説明

サイドシルの排水構造

【課題】サイドシルに排水部を設けても、外観上の見栄えが低下しないサイドシルの排水構造を提供する。
【解決手段】レインフォース19の下部フランジ35における排水部11に対応する舌片を車内側に向けて屈曲させることにより、下方から排水部11を介してサイドシル9内へ液体が浸入することを防止する折曲部43を形成すると共に、前記シルアウタ15の下部フランジ23の下端縁23aを、レインフォース19およびシルインナ17の下部フランジ35,29の下端縁35a,29aよりも下側に配置させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドシルの排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車のサイドシルは閉断面構造に構成されているため、内部に溜まった雨水や泥などを外部に排出する排出口をサイドシルの下側に設けることがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、車両走行時に路面から跳ね上がった雨水等が前記排出口を介してサイドシル内に入らないように、サイドシルの下部フランジを屈曲させて折曲部を形成している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−59647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記背景技術に示されたサイドシルの排水構造では、車外側に配置されたシルアウタの下部フランジを屈曲させて折曲部を形成しているため、折曲部を形成した部分と、折曲部以外の一般部分とで下部フランジの下端縁の上下高さが異なる。従って、サイドシルを側方から見た場合に、下部フランジの下端縁に凹凸部分が形成されて外観上の見栄えが低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、サイドシルに排水部を設けても、外観上の見栄え低下を抑制できるサイドシルの排水構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、車外側にシルアウタを配置し、車内側にシルインナを配置し、これらのシルアウタおよびシルインナの間にレインフォースを配置し、それぞれの上部フランジおよび下部フランジ同士を互いに接合してサイドシルを構成すると共に、該サイドシルの内部に溜まった液体を車外へ排出する排水部を、前記シルインナの下部フランジとレインフォースの下部フランジとの間に設けたサイドシルの排水構造であって、前記レインフォースの下部フランジにおける前記排水部に対応する部位を車内側に向けて屈曲させることにより、下方から排水部を介してサイドシル内へ液体が浸入することを防止する折曲部を形成すると共に、前記シルアウタの下部フランジの下端縁を、レインフォースおよびシルインナの下部フランジの下端縁よりも下側に位置させたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るサイドシルの排水構造によれば、サイドシルを側方から見た場合、レインフォースおよびシルインナの下部フランジは、シルアウタの下部フランジに隠れて見えない。従って、レインフォースに設けた折曲部、切欠きおよび排水孔が見えず、サイドシルを側方から見たときに、上下方向の凹凸が低減して外観の見栄えが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態によるサイドシルを採用した車体全体を示す斜視図である。
【0010】
この車体1の側面には、フロントドアの開口部3を画成するフロントピラー5、センターピラー7およびサイドシル9が配設されている。該サイドシル9は、車体側面の下端部に車両前後方向に沿って延設されている。
【0011】
図2は図1のサイドシルの一部を切り欠いた斜視図、図3は本発明の実施形態によるサイドシルの分解斜視図、図4は図3の排水部11近傍を側方から見た側面図、図5は図2のA−A線による断面図、図6は図2のB−B線による断面図、および、図7は図5のC−C線による断面図である。
【0012】
図2に示すように、サイドシル9の下端部には、サイドシル9内に溜まった雨水等の液体を車外に排出する排水部11が設けられており、該排水部11以外の部位は一般部13に構成されている。
【0013】
また、図2,3,5,6に示すように、本実施形態によるサイドシル9は、車外側(車幅方向外側)に配置されたシルアウタ15と、車内側(車幅方向内側)に配置されたシルインナ17と、これらのシルアウタ15およびシルインナ17の間(車幅方向の中間)に配置されたレインフォース19とから構成されている。
【0014】
前記シルアウタ15は、上端に設けられた上部フランジ21と、下端に設けられた下部フランジ23と、これらの上部フランジ21および下部フランジ23を上下に連結する、車外側に凸状に形成された本体面25とから一体に形成されている。
【0015】
前記シルインナ17は、上端に設けられた上部フランジ27と、下端に設けられた下部フランジ29と、これらの上部フランジ27および下部フランジ29を上下に連結する、車内側に凸状に形成された本体面31とから一体に形成されている。
【0016】
前記レインフォース19は、上端に設けられた上部フランジ33と、下端に設けられた下部フランジ35と、これらの上部フランジ33および下部フランジ35を上下に連結する、車外側に凸状に形成された本体面37とから一体に形成されている。
【0017】
サイドシル9の上端部は、これらのシルアウタ15、シルインナ17およびレインフォース19の上部フランジ同士21,27,33を互いにスポット溶接することによって接合している。同様に、サイドシル9の下端部は、前記シルアウタ15、シルインナ17およびレインフォース19の下部フランジ同士23,29,35を互いにスポット溶接することによって接合している。なお、図中に丸で示したSは、スポット溶接部を示す。また、図5,6に示すように、サイドシル9は、前記シルアウタ15、シルインナ17およびレインフォース19によって閉断面構造に構成されている。
【0018】
ここで、図4に示すように、前記レインフォース19の下部フランジ35には、サイドシル9の排水部11に対応する部位に、円形の排水孔39が穿設されており、該排水孔39の下方には、前後一対の切欠き41が形成されている。これらの切欠き41は、下側が開口されており、一対の切欠き41,41の間に配置された舌片を車内側に屈曲させることにより折曲部43が形成されている。該折曲部43は、図5に示すように、垂直面に対して約45°だけ車幅方向内側に向けて折れ曲がって形成されている。さらに、図4の一点鎖線は、屈曲させる前の状態における舌片45を示すが、この舌片45の下端縁45aは、折曲部43以外の一般部13における下端縁13aと略同一の高さに配置されている。なお、図4,5から明らかなように、折曲部43の下端縁43aは、シルアウタ15の下部フランジ23の下端縁23aよりも上側に配置されており、サイドシル9を側方から見た場合に、折曲部43はシルアウタ15の下部フランジ23に隠れて見えない高さに配置されている。
【0019】
また、図3に示すように、シルインナ17の下部フランジ29には、前記レインフォース19の下部フランジ35に設けた排水孔39および折曲部43に対応する部位に、排水凹部47が形成されている。該排水凹部47は、図7にも示すように、車内側に向けて突設された断面略台形状に形成されており、さらに、レインフォース19の折曲部43は、シルインナ17の排水凹部47とレインフォース19の下部フランジ35とで形成される排水口49の大部分を下側から覆うように配置されている。
【0020】
なお、本実施形態では、図3に示すように、シルインナ17の下部フランジ29に、側面視略台形状の切欠部51が形成されており、該切欠部51に対応する部位にレインフォース19の折曲部43が配置されている。従って、レインフォース19の折曲部43を車内側に向けて屈曲させてシルインナ17の切欠部51に入り込ませるようにして、折曲部43と切欠部51との上下距離を一定に保持するようにしている。このように、本実施形態による排水部11は、図5に示す排水口49と排水孔39とから構成される。
【0021】
次いで、図5を用いて、サイドシル9内に溜まった雨水等の液体を車外へ排出する流れを簡単に説明する。
【0022】
サイドシル9の内部空間は、シルアウタ15とレインフォース19とで画成される外側閉断面部53と、シルインナ17とレインフォース19とで画成される内側閉断面部55と、からなる。
【0023】
まず、外側閉断面部53内に溜まった液体は、矢印に示すように、シルアウタ15の本体面25の底部25aからレインフォース19の排水孔39を介して排水口49から車外(下方)に排出される。
【0024】
また、内側閉断面部55に溜まった液体も、矢印に示すように、レインフォース19およびシルインナ17の本体面の底部31a,37aから排水口49を介して車外に排出される。
【0025】
以下に、本発明の実施形態によるサイドシルの排水構造の作用効果を説明する。
【0026】
(1)前記レインフォース19の下部フランジ35における前記排水部11に対応する舌片45を車内側に屈曲させることにより、下方からの排水部11を介したサイドシル内部への液体浸入を防止する折曲部43を形成すると共に、前記シルアウタ15の下部フランジ23の下端縁23aを、レインフォース19およびシルインナ17の下部フランジ29,35の下端縁29a,35aよりも下方に配置している。ここで、サイドシル9を側方から見た場合、レインフォース19およびシルインナ17の下部フランジ35,29は、シルアウタ15の下部フランジ23に隠れて見えない。従って、レインフォース19に設けた折曲部43、切欠き41および排水孔39が見えず、上下方向の凹凸が低減し、外観の見栄えが向上する。
【0027】
(2)前記折曲部43を屈曲させる前の下端縁45aは、下部フランジ35における折曲部43以外の一般部13の下端縁13aと略同一の高さ位置に配置されるように構成しているため、材料の歩留まりが向上し、コストおよび重量アップを招くことがない。
【0028】
即ち、レインフォース19に折曲部43を形成する場合は、折曲部43はシルアウタ15の下部フランジ23で隠れるため、ジャッキアップ部等の特定な部位以外は、下部フランジ23の下端縁23aを略直線状に揃えて、折曲部43のみを屈曲させれば良い。一方、シルアウタ15に折曲部43を形成する場合は、シルアウタ15の下部フランジ23のみを、レインフォース19およびシルインナ17の下部フランジ35,29よりも長く形成して屈曲させる必要があるため、材料の歩留まりが低下する。
【0029】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、本発明の技術思想に基づいて種々の変更及び変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態によるサイドシルを採用した車体全体を示す斜視図である。
【図2】図1のサイドシルの一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】本発明の実施形態によるサイドシルの分解斜視図である。
【図4】図3の排水部近傍を側方から見た側面図である。
【図5】図2のA−A線による断面図である。
【図6】図2のB−B線による断面図である。
【図7】図5のC−C線による断面図である。
【符号の説明】
【0031】
9…サイドシル
11…排水部
13…一般部
13a,23a,29a,35a…下端縁
15…シルアウタ
17…シルインナ
19…レインフォース
21,27,33…上部フランジ
23,29,35…下部フランジ
43…折曲部
43a…下端縁
47…排水凹部(排水部)
49…排水口(排水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側に配置されたシルアウタと、車内側に配置されたシルインナと、これらのシルアウタおよびシルインナの間に配置されたレインフォースとを、それぞれの上部フランジおよび下部フランジ同士を互いに接合してサイドシルを構成すると共に、前記シルインナの下部フランジとレインフォースの下部フランジとの間に、サイドシル内の液体を車外へ排出する排水部を設けたサイドシルの排水構造であって、
前記レインフォースの下部フランジにおける前記排水部に対応する部位を車内側に屈曲させることにより、下方から排水部を介してサイドシル内へ液体が浸入することを防止する折曲部を形成すると共に、
前記シルアウタの下部フランジの下端縁を、レインフォースおよびシルインナの下部フランジの下端縁よりも下方に配置したことを特徴とするサイドシルの排水構造。
【請求項2】
前記折曲部を屈曲させる前の下端縁は、下部フランジにおける折曲部以外の一般部の下端縁と略同一の高さ位置に配置されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のサイドシルの排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−100167(P2010−100167A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273203(P2008−273203)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】