説明

サイン用基材及びサイン用基材の製造方法

【課題】 固定部付近の破れを防ぎ、不燃性を有するサイン用基材を提供する。
【解決手段】本開示のサイン用基材は、不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材と、該第1の基材の周縁に配置され、熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材とを含み、第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせた部分が第1の基材の周縁の一部または全部に沿って接合されている。
本開示のサイン用基材の製造方法は、不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材の周縁を囲む様に、熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材を配置する工程、第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせる工程、前記重ね合わせた部分の一部または全部をウェルダー溶着する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の基材と該第1の基材の周縁に配置された第2の基材とを含むサイン用基材、及びそのサイン用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標識、看板、バナー等のサインが屋外、屋内問わず様々な用途で用いられている。これらのサインはパネル枠に固定され、その枠に沿ってテンションをかけられて用いられることもある。これらのサインは背面から光を照射することにより、その表面に記載された図柄が認識される形で用いられることもある。
【0003】
サインの大型化に伴い、幾つかのサイン用基材をつなげて一つの大きなサイン用基材を作製することが為されている。これらのサイン用基材をつなげる方法は例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
サイン用基材は火災時における延焼を防ぐために不燃性が必要とされる場合がある。不燃性基材としては、例えば不燃性無機繊維からなる基布に塩化ビニル系樹脂を主成分とする被覆層を設けた不燃性膜材が特許文献2に、ガラス繊維布帛の一方の面に、軟質フッ素樹脂に酸化チタンを配合した不燃性フィルムを積層した積層体が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6322657号明細書
【特許文献2】特開2003−73973号公報
【特許文献3】特開2004−269635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建築基準法に定められる防火地域等、防火性能が求められる分野においては、サイン用基材は火災時における延焼を防ぐために不燃材料が用いられる。しかし、不燃性サイン用基材をパネル枠に固定する場合、固定部付近でサイン用基材が破れてしまうという問題があった。特に、強風下の屋外で用いられる場合やサイン用基材の大型化等、固定部にかかる力が大きい場合にはこの問題が顕著に現れていた。本開示は固定部付近の破れを防ぎつつ、不燃性を有するサイン用基材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施態様によれば、不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材と、該第1の基材の周縁に配置され、熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材とを含み、前記第1の基材の周縁部と前記第2の基材の端部とを重ね合わせた部分が前記第1の基材の周縁の一部または全部に沿って接合されているサイン用基材を提供する。
【0008】
本開示の別の実施態様によれば、不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材の周縁を囲む様に、熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材を配置する工程、前記第1の基材の周縁部と前記第2の基材の端部とを重ね合わせる工程、前記重ね合わせた部分の一部または全部をウェルダー溶着する工程を含むサイン用基材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定部付近の破れを防ぎつつ、不燃性を有するサイン用基材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施態様による、サイン用基材を示す模式図である。
【図2】本開示の別の実施態様による、サイン用基材を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0012】
本発明の一形態であるサイン用基材は、不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材を含む。不燃性無機材料繊維としては、例えばガラス繊維、シリカ繊維、またはこれらの組み合わせを用いることができる。これらの無機材料繊維は、ナイロン繊維やポリエステル繊維等の合成繊維や、木綿、麻等の天然繊維に比べて充分な不燃性をより確実に実現することができる。不燃性無機材料繊維は、一般的な織機を用いて織布に織られる。
【0013】
上記織布の厚さは一般に約100μm以上、約500μm以下である。
【0014】
不燃性無機材料繊維を含む織布の少なくとも一方の面に塩化ビニル系樹脂層を積層することもできる。塩化ビニル系樹脂層の厚さは一般に約30μm以上、約300μm以下である。塩化ビニル系樹脂層を積層することにより、第2の基材と接合した際に十分な接合強度を得ることができ、またマーキングフィルムのような装飾用のフィルムとの接着力を上げることができるため、様々な装飾を施すことが可能である。
【0015】
第1の基材は、ISO5660Part1に準ずるコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験で、加熱開始後の最大発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。建築基準法で規定される看板等の防火措置として当条件が求められているからである。
【0016】
第2の基材の熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、アクリル、ポリビニルアルコール、レーヨン、アセテート、及びこれらの変性体から選ばれた1種類以上を含む繊維を用いることができる。本発明者らによって、熱可塑性樹脂繊維を用いた織布は、ガラス繊維、シリカ繊維等を使用した織布に比べて引裂強さが十分に強く、一般的なサイン用基材用の固定部に用いられても固定部からの引き裂きが生じないことが確認されている。なお、熱可塑性樹脂繊維は、一般的な織機を用いて織布に織られる。
【0017】
上記織布の厚さは一般に約100μm以上、約700μm以下である。
【0018】
熱可塑性樹脂繊維を含む織布の少なくとも一方の面に塩化ビニル系樹脂層を積層することもできる。塩化ビニル系樹脂層の厚さは一般に約30μm以上、約400μm以下である。塩化ビニル系樹脂層を積層することにより、第1の基材と接合した際に十分な接合強度を得ることができ、また、柔軟で高い耐候性を付与することができる。
【0019】
第2の基材の引裂強さは、引っ張り試験機を用いJIS L1096−2010 8.17.3Cに記載されるトラペゾイド法により測定された値が100N/25mm以上であることが望ましい。
【0020】
本発明の一形態では、図1に示す様に第2の基材21、22、23、24が第1の基材10の周縁に配置され、第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせた部分31、32、33、34が周縁の一部または全部に沿って接合されている。第1の基材と第2の基材との接合強度を高めるためには、周縁の全部に沿って接合されることが好ましいが、接合強度が十分であれば、図1の41〜44に示す様に一部を接合してもよい。
【0021】
第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせた部分の幅50は一般的に約10〜40mmである。この幅が狭すぎると十分な接合強度を得ることができず、幅が広すぎると重なりの影が色濃く出てしまうという問題点が発生する。
【0022】
第2の基材の幅60は一般的に約100〜500mmである。この幅が狭すぎると固定部への固定が十分でなくサイン用基材の脱落等を引き起こす。
【0023】
第1の基材と第2の基材との接合方法としては、ウェルダー溶着を用いることもできる。ウェルダー溶着とは、高周波等を用いることで2つの基材の接合部分を加熱し2つの基材を接合する方法である。
【0024】
ウェルダー溶着を用いた場合、基材に均一な加熱がなされ強固な接合が可能である。さらに、別に用意したシームテープの様な接合用のシートを用いて基材同士をウェルダー溶着することもできる。
【0025】
他の接合方法としては、例えば、縫合、接着剤や粘着剤による基材同士の接着等が挙げられる。
【0026】
第2の基材20は、図2に示す様に枠状の一枚の基材で用いることもできる。
【0027】
第1の基材は、サインのデザイン性や配置される場所によって、四角形、六角形等の多角形や楕円等、様々な形状をとることができる。
【実施例】
【0028】
実施例1
第1の基材として、ガラス繊維からなる織布の表面、裏面にそれぞれ塩化ビニル樹脂フィルムをラミネートした基材(住友スリーエム社製パナグラフィックス(商標)750NF)を準備した。第1の基材の総厚は約310μmであった。第1の基材は縦2m、横2mのサイズに切断した。
【0029】
第2の基材として、ポリエステル繊維からなる織布の表面、裏面にそれぞれ塩化ビニル樹脂フィルムをラミネートした基材(スリーエム社製パナフレックス(商標)945)を準備した。第2の基材の総厚は約550μmであった。
【0030】
第2の基材は幅0.20mのサイズに切断した後、図1に示す様に上記第1の基材の周縁を囲む様に配置した。第2の基材の端部が表面に来るように第1の基材の周縁に第2の基材を重ね合わせた。重ね合わせた幅は約20mmであった。重ね合わせた部分を第1の基材の周縁に沿って幅約20mmでウェルダー溶着し、実施例1のサイン用基材を得た。
【0031】
比較例1
ガラス繊維からなる織布を用いた基材(住友スリーエム社製パナグラフィックス(商標)750NF)を縦2.4m、横2.4mのサイズに切断し、比較例1のサイン用基材を準備した。
【0032】
比較例2
ポリエステル繊維からなる織布を用いた基材(住友スリーエム社製パナグラフィックス(商標)945)を縦2.4m、横2.4mのサイズに切断し、比較例2のサイン用基材を準備した。
【0033】
サイン用基材中心部の燃焼性試験:各サイン用基材の中心部を99mm×99mmに切り出し、このサンプルを使用してISO5660Part1に準拠するコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験を行った。加熱開始後の最大発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であれば合格、この条件を満たさない場合は不合格とした。その結果を表1に示す。
【0034】
サイン用基材固定部分の引裂強さ:固定部分の引き裂き強度を測定するため、各サイン用基材の固定部分を75mm×約150mmに切り出し、このサンプルを使用して引っ張り試験機(エー・アンド・デイ社製 テンシロンRTFシリーズ)を用いJIS L1096−2010 8.17.3Cに記載されるトラペゾイド法により測定を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
サイン用基材の引裂強さ:金属でできた板を各サイン用基材の固定部分で巻き込み、クランプと呼ばれる固定具にて固定した後、そのクランプに取り付けたフックを用いて、サイン用基材を支えるのに十分な強度を持つ鉄骨で構成される2m×2mの看板枠体に引っ掛けた状態にし、その後サイン用基材の縦横それぞれの辺に対して約1%引き伸ばされるように均一に張力をかけた。その結果、実施例1及び比較例2は固定部分より破れることはなかったが、比較例1は固定部分より引き裂きが発生した。
【0036】
【表1】

【符号の説明】
【0037】
10 第1の基材
20、21、22、23、24 第2の基材
31、32、33、34 第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせた部分
41、42、43、44 接合
100、200 サイン用基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材と、該第1の基材の周縁に配置され熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材とを含むサイン用基材であって、
前記第1の基材の周縁部と前記第2の基材の端部とを重ね合わせた部分が前記第1の基材の周縁の一部または全部に沿って接合されているサイン用基材。
【請求項2】
前記第1の基材の周縁部と第2の基材の端部とを重ね合わせた部分の一部または全部がウェルダー溶着されている、請求項1に記載のサイン用基材。
【請求項3】
前記不燃性無機材料繊維がガラス繊維及び/又はシリカ繊維で、前記不燃性無機材料繊維を含む織布の少なくとも一方の面に塩化ビニル系樹脂層が積層され、前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、アクリル、ポリビニルアルコール、レーヨン、アセテート、及びこれらの変性体から選ばれた1種類以上を含む繊維で、前記熱可塑性樹脂繊維を含む織布の少なくとも一方の面に塩化ビニル系樹脂層が積層された、請求項1または2に記載のサイン用基材。
【請求項4】
前記第1の基材が、ISO5660Part1に準ずるコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験で、加熱開始後の最大発熱速度が、10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載のサイン用基材。
【請求項5】
不燃性無機材料繊維を含む織布からなる第1の基材の周縁を囲む様に、熱可塑性樹脂繊維を含む織布からなる第2の基材を配置する工程、
前記第1の基材の周縁部と前記第2の基材の端部とを重ね合わせる工程、
前記重ね合わせた部分の一部または全部をウェルダー溶着する工程
を含むサイン用基材の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76189(P2013−76189A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217222(P2011−217222)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】