説明

サイドウォール用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ

【課題】通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性においてバランスよく優れ、さらに作製コストにおいても優れたサイドウォール用ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴム成分100質量部に対して、BET比表面積が70〜250m2/gの湿式シリカを2〜15質量部、BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックを40〜62質量部含有し、シランカップリング剤を含有せず、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であるサイドウォール用ゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤのサイドウォール用ゴム組成物および該ゴム組成物からなるサイドウォールを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール用ゴム組成物には、操縦安定性、転がり抵抗特性(発熱性)、耐久性、耐亀裂成長性、耐外傷性、通電性、スピュー切れ性、押出し加工性等において優れることが求められる。特に、汎用タイヤに用いられるサイドウォール用ゴム組成物においては、通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性がバランスよく優れ、さらに安価に作製できることが求められる。
【0003】
タイヤにおける通電性とは、車両に蓄積された静電気を路面へ放電する性能のことであり、一般的には、リム、クリンチ、プライ、サイドウォール、ベルトまたはブレーカー、トレッドを経路として放電する。
【0004】
このような放電が行われない場合、車両に静電気が蓄えられ、乗車する人が感電する、燃料補給時にスパークが発生し発火する、走行時に車中で聞くラジオにノイズ混入が発生する、電気を帯びたリムによりクリンチ部のゴム組成物の腐食が促進するなどの不具合が発生する。
【0005】
サイドウォール用ゴム組成物の通電性を確保する技術として、高ストラクチャーのカーボンブラックを含有することが知られているが、高ストラクチャーのカーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べて高価であり、安価に作製できることが求められる汎用タイヤのサイドウォール用ゴム組成物に適用するにはコスト面で問題がある。
【0006】
サイドウォールの通電性を確保することが困難な場合、サイドウォールを経路とせずに放電する技術として、特許文献1に記載されているように、通電性に優れた導電層をサイドウォール内側にも設けることで、タイヤとしての通電性を確保することが知られている。しかし、導電層としてカーボンブラックを主フィラーとして含有するゴム組成物を用いるため、耐久性および転がり抵抗特性の悪化、ならびに製造工程が繁雑化することによる製造コストの増加という問題点があり、汎用タイヤに適用するには問題がある。
【0007】
また、サイドウォールを経路とせずに放電する技術として、リムから、クリンチ、プライトッピングゴム、ベルトまたはブレーカー、トレッドを経路として放電するために、プライトッピングゴム層の導電性を改良することが知られている。しかし、プライトッピングゴムとしてカーボンブラックを主フィラーとして含有するゴム組成物を用い、かつプライトッピングゴム層を厚くするため、プライの発熱性、耐久性および転がり抵抗特性の悪化という問題点があり、汎用タイヤに適用するには問題がある。
【0008】
スピュー切れは、タイヤ製造工程におけるデモールド時に発生し、ゴム組成物の高温時(140℃)における破断応力(EB)および破断伸び(TB)に関係するといわれる。そこで、高温時におけるEBおよびTBの低下を防ぐために、ゴム成分中の天然ゴムの含有量を大幅に増やしたり、酸化亜鉛や、離型助剤の含有量を増量したりするなどの対策が行われているが、これらの対策も汎用タイヤに適用するにはコスト面で問題がある。
【0009】
特許文献2には、特定のカーボンブラックおよびシリカならびにシランカップリング剤を特定量含有することで、転がり抵抗特性、耐摩耗性、WET性能に優れ、電気抵抗が小さいタイヤとすることができるタイヤサイドウォール用ゴム組成物が記載されている。しかしながら、特許文献2記載のタイヤサイドウォール用ゴム組成物は、特定量のシランカップリング剤を含有するためコスト面で問題があり、また、耐スピュー切れ性および押出し加工性については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−245918号公報
【特許文献2】特開平10−36559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性においてバランスよく優れ、さらに作製コストにおいても優れたサイドウォール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、BET比表面積が70〜250m2/gの湿式シリカを2〜15質量部、BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックを40〜62質量部含有し、シランカップリング剤を含有せず、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0013】
カーボンブラックのBET比表面積が37〜50m2/gであり、
該カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して40〜60質量部であり、かつゴム組成物中に26〜36質量%であることが好ましい。
【0014】
カーボンブラックのBET比表面積が65〜85m2/gであり、該カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して40〜55質量部であり、かつゴム組成物中に24.5〜36質量%であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は前記のサイドウォール用ゴム組成物からなるサイドウォールを有するタイヤに関する。
【0016】
さらに、本発明は前記のサイドウォール用ゴム組成物からなるサイドウォールを有するオールスチールラジアルタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ジエン系ゴム成分に特定のBET比表面積を有する湿式シリカおよびカーボンブラックを特定量含有し、シランカップリング剤を含有せず、特定の体積固有抵抗を有するサイドウォール用ゴム組成物とすることで、通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性においてバランスよく優れ、さらに作製コストにおいても優れたサイドウォール用ゴム組成物、およびそれからなるサイドウォールを有するタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるタイヤの断面の一部を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、BET比表面積が70〜250m2/gの湿式シリカを2〜15質量部、BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックを30〜65質量部含有し、シランカップリング剤を含有せず、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下、とすることで、作製コストを上げることなく、通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性をバランスよく向上させることができる。
【0020】
本発明におけるジエン系ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。ジエン系ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐亀裂成長性、破断伸び、破断効力、発熱性および押出し加工性において優れるという理由からNRおよびBRを使用することが好ましい。
【0021】
前記NRとしては特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
【0022】
ジエン系ゴム成分としてNRを含有する場合の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。NRの含有量が30質量%未満である場合は、破断伸びおよび破断効力が不充分となる傾向がある。また、NRの含有量は70質量%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。NRの含有量が70質量%を超える場合は、耐亀裂成長性および耐リバージョン性が不充分となる傾向がある。
【0023】
BRとしては、ハイシス1,4−ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)、希土類系BRなどが挙げられ、これらの各種BRを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ハイシスBRとは、シス1,4結合含有率が90質量%以上のブタジエンゴムである。
【0025】
前記SPB含有BRは、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を、単にBR中に分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが好ましい。タイヤのモールド時にスピュー穴の中でゴム組成物中の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が整列することで、ゴム組成物の硬さや強度が向上し、タイヤのデモールド時のスピュー切れの発生を効果的に抑制することができる。
【0026】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。融点が180℃未満では、プレスにおけるタイヤの加硫中に結晶が溶融し、硬度が低下する傾向がある。また、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。融点が220℃を超えると、BRの分子量が大きくなるため、ゴム組成物中において分散性が悪化し、押出し加工性が悪化する傾向がある。
【0027】
SPB含有BR中において、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満では、ゴム組成物の充分な硬さが得られない傾向がある。また、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が22質量%を超えると、BR自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるBRおよび充填剤の分散性が悪化する傾向がある。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中における1,2−シンジオタクチックポリブタジエンを示す。
【0028】
SPB含有BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満では、ゴム硬さが不充分となる傾向がある。また、BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。含有量が20質量%を超えると、BRがゴム組成物中に分散し難く、加工性が悪化する傾向がある
【0029】
前記変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されているものが好ましい。
【0030】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などがあげられる。前記リチウム開始剤を変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量の変性BRを作製できる。
【0031】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどがあげられ、これらのスズ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
変性BR中のスズ原子の含有率は50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。スズ原子の含有率が50ppm未満では、変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さく、tanδが増大する傾向がある。また、スズ原子の含有率は3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。スズ原子の含有率が3000ppmを超えると、混練り物のまとまりが悪く、エッジが整わないため、押出し加工性が悪化する傾向がある。
【0033】
変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。変性BRのMw/Mnが2を超えると、カーボンブラックの分散性が悪化し、tanδが増大する傾向がある。なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0034】
変性BRのビニル結合量は5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。変性BRのビニル結合量が5質量%未満では、変性BRを重合(製造)することは困難な傾向がある。また、変性BRのビニル結合量は50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。変性BRのビニル結合量が50質量%を超えると、カーボンブラックの分散性が悪化し、tanδが増大する傾向がある。
【0035】
前記希土類系BRは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、シス含量が高く、かつビニル含量が低いという特徴を有している。希土類系BRとしては、タイヤ製造において一般的に使用されているものを使用することができる。
【0036】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられ、これらのなかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0037】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前記Nd系触媒が、高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0038】
有機アルミニウム化合物としては、AlRabc(式中、Ra、Rb、Rcは、同一若しくは異なって、水素または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlXkd3-k(式中、Xはハロゲン、Rdは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基、kは1、1.5、2または3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0039】
希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合または塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0040】
希土類系BRは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が好ましくは35以上、より好ましくは40以上である。35未満であると、未加硫ゴム組成物の粘度が低く、加硫後に適正な厚みを確保できなくなる傾向がある。該ムーニー粘度は、好ましくは55以下、より好ましくは50以下である。55を超えると、未加硫ゴム組成物が硬くなりすぎて、スムーズなエッジで押し出すことが困難になる傾向がある。なお、ムーニー粘度は、ISO289、JIS K6300に準じて測定される。
【0041】
希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。1.2未満であると、加工性の悪化が顕著になる傾向がある。該Mw/Mnは、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。5を超えると、発熱性において劣る傾向がある。
【0042】
希土類系BRのMwは、好ましくは30万以上、より好ましくは32万以上であり、また、好ましくは150万以下、より好ましくは130万以下である。更に、上記希土類系BRのMnは、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下である。MwやMnが下限未満であると、発熱性および破断伸びにおいて劣る傾向がある。また、上限を超えると、加工性の悪化が懸念される。なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0043】
希土類系BRのシス1,4結合含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。90質量%未満であると、破断伸びおよび耐摩耗性において劣る傾向がある。
【0044】
希土類系BRのビニル含量は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。1.8質量%を超えると、破断伸びおよび耐摩耗性において劣る傾向がある。なお、本発明において、ハイシスBR、変性BR、希土類系BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)およびシス1,4結合含有率は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0045】
これらの各種BRの中でも、特に発熱性において優れるという点からは、変性BRを用いることが好ましい。また、破断伸びおよび耐摩耗性において優れるという点からは、希土類系BRを用いることが好ましく、Nd系触媒を用いて合成したBRを用いることがより好ましく、Nd系触媒を用いて合成したハイシスBRを用いることがさらに好ましい。
【0046】
ジエン系ゴム成分としてBRを含有する場合の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。BRの含有量が30質量%未満である場合は、耐亀裂成長性において劣り、サイドウォールとしての耐久性が充分ではなくなる傾向がある。また、BRの含有量は70質量%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。BRの含有量が70質量%を超える場合は、EBおよび加工性が悪化する傾向がある。なお、2種以上のBRを併用する場合は、併用するBRの合計量をBRの含有量とする。
【0047】
本発明のゴム組成物は、特定の湿式シリカを含有する。
【0048】
前記湿式シリカのBET比表面積は、70〜250m2/gであり、80〜230m2/gであることが好ましく、100〜200m2/gであることがより好ましい。BET比表面積が70m2/g未満である場合は、破断時伸びおよび耐摩耗性において劣る傾向、サイドウォール表面の茶変色抑制効果が得られない傾向がある。また、BET比表面積が250m2/gを超える場合は、発熱性および加工性において劣る傾向、シリカの分散が不充分となりサイドウォール表面の茶変色抑制効果が得られない傾向がある。
【0049】
前記湿式シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して2〜15質量部であり、3〜12質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。湿式シリカの含有量が2質量部未満である場合は、充分なコスト低減効果、ならびにEBおよびTBを向上させる効果が得られない傾向、サイドウォール表面の茶変色抑制効果が得られない傾向がある。また、湿式シリカの含有量が15質量部を超える場合は、加硫前に湿式シリカが再凝集してしまう傾向や、押出し時にゴム組成物がシュリンクする傾向があり、また、湿式シリカの再凝集を防ぎ、tanδを改良するために、シランカップリング剤の含有が必要となり、作製コストが高くなる傾向がある。
【0050】
前記の湿式シリカによるサイドウォール表面の茶変色抑制効果について説明する。前記のBET比表面積を満たす湿式シリカは表面に水酸基を有し、この水酸基が、後述するフェニレンジアミン系老化防止剤やキノン系老化防止剤などの老化防止剤の極性基と吸着し合うため、これらの老化防止剤のサイドウォール表面への過剰なブルームを抑制することができる。その結果、加硫中、保管中、使用中に渡ってサイドウォール表面における老化防止剤の過剰なブルームに起因する茶変色を抑制することができる。これにより、フェニレンジアミン系老化防止剤やキノン系老化防止剤などの老化防止剤の含有量を、茶変色抑制効果を低下させることなく増量することができるため、サイドウォール用ゴム組成物の耐オゾン性、耐クラック性を向上させることができる。
【0051】
また、前記湿式シリカの含有量は、含有する充填剤の合計量の1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。湿式シリカの含有量が含有する充填剤の合計量の1/3を超える場合は、湿式シリカの再凝集を防ぎ、tanδを改良するために、シランカップリング剤の含有が必要となり、作製コストが高くなる傾向がある。
【0052】
本発明のゴム組成物は、特定のカーボンブラックを含有する。
【0053】
前記カーボンブラックのBET比表面積は、37〜125m2/gであり、37〜85m2/gであることが好ましく、特に発熱性において優れるという点からは37〜50m2/gであることがより好ましく、特に耐サイドカット性、耐摩耗性において優れるという点からは65〜85m2/gであることがより好ましい。BET比表面積が37m2/g未満である場合は、通電性および破断伸びにおいて劣る傾向がある。また、BET比表面積が125m2/gを超える場合は、発熱性、シュリンク性および押出し加工性が不充分となる傾向がある。
【0054】
前記BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して40〜62質量部であり、40〜60質量部であることが好ましく、40〜55質量部であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量が40質量部未満である場合は、通電性、シュリンク性および押出し加工性において劣る傾向がある。また、カーボンブラックの含有量が62質量部を超える場合は、発熱性、破断伸びおよび押し出し加工性において劣る傾向がある。
【0055】
また、前記BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックのゴム組成物中の含有量は、24〜36質量%であることが好ましく、25〜32質量%であることがより好ましい。カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が24質量%未満である場合は、通電性において劣る傾向、およびコストが高くなる傾向がある。また、カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が36質量%を超える場合は、破断伸び、耐スピュー切れ性が悪化する傾向がある。
【0056】
カーボンブラックとしてBET比表面積が37〜50m2/gのカーボンブラックを含有する場合の含有量は、ゴム成分100質量部に対して40〜60質量部であることが好ましく、40〜58質量部であることがより好ましい。該カーボンブラックの含有量が37質量部未満である場合は、通電性、シュリンク性および押出し加工性において劣る傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量が60質量部を超える場合は、破断伸びが悪化し、耐スピュー切れ性および押出し加工性が悪化する傾向がある。
【0057】
また、カーボンブラックとしてBET比表面積が37〜50m2/gのカーボンブラックを含有する場合のゴム組成物中の含有量は、26〜36質量%であることが好ましく、27〜35質量%であることがより好ましい。該カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が26質量%未満である場合は、通電性において劣る傾向、およびコストが高くなる傾向がある。また、該カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が36質量%を超える場合は、破断伸び、耐スピュー切れ性が悪化する傾向がある。
【0058】
カーボンブラックとしてBET比表面積が65〜85m2/gのカーボンブラックを含有する場合の含有量は、ゴム成分100質量部に対して40〜55質量部であることが好ましく、42〜55質量部であることがより好ましい。該カーボンブラックの含有量40質量部未満である場合は、体積固有抵抗が高くなり通電性が悪化する傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量が55質量部を超える場合は、EBが悪化し、耐スピュー切れ性および押出し加工性が悪化する傾向がある。
【0059】
また、カーボンブラックとしてBET比表面積が65〜85m2/gのカーボンブラックを含有する場合のゴム組成物中の含有量は、24.5〜36質量%であることが好ましく、27〜35質量%であることがより好ましい。該カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が24.5質量%未満である場合は、通電性において劣る傾向、およびコストが高くなる傾向がある。また、該カーボンブラックのゴム組成物中の含有量が36質量%を超える場合は、破断伸び、耐スピュー切れ性および押し出し加工性が悪化する傾向がある。
【0060】
本発明のゴム組成物は、湿式シリカおよびカーボンブラック以外にも、炭酸カルシウム、タルク、セリサイト等のタイヤ製造において汎用される充填材を含有することができるが、耐亀裂成長性および通電性において優れるという点から充填材としてカーボンブラックおよびシリカを主として含有することが好ましい。
【0061】
湿式シリカおよびカーボンブラック以外の充填剤を含有する場合の含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。湿式シリカおよびカーボンブラック以外の充填剤の含有量が10質量部を超えると耐摩耗性において劣る傾向がある。
【0062】
本発明のゴム組成物はシランカップリング剤を含有しないことを特徴とする。シランカップリング剤を含有しないことにより、作製コストを低減することができる。また、前記のようにシリカの含有量を特定量とすることで、シランカップリング剤を含有しなくとも、充分なゴム特性および加工性を得ることができる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、湿式シリカ、カーボンブラック以外にも、通常ゴム工業で使用される配合剤、例えば、ポリエチレングリコールなどのシリカ分散剤、レジン、オイル、各種老化防止剤、硫黄、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種加硫促進剤などを好適に含有することができる。
【0064】
前記老化防止剤としては、タイヤ製造において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、前述のシリカと併用することで、茶変色抑制効果を維持したまま耐クラック性を向上させることができる点からフェニレンジアミン系老化防止剤および/またはキノン系老化防止剤を用いることが好ましい。
【0065】
フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。なかでもN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)またはN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(老化防止剤G−1)が好ましい。
【0066】
キノン系老化防止剤としては、ベンゾキノン系、ヒドロキノン系、カテコール系、キノンジイミン系、キノメタン系老化防止剤などが挙げられ、なかでもキノンジイミン系老化防止剤が好ましい。
【0067】
キノンジイミン系老化防止剤としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−キノンジイミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルキノンジイミン、N’N−ジフェニル−p−キノンジイミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−キノンジイミン、N−nヘキシル−N’−フェニル−p−キノンジイミンン、N’N−ジオクチル−p−キノンジイミンなどが挙げられる。なかでも、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルキノンジイミンが好ましい。
【0068】
フェニレンジアミン系老化防止剤および/またはキノン系老化防止剤を含有する場合の含有量は、ゴム成分100質量部に対して2.0〜10質量部であることが好ましく、2.5〜6.0質量部であることがより好ましい。これらの老化防止剤の含有量が2.0質量部未満の場合は耐クラック性の向上効果が不充分となる傾向がある。また、10質量部を超える場合は架橋密度が低くなり、E*が低下したり、発熱性が悪化したりする傾向がある、特に老化防止剤6PPDはコスト上昇の原因ともなり、好ましくない。
【0069】
さらに、フェニレンジアミン系老化防止剤および/またはキノン系老化防止剤に加えて、キノリン系老化防止剤である2,2,4−トリメチルー1,2−ジヒドロキノリン重合体(老化防止剤TMQ)や、ビスフェノール系老化防止剤である2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(老化防止剤NS−5)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(老化防止剤NS−6)などを含有することが、耐クラック性および耐酸化劣化性を向上させることができる点から好ましい。
【0070】
老化防止剤TMQを含有する場合の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜4.0質量部であることが好ましく、0.6〜2.0質量部であることがより好ましい。これらの老化防止剤の含有量が0.1質量部未満の場合は耐クラック性および耐酸化劣化性の向上効果が不充分となる傾向がある。また、4.0質量部を超える場合は耐クラック性の向上効果が飽和となり、さらに発熱性が悪化する傾向がある。
【0071】
本発明のゴム組成物は、その体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であり、1×107Ω・cm以下であることが好ましく、1×106Ω・cm以下であることがより好ましい。体積固有抵抗が1×108Ω・cmを超える場合は、クリンチからトレッドへの通電経路としてサイドウォールを使用することができず、車両に静電気が蓄積されることによる不具合が発生する傾向がある。なお、新たに通電性に優れた導電層を設けることや、プライトッピングゴム層を経路とすることで、タイヤとしての通電性を確保する対策を行った場合には、該タイヤにかかるコストが高くなり、また、前記導電層またはプライトッピングゴム層としてカーボンブラックを主フィラーとするゴム組成物を用いるため、タイヤの発熱性が悪化する傾向がある。なお、体積固有抵抗の下限は、特に限定されない。
【0072】
本発明のゴム組成物は、乗用車用ラジアルタイヤ、オールスチールラジアルタイヤ、産業車両用などの汎用タイヤのサイドウォールに用いられることが好ましい。特に、BET比表面積が65〜85m2/gのカーボンブラックを含有する場合は、オールスチールラジアルタイヤ、産業車両用タイヤ(ラジアルタイヤまたはバイアスタイヤ)などのタイヤのサイドウォールに用いられることが好ましい。
【0073】
前記オールスチールラジアルタイヤは、トラック用タイヤなどの重荷重用途で使用され、耐サイドカット性や耐摩耗性において優れることが要求される。このため、オールスチールラジアルタイヤのサイドウォールに用いられるゴム組成物には、BET比表面積が65〜85m2/gのカーボンブラックを用いことが好ましい。ここで、オールスチールラジアルタイヤのプライコードはスチールであるため、該プライは通電性において優れる。しかしながら、ブレーカーとプライの間にストリップ層を有する場合はプライを経路として放電することが困難となるので、サイドウォールを経路として放電することが好ましい。
【0074】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記ゴム成分、および必要に応じてその他の配合剤を混練りし、その後加硫することにより、本発明のサイドウォール用ゴム組成物を製造することができる。
【0075】
本発明のタイヤは、本発明のサイドウォール用ゴム組成物を用いてサイドウォールを製造し、このサイドウォールを用いて通常の方法により製造される。すなわち、本発明のサイドウォール用ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのサイドウォールの形状に押出し加工し、タイヤ成形機上で、通常の方法により、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。該未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧し、本発明のタイヤを得る。
【0076】
添付の図1を参照し、本発明のタイヤについて説明する。図1には本発明の一実施形態であるタイヤの部分断面図を示すが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0077】
図1に示すタイヤは、トレッド部1と、サイドウォール4と、ビード部6と、トレッド部1とサイドウォール4とのタイヤの径方向内側を通り、ビード部6に沿って配置されたプライ3と、トレッド部1とプライ3との間に配設されたブレーカー層2とが設けられている。プライ3の両端は、ビード部6に配置された一対のビードコア7に沿って折り返されて係止されており、プライ3のリムRに接する箇所にはチェーファー8が配設されている。また、リムRはクリンチ5と当接しており、このクリンチ5は、プライ3およびサイドウォール4と接続している。
【0078】
次に、図1に示すタイヤのリムRからトレッド1の接地面までの放電経路について説明する。
【0079】
リムから路面までの主な放電経路としては、クリンチ5、プライ3、ブレーカー層2およびトレッド部1を経路とする「プライ経路」、ならびに、クリンチ5、サイドウォール4、ブレーカー層2およびトレッド部1を経路とする「サイドウォール経路」が挙げられる。なお、トレッド1の通電性が不充分な場合は、通電性に優れたゴム組成物からなるベースペン10をブレーカー2から接地面まで設けることでタイヤの通電性を確保することもできる。
【0080】
「プライ経路」は、プライトッピングゴムが薄い場合、または、プライトッピングゴムにおいて含有するカーボンブラックのBET比表面積が小さい、もしくはカーボンブラックの含有量が少ない場合はプライの固有抵抗が高くなり通電が困難となる、またプライとブレーカーの間に通電性の低いストリップ層を配設した場合も通電が困難となるという問題がある。そこで、サイドウォールにおける通電性を向上させ「サイドウォール経路」の通電性を確保することで、コストを抑えながら効果的にタイヤの通電性を向上させることができる。
【0081】
前記ベースペンを有さない形態である場合、つまりトレッドが通電性を有する形態である場合のトレッドの固有抵抗は1×108Ω・cm以下であることが好ましく、1×107Ω・cm以下であることがより好ましく、1×106Ω・cm以下であることがさらに好ましい。トレッドの固有抵抗が1×108Ω・cmを超える場合は、通電経路としてトレッドを使用することができず、車両に静電気が蓄えられ、乗車する人が感電する、燃料補給時にスパークが発生し発火する、走行時に車中で聞くラジオにノイズ混入が発生する、電気を帯びたリムによりクリンチ部のゴム組成物の腐食が促進するなどの不具合が発生するおそれがある。
【0082】
一方、ベースペンを設ける形態である場合のベースペンの固有抵抗は1×108Ω・cm以下であることが好ましく、1×107Ω・cm以下であることがより好ましく、1×106Ω・cm以下であることがさらに好ましい。ベースペンの固有抵抗が1×108Ω・cmを超える場合は、通電経路としてベースペンを使用することができず、車両に静電気が蓄積されることによる上記の不具合が発生するおそれがある。
【実施例】
【0083】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0084】
以下に実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
BR1(ハイシスBR):宇部興産(株)製のBR150B(シス含量97質量%、非変性)
BR2(SPB含有BR):宇部興産(株)製のVCR617(SPBの含有量:17質量%、SPBの融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%)
BR3(末端変性BR):日本ゼオン(株)製のBR1250H(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
BR4(希土類系BR):LANXESS社製のBUNA−CB24(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス含量:96質量%、ビニル含量:0.7質量%、ML1+4(100℃):45、Mw/Mn:2.69、Mw:50万、Mn:18.6万)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N220、BET:114m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N330、BET:78m2/g)
カーボンブラック3:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(N550、BET:40m2/g)
カーボンブラック4:Jiangxi Black Cat社製のCarbon Black N660(N660、BET:35m2/g)
シリカ1:Evonik社製のULTRASIL U9000Gr(BET:230m2/g)
シリカ2:Evonik社製のULTRASIL VN3(BET:175m2/g)
シリカ3:Evonik社製のULTRASIL VN2(BET:125m2/g)
シリカ4:ローディア社製のX1085Gr(BET:80m2/g)
シリカ5:Evonik社製のULTRASIL U360(BET:50m2/g)
シランカップリング剤:Evonik社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
レジン:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100A(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂)
オイル:H&R(株)製のVIVATEC400(TDAEオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤77PD:LANXESS社製のVulkanox4030(N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤G−1:大内新興化学工業(株)製のノクラックG−1(N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤TMQ:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチルー1,2−ジヒドロキノリン重合体)
老化防止剤NS−5:大内新興化学工業(株)製のノクラックNS−5(2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール))
不溶性硫黄(10%オイル含有):日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶物60%以上、オイル分10質量%含む不溶性硫黄)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
【0085】
実施例1〜24および比較例1〜15
表1〜5に示す各種薬品(不溶性硫黄および加硫促進剤を除く)を、バンバリーミキサーにてベース練り工程(排出温度150℃、4分間)およびリミル工程(排出温度130℃、3分間)を行い、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄ならびに加硫促進剤を添加してファイナル練り工程(排出温度100℃、2分間)を行い、未加硫ゴム組成物を得た。
【0086】
さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。また、得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に押出し加工し、他の部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することで、試験用タイヤ(乗用車用ラジアルタイヤ、サイズ:205/65R15)を作製した。
【0087】
上記の未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物および試験用ゴム組成物を用いて下記の試験を行った。
【0088】
<粘弾性試験>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期伸縮歪10%および動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の複素弾性率E*(MPa)および損失正接tanδを測定した。E*が大きいほど、操縦安定性に優れることを示し、tanδが小さいほど、転がり抵抗特性に優れる(転がり抵抗が低い)ことを示す。
なお、E*は3.0〜5.0、tanδは0.17以下を性能目標値とする。
【0089】
<体積固有抵抗>
上記加硫ゴム組成物を、厚さ2mm、15cm×15cmに切り出し、(株)ADVANTEST社製の電気抵抗測定器R8340Aを用いて、電圧500V、温度23℃、相対湿度50%の条件で体積固有抵抗を測定した。
なお、体積固有抵抗は1×108Ω・cm以下を性能目標値とする。
【0090】
<引張試験>
上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、常温にて引張試験を実施し、試験片の破断伸びEB(%)を測定した。
なお、EBが大きいほど、耐久性に優れることを示し、480以上を性能目標値とする。
【0091】
<スピュー切れ評価>
上記試験用タイヤのデモールド時にサイドウォールに発生したスピュー切れの数をタイヤ100本以上についてカウントし、以下の計算式により、各配合におけるスピュー切れの発生数を指数表示した。指数が大きいほど、スピュー切れが発生し難いことを示し、100以上を性能目標値とする。
(スピュー切れ発生指数)=(比較例1のスピュー切れ発生数)/(各配合のスピュー切れ発生数)×100
【0092】
<加工性(シュリンク性評価、押し出し加工性評価)>
(シュリンク性評価)
各未加硫ゴム組成物について、押出し後の各未加硫ゴム組成物を所定のサイドウォールの形状に成形した成形品のシュリンク具合を目視、触覚により評価し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどシュリンクが発生し難いことを示し、90以上を性能目標値とする。
(押出し加工性評価)
また、成形品のゴム焼け度合い、エッジの凹凸およびプロファイルの平坦性を目視、触覚により評価し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど押出し加工性において優れることを示し、90以上を性能目標値とする。
【0093】
<コスト評価>
各試験用タイヤについて製造コストの評価を行った。評価は、非常に安価(◎)、安価(○)、高価(△)、非常に高価(×)で示した。
なお、製造コストはゴム成分よりも安価な充填剤およびオイルの含有量が多く、単位質量当たりのコストが他の薬品に比べて高いシランカップリング剤の含有量が少ない程、安価となる。
【0094】
<耐クラック性試験>
中近東アラブ首長国連邦で約1年間(夏を含む)ロードテストを行い、発生したクラックの度合いを以下の基準に従って評価した。評価基準の数字が大きいほど耐クラック性に優れていることを示す。また、数字右肩の+の記載があるものはその評価基準のなかでも優れることを、−の記載があるものはその評価基準のなかでは劣ることを意味する。
【0095】
評価基準
1:3mm以上の亀裂または切断が見られる。
2:1mm以上3mm未満の深い亀裂が見られる
3:1mm未満の深くて比較的大きな亀裂が見られる。
4:肉眼では、やっとのことで亀裂または切断が確認できる。
5:肉眼では確認できないが、拡大鏡(10倍)では亀裂または切断が確認できる。
【0096】
<茶変色性試験>
神戸にて、タイヤを屋外の日の当たる場所に6箇月間(冬〜夏)放置し、色差度計を用いて、a*、b*を測定し、その値により、以下の基準に従って評価した。評価基準の数字が大きいほど茶変色抑制効果に優れていることを示す。また、数字右肩の+および−は、前記耐クラック性試験の評価と同様である。
【0097】
評価基準
1:−(a*+b*)×10≦−30
2:−30<−(a*+b*)×10≦−20
3:−20<−(a*+b*)×10≦−10
4:−10<−(a*+b*)×10≦0
5:−(a*+b*)×10>0
【0098】
上記の各試験の結果を、表1〜5に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
表1、表2および表5に示すように、特定の湿式シリカおよび特定のカーボンブラックを所定量含有し、シランカップリング剤を含有しない実施例では、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下となり、耐スピュー切れ性および押出し加工性においてバランスよく優れ、さらにコスト面でも優れることがわかる。
【0105】
一方、表3および表4より、比較例1は一般的なサイドウォール用ゴム組成物の配合であるが、コストにおいて劣ることがわかる。比較例1に比べてカーボンブラックを多く含有する比較例2では、破断伸びスピュー切れ性において劣ることがわかる。特定の湿式シリカおよび特定のカーボンブラックを所定量含有しない比較例3〜9では、通電性、耐スピュー切れ性および押出し加工性をバランスよく向上できないことがわかる。また、シランカップリング剤を含有する比較例13および14ではコスト面で劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0106】
1 トレッド部
2 ブレーカー層
3 プライ
4 サイドウォール
5 クリンチ
6 ビード部
7 ビードコア
8 チェーファー
10 ベースペン
R リム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム成分100質量部に対して、
BET比表面積が70〜250m2/gの湿式シリカを2〜15質量部、
BET比表面積が37〜125m2/gのカーボンブラックを40〜62質量部含有し、
シランカップリング剤を含有せず、
体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であるサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックのBET比表面積が37〜50m2/gであり、
該カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して40〜60質量部であり、かつゴム組成物中に26〜36質量%である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックのBET比表面積が65〜85m2/gであり、
該カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して40〜55質量部であり、かつゴム組成物中に24.5〜36質量%である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載のサイドウォール用ゴム組成物からなるサイドウォールを有するタイヤ。
【請求項5】
請求項3記載のサイドウォール用ゴム組成物からなるサイドウォールを有するオールスチールラジアルタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82874(P2013−82874A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48228(P2012−48228)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】