説明

サクシニル化アテロコラーゲン配合化粧料組成物

【課題】皮膚柔軟性を向上させる効果に優れたコラーゲンを用いた化粧料を提供する。
【解決手段】(1)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合した化粧料組成物。(2)サクシニル化アテロコラーゲンを0.0001〜2質量%含有する(1)記載の化粧料組成物。(3)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合した皮膚柔軟化化粧料。(4)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。特に、皮膚柔軟性向上化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、動物の結合組織の主要な蛋白質の一種で、動物の皮膚に多く存在する。ヒトの全タンパク質の30%はコラーゲンであると言われている。コラーゲンは3本の分子鎖からなる三重螺旋構造を有し、両端にテロペプタイドが結合している。このテロペプタイドは溶解性の妨げとなり、また、抗原性を有するので、除去することが望ましい。このテロペプタイドをプロテアーゼ処理により除去する方法が一般的に知られており、テロペプタイドを除去したコラーゲンはアテロコラーゲンと呼ばれている。アテロコラーゲンの溶解性をさらに高めるために、アシル化する技術が知られている(特許文献1:特開2003−128698号公報)。コラーゲンをアルキルオキシアルキレングリコール誘導体でエステル化して溶解性を向上させる技術が知られている(特許文献2:特許3742133号公報)。コラーゲンの三重螺旋構造に着目し、温和な条件で螺旋構造をほぐして、分子鎖を切断することなく、単独の分子鎖とすることにより溶解性を向上させる技術が知られている(特許文献3:特開2000−128759号公報)。しかしながら、いずれにおいてもコラーゲンの三重螺旋構造が有する機能についての検討はなされていない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−128698号公報
【特許文献2】特許3742133号公報
【特許文献3】特開2000−128759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮膚柔軟性を向上させる効果に優れたコラーゲンを用いた化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合したことを特徴とする化粧料組成物。
(2)サクシニル化アテロコラーゲンを0.0001〜2質量%含む請求項1記載の化粧料組成物。
(3)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合したことを特徴とする皮膚柔軟化化粧料。
(4)15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲン。
【発明の効果】
【0006】
本発明の三重螺旋構造を維持したサクシニル化アテロコラーゲンは化粧料に配合することにより、皮膚の柔軟性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いるコラーゲンは三重螺旋構造を維持したサクシニル化アテロコラーゲンである。
【0008】
コラーゲンは動物の皮膚、例えば、牛皮、豚皮、魚皮から抽出することができる。抽出方法としては例えば、まず、魚皮から不純タンパク質、血液、色素、脂質等をナイフ等の刃物を用いたり、水流により除き、次いで塩溶液、塩基性溶液で洗浄し、さらに有機溶剤で洗浄して不純物を取り除く。得られた魚皮をpH3に調整した酸溶液に分散し、酸性プロテアーゼによるプロテアーゼ処理をすることによりアテロコラーゲンが得られる。より具体的には、0.01〜2mol/Lの希酢酸溶液、0.001〜2mol/Lの希乳酸溶液、0.001〜2mol/Lの希クエン酸溶液、0.001〜0.2mol/Lの希塩酸溶液、0.001〜0.5mol/Lの希リン酸溶液等の酸溶液に不純物を取り除いた魚皮を加え、さらに、酸性プロテアーゼを加え、3〜5℃の低温で12〜48時間攪拌することにより、三重螺旋構造を維持したアテロコラーゲンを抽出することができる。不溶解物は濾過法、遠心分離法により除去することが望ましい。酸性プロテアーゼはコラーゲン溶液を塩基を用いてpH10〜12に調整し、3〜5℃の低温で12〜48時間攪拌することにより失活させることができる。
【0009】
アテロコラーゲンのサクシニル化は得られたアテロコラーゲン溶液に無水コハク酸を加え、pHを9〜12に維持するようにアルカリを添加しながら、2〜5℃の低温で反応させる。
サクシニル化アテロコラーゲンは塩析法、有機溶媒沈殿法、等電点沈殿法等の定法により精製することができる。
【0010】
本発明の三重螺旋構造を維持したサクシニル化アテロコラーゲンは15℃における比旋光度が約−420°〜−310°であり、加温攪拌して完全に三重螺旋構造をほぐしたサクシニル化アテロコラーゲンの15℃における比旋光度は約−100°である。
本発明の三重螺旋構造を維持したサクシニル化アテロコラーゲンは化粧料に配合することにより、皮膚の柔軟性を向上させる優れた効果を有する。
本発明のサクシニル化アテロコラーゲンの化粧料への配合量は0.0001〜2質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が特に好ましい。0.0001質量%未満では皮膚の柔軟性向上効果が発揮されず、2質量%を超えて配合するとべたつきが強く好ましくない。
【0011】
本発明のサクシニル化アテロコラーゲンを配合した化粧料には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることができる。
【0012】
本発明の化粧料は、例えば水溶液、乳液、けんだく液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤の形態で適用可能である。また、粉末、固形状の製剤として、使用時に水あるいは水溶液に溶解して皮膚に外用するものであっても良い。従来から公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤等の種々の剤型とすることができる。化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状又はクリーム状のファンデーション等のメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料等とすることができる。
【実施例1】
【0013】
以下すべての製造工程は温度を3℃〜5℃内の範囲を外れないようにコントロールして行った。
魚皮精製沈殿30gを0.03mol/Lの濃度のクエン酸水溶液3000mLに加え、1時間撹拌した後、ペプシン0.9gを加えさらに24時間攪拌抽出した。その後、温度が上昇しないように注意しながら1N水酸化ナトリウムを加えてpH10に調整し、24時間攪拌しペプシンを失活させた。得られたアテロコラーゲン溶液に無水コハク酸30mmolを加え、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを9〜12に調整しながら反応させた。反応終了後、溶液のpHを塩酸を用いてpH4.5に調整して、サクシニル化アテロコラーゲンを沈殿させ、濾過法及び遠心分離法(10000G,20分)により回収した後、4℃に冷やした50%エタノールを用いて洗浄した。1.0質量%の濃度となるように、4%の1,2−ペンタンジオールを含有する0.05mol/Lのリン酸緩衝溶液(pH6.0)に溶解し、サクシニル化アテロコラーゲン溶液を得た。
【0014】
得られたサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%水溶液(4%の1,2−ペンタンジオール含有)の15℃における比旋光度は−420°であった。比旋光度はAUTOPOL V(RUDOLPH RESEARCH ANALYSYS社)を用いて測定した。
【実施例2】
【0015】
実施例1の製法で得られたサクシニル化アテロコラーゲンを4℃で20日間保管した。このサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%水溶液(4%の1,2−ペンタンジオール含有)の15℃における比旋光度は、−377°であった。
【実施例3】
【0016】
実施例1の製法で得られたサクシニル化アテロコラーゲンを4℃で60日間保管した。このサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%水溶液(4%の1,2−ペンタンジオール含有)の15℃における比旋光度は、−328°であった。
【実施例4】
【0017】
実施例1の製法で得られたサクシニル化アテロコラーゲンを4℃で2年間保管した。このサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%水溶液(4%の1,2−ペンタンジオール含有)の15℃における比旋光度は、−312°であった。
【0018】
[比較例1]
実施例1のサクシニル化アテロコラーゲンを40℃にて3時間攪拌して三重螺旋構造を変性させた。このサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%水溶液(4%の1,2−ペンタンジオール含有)の15℃℃における比旋光度は−126°であった。
【0019】
〔試験例1〕
実施例2,3および比較例1のサクシニル化アテロコラーゲンの1質量%を上腕内側部に1日1回、4cmの範囲に20μL塗布し、塗布前と塗布3日後の柔軟性を比較した。
柔軟性はCourage+Khazaka社のCutoMeterを用いて測定した。各被験者の頬の肌を吸引し、皮膚の伸び(柔軟性)を測定した。
【0020】
何も塗布しないときの3日後の皮膚の伸びの変化を100%としたときに、比較例1のサクシニル化アテロコラーゲンを塗布した場合には、無塗布と同様に100%であったが、実施例3のサクシニル化アテロコラーゲンを塗布した場合には、無塗布と比べて120%、実施例2のサクシニル化アテロコラーゲンを塗布した場合には、無塗布と比べて140%に柔軟性が向上した。
本発明の三重螺旋構造を維持したサクシニル化アテロコラーゲンは柔軟性を向上させる効果が極めて高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合したことを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
サクシニル化アテロコラーゲンを0.0001〜2質量%含む請求項1記載の化粧料組成物。
【請求項3】
15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲンを配合したことを特徴とする皮膚柔軟化化粧料。
【請求項4】
15℃における比旋光度が−420°〜−310°である三重螺旋構造を維持するサクシニル化アテロコラーゲン。

【公開番号】特開2008−239509(P2008−239509A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78852(P2007−78852)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【出願人】(000240950)片倉チッカリン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】