説明

サイドシルプロテクタの取付構造

【課題】 サイドシルプロテクタを装着した車両において、ジャッキによるリフトアップ作業をよりスムーズに行うことができるようにする。
【解決手段】 サイドシル3の下側フランジ部3aにジャッキ2による支持位置が設定された車両に、当該サイドシル3の側部かつ下部を間隙をもって被覆するサイドシルプロテクタ4を取り付けた構造において、サイドシルプロテクタ4のジャッキ支持位置の側方となる位置に、ジャッキ2との干渉を回避するための開口部4aを設けるとともに、当該開口部4aを着脱可能に塞ぐリッド6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のサイドシルの外側を覆うサイドシルプロテクタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両において、美観の向上や空力性能の向上のため、サイドシルの側部から下部にかけてを間隙をもって外側に大きく膨出しつつ被覆するサイドシルプロテクタを装着したものが知られている(例えば特許文献1、2)。また、近年では、燃料電池車両等のように、車両床下に比較的大型の部品をレイアウトする場合に、これらの部品が外から見えないようにするために、サイドシルの側部から下部にかけて大きく膨出させた比較的大型のサイドシルプロテクタを装着する場合もある。
【特許文献1】特開平9−58522号公報
【特許文献2】特開平11−310091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車等の車両では、ジャッキ(リジットラック、2柱リフタ等を含む)を用いて車両をリフトアップする場合の当該ジャッキによる車体の支持位置は、通常、サイドシル下端のフランジ部に設定される。
【0004】
よって、上記従来の車両のように、サイドシルの側部から下部にかけてを間隙をもって外側に大きく膨出しつつ被覆するサイドシルプロテクタを装着したものでは、当該サイドシルプロテクタが邪魔になってジャッキを支持位置に設置することができず、ジャッキによるリフトアップ作業を行う前に、車両からサイドシルプロテクタを取り外す作業が必要となって、非常に面倒であった。
【0005】
そこで、本発明は、サイドシルプロテクタを装着した車両において、ジャッキによるリフトアップ作業をよりスムーズに行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、サイドシルの下側フランジ部にジャッキ支持位置が設定された車両に、当該サイドシルの側部かつ下部を間隙をもって被覆するサイドシルプロテクタを取り付けるサイドシルプロテクタの取付構造において、上記サイドシルプロテクタの上記ジャッキ支持位置の側方となる位置に、ジャッキとの干渉を回避するための開口部を設けるとともに、上記開口部を着脱可能に塞ぐリッドを設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジャッキ支持位置の側方となる位置に、リッドによって開閉可能な開口部を設けたため、このリッドを取り外すのみで、ジャッキがサイドシルプロテクタと干渉しなくなり、従来に比べてジャッキによるリフトアップ作業をスムーズに行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるサイドシルプロテクタが取り付けられた車両の側面を上から見た斜視図、図2は、サイドシルプロテクタが取り付けられた車両の床面を下から見た斜視図、図3は、車幅方向内側からサイドシルおよびサイドシルプロテクタの内面を見た斜視図、図4は、サイドシルおよびサイドシルプロテクタの側面図である。なお、図中、FRは、車両前後方向前方を示す。
【0009】
本実施形態にかかる車両1には、サイドシル3の側部および下部を間隙をもって外側に膨出しつつ被覆するサイドシルプロテクタ4が装備されている。このサイドシルプロテクタ4を設けることで、美観の向上や空力性能の向上に加えて、車両床下に配置した部品が見えにくくなるという効果が得られる。なお、本実施形態では、サイドシルプロテクタ4は、サイドシル3の下側フランジ部3aより下方まで伸びており、さらに、その下縁は、当該下側フランジ部3aの直下方となる位置より車幅方向内側まで伸びている。
【0010】
このサイドシルプロテクタ4には、サイドシル3の下側フランジ部3aに設定されたジャッキ支持位置(図4のA点およびB点)の側方(車幅方向外側)となる位置に、サイドシルプロテクタ4の下縁側に開口する略矩形の切欠として、開口部4aが設けられる。ここで、この開口部4aは、着脱可能なリッド6によって塞ぐことができるように構成されている。具体的には、例えば、ネジやクリップを用いて締結したり、あるいは凹凸や爪を設けるなどして、嵌着したり係着したりできるように構成することで、リッド6を開口部4aに着脱可能とすることができる。したがって、かかる構成により、通常時には、リッド6によって開口部4aを閉蓋しておき、必要なときにのみリッド6を取り外して、開口部4aを開口させることができる。
【0011】
このように、サイドシルプロテクタ4に開口部4aを設けたことで、図2に示すように、ジャッキ2を用いて車両1をリフトアップする場合に、当該ジャッキ2(アーム2aや支持体2b;図3,図4)がサイドシルプロテクタ4に干渉するのを回避することができる。よって、サイドシルプロテクタ4全体を取り外すことなく、単にリッド6をサイドシルプロテクタ4から取り外すのみで、サイドシルプロテクタ4と干渉させることなくジャッキ2の支持体2bをジャッキ支持位置A,Bに設置できるようになり、リフトアップ作業をよりスムーズに行うことができるようになる。
【0012】
なお、このサイドシルプロテクタ4は、例えば、樹脂を適宜な形状に成形して得ることができる。
【0013】
また、本実施形態では、サイドシルプロテクタ4を、例えばステンレススチール等の金属部材からなるブラケット5を用いて車両1に取り付けている。
【0014】
具体的には、板材を適宜な形状に切断しかつ折り曲げることで細長い形状のブラケット5を形成し、その上側フランジ部5bをサイドシル3のサイドシルインナ(図示せず)の下面にネジ止めする一方、下側フランジ部5aをサイドシルプロテクタ4に固定している。
【0015】
ここで、本実施形態では、ブラケット5のサイドシルプロテクタ4への固定位置を、開口部4aの前側および後側に近接して設定し、当該ブラケット5により、開口部4aを開口させたことによるサイドシルプロテクタ4の剛性低下を抑制している。
【0016】
具体的には、サイドシルプロテクタ4の下縁部の、開口部4aの前側および後側に近接した位置に、当該サイドシルプロテクタ4の内面から上方に突出する断面コ字状の脚部4bを突設形成し、この脚部4bの上面に下側フランジ部5aをネジによって固定している(すなわち、この脚部4bの上面が固定位置となる。)。かかる脚部4bを設けることで、この部分でサイドシルプロテクタ4の剛性を確保することができる上、特にブラケット5を金属製とした場合、脚部4bを形成しない場合に比べて、ブラケット5を短くすることができる分、軽量化を図ることができる。
【0017】
また、本実施形態では、ブラケット5に、ジャッキ2(の支持体2b)をジャッキ支持位置A,Bに向けて移動案内するガイド部5c,5dを設けている。これにより、ジャッキ2の支持体2bをガイド部5c,5dに当接させながらジャッキ支持位置A,Bまで案内することができるため、視覚のみに頼らず、より容易にかつより確実に、所期の支持状態を得ることができる。
【0018】
具体的には、本実施形態では、ブラケット5のサイドシル3への取付点を、サイドシル3の下側フランジ部3aに設定されたジャッキ支持位置A,Bの前側または後側に隣接して配置するとともに、ブラケット5を、ジャッキ支持位置A,Bから遠ざかるように斜め下方に向けて延伸させている。ここで、本実施形態では、ジャッキ支持位置A,Bともに、その前後両側にブラケット5を配置しているため、側面視では、各ジャッキ支持位置A,Bを挟んで一対のブラケット5が略ハの字状に設けられることになる。そして、各ブラケット5のジャッキ2が進入する領域側(すなわちジャッキ支持位置A,Bの中心側)の側縁に、下方から上方に向けてジャッキ支持位置A,B側に近づく傾斜部5cと、当該傾斜部5cの上側に連設して上下方向に伸びる直行部5dとを形成する。
【0019】
かかる構成において、ジャッキ2の支持体2bを下方から開口部4a内に進入させ、その奥側、すなわち上方に、当該支持体2bを移動させると、支持体2bの位置がジャッキ支持位置A,Bに対して車両前後方向にずれていた場合には、当該支持体2bは、傾斜部5cに当接する。そして、支持体2bは、傾斜部5cに当接しながらジャッキ支持位置A,B側に案内されて、直行部5d間の間隙を上昇して、ジャッキ支持位置A,Bに到達する。そして、この位置で、支持体2bの上面に設けられた溝2cにサイドシル3の下側フランジ部3aが挿入され、かくして、ジャッキ2による所期の支持状態が得られる。
【0020】
なお、ブラケット5の直行部5dの位置は、ジャッキ2の支持体2bが所期の位置に配置された場合の支持体2bの側壁の位置より僅かに車両前後方向外側にオフセットさせた位置とし、各ジャッキ支持位置A,Bを挟んで相互に対向する一対の直行部5dの間隔は、ジャッキ2の支持体2bの幅(車両前後方向の幅)より僅かに長くなるようにしておくのが好適である。これにより、支持体2bの所期の支持位置に対する車両前後方向のずれを小さくすることができる。
【0021】
また、本実施形態では、側面視で、ジャッキ支持位置A,Bの中心から開口部4aの車両前後方向内側(車両中心側)の端縁までの距離Wiを、当該ジャッキ支持位置A,Bの中心から開口部4aの車両前後方向外側の端縁までの距離Woより長くしている。こうすることで、図2に示すように、車両1の側方から車両1側に向かって略ハの字状に広がるアーム2aを備えるジャッキ2を用いる場合に、当該アーム2aとサイドシルプロテクタ4とが干渉するのをより確実に回避することができる。
【0022】
以上の本実施形態によれば、サイドシルプロテクタ4のジャッキ支持位置A,Bの側方となる位置に、ジャッキ2との干渉を回避するための開口部4aを設けるとともに、当該開口部4aを着脱可能に塞ぐリッド6を設けたため、サイドシルプロテクタ4全体を取り外すことなく、単にリッド6をサイドシルプロテクタ4から取り外すのみで、サイドシルプロテクタ4と干渉させることなくジャッキ2の支持体2bをジャッキ支持位置A,Bに設置できるようになり、リフトアップ作業をよりスムーズに行うことができるようになる。
【0023】
また、本実施形態によれば、サイドシルプロテクタ4を車両1に取り付けるブラケット5の当該サイドシルプロテクタ4との固定位置を、開口部4aの前側または後側に近接して設定したため、このブラケット5により、開口部4aを開口させたことによるサイドシルプロテクタ4の剛性低下を抑制することができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、サイドシルプロテクタ4の下縁部に脚部4bを立設し、当該脚部4b上にブラケット5の固定位置を設定したため、脚部4bを設けることで、この部分でサイドシルプロテクタ4の剛性を確保することができる上、特にブラケット5を金属製とした場合、脚部4bを形成しない場合に比べて、ブラケット5を短くすることができる分、軽量化を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、ブラケット5に、ジャッキ支持位置A,Bに向けて案内するガイド部5c,5dを設けたため、ジャッキ2の支持体2bをガイド部5c,5dに当接させながらジャッキ支持位置A,Bまで案内することができ、視覚のみに頼らず、より容易にかつより確実に、所期の支持状態を得ることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、ガイド部として、ジャッキ支持位置A,Bに近接する方向に傾斜する傾斜部5cを備えるため、支持体2bの位置がジャッキ支持位置A,Bに対して車両前後方向にずれていた場合に、当該支持体2bを、傾斜部5cに当接させながらジャッキ支持位置A,Bに向けて案内することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、側面視で、ジャッキ支持位置A,Bの中心から開口部4aの車両前後方向内側の端縁までの距離Wiを、当該ジャッキ支持位置A,Bの中心から開口部4aの車両前後方向外側の端縁までの距離Woより長くしたため、車両1の側方から車両1側に向かって略ハの字状に広がるアーム2aを備えるジャッキ2を用いる場合に、当該アーム2aとサイドシルプロテクタ4とが干渉するのをより確実に回避することができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ブラケットの形状は上記実施形態には限定されず、例えば、適宜剛性を強化するためのリブやフランジを設けたり、屈曲させたりしてもよい。また、サイドシルプロテクタの下縁部に脚部を設けず、ブラケットを当該下縁部に直接固定するようにしてもよい。
【0029】
また、開口部の周縁部に沿って伸びる部分を設け、万一当該開口部にジャッキが当接した場合に、当該開口部においてサイドシルプロテクタが変形するのを抑制できるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明にかかるサイドシルプロテクタの取付構造を備えた車両は、上記ハ字状のアームを備えるジャッキのみならず、他の形式のジャッキを用いてリフトアップ可能であることは言うまでもない。特に、本実施形態のように、サイドシルプロテクタの下縁部を切り欠いて開口部を形成しておけば、車幅方向に伸びるアームを備えたジャッキに対しても、サイドシルプロテクタとジャッキとの干渉を回避することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態にかかるサイドシルプロテクタが取り付けられた車両の側面を上から見た斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかるサイドシルプロテクタが取り付けられた車両の床面を下から見た斜視図。
【図3】車幅方向内側からサイドシルおよび本発明の実施形態にかかるサイドシルプロテクタの内面を見た斜視図。
【図4】サイドシルおよび本発明の実施形態にかかるサイドシルプロテクタの側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
2 ジャッキ
2a 開口部
3 サイドシル
3a 下側フランジ部
4 サイドシルプロテクタ
4b 脚部
5 ブラケット
5c 傾斜部(ガイド部)
5d 直行部(ガイド部)
6 リッド
A,B ジャッキ支持位置(の中心)
Wi ジャッキ支持位置の中心から開口部の車両前後方向内側の端縁までの距離
Wo ジャッキ支持位置の中心から開口部の車両前後方向外側の端縁までの距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシルの下側フランジ部にジャッキ支持位置が設定された車両に、当該サイドシルの側部かつ下部を間隙をもって被覆するサイドシルプロテクタを取り付けるサイドシルプロテクタの取付構造において、
前記サイドシルプロテクタの前記ジャッキ支持位置の側方となる位置に、ジャッキとの干渉を回避するための開口部を設けるとともに、
前記開口部を着脱可能に塞ぐリッドを設けたことを特徴とするサイドシルプロテクタの取付構造。
【請求項2】
前記サイドシルプロテクタを車両に取り付けるブラケットの当該サイドシルプロテクタとの固定位置を、前記開口部の前側または後側に近接して設定したことを特徴とする請求項1に記載のサイドシルプロテクタの取付構造。
【請求項3】
前記サイドシルプロテクタの下縁部に脚部を立設し、当該脚部上に前記固定位置を設定したことを特徴とする請求項2に記載のサイドシルプロテクタの取付構造。
【請求項4】
前記ブラケットに、ジャッキをジャッキ支持位置に向けて案内するガイド部を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のサイドシルプロテクタの取付構造。
【請求項5】
前記ガイド部が、ジャッキ支持位置に近接する方向に傾斜する傾斜部を備えることを特徴とする請求項4に記載のサイドシルプロテクタの取付構造。
【請求項6】
側面視で、前記ジャッキ支持位置の中心から開口部の車両前後方向内側の端縁までの距離を、前記ジャッキ支持位置の中心から開口部の車両前後方向外側の端縁までの距離より長くしたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載のサイドシルプロテクタの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−298200(P2006−298200A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123868(P2005−123868)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】