サイドスタンドの位置検出装置、サイドスタンド装置、二輪車
【課題】磁石の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生するのを抑制する。
【解決手段】サイドスタンドの位置検出装置は、磁石4と、磁石4と対向するホールIC5と、二輪車の車体に対して固定され、磁石4と磁気センサ5とを収納し、磁石4と磁気センサ5との間に溝2dが形成されたケース2とを備える。サイドスタンドが収納位置にある場合は、サイドスタンドの回転に連動する遮磁板13が溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界Tが遮蔽されることにより、当該収納位置が検出される。サイドスタンドが起立位置にある場合は、遮磁板13が溝2dから退避して、磁石4の磁界TをホールIC5で検知することにより、当該起立位置が検出される。
【解決手段】サイドスタンドの位置検出装置は、磁石4と、磁石4と対向するホールIC5と、二輪車の車体に対して固定され、磁石4と磁気センサ5とを収納し、磁石4と磁気センサ5との間に溝2dが形成されたケース2とを備える。サイドスタンドが収納位置にある場合は、サイドスタンドの回転に連動する遮磁板13が溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界Tが遮蔽されることにより、当該収納位置が検出される。サイドスタンドが起立位置にある場合は、遮磁板13が溝2dから退避して、磁石4の磁界TをホールIC5で検知することにより、当該起立位置が検出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドスタンドの位置検出装置と、当該装置を備えたサイドスタンド装置および二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二輪車のサイドスタンドは、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車のブラケットに取り付けられている。サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行してしまうと、サイドスタンドは二輪車の走行の妨げとなってしまう。そこで、サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行しないようにするために、サイドスタンドの位置を検出し、その検出結果に応じて走行の許可・禁止の制御を行う装置が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、コイルと、コイルのインダクタンスの変化に基づいてスタンドの向きを検出する検出回路とを備えたロータリセンサが開示されている。このロータリセンサでは、ロータがスタンドとともに回動することにより、ロータとコイルとの距離が変化する。これによって、コイルのインダクタンスが変化する。そして、二輪車では、コイルのインダクタンスの変化に基づいて、スタンドが起立状態か否かを判定する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、スタンドが静止しているときは、コイルのインダクタンスが変化しないため、スタンドが起立状態か否かを常時検出することが出来ない。
【0005】
また、特許文献2には、磁石板と、磁石板と対向する位置に配置されるホールICとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がサイドスタンドとともに回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。これによって、ホールICの出力信号のオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、ホールICの出力信号のオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0006】
さらに、特許文献3には、磁石面を有する回転部材と、磁石面と対向する位置に配置されるリードスイッチとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、回転部材がサイドスタンドとともに回動することにより、リードスイッチと対向する磁石面の極性が切り替えられる。これによって、リードスイッチのオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、リードスイッチのオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2および特許文献3では、磁石(特許文献2では磁石板、特許文献3では回転部材)が磁気センサ(特許文献2ではホールIC、特許文献3ではリードスイッチ)に対して相対的に回動することにより、磁石の極性が切り替えられる。そのため、製造時に発生する磁石ごとの磁力(磁束密度)のばらつきや、磁石が使用される環境の温度による磁石自体の磁力のばらつきに起因して、磁気センサの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生する。
【0008】
すなわち、たとえば図14(a)、(b)に示すように、形状の異なる磁石M1、M2では発生する磁界が異なるので、磁気センサが磁石M1、M2の磁力を検知可能な範囲X1〜X4が異なり、磁気センサの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生する。そしてこの結果、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生し、最悪の場合には、サイドスタンドの起立位置および収納位置が正しく検出できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−163093号公報
【特許文献2】特開2008−130314号公報
【特許文献3】特開2004−355903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、磁石の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、二輪車の車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0012】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、二輪車の車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納するケースと、車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体とを備える。そして、ケースは、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されている。遮蔽体は、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、ケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界を遮蔽し、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、凹部から退避して、磁界の遮蔽を解除する。
【0013】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドと、サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えたサイドスタンド装置において、二輪車の車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を設ける。位置検出手段は、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0014】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に車体に設けられたサイドスタンドと、サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えた二輪車において、車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備える。位置検出手段は、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0015】
上記のように構成にすることによって、磁石と磁気センサとの相対的な位置が固定され、遮蔽体がサイドスタンドと連動してケースの凹部内に位置するか否かにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽するか否かが切り替えられる。したがって、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石の磁力にばらつきがある場合にも、磁気センサの出力信号が切り替わる際のサイドスタンドの検出位置にばらつきが発生するのを抑制し、検出誤差を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、サイドスタンドを車体の一方の側面に取り付け、サイドスタンドと遮蔽体と位置検出手段とを、サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置してもよい。
【0017】
また、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、遮蔽体は、サイドスタンドの回転軸上でサイドスタンドとともにねじ止めされていてもよい。
【0018】
さらに、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、遮蔽体がサイドスタンドと一体に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁石の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置、サイドスタンド装置、および二輪車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるサイドスタンド装置のサイドスタンドが起立位置にある場合の組立斜視図である。
【図2】図1のサイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置にある場合の組立斜視図である。
【図3】図1のサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【図4】図1のサイドスタンド装置の要部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置を示す図である。
【図6】サイドスタンドの動作状態と位置とを示す図である。
【図7】サイドスタンド、サイドスタンドの位置検出装置、および自動二輪車の動作関係を示す図である。
【図8】磁石およびホールICと遮磁板との位置関係を示す模式図である。
【図9】サイドスタンドの位置検出装置の要部の動作状態を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態の効果確認のための実験結果を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態の効果確認のための実験結果を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図14】従来の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態によるサイドスタンド装置10およびサイドスタンドの位置検出装置1の構成を説明する。図1は、サイドスタンド装置のサイドスタンドが起立位置にある場合の組立斜視図である。図2は、サイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置にある場合の組立斜視図である。図3は、サイドスタンド装置10の分解斜視図である。図4は、サイドスタンド装置10の要部を図2で上方から見た拡大図である。図5は、サイドスタンドの位置検出装置1を示した図である。図5において、(a)はサイドスタンドの位置検出装置1の正面図であり、(b)は(a)のZ方向から見た側面図であり、(c)は(a)のA−A断面図である。
【0023】
サイドスタンド装置10は、図2に示す自動二輪車20の車体21に取り付けられる。自動二輪車20は、本発明の「二輪車」の一例である。サイドスタンド装置10は、サイドスタンドの位置検出装置1、ベースハウジング11、サイドスタンド12、および遮磁板13を備えている。サイドスタンドの位置検出装置1は、本発明の「位置検出手段」の一例であり、サイドスタンド12の位置を検出する。遮磁板13は、本発明の「遮蔽体」の一例である。
【0024】
図1に示すように、サイドスタンド12の上部には、溝12aが形成されている。溝12aの両側壁には、図3に示すように貫通孔12bが形成されている(図3で下側にある溝12aの側壁に形成された貫通孔については図示省略)。ベースハウジング11の中央には、貫通孔が形成されている(図示省略)。遮磁板13は鉄等の強磁性体からなる。遮磁板13の中央には、貫通孔13bが形成されている。遮磁板13の左右の側部を折り曲げることにより、遮磁板13には凹部13cが形成されている。遮磁板13には、突出部13aが形成されている。
【0025】
サイドスタンド12の溝12aにベースハウジング11の下部を挿入する。そして、ベースハウジング11とサイドスタンド12の各貫通孔12bに締め付け用ボルト15を通す。また、貫通孔12bから突き出た締め付け用ボルト15のねじ部15aを遮磁板13の貫通孔13bへ通して、遮磁板13の凹部13cにサイドスタンド12を嵌め合わせる。さらに、貫通孔13bから突き出た締め付け用ボルト15のねじ部15aに固定用ナット16を螺合して締め付ける。これにより、図1および図2に示すようにサイドスタンド12と遮磁板13とが、ベースハウジング11に対して締め付け用ボルト15を回転軸として回動可能に取り付けられる。また、遮磁板13とサイドスタンド12とが固定される。すなわち、遮磁板13が、サイドスタンド12の回転軸上でサイドスタンド12とともにねじ止めされる。
【0026】
遮磁板13の凹部13cの側壁とサイドスタンド12の側面12c、12dとが当接することにより、遮磁板13とサイドスタンド12とのがたつきが抑制される。遮磁板13の突出部13aはサイドスタンド12より、締め付け用ボルト15に対してサイドスタンド12の着地部12eと反対側に突出している。すなわち、サイドスタンド12の回転軸に対して着地部12eと反対側に、遮磁板13の突出部13aが設けられている。
【0027】
ベースハウジング11の上部には、貫通孔11aが2つ形成されている。図2に示すように、自動二輪車20の車体21の一方の側面22には、ねじ穴22aが2つ形成されている。2本のボルト14をそれぞれ、貫通孔11aへ通してねじ穴22aに螺合する。これにより、ベースハウジング11が車体21の一方の側面22に固定されて、サイドスタンド装置10が自動二輪車20の車体21に取り付けられる。また、サイドスタンド12がベースハウジング11を介して、車体21の一方の側面22に取り付けられて、車体21に対して回転可能になる。さらに、遮磁板13がサイドスタンド12およびベースハウジング11を介して、車体21に取り付けられて、サイドスタンド12に伴って車体21に対して回転可能になる。
【0028】
ベースハウジング11の一方の側部と下部には、当接面11c、11dがそれぞれ形成されている。サイドスタンド12の側面12c、12dがベースハウジング11の当接面11c、11dにそれぞれ当接することにより、サイドスタンド12の回動量が制限される。
【0029】
サイドスタンド12が反時計回りに回動して、図2に示すようにサイドスタンド12の側面12cがベースハウジング11の当接面11cに当接すると、サイドスタンド12が車体21に対して横向きの状態で静止する。このとき、サイドスタンド12の着地部12eが自動二輪車20に対して後方を向いて、地面と接触しなくなる。この図2に示すサイドスタンド12の位置が収納位置である。
【0030】
また、サイドスタンド12が時計回りに回動して、サイドスタンド12の側面12dがベースハウジング11の当接面11dに当接すると、図1に示すようにサイドスタンド12が縦向きの状態で静止する。このとき、サイドスタンド12の着地部12eが自動二輪車20に対して下方を向いて、地面に接触する。すなわち、自動二輪車20の駐車時に、サイドスタンド12が着地して、自動二輪車20を倒れないように支持する。この図1に示すサイドスタンド12の位置が起立位置である。
【0031】
上記のようにサイドスタンド12は、起立位置と収納位置との間において回動可能に自動二輪車20に設けられる。ベースハウジング11とサイドスタンド12の、車体21と対向する面には、図3に示すように、突起11f、12fがそれぞれ形成されている。突起11f、12fには、コイルばね17の端部がそれぞれ引っ掛けられている。コイルばね17の引っ張り力により、サイドスタンド12は、起立位置側または収納位置側に付勢されて、起立位置または収納位置で静止状態が維持される。
【0032】
図5に示すようにサイドスタンドの位置検出装置1は、ケース2、ワイヤハーネス3、磁石4、ホールIC5、判定回路6、およびプリント基板7を備えている。ホールIC5は、本発明の「磁気センサ」の一例である。ケース2内には、磁石4、ホールIC5、判定回路6、およびプリント基板7が収納されている。ケース2内は、防水用封止材8により封止されている。磁石4とプリント基板7とはそれぞれケース2の内面に固定されている。プリント基板7には、ホールIC5と判定回路6とが実装されている。また、プリント基板7には、ワイヤハーネス3が接続されている。ワイヤハーネス3はケース2から突出して、自動二輪車20の制御部(図示省略)に接続されている。
【0033】
ホールIC5は、ケース2内で磁石4と対向する位置に配置されている。ケース2は、磁石4とホールIC5との間に溝2dが形成されるように凹んだ形状になっている。ケース2の溝2dは、本発明における「凹部」の一例である。
【0034】
ホールIC5は、磁石4の磁界を検知する。磁石4からホールIC5へ作用する磁界は、後述するように遮磁板13により遮られる。ホールIC5は、検知される磁界の強度に応じてL(Low)レベルまたはH(High)レベルの信号を判定回路6に出力する。判定回路6は、ホールIC5の出力信号に基づいて、後述するようにサイドスタンド12の位置を判定し、該判定結果をワイヤハーネス3を介して自動二輪車20の制御部に出力する。
【0035】
ケース2には、側方へ突出するように2つのフランジ2b、2cが形成されている。一方のフランジ2bには貫通孔2aが形成されている。図3に示すねじ18をケース2の貫通孔2aへ通して、ベースハウジング11に形成されたねじ穴11gに螺合する。これにより、図1、図2、および図4に示すようにケース2がベースハウジング11に取り付けられる。そして、上述したようにベースハウジング11を自動二輪車20の車体21に固定することにより、ケース2が車体21に対して固定される。すなわち、サイドスタンドの位置検出装置1がベースハウジング11を介して、自動二輪車20の車体21に取り付けられる。ベースハウジング11に形成された突起11hにケース2のフランジ2cが当接することにより、ケース2のベースハウジング11に対する回転が規制される。
【0036】
サイドスタンド装置10では、図4に示すようにサイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とが、サイドスタンド12の回転軸(締め付け用ボルト15)に対して垂直な線Qに沿って並ぶように配置されている。詳しくは、1本の線Qに対して、サイドスタンド12は車体21(図2参照)側から接し、遮磁板13は車体21と反対側から接し、サイドスタンドの位置検出装置1は線Q上に乗ることにより、サイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とが線Qに沿って並んでいる。
【0037】
次に、図1、図2、および図6〜図9を参照して、本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置1、サイドスタンド装置10、および自動二輪車20の動作を説明する。図6は、サイドスタンド12の動作状態と位置とを示す図である。図7は、サイドスタンド12とサイドスタンドの位置検出装置1と自動二輪車20の動作関係を示す図である。図8は、磁石4およびホールIC5と遮磁板13との位置関係を示す模式図である。図9は、サイドスタンドの位置検出装置1の要部の動作状態を示す図である。
【0038】
(起立位置)
まず、図1に示すようにサイドスタンド12が起立位置にある場合には、図6に示すように、サイドスタンド12が、地面Gに対して鉛直な方向Yから自動二輪車20の前方Fへ角度θ1(例えば15°)傾いた位置Pdで着地して、自動二輪車20の車体21を支持する。また、図8(a)および図9(a)に示すように、遮磁板13の突出部13aがケース2の溝2d(磁石4とホールIC5の間)から退避している。このため、磁石4の磁界TがホールIC5に作用して、ホールIC5で検知される磁界Tの強度が所定の値より大きくなる(非遮磁状態)。これにより、ホールIC5は、判定回路6(図5参照)にHレベルの信号を出力する。
【0039】
判定回路6は、ホールIC5からHレベルの信号が入力されると、サイドスタンド12が起立位置にあると判定し、その判定結果を自動二輪車20の制御部に出力する。自動二輪車20では、サイドスタンド12が起立位置にあるとの判定結果が入力されると、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる(図7参照)。
【0040】
(起立位置→収納位置)
次に、図1および図6に示した起立位置Pdから、サイドスタンド12が反時計回りに回動して行くと、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して反時計回りに回動する。図6に示すように、サイドスタンド12が鉛直方向Yから自動二輪車20の後方Bへ角度θ2(例えば10°〜35°)傾いた状態が、サイドスタンド12の中立位置Pnである。この中立位置Pnでは、遮磁板13の突出部13aは、図8(b)に示すように磁石4とホールIC5の間に進入していない。
【0041】
そして、サイドスタンド12が反時計回りにさらに回動して行くと、これに伴って遮磁板13がさらに回動して、遮磁板13の突出部13aがケース2の溝2d内に入り込んで行く。このため、遮磁板13の突出部13aにより、磁石4による磁界TからホールIC5が遮蔽され始め、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が小さくなって行く(遮磁状態)。
【0042】
そして、サイドスタンド12が、図6に示す中立位置Pnから反時計回りに角度θ3(例えば25°)回動して切り替え位置Pcまで来ると、図8(c)に示すように遮磁板13の突出部13aが磁石4およびホールIC5に接近して、ホールIC5により検知される磁界Tの強度が所定の値よりも小さくなる。これにより、ホールIC5から判定回路6へ出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。
【0043】
その後、サイドスタンド12は、図6に示す切り替え位置Pcから反時計回りに角度θ4(例えば50°以上)回動して収納位置Puで静止し、これに伴って回動していた遮磁板13も静止する(図2の状態)。このとき、図8(d)および図9(b)に示すように遮磁板13の突出部13aが、ケース2の溝2d内(磁石4とホールIC5の間)に完全に進入する。このため、遮磁板13の突出部13aにより、磁石4による磁界TからホールIC5が完全に遮蔽され、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が最小になる。
【0044】
判定回路6は、ホールIC5からLレベルの信号が入力されると、サイドスタンド12が収納位置にあると判定し、その判定結果を自動二輪車20の制御部に出力する。自動二輪車20では、サイドスタンド12が収納位置にあるとの判定結果が入力されると、エンジンの起動が可能となり、走行可能な状態になる(図7参照)。
【0045】
(収納位置→起立位置)
次に、図2および図6に示した収納位置Puから、サイドスタンド12が時計回りに回動して行くと、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して時計回りに回動し、遮磁板13の突出部13aが磁石4とホールIC5との間から退避して行く。このため、遮磁板13の突出部13aによる遮蔽効果が減少して行き、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が大きくなって行く。
【0046】
そして、サイドスタンド12が時計回りにさらに回動して、切り替え位置Pcを通り過ぎると、遮磁板13の突出部13aによる遮蔽状態が解除されて(非遮磁状態)、ホールIC5により検知される磁界Tの強度が所定の値よりも大きくなる。これにより、ホールIC5から判定回路6へ出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。
【0047】
その後、サイドスタンド12は時計回りにさらに回動して、図6に示す中立位置Pnを経て起立位置Pdで静止し、これに伴って回動していた遮磁板13も静止する(図1の状態)。このとき、図8(a)および図9(a)に示すように遮磁板13の突出部13aが、ケース2の溝2d(磁石4とホールIC5の間)から完全に退避する。このため、磁石4の磁界Tが全く遮蔽されずにホールIC5に作用して、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が最大になる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、磁石4とホールIC5との相対的な位置が固定され、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して、ケース2の溝2d内(磁石4とホールIC5の間)に位置するか否かにより、磁石4による磁界からホールIC5を遮蔽するか否かを切り替えている。このため、ホールIC5の出力信号に基づいて、サイドスタンド12の位置が起立位置か収納位置かを常時検出することができる。そして、磁石が磁気センサに対して回動する従来の場合に比べて、磁石4の磁力にばらつきがある場合にも、ホールIC5の出力信号が切り替わる際のサイドスタンド12の検出位置(検出角度)にばらつきが発生するのを抑制することができる。すなわち、サイドスタンド12の位置の検出誤差を小さくすることが可能となる。
【0049】
図10および図11は、上記した本実施形態の効果を確認するために行った比較実験の結果を示す図である。この実験では、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化と、ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化とを測定した。これらの測定は、それぞれ、磁力の異なる3つの磁石を用いて、3つの磁石毎に測定した。そして、それらの測定結果を図10および図11に示した。なお、このホールICの出力信号がHレベルからLレベルに切り替わる磁束密度Brpは4mTである。
【0050】
磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合(本発明)には、図10に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E1が約1mmであった。一方、ホールICに対して磁石が移動する場合(比較例)には、図11に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E2が約2mmであった。
【0051】
したがって、磁石の磁力にばらつきがある場合において、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合には、ホールICに対して磁石が移動する場合に比べて、ホールICの出力信号が切り替わる際の移動量にばらつきが発生するのを抑制できることが判明した。
【0052】
また、本実施形態では、サイドスタンド12を自動二輪車20の車体21の一方の側面22に取り付け、サイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とを、サイドスタンド12の回転軸に対して垂直な線Qに沿って並ぶように配置している。このため、遮磁板13およびサイドスタンドの位置検出装置1の車体21の側方への突出量を減少させて、サイドスタンド12の回転軸方向へのサイドスタンド装置10の薄型化を図ることができる。またこれにより、自動二輪車20が車体21の幅方向へ大型化するのを抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、遮磁板13をサイドスタンド12の回転軸(締め付け用ボルト15)上でサイドスタンド12とともにねじ止めしている。このため、遮磁板13の取り付け構造が単純であり、部品点数の減少および組み立て工数の削減を図ることができ、かつ、これらに伴うコスト削減を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、ケース2内で磁石4とホールIC5とを防水用封止材8により封止している。このため、磁石4やプリント基板7の水濡れと、振動による磁石4とホールIC5の位置ずれとを防止することができる。
【0055】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、サイドスタンド12が収納位置にある場合に、遮磁板13がケース2の溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界を遮蔽し、サイドスタンド12が起立位置にある場合に、遮磁板13が溝2dから退避して、遮蔽状態が解除される例を示した。しかし、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、サイドスタンド12が起立位置にある場合に、遮磁板13がケース2の溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界を遮蔽し、サイドスタンド12が収納位置にある場合に、遮磁板13が溝2dから退避して、遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。
【0056】
そのようにするには、たとえばサイドスタンドの検出装置1または遮磁板13をベースハウジング11に取り付ける位置および向きなどを変更すればよい。そしてその場合、遮磁板13が遮磁状態にある場合は、自動二輪車20を走行不可能な状態とすればよい。また、遮磁板13が非遮磁状態にある場合は、自動二輪車20を走行可能な状態とすればよい。
【0057】
また、上記実施形態では、遮磁板13とサイドスタンド12とが分離可能となっている例を示したが(図3参照)、これに限らず、図12に示すように遮磁板33をサイドスタンド32と一体に設けてもよい。図12において、遮磁板33は、サイドスタンド32の回転軸(締め付け用ボルト15)に対して着地部32eと反対側の部分に、一体的に形成されている。このようにすることで、サイドスタンド装置30の部品点数の減少および組み立て工数の削減を図ることができ、かつ、これらに伴うコスト削減を図ることができる。さらに、サイドスタンド32の周辺の構造が簡素化されて、サイドスタンド装置30を取り付けた二輪車の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、遮蔽体の一例として、遮磁部分(突出部)13aが他の部分より幅狭になっている遮磁板13や、同一幅になっている遮磁板33を示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、図13(a)に示すような、遮磁部分43aが他の部分より幅広になっている遮磁板43や、図13(b)に示すような、遮磁部分53aが扇型をした遮磁板53などを、遮蔽体として用いてもよい。さらに、遮蔽体は板状に限るものではなく、棒状であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ケースに形成された凹部の一例として、溝2dを示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、貫通または非貫通の穴や孔やくぼみなどを、凹部としてケースの磁石と磁気センサとの間に形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、判定回路6がサイドスタンドの位置検出装置1に設けられる例を示したが、これに限らず、判定回路が自動二輪車20の制御部に設けられていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、磁気センサの一例としてホールIC5を示したが、これに限らず、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、二輪車の一例として自動二輪車20を示したが、これに限らず、原動機付自転車などのその他の二輪車を対象としてもよい。すなわち、サイドスタンドとサイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えた二輪車に、本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 サイドスタンドの位置検出装置(位置検出手段)
2 ケース
2d 溝(凹部)
4 磁石
5 ホールIC(磁気センサ)
10、30 サイドスタンド装置
12、32 サイドスタンド
12e、32e 着地部
13、43、53 遮磁板(遮蔽体)
15 締め付け用ボルト(サイドスタンドの回転軸)
20 自動二輪車(二輪車)
21 車体
22 車体の一方の側面
Pd 起立位置
Pu 収納位置
Q サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドスタンドの位置検出装置と、当該装置を備えたサイドスタンド装置および二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二輪車のサイドスタンドは、起立位置と収納位置との間において回動可能に、二輪車のブラケットに取り付けられている。サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行してしまうと、サイドスタンドは二輪車の走行の妨げとなってしまう。そこで、サイドスタンドが起立位置のときに二輪車が走行しないようにするために、サイドスタンドの位置を検出し、その検出結果に応じて走行の許可・禁止の制御を行う装置が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、コイルと、コイルのインダクタンスの変化に基づいてスタンドの向きを検出する検出回路とを備えたロータリセンサが開示されている。このロータリセンサでは、ロータがスタンドとともに回動することにより、ロータとコイルとの距離が変化する。これによって、コイルのインダクタンスが変化する。そして、二輪車では、コイルのインダクタンスの変化に基づいて、スタンドが起立状態か否かを判定する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、スタンドが静止しているときは、コイルのインダクタンスが変化しないため、スタンドが起立状態か否かを常時検出することが出来ない。
【0005】
また、特許文献2には、磁石板と、磁石板と対向する位置に配置されるホールICとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、磁石板がサイドスタンドとともに回動することにより、ホールICと対向する磁石板の極性が切り替えられる。これによって、ホールICの出力信号のオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、ホールICの出力信号のオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0006】
さらに、特許文献3には、磁石面を有する回転部材と、磁石面と対向する位置に配置されるリードスイッチとを備えたサイドスタンドの位置検出装置が開示されている。このサイドスタンドの位置検出装置では、回転部材がサイドスタンドとともに回動することにより、リードスイッチと対向する磁石面の極性が切り替えられる。これによって、リードスイッチのオン/オフ状態が切り替えられる。そして、二輪車では、リードスイッチのオン/オフ状態に基づいて、サイドスタンドの位置が判断される。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2および特許文献3では、磁石(特許文献2では磁石板、特許文献3では回転部材)が磁気センサ(特許文献2ではホールIC、特許文献3ではリードスイッチ)に対して相対的に回動することにより、磁石の極性が切り替えられる。そのため、製造時に発生する磁石ごとの磁力(磁束密度)のばらつきや、磁石が使用される環境の温度による磁石自体の磁力のばらつきに起因して、磁気センサの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生する。
【0008】
すなわち、たとえば図14(a)、(b)に示すように、形状の異なる磁石M1、M2では発生する磁界が異なるので、磁気センサが磁石M1、M2の磁力を検知可能な範囲X1〜X4が異なり、磁気センサの出力信号の切替タイミングにばらつきが発生する。そしてこの結果、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生し、最悪の場合には、サイドスタンドの起立位置および収納位置が正しく検出できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−163093号公報
【特許文献2】特開2008−130314号公報
【特許文献3】特開2004−355903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、磁石の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、二輪車の車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0012】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、二輪車の車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納するケースと、車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体とを備える。そして、ケースは、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されている。遮蔽体は、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、ケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界を遮蔽し、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、凹部から退避して、磁界の遮蔽を解除する。
【0013】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドと、サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えたサイドスタンド装置において、二輪車の車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を設ける。位置検出手段は、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0014】
また、本発明では、起立位置と収納位置との間において回転可能に車体に設けられたサイドスタンドと、サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えた二輪車において、車体に対して回転可能に取り付けられ、サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備える。位置検出手段は、磁石と、磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、車体に対して固定され、磁石と磁気センサとを収納し、磁石と磁気センサとの間に凹部が形成されたケースとを備える。そして、サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合は、遮蔽体がケースの凹部内に位置して、磁石から磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、サイドスタンドの当該一方の位置が検出される。また、サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合は、遮蔽体が凹部から退避して、磁石からの磁界を磁気センサで検知することにより、サイドスタンドの当該他方の位置が検出される。
【0015】
上記のように構成にすることによって、磁石と磁気センサとの相対的な位置が固定され、遮蔽体がサイドスタンドと連動してケースの凹部内に位置するか否かにより、磁石による磁界から磁気センサを遮蔽するか否かが切り替えられる。したがって、磁石が磁気センサに対して回動する場合に比べて、磁石の磁力にばらつきがある場合にも、磁気センサの出力信号が切り替わる際のサイドスタンドの検出位置にばらつきが発生するのを抑制し、検出誤差を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、サイドスタンドを車体の一方の側面に取り付け、サイドスタンドと遮蔽体と位置検出手段とを、サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置してもよい。
【0017】
また、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、遮蔽体は、サイドスタンドの回転軸上でサイドスタンドとともにねじ止めされていてもよい。
【0018】
さらに、本発明では、上記のサイドスタンド装置または二輪車において、サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、遮蔽体がサイドスタンドと一体に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁石の磁力のばらつきに起因して、サイドスタンドの位置の検出結果にばらつきが発生するのを抑制することが可能なサイドスタンドの位置検出装置、サイドスタンド装置、および二輪車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるサイドスタンド装置のサイドスタンドが起立位置にある場合の組立斜視図である。
【図2】図1のサイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置にある場合の組立斜視図である。
【図3】図1のサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【図4】図1のサイドスタンド装置の要部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置を示す図である。
【図6】サイドスタンドの動作状態と位置とを示す図である。
【図7】サイドスタンド、サイドスタンドの位置検出装置、および自動二輪車の動作関係を示す図である。
【図8】磁石およびホールICと遮磁板との位置関係を示す模式図である。
【図9】サイドスタンドの位置検出装置の要部の動作状態を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態の効果確認のための実験結果を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態の効果確認のための実験結果を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図14】従来の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態によるサイドスタンド装置10およびサイドスタンドの位置検出装置1の構成を説明する。図1は、サイドスタンド装置のサイドスタンドが起立位置にある場合の組立斜視図である。図2は、サイドスタンド装置のサイドスタンドが収納位置にある場合の組立斜視図である。図3は、サイドスタンド装置10の分解斜視図である。図4は、サイドスタンド装置10の要部を図2で上方から見た拡大図である。図5は、サイドスタンドの位置検出装置1を示した図である。図5において、(a)はサイドスタンドの位置検出装置1の正面図であり、(b)は(a)のZ方向から見た側面図であり、(c)は(a)のA−A断面図である。
【0023】
サイドスタンド装置10は、図2に示す自動二輪車20の車体21に取り付けられる。自動二輪車20は、本発明の「二輪車」の一例である。サイドスタンド装置10は、サイドスタンドの位置検出装置1、ベースハウジング11、サイドスタンド12、および遮磁板13を備えている。サイドスタンドの位置検出装置1は、本発明の「位置検出手段」の一例であり、サイドスタンド12の位置を検出する。遮磁板13は、本発明の「遮蔽体」の一例である。
【0024】
図1に示すように、サイドスタンド12の上部には、溝12aが形成されている。溝12aの両側壁には、図3に示すように貫通孔12bが形成されている(図3で下側にある溝12aの側壁に形成された貫通孔については図示省略)。ベースハウジング11の中央には、貫通孔が形成されている(図示省略)。遮磁板13は鉄等の強磁性体からなる。遮磁板13の中央には、貫通孔13bが形成されている。遮磁板13の左右の側部を折り曲げることにより、遮磁板13には凹部13cが形成されている。遮磁板13には、突出部13aが形成されている。
【0025】
サイドスタンド12の溝12aにベースハウジング11の下部を挿入する。そして、ベースハウジング11とサイドスタンド12の各貫通孔12bに締め付け用ボルト15を通す。また、貫通孔12bから突き出た締め付け用ボルト15のねじ部15aを遮磁板13の貫通孔13bへ通して、遮磁板13の凹部13cにサイドスタンド12を嵌め合わせる。さらに、貫通孔13bから突き出た締め付け用ボルト15のねじ部15aに固定用ナット16を螺合して締め付ける。これにより、図1および図2に示すようにサイドスタンド12と遮磁板13とが、ベースハウジング11に対して締め付け用ボルト15を回転軸として回動可能に取り付けられる。また、遮磁板13とサイドスタンド12とが固定される。すなわち、遮磁板13が、サイドスタンド12の回転軸上でサイドスタンド12とともにねじ止めされる。
【0026】
遮磁板13の凹部13cの側壁とサイドスタンド12の側面12c、12dとが当接することにより、遮磁板13とサイドスタンド12とのがたつきが抑制される。遮磁板13の突出部13aはサイドスタンド12より、締め付け用ボルト15に対してサイドスタンド12の着地部12eと反対側に突出している。すなわち、サイドスタンド12の回転軸に対して着地部12eと反対側に、遮磁板13の突出部13aが設けられている。
【0027】
ベースハウジング11の上部には、貫通孔11aが2つ形成されている。図2に示すように、自動二輪車20の車体21の一方の側面22には、ねじ穴22aが2つ形成されている。2本のボルト14をそれぞれ、貫通孔11aへ通してねじ穴22aに螺合する。これにより、ベースハウジング11が車体21の一方の側面22に固定されて、サイドスタンド装置10が自動二輪車20の車体21に取り付けられる。また、サイドスタンド12がベースハウジング11を介して、車体21の一方の側面22に取り付けられて、車体21に対して回転可能になる。さらに、遮磁板13がサイドスタンド12およびベースハウジング11を介して、車体21に取り付けられて、サイドスタンド12に伴って車体21に対して回転可能になる。
【0028】
ベースハウジング11の一方の側部と下部には、当接面11c、11dがそれぞれ形成されている。サイドスタンド12の側面12c、12dがベースハウジング11の当接面11c、11dにそれぞれ当接することにより、サイドスタンド12の回動量が制限される。
【0029】
サイドスタンド12が反時計回りに回動して、図2に示すようにサイドスタンド12の側面12cがベースハウジング11の当接面11cに当接すると、サイドスタンド12が車体21に対して横向きの状態で静止する。このとき、サイドスタンド12の着地部12eが自動二輪車20に対して後方を向いて、地面と接触しなくなる。この図2に示すサイドスタンド12の位置が収納位置である。
【0030】
また、サイドスタンド12が時計回りに回動して、サイドスタンド12の側面12dがベースハウジング11の当接面11dに当接すると、図1に示すようにサイドスタンド12が縦向きの状態で静止する。このとき、サイドスタンド12の着地部12eが自動二輪車20に対して下方を向いて、地面に接触する。すなわち、自動二輪車20の駐車時に、サイドスタンド12が着地して、自動二輪車20を倒れないように支持する。この図1に示すサイドスタンド12の位置が起立位置である。
【0031】
上記のようにサイドスタンド12は、起立位置と収納位置との間において回動可能に自動二輪車20に設けられる。ベースハウジング11とサイドスタンド12の、車体21と対向する面には、図3に示すように、突起11f、12fがそれぞれ形成されている。突起11f、12fには、コイルばね17の端部がそれぞれ引っ掛けられている。コイルばね17の引っ張り力により、サイドスタンド12は、起立位置側または収納位置側に付勢されて、起立位置または収納位置で静止状態が維持される。
【0032】
図5に示すようにサイドスタンドの位置検出装置1は、ケース2、ワイヤハーネス3、磁石4、ホールIC5、判定回路6、およびプリント基板7を備えている。ホールIC5は、本発明の「磁気センサ」の一例である。ケース2内には、磁石4、ホールIC5、判定回路6、およびプリント基板7が収納されている。ケース2内は、防水用封止材8により封止されている。磁石4とプリント基板7とはそれぞれケース2の内面に固定されている。プリント基板7には、ホールIC5と判定回路6とが実装されている。また、プリント基板7には、ワイヤハーネス3が接続されている。ワイヤハーネス3はケース2から突出して、自動二輪車20の制御部(図示省略)に接続されている。
【0033】
ホールIC5は、ケース2内で磁石4と対向する位置に配置されている。ケース2は、磁石4とホールIC5との間に溝2dが形成されるように凹んだ形状になっている。ケース2の溝2dは、本発明における「凹部」の一例である。
【0034】
ホールIC5は、磁石4の磁界を検知する。磁石4からホールIC5へ作用する磁界は、後述するように遮磁板13により遮られる。ホールIC5は、検知される磁界の強度に応じてL(Low)レベルまたはH(High)レベルの信号を判定回路6に出力する。判定回路6は、ホールIC5の出力信号に基づいて、後述するようにサイドスタンド12の位置を判定し、該判定結果をワイヤハーネス3を介して自動二輪車20の制御部に出力する。
【0035】
ケース2には、側方へ突出するように2つのフランジ2b、2cが形成されている。一方のフランジ2bには貫通孔2aが形成されている。図3に示すねじ18をケース2の貫通孔2aへ通して、ベースハウジング11に形成されたねじ穴11gに螺合する。これにより、図1、図2、および図4に示すようにケース2がベースハウジング11に取り付けられる。そして、上述したようにベースハウジング11を自動二輪車20の車体21に固定することにより、ケース2が車体21に対して固定される。すなわち、サイドスタンドの位置検出装置1がベースハウジング11を介して、自動二輪車20の車体21に取り付けられる。ベースハウジング11に形成された突起11hにケース2のフランジ2cが当接することにより、ケース2のベースハウジング11に対する回転が規制される。
【0036】
サイドスタンド装置10では、図4に示すようにサイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とが、サイドスタンド12の回転軸(締め付け用ボルト15)に対して垂直な線Qに沿って並ぶように配置されている。詳しくは、1本の線Qに対して、サイドスタンド12は車体21(図2参照)側から接し、遮磁板13は車体21と反対側から接し、サイドスタンドの位置検出装置1は線Q上に乗ることにより、サイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とが線Qに沿って並んでいる。
【0037】
次に、図1、図2、および図6〜図9を参照して、本実施形態によるサイドスタンドの位置検出装置1、サイドスタンド装置10、および自動二輪車20の動作を説明する。図6は、サイドスタンド12の動作状態と位置とを示す図である。図7は、サイドスタンド12とサイドスタンドの位置検出装置1と自動二輪車20の動作関係を示す図である。図8は、磁石4およびホールIC5と遮磁板13との位置関係を示す模式図である。図9は、サイドスタンドの位置検出装置1の要部の動作状態を示す図である。
【0038】
(起立位置)
まず、図1に示すようにサイドスタンド12が起立位置にある場合には、図6に示すように、サイドスタンド12が、地面Gに対して鉛直な方向Yから自動二輪車20の前方Fへ角度θ1(例えば15°)傾いた位置Pdで着地して、自動二輪車20の車体21を支持する。また、図8(a)および図9(a)に示すように、遮磁板13の突出部13aがケース2の溝2d(磁石4とホールIC5の間)から退避している。このため、磁石4の磁界TがホールIC5に作用して、ホールIC5で検知される磁界Tの強度が所定の値より大きくなる(非遮磁状態)。これにより、ホールIC5は、判定回路6(図5参照)にHレベルの信号を出力する。
【0039】
判定回路6は、ホールIC5からHレベルの信号が入力されると、サイドスタンド12が起立位置にあると判定し、その判定結果を自動二輪車20の制御部に出力する。自動二輪車20では、サイドスタンド12が起立位置にあるとの判定結果が入力されると、エンジン(図示省略)の起動が禁止され、走行不可能な状態になる(図7参照)。
【0040】
(起立位置→収納位置)
次に、図1および図6に示した起立位置Pdから、サイドスタンド12が反時計回りに回動して行くと、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して反時計回りに回動する。図6に示すように、サイドスタンド12が鉛直方向Yから自動二輪車20の後方Bへ角度θ2(例えば10°〜35°)傾いた状態が、サイドスタンド12の中立位置Pnである。この中立位置Pnでは、遮磁板13の突出部13aは、図8(b)に示すように磁石4とホールIC5の間に進入していない。
【0041】
そして、サイドスタンド12が反時計回りにさらに回動して行くと、これに伴って遮磁板13がさらに回動して、遮磁板13の突出部13aがケース2の溝2d内に入り込んで行く。このため、遮磁板13の突出部13aにより、磁石4による磁界TからホールIC5が遮蔽され始め、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が小さくなって行く(遮磁状態)。
【0042】
そして、サイドスタンド12が、図6に示す中立位置Pnから反時計回りに角度θ3(例えば25°)回動して切り替え位置Pcまで来ると、図8(c)に示すように遮磁板13の突出部13aが磁石4およびホールIC5に接近して、ホールIC5により検知される磁界Tの強度が所定の値よりも小さくなる。これにより、ホールIC5から判定回路6へ出力される信号がHレベルからLレベルに切り替えられる。
【0043】
その後、サイドスタンド12は、図6に示す切り替え位置Pcから反時計回りに角度θ4(例えば50°以上)回動して収納位置Puで静止し、これに伴って回動していた遮磁板13も静止する(図2の状態)。このとき、図8(d)および図9(b)に示すように遮磁板13の突出部13aが、ケース2の溝2d内(磁石4とホールIC5の間)に完全に進入する。このため、遮磁板13の突出部13aにより、磁石4による磁界TからホールIC5が完全に遮蔽され、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が最小になる。
【0044】
判定回路6は、ホールIC5からLレベルの信号が入力されると、サイドスタンド12が収納位置にあると判定し、その判定結果を自動二輪車20の制御部に出力する。自動二輪車20では、サイドスタンド12が収納位置にあるとの判定結果が入力されると、エンジンの起動が可能となり、走行可能な状態になる(図7参照)。
【0045】
(収納位置→起立位置)
次に、図2および図6に示した収納位置Puから、サイドスタンド12が時計回りに回動して行くと、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して時計回りに回動し、遮磁板13の突出部13aが磁石4とホールIC5との間から退避して行く。このため、遮磁板13の突出部13aによる遮蔽効果が減少して行き、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が大きくなって行く。
【0046】
そして、サイドスタンド12が時計回りにさらに回動して、切り替え位置Pcを通り過ぎると、遮磁板13の突出部13aによる遮蔽状態が解除されて(非遮磁状態)、ホールIC5により検知される磁界Tの強度が所定の値よりも大きくなる。これにより、ホールIC5から判定回路6へ出力される信号がLレベルからHレベルに切り替えられる。
【0047】
その後、サイドスタンド12は時計回りにさらに回動して、図6に示す中立位置Pnを経て起立位置Pdで静止し、これに伴って回動していた遮磁板13も静止する(図1の状態)。このとき、図8(a)および図9(a)に示すように遮磁板13の突出部13aが、ケース2の溝2d(磁石4とホールIC5の間)から完全に退避する。このため、磁石4の磁界Tが全く遮蔽されずにホールIC5に作用して、ホールIC5により検出される磁界Tの強度が最大になる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、磁石4とホールIC5との相対的な位置が固定され、遮磁板13がサイドスタンド12と連動して、ケース2の溝2d内(磁石4とホールIC5の間)に位置するか否かにより、磁石4による磁界からホールIC5を遮蔽するか否かを切り替えている。このため、ホールIC5の出力信号に基づいて、サイドスタンド12の位置が起立位置か収納位置かを常時検出することができる。そして、磁石が磁気センサに対して回動する従来の場合に比べて、磁石4の磁力にばらつきがある場合にも、ホールIC5の出力信号が切り替わる際のサイドスタンド12の検出位置(検出角度)にばらつきが発生するのを抑制することができる。すなわち、サイドスタンド12の位置の検出誤差を小さくすることが可能となる。
【0049】
図10および図11は、上記した本実施形態の効果を確認するために行った比較実験の結果を示す図である。この実験では、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合の磁束密度の変化と、ホールICに対して磁石が移動する場合の磁束密度の変化とを測定した。これらの測定は、それぞれ、磁力の異なる3つの磁石を用いて、3つの磁石毎に測定した。そして、それらの測定結果を図10および図11に示した。なお、このホールICの出力信号がHレベルからLレベルに切り替わる磁束密度Brpは4mTである。
【0050】
磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合(本発明)には、図10に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E1が約1mmであった。一方、ホールICに対して磁石が移動する場合(比較例)には、図11に示すように、磁束密度が4mTのときの磁石の磁力に起因する移動量の誤差E2が約2mmであった。
【0051】
したがって、磁石の磁力にばらつきがある場合において、磁石およびホールICに対して遮磁板が移動する場合には、ホールICに対して磁石が移動する場合に比べて、ホールICの出力信号が切り替わる際の移動量にばらつきが発生するのを抑制できることが判明した。
【0052】
また、本実施形態では、サイドスタンド12を自動二輪車20の車体21の一方の側面22に取り付け、サイドスタンド12と遮磁板13とサイドスタンドの位置検出装置1とを、サイドスタンド12の回転軸に対して垂直な線Qに沿って並ぶように配置している。このため、遮磁板13およびサイドスタンドの位置検出装置1の車体21の側方への突出量を減少させて、サイドスタンド12の回転軸方向へのサイドスタンド装置10の薄型化を図ることができる。またこれにより、自動二輪車20が車体21の幅方向へ大型化するのを抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、遮磁板13をサイドスタンド12の回転軸(締め付け用ボルト15)上でサイドスタンド12とともにねじ止めしている。このため、遮磁板13の取り付け構造が単純であり、部品点数の減少および組み立て工数の削減を図ることができ、かつ、これらに伴うコスト削減を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、ケース2内で磁石4とホールIC5とを防水用封止材8により封止している。このため、磁石4やプリント基板7の水濡れと、振動による磁石4とホールIC5の位置ずれとを防止することができる。
【0055】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、サイドスタンド12が収納位置にある場合に、遮磁板13がケース2の溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界を遮蔽し、サイドスタンド12が起立位置にある場合に、遮磁板13が溝2dから退避して、遮蔽状態が解除される例を示した。しかし、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、サイドスタンド12が起立位置にある場合に、遮磁板13がケース2の溝2d内に位置して、磁石4からホールIC5への磁界を遮蔽し、サイドスタンド12が収納位置にある場合に、遮磁板13が溝2dから退避して、遮蔽状態が解除されるようにしてもよい。
【0056】
そのようにするには、たとえばサイドスタンドの検出装置1または遮磁板13をベースハウジング11に取り付ける位置および向きなどを変更すればよい。そしてその場合、遮磁板13が遮磁状態にある場合は、自動二輪車20を走行不可能な状態とすればよい。また、遮磁板13が非遮磁状態にある場合は、自動二輪車20を走行可能な状態とすればよい。
【0057】
また、上記実施形態では、遮磁板13とサイドスタンド12とが分離可能となっている例を示したが(図3参照)、これに限らず、図12に示すように遮磁板33をサイドスタンド32と一体に設けてもよい。図12において、遮磁板33は、サイドスタンド32の回転軸(締め付け用ボルト15)に対して着地部32eと反対側の部分に、一体的に形成されている。このようにすることで、サイドスタンド装置30の部品点数の減少および組み立て工数の削減を図ることができ、かつ、これらに伴うコスト削減を図ることができる。さらに、サイドスタンド32の周辺の構造が簡素化されて、サイドスタンド装置30を取り付けた二輪車の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、遮蔽体の一例として、遮磁部分(突出部)13aが他の部分より幅狭になっている遮磁板13や、同一幅になっている遮磁板33を示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、図13(a)に示すような、遮磁部分43aが他の部分より幅広になっている遮磁板43や、図13(b)に示すような、遮磁部分53aが扇型をした遮磁板53などを、遮蔽体として用いてもよい。さらに、遮蔽体は板状に限るものではなく、棒状であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ケースに形成された凹部の一例として、溝2dを示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、貫通または非貫通の穴や孔やくぼみなどを、凹部としてケースの磁石と磁気センサとの間に形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、判定回路6がサイドスタンドの位置検出装置1に設けられる例を示したが、これに限らず、判定回路が自動二輪車20の制御部に設けられていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、磁気センサの一例としてホールIC5を示したが、これに限らず、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、二輪車の一例として自動二輪車20を示したが、これに限らず、原動機付自転車などのその他の二輪車を対象としてもよい。すなわち、サイドスタンドとサイドスタンドの位置を検出する位置検出手段とを備えた二輪車に、本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 サイドスタンドの位置検出装置(位置検出手段)
2 ケース
2d 溝(凹部)
4 磁石
5 ホールIC(磁気センサ)
10、30 サイドスタンド装置
12、32 サイドスタンド
12e、32e 着地部
13、43、53 遮磁板(遮蔽体)
15 締め付け用ボルト(サイドスタンドの回転軸)
20 自動二輪車(二輪車)
21 車体
22 車体の一方の側面
Pd 起立位置
Pu 収納位置
Q サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記二輪車の車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記二輪車の車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納するケースと、
前記車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体と、を備え、
前記ケースは、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成され、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界を遮蔽し、前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記凹部から退避して、前記磁界の遮蔽を解除する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドと、前記サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段と、を備えたサイドスタンド装置において、
前記二輪車の車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備え、
前記位置検出手段は、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサイドスタンド装置において、
前記サイドスタンドと前記遮蔽体と前記位置検出手段とを、前記サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置した、ことを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のサイドスタンド装置において、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドの回転軸上で前記サイドスタンドとともにねじ止めされていることを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のサイドスタンド装置において、
前記サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、前記遮蔽体が前記サイドスタンドと一体に設けられていることを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項7】
起立位置と収納位置との間において回転可能に車体に設けられたサイドスタンドと、前記サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段と、を備えた二輪車において、
車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備え、
前記位置検出手段は、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とする二輪車。
【請求項8】
請求項7に記載の二輪車において、
前記サイドスタンドは、車体の一方の側面に取り付けられ、
前記サイドスタンドと前記遮蔽体と前記位置検出手段とを、前記サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置した、ことを特徴とする二輪車。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の二輪車において、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドの回転軸上で前記サイドスタンドとともにねじ止めされている、ことを特徴とする二輪車。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の二輪車において、
前記サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、前記遮蔽体が前記サイドスタンドと一体に設けられている、ことを特徴とする二輪車。
【請求項1】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記二輪車の車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドの位置検出装置において、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記二輪車の車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納するケースと、
前記車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体と、を備え、
前記ケースは、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成され、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界を遮蔽し、前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記凹部から退避して、前記磁界の遮蔽を解除する、ことを特徴とするサイドスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
起立位置と収納位置との間において回転可能に二輪車に設けられたサイドスタンドと、前記サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段と、を備えたサイドスタンド装置において、
前記二輪車の車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備え、
前記位置検出手段は、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサイドスタンド装置において、
前記サイドスタンドと前記遮蔽体と前記位置検出手段とを、前記サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置した、ことを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のサイドスタンド装置において、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドの回転軸上で前記サイドスタンドとともにねじ止めされていることを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のサイドスタンド装置において、
前記サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、前記遮蔽体が前記サイドスタンドと一体に設けられていることを特徴とするサイドスタンド装置。
【請求項7】
起立位置と収納位置との間において回転可能に車体に設けられたサイドスタンドと、前記サイドスタンドの位置を検出する位置検出手段と、を備えた二輪車において、
車体に対して回転可能に取り付けられ、前記サイドスタンドの回転に連動する遮蔽体を備え、
前記位置検出手段は、
磁石と、
前記磁石と対向する位置に配置される磁気センサと、
前記車体に対して固定され、前記磁石と前記磁気センサとを収納し、前記磁石と前記磁気センサとの間に凹部が形成されたケースと、を備え、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置のいずれか一方にある場合に、前記遮蔽体が前記ケースの前記凹部内に位置して、前記磁石から前記磁気センサへの磁界が遮蔽されることにより、前記サイドスタンドの当該一方の位置を検出し、
前記サイドスタンドが起立位置および収納位置の他方にある場合に、前記遮蔽体が前記凹部から退避して、前記磁石からの磁界を前記磁気センサで検知することにより、前記サイドスタンドの当該他方の位置を検出する、ことを特徴とする二輪車。
【請求項8】
請求項7に記載の二輪車において、
前記サイドスタンドは、車体の一方の側面に取り付けられ、
前記サイドスタンドと前記遮蔽体と前記位置検出手段とを、前記サイドスタンドの回転軸に対して垂直な線に沿って並ぶように配置した、ことを特徴とする二輪車。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の二輪車において、
前記遮蔽体は、前記サイドスタンドの回転軸上で前記サイドスタンドとともにねじ止めされている、ことを特徴とする二輪車。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の二輪車において、
前記サイドスタンドの回転軸に対して着地部と反対側に、前記遮蔽体が前記サイドスタンドと一体に設けられている、ことを特徴とする二輪車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−240591(P2012−240591A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114306(P2011−114306)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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