説明

サスペンションフレームの周辺構造

【課題】車体への荷重及び振動を効率的に受け止め可能かつ車体剛性を向上可能なサスペンションフレームの周辺構造を提供する。
【解決手段】車幅方向左右一対のサイドフレーム2と、サイドフレーム2の下方のロアアーム3と、一対のサイドフレーム2間のサスペンションフレームとを備え、サスペンションフレームが、中央連結体9と、中央連結体9の車幅方向両端から車幅方向外側に延びる前側アーム10及び後側アーム11と、前側アーム10及び後側アーム11の車幅方向外側端から車幅方向外側にそれぞれ延びる前側懸架体12及び後側懸架体14とを含み、中央連結体9と前側懸架体12と後側懸架体14とが略等しい高さに位置し、後側懸架体14にて上方に突出する後側懸架軸がロアアーム3の貫通孔に挿通され、後側懸架軸の上端部がサイドフレーム2に取付けられる、サスペンションフレームの周辺構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向左右一対のサイドフレーム間に配置されるサスペンションフレームの周辺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、車体骨格を構成する部品として一対のサイドフレームが車幅方向に互いに間隔を空けて設けられている。一対のサイドフレームそれぞれの周辺には、サスペンション機構を構成する部品としてロアアームが設けられており、車両走行時には、ロアアームを経由して車輪から車体に荷重及び振動が入力されることとなる。このような荷重及び振動としては、例えば、車両の旋回時における車幅方向の荷重及び振動、車両の制動時及び加速時における車両前後方向の荷重及び振動、路面の凹凸に起因する上下方向の荷重及び振動、これらの荷重及び振動の合成成分による荷重及び振動等が挙げられる。また、車体に車両前後方向又は車幅方向から荷重が直接的に加えられる場合もある。このような荷重及び振動は、車両の走行安定性を低減させ、かつ車室内に振動及び騒音を発生させる要因となる。このような問題に対応すべく、荷重及び振動を受けるとともに車体の剛性を高めるために、一対のサイドフレーム間及び一対のロアアーム間にはサスペンションフレームが懸架されている。
【0003】
サスペンションフレームを有する構造の一例として、特許文献1では、車幅方向左右一対のフロントサイドフレーム(フロントサイドメンバ)の下方に車両前後方向に延びる支持部材(サイドメンバ部)が配置され、支持部材の前端部及び後端部にそれぞれ設けられたロアアーム取付部にサスペンションロアアームが取付けられ、一対の支持部材間には、車幅方向に沿って直線状に延びるサスペンションフレーム(ラックハウジング)が懸架されており、サスペンションフレームの車幅方向の両端部は、支持部材の車両前後方向の中間部に取付けられている。また、支持部材の前側のロアアーム取付部と支持部材のサスペンションフレーム取付部との間に、車両上下方向に沿って前側車体取付部が設けられ、さらに、支持部材の後側のロアアーム取付部から車幅方向外側に突出する後側車体取付部が設けられており、支持部材は前側車体取付部及び後側車体取付部によってフロントサイドフレームに取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−191945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、サスペンションフレームが車幅方向に沿って直線状に延びているに過ぎず、サスペンションフレームによって車両前後方向の荷重及び振動を受け止めることが難く、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性をサスペンションフレームによって効率的に高めることができていない。
【0006】
特許文献1の構造におけるサスペンションフレームとフロントサイドフレームとの関係については、サスペンションフレームの両端部は支持部材の中間部に取付けられ、支持部材の前方側では、支持部材の中間部の前方に配置された前側車体取付部がフロントサイドフレームに取付けられ、支持部材の後方側では、支持部材の後側のロアアーム取付部に設けられた後側車体取付部がフロントサイドフレームに取付けられている。この構造では、サスペンションフレームが車幅方向の荷重及び振動を受ける場合、サスペンションフレームの両端部に対して前方側及び後方側にそれぞれ位置する前側車体取付部及び後側車体取付部には、上下方向に延びる軸線を中心として回転するモーメントが加えられることとなる。また、サスペンションフレームが上下方向の荷重及び振動を受ける場合、前側車体取付部及び後側車体取付部には、車幅方向に延びる軸線を中心として回転するモーメントが加えられることとなる。しかしながら、特許文献1の構造では、このようなモーメントを十分に受け止めることができない。よって、特許文献1の構造では、車幅方向の荷重及び振動を受け止めることが難く、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性をサスペンションフレームによって効率的に高めることができていない。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車体に加えられる荷重及び振動を効率的に受け止め、かつ車体の剛性を高めて、車両の走行安定性を高めて、かつ車室内の振動及び騒音を低減できるサスペンションフレームの周辺構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造は、車体の骨格を構成し、車両前後方向に沿って配置され、かつ互いに車幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドフレームと、サスペンション機構を構成し、かつ前記サイドフレームの下方に配置されるロアアームと、前記一対のサイドフレーム間に配置されるサスペンションフレームとを備え、前記サスペンションフレームが、車両の車幅方向中央に位置する中央連結体と、四角形状の閉断面を有し、かつ前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる前側アームと、四角形状の閉断面を有し、かつ前記前側アームの後方で前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる後側アームと、前記前側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる前側懸架体と、前記後側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる後側懸架体とを含み、前記前側懸架体及び前記後側懸架体が前記サイドフレーム及び前記ロアアームに取付けられている、サスペンションフレームの周辺構造において、前記中央連結体と前記前側懸架体と前記後側懸架体とが略等しい高さに位置し、前記後側懸架体には上方に突出する後側懸架軸が設けられ、前記ロアアームには上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記後側懸架軸が前記ロアアームの貫通孔に挿通された状態で、前記後側懸架軸の上端部が前記サイドフレームに取付けられている。
【0009】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記後側懸架体の後端部から後方に延びる補強取付体が設けられ、前記補強取付体が前記サイドフレームに取付けられており、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを直線で結んだ場合に、前記直線に対して直交し、かつ前記後側懸架軸の中心を通る直交線を基準として、前記補強取付体における前記サイドフレームとの取付中心が、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心の反対側に配置されている。
【0010】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを結ぶ線分が、平面視で、前記中央連結体、前記前側アーム、及び前記後側アームの内部に位置している。
【0011】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記前側アームが車両の車幅方向中央で後方に突出するように湾曲して形成されており、前記後側アームが車両の車幅方向中央で前方に突出するように湾曲して形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造は、車体の骨格を構成し、車両前後方向に沿って配置され、かつ互いに車幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドフレームと、サスペンション機構を構成し、かつ前記サイドフレームの下方に配置されるロアアームと、前記一対のサイドフレーム間に配置されるサスペンションフレームとを備え、前記サスペンションフレームが、車両の車幅方向中央に位置する中央連結体と、四角形状の閉断面を有し、かつ前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる前側アームと、四角形状の閉断面を有し、かつ前記前側アームの後方で前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる後側アームと、前記前側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる前側懸架体と、前記後側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる後側懸架体とを含み、前記前側懸架体及び前記後側懸架体が前記サイドフレーム及び前記ロアアームに取付けられている、サスペンションフレームの周辺構造において、前記中央連結体と前記前側懸架体と前記後側懸架体とが略等しい高さに位置し、前記後側懸架体には上方に突出する後側懸架軸が設けられ、前記ロアアームには上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記後側懸架軸が前記ロアアームの貫通孔に挿通された状態で、前記後側懸架軸の上端部が前記サイドフレームに取付けられている。そのため、サスペンションフレームの中央連結体と前側懸架体と後側懸架体とが略等しい高さに位置しているので、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム全体によって効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。例えば、前側アーム及び後側アームの上面及び下面が、車両の走行路面に対して平行に配置された場合、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム全体によってさらに効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性をさらに高めることができる。また、後側懸架体の後側懸架軸がロアアームの貫通孔に挿通された状態で、後側懸架軸の上端部がサイドフレームに取付けられていることによって、サスペンションフレームに加えられた車幅方向の荷重及び振動がロアアームとサイドフレームと分散されて効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。その結果、車両の走行安定性を高めて、かつ車室内の振動及び騒音を低減できる。
【0013】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記後側懸架体の後端部から後方に延びる補強取付体が設けられ、前記補強取付体が前記サイドフレームに取付けられており、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを直線で結んだ場合に、前記直線に対して直交し、かつ前記後側懸架軸の中心を通る直交線を基準として、前記補強取付体における前記サイドフレームとの取付中心が、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心の反対側に配置されている。ここで、上述のように後側懸架体の後側懸架軸がロアアームの貫通孔に挿通された状態で後側懸架軸の上端部がサイドフレームに取付けられていることによって、後側懸架体とサイドフレームとの間には高低差が生じている。そのため、上述の直線に沿って伝わる車幅方向の荷重及び振動によって、サスペンションフレームの後側懸架軸には、その上端部を通るとともに上述の直交線に平行な軸線を中心として回転するモーメントが作用する。このようなモーメントが、補強取付体におけるサイドフレームとの取付中心によって受け止められる。よって、サスペンションフレームに加えられた車幅方向の荷重及び振動が効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0014】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを結ぶ線分が、平面視で、前記中央連結体、前記前側アーム、及び前記後側アームの内部に位置しているので、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム全体によって効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るサスペンションフレームの周辺構造では、前記前側アームが車両の車幅方向中央で後方に突出するように湾曲して形成されており、前記後側アームが車両の車幅方向中央で前方に突出するように湾曲して形成されているので、前側懸架体と後側懸架体とが車両前後方向に離れて配置されることとなる。そのため、車両前後方向の荷重及び振動と車幅方向の荷重及び振動とが、前側懸架体と後側懸架体とに分散されて効率的に受け止められて、車両前後方向の荷重及び振動と車幅方向の荷重及び振動とに対する車体の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの周辺構造を有する車体前部を示す概略底面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームを示す概略底面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームを車両前方側斜め上方から見た概略斜視図である。
【図4】図1のA部を、サスペンションフレームの前側懸架体を仮想線で表し、かつ一部断面視した状態で示す拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの車体への取付部周辺を、ロアアームを仮想線で表した状態で車両進行方向右側斜め下方から見た概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの後側懸架体の後側懸架軸周辺を断面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るサスペンションフレームの周辺構造について、以下に説明する。なお、本実施形態については、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式の車両の車体前部を用いて説明する。
【0018】
図1を参照すると、車体前部1には、車体骨格を構成する一対のサイドフレーム2が設けられており、一対のサイドフレーム2は、車両前後方向に沿って、かつ互いに車幅方向に間隔を空けて配置されている。車体前部1には、サスペンション機構を構成する一対のロアアーム3が設けられており、ロアアーム3は、サイドフレーム2の下方に配置されている。また、一対のサイドフレーム2間には、サスペンションフレーム4が配置されている。特に図示はしないが、サスペンションフレーム4の前方側には、エンジン、トランスミッション等の駆動機構が配置されており、駆動機構の車幅方向両側にサイドフレーム2が配置されている。再び図1を参照すると、車体前部1には、細長形状のトルクロッド5が設けられており、トルクロッド5は、前後方向に沿って配置され、かつサスペンションフレーム4と駆動機構(図示せず)とを連結している。車体前部1には、車体パネルを構成するサイドシル6が設けられており、サイドシル6は、サイドフレーム2の車幅方向外側に配置されている。また、サイドフレーム2とサイドシル6とを連結するサイドシルエクステンション(以下、「エクステンション」という)7が設けられている。
【0019】
ここで、サイドフレーム2の詳細を説明する。図1及び図5を参照すると、サイドフレーム2は、前後方向に延びる前部2a及び後部2bと、前部2a及び後部2bの間で延びる中間部2cとを有している。中間部2cは、上方に向かって湾曲して形成されており、前部2aは後部2bより上方に位置している。
【0020】
ロアアーム3の詳細を説明する。ロアアーム3はサイドフレーム2の中間部2cを前後方向で跨ぐように配置されている。ロアアーム3は、平面視で、略L字形状に形成されている。ロアアーム3は車幅方向に延びる車軸取付部3aを有し、車軸取付部3aの車幅方向外側端に車軸(図示せず)が取付けられるように構成されている。図4を参照すると、ロアアーム3は、車軸取付部3aと前後方向の同位置で車幅方向中央側に突出する前側取付部3bを有している。前側取付部3bは、前後方向に延びる筒状に形成されており、前後方向に延びる貫通孔3b1を有している。再び図1及び図5を参照すると、ロアアーム3は、後方に突出する後側取付部3cを有している。この後側取付部3cには、上下方向に貫通する貫通孔3c1が形成されている。図6を参照すると、この貫通孔3c1には弾性体8が挿通されており、特に図示はしないが、弾性体8はリング形状に形成されている。
【0021】
サスペンションフレーム4の詳細を説明する。図2及び図3を参照すると、サスペンションフレーム4には、車両の車幅方向中央に位置する中央連結体9が設けられている。また、中央連結体9の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる前側アーム10が設けられており、当該前側アーム10の後方側で中央連結体9の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる後側アーム11が設けられている。前側アーム10の車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる前側懸架体12が設けられており、サイドフレーム2と前側懸架体12とを懸架する懸架アーム13が設けられている。後側アーム11の車幅方向外側部から車幅方向外側に向かって延びる後側懸架体14が設けられており、この後側懸架体14の後端部から後方に延びる補強取付体15が設けられている。前側懸架体12と後側懸架体14とを連結する外側ブレース16が設けられており、外側ブレース16に対して車幅方向中央側には、前側アーム10と後側アーム11とを連結する内側ブレース17が設けられている。
【0022】
サスペンションフレーム4の中央連結体9、前側アーム10、及び後側アーム11について、さらに説明する。上述したトルクロッド5の後端部5bは、中央連結体9に取付けられている。また、前側アーム10及び後側アーム11はパイプ材料によって作製されており、前側アーム10及び後側アーム11は四角形状の横断面を有している。これらの前側アーム10及び後側アーム11の上面及び下面は、車両が走行する路面(図示せず)に対して平行に配置されている。前側アーム10は、平面視で、後方に向かって湾曲する円弧形状に形成されており、前側アーム10の円弧形状は、中央連結体9を先端とするように突出している。トルクロッド5と前後方向で反対側に位置する後側アーム11は、平面視で、前方に向かって湾曲する円弧形状に形成されており、後側アーム11の円弧形状は、中央連結体9を先端とするように突出している。トルクロッド5の軸線5aは、中央連結体9におけるトルクロッド5の取付部と車幅方向の同位置で延びる後側アーム11の円弧形状の接線5bと略直交している。このような前側アーム10及び後側アーム11は、中央連結体9の車幅方向両端部で前後方向に重なって配置されている。前側アーム10及び後側アーム11の上下方向中心は同一の平面上に配置されている。なお、トルクロッド5の軸線5aは、当該平面に対して平行に配置されるか、又は当該平面を跨ぐように配置されているとよい。
【0023】
サスペンションフレーム4の前側懸架体12、懸架アーム13、後側懸架体14、及び補強取付体15について、さらに説明する。前側懸架体12及び後側懸架体14は中央連結体9と略等しい高さに配置されている。前側懸架体12は、後方側で開口する略コ字形状の横断面を有している。このような前側懸架体12は、上下方向に延びる前端壁12aと、前端壁12aの上端から後方側に延びる上側壁12bと、前端壁12aの下端から後方側に延びる下側壁12cとを有している。前端壁12aには、前後方向に貫通する貫通孔12a1が形成されている。上側壁12b及び下側壁12cには、その車幅方向外側辺で開口する凹部12b1,12c1が設けられている。このような前側懸架体12の車幅方向外側端から、ロアアーム3の前側取付部3bが挿入されており、前側取付部3bは、前側懸架体12の上側壁12bと下側壁12cとの間で、凹部12b1,12c1に対して前方側に配置されている。
【0024】
懸架アーム13は、前側懸架体12から上方側に延びるアーチ形状に形成されている。懸架アーム13の車幅方向中央側の内側端部13aは、前側懸架体12の上側壁12b及び下側壁12cの凹部12b1,12c1と嵌合している。この内側端部13aは、ロアアーム3の前側取付部3bと外側ブレース16の前端壁16aの前面との間に配置されている。図4を参照すると、懸架アーム13の車幅方向中央側の内側端部13aには、前後方向に貫通する貫通孔13a1が形成されている。この貫通孔13a1には、取付ナット18が挿通されており、取付ナット18の後端部は、外側ブレース16の前端壁16aの前面に接合されている。前側懸架体12の前端壁12aの貫通孔12a1と、ロアアーム3の前側取付部3bの貫通孔3b1とには、前後方向に延びる前側懸架軸19が挿通されている。前側懸架軸19の前端部は前側懸架体12の前端壁12aに取付けられ、前側懸架軸19の後端部は取付ナット18に締結されている。さらに、懸架アーム13の車幅方向外側の外側端部13bには、上方に突出する突起13cが形成され、この突起13cがサイドフレーム2の前部2aの下面に取付けられている。
【0025】
後側懸架体14は、前方側で開口する略コ字形状に形成された横断面を有している。このような後側懸架体14は、上下方向に延びる後端壁14aと、後端壁14aの上端から前方側に延びる上側壁14bと、後端壁14aの下端から前方側に延びる下側壁12cとを有している。上側壁14b及び下側壁14cには、上下方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。このような後側懸架体14の前方側から、ロアアーム3の後側取付部3cが挿入されており、後側取付部3cは、後側懸架体14の上側壁14bと下側壁14cとの間に配置されている。上側壁14bの貫通孔と、後側取付部3cの弾性体8の貫通孔と、下側壁14cの貫通孔とには、上下方向に延びる後側懸架軸20が挿通されている。後側懸架軸20の下端部は、下側壁14cに取付けられており、後側懸架軸20の上端部は、上側壁14bから上方に突出している。この後側懸架軸20の上端部がサイドフレーム2の後部2bの下面に取付けられている。なお、前側懸架体12における懸架アーム13の内側端部13aとの取付中心12dと、前側懸架体12の車幅方向反対側に位置する後側懸架体14における後側懸架軸20の中心20aとを結ぶ線分L1は、平面視で、中央連結体9、前側アーム10、及び後側アーム11の内部に位置している。
【0026】
補強取付体15の後端部15aは、サイドフレーム2の後部2bの下面に取付けられている。この補強取付体15におけるサイドフレーム2との取付中心15bは、平面視で、上述の線分L1と直交するとともに後側懸架軸20の中心20aを通る直交線L2を基準として、上述の線分L1上に位置する前側懸架体12における懸架アーム13の内側端部13aとの取付中心12dの反対側に配置されている。
【0027】
サスペンションフレーム4の外側ブレース16及び内側ブレース17について、さらに説明する。外側ブレース16は、前側懸架体12から後側懸架体14に向かうに従って車幅方向中央に向かって湾曲するように形成されている。外側ブレース16の前端部は前側懸架体12に取付けられ、外側ブレース16の後端部は後側懸架体14に取付けられている。内側ブレース17は、前後方向に延びるように形成されている。内側ブレース17の前端部は前側アーム10に取付けられ、内側ブレース17の後端部は後側アーム11に取付けられている。
【0028】
ここで、サイドシル6及びエクステンション7の詳細を説明する。エクステンション7の車幅方向中央側の内側端部7aは、サイドフレーム2の中間部2cに取付けられている。エクステンション7の車幅方向外側の外側端部7bは、サイドシル6の車幅方向中央側の内側面に取付けられている。このようなサイドフレーム2及びエクステンション7の取付部と、サイドシル6及びエクステンション7の取付部とは、後側アーム11の円弧形状に沿って配置されている。
【0029】
本発明の実施形態における作用及び効果を説明する。本実施形態によれば、サスペンションフレーム4の中央連結体9と前側懸架体12と後側懸架体14とが略等しい高さに位置しているので、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム4全体によって効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。また、前側アーム10及び後側アーム11の上面及び下面が、車両の走行路面に対して平行に配置されているので、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム4全体によってさらに効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性をさらに高めることができる。さらに、後側懸架体14の後側懸架軸20がロアアーム3の貫通孔3c1に挿通された状態で、後側懸架軸20の上端部がサイドフレーム2に取付けられていることによって、サスペンションフレーム4に加えられた車幅方向の荷重及び振動がとサイドフレーム2とロアアーム3とに分散されて効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。その結果、車両の走行安定性を高めて、かつ車室内の振動及び騒音を低減できる。
【0030】
本実施形態によれば、前側懸架体12における懸架アーム13の内側端部13aとの取付中心12dと、当該前側懸架体12の車幅方向反対側に位置する後側懸架体14における後側懸架軸20の中心20aとを線分L1で結んだ場合に、線分L1に対して直交し、かつ後側懸架軸20の中心20aを通る直交線L2を基準として、補強取付体15におけるサイドフレーム2との取付中心15bが、前側懸架体12における懸架アーム13の内側端部13aとの取付中心12dの反対側に配置されている。ここで、上述のように後側懸架体14の後側懸架軸20がロアアーム3の貫通孔3c1に挿通された状態で後側懸架軸20の上端部がサイドフレーム2に取付けられていることによって、サイドフレーム2と後側懸架体14との間には高低差が生じている。そのため、上述の直線に沿って伝わる車幅方向の荷重及び振動によって、サスペンションフレーム4の後側懸架軸20には、その上端部を通るとともに上述の直交線L2に平行な軸線を中心として回転するモーメントが作用する。このようなモーメントが、補強取付体15におけるサイドフレーム2との取付中心15bによって受け止められる。よって、サスペンションフレーム4に加えられた車幅方向の荷重及び振動が効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0031】
本実施形態によれば、前側懸架体12における懸架アーム13の内側端部13aとの取付中心12dと、前側懸架体12の車幅方向反対側に位置する後側懸架体14における後側懸架軸20の中心20aとを結ぶ線分L1が、平面視で、中央連結体9、前側アーム10、及び後側アーム11の内部に位置しているので、車幅方向の荷重及び振動がサスペンションフレーム4全体によって効率的に受けられて、車幅方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0032】
本実施形態によれば、前側アーム10が車両の車幅方向中央で後方に突出するように湾曲して形成されており、後側アーム11が車両の車幅方向中央で前方に突出するように湾曲して形成されているので、前側懸架体12と後側懸架体14とが前後方向に離れて配置されることとなる。そのため、前後方向の荷重及び振動と車幅方向の荷重及び振動とが、前側懸架体12と後側懸架体14とに分散されて効率的に受け止められて、前後方向の荷重及び振動と車幅方向の荷重及び振動とに対する車体の剛性を高めることができる。
【0033】
本発明の実施形態における別の作用及び効果を説明する。本実施形態によれば、前側懸架体12と後側懸架体14とを連結する外側ブレース16によって、前後方向の荷重及び振動をサスペンションフレーム4全体に分散することができる。特に、ロアアーム3から前側懸架体12に伝わる前後方向の荷重及び振動が、前側取付軸19を経由して、外側ブレース16の前端壁16aの前面に取付けられた取付ナット18に伝わるので、荷重及び振動を、取付ナット18から外側ブレース16を経由して後側懸架体14に分散することができる。よって、前後方向の荷重及び振動が効率的に受けられて、前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。その結果、車両の走行安定性を高めて、かつ車室内の振動及び騒音を低減できる。
【0034】
本実施形態によれば、外側ブレース16が、前側懸架体12から後側懸架体14に向かうに従って車幅方向中央に向かって湾曲するように形成されているので、外側ブレース16の後端部は、後側懸架軸20に対して車幅方向中央側に間隔を空けて後側懸架体14に取付けられることとなる。ここで、車輪からロアアーム3の車軸取付部3aに前後方向の荷重及び振動が加えられた場合、ロアアーム3における前側懸架体12との取付部を通るとともに上下方向に延びる軸線を中心として回転するモーメントが、ロアアーム3に作用することとなる。そのため、このようなモーメントが、サスペンションフレーム4の後側懸架軸20に加えて、後側懸架体14における外側ブレース16の後端部との取付部によって受け止められることとなる。よって、ロアアーム3から加えられる車両前後方向の荷重及び振動が効率的に受けられて、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0035】
本実施形態によれば、懸架アーム13の内側端部13aが、ロアアーム3の前側取付部3bと外側ブレース16の前端壁16aとの間に配置され、取付ナット18が内側端部13aの貫通孔13a1に挿通されているので、サイドフレーム2により支持された懸架アーム13の内側端部13aによって、取付ナット18が確実に保持されることとなる。そのため、取付ナット18の取付剛性を高めることができ、ロアアーム3と前側懸架体12との取付剛性を高めることができる。よって、車体の剛性を高めることができる。
【0036】
本発明の実施形態におけるさらなる別の作用及び効果を説明する。本実施形態によれば、駆動機構と中央連結体9とを連結するトルクロッド5に対して前後方向で反対側に位置する後側アーム11が、平面視で、中央連結体9を先端として突出する円弧形状に形成されている。そのため、前後方向の荷重及び振動が車体に加えられた場合、このような荷重及び振動が、車両の駆動機構からトルクロッド5を介してサスペンションフレーム4の中央連結体9に伝わって、中央連結体9と高い剛性を有するように円弧形状に形成された後側アーム11によって、受けられることとなる。さらに、このような荷重及び振動は、後側アーム11から剛性の高いサイドフレーム2に伝えられて分散されることとなる。よって、車両前後方向の荷重及び振動を効率的に受けることができて、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0037】
本実施形態によれば、サイドフレーム2及びエクステンション7の取付部と、サイドシル6及びエクステンション7の取付部とが円弧形状に沿って配置されているので、前後方向の荷重及び振動が車体に加えられた場合に、上述のように後側アーム11から剛性の高いサイドフレーム2に伝えられた荷重及び振動が、エクステンション7を経由してサイドシル6に伝えられて分散されることとなる。よって、前後方向の荷重及び振動を効率的に受けることができて、前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0038】
本実施形態によれば、前側アーム10及び後側アーム11がパイプ材料によって作製され、前側アーム10及び後側アーム11が中央連結体9の車幅方向の側部で前後方向に重なって配置されているので、サスペンションフレーム4の中央連結体9周辺の剛性を高くすることができる。そのため、車両の駆動機構からトルクロッド5を介してサスペンションフレーム4の中央連結体9に伝わる荷重及び振動が、円弧形状の後側アーム11に伝わり易くなっている。よって、車両前後方向の荷重及び振動を効率的に受けることができて、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0039】
本実施形態によれば、トルクロッド5の軸線5aが、中央連結体9におけるトルクロッド5との取付部と車幅方向の同位置で延びる円弧形状の接線と略直交しているので、車両の駆動機構からトルクロッド5を介してサスペンションフレーム4の中央連結体9に伝わる荷重及び振動が、円弧形状の後側アーム11に分散され易くなっている。よって、前後方向の荷重及び振動を効率的に受けることができて、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0040】
本実施形態によれば、前側アーム10及び後側アーム11の上下方向中心が同一の平面上に配置され、トルクロッド5が、当該平面と略平行に配置されるか、又は当該平面を跨ぐように配置されているので、車両の駆動機構からトルクロッド5に伝わる荷重及び振動が、サスペンションフレーム4の中央連結体9に伝わり易くなっており、さらに、トルクロッド5からサスペンションフレーム4の中央連結体9に伝わる荷重及び振動が、円弧形状の後側アーム11に伝わり易くなっている。よって、車両前後方向の荷重及び振動を効率的に受けることができて、車両前後方向の荷重及び振動に対する車体の剛性を高めることができる。
【0041】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0042】
例えば、本実施形態の第1変形例として、本実施形態の構造が、フロントエンジン・リアドライブ(FR)方式の車両の車体前部に採用されてもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
本実施形態の第2変形例として、本実施形態の構造が、ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)方式の車両の車体後部に採用されてもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
本実施形態の第3変形例として、本実施形態の構造が、リアエンジン・リアドライブ(RR)方式の車両の車体後部に採用されてもよい。この場合、サスペンションフレームが駆動機構の前方に配置され、トルクロッドと前後方向の反対側に位置する前側アームが、本実施形態の後側アーム11と同様に構成されることとなる。このような構造においても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 車体前部
2 サイドフレーム
3 ロアアーム
3c 後側取付部
3c1 貫通孔
4 サスペンションフレーム
9 中央連結体
10 前側アーム
11 後側アーム
12 前側懸架体
12d 懸架アームの内側端部との取付中心
13 懸架アーム
13a 内側端部
14 後側懸架体
15 補強取付体
15b サイドフレームとの取付中心
20 後側懸架軸
20a 中心
L1 線分
L2 直交線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の骨格を構成し、車両前後方向に沿って配置され、かつ互いに車幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドフレームと、
サスペンション機構を構成し、かつ前記サイドフレームの下方に配置されるロアアームと、
前記一対のサイドフレーム間に配置されるサスペンションフレームと
を備え、
前記サスペンションフレームが、車両の車幅方向中央に位置する中央連結体と、四角形状の閉断面を有し、かつ前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる前側アームと、四角形状の閉断面を有し、かつ前記前側アームの後方で前記中央連結体の車幅方向両端部から車幅方向外側に向かって延びる後側アームと、前記前側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる前側懸架体と、前記後側アームの車幅方向外側端部から車幅方向外側に向かって延びる後側懸架体とを含み、
前記前側懸架体及び前記後側懸架体が前記サイドフレーム及び前記ロアアームに取付けられている、サスペンションフレームの周辺構造において、
前記中央連結体と前記前側懸架体と前記後側懸架体とが略等しい高さに位置し、
前記後側懸架体には上方に突出する後側懸架軸が設けられ、
前記ロアアームには上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記後側懸架軸が前記ロアアームの貫通孔に挿通された状態で、前記後側懸架軸の上端部が前記サイドフレームに取付けられていることを特徴とする、サスペンションフレームの周辺構造。
【請求項2】
前記後側懸架体の後端部から後方に延びる補強取付体が設けられ、
前記補強取付体が前記サイドフレームに取付けられており、
前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを直線で結んだ場合に、前記直線に対して直交し、かつ前記後側懸架軸の中心を通る直交線を基準として、前記補強取付体における前記サイドフレームとの取付中心が、前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心の反対側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のサスペンションフレームの周辺構造。
【請求項3】
前記前側懸架体における前記サイドフレームとの取付中心と、前記前側懸架体の車幅方向反対側に位置する前記後側懸架体における前記後側懸架軸の中心とを結ぶ線分が、平面視で、前記中央連結体、前記前側アーム、及び前記後側アームの内部に位置していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサスペンションフレームの周辺構造。
【請求項4】
前記前側アームが車両の車幅方向中央で後方に突出するように湾曲して形成されており、
前記後側アームが車両の車幅方向中央で前方に突出するように湾曲して形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサスペンションフレームの周辺構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−112212(P2013−112212A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260845(P2011−260845)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】