説明

サケ科魚類のアルファウイルスのcDNA構築物

本発明は、適切なプロモーターの制御下にある、スペーサー配列の後ろに続くサケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAのcDNAを含んだ組換えDNAに関するものである。これら組換えDNAは、発現ベクターを得るため、サケ科魚類の組換えアルファウイルスを産生するため、そしてワクチンを得るために利用可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サケ科魚類のアルファウイルスの感染性cDNAの取得法と、これらのcDNAの利用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルファウイルスは、トガウイルス科のプラス鎖RNAのエンベロープを有するウイルスである。
【0003】
現状では、代表的な二つのサケ科魚類のアルファウイルスが知られている。すなわち、マスの病原である睡眠病ウイルス(SMV)と、サケの病原である膵臓病のウイルス(PMV)である。これら二つのウイルスは、遺伝学的に非常に近似したものであり、既知のアルファウイルスのゲノムとの構成の類似性に基づき、アルファウイルスのファミリーに関係づけられている。しかし、該ウイルスの推定されているヌクレオチド配列ならびにポリペプチド配列は、その他のアルファウイルスとは弱い相同性の程度しか有していない(VILLOING et al., J.Virol.74,173−183,2000;WESTON et al., Virology,256,188−195,1999;WESTON et al., J.Virol 76,6155−63,2002)。したがって、該ウイルスは、哺乳動物のアルファウイルスとは異なるアルファウイルスのサブグループに相当するものであると考えられている。
【0004】
アルファウイルスのゲノムは2つのポリタンパク質をコードしている。コード配列の5’部分は、該配列のおよそ三分の二に相当するものであり、タンパク質分解切断の後にウイルスの複製に関与する非構造タンパク質(nsp)nsP1、nsP2、nsP3およびnsP4を生じさせるポリタンパク質をコードしている。ゲノムの三分の一の末端は、タンパク質分解切断によって構造タンパク質(Struct)、すなわちカプシドタンパク質(C)と2つのエンベロープ糖タンパク質(E3−E2および6K−E1)が生じるポリタンパク質をコードしている。nsPとStructをコードしている領域は、結合領域(J)と呼ばれる非コード領域によって隔てられている。また、二つの非コード領域がゲノムの5’末端と3’末端にも存在している。さらに、このゲノムは5’末端にキャップを、3’末端にはポリAテールを有している(STRAUSS et STRAUSS,Microbiol.Rev., 58,491−562,1994)。
【0005】
サケ科魚類のアルファウイルスでは、このゲノム構成は保存されている。その他のアルファウイルスのゲノムとの主要な差異は、コード配列の弱い相同性の他にも、5’非コード領域および3’非コード領域のサイズがあり、該領域はサケ科魚類のアルファウイルスではより短くなっている。
【0006】
SMVおよびPMVによって引き起こされる病変は現在、サケ養殖で高まってきている問題である。これらのウイルスは今日、ヨーロッパの風土病となっており、北アメリカ大陸でも出現している。
【0007】
これらのウイルス性因子に対するサケ科魚類の保護方法は、ワクチンの利用にある。ワクチン投与は、ワクチン投与すべき魚の種および年齢に応じて、さまざまな様式で実施することができる。たとえば、ワクチン投与は浸漬によって行うことができる。このワクチン投与の手段は、非常に効果的かつコストの低いものであり、弱毒化生ウイルスによるワクチン投与に対する優れた方法である。また、ワクチン投与は弱毒化生ウイルスあるいは不活性ウイルスの注射によって実施することもできる。浸漬によるワクチン投与よりコストはかかるが、この方法は10グラム以上の魚のワクチン投与に利用可能であり、したがって、とりわけサケや海マスのような種のワクチン投与に適している。有利には、弱毒化生ウイルスの存在下での浸漬による初回接種と、弱毒化生ウイルスあるいは不活性ウイルスの注射による再接種を組み合わせてもよい。
【0008】
RNAウイルスのゲノムの操作、とりわけ弱毒化した株を生成するための操作には、感染性cDNAのシステム、つまり、これらのウイルスのゲノムRNAの完全なDNAのコピー(およそ12000個の塩基)であって、宿主細胞内で転写されることで、この細胞内で複製することのできるウイルスRNAを生成することができるコピーを利用することが必要となる。
【0009】
従来的には、アルファウイルスの感染性cDNAを産生するために、プロモーター配列SP6またはT7に5’末端で融合した完全なウイルスゲノムのcDNAをプラスミド内でクローニングする。このプラスミド構築物は制限酵素によって3’末端で切断され、RNAポリメラーゼSP6またはT7によってゲノムRNAを合成するために、インビトロの転写系で用いられる。このRNAは対象となるウイルスに感受性のある細胞にトランスフェクトされる。数日後、新しく形成されたウイルスが培養上清において塩折される。こうして、多くのアルファウイルス、たとえばSV(シンドビスウイルス、RICE et al., J.Virol,61,3809−3819,1987)、SFV(セムリキ森林ウイルス、LILJESTROM et al., J.Virol,65,4107−4113,1991)、VEEウイルス(ベネズエラウマ脳炎、DAVIS et al., Virology,171,189−204,1989),EEEウイルス(東部ウマ脳炎;SCHOEPP et al., Virology,302,299−309,2002)についての感染性cDNAが得られた。
【非特許文献1】VILLOING et al., J.Virol.74,173−183,2000;WESTON et al., Virology,256,188−195,1999
【非特許文献2】STRAUSS et STRAUSS,Microbiol.Rev., 58,491−562,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、サケ科魚類のアルファウイルスの場合、このアプローチを用いた感染性cDNAを生成するために行われた試みは失敗している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、スペーサーの役割を果たすランダムな追加の配列をプロモーターSP6またはT7とウイルスゲノムの起点との間に導入することで、この問題が解決できることを発見した。この配列の付加によって、魚の細胞におけるトランスフェクションによって非構造タンパク質の合成を可能にするゲノムRNAをインビトロで生成することが可能となる。
【0012】
感染性RNAを生成するために、本発明者らは、スペーサーの役割を果たすランダム配列を、ハンマーヘッド型リボザイムの配列で置換した。本発明者らは、この構築物から新しく合成されたRNAが、アルファウイルスのゲノムRNAの最初のヌクレオチドのところで厳密に切断されることを見出した。こうして得られたRNAは、タンパク質nsPを合成する能力、複製される能力、構造タンパク質をコードするサブゲノムRNAの合成を可能にする能力、そして、感染性の新たなウイルス粒子を生成するためにパッケージングされる能力を有している。
【0013】
さらに、本発明者らは、SMVのサブゲノムプロモーターの制御下で非相同性配列を導入するためにこの構築物を用いた。本発明者らは、この配列がこの構築物によって感染した細胞内で発現することと、この配列を含んだウイルスゲノムが通常、ウイルス粒子にパッケージングできることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムに由来する組換えDNAを対象とするものであり、該DNAは、
−転写プロモーター、
そして該プロモーターの下流に、かつ該プロモーターの転写制御下に、
−少なくとも5個のヌクレオチド、好ましくは10〜100個のヌクレオチドからなるスペーサー配列と、
−サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAのcDNA、
を含んでいる。
【0015】
転写プロモーターは、宿主細胞内で発現するRNAポリメラーゼによって認識される、どのようなプロモーターであってもよい。たとえば、プロモーターT7、プロモーターT3またはプロモーターSP6のようなバクテリオファージプロモーターとすることができ、この場合、本発明にしたがった組換えDNAは、このプロモーターを認識するRNAポリメラーゼを発現する構築物と組み合わせて用いる必要がある。
【0016】
また、宿主細胞の内因性のRNAポリメラーゼ、特にRNAポリメラーゼIIによって認識されるプロモーターを使うこともできる。それは、ウイルスプロモーター、たとえば、CMVプロモーター(サイトメガロウイルス)、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、SV40初期プロモーター、MoMLVプロモーター(モロニーマウス白血病ウイルス)などのような、哺乳動物の細胞内で非相同性遺伝子を発現させるために一般的に用いられているものの一つとすることができる。また、真核生物のプロモーター、たとえば、ALONSO et al.(Vaccine,21,1591−1600,2003)に記載されているような魚のプロモーターとすることもできる。
【0017】
スペーサー配列の機能は、プロモーターをアルファウイルスのゲノムの起点から遠ざけることである。したがって、スペーサー配列の配列は本発明の実施に対して重要ではない。該配列の長さに関し、本発明者らは、6個のヌクレオチドによる配列によって十分な間隔がもたらされることを見出した。一般的には、およそ10個〜100個のヌクレオチドからなるより長い配列、好ましくは50個〜100個のヌクレオチドからなる配列を用いることが好まれる。
【0018】
非常に有利には、ゲノムRNAの5’末端へのハンマーヘッド型リボザイムの導入を可能にするスペーサー配列が用いられることになる。
【0019】
ハンマーヘッド型リボザイムは(一般的にはおよそ40個〜80個のヌクレオチドからなる)小さなリボザイムであり、該リボザイムは、サイズと配列は異なることがある、触媒活性に不可欠な保存された中心の核によって連結されている3つのらせんで形成された二次構造を共通して有している。(RUFFNER et al., Biochemistry,29,10695−10702,1990)。
【0020】
ハンマーヘッド型リボザイムを、サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAの5’末端に導入することを可能にする配列は、
5’ XCTGANGARXX’YGAAAXX’TH 3’(I)、
という一般式(I)によって定義することができ、
該式において、A、T、GおよびCは通常の意味を有し、Hは、C、TまたはAを表し、YはAまたはGを表し、RはCまたはTを表し、NはA、T、GまたはCを表し、Xは、前記アルファウイルスのゲノムの5’末端の配列に相補的な配列の、少なくとも3個のヌクレオチド、好ましくは6個〜10個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Xは、任意の配列の、少なくとも3個のヌクレオチド、好ましくは3個〜5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Bは、任意の配列の、4個または5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、X’はXに相補的なオリゴヌクレオチドを表し、Xは、任意の配列の、少なくとも2個のヌクレオチド、好ましくは6個〜10個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Bは、任意の配列の、4個または5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、そしてX’は、Xに相補的なオリゴヌクレオチドを表している。
【0021】
バクテリオファージプロモーターを用いた場合にアルファウイルスのRNAの正しい終止を保証するために、本発明にしたがった組換えDNAはさらに、従来通りに、用いられるプロモーターに対応する転写ターミネーターを含む。宿主細胞の内因性のRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーターを用いる場合には、ウイルスゲノムの3’末端に融合されたポリAテールが用いられる。
【0022】
本発明にしたがった組換えDNAは、選択されたサケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAを逆転写することで得られたcDNAから容易に構築することができる。必要なら、本発明にしたがった組換えDNAについて計画されている利用法に応じて、このcDNAにさまざまな修飾を行うことができる。たとえば、一つまたは複数の制限部位の導入、ウイルスゲノムの一部の削除、とりわけ、該ウイルスの複製に必要ではない部分の削除(たとえば、構造タンパク質をコードする領域の全部または一部)、ウイルス配列の重複、非相同性配列の導入などである。また、これらのアルファウイルスの特性、たとえば該アルファウイルスの感染力、病原性または抗原性に対する効果をテストするための変異であってもよい。
【0023】
ここで用いる「サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAのcDNA」または「サケ科魚類のアルファウイルスのcDNA」という表現は、前記アルファウイルスのゲノムRNAを逆転写することで得られたcDNAだけでなく、上記のように修飾されたcDNAも含むものとして解釈すべきものである。
【0024】
このように、本発明は、さまざまな用途を目的として、サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムの操作を実施することと、こうして得られたサケ科魚類のアルファウイルスを大量かつ複製可能な様式で産生することを可能にする。
【0025】
とりわけ、本発明は、サケ科魚類のアルファウイルスから、他のアルファウイルスからすでに構築されている発現ベクター(たとえばFROLOV et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,11371−11377,1996参照)に類似した構造の発現ベクターを構築することを可能にする。これらの発現ベクターは二つの主要なタイプとすることができ、該二つの主要なタイプとは、
−複製する能力と、自身に導入される非相同性配列を発現させる能力、そして、新しいウイルス粒子を産生するためにパッケージングされる能力をもったベクターであり、一般的には、サブゲノムプロモーターのコピーの制御下に置かれた有益な非相同性配列をアルファウイルスの完全なゲノムに導入することで該アルファウイルスの完全なゲノムから得られるベクターと、
−複製する能力と、自身に導入される非相同性配列を発現する能力は持っているが、新しいウイルス粒子を産生する能力は持たないベクターであり、一般的には、構造タンパク質をコードするアルファウイルスのゲノム領域を、有益な非相同性配列で置換することによって得られるものであり、たとえば、これらのタンパク質を発現する補助のベクターを宿主細胞に導入することにより、または、宿主細胞として、これらのタンパク質を発現する発現カセットによって安定的に形質転換された細胞株を利用することにより、構造タンパク質が宿主細胞内にトランスで存在するときにだけ、ウイルスのパッケージングが行われるベクターである。
【0026】
本発明にしたがった組換えDNAは、サケ科魚類のアルファウイルスのサブゲノムプロモーターの制御下で、有益な非相同性配列を発現させるために用いることができる。この場合、サケ科魚類のアルファウイルスのcDNAインサートは、一つまたは複数の発現カセットを含んでおり、該発現カセットのそれぞれは、前記サブゲノムプロモーターのコピーと、前記サブゲノムプロモーターの下流かつ該プロモータの転写制御下に、発現させようとする非相同性配列またはこの配列の導入を可能にするクローニング部位を含んでいる。
【0027】
アルファウイルスのサブゲノムプロモーターは、nsPの複合体によって認識され、サケ科魚類のアルファウイルスにおける構造タンパク質をコードする遺伝子の転写を制御するものであって、このプロモーターは、nsp4をコードする配列の終端と結合領域を含んだゲノム領域内に位置している(SMVの場合、このプロモーターは、nsp4をコードする配列の最後の124個のヌクレオチドと結合領域を含む、ゲノムのヌクレオチド7686〜7846に対応する領域内に位置している)。
【0028】
非相同性配列は、有益なタンパク質をコードする配列、あるいは、たとえばアンチセンスRNAまたは干渉RNAのような、RNAに転写された有益な配列とすることができる。
【0029】
また、本発明はサケ科魚類のアルファウイルスのRNAを得るための方法も対象としており、該方法は、本発明にしたがった構築物を適切な宿主細胞に導入することと、前記宿主細胞を培養することを含むことを特徴としている。
【0030】
本発明の枠組みにおいて利用可能な宿主細胞は、好ましくは魚の細胞である。非限定的な例として、BF−2細胞(ATCC CCL−91)、CHSE214細胞(ATCC CCL55)またはRTG−2細胞(ATCC CRL−1681)が挙げられる。必要であれば、これらの細胞は、本発明にしたがった組換えDNA構築物に用いられたプロモーターを認識するRNAポリメラーゼを発現する構築物によって、一過性でまたは安定的に形質転換される。
【0031】
また、本発明はサケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコンを得るための方法も対象としており、該方法は、適切な宿主細胞に、スペーサー配列が一般式(I)で定義されるハンマーヘッド型リボザイムの配列である、本発明にしたがった組換えDNAを導入することと、前記宿主細胞を培養することを含むことを特徴としている。
【0032】
ここでは、「RNAレプリコン」を、宿主細胞において自己複製する能力をもったRNA分子として定義する。
【0033】
組換えアルファウイルスの産生のためには、パッケージングに必要となる全構造タンパク質も宿主細胞の中で発現することが必要となる。この発現は、シス(これらのタンパク質の発現に必要な全遺伝情報はアルファウイルスのRNAレプリコンに保持されている)またはトランス(アルファウイルスのRNAレプリコンはこれらのタンパク質の発現に必要な全遺伝情報は保持しておらず、欠けている遺伝情報は宿主細胞によって与えられる)で行うことができる。
【0034】
本発明にしたがった組換えDNAがパッケージングに必要な全遺伝情報を含んでいれば、産生されたRNAレプリコンは宿主細胞にパッケージングされてサケ科魚類の組換えアルファウイルスを産生することができ、該組換えアルファウイルスは、他の細胞に浸透し、ゲノムを複製し、そして自ら宿主細胞内にパッケージングされる能力をもっている。このようなウイルスはここでは「感染性ウイルス」として定義する。
【0035】
本発明にしたがった組換えDNAがパッケージングに必要な全遺伝情報を含んでいなければ(とりわけ、該DNAから構造タンパク質をコードする領域の全部または一部が欠けていれば)、産生されたRNAレプリコンは、宿主細胞が欠陥のあるパッケージング機能を補完することを可能にする遺伝情報をトランスで提供しない限り(たとえば該宿主細胞が、欠けている構造タンパク質を発現する構築物によって一過性でまたは安定的に形質転換されていれば)、該宿主細胞内でパッケージングされることはない。後者の場合、サケ科魚類の組換えアルファウイルスはこの宿主細胞の中で産生されることができる。該アルファウイルスは他の細胞に浸透し、そこでゲノムを複製する能力を持っているが、初期の宿主細胞のように、該他の細胞が欠陥のあるパッケージング機能をトランスで補完できるときにだけ、該細胞内でパッケージングすることができる。このようなウイルスはここでは「不稔感染性ウイルス」として定義される。
【0036】
また、本発明は、サケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコンおよびサケ科魚類の組換えアルファウイルスと並んで、感染性または不稔感染性の、上述したように本発明にしたがった組換えDNAから得ることのできる、転写産物を対象としたものである。
【0037】
本発明は、より特徴的には、RNAレプリコンと、上述したようにアルファウイルスのcDNAに一つまたは複数の修飾が導入された、本発明にしたがった組換えDNAから得ることのできるサケ科魚類の組換えアルファウイルスを対象に含んでいる。
【0038】
発現した、本発明にしたがった組換えDNA、RNAレプリコンおよびサケ科魚類の組換えアルファウイルスは、ワクチンを得るため、たとえば、弱毒化した、または不活性化したサケ科魚類のアルファウイルスのワクチン株を得るために用いることができる。
【0039】
また、本発明は、本発明にしたがった組換えDNA、RNAレプリコン、もしくはサケ科魚類の組換アルファウイルスを含むか、またはこれらから得ることのできる、ワクチンも対象とするものである。これらのワクチンはとりわけ、アルファウイルス感染からサケ科魚類を保護するために利用することができる。
【0040】
本発明は、SMVから本発明にしたがった組換えDNA、RNAレプリコンおよび組換えウイルスを得る方法を例示している、以下の非制限的な実施例を対象とする補助的な説明によってより良く理解されるものである。
【0041】
実施例
ウイルスおよび細胞
以下の実施例で用いたウイルスは、前述したSMVのS49P株に由来するものである(CASTRIC et al., Bulletin of the European Association of Fish Pathologists,17,27−30,1997)。
【0042】
これらのウイルスは、Tris−HClでpH7.4に緩衝し、10%ウシ胎児血清を補充したイーグル最少必須培地(EMEM、Sigma、フランス)において10℃で培養した、BF−2細胞の単層培養で増殖させた。トランスフェクションの際に最良の収量を得るために、用いたBF−2細胞は、効果的にトランスフェクトされる適性に基づいて選択したサブクローニングに由来するものである。
【0043】
この選択は以下のように行った。
【0044】
BF−2細胞は、96ウェルプレートにおいて、ウェル毎に一つの細胞の割合で培養した。一ヶ月後、こうして得られた24個のクローンをランダムに選択し、2つの12ウェルプレートで増幅した。これらのクローンのそれぞれは、plasmide−test(pcDNA3−G)によってトランスフェクトしたが、該plasmide−testは、VHSVウイルス(ウイルス性出血性敗血症ウイルス)の糖タンパク質Gをコードする配列を、pcDNA3ベクター(InVitrogen)の、CMVプロモーターとT7プロモーターの下流に導入することによって得られたものである。トランスフェクションの効率は、糖タンパク質Gに対する抗体を用いて、免疫蛍光法によって、CMVプロモーターの制御下における糖タンパク質Gの発現レベルを評価することで判定した。
【0045】
蛍光がもっとも強かった11個のクローンを選択し、増幅した。これらのクローンのそれぞれを、pcDNA3−Gによってトランスフェクトされる能力について改めて上述のようにテストしたが、今回は、vTF7−3(FUERST et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,8122−8126,1986)による事前の感染の後に、T7プロモーターの制御下における糖タンパク質Gの発現レベルを評価することにより行った。最後に、効果的にトランスフェクトされる適性と関連づけられる、vTF7−3によって感染される能力について、5個のクローンを選択した。
【0046】
増幅プライマー
以下の実施例で用いたプライマーの配列は以下の表1に示している。
【0047】
【表1】

【実施例1】
【0048】
SMVの完全なゲノムのクローニング
SMVのcDNAの完全な構築物であるpBS−SMVはcDNA断片(1〜3として番号を付けた)から得られたものであり、該断片は、SMVの完全なゲノムをカバーし、先行して公開された配列(VILLOING et al.,2000;先掲したWESTON et al.,2002,GENBANKのアクセス番号:NC_003433.1/GI:19352423)から得られたものである。各断片を、SMVのゲノムRNAを鋳型として用いて、逆転写とそれに続くPCR(RT−PCR)によって増幅した。RNAは、PEGで濃縮された、感染したSMV細胞の上清から、精製キットQIAamp Viral RNA(Qiagen)を用いて抽出した。逆転写およびPCR増幅に用いたプライマー(P1〜P6)は表1に示されている。
【0049】
得られたcDNA断片は互いにライゲートし、制限部位EcoRI、SmaI、XbaIおよびNotIを用いて、プラスミドpBlueScriptのマルチクローニング部位に組み込んだ。得られたプラスミドは図1に示されている。
【0050】
図1に示したように、クローニングの後の過程を容易にするために、制限部位XbaIを人工的に導入した。pBS−SMV構築物のシーケンシングによって、公開された配列と比較して42個の変異が明らかになった。これらの変異は以下の表2にリストアップされ、図1に示したpBS−SMV構築物について文字(a〜x)によって示されている。
【0051】
該変異のうち、8個の偶発的な変異は以下のように修正した。すなわち、変異を含むcDNAゲノムの領域に対応するSMVのゲノムRNAのさまざまな部分をRT−PCRで再増幅した。各PCR産物をシーケンシングし、そして配列が正しければ、適切な制限部位と標準的な技術を用いてpBS−SMV構築物における相同な位置に導入した(SAMBROOK et al.,Molecular cloning:a laboratory manual,2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press.Cold Spring Harbor,N.Y., 1989)。制限部位XbaIを除いて、最終的なpBS−SMV構築物は、SMVのゲノムRNAの正確なcDNAのコピーを含んでいる。
【0052】
【表2】

【実施例2】
【0053】
魚の細胞におけるSMVの非構造タンパク質と、GFPおよびルシフェラーゼを発現するSMVのレプリコンとの合成を可能にするゲノムRNA構築物。SMVのcDNAインサートを、pBS−SMVから、ベクターpcDNA3の、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーターとRNAポリメラーゼT7のプロモーターの下流にある、制限部位EcoRIとNotIの間に移入した。その結果得られる構築物はpSDVと名付けた。
【0054】
構造タンパク質をコードするcDNAの領域をXbaIで消化することで取り除いたのだが、該XbaIの一方の部位は結合領域に位置し、他方はcDNAの下流にある、pcDNA3のマルチクローニング部位に位置している。図2Aに示されているプラスミドp−nsPを発生させるために、構築物をセルフライゲートした。
【0055】
続いてプラスミドp−nsPをXbaIによって線状化することで、非構造タンパク質をコードする領域の下流に、GFPまたはルシフェラーゼ(LUC)をコードしている配列を導入したのだが、該配列は、結合領域の終端の後に続き、そして、ポリ(A)テールと融合した、SMVの3’非翻訳末端の前にある。結合領域の人工XbaI部位は、SanDI/BlpI断片を入れ替えることで取り除いた。GFPのリーディングフレームまたはルシフェラーゼのリーディングフレームは二つの固有の制限部位、すなわちEcoRV部位とBlpI部位に挟まれている。p−nsP−GFPおよびp−nsP−LUCと名付けられたこれらの最終的な構築物において、CMV/T7プロモーターのセットは、SMVのゲノムの5’末端から、pcDNA3のマルチクローニング部位に属する61個のヌクレオチドによって隔てられている。これらの構築物は図2Bに示されている。
【0056】
GFPレポーター遺伝子およびLUCレポーター遺伝子の発現を目的としたこれらの構築物の機能を評価するために、該構築物のそれぞれを用いてBF−2細胞をトランスフェクトし、該細胞を培養プレートのウェル(6×10細胞/ウェル)において10℃でインキュベートし、ルシフェラーゼ活性およびGFP活性を毎日測定した。
【0057】
ルシフェラーゼ活性を測定するために、トランスフェクトした細胞を測定前に回収し、PBSで洗浄し、そして、75μlの1×溶解緩衝液(25mMのTris−リン酸(pH7.8)、2mMのDTT、2mMの1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、10%のグリセロール、1%のトリトンX−100)で溶解した。溶解物を低速の遠心分離によって清澄化し、タンパク質をブラッドフォード法によって定量することで、サンプルを標準化した。
【0058】
50μlの反応性ルシフェラーゼ(Promega)を清澄化した溶解物のアリコートに加えた。
【0059】
GFPの場合、トランスフェクトした細胞における発現の直後に、紫外線顕微鏡で観察を行った。
【0060】
非構造タンパク質の発現は、トランスフェクションの翌日からすぐ、免疫蛍光法によって検出された。逆に、トランスフェクション後のいつであっても、ルシフェラーゼ活性もGFPの蛍光も検出されなかった。
【0061】
結果は以下の表3に示している。
【0062】
【表3】

【0063】
これらの結果は、ウイルスRNAは転写されるが、レポーター遺伝子であるGFPまたはルシフェラーゼの発現が観察されず、GFPおよびルシフェラーゼがSMVの26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれていることを示している。
【0064】
これによって、5’末端がSMVゲノムの5’末端とは厳密には同一ではないことから、ウイルスの複製された複合体が機能性ではないと考えることができる。
【0065】
スペーサーとしてのリボザイムの利用
ハンマーヘッド型リボザイムの配列(HH配列)をSMVのゲノムcDNAの5’末端の最初のヌクレオチドに、以下の要領で融合させた。SMVのcDNAの最初の2Kbを含んでいるp−nsPのHindIII断片を削除し、プラスミドpUC19の中でサブクローニングし、pUC−SDV HindIII構築物を得た。この構築物から、SMVのゲノムの5’末端を含んだBamHI/NaeI断片を削除し、合成DNA断片で置換した。該合成DNAは、SMVゲノムの5’末端に融合しているハンマーヘッド型リボザイムの配列を含んだ、79個および80個からなるヌクレオチドの、部分的に相補的な二つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズし、T4DNAポリメラーゼのクレノウ断片で平滑化することによって得られたものである。これらのオリゴヌクレオチドの配列(5’RIBOおよび3’RIBO)は表1に示されている。
【0066】
ハンマーヘッド型リボザイムの配列は図3Aに示しており、BamHI部位、NaeI部位およびT7プロモーターに下線を引いている。リボザイムの切断部位とSMVゲノムの起点は矢印で指示している。
【0067】
適切な制限酵素による消化の後、合成DNA断片を、プラスミドpUC−SDV HindIIIに導入し、pUC−HH−SDV HindIII構築物を得た。修飾したHindIII断片をこの構築物から回収し、プラスミドp−nsPに再導入し、pHH−nsP構築物を得た。
【0068】
続いて、得られたpHH−nsP構築物をXbaIによって線状化し、p−nsPの場合と同様に修飾した。つまり、非構造タンパク質をコードする領域の下流に、BlpI部位およびEcoRV部位に挟まれ、結合領域の終端に後続し、ポリ(A)テールと融合したSMVの3’非翻訳末端の前にある、GFPまたはルシフェラーゼ(LUC)をコードする配列を導入することと、人工XbaI部位を修正することである。最終的な構築物はpHH−nsP−GFPおよびpHH−nsP−LUCと名付けた。これらの構築物の取得過程は図3Bに示している。
【0069】
これらの構築物の機能性は、p−nsP−GFP構築物およびp−nsP−LUC構築物の機能性と同様に評価した。
【0070】
結果は図4に示している。
【0071】
有意なルシフェラーゼ活性がトランスフェクションの2日後に検出され、トランスフェクションの9日後まで増加した(図4A)。GFPの発現はトランスフェクションの4日後に明らかとなり、ルシフェラーゼの場合と同様に9日目に最適となった(図4B)。
【0072】
これらの結果は、ベクターpHH−nsP−LUCまたはpHH−nsP−GFPによって発現したSMVのレプリカーゼ複合体(nsP1、nsP2、nsP3およびnsP4)が生物学的に活性であり、レポーター遺伝子を含んだサブゲノムRNAを複製し、転写する能力を持っていることを示している。また、これらのデータは、SMVゲノムの5’末端での切断が、ハンマーヘッド型リボザイムによって効果的に行われたことも示している。
【実施例3】
【0073】
SMVの感染性組換えcDNA構築物
SMVの感染性cDNAクローンを以下の要領で構築した。
【0074】
SMVの構造タンパク質をコードしている領域を、pHH−nsP−LUCのBlpI部位とEcoRV部位の間に導入し、ルシフェラーゼをコードしている配列を置換することで、pHH−SDV構築物を得た。
【0075】
さらに、この構築物をT7ターミネーター(T7t)の導入によって修飾した。ベクターpHH−SDVを制限酵素NotIによる消化によって線状化し、T7ターミネーターを含むベクターpET−14b(Novagen)のBlpI/NheI断片と平滑末端でライゲートした(ライゲーションの前に、二つの断片の端部をT4DNAポリメラーゼのクレノウ断片で平滑化した)。得られた構築物はpHH−SDV−T7tと名付けた。この構築物の取得過程は図5に概略的に示している。
【0076】
この構築物を、RNAポリメラーゼT7を発現する組換えワクシニアウイルスvTF7−3に感染したBF−2細胞をトランスフェクトするために(先掲のFUERST et al., 1986)用いた。BF−2細胞(およそ1.2×10細胞/ウェル)を12ウェルプレートで培養し、vTF7−3で感染させた(感染多重度=5)。37℃での1時間の吸着の後、細胞を2回洗浄し、製造者(Invitrogen)の指示にしたがって反応性のLipofectamine2000を用いて、1.6μgのpSDVでトランスフェクトした。細胞を37℃で7時間インキュベートし、MEM培地で洗浄した後、10℃で移入し、7日間または10日間、この温度でインキュベートした。いくつかの実験においては、トランスフェクションは同一の手順に従って行ったが、vTF7−3による事前の細胞の感染は行わなかった。
【0077】
トランスフェクションの7日後および10日後、細胞を20℃で15分間、1/1のアルコール/アセトンの混合物で固定し、PBS−Tweenで1/1000に希釈した、SMVの構造または非構造タンパク質に対するモノクローナル抗体の組み合わせとインキュベートした。室温で45分のインキュベートの後、細胞を洗浄し、マウスの抗免疫グロブリン抗体(Biosys、フランス)とインキュベートした。洗浄後、細胞を紫外線照射のもと顕微鏡で検査した。
【0078】
同時に、上清を回収し、マイクロ遠心チューブ内で10000×gでの遠心分離によって清澄化し、新鮮なBF−2細胞を感染させるために用い、10℃で24ウェルプレートにおいて単層培養した。こうして感染した細胞を上述した免疫蛍光法によって分析した。
【0079】
トランスフェクションの7日後に観察された結果は図6Aに示されている。いくつかの小さなスポットが現れ、そのサイズはトランスフェクションの10日後でより大きくなっているのだが、このことは、組換えSMVによる細胞から細胞への感染を反映している可能性がある。
【0080】
組換えSMVは、野生型ウイルスには存在しない制限部位BlpIを有している。感染した細胞によって産生されたウイルスが組換えSMVであることを確認するため、最初の処理の後、組換えSMVによって感染した細胞からRNAを抽出し、該RNAを、BlpI部位に挟まれたプライマーNsP4−FおよびCapRを用いてRT−PCRを実行するための鋳型として用いた。これらのプライマーの位置は図6Cに示している。RT−PCRも同一のプライマーを用いて、野生型ウイルスで感染させた細胞から抽出したRNAをもとに実施した。
【0081】
増幅産物をBlpIによって消化し、それらの制限の特徴を比較した。結果は図6Bに示している。BlpIの不在のもとでは(−BlpI)、野生型ウイルスと同様に、組換えSMVの場合、1326個のヌクレオチドからなる断片が観察された。BlpIによる消化の後(+BlpI)、この断片は野生型ウイルスの場合には無傷のまま残り、組換えSMVの場合には990個のヌクレオチドからなる断片および336個のヌクレオチドからなる断片が生じた。
【実施例4】
【0082】
組換えSMVによるインビボでの感染
組換えSMVの感染力を確認するため、50匹の若い健康なニジマス(Oncorhynchus mykiss)を、感染したBF−2細胞から得た5×10UFP/mlの野生型SMVまたは組換えSMVを含む10℃の水で満たした水槽に2時間にわたって浸漬することで感染させた。次に、水槽を30リットルの新鮮な水で満たした。対照として用いた魚は、ウイルス懸濁液の代わりに培養培地を用いて、同じ条件で処理した。
【0083】
感染の3週間後に数匹の魚を殺し、各魚の臓器のホモジェネートを用いてBF−2細胞を感染させた。免疫蛍光法によるこれらの細胞の分析は、上記実施例3で説明したように、野生型SMVまたは組換えSMVに感染した魚の臓器のホモジェネートにより感染した細胞におけるウイルスの存在を示している(結果は示していない)。
【0084】
殺したすべての魚はSMVについて陽性であり、組換えSMVと同様に野生型SMVについても、ウイルス力価はおよそ10UFP/mlであった。
【実施例5】
【0085】
非相同性遺伝子を発現する感染性組換えSMV構築物
GFPを発現する感染性の組換えウイルスを産生するため、感染性のcDNAであるpHH−SDV−T7tを二つの異なる様式で修飾することで、GFPを発現する追加の発現カセットを導入した。
【0086】
1)感染性cDNAであるpHH−SDV−GFPfirst構築物
pHH−nsP−GFP構築物を、別個の二つのPCR増幅産物を生成するための鋳型として用いた。産物「GFP PCR」は5’GFPプライマーおよび3’GFPプライマーを用いることで得られ(表1)、産物「SMVサブゲノムPCR」は5’nsP4プライマー(7706〜7750)および3’Junプライマーを用いて得られた(表1)。SMVのサブゲノムプロモーターの正確な位置と最小のサイズはまだ判定されていないため、nsP4の配列の終端と結合領域とを含む約100個のヌクレオチドからなる断片を用いた。次に、SMVのサブゲノムプロモーターを、第一の増幅に起因する二つの産物を混合し、5’GFPプライマーと3’Junプライマーを用いることで、GFPをコードする配列の3’末端においてPCRによってライゲートした。
【0087】
得られた増幅産物(GFP−SDVPro)をBlpIによって消化し、事前にBlpIによって消化したpHH−SDV−T7t構築物に導入して、感染性cDNAであるpHH−SDV−GFPfirstを得た。
【0088】
2)感染性cDNAであるpHH−SDV−GFPsecond構築物
この構築物において、GFPの発現カセットを構造遺伝子の下流に導入した。
【0089】
二つのPCR増幅産物が生じたのだが、該産物とは、
−5’ProGFPおよび3’ProGFPをプライマーとして用い(表1)、pHH−nsP−GFP構築物を鋳型として用いることで、GFPと融合したSMVのサブゲノムプロモーター(産物PCR1)と、
−3’UTRおよびT7tをプライマーとして用い(表1)、pHHSDV−T7t構築物を鋳型として用いることで、ポリ(A)テールとT7ターミネーターと融合したSMVの3’非翻訳領域(産物PCR2)である。
【0090】
産物PCR1およびPCR2は、5’ProGFPプライマーとT7tプライマーを用いてPCRによって組み合わせた。PCR増幅産物は、EcoRVとNotlによって消化され、そして同一の酵素によって消化されたpHH−SDV構築物に導入することで、感染性のcDNAであるpHH−SDV−GFPsecondを得た。
【0091】
これら二つの構造は図7Aに概略的に示している。
【0092】
これらの構築物を、vTF7によって感染したBF−2細胞をトランスフェクトするために用い、GFPの発現を毎日確認した。結果は図7Bに示している。
【0093】
二つのpHH−SDV−GFP構築物について、GFPの発現は、トランスフェクションの7日後から検出可能となっている。しかし、GFP遺伝子がゲノムにおける構造タンパク質の遺伝子の下流に位置するとき、より強いGFPの発現が観察された。
【0094】
pHH−SDV−GFPfirst構築物を得るためにpSDVにおいてGFP遺伝子をクローニングする間、3つのGFPカセットを含んでいる疑いのあるプラスミド(pHH−SDV−GFP)を選択した。
【0095】
このプラスミドは図8Aに概略的に示している。
【0096】
nsP4−FプライマーおよびGFP−Rプライマーを用いたRT−PCR(表1)によって、実際に3つのGFPカセットがプラスミドpHHSDV−GFPに存在することを確認することができた。
【0097】
このRT−PCRの結果は図8Bに示している。全体として、これら三つのGFPカセットは2.7KbのDNA断片に相当している。
【0098】
この構築物をvTF7−3で感染したBF−2細胞にトランスフェクトしたのだが、9日後における感染細胞のスポットの出現はこの構築物の機能性を確証している。
【0099】
これらの結果は、SMVが、野生型ウイルスのゲノムよりも20%以上長い非相同性の核酸を含みうることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】SMVの完全なゲノムのクローニングを示した図。
【図2A】プラスミドp−nsPの取得を示した図。
【図2B】プラスミドp−nsP−GFPおよびp−nsP−LUCの取得を示した図。
【図3A】ハンマーヘッド型リボザイムの配列を示した図。
【図3B】pHH−nsP−GFPおよびpHH−nsP−LUCの取得を示した図。
【図4A】pHH−nsP−GFPおよびpHH−nsP−LUCの機能性の評価の結果を示したグラフ。
【図4B】pHH−nsP−GFPおよびpHH−nsP−LUCの機能性の評価の結果を示した写真。
【図5】プラスミドpHH−SDV−T7tの取得を示した図。
【図6A】細胞の感染の結果を示した写真。
【図6B】増幅産物の制限部位を示した写真。
【図6C】プライマーNsP4−FおよびCapRの位置を示した図。
【図7A】pHH−SDV−GFP firstおよびpHH−SDV−GFPsecondの構造を示した図。
【図7B】pHH−SDV−GFP firstおよびpHH−SDV−GFPsecondのGFPの発現を示した写真。
【図8A】pHH−SDV−GFPを示した図。
【図8B】RT−PCRの結果を示した写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムに由来する組換えDNAであり、
−転写プロモーター、
そして該プロモーターの下流に、かつ該プロモーターの転写制御下に、
−少なくとも5個のヌクレオチドからなるスペーサー配列と、
−サケ科魚類のアルファウイルスのゲノムRNAのcDNA、
を含んでいる、組換えDNA。
【請求項2】
スペーサー配列が、
5’ XCTGANGARXX’YGAAAXX’TH 3’ (I)、
という一般式(I)によって定義され、
該式において、A、T、GおよびCは通常の意味を有し、Hは、C、TまたはAを表し、YはAまたはGを表し、RはCまたはTを表し、NはA、T、GまたはCを表し、Xは、前記アルファウイルスのゲノムの5’末端の配列に相補的な配列の、少なくとも3個のヌクレオチド、好ましくは6個〜10個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Xは、任意の配列の、少なくとも3個のヌクレオチド、好ましくは3個〜5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Bは、任意の配列の、4個または5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、X’はXに相補的なオリゴヌクレオチドを表し、Xは、任意の配列の、少なくとも2個のヌクレオチド、好ましくは6個〜10個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、Bは、任意の配列の、4個または5個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表し、そしてX’は、Xに相補的なオリゴヌクレオチドを表していることを特徴とする、請求項1に記載の組換えDNA。
【請求項3】
サケ科魚類のアルファウイルスのcDNAインサートが一つまたは複数の発現カセットを含んでおり、該発現カセットのそれぞれが、前記サブゲノムプロモーターのコピーと、前記サブゲノムプロモーターの下流かつ該プロモーターの転写制御下に、発現させようとする非相同性配列またはこの配列の導入を可能にするクローニング部位を含んでいることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の組換えDNA。
【請求項4】
サケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコンの調製方法であり、宿主細胞に、請求項2または請求項3に記載の組換えDNAを導入することと、前記宿主細胞を培養することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法によって得ることのできるサケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコン。
【請求項6】
サケ科魚類の組換えアルファウイルスの調製方法であり、請求項2または請求項3に記載の組換えDNAまたは請求項5に記載のRNAレプリコンを、自身のパッケージングに不可欠な前記アルファウイルスの構造タンパク質の全てが発現する宿主細胞に導入することと、前記宿主細胞を培養することを含む方法。
【請求項7】
前記構造タンパク質の発現を可能にする全遺伝情報が前記組換えDNAまたは前記RNAレプリコンに保持されていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記構造タンパク質の発現を可能にする遺伝情報の全部または一部が宿主細胞によってトランスで提供されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか一つに記載の方法によって得ることのできる、サケ科魚類の組換えアルファウイルス。
【請求項10】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の組換えDNA、請求項5に記載のサケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコン、または、請求項9に記載のサケ科魚類の組換えアルファウイルスの、ワクチンを得るための利用方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の組換えDNAを含むワクチン。
【請求項12】
請求項5に記載のサケ科魚類のアルファウイルスのRNAレプリコンを含むワクチン。
【請求項13】
請求項9に記載のサケ科魚類の組換えアルファウイルスを含むワクチン。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2008−546399(P2008−546399A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517535(P2008−517535)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001405
【国際公開番号】WO2006/136704
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507417628)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (4)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【Fターム(参考)】