることを示す。
【0072】
(静的オゾンテスト)
前述の製造した試験用タイヤをリム5J×13、200KPaの内圧で50pphmのオゾンチャンバーに放置してクラック発生までの日数を測定した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
表1〜3から、天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと直鎖状イソプレノイドとを含む実施例は、優れたフィラー分散性、耐オゾン性が得られた。また、低燃費性、耐摩耗性も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分100質量%中の天然ゴム及び改質天然ゴムの合計含有量が30質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量が1〜50質量部である請求項1に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
直鎖状イソプレノイドが下記式(1)で表される請求項1又は2に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、mは1〜3の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基又は下記式(2)で表される基を表す。)
【化2】

【請求項4】
直鎖状イソプレノイドが水添されたものである請求項1又は2に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
天然ゴム及び/又は改質天然ゴムと、直鎖状イソプレノイドとを含むトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量%中の天然ゴム及び改質天然ゴムの合計含有量が30質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対して、直鎖状イソプレノイドの含有量が1〜40質量部である請求項5に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
直鎖状イソプレノイドが下記式(1)で表される請求項5又は6に記載のトレッド用ゴム組成物。
【化3】

(式(1)中、mは1〜3の整数を表す。nは0〜1の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基又は下記式(2)で表される基を表す。)
【化4】

【請求項8】
請求項1〜7に記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−172082(P2012−172082A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36118(P2011−36118)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】