説明

サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性をバランス良く改善し、更に、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を抑制できるサイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量%中、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜60質量%、末端変性ブタジエンゴムの含有量が7〜60質量%、イソプレン系ゴムの含有量が20〜70質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積25〜120m/gのカーボンブラック及び窒素吸着比表面積70〜250m/gのシリカの合計含有量が20〜40質量部、酸化亜鉛の含有量が3.6〜16質量部であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤのサイドウォールに用いるゴム組成物に対して、低燃費性に優れることが求められている。低燃費性を改善する方法として、変性剤により変性されたブタジエンゴム、ネオジム系触媒を用いて合成された、シス含量が95質量%以上で、かつビニル含量が1質量%以下のネオジム系ブタジエンゴムや、ハイブリッド架橋剤を使用する方法などが知られている。しかし、近年では、低燃費性の更なる改善が求められている。
【0003】
シリカやカーボンブラックなどの補強用充填剤(フィラー)を減量することにより、tanδが低下し、低燃費性を更に改善できるが、この場合、複素弾性率E*も低下するため、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが低下してしまう傾向がある。
【0004】
E*を高める方法として、ポリエチレンテレフタレート、粉細紙繊維、アラミド繊維などの微小繊維を使用することが知られているが、該微小繊維はゴムマトリックスと結合していないため、切り欠きや破壊の起点となるおそれがあり、耐亀裂成長性の点で問題がある。高粘度の高シスブタジエンゴムを用いることでもE*を高めることが可能であるが、この場合、フィラーが分散しにくくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。フィラーを減量した場合、混練トルクが小さくなるため、フィラーを良好に分散させることは更に困難となる傾向がある。
【0005】
また、フィラーを減量した場合、上述のE*の低下以外に、ゴム組成物の押出し時、押出機の吐出口にゴム組成物が密着したり、押出し後のゴム組成物のエッジが整わないなど、加工性(押出し加工性)が悪化する傾向もある。
【0006】
従って、低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性をバランスよく改善する方法が求められている。
【0007】
特許文献1では、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム、天然ゴムなどを使用することにより低燃費性、耐亀裂成長性などを改善する方法が提案されているが、低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性を同時に満足させる技術は未だに存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−63143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性をバランス良く改善し、更に、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を抑制できるサイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ゴム成分100質量%中、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜60質量%、末端変性ブタジエンゴムの含有量が7〜60質量%、イソプレン系ゴムの含有量が20〜70質量%であり、上記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積25〜120m/gのカーボンブラック及び窒素吸着比表面積70〜250m/gのシリカの合計含有量が20〜40質量部、酸化亜鉛の含有量が3.6〜16質量部であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0011】
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が25〜45m/gであり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記カーボンブラックの含有量が15〜38質量部であることが好ましい。
【0012】
上記ゴム成分100質量%中、上記1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び上記希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が10〜40質量%、上記末端変性ブタジエンゴムの含有量が25〜50質量%、上記イソプレン系ゴムの含有量が30〜60質量%であることが好ましい。
【0013】
上記末端変性ブタジエンゴムがスズ変性ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物は、生産効率とタイヤ性能の両立の面から、160〜190℃の加硫温度で加硫して得られるものであることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び/又は希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムと、末端変性ブタジエンゴムと、イソプレン系ゴムとを特定の比率で含有するゴム成分に対して、特定の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラック及び/又はシリカと、酸化亜鉛とをそれぞれ所定量配合したサイドウォール用ゴム組成物であるので、低燃費性、操縦安定性、破断抗力及び破断伸びがバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。また、良好な加工性を有するとともに、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を抑制し、金型メンテナンスの回数を削減できるため、生産性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積25〜120m/gのカーボンブラック及び窒素吸着比表面積70〜250m/gのシリカの合計含有量が20〜40質量部、酸化亜鉛の含有量が3.6〜16質量部であり、上記ゴム成分100質量%中、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)及び希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)の合計含有量が5〜60質量%、末端変性ブタジエンゴム(末端変性BR)の含有量が7〜60質量%、イソプレン系ゴムの含有量が20〜70質量%である。上記配合にすることにより、低燃費性、操縦安定性、破断抗力及び加工性をバランス良く改善し、更に、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を抑制できる。
【0018】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量が少ない場合、上述したように、E*の低下により、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが低下する傾向がある。これに対し、本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及びシリカの合計含有量を少なくするとともに、末端変性BRを配合することにより、低燃費性を改善することができ、これと同時に、SPB含有BR及び/又は希土類系BRを配合することで、E*が向上し、良好な操縦安定性、破断抗力、破断伸びを確保することができ、更に、良好な加工性も得られる。
【0019】
また、カーボンブラック及びシリカの合計含有量が少ない場合、破断抗力、破断伸びの低下により、タイヤモールドに設置した空気抜き用のベントホールやベントピースで形成される細長いスピューが、タイヤのデモールド時(タイヤが金型から外れる際)に切れ易くなる場合がある。デモールド時にスピューが切れてしまうと、スピュー穴が塞がってしまうため、次のタイヤを加硫した際、生カバーと金型の隙間のトラップエアーが流れる余地がなくなり、金型から生カバーへの熱伝導が効率良く進まず、生焼け現象と呼ばれる外観不良が発生する。生焼け現象が発生すると、バフ修正、再ペイント、焼付け修理などの工程が必要となり、生産性を阻害する。また、スピュー穴の清掃は、タイヤモールドを一旦プレスから取り外し、電気スクリューや高圧水を用いて行うため、生産性を大きく阻害する。従って、生産性の点から、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を抑制することが重要である。
【0020】
スピュー切れの発生を抑制するためには、タイヤがデモールドする際の温度に相当する120〜160℃程度の温度範囲で適度な破断伸び及び破断抗力を有すること、離型性(スピュー穴での滑り易さ)に優れることが必要となる。これに対し、本発明のゴム組成物は、SPB含有BR及び/又は希土類系BRによって良好な破断抗力、破断伸びを確保しつつ、イソプレン系ゴムによって更に破断伸びを向上させるとともに、酸化亜鉛を増量し、リバージョンを防止する効果と、離型性とを向上させることにより、タイヤのデモールド時におけるスピュー切れの発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明のゴム組成物は、SPB含有BR及び/又は希土類系BRを含有する。
【0022】
SPB含有BRとしては、タイヤ製造における汎用品を使用できるが、前述の性能が良好に得られるという点から、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶がBRと化学結合し、分散しているものが好ましい。スピュー穴の中でゴム組成物中の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が整列することで、ゴム組成物の硬さや強度が向上し、タイヤのデモールド時のスピュー切れの発生を効果的に抑制できる。
【0023】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上であり、また、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下である。下限未満では、SPB含有BRによる操縦安定性、破断抗力、破断伸びの改善効果が充分に得られないおそれがあり、上限を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0024】
SPB含有BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量(沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量)は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。2.5質量%未満では、補強効果(E*)が充分でないおそれがある。該含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下である。20質量%を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0025】
希土類系BRは希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、シス含量が高く、かつビニル含量が低いという特徴を有している。希土類系BRとしては、タイヤ製造における汎用品を使用できる。
【0026】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0027】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0028】
有機アルミニウム化合物としては、AlR(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlX3−k(式中、Xはハロゲン、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基、kは1、1.5、2又は3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;MeSrCl、MeSrCl、MeSrHCl、MeSrClなどのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0029】
希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合又は塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0030】
希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。1.2未満であると、加工性が悪化する傾向がある。該Mw/Mnは、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。5を超えると、操縦安定性、破断抗力、破断伸びの改善効果が少なくなる傾向がある。
【0031】
希土類系BRのMwは、好ましくは30万以上、より好ましくは50万以上であり、また、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下である。更に、希土類系BRのMnは、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下である。MwやMnが下限未満であると、操縦安定性、破断抗力、破断伸び、低燃費性が低下する傾向がある。上限を超えると、加工性の悪化が懸念される。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0032】
希土類系BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。90質量%未満であると、操縦安定性、破断抗力、破断伸び、低燃費性が低下するおそれがある。
なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0033】
希土類系BRのビニル含量は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。1.8質量%を超えると、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが低下するおそれがある。
なお、ビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0034】
本発明のゴム組成物がSPB含有BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSPB含有BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。60質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0035】
本発明のゴム組成物が希土類系BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中の希土類系BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0036】
ゴム成分100質量%中のSPB含有BR及び希土類系BRの合計含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが充分に得られないおそれがある。該合計含有量は、60質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。60質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0037】
本発明のゴム組成物は、末端変性BRを含有する。末端変性BRとしては特に限定されず、使用できる充填剤の種類(カーボンブラック、シリカなど)に応じて選択できるが、優れた低燃費性が得られるという理由から、スズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)、下記式(1)で表される化合物により変性された変性ブタジエンゴム(S変性BR)が好ましく、スズ変性BRがより好ましい。
【0038】
【化1】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【0039】
上記スズ変性BRとしては特に限定されないが、リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル含量が5〜50質量%、分子量分布が2以下のスズ変性BRが好ましい。
【0040】
上記スズ変性BRは、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端はスズ−炭素結合で結合されていることが好ましい。
【0041】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウムなどのリチウム系化合物が挙げられる。スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライドなどが挙げられる。
【0042】
スズ変性BRのスズ原子の含有量は50ppm以上である。50ppm未満では、tanδが増大する傾向がある。また、スズ原子の含有量は3000ppm以下、好ましくは300ppm以下である。3000ppmを超えると、混練り物の加工性が悪化する傾向がある。
【0043】
スズ変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2以下である。Mw/Mnが2を超えると、tanδが増大する傾向がある。分子量分布の下限は特に限定されないが、1以上であることが好ましい。
【0044】
スズ変性BRのビニル含量は、5質量%以上である。5質量%未満では、スズ変性BRの製造が困難である。該ビニル含量は50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。50質量%を超えると、カーボンブラックの分散性が悪く、低燃費性、破断抗力、破断伸びが低下する傾向がある。
【0045】
上記S変性BRとしては、特開2010−111753号公報などに記載されているものが挙げられる。
【0046】
式(1)において、優れた低燃費性、破断抗力が得られるという点から、R、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。好ましい化合物を使用することにより、本発明の効果が良好に得られる。
【0047】
式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、前述の性能を良好に改善できる点から、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
式(1)で表される化合物によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を使用できる。例えば、ブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性でき、具体的には、アニオン重合によるブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0049】
上記S変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。上記ビニル含量の下限は特に限定されないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。1質量%未満であると、耐熱性、耐劣化性が低下するおそれがある。
【0050】
上記S変性BRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万以上、より好ましくは40万以上である。10万未満であると、充分な破壊強度及び耐屈曲疲労性が得られないおそれがある。Mwは、好ましくは200万以下、より好ましくは80万以下である。200万を超えると、加工性が低下して分散不良を引き起こし、充分な破壊強度が得られないおそれがある。
【0051】
ゴム成分100質量%中の末端変性BRの含有量は、7質量%以上、好ましくは25質量%以上である。7質量%未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。該含有量は、60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、加工性が低下する傾向がある。
【0052】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、液状イソプレンゴム(L−IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などが挙げられる。なかでも、良好な破断時伸びが得られ、ロール加工性に優れるという点からNRが好ましい。また、より優れた加工性が得られるという点からNR及びIRの併用がより好ましい。NR、IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0053】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、20質量%以上、好ましくは30質量%以上である。20質量%未満であると、破断伸びが充分に得られないおそれがある。該含有量は、70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。70質量%を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。
【0054】
本発明のゴム組成物は、SPB含有BR、希土類系BR、末端変性BR及びイソプレン系ゴム以外に、他のゴム成分を使用してもよい。使用できるゴム成分としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムが挙げられる。
【0055】
本発明のゴム組成物は、窒素吸着比表面積25〜120m/gのカーボンブラック及び/又は窒素吸着比表面積70〜250m/gのシリカを含有する。
【0056】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、25m/g以上、好ましくは35m/g以上であり、120m/g以下、好ましくは45m/g以下である。下限未満であると充分な操縦安定性、破断抗力、破断伸びが得られないおそれがあり、上限を超えると低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0057】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、70m/g以上、好ましくは75m/g以上であり、250m/g以下、好ましくは200m/g以下である。下限未満であると充分な操縦安定性、破断抗力、破断伸びが得られないおそれがあり、上限を超えると低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、充分な操縦安定性、破断抗力、破断伸びが得られないおそれがある。カーボンブラックの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは38質量部以下である。40質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0059】
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、シリカを配合することによるtanδ低減や破断伸び向上の効果が充分に得られないおそれがある。シリカの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。40質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性が悪化するおそれがある。また、押出し後冷却につれて押出し物が不均一にシュリンクし、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
【0060】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上、好ましくは30質量部以上である。20質量部未満では、充分な操縦安定性が得られないおそれがある。該合計含有量は、40質量部以下、好ましくは38質量部以下である。40質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、上記ゴム組成物は、前述の成分を含有するため、上記範囲内のような少量のカーボンブラック及びシリカであっても、良好な操縦安定性、破断抗力、破断伸びが得られる。
【0061】
カーボンブラックは、NSAの異なる2種のカーボンブラック(1)及び(2)を併用してもよく、これにより、操縦安定性、破断抗力、破断伸びが顕著に改善し、また、スピュー切れの発生を効果的に抑制できる。この場合、カーボンブラック(1)のNSAは25〜50m/gが好ましく、カーボンブラック(2)のNSAは100〜120m/gが好ましい。ここで、カーボンブラック(1)の含有量は、前述の改善効果が良好に得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜30質量部であり、カーボンブラック(2)の含有量は好ましくは5〜30質量部である。
【0062】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部である。上記範囲内であると、低燃費性、操縦安定性及び加工性をバランス良く改善できる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含有する。酸化亜鉛は、硫黄を一旦吸着し、加硫反応を緩やかに進行させる効果があり、リバージョンを抑制することができる。また、酸化亜鉛は、ステアリン酸と結合することで、ステアリン酸亜鉛(不飽和脂肪酸石鹸)を形成し、該ステアリン酸亜鉛がスピュー表面にブルームすることで、離型性を向上できる。これらの作用により、スピュー切れの発生を効果的に抑制できる。酸化亜鉛としては特に限定されず、タイヤ工業において汎用されているものを使用でき、例えば、酸化亜鉛1〜3号などが挙げられる。
【0064】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3.6質量部以上、好ましくは3.8質量部以上である。3.6質量部未満では、リバージョンを充分に抑制できず、スピュー切れが発生し易くなる傾向がある。該含有量は、16質量部以下、好ましくは10質量部以下である。16質量部を超えると、充分な破断抗力、破断伸びを確保できないおそれがある。
【0065】
上記ゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、レジン、オイル、各種老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、離型剤などを適宜配合できる。
【0066】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含有することが好ましい。ステアリン酸を配合することで、加硫反応が活性化され、適切な架橋密度、更には、高いE*を得ることができる。また、上述したように、ステアリン酸と酸化亜鉛とを併用することで、ステアリン酸亜鉛を形成し、離型性を向上できる。ステアリン酸としては特に限定されず、タイヤ工業において汎用されているものを使用できる。
【0067】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上である。1.5質量部未満では、ステアリン酸亜鉛の生成量が少なく、離型性を充分に改善できないおそれがある。該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。4.0質量部を超えると、リバージョンが発生し易くなるおそれがある。
【0068】
本発明のゴム組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤を配合することで、スピュー穴内でスピューを滑り易くし、スピュー切れの発生をより抑制できる。離型剤としては、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物や、ステアリン酸亜鉛を好適に使用できる。離型剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜5質量部である。
【0069】
本発明のゴム組成物は、レジンを含有することが好ましい。レジンとしては特に限定されないが、本発明の効果が良好に得られるという理由から、C5系石油樹脂が好ましい。C5系石油樹脂とは、ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂である。
【0070】
上記レジンの軟化点は、好ましくは50℃以上、よリ好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記範囲内であると、低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性をバランス良く改善できる。
なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K6220:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0071】
上記レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、レジンを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。5質量部を超えると、充分な低燃費性が得られない傾向がある。
【0072】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。加硫促進剤としては特に限定されず、タイヤ工業において汎用されているものを使用でき、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられ、TBBSを好適に使用できる。本発明の効果が良好に得られるという点から、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜1.8質量部、より好ましくは0.5〜1.2質量部である。
【0073】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。加硫温度が高いほど、加硫時間を短くでき、生産性を向上できるが、リバージョンに起因するスピュー切れが発生し易くなる傾向がある。一方、加硫温度を160℃未満程度の低温にすると、スピュー切れは発生しにくいが、生産効率が著しく低下する傾向がある。これに対し、本発明のゴム組成物は、スピュー切れの発生を抑制できるため、加硫温度を160〜190℃というリバージョンが生じ易い条件にした場合であっても、スピュー切れが発生しにくく、良好な生産性を確保することができる。
【0074】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でサイドウォールの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0075】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0076】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
IR:JSR(株)製のIR2200
末端変性BR1:日本ゼオン(株)製のBR1250H(リチウム開始剤を用いて重合したスズ変性BR、ビニル含量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
末端変性BR2:旭化成ケミカルズ(株)製のN103(リチウム開始剤を用いて重合した変性BR、ビニル含量:12質量%、Mw/Mn:1.19、Mw:55万)
末端変性BR3:住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(リチウム開始剤を用いて重合したS変性BR、ビニル含量:26質量%、Mw/Mn:1.34、Mw:67万)(R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(ハイシスBR)
BR2:ランクセス社製のBUNA−CB22(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス含量:97質量%、ビニル含量:0.6質量%、ML1+4(100℃):63、Mw/Mn:1.60、Mw:59万、Mn:37万)
BR3:宇部興産(株)製のVCR617(SPB含有BR、SPBの含有量:17質量%、SPBの融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:114m/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(NSA:40m/g)
シリカ1:デグッサ社製のVN3(NSA:175m/g)
シリカ2:ローディア社製のZ1085Gr(NSA:90m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
レジン:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂)(軟化点:100℃)
オイル:H&R(株)製のVivaTec500(TDAEオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
ステアリン酸:日油(株)製の椿
離型剤1:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム)と脂肪酸アミドとの混合物)
離型剤2:日油(株)製のステアリン酸亜鉛
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
10%オイル含有不溶性硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶物60%以上の不溶性硫黄、オイル分:10質量%)(表1、2の値は、純硫黄分量を示す)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0077】
実施例及び比較例
表1、2に示す配合に従って、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールに用いて未加硫タイヤを作製し、加硫することで、試験用タイヤ(サイズ:245/40R18)を作製した。
なお、加硫温度(タイヤ金型設定温度)は表1、2に示す条件とした。
【0078】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価し、結果を表1、2に示した。
【0079】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期伸縮歪10%及び動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の複素弾性率E*(MPa)及び損失正接tanδを測定した。E*が大きいほど剛性が高く、操縦安定性に優れることを示し、tanδが小さいほど発熱が少なく、低燃費性に優れることを示す。
【0080】
(引張試験)
上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、常温にて引張試験を実施し、破断伸びEB(%)及び破断抗力TB(MPa)を測定した。
【0081】
(スピュー切れ評価)
上記試験用タイヤのデモールド時にサイドウォールに発生したスピュー切れの数をタイヤ本数100本以上についてカウントし、以下の計算式により、各配合のスピュー切れの発生数を指数表示した。指数が大きいほど、スピュー切れが発生しにくいことを示す。
(スピュー切れ発生指数)=(実施例13のスピュー切れ発生数)/(各配合のスピュー切れ発生数)×100
【0082】
(加工性)
各未加硫ゴム組成物について、押出し後の各未加硫ゴム組成物を所定のサイドウォールの形状に成形した成形品のエッジ状態、ゴムの焼け度合い、ゴム同士の粘着度合い、平坦さを目視、触覚により評価し、実施例13を100として指数表示した。数値が大きいほど、加工性(押出し加工性)が優れることを示している。
なお、エッジ状態については、最もエッジが真っ直ぐで滑らかな状態を良好とし、ゴムの焼け度合いについては、上記成形品から切り出した15cm角の2mmシートにおいて、ピッツ焼けゴム塊による凹凸がない状態を良好とし、平坦さについては、該シートが平坦で平面板に密着する状態を良好として評価した。
【0083】
(転がり抵抗)
転がり抵抗試験機を用い、JIS標準中心リム、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で、JIS D 4234:2009に従い、上記試験用タイヤの転がり抵抗を測定し、以下の計算式から転がり抵抗の改善率(転がり抵抗の低下率)を算出した。
転がり抵抗の改善率=(比較例1の転がり抵抗−各配合の転がり抵抗)/(比較例1の転がり抵抗)×100
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1、2から、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び/又は希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムと、末端変性ブタジエンゴムと、イソプレン系ゴムとを特定の比率で含有するゴム成分に対して、特定の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラック及び/又はシリカと、酸化亜鉛とをそれぞれ所定量配合した実施例では、低燃費性、操縦安定性、破断抗力、破断伸び及び加工性がバランス良く改善され、更に、スピュー切れの発生も抑制された。
【0087】
また、末端変性BRとしてスズ変性BRを用いた実施例1は、他の末端変性BRを用いた実施例19、20と比較して、低燃費性が大きく改善された。
【0088】
一方、比較例は、いずれかの成分が特定の範囲外のため、実施例と比較して性能が劣っていた。また、目標値に到達しない性能があり、性能のバランスが悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量%中、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜60質量%、末端変性ブタジエンゴムの含有量が7〜60質量%、イソプレン系ゴムの含有量が20〜70質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積25〜120m/gのカーボンブラック及び窒素吸着比表面積70〜250m/gのシリカの合計含有量が20〜40質量部、酸化亜鉛の含有量が3.6〜16質量部であるサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が25〜45m/gであり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が15〜38質量部である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量%中、前記1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム及び前記希土類系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が10〜40質量%、前記末端変性ブタジエンゴムの含有量が25〜50質量%、前記イソプレン系ゴムの含有量が30〜60質量%である請求項1又は2記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
前記末端変性ブタジエンゴムがスズ変性ブタジエンゴムである請求項1〜3のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
160〜190℃の加硫温度で加硫して得られる請求項1〜4のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−18868(P2013−18868A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153116(P2011−153116)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】