説明

サイドシルプロテクタ取付構造

【課題】組み付け作業が容易な簡単構造で見栄え良く確実に固定することができるサイドシルプロテクタ取付構造を提供する。
【解決手段】起立状態31で車両側方O側に位置するフラップ23の取付面41にサイドシルプロテクタ42を取り付ける。取付面41の自由端部側に断面円弧状の溝部71を設け、溝部71をフラップ23の全長に渡って形成する。サイドシルプロテクタ42の先端平面部103先端に、溝部71に挿入された状態で保持される差込部104を設け、差込部104を溝部71に適合した円弧状に形成する。サイドシルプロテクタ42の基端平面部101に固定部111を設け、サイドシルプロテクタ42の他側部を固定部111にてフラップ23に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドシルに沿って起立されるフラップへのサイドシルプロテクタ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、車両801側部には、サイドシル802が設けられており、該サイドシル802には、サイドシルプロテクタ803が設けられている。
【0003】
前記サイドシル802に前記サイドシルプロテクタ803を取り付ける方法としては、車体に取付穴811,811を開設し、クリップやビス等の固定部品812,812で固定する方法や、両面テープを用いて固定する方法が知られている。このとき、サイドシルプロテクタ803の先端部にエンドラバー813を設けることによって、車体814とサイドシルプロテクタ803間の隙間を埋められるように構成されている。
【0004】
一方、格納時にサイドステップに沿って起立されるフラップを備えたスライドステップが本願出願人によって考案されており(例えば、特許文献1参照。)、このフラップにサイドシルプロテクタを取り付ける場合は、前述と同様の方法が考えられる。
【特許文献1】特願2006−290597
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記サイドシルプロテクタ取付構造にあっては、サイドシルプロテクタを取り付けるための取付穴がフラップに多数必要となる。このため、押出工法によって形成されたフラップに多数の取付穴を設けるための穿孔作業が必要となり、後加工の増大を招いてしまう。また、このフラップに取り付けられるサイドシルプロテクタにもクリップ座の設定が必要となり、構造の複雑化を招いてしまう。
【0006】
そして、ビス止めによる固定方法では、ビスが表面に露出するため外観品質が低下し、両面テープによる固定方法では、貼り付けに手間がかかるとともに、両面テープのみの固定では、固定後に剥がれ落ちリスクが残存する。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、組み付け作業が容易な簡単構造で見栄え良く確実に固定することができるサイドシルプロテクタ取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のサイドシルプロテクタ取付構造にあっては、車両用ステップのフラップをサイドシルに沿って起立した状態で車両側方側に位置する前記フラップの取付面にサイドシルプロテクタが取り付けられるサイドシルプロテクタ取付構造において、前記フラップの前記取付面の自由端部側に、当該フラップの長手方向に延在する溝部を形成する一方、該溝部に挿入された状態で保持される差込部を前記サイドシルプロテクタの一側部に形成するとともに、該サイドシルプロテクタの他側部に当該サイドシルプロテクタを前記スラップに固定する固定部を設定した。
【0009】
すなわち、車両用ステップのフラップの取付面にサイドシルプロテクタを取り付ける際には、前記サイドシルプロテクタの一側部に設けられた差込部を、前記フラップの前記取付面の自由端部側に形成された溝部に挿入する。すると、前記フラップの自由端部側には、前記サイドシルプロテクタの一側部が挿入された状態で保持される。
【0010】
そして、当該サイドシルプロテクタの他側部に設定された固定部を前記スラップに固定する。これにより、当該サイドシルプロテクタは、前記一側部と前記他側部とが前記フラップの前記取付面に固定される。
【0011】
また、請求項2のサイドシルプロテクタ取付構造においては、前記フラップの前記取付面又は該取付面に対向する前記サイドシルプロテクタの内側面に対向部位へ向けて突出する凸条を長手方向に延設し、該凸条を前記溝部による固定点と前記固定部による固定点との間に設定する一方、前記差込部が前記溝部への当接位置から受ける溝部反力が当該サイドシルプロテクタに与える変形を抑制するように当該溝部反力を、前記固定部に加える固定力と、前記差込部の前記当接位置から前記凸条までの当接位置側離間距離と、前記凸条から前記固定部までの固定部側離間距離とに基づいて設定した。
【0012】
すなわち、前記フラップの前記取付面に前記サイドシルプロテクタを固定した状態において、前記溝部による固定点と前記固定部による固定点との間に設けられた凸条が対向部位に当接する。
【0013】
このとき、前記溝部反力が当該サイドシルプロテクタに与える変形を抑制するように、当該溝部反力は、前記固定部に加える固定力と、前記差込部の前記当接位置から前記凸条までの当接位置側離間距離と、前記凸条から前記固定部までの固定部側離間距離とに基づいて設定されている。
【0014】
このため、前記サイドシルプロテクタの外観品質が保たれるとともに、前記凸条による曲げモーメントが当該サイドシルプロテクタを破壊しないように設定される。
【0015】
さらに、請求項3のサイドシルプロテクタ取付構造では、前記固定部に固定力を加えた状態で前記サイドシルプロテクタが前記凸条から受ける凸条反力のベクトルに平行する仮想平行線を想定した際に、前記差込部が前記溝部への当接位置から受ける溝部反力のベクトルが前記仮想平行線に対して交差方向に延在し、前記差込部の差込側に生ずることで、前記固定部に前記固定力を加えた状態で前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力が前記溝部からの前記差込部の抜けを阻止する方向に加えられるように前記当接位置を設定した。
【0016】
すなわち、前記固定部に固定力を加えた状態で前記サイドシルプロテクタが前記凸条から受ける凸条反力のベクトルに平行する仮想平行線を想定した場合、前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力のベクトルが前記仮想平行線に対して交差方向に延在し、前記差込部の差込側に生ずるように前記当接位置が設定されている。
【0017】
このため、前記サイドシルプロテクタは、前記凸条からの凸条反力を受けることによって、前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力のベクトルが、前記差込部を差込側へ移動する方向へ向けて作用し、前記溝部からの前記差込部の抜けを阻止する方向に加えられる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の請求項1のサイドシルプロテクタ取付構造にあっては、車両用ステップのフラップの取付面にサイドシルプロテクタを取り付ける際には、前記サイドシルプロテクタの一側部に設けられた差込部を前記フラップの前記取付面の自由端部側に形成された溝部に挿入するとともに、当該サイドシルプロテクタの他側部の固定部を前記スラップに固定するだけで、当該サイドシルプロテクタを前記フラップの取付面に固定することができる。これにより、組み付けが容易となり、組立工程の簡素化を図ることができる。
【0019】
このとき、前記サイドシルプロテクタの一側部は、前記差込部を前記フラップの前記溝部に挿入することで固定される。このため、サイドシルプロテクタを取り付けるための取付穴をフラップに多数設けなければならなかった従来と比較して、押出工法によって形成されたフラップであっても、後加工を廃止する又は最小限に抑えることができ、作業効率を高めることができる。
【0020】
また、サイドシルプロテクタへの機械加工やクリップ座の設定も不要となるため、構造の簡素化を図ることができる。
【0021】
そして、前記フラップを傾倒して踏み面として利用する際には、前記サイドシルプロテクタ端部を踏むことが無く、踏まれた際に生じ得る不具合を未然に回避することができる。
【0022】
さらに、前記サイドシルプロテクタ一側部に設けられた前記差込部は、前記溝部に挿入され隠蔽されるため、当該一側部での塗装品質を緩和することができる。
【0023】
このとき、前記サイドシルプロテクタは、フラップをサイドシルに沿って起立した状態で上方に位置する前記一側部が前記フラップの前記溝部に挿入された状態で固定される。このため、フラップ起立状態で上部に位置する前記サイドシルプロテクタの一側部と前記フラップとの間に、エンドラバー等を設けること無く、隙間の発生を防止することができ、見栄えの向上及び異物の挟み込みを防止することができる。
【0024】
また、前記サイドシルプロテクタ一側部の前記差込部が挿入される前記溝部は、前記フラップの長手方向に形成されている。このため、当該サイドシルプロテクタに生じた長手方向のうねりを前記フラップで矯正することができる。
【0025】
さらに、サイドシルプロテクタをクリップやビス止めによって固定する場合と比較して、表面へのクリップやビスの露出を防止することができるため、外観品質を向上することができる。
【0026】
加えて、サイドシルプロテクタを両面テープのみによって固定する場合と比較して、貼り付け作業を緩和し、固定後の剥がれ落ちリスクを軽減することができる。
【0027】
したがって、組み付け作業が容易な簡単構造で見栄え良く確実に固定することができるサイドシルプロテクタ取付構造を提供することができる。
【0028】
また、請求項2のサイドシルプロテクタ取付構造においては、前記フラップの前記取付面に前記サイドシルプロテクタを固定した状態において、前記溝部による固定点と前記固定部による固定点との間に設けられた凸条を対向部位に当接する。
【0029】
このとき、前記溝部反力が当該サイドシルプロテクタに与える変形を抑制するように、当該溝部反力は、前記固定部に加える固定力と、前記差込部の前記当接位置から前記凸条までの当接位置側離間距離と、前記凸条から前記固定部までの固定部側離間距離とに基づいて設定されている。
【0030】
これにより、前記サイドシルプロテクタが大きく変形してしまう場合と比較して、前記溝部から受ける溝部反力を安定させ、当該サイドシルプロテクタの外観品質を高めることができるとともに、前記凸条から受ける曲げモーメントによる当該サイドシルプロテクタの破壊を確実に防止することができる。
【0031】
また、この溝部反力によって前記サイドシルプロテクタと前記フラップ間に生ずる段差を少なくすることもできる。
【0032】
さらに、請求項3のサイドシルプロテクタ取付構造では、前記固定部に固定力を加えた状態で前記サイドシルプロテクタが前記凸条から受ける凸条反力のベクトルに平行する仮想平行線を想定した場合、前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力のベクトルが前記仮想平行線に対して交差方向に延在し、前記差込部の差込側に生ずるように前記当接位置が設定した。
【0033】
このため、前記サイドシルプロテクタは、前記凸条からの凸条反力を受けることによって、前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力のベクトルを、前記差込部が差込側へ移動する方向へ向けて働かせることができ、この与圧によって前記溝部からの前記差込部の抜けを阻止することができるとともに、挿入部位でのサイドシルプロテクタのがたつきを抑制することができる。
【0034】
これにより、前記溝部からの前記差込部の不用意な抜けを防止することができ、サイドシルプロテクタのより強固な固定を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実地の形態を図に従って説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態にかかるサイドシルプロテクタ取付構造を示す図であり、車両1側部が示されている。
【0037】
すなわち、この車両1には、前席に乗降する為の前席用乗降口11と、後席に乗降する為の後席用乗降口12とが設けられており、前記前席用乗降口11及び前記後席用乗降口12の下部には、閉断面形状のサイドシル13が車両前後方向に延設されている。このサイドシル13の下部には、乗降を補助する為の車両用ステップ14が前記前席用乗降口11から前記後席用乗降口12に渡って延設されており、当該車両用ステップは、図外のスライド機構によって車幅方向にスライドされるように構成されている。
【0038】
この車両用ステップ14は、図2に示すように、前記スライド機構を介して車体に支持された長板状のメインステップ21と、該メインステップ21にヒンジ部22を介して起立可能に支持された長板状のフラップ23とによって構成されている。
【0039】
これにより、前記メインステップ21を車両側部へ延出し、前記フラップ23を前記メインステップ21の延長上に配置して水平を維持した展開状態と(図示省略)、前記メインステップ21を車両下部に後退させ、前記フラップ23を前記メインステップ21に対して上方へ傾動して起立させた起立状態31とを形成できるように構成されており、この起立状態31において、前記フラップ23を前記サイドシル13に沿って配置できるように構成されている。
【0040】
この起立状態31において、車両側方O側に位置する前記フラップ23の取付面41には、サイドシルプロテクタ42が取り付けられている。
【0041】
このフラップ23は、アルミニュームによって押し出し成型されており、当該フラップ23の上面は、前記メインステップ21の上面と共に踏み面51を形成するように構成されている。このフラップ23の基端部には、前記メインステップ21の嵌合部52と嵌合する軸部53が一体形成されており、前記嵌合部52が回動自在に嵌合した状態で、前記ヒンジ部22が形成されている。
【0042】
この軸部53より先端側は、中空状に形成されており、先端部を構成する下面は、前記サイドシルプロテクタ42が取り付けられる前記取付面41を構成している。この取付面41は、基端側が前記踏み面51に平行した平坦面61を構成しており、該平坦面61より先端側は、先端へ向かうに従って前記踏み面51側へ向けて傾斜した傾斜面62を構成している。これにより、当該フラップ23の先端部は、先端へ向かうに従って薄肉になるように構成されている。
【0043】
前記取付面41の先端側である自由端部側には、溝部71が形成されており、該溝部71は、当該フラップ23の長手方向に延設されている。この溝部71も、当該フラップ23を押し出し成型する際に形成されており、この溝部71は、当該フラップ23の全長に渡って形成されている。
【0044】
この溝部71は、断面円弧状に形成されており、当該溝部71の前記取付面41側の壁面には、前記踏み面51側へ向けて突出した断面半円形状の突出部81が形成されている。この溝部71の前記踏み面51側の壁面には、前記踏み面51側に突出した断面円弧状に形成されている。
【0045】
前記取付面41を構成する前記傾斜面62は、前記溝部71によって先端側構成部91と基端側構成部92とに区画されており、前記先端側構成部91は、前記基端側構成部92より裏面側へ突出するように構成されている。
【0046】
一方、前記サイドシルプロテクタ42は、合成樹脂によって形成されており、前記フラップ23に適合した長さ寸法に形成されている。このサイドシルプロテクタ42は、前記フラップ23に取り付けた状態で前記取付面41の前記平坦面61に沿って配設される基端平面部101を備えており、該基端平面部101より先端側には、前記平坦面61から離れる方向へ突出した中間湾曲部102が形成されている。該中間湾曲部102より先端側には、前記取付面41における前記傾斜面62の前記基端側構成部92に沿って配設される先端平面部103が形成されており、該先端平面部103の先端には、前記溝部71に挿入された状態で保持される差込部104が一体形成されている。
【0047】
該差込部104は、前記踏み面51側へ向けて延出した後、先端方向へ向けて湾曲した湾曲形状に形成されており、前記溝部71に適合した断面円弧状に形成されている。これにより、当該差込部104の先端を前記溝部71の開口部に合わせて当該溝部71内に挿入しつつ、当該サイドシルプロテクタ42を前記フラップ23基端側に回動することによって、当該差込部104を湾曲形状の前記溝部71に挿入できるように構成されており、この挿入状態において、当該サイドシルプロテクタ42の一側部を前記フラップ23の自由端部に固定できるように構成されている。
【0048】
このサイドシルプロテクタ42の基端部を構成する前記基端平面部101には、固定部111が設けられており、該固定部111は、例えば前記フラップ23に螺入されるタッピンねじ112(図1参照)を挿通する挿通穴113で構成されている。
【0049】
これにより、このタッピンねじ112を前記挿通穴113に挿通した状態で前記フラップ23に螺入することによって、当該サイドシルプロテクタ42の他側部を、前記固定部111において前記フラップ23に固定できるように構成されている。
【0050】
ここで、本実施の形態では、前記固定部111を前記挿通穴113で構成する場合について説明するが、これに限定されるものでは無く、当該サイドシルプロテクタ42を前記フラップ23に固定できる構造であれば良い。
【0051】
その固定例として、ビス固定や、クリップ固定や、両面テープを用いた固定方法が挙げられる。さらに、この部位に対向する前記フラップ23の部位に溝形状を形成するとともに、この溝形状に係合する係合部を当該サイドシルプロテクタ42に設けて固定部111を構成しても良い。
【0052】
そして、前記サイドシルプロテクタ42の厚み寸法は、前記取付面41の前記傾斜面62を構成する前記先端側構成部91と前記基端側構成部92との段差寸法と略同寸法に設定されており、当該サイドシルプロテクタ42を前記フラップ23に取り付けた状態で、前記取付面41の前記傾斜面62が平坦になるように構成されている。
【0053】
前記フラップ23における前記取付面41の前記傾斜面62には、図3に示すように、当該傾斜面62が対向する前記サイドシルプロテクタ42の内側面121の対向部位へ向けて突出する凸条122が長手方向に延設されており、該凸条122は、前記溝部71による固定点と、前記固定部111による固定点123との間に設定されている。この凸条122も、前記フラップ23を押し出し成型する際に形成されており、当該フラップ23の全長に渡って形成されている。
【0054】
前記凸条122は、前記タッピンねじ112を螺入して前記固定部111に固定力F1を加えた状態で、前記差込部104が前記溝部71に接触する当接位置である溝部接触点131から受ける溝部反力F2が、当該サイドシルプロテクタ42に与える変形を抑制するように当該溝部反力F2は、前記固定部111に加える固定力F1と、前記差込部104の前記溝部接触点131から前記凸条122が当接した凸条当接位置122aまでの当接位置側離間距離135と、前記凸条当接位置122aから前記固定部111までの固定部側離間距離136との関係、及び前記凸条122の高さ寸法に基づいて設定されている。
【0055】
つまり、前記溝部反力F2が当該サイドシルプロテクタ42に与える変形を抑制し、かつ前記凸条122から受ける曲げモーメントが当該サイドシルプロテクタ42を破壊しないように、前記溝部反力F2が、前記固定力F1と前記当接位置側離間距離135と前記固定部側離間距離136との関係に基づいて規定されている。
【0056】
そして、図4に示すように、前記固定部111に前記固定力F1を加えた状態で、前記サイドシルプロテクタ42が前記凸条122から受ける凸条反力F5の凸条反力ベクトルV5を求めた際に、この凸条反力ベクトルV5に平行する仮想平行線151を想定すると、前記差込部104が前記溝部接触点131から受ける前記溝部反力F2の溝部反力ベクトルV2を求めた際に、この溝部反力ベクトルV2が前記仮想平行線151に対して交差方向に延在するように構成されており、この溝部反力ベクトルV2と前記仮想平行線151とが成す鋭角の角度αが0度以上であって、前記仮想平行線151より、図4中上側を向くように構成されている。これにより、前記溝部反力ベクトルV2は、前記差込部104の先端側、つまり前記溝部71からの前記差込部104の抜けを阻止し、差込側へ生ずるように前記溝部接触点131が設定されている。
【0057】
以上の構成にかかる本実施の形態において、車両用ステップ14のフラップ23の取付面41にサイドシルプロテクタ42を取り付ける際には、当該サイドシルプロテクタ42の一側部に設けられた差込部104を、前記フラップ23の自由端部側に形成された溝部71に挿入する。
【0058】
ここで、この溝部71への前記差込部104の挿入方法としては、該差込部104の先端を前記溝部71の開口部に挿入して当該サイドシルプロテクタ42を回動して挿入する他、前記フラップ23の端部に開口した前記溝部71の端部開口部から前記差込部104を当該フラップ23の長さ方向に挿入する方法が挙げられる。
【0059】
すると、前記フラップ23の自由端部側には、前記サイドシルプロテクタ42の一側部が挿入された状態で保持される。
【0060】
そして、当該サイドシルプロテクタ42の他側部に設定された固定部111の挿通穴113にタッピンねじ112を挿通して前記フラップ23に螺入する等して、当該固定部111を前記フラップ23に固定する。
【0061】
これにより、合成樹脂製の前記サイドシルプロテクタ42は、その一側部と他側部とがアルミ製の前記フラップ23の前記取付面41に固定される。
【0062】
このように、前記サイドシルプロテクタ42の一側部に設けられた前記差込部104を前記フラップ23の自由端部側に形成された前記溝部71に挿入するとともに、当該サイドシルプロテクタ42の他側部に設定された前記固定部111を前記フラップ23に固定するだけで、当該サイドシルプロテクタ42を前記フラップ23の取付面41に固定することができる。これにより、前記フラップ23への前記サイドシルプロテクタ42の組み付けが容易となり、組立工程の簡素化を図ることができる。
【0063】
このとき、前記サイドシルプロテクタ42の一側部は、前記差込部104を前記フラップ23の前記溝部71に挿入することで固定される。このため、前記サイドシルプロテクタ42を取り付けるための取付穴を前記フラップ23に多数設けなければならなかった従来と比較して、本実施の形態のように押出工法によって形成されたフラップ23における後加工を廃止する又は最小限に抑えることができ、作業効率を高めることができる。
【0064】
また、前記サイドシルプロテクタ42への機械加工やクリップ座の設定も不要となるため、構造の簡素化を図ることができる。
【0065】
そして、前記フラップ23を傾倒して上面を踏み面51として利用する際には、前記サイドシルプロテクタ42端部が前記フラップ23の下面に配置されるので、当該サイドシルプロテクタ42端部を踏むことが無く、踏まれた際に生じ得る脱落等の不具合を未然に回避することができる。
【0066】
さらに、前記サイドシルプロテクタ42の一側部に設けられた前記差込部104は、前記溝部71に挿入された状態で隠蔽されるため、当該一側部での塗装品質を緩和することができる。
【0067】
このとき、前記サイドシルプロテクタ42は、前記フラップ23を前記サイドシル13に沿って起立した状態で上方に位置する前記一側部が前記フラップ23の前記溝部71に挿入された状態で固定される。このため、フラップ23起立状態31で上部に位置する前記サイドシルプロテクタ42の一側部と前記フラップ23との間に、エンドラバー等を設けること無く、隙間の発生を防止することができ、見栄えの向上及び異物の挟み込みを防止することができる。
【0068】
また、前記サイドシルプロテクタ42の一側部に設けられた前記差込部104が挿入される前記溝部71は、前記フラップ23の長手方向に形成されている。このため、合成樹脂製のサイドシルプロテクタ42に生じた長手方向のうねりを、前記フラップ23で矯正することができる。
【0069】
さらに、前記サイドシルプロテクタ42をクリップやビス止めによって固定する場合と比較して、表面へのクリップやビスの露出を防止することができるため、外観品質を向上することができる。
【0070】
加えて、前記サイドシルプロテクタ42を両面テープのみによって固定する場合と比較して、貼り付け作業を緩和し、固定後の剥がれ落ちリスクを軽減することができる。
【0071】
したがって、組み付け作業が容易な簡単構造で見栄え良く確実に固定することができるサイドシルプロテクタ取付構造を提供することができる。
【0072】
また、前記フラップ23の前記取付面41に前記サイドシルプロテクタ42を固定した状態において、前記溝部71による固定点と前記固定部111による固定点123との間に設けられた凸条122が前記サイドシルプロテクタ42の対向部位に当接する。
【0073】
このとき、前記溝部反力F2が当該サイドシルプロテクタ42に与える変形を抑制するように、当該溝部反力F2は、前記固定部111に加える固定力F1と、前記差込部104の前記溝部接触点131から前記凸条当接位置122aまでの当接位置側離間距離135と、前記凸条当接位置122aから前記固定部111までの固定部側離間距離136とに基づいて設定されている。
【0074】
これにより、前記サイドシルプロテクタ42が大きく変形してしまう場合と比較して、前記溝部71から受ける溝部反力F2を安定させ、当該サイドシルプロテクタ42の外観品質を高めることができるとともに、前記凸条122からの曲げモーメントによる当該サイドシルプロテクタ42の破壊を確実に防止することができる。
【0075】
また、この溝部反力F2によって前記サイドシルプロテクタ42と前記フラップ23間に生ずる段差を少なくすることもできる。
【0076】
そして、前記固定部111に前記固定力F1を加えた状態で、前記サイドシルプロテクタ42が前記凸条122から受ける凸条反力F5の凸条反力ベクトルV5を求めた際に、この凸条反力ベクトルV5に平行する仮想平行線151を想定すると、前記差込部104が前記溝部接触点131から受ける前記溝部反力F2の溝部反力ベクトルV2を求めた際に、この溝部反力ベクトルV2が前記仮想平行線151に対して交差方向に延在するように構成されており、この溝部反力ベクトルV2と前記仮想平行線151とが成す鋭角の角度αが0度以上であって、前記仮想平行線151より、図4中上側を向くように構成されている。
【0077】
すなわち、前記溝部反力ベクトルV2は、前記差込部104の先端側、つまり差込側へ生ずるように前記溝部接触点131が設定されている。
【0078】
このため、前記サイドシルプロテクタ42は、前記凸条122からの前記凸条反力F5を受けることによって、前記差込部104が前記溝部接触点131から受ける前記溝部反力F2の溝部反力ベクトルV2を、前記差込部104が差込側へ移動する方向へ向けて働かせることができ、この与圧によって前記溝部71からの前記差込部104の抜けを阻止することができるとともに、挿入部位でのサイドシルプロテクタ42のがたつきを抑制することができる。
【0079】
これにより、前記溝部71からの前記差込部104の不用意な抜けを防止することができ、サイドシルプロテクタ42のより強固な固定を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態を示す要部の斜視図である。
【図2】図1のA−Aに相当する断面図である。
【図3】(a)は、図1のA−Aに相当する断面の説明図であり、(b)は、(a)のB部拡大図である。
【図4】(a)は、図1のA−Aに相当する断面の説明図であり、(b)は、(a)のC部拡大図である。
【図5】従来のサイドシルプロテクタ取付構造を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
13 サイドシル
14 車両用ステップ
23 フラップ
31 起立状態
41 取付面
42 サイドシルプロテクタ
71 溝部
104 差込部
111 固定部
121 内側面
122 凸条
122a 凸条当接位置
123 固定点
131 溝部接触点
135 当接位置側離間距離
136 固定部側離間距離
151 仮想平行線
F1 固定力
F2 溝部反力
F5 凸条反力
V2 溝部反力ベクトル
V5 凸条反力ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ステップのフラップをサイドシルに沿って起立した状態で車両側方側に位置する前記フラップの取付面にサイドシルプロテクタが取り付けられるサイドシルプロテクタ取付構造において、
前記フラップの前記取付面の自由端部側に、当該フラップの長手方向に延在する溝部を形成する一方、
該溝部に挿入された状態で保持される差込部を前記サイドシルプロテクタの一側部に形成するとともに、該サイドシルプロテクタの他側部に当該サイドシルプロテクタを前記スラップに固定する固定部を設定したことを特徴とするサイドシルプロテクタ取付構造。
【請求項2】
前記フラップの前記取付面又は該取付面に対向する前記サイドシルプロテクタの内側面に対向部位へ向けて突出する凸条を長手方向に延設し、該凸条を前記溝部による固定点と前記固定部による固定点との間に設定する一方、
前記差込部が前記溝部への当接位置から受ける溝部反力が当該サイドシルプロテクタに与える変形を抑制するように当該溝部反力を、前記固定部に加える固定力と、前記差込部の前記当接位置から前記凸条までの当接位置側離間距離と、前記凸条から前記固定部までの固定部側離間距離とに基づいて設定したことを特徴とする請求項1記載のサイドシルプロテクタ取付構造。
【請求項3】
前記固定部に固定力を加えた状態で前記サイドシルプロテクタが前記凸条から受ける凸条反力のベクトルに平行する仮想平行線を想定した際に、前記差込部が前記溝部への当接位置から受ける溝部反力のベクトルが前記仮想平行線に対して交差方向に延在し、前記差込部の差込側に生ずることで、前記固定部に前記固定力を加えた状態で前記差込部が前記当接位置から受ける前記溝部反力が前記溝部からの前記差込部の抜けを阻止する方向に加えられるように前記当接位置を設定したことを特徴とした請求項2記載の取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−234492(P2009−234492A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85091(P2008−85091)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】