説明

サイドローブ抑制

【課題】広い帯域幅においてサイドローブ打ち消しを可能とする。
【解決手段】サイドローブ打ち消し器(SLC)を使用して打ち消し方向を生成することによってメインアンテナのサイドローブを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナのサイドローブを抑制する分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダーアンテナのサイドローブでピックアップされるジャマー信号を打ち消すために、レーダーシステムではサイドローブの打ち消しが使用されることが多い。既存の解決策は、多数のジャマーソースからジャマー信号を打ち消すことを可能とするものである。一つの解決策が“Multiple Intermediate frequency side-lobe canceller”と題する米国特許第4044359号に説明されている。アンテナを設計する際にサイドローブを回避することは困難であり、これらサイドローブによってジャマー信号がピックアップされてしまう。ジャマー信号は、強大であることが多々あるので、サイドローブの受信感度がメインローブの受信感度より著しく低くても、メインローブでピックアップされるターゲットからの信号との干渉を引き起こす。
【0003】
従来の解決策の動作原理を、メインアンテナ101、N個のアンテナ素子A〜Aを有する補助アレイアンテナ102、制御ユニット103、及び、出力端子111を有する打ち消し回路104と共に、図1に示す。メインアンテナは、メインローブ104及びサイドローブ105〜108を有する。ジャマー信号は、ジャマーソースJ1〜J3から放射される。図1から明らかなように、J1からのジャマー信号は、メインアンテナのサイドローブ108及び補助アンテナ102のアンテナ素子によってピックアップされる。アンテナ素子A〜Aからの信号S〜Sは、制御ユニット103へ供給される。この制御ユニットは、エラー信号e〜eを生成し、これらは、打ち消し回路104へ供給される。メインアンテナ101からの出力は、打ち消し回路104へ供給される。打ち消し回路の出力端子111から制御ユニット103へフィードバック信号112も送られる。制御ユニットでは、このフィードバック信号を使用して入力信号S〜Sの振幅及び位相に影響を及ぼし、エラー信号e〜eを生成する。このエラー信号が打ち消し回路においてメインアンテナのサイドローブからの望ましからぬ信号とで差し引きされると、ジャマー信号が打ち消され、メインローブ及び影響を受けていないサイドローブの信号のみが出力端子111に得られる。このように、望ましからぬサイドローブによりピックアップされた望ましからぬ信号が打ち消される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日の既存の解決策に伴う欠点は、サイドローブの狭帯域の打ち消ししかできないことである。これは、重大な問題である。というのは、レーダーアンテナは、多くの場合に非常に広い帯域幅において動作し、制御ユニットは、狭い帯域幅においてエラー信号を発生することしかできず、その結果、サイドローブ打ち消しがレーダーアンテナの動作帯域幅の一部分でしか有効でないからである。
【0005】
従って、広い帯域幅においてジャマー干渉を打ち消すために広い帯域幅においてサイドローブ打ち消しを可能とする改良された解決策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、従来技術に伴う上述した不備を除去すると共に、広い帯域幅においてサイドローブ打ち消しを達成して、広い帯域幅にわたりジャマー干渉を打ち消すという課題を解決するために、
・メインアンテナのサイドローブを抑制する方法
・サイドローブ打ち消し器(SLC)
を提供することである。
【0007】
この目的は、サイドローブ打ち消し器(SLC)を使用して打ち消し方向を生成することによりメインアンテナのサイドローブを抑制する方法であって、サイドローブ打ち消し器は、補助アンテナと、適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)と、を含み、補助アンテナは、出力波形S〜SをASCへ供給するN(N≧1)個のアンテナ素子/サブアレイ1〜Nを有することによって、達成される。
【0008】
SLCは、更に、SLCの出力端子からASCへのフィードバックループを備え、
・サイドローブ打ち消し器(SLC)は、更に、N個の変換手段Tr〜Trを備え、
・ASCは、メインアンテナから出力波形を受け取り、
・補助アンテナのアンテナ素子からの各出力波形S〜Sは、変換手段Tr〜Trにも供給され、
・遅延線により出力波形に遅延が導入され、
・アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)ごとに、出力波形zに対するジャマーの影響を最小にすることにより、q個のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントq(qは0からQ−1の範囲の整数インデックス)に対して重み付け関数W(ω)が計算され、
・変換手段は、離散の角周波数ωでの重み付け関数W(ω)から計算される一以上の制御パラメータを使用することにより、各アンテナ素子/サブアレイからの波形に影響を及ぼし、
・制御パラメータは、ASCにおいて連続的に計算されて、制御信号c〜cを通して変換手段へ供給され、
これにより、変換手段からの出力波形が時間又は周波数ドメインにおいてメインアンテナの遅延された出力波形から減算されると、全帯域幅Bにおけるジャマー干渉の打ち消しが達成される。
【0009】
上記目的は、更に、打ち消し方向を生成することによりメインアンテナのサイドローブを抑制するのに使用されるサイドローブ打ち消し器(SLC)を提供することにより達成される。このSLCは、補助アンテナ、及び、適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)を備える。補助アンテナは、出力波形S〜SをASCへ供給するように構成されたN(N≧1)個のアンテナ素子/サブアレイ1〜Nを有している。SLCは、更に、SLCの出力端子からASCへのフィードバックループを備え、
・サイドローブ打ち消し器(SLC)は、更に、N個の変換手段Tr〜Trを備え、
・ASCは、メインアンテナから出力波形を受け取るように構成され、
・補助アンテナのアンテナ素子からの各出力波形S〜Sは、変換手段Tr〜Trにも接続され、
・出力波形の遅延用の手段が遅延線で構成され、
・アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)ごとに、q個のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントq(qを0からQ−1の範囲の整数インデックス)に対して重み付け関数W(ω)を、各スペクトルコンポーネントの中心周波数fにおいて出力波形zに対するジャマーの影響を最小にすることにより、計算するように構成され、
・変換手段は、離散の角周波数ωでの重み付け関数W(ω)から計算された一以上の制御パラメータを使用することにより、各アンテナ素子/サブアレイからの波形に影響を及ぼすように構成され、
・制御パラメータは、ASCにおいて連続的に計算されて、制御信号c〜cを通して変換手段へ供給されるように構成され、
これにより、変換手段からの出力波形が時間又は周波数ドメインにおいてメインアンテナの遅延された出力波形から減算されるよう構成されると、全帯域幅Bにわたるジャマー干渉の打ち消しが達成される。
【0010】
詳細な説明において説明する一以上の従属請求項の特徴を実施することによって、更なる効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】サイドローブ打ち消しのための従来の解決策を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態のブロック図である。
【図3a】変換手段を周波数ドメインにおいて実現するデジタル解決策を概略的に示す図である。
【図3b】変換手段を周波数ドメインにおいて実現するアナログ解決策を概略的に示す図である。
【図4a】時間ドメインにおける変換手段の実現化を概略的に示す。
【図4b】主要な周波数無依存の「真の時間遅延」も含む変換手段の実施形態に対する時間ドメインでの実現化を概略的に示す図である。
【図4c】減衰/増幅及び時間遅延を角周波数ω(2・π・f)の関数として示すグラフである。
【図5】アンテナパターンを定義するのに使用される角度ψ及びθの定義を示す図である。
【図6】メインアンテナ及び補助アンテナの放射パターンを概略的に示す図である。
【図7】制御信号を得るための計算の概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、あらゆる形式の受信アンテナに適用できる。以下の説明では、レーダーアンテナの用途について本発明を例示する。
【0013】
図2は、レーダーシステムにおいて実施される本発明の実施形態のブロック図である。図2に示すサイドローブ打ち消し器(SLC)200の主要部分は、メインアンテナ201、複数のアンテナ素子から成るか又は複数のアンテナ素子及びサブアレイA〜Aの組合せから成る補助アンテナ202、適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)203、変換手段Tr〜Tr、打ち消しネットワーク(CN)204、及び遅延線212である。アンテナ素子/サブアレイの数は、少なくとも一つである。即ち、N≧1である。サブアレイは、少なくとも二つのアンテナ素子から成る。メインアンテナとCNとの間には遅延線が挿入されており、当該遅延線は、メインアンテナの遅延出力波形211を発生する。遅延は、補助アンテナとメインアンテナとの間の距離に応じて、ゼロ遅延から上方へ調整することができる。遅延は、当業者に良く知られた従来の手段により達成される。変換手段は、補助アンテナからの波形に作用する。補助アンテナにおける各アンテナ素子は、図2の実施形態では変換手段に接続されている。図2を詳細に説明する前に、変換手段について更に説明する。以下の説明においては、波形という語を、任意の形状、即ち、連続的な又はパルス状の信号を指すのに使用する。
【0014】
図2の実施形態における変換手段は、当該変換手段からの出力波形S〜Sの各々がメインアンテナの遅延出力波形211から減算されたときに、当該出力波形S〜Sが、せいぜい波形S〜Sごとに一つの打ち消し方向を発生するだけであるように、当該変換手段に入る入力波形S〜Sに作用する。或いは、波形S〜Sは、最初に、第1の加算ネットワーク206において加算され、その加算された信号が、メインアンテナの遅延出力波形211から減算される。変換手段内では、波形は、以下に述べるようにASC203により連続的に更新される幾つかの制御パラメータにより影響を受ける。図3aは、第1制御要素と称する変換手段の実際の実現化の例を概略的に示している。この例では、周波数依存の時間遅延が制御パラメータとして使用される。この実現化は、周波数依存の減衰/増幅である別の制御パラメータも含む。即ち、波形の振幅が、減衰又は増幅される。従って、この実施形態では、二つの周波数依存の制御パラメータ、即ち時間遅延、及び減衰/増幅が使用される。補助アンテナのアンテナ素子nからの入力波形S〜Sの一つを表す入力波形Sin(t)301は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を使用するフーリエ変換(FT)ユニット302へ供給される。しかしながら、スペクトルを計算する他の方法を使用することもできる。FTユニットは、入力波形Sin(t)301を、Q個のスペクトルコンポーネント0〜Q−1、この実施例では、8個のスペクトルコンポーネント310〜317へと変換する。各スペクトルコンポーネントは、中心周波数fを有する。しかしながら、より多数の又はより少数のスペクトルコンポーネントへの変換がなされてもよい。これは、レーダーシステムによりカバーされる全帯域幅BがQ個のスペクトルコンポーネントに分割されることを意味する。時間遅延τn,q(320〜327)及びオプションの周波数依存の減衰/増幅αn,q(330〜337)は、当業者に良く知られた適当な時間遅延及び/又は減衰/増幅手段を通じて補助アンテナ素子nからの各スペクトルコンポーネントqに影響を及ぼす。従って、スペクトルコンポーネント310は、時間遅延τn,0320及び減衰/増幅αn,0330を有し、スペクトルコンポーネント311は、時間遅延τn,1321及び減衰/増幅αn,1331を有する等々となり、スペクトルコンポーネント317は、補助アンテナ素子nにおいて時間遅延τn,7327及び減衰/増幅αn,7337を有する。全てのスペクトルコンポーネントは逆フーリエ変換(IFT)ユニット303へ供給され、当該ユニット303は、逆高速フーリエ変換(IFFT)又は他の適当な変換方法、例えば、IDFTを使用して、周波数ドメインから時間ドメインへ変換し、従って、全てのスペクトルコンポーネントを時間ドメインへ戻すように変換し、そして出力波形S〜Sの一つを表す出力波形Sout(t)304を発生する。
【0015】
時間遅延τn,q及び減衰/増幅αn,qは、補助アンテナ素子n用の各スペクトルコンポーネントqに影響を及ぼす制御パラメータの一例である。ここで、nは1〜N、qは0〜Q−1の範囲である。
【0016】
FTユニット、時間遅延及び減衰/増幅手段、並びにIFTユニットは、第1制御要素300の一部分である。
【0017】
図3aに基づき周波数依存の時間遅延及び減衰/増幅の双方で実施される機能について以下に説明する。
【0018】
上述した制御パラメータは、周波数依存の重み付け関数W(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)から計算され、波形S〜Sに影響を及ぼす。ここで、A(ω)は、減衰/増幅の周波数依存性を考慮しており、τ(ω)は、時間遅延の周波数依存性を考慮している。或いは、重み付け関数は、W(ω)=A(ω)・e−j・φ(ω)として定義することもでき、この場合も、A(ω)は、減衰/増幅の周波数依存性を考慮しており、φ(ω)は、位相シフトの周波数依存性を考慮している。各補助アンテナ素子は、一つの第1制御要素300に接続されている。第1制御要素に入力する入力波形Sin(t)301の関数として各第1制御要素300から放出される出力波形Sout(t)304は、次の式(1)を用いて計算することができる。波形Sin(t)は、ビデオ、中間周波(IF)又は高周波(RF)レベルにある。
【数1】



【0019】
式(1)において、シンボル
【数2】



は、コンボリューションの記号である。コンボリューションの原理は、当業者に周知のものであり、例えば、1965年にRonald N. Bracewellによって記載されたMcGraw-Hill Higher Education "The Fourier Transform and itsApplications"から更に理解し得る。
【0020】
上述した記号及び以下の説明で使用する記号は、次の意味を有する。
ω:角周波数(2・π・f)
ω:周波数fにおける離散の角周波数
w(t):時間ドメイン重み付け関数
【数3】



w(t−τ):時間遅延された時間ドメイン重み付け関数
W(ω):w(t)のフーリエ変換である周波数ドメイン重み付け関数
n,q:補助アンテナ素子nのスペクトルコンポーネントqに対応するω=ωにおけるW(ω)
【数4】



A(ω):W(ω)の絶対値
αn,q:Wn,qの絶対値に等しい補助アンテナ素子nのスペクトルコンポーネントqの絶対値に対応するω=ωにおけるA(ω)
τ:時間遅延及び積分変数
τ(ω):ωの関数としての時間遅延
τn,q:補助アンテナ素子nのスペクトルコンポーネントqに対応するω=ωにおけるτ(ω)の時間遅延
φ(ω):ωの関数としての位相シフト
φn,q:補助アンテナ素子nのスペクトルコンポーネントqに対応するω=ωにおけるφ(ω)の位相シフト
Mq:メインアンテナからのスペクトルコンポーネントq
【数5】



n,q:補助アンテナnからのスペクトルコンポーネントq
【数6】



:出力波形zのスペクトルコンポーネントqにおける残留電力
【数7】



:出力波形zのスペクトルコンポーネントq
【数8】



z:時間ドメインにおける出力波形
【0021】
上述した重み付け要素及び重み付け係数は、制御パラメータの一例である。
【0022】
ベクトル及びマトリクスは、太字で示してある。
【0023】
上述したように、τn,q及びαn、qは、各スペクトルコンポーネントqに影響を及ぼす補助アンテナ素子nに対する周波数依存の制御パラメータの一例である。位相シフトφn,qは、各スペクトルコンポーネントqに影響を及ぼす補助アンテナ素子nに対する周波数依存パラメータの別の例である。
【0024】
この実施形態は、本発明の解決策と従来技術との間の重要な相違を明確にするものである。従来の解決策では、補助アンテナの各アンテナ素子からの全出力波形が、位相及び振幅に影響を及ぼすことにより取り扱われる。この取り扱いは、全周波数範囲にわたって同じであり、即ち周波数無依存である。本発明の解決策を含む本実施形態では、補助アンテナ素子からの各波形が多数のスペクトルコンポーネントに分割され、各スペクトルコンポーネントが、周波数に依存する一以上の制御パラメータによって影響を受ける。これは、各スペクトルコンポーネントの利得及び遅延又は位相を正確に制御し、従って、全帯域幅Bにわたって利得及び遅延又は位相を正確に制御できるようにする。
【0025】
図3aは、変換手段のデジタルでの実現化を示している。図3bは、それに対応するアナログでの実現化を示すものであり、入力波形Sin(t)301が第3制御要素350に入る。補助アンテナ素子nから到来する入力波形301は、中心周波数fを有するQ個のバンドパスフィルタFに供給される。ここで、qは、0からQ−1までの整数値をとる。従って、入力波形301は、Q個のスペクトルコンポーネントに分割され、時間遅延τn,q、或いは位相シフトφn,q及び周波数依存の減衰/増幅αn,qが、当業者に良く知られた適当な時間遅延又は位相シフト及び減衰/増幅手段を通して、各スペクトルコンポーネントに影響を及ぼす。全てのスペクトルコンポーネントは、第2の加算ネットワーク351に接続されて出力波形Sout(t)304を発生する。各スペクトルコンポーネントの中心周波数fは、等距離スペクトルコンポーネント分割の場合には、次の式に基づいて計算することができる。
【数9】



ここで、fは、全周波数帯域の中心周波数であり、Bは、全帯域幅である。第3制御要素350は、Q個のバンドパスフィルタFと、時間遅延及び減衰/増幅のための手段と、第2の加算ネットワーク351と、を備えている。
【0026】
以下、図4a及び4bを参照して変換手段の更に別のデジタルでの実現化を説明する。多くの状況において、時間的に離散のステップTを用いた時間離散の実現化が好ましい。第2制御要素(400)から放出される出力波形S〜Sの一つを表す出力波形Sout(m・T)は、第2制御要素に入る入力波形S〜Sの一つを表す入力波形Sin(m・T)の関数として、式(2)を用いて計算することができる。インデックスmは、時間の関数として直線的に増加する整数値である。W(ω)は、スペクトルコンポーネントqの中心周波数における時間遅延及び減衰/増幅を表す。図3を参照されたい。図3を参照して述べたFFT及びIFFTは、双方ともにQ・log(Q)回の演算を要求するものであるが、これらは、双方ともにQ回の演算を要求するDFT(離散的フーリエ変換)及びIDFT(離散的逆フーリエ変換)を計算するための計算効率の良い方法である。Qは、上述したように、スペクトルコンポーネントの全数である。出力波形は、次のように計算される。
【数10】



mod[x、y]:xをyで除算した後の余り
ω=2・π・f:離散的角周波数
Q:スペクトルコンポーネントの数
k:DFT及びIDFTに使用される整数増加変数
m:離散の時間ステップ用の整数増加変数
q:スペクトルコンポーネントに対する整数増加変数及びDFTに使用される整数増加変数
W(ω):補助アンテナ素子nに対するwn,qのフーリエ変換である周波数fに対する周波数ドメイン重み付け関数
【0027】
式(2)において明らかなように、時間離散の実現化における所望の機能は、Q回の演算で達成することができる。
【0028】
FFT及びDFTは、フーリエ変換(FT)のための異なる方法である。IFFT及びIDFTは、逆フーリエ変換(IFT)のための対応の方法である。上述したように、これらの方法は、異なる効果を有し、用途に最も適した方法が選択される。しかしながら、本発明の異なる実施形態においてFT及び/又はIFTが要求されるときには、いずれかの方法を使用することができる。
【0029】
図4aは、補助アンテナのアンテナ素子から到来する入力波形Sin(m・T)401を示している。この入力波形401は、1からQ−1まで番号付けされたQ−1個の時間ステップT403で次々に時間遅延され、入力波形Sin(m・T)の時間遅延されたコピーとなる。従って、この入力波形は、図4aの上部404に示されたように、時間ステップTで次々に時間遅延される。Q個の制御パラメータは、補助アンテナ素子nに対する重み付け係数wn,0からwn,Q−1を含んでおり、二つのインデックスで特定される。第1のインデックスは、補助アンテナの素子番号を表し、第2のインデックスは、スペクトルコンポーネントを表す連続番号qで、0からQ−1の範囲である。重み付け係数は、アンテナ素子nごとに、q個のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントqに対して、W(ω)のIDFTとして、或いはW(ω)のIFFTとして計算される。従って、時間ドメインwn,0からwn,Q−1における重み付け係数が補助アンテナのアンテナ素子nの重み付け係数となる。周波数ドメインにおける対応の係数は、Wn,qで指定される。矢印411は、入力波形Sin(m・T)が第1の重み付け係数wn,0と乗算され、入力波形の各時間遅延されたコピーが、図4aの中間部405に示すように、入力波形の各時間遅延されたコピーに含まれる時間ステップ遅延Tの数と同じ第2のインデックスを有する重み付け係数で次々に乗算されることを示している。各乗算の結果は、矢印412で示すように、図4aの下部406へ移動されるように概略的に示されており、そこで、各乗算結果は、出力波形407、Sout(m・T)へと加算される。
【0030】
メインアンテナと補助アンテナとの間に物理的な距離があるときにしばしばそうであるが、時間遅延の主要部分が周波数依存でない場合には、補助アンテナのアンテナ素子ごとに、一連の重み付け係数wn,0からwn,Q−1の始めと終わりに、ゼロに略等しい多数の非常に小さな連続的な重み付け係数が生じる。一連の重み付け係数wn,0〜wn,Q−1における最初のx重み付け係数及び最後のy重み付け係数がゼロに略等しいと仮定する。ハードウェアの実現化においては、最初のx重み付け係数及び最後のy重み付け係数をゼロにセットし、最初のx時間遅延Tを、図4bに示すx・Tに等しい時間遅延D402へ統合し、最後のy乗算を除外して、必要な演算の数をQ個の演算未満へと減少させることが適当である。図4bは、他の点では、図4aに対応している。時間遅延D402は、補助アンテナの各アンテナ素子に対する周波数無依存の時間遅延に対応する。残りの周波数依存の時間遅延を、以後、「デルタ時間遅延」と称する。図4bは、メインアンテナと補助アンテナとの間の物理的距離を補償するために主として使用される周波数無依存の時間遅延D402が先行する「デルタ時間遅延」を計算するための計算効率の良いコンボリューションの一例である。この物理的な距離の補償は、周波数無依存の遅延線212に対して行われる。周波数無依存の遅延線212の遅延時間は、メインアンテナと補助アンテナとの間の物理的な距離によりメインアンテナ及び補助アンテナに生じるジャミング信号の最大時間差又は遅延に対応しなければならない。
【0031】
周波数無依存の時間遅延Dを実現する手段、並びに周波数依存の時間遅延及び減衰/増幅のための手段は、第2制御要素400の一部分である。
【0032】
第1制御要素300、第2制御要素400及び第3制御要素350は、変換手段の一例である。以下に述べる共通のIFTをもつ別の実施形態では、IFT部分をデジタル変換手段に含ませる必要がなく、又、第2の加算ネットワーク351を第3制御要素に含ませる必要もない。
【0033】
図4cは、垂直軸415における時間遅延τ(ω)及び減衰A(ω)の角周波数依存性を、水平軸416における角周波数ω(即ち、2・π・f)の関数として示している。最適な重み付け関数は、各補助アンテナ素子n及び複数のωの値、例えば、ω、ω、ω、・・ωQ−1に対して、スペクトルコンポーネントqごとに打ち消しネットワーク(CN)からの出力残留電力を最小にすることにより、推定される。出力波形z(207)は、時間ドメインで減算が行われるときには、メインアンテナからの遅延された出力波形(211)と波形S〜S(209)の和との間の差である。全てのジャマー信号及び有用な信号は、メインアンテナからの波形と、補助アンテナの素子からの波形S〜Sとの双方において、時間遅延及び強度が変化する状態で存在することになる。各スペクトルコンポーネントqに対して打ち消しネットワーク(CN)からの出力残留電力を最小にすることにより出力波形z(207)に対するジャマーの影響が最小にされる。従って、各スペクトルコンポーネントに対する残留電力の測定を簡単にするために、Q個の単一スペクトル第1加算ネットワーク及びQ個の単一スペクトル打ち消しネットワークを使用してスペクトルコンポーネントごとに第1加算ネットワーク及び打ち消しネットワークを複製することができる。これは、ASCへ供給されるスペクトルコンポーネントごとに一つのフィードバック波形を生じさせる。従って、単一スペクトル打ち消しネットワークの後に全スペクトルコンポーネントのIFTとして出力波形z207が形成される。
【0034】
説明した計算は、スペクトルコンポーネントqごとに実行される。これは、補助アンテナ素子nごとに複数の値Wn,0、Wn,1、Wn,2、・・Wn,Q−1を生じさせる。次いで、ωの関数としての時間遅延が曲線417を形成し、又、減衰/増幅が曲線418を形成する。重み付け係数wn,0、wn,1、wn,2、・・wn,Q−1は、補助アンテナ素子nごとにWn,0、Wn,1、Wn,2、・・Wn,Q−1のIDFT又はIFFTとして計算される。
【0035】
従って、図4a及び4bは、時間ドメインにおける周波数依存の時間遅延及び減衰/増幅の実現化を示しており、図3a及び3bは、周波数ドメインにおける対応の実現化を示している。時間ドメインにおける実現化に伴う効果は、Q個の演算しか要求されないことであり、一方、周波数ドメインにおける実現化では、上述したように、Q・log(Q)の演算が要求される。
【0036】
三つの制御要素は、全て、先に述べたように、ビデオレベル、中間周波(IF)レベル、又は直接的に高周波(RF)レベルで挿入することができる。制御要素を低い周波数で実現するのは容易であるが、制御要素と補助アンテナのアンテナ素子/サブアレイとの間に必要な全てのハードウェアは、補助アンテナのアンテナ素子/サブアレイの個数につれて増やされる必要がある。また、打ち消しネットワーク(CN)及びSLCの全ハードウェアは、受信した波形のジャマー作用を取り扱うに充分な広さのダイナミックレンジをもたねばならないことにも注意されたい。この説明では、本発明を、RFレベルで実現されるものとして説明する。
【0037】
三つの制御要素は、入力波形を出力波形に変換する変換手段の一例である。変換手段は、全て、入力波形を受け取る入力端と、出力波形を発生する出力端との、二つの端部を有している。
【0038】
ここで、図2に戻り、サイドローブ打ち消し器(SLC)200を詳細に説明する。補助アンテナの各アンテナ素子A−Aは、主として、以下に述べるように、ある方向のサイドローブ干渉を打ち消すのに使用される。補助アンテナは、メインアンテナの一部分であってもよいし、メインアンテナから分離されていてもよい。メインアンテナは、複数のアンテナ素子を伴うアレイアンテナであってもよいし、他の形式のアンテナであってもよい。ジャマー信号は、ジャマーソースJ1及びJ2から放射され、メインアンテナ及び補助アンテナによってピックアップされる。メインアンテナからの波形205は、適応サイドローブ打ち消し器(ASC)制御ユニット203に供給され、遅延線212を経て打ち消しネットワーク204に供給される。補助アンテナの各アンテナ素子1〜Nからの波形S〜Sは、適応サイドローブ打ち消し器(ASC)制御ユニット203に供給される。また、波形Sは、変換手段ユニット1、Trにも供給され、波形Sは、変換手段ユニット2、Trにも供給され、又、波形Sは、変換手段ユニットn、Trにも供給され、即ち各S〜S波形は、それに対応する変換手段ユニットTr〜Trに供給される。最適な制御パラメータ
【数11】



は、メインアンテナからの遅延された波形SMqの各スペクトルコンポーネントと、各出力波形S〜Sからのスペクトルコンポーネントqの和との間の差の各スペクトルコンポーネントqにおける残留電力を最小にすることにより、推定することができる。出力残留電力
【数12】



は、次のように計算することができる。
【数13】



但し、
E[x]:ベクトルxの各要素の予想値を含むベクトル
|x|:ベクトルxの各要素の絶対値を含むベクトル
【数14】



【0039】
第2の等式
【数15】



においては、重み付け要素
【数16】



だけが未知である。従って、この関係は、全てのスペクトルコンポーネントqに対する
【数17】



の最小化と共に、
【数18】



の計算に使用できる。出力波形zの全てのスペクトルコンポーネントに対する合計残留電力
【数19】



が最小になると、打ち消しが必要となる全ての実際的な状況において、ジャマー信号(1つ又は複数)の影響も最小になる。出力波形zの信号対雑音比は、これらの環境の間に、上述した動作により最大となる。
【0040】
上述したように、変換手段の選択された実現化に基づいてWの行1から行N又はwの行1から行nに等しい制御パラメータは、制御信号c〜cを経て対応する変換手段Tr〜Trへ送信される。変換手段では、制御パラメータが受け取られる。変換手段は、本発明が周波数ドメインで実施されるときには周波数依存の時間遅延又は周波数依存の位相シフト及び周波数依存の増幅/減衰を達成するための手段において行われ、或いは本発明が時間ドメインで実施されるときには重み付け係数wn,0〜wn,Q−1での乗算を達成するための手段において行われる。wn,qは、本発明が時間ドメインで実施されるときに使用される遅延qに対するアンテナ素子nの重み付け関数であり、Wn,qは、上述したように本発明が周波数ドメインで実施されるときに使用されるwにおける行nのFTのコンポーネントqに等しい。一以上の全変換手段からの出力S〜Sは、第1の加算ネットワーク206において加算され、加算出力波形209が生成される。第1の加算ネットワーク206からの出力波形209は、打ち消しネットワーク204へ供給され、当該打ち消しネットワーク204において、メインアンテナからの遅延された出力波形211から減算される。得られる差は、打ち消しネットワークからの出力波形207であり、当該出力波形207は、説明した用途の場合と同様に、ASCへフィードバックされると共に、レーダーシステムへも送信される。
【0041】
本発明が周波数ドメインで実施されるときには、上述した加算及び減算が各個々のスペクトルコンポーネントqに対して代わりに行われ、その後、一つの最終的な逆フーリエ変換(IFT)が行われて、出力波形zが形成される。要求されるダイナミックレンジが小さいという効果が与えられる。というのは、一つ又は少数のスペクトルコンポーネントを過剰に励起しても、全帯域幅にわたり厳しい性能低下を生じる時間ドメインでの過剰励起に比して、性能の低下が穏やかだからである。この別の解決策では、一つの第1加算ネットワークではなく、補助アンテナのアンテナ素子からの各スペクトルコンポーネントに対して一つづつ、Q個の単一スペクトル第1加算ネットワークと、Q個の単一スペクトル打ち消しネットワークとがあり、この打ち消しネットワークでは、メインアンテナの遅延された出力波形の各スペクトルコンポーネントが、各単一スペクトル第1加算ネットワークで加算された補助アンテナからの対応するスペクトルコンポーネントとで差し引かれる。次いで、得られるスペクトルコンポーネントの波形に対してIFTが行われて、出力波形z207が生成される。この解決策に伴う効果は、変換手段においてIFTが要求されないことであるが、メインアンテナからの遅延された出力波形211についてFTを行って、スペクトルコンポーネントを生成し、単一スペクトル打ち消しネットワークへ供給しなければならない。従って、遅延された出力波形211及び変換手段からの出力波形は、時間ドメイン又は周波数ドメインのいずれにおいても、Q個のスペクトルコンポーネントに分割することができる。
【0042】
ASCは、打ち消しネットワーク204からの出力波形207の信号対雑音比(S/N)を最大にするために、マトリクスW又はwに含まれる制御パラメータを連続的に更新する。これは、上述した全ての制御パラメータの連続的な再計算によって行われる。本発明の利用に伴う効果は、第1加算ネットワーク206からの出力波形209を全帯域幅Bにわたって有効にすることができ、これにより、メインアンテナの全動作帯域幅Bにわたりメインアンテナのサイドローブからピックアップされた望ましからぬ障害を打ち消しできることである。
【0043】
角度θ及びψは、図5に示すように定義される。X軸501、Y軸502及びZ軸503を伴うカルテシアン座標系では、空間内のポイント504に対する方向が角度θ505及び角度ψ506により定義される。角度ψは、原点508からポイント504への線507とZ軸との間の角度である。角度θは、線507のX−Y平面への垂直投影509とX軸との間の角度である。
【0044】
図6は、メインアンテナのアンテナパターン601及び補助アンテナのアンテナ素子のアンテナパターン602を水平軸603における角度θの関数として示している。垂直軸604は、利得をdBで表わしている。明らかなように、メインアンテナのアンテナパターンは、メインローブ605及びサイドローブ606〜613から成る。アンテナ素子のアンテナパターンは、極めて全方向性であり、メインアンテナのメインローブより非常に低いレベルにある。ここで、入射角616を有するジャマーソース615からのジャマー波形を仮定する。ASCは、ここで、上述した原理に基づいて波形W(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)又はW(ω)=A(ω)・e−j・φ(ω)から、補助アンテナのアンテナ素子のアンテナパターンの振幅が、ジャマー入射角616におけるポイント617を表す振幅レベルまで減少されるように、制御パラメータを計算する。この振幅レベルは、角度616におけるサイドローブ607の振幅レベルに対応する。更に、制御パラメータは、出力波形zの各スペクトルコンポーネントqにおける残留電力を最小にすることにより、メインアンテナ及びアンテナ素子の位相がポイント617において等しくなるように、計算される。アンテナ素子のこのように変更されたアンテナパターンが破線の曲線618で示されている。ここで、補助アンテナのアンテナ素子における利得及び位相の双方が、希望の打ち消し方向にメインアンテナに等しくなるように調整される。アンテナ素子からの出力波形S〜Sは、第1加算ネットワーク206に供給され、そこで加算されて合計補助アンテナ出力波形209となり、これが打ち消しネットワークに供給されて、メインアンテナの遅延された出力波形211とで差し引きされ、得られるメインアンテナパターン619に対応する出力波形207の方向616に波形打ち消しを生じさせる。図6の実施形態では、補助アンテナの一つのアンテナ素子、ひいては、一つの出力波形Sだけが打ち消しネットワークに直接供給される。というのは、この実施形態では、第1加算ネットワークが必要とされないからである。本発明の別の実施形態では、先に述べたように、加算及び打ち消し計算の後に最終的なIFTが行われるときに、第1加算ネットワーク及び打ち消しネットワークをQ個の単一スペクトル加算ネットワーク及びQ個の単一スペクトル打ち消しネットワークに置き換えることができる。
【0045】
また、第1加算ネットワークの機能をCNに一体化することもできる。この実施形態では、変換手段からの各出力波形S〜SがCNに直接供給される。
【0046】
図6において明らかなように、メインアンテナのメインローブは、補助アンテナのアンテナ素子の利得レベルがメインローブのレベルより遥かに低いので、僅かに影響を受けるだけである。それにより生じるサイドローブレベルは、当該角度におけるアンテナ素子とメインアンテナとの間の位相差に基づいて増加又は減少し得る。先に述べたように、本発明の効果は、上述した制御パラメータを使用することにより、全広帯域Bにわたって打ち消しを達成できることである。
【0047】
本発明の方法ステップを図7に示す。図7の実施形態における全ての計算は、ASCで実行される。開始後のステップ701において、メインアンテナの出力波形のFTである要素SMq(q∈[0..Q−1])から成る行ベクトル
【数20】



が計算される。次のステップ702において、各スペクトルコンポーネントの位相を調整することにより、この行ベクトル
【数21】



に遅延補償が適用される。ステップ703では、nが1にセットされ、ステップ704では、
【数22】



が計算される。
【数23】



は、要素Sn,q(n∈[1..N]、q∈[0..Q−1])から成り、ここで、Sn,qは、補助アンテナnのスペクトルコンポーネントqである。ステップ705において、n=Nであるかどうかのチェックが行われ、n=Nでなければ、ステップ703へ復帰して、nが1だけ増加され、
【数24】



が704において計算される。このループ703〜705は、705におけるチェックがn=Nとなるまで続けられる。このようになったときには、
【数25】



が計算され、計算は、ステップ706へ進み、ここで、
【数26】



を最小にしながら、要素Wn,q(n∈[1..N]、q∈[0..Q−1])より成る
【数27】



が計算される。この
【数28】



が計算されると、707においてn=1にセットして新たなnループが開始される。時間ドメインでの実現化が選択された場合には、708において判断がなされて709へ進み、ここで、
【数29】



が行われて、制御信号cである出力が709から生じる。708において時間ドメインでの実現化が選択されず、即ち周波数ドメインでの解決策が選択された場合には、
【数30】



が710において制御信号cとして使用される。709又は710のいずれかでc信号が発生されたときには、711においてn=Nであるかどうかのチェックがなされ、n=Nでなければ、nの値を増加することにより707にループが続き、ループ707、708、709/710及び711を進み、やがて、711でのチェックがn=Nとなる。n=Nのときには、全ての制御信号c−cが計算され、ステップ701で
【数31】



の新たな計算を行うことにより計算が再び全面的に開始される。上述したように、変換手段の選択された実現化に基づいて、
【数32】



に等しい制御パラメータが、制御信号c−cを経て対応する変換手段Tr〜Trへ送信される。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
101…メインアンテナ、102…補助アンテナ、103…制御ユニット、104…打ち消し回路、104…メインローブ、105〜108…サイドローブ、111…出力端子、J1〜J3…ジャマーソース、200…サイドローブ打ち消し器(SLC)、201…メインアンテナ、202…補助アンテナ、203…適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)、204…打ち消しネットワーク(CN)、206…第1加算ネットワーク、211…遅延された出力波形、212…遅延線、300…第1制御要素、301…入力波形、302…フーリエ変換(FT)ユニット、310〜317…スペクトルコンポーネント、350…第3制御要素、400…第2制御要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助アンテナ(202)と適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)(203)とを有するサイドローブ打ち消し器(SLC)(200)と、該SLCの出力端子(210)から前記ASCへのフィードバックループと、を使用して、打ち消し方向を生成することによってメインアンテナ(201)のサイドローブを抑制する方法であって、
前記補助アンテナは、N個(N≧1)のアンテナ素子/サブアレイ1〜Nを有しており、それらの出力波形S〜Sを前記ASCへ供給し、
前記サイドローブ打ち消し器(SLC)は、更に、N個の変換手段Tr〜Trを備え、
前記ASCは、前記メインアンテナから出力波形(205)を受け取り、
前記補助アンテナのアンテナ素子からの各出力波形S〜Sは、前記変換手段Tr〜Trにも供給され、
遅延線(212)を介して前記出力波形(211)に遅延が導入され、
アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)ごとに、出力波形z(207)に対するジャマーの影響を最小にすることにより、q個(qは0からQ−1の範囲の整数インデックス)のコンポーネントにおいて帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントqに対して重み付け関数W(ω)が計算され、
前記変換手段(300,350,400, Tr〜Tr)は、離散の角周波数ωにおいて前記重み付け関数W(ω)から計算された一以上の制御パラメータを使用することにより、各アンテナ素子/サブアレイからの波形に影響を及ぼし、
前記制御パラメータは、前記ASCにおいて連続的に計算されて、制御信号c〜cを通して前記変換手段へ供給され、
これにより、前記変換手段からの出力波形が時間ドメイン又は周波数ドメインにおいて前記メインアンテナの遅延された出力波形(211)から減算されたときに全帯域幅Bにわたるジャマー干渉の打ち消しを達成する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重み付け関数は、W(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)又はW(ω)=A(ω)・e−j・φ(ω)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジャマーの影響を最小にすることは、前記出力波形z(207)の出力残留電力を最小にすることにより達成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
【数1】



の計算を連続して行い、
該計算が、時間ドメインでの実現化が使用されるときには、
【数2】



として、
又は、周波数ドメインでの実現化が使用されるときには、
【数3】



として、前記制御信号c−cを連続的に計算するのに使用される、
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記波形S〜Sは、第1加算ネットワーク(206)を経て打ち消しネットワーク(CN)へ供給される、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記変換手段(300, Tr〜Tr)は、フーリエ変換(FT)ユニット(302)を備え、
該FTユニットは、各変換手段への入力波形Sin(t)(301)をQ個のスペクトルコンポーネント0〜(Q−1)(310〜317)へ分割し、
各スペクトルコンポーネントは、中心周波数fを有し、
周波数依存パラメータ、時間遅延τn,q又は位相シフトφn,q及び減衰/増幅αn,qが、時間遅延又は位相シフト及び減衰/増幅手段を介して各スペクトルコンポーネントに影響を及ぼし、
全てのスペクトルコンポーネントが、逆フーリエ変換(IFT)ユニット(303)へ供給され、
該逆フーリエ変換ユニットが、全てのスペクトルコンポーネントを時間ドメインへと戻すように変換し、各変換手段からの出力波形Sour(t)(304)を発生する、
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記変換手段(400)は、入力波形Sin(m・T)(401)を受け取り、
前記入力波形は、1からQ−1まで番号付けされたQ−1個の時間ステップT(403)で次々に時間遅延され、入力波形Sin(m・T)の時間遅延されたコピーとなり、
アンテナ素子nに対して重み付け係数wn,0〜wn,Q−1を含むQ個のパラメータであって、アンテナ素子番号を表す第1のインデックスと、スペクトルコンポーネントを表す0からQ−1の範囲の連続数qである第2のインデックスとの二つのインデックスで特定されるQ個のパラメータが、q個のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントqに対してW(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)の逆フーリエ変換として計算され、該計算は、各アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)に対して、各スペクトルコンポーネントの中心周波数fにおいて出力波形z(207)に対するジャマーの影響を最小にすることにより実行され、
前記入力波形Sin(m・T)は、第1の重み付け係数wn,0と乗算され、前記入力波形の各時間遅延されたコピーは、入力波形の時間遅延されたコピーに含まれた時間ステップ遅延Tの数と同じ第2のインデックスを有する重み付け係数で次々に乗算され、各乗算の結果は、出力波形(407)、Sout(m・T)へと加算される、
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
一連の重み付け係数wn,0からwn,Q−1における最初のx重み付け係数及び最後のy重み付け係数がゼロにセットされ、最初のx時間遅延Tが、x・Tに等しい時間遅延D402へ統合されると共に、最後のy乗算が除外されて、必要な演算の数をQ個未満の演算へと減少させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変換手段は、第3制御要素(350)を使用してアナログ解決策として実現化される、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記補助アンテナのアンテナ素子からの各スペクトルコンポーネントに対して一つづつのQ個の単一スペクトル第1加算ネットワークと、Q個の単一スペクトル打ち消しネットワークとを使用し、該打ち消しネットワークでは、前記メインアンテナの遅延された出力波形の各スペクトルコンポーネントが、各単一スペクトル第1加算ネットワークで加算された前記補助アンテナからの対応するスペクトルコンポーネントとで差し引かれ、それにより生じるスペクトルコンポーネントの波形が最終的なIFTを受けて、出力波形z(207)が生成される、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
打ち消し方向を生成することによってメインアンテナ(201)のサイドローブを抑制するのに使用されるサイドローブ打ち消し器(SLC)(200)であって、該SLCは、補助アンテナ(202)と、適応サイドローブ打ち消し器制御ユニット(ASC)(203)とを備え、前記補助アンテナは、N個(N≧1)のアンテナ素子/サブアレイ1〜Nを有しており、それらの出力波形S〜Sを前記ASCへ供給し、更に、該SLCは、その出力端子(210)から前記ASCへのフィードバックループも備えており、
該SLCは、更に、N個の変換手段Tr〜Trを備えており、
前記ASCは、前記メインアンテナから出力波形(205)を受け取り、
前記補助アンテナのアンテナ素子からの各出力波形S〜Sは、前記変換手段Tr〜Trにも供給され、
前記出力波形(211)に遅延を与える手段が遅延線(212)で構成され、
アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)ごとに、各スペクトルコンポーネントの中心周波数fでの出力波形z(207)に対するジャマーの影響を最小にすることにより、q個(qは0からQ−1の範囲の整数インデックス)のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントqに対して重み付け関数W(ω)が計算されるように構成され、
前記変換手段(300,350,400, Tr〜Tr)は、離散の角周波数ωにおいて前記重み付け関数W(ω)から計算された一以上の制御パラメータを使用することにより各アンテナ素子/サブアレイからの波形に影響を及ぼすように構成され、
前記制御パラメータは、前記ASCにおいて連続的に計算されて、制御信号c〜cを通して前記変換手段へ供給されるように構成され、
これにより、前記変換手段からの出力波形が時間ドメイン又は周波数ドメインにおいて前記メインアンテナの遅延された出力波形(211)から減算されるように構成されたときに全帯域幅Bにわたるジャマー干渉の打ち消しを達成する、ことを特徴とするサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項12】
重み付け関数W(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)又はW(ω)=A(ω)・e−j・φ(ω)を使用するようになっている、請求項11に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項13】
前記SLCは、前記出力波形z(207)の出力残留電力を最小にすることによりジャマーの影響を最小にするように構成される、請求項11又は12に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項14】
【数4】



の計算を連続して行うように構成され、
該計算は、時間ドメインでの実現化が使用されるときには、
【数5】



として、
又は周波数ドメインでの実現化が使用されるときには、
【数6】



として、
前記制御信号c−cを連続的に計算するのに使用される、請求項11〜13の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項15】
前記波形S〜Sは、第1加算ネットワーク(206)を介して打ち消しネットワーク(CN)へ供給される、請求項11〜14の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項16】
前記変換手段(300, Tr〜Tr)は、フーリエ変換(FT)ユニット(302)を備え、
前記FTユニットは、各変換手段への入力波形Sin(t)(301)をQ個のスペクトルコンポーネント0〜(Q−1)(310〜317)へ分割し、
各スペクトルコンポーネントは、中心周波数fを有し、
周波数依存パラメータ、時間遅延τn,q又は位相シフトφn,q及び減衰/増幅αn,qが、時間遅延又は位相シフト及び減衰/増幅手段を介して各スペクトルコンポーネントに影響を及ぼすように構成され、
全てのスペクトルコンポーネントは、逆フーリエ変換(IFT)ユニット(303)に接続され、
該逆フーリエ変換ユニットは、全てのスペクトルコンポーネントを時間ドメインへと戻すように変換すると共に、各変換手段から出力波形Sour(t)(304)を発生するように構成される、
請求項11〜15の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項17】
前記変換手段(400)は、入力波形Sin(m・T)(401)を受け取るように構成され、
前記入力波形は、1からQ−1まで番号付けされたQ−1個の時間ステップT(403)で次々に時間遅延され、そして入力波形Sin(m・T)の時間遅延されたコピーとなるように構成され、
アンテナ素子nに対して重み付け係数wn,0からwn,Q−1を含むQ個のパラメータであって、アンテナ素子番号を表す第1のインデックスと、スペクトルコンポーネントを表す0〜Q−1の範囲の連続数qである第2のインデックスとの二つのインデックスで特定されるQ個のパラメータが、q個のコンポーネントに帯域幅Bを分割することで得られるQ個のスペクトルコンポーネントqに対してW(ω)=A(ω)・e−j・ω・τ(ω)の逆フーリエ変換として計算されるように構成され、該計算は、各アンテナ素子又はサブアレイ(A〜A)に対して、各スペクトルコンポーネントの中心周波数fにおいて出力波形z(207)に対するジャマーの影響を最小にすることで実行されるように構成され、
前記入力波形Sin(m・T)が第1の重み付け係数wn,0と乗算されるように構成され、前記入力波形の各時間遅延されたコピーは、入力波形の時間遅延されたコピーに含まれた時間ステップ遅延Tの数と同じ第2のインデックスを有する重み付け係数で次々に乗算されるように構成され、各乗算の結果は、出力波形(407)、Sout(m・T)へと加算されるように構成される、
請求項11〜15の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項18】
一連の重み付け係数wn,0からwn,Q−1における最初のx重み付け係数及び最後のy重み付け係数がゼロにセットされるように構成され、最初のx時間遅延Tが、x・Tに等しい時間遅延D402へ統合されるように構成されると共に、最後のy乗算が除外されて、必要な演算の数をQ未満個の演算へと減少させる、請求項17に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項19】
前記変換手段は、第3制御要素(350)を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。
【請求項20】
前記補助アンテナのアンテナ素子からの各スペクトルコンポーネントに対して一つづつのQ個の単一スペクトル第1加算ネットワークと、Q個の単一スペクトル打ち消しネットワークとを備え、該打ち消しネットワークでは、前記メインアンテナの遅延された出力波形の各スペクトルコンポーネントが、各単一スペクトル第1加算ネットワークで加算された前記補助アンテナからの対応するスペクトルコンポーネントとで差し引かれるように構成され、それにより生じるスペクトルコンポーネントの波形が最終的なIFTを受けて、出力波形z(207)が発生される、請求項11〜14の何れか一項に記載のサイドローブ打ち消し器(SLC)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186465(P2009−186465A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−8944(P2009−8944)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(500387249)サーブ アクティエボラーグ (8)
【Fターム(参考)】