サスペンション装置
【課題】緩衝器の発生減衰力の急変を緩和して車両における乗り心地を向上することができるサスペンション装置を提供することである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器2と、減衰力を調節する減衰力調整機構3と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構3を制御する制御装置4とを備えたサスペンション装置1において、制御装置4は、緩衝器2の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和するように目標減衰力を補正する補正手段43を備え、当該補正手段43は、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると当該伸縮速度xが0となるまでは、速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分βだけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正し、当該差分βから0までは発生減衰力を最小とするよう補正する。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器2と、減衰力を調節する減衰力調整機構3と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構3を制御する制御装置4とを備えたサスペンション装置1において、制御装置4は、緩衝器2の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和するように目標減衰力を補正する補正手段43を備え、当該補正手段43は、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると当該伸縮速度xが0となるまでは、速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分βだけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正し、当該差分βから0までは発生減衰力を最小とするよう補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サスペンション装置にあっては、たとえば、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、供給される電流量に応じて当該緩衝器における減衰力を調節する減衰力調整機構と、当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えているものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このサスペンション装置における緩衝器は、図16に示すように、緩衝器の伸縮速度が極低速域にある場合を除き、減衰力調整機構へ供給する電流量を変化させても減衰特性(緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性)の傾きが変わらない性質を持っており、予め緩衝器の最低減衰力を把握しておき、緩衝器に発生させたい減衰力からその時の緩衝器の伸縮速度における最低減衰力を減算して目標減衰力とすれば、伸縮速度によらず、目標減衰力から減衰力調整機構へ供給すべき電流量を求めることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、特開2008−12959号公報に開示されているサスペンション装置では、緩衝器の伸縮速度が極低速域にある場合、目標減衰力通りには減衰力が発揮されず、また、緩衝器は伸縮方向と同一方向へは減衰力を発生させることができないため、目標減衰力が0ではなく、緩衝器の伸縮方向が切換って緩衝器が減衰力を発生できる状態となる場合、図16の原点Oで減衰特性の傾きが大きく変化していることから、緩衝器の発生減衰力の変化が急峻となってしまう。
【0005】
この減衰力の急変を回避するために、電流指令から双曲線正接関数を用いて減衰力調整機構へ出力する供給電流を求めることで、発生減衰力の急峻な変化を緩和する技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−12959号公報
【特許文献2】特開2010−52488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の技術では、特に、減衰力制御範囲外から減衰力制御範囲内へ電流指令が遷移する場合に減衰力の急変を緩和できる点で有効ではあるが、緩衝器の伸縮方向が切り替わり、それまで出力していた減衰力を最小にしなければならない場合には、ヒステリシスが生じて速やかに減衰力を最小にすることができずに、車両における乗り心地をかえって悪化させてしまう場合がある。
【0008】
というのは、車両のばね下振動の周波数は概ね10Hz〜20Hzと高く、電流指令から供給電流を得るのにヒステリシスがないように設定していても、特許文献1の緩衝器における減衰力調整機構やそれ以外にもソレノイドバルブを減衰力調整機構に採用している場合には、減衰力調整機構の回路中に誘導性負荷があって、当該回路の時定数によって実電流を下降させるのに無駄時間が生じるため、供給電流を指令電流から求めた通りに制御することができない。たとえば、緩衝器に収縮方向の減衰力を発揮させることを条件として、緩衝器が収縮してから伸長に転じ、さらに、収縮するまでを考えると、緩衝器は自身では積極的に伸縮させる力を発揮できないので、この場合、緩衝器が収縮しているときには緩衝器の減衰力を限りなく小さくすることになる。この緩衝器が減衰力調整機構へ供給する電流を0にすると減衰力を最低とすることができるとすると、図17に示すように、緩衝器が収縮行程にあるときには、減衰力調整機構へ供給する電流を0としているので実電流は0に維持され(図中線I1)、緩衝器が伸長行程に転じると減衰力調整機構へ供給されている実電流の急変が緩和されて徐々に大きくなって目標減衰力を発揮させる電流値にまで上昇する(図中線I2)。そして、緩衝器がさらに反転して収縮行程に至ると、今度は、供給電流が徐々に減少することになるが、先程のように、無駄時間の問題があって、実電流はすぐには0にはならず、応答に遅れが生じて、図中で線I1に対して収縮側にずれてヒステリシスが生じる(図中線I3)。
【0009】
このようにヒステリシスを生じると、緩衝器の伸縮方向の切換りに実電流が残ってしまって、緩衝器が意図しない減衰力を発揮することになり、緩衝器の伸縮速度が0の近傍で減衰力が急変してしまい、車両における乗り心地を悪化させてしまう可能性があるのである。
【0010】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができるサスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、減衰力を調節する減衰力調整機構と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えたサスペンション装置において、上記制御装置は、上記緩衝器の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和する補正手段を備え、当該補正手段は、緩衝器の伸縮速度が上記所定速度を超える値に設定される速度閾値を超えると当該伸縮速度が0となるまでは、発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値と上記所定速度の差分だけ速度増側へオフセットして目標減衰力を補正するとともに差分から0までは目標減衰力を0とするよう補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサスペンション装置によれば、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態におけるサスペンション装置のシステム構成図である。
【図2】一実施の形態におけるサスペンション装置の緩衝器の一例を示した図である。
【図3】一実施の形態におけるサスペンション装置の緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性(減衰特性)を示した図である。
【図4】目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図5】緩衝器の伸縮速度が速度閾値を超えない場合の補正後の目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図6】目標減衰力と所定速度との相関関係を説明する図である。
【図7】緩衝器の伸縮速度が速度閾値を超えて0となるまでの補正後の目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図8】補正手段による補正処理を実際の緩衝器の動きに即して説明する図である。
【図9】補正手段によって補正された指令に対する減衰力調整機構に実際に流れる電流を説明する図である。
【図10】一実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する収縮側マップを説明する図である。
【図11】一実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する伸長側マップを説明する図である。
【図12】一実施の形態におけるサスペンション装置の補正後の目標減衰力の一例を示した図である。
【図13】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する収縮側マップを説明する図である。
【図14】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標評電流指令値を得る演算に使用する伸長側マップを説明する図である。
【図15】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標電流指令値或いは目標電圧指令値に乗ずるゲインを説明する図である。
【図16】従来のサスペンション装置の緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性(減衰特性)を示した図である。
【図17】従来のサスペンション装置の緩衝器における減衰力調整機構に流れる実電流と緩衝器の伸縮速度との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態におけるサスペンション装置1は、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器2と、供給される電流量に応じて当該緩衝器2における減衰力を調節可能な減衰力調整機構3と、当該減衰力調整機構3を制御する制御装置4とを備えて構成されている。
【0015】
以下、各部材について詳細に説明すると、緩衝器2は、図2に示すように、シリンダ20と、シリンダ20内に摺動自在に挿入されるピストン21と、シリンダ20内に移動自在に挿入されてピストン21に連結されるピストンロッド22と、シリンダ20内にピストン21で区画されるとともに磁気粘性流体が充填される二つの圧力室23,24と、圧力室23,24同士を連通する通路25と、通路25を通過する磁気粘性流体に磁気を与えるコイル26とを備えて構成されており、車両の車体と車輪との間に介装されている。そして、この緩衝器2は、シリンダ20とピストンロッド22の軸方向の相対移動である伸縮作動に応じて圧力室23,24内に充填された磁気粘性流体が通路25を通過する際にコイル26への通電によって磁気を与えて、磁気粘性流体の移動に抵抗を与え、圧力室23,24間に差圧を生じせしめて、当該伸縮作動を抑制する減衰力を発揮し、車体と車輪の上下方向の相対移動を抑制するようになっている。なお、緩衝器2が片ロッド型緩衝器である場合、緩衝器2は、図示はしないが、シリンダ20内にピストンロッド22が出入りする体積を補償するために気体室やリザーバを備える。また、詳しくは図示しないが、緩衝器2がリザーバを備えて伸長しても収縮してもシリンダ20内からリザーバへ通じる通路を介して流体が排出されるユニフロー型に設定される場合、シリンダ20からリザーバへ通じる通路の途中にコイルを設けて、流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようにしてもよい。
【0016】
したがって、この実施の形態の場合、減衰力調整機構3は、磁気粘性流体に磁気を与えるコイル26とされていて、コイル26へ与える電流量を調節することにより、磁気粘性流体へ与える磁界の強さを調節することで、当該磁気粘性流体が通路25を通過する流れに与える抵抗の大きさを調節し、緩衝器2の発生減衰力を調節することができるようになっている。なお、この実施の形態の場合、図3に示すように、コイル26へ電流供給をしないと、磁気粘性流体に磁気が与えられず、緩衝器2の減衰特性は図中一点鎖線で示した最小の減衰特性Lとなり、コイル26への供給電流量が大きければ大きいほど、緩衝器2の発生減衰力も大きくなるようになっていて、ハードウェアとして制限される最大の電流供給量をコイル26へ与えると緩衝器2の減衰特性は図中実線で示した最大の減衰特性Hとなる。また、この実施の形態の場合、制御が容易となるように、緩衝器2の伸縮速度が極低速域にある場合を除き、コイル26へ供給する電流量に応じて、図3中破線で示すように傾きを一定に保ったまま減衰特性を最小Lから最大Hまで上下方向へ調節することができるようになっている。本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、緩衝器の伸縮速度に極低速域との区分を設けているが、極低速域は緩衝器の伸縮速度の絶対値が0から任意の速度までの範囲を示しており、当該範囲は、緩衝器2の設計に応じて任意に設定することができる。なお、図3で示したところでは、緩衝器の収縮を抑制する方向(伸長方向)の減衰力を正とし、緩衝器の伸長を抑制する方向(収縮方向)の減衰力を負とし、伸縮速度は、緩衝器の収縮方向を正とし、緩衝器の伸長方向を負として扱っている。このことは、後述する制御装置4における処理のうち補正部43での処理以外で同様である。
【0017】
緩衝器2の上記した構成は、一例であって、たとえば、緩衝器2が電気粘性流体を圧力室23,24内に充填している場合、減衰力調整機構3は、上記通路25に電圧を印加できるものとすればよく、減衰力の調節に際し供給電圧を調節することで行うようにすればよい。また、圧力室23,24内に磁気粘性流体や電気粘性流体以外の液体、或いは気体を充填する場合には、減衰力調整機構3を通路25の途中に設けるソレノイド弁として供給電流量によって流路面積を調節して緩衝器2の発生減衰力を制御するようにしてもよい。
【0018】
さらに、緩衝器2は、上記以外にも、電磁力でばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制する減衰力を発揮する電磁緩衝器とされてもよく、電磁緩衝器としては、たとえば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備えて構成されるか、リニアモータとされる。このように緩衝器2が電磁緩衝器である場合には、減衰力調整機構3は上記モータ或いはリニアモータに流れる電流を調節するモータ駆動装置とされればよい。なお、運動変換機構としては、たとえば、螺子軸と螺子軸に螺合するボール螺子ナットとでなる送り螺子機構やラックアンドピニオンを採用することができる。
【0019】
また、この実施の形態では、制御装置4は、図1に示すように、スカイフック制御側に則って、緩衝器2の減衰力を制御するようになっており、そのため、車体の上下方向加速度を検出する加速度センサ5と、緩衝器2の伸縮速度を検知するためストロークセンサ6とを備えている。さらに、制御装置4は、目標減衰力を求める目標減衰力演算部41と、目標減衰力をリミッタ処理するリミッタ42と、リミッタ処理後の目標減衰力を補正する補正部43と、補正後の目標減衰力からマップ演算により目標電流指令値を求める目標電流指令値演算部44と、目標電流指令値の入力を受けて減衰力調整機構3としてのコイル26へ電流を供給するドライバ45とを備えている。
【0020】
なお、制御装置4における目標減衰力演算部41、リミッタ42、補正部43および目標電流指令値演算部44は、図示はしないが具体的にはたとえば、緩衝器2の制御に必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、上記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが上記プログラムを実行することで上記各部41,42,43,44が実現される。
【0021】
目標減衰力演算部41は、加速度センサ5で検知した上下加速度を積分することで車体の上下速度を得て、この上下速度にスカイフック減衰係数を乗じて必要減衰力を求める。そして、緩衝器2の伸縮速度から減衰力調整機構3としてのコイル26へ電力供給しない場合における当該伸縮速度での最小の減衰力を求めて、必要減衰力からこの最少減衰力を減算して目標減衰力を求める。このように、目標減衰力は、必要減衰力から図3中の減衰特性Lで示した最低減衰力分を除去したものになる。すると、この緩衝器2の減衰特性が緩衝器の伸縮速度が極低速域を超えるとコイル26への供給電流量によらず、傾きが同じであるので、上述したように最低減衰力を減算して求めた目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係は、図3に示した減衰特性を原点回りに回転させた図4に示すがごとくとなり、緩衝器2の伸縮速度によらず、目標減衰力と減衰力調整機構3へ供給すべき電流量は一対一の関係となる。
【0022】
つまり、目標減衰力を求めれば、減衰力調整機構3へ供給すべき電流量が決まる関係となる。なお、緩衝器2の伸縮速度は、上記ストロークセンサ6で検知した緩衝器2のストローク(伸縮変位)を微分することで得ることができるが、車輪を支持するスピンドル等に上下加速度を検知する加速度センサを設け、当該車輪の上下加速度を積分して車輪の上下速度を得て、車体の上下速度と車輪の上下速度との差をとって緩衝器2の伸縮速度を得るようにしてもよい。
【0023】
このように制御装置4は、加速度センサ5で検知した上下加速度を積分して車体の上下速度を演算し、ストロークセンサ6で検知した緩衝器2のストロークを微分して緩衝器2の伸縮速度を演算し、上下速度にスカイフック減衰係数を乗じて必要減衰力を求め、緩衝器2の伸縮速度から当該伸縮速度における緩衝器2の最低減衰力を求め、必要減衰力から最低減衰力を減算して目標減衰力を求める。さらに、この目標減衰力から減衰力調整機構3としてのコイル26へ供給する電流量に対応する目標電流指令値を求めるが、こうして求めた目標減衰力から直接減衰力調整機構3へ供給する電流量を求めると、目標減衰力が緩衝器2の伸縮速度が極低速域にあって実際に緩衝器2が発生できない値に設定されて緩衝器2の伸縮方向が切換って緩衝器が減衰力を発生できる状態となる場合や目標減衰力が緩衝器2の発生可能減衰力範囲内から最大減衰力を超えてしまった場合に、緩衝器2の減衰力の変化が急峻となってしまう。
【0024】
そこで、本発明にあっては、減衰力調整機構3へ与える指令を補正して緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する補正手段としての補正部43を備えている。この補正部43は、この実施の形態では、目標減衰力を補正することで、減衰力調整機構3へ与える指令を補正するようになっており、具体的には、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1を超える値に設定される速度閾値Vp2を超えることなく、速度閾値Vp2以下の範囲にある場合と、緩衝器2の伸縮速度が速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合とで緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を違えて補正を行うようになっている。なお、この補正部43は、目標減衰力の方向と異なる緩衝器2の伸縮方向を正として、目標減衰力の方向と同じ緩衝器2の伸縮方向を負として補正を行うようになっている。
【0025】
まず、緩衝器2の伸縮速度が所得速度Vp1を超える値に設定される速度閾値Vp2を超えることなく、速度閾値Vp2以下の範囲内である場合の補正部43の処理について説明する。具体的には、補正部43は、目標減衰力の方向(目標減衰力が緩衝器2に指示する減衰力発生方向)と逆向きの緩衝器2の伸縮方向を正とし、緩衝器2の伸縮速度をxとすると、緩衝器2の伸縮速度xが0≦x≦Vp1/2の範囲にあるときには、補正係数αをα=2x2/Vp12を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp1/2<x≦Vp1の範囲にあるときには、補正係数αをα=−2(x−Vp1)2/Vp12+1を演算して求め、こうして求めた補正係数αに上記目標減衰力を乗じて目標減衰力を補正する。なお、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができない。目標減衰力が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、目標減衰力の方向が緩衝器の伸縮を助成する方向である場合、緩衝器2は目標減衰力と同方向へ減衰力を発揮することができないので、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする、つまり、最小とする必要がある。そのため、目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が同一の場合、具体的には、補正部43で採用する緩衝器2の伸縮方向の符号の定義に則って、伸縮速度xが負の値を採る場合、補正部43は、補正係数αを0として目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力は0となる。また、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超える範囲である場合、緩衝器2の伸縮方向と目標減衰力の方向とが異なり、目標減衰力を補正する必要がないので補正係数αを1として補正後の目標減衰力を演算する。
【0026】
すると、目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする場合を例にして説明すると、補正後の目標減衰力は、図5中の実線で示すように、緩衝器2が伸長作動を呈していて目標減衰力の方向に一致している場合には0となり、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。ここで、所定速度Vp1は、補正後の目標減衰力閾値が緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収まるように設定されるとよく、目標減衰力に対して変動しない一定の値をとるようにしてもよいし、目標減衰力の大きさによって変化するようにしてもよい。また、目標減衰力の方向が緩衝器2を収縮させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする場合を例にして説明すると、補正後の目標減衰力は、図5中の破線で示すように、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向に一致している場合には0となり、緩衝器2が伸長作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。なお、伸縮速度xは、目標減衰力の方向と逆向きの緩衝器2の伸縮方向を正としているが、図5中では、緩衝器2の伸長方向の速度を負の値とし、緩衝器2を収縮させる方向の減衰力を負の値としているので、補正後の目標減衰力は破線のようになる。
【0027】
目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向である場合を例にすると、図6に示すように、目標減衰力が最大であり減衰力調整機構3への供給電流量が最大となる場合の減衰特性k1に対して緩衝器2が出力可能な減衰力範囲は、減衰特性k1と伸縮速度軸との間となり、これに補正後の目標減衰力の軌跡G1を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度Vp1をVp1(1)以上にする必要がある。これに対して、目標減衰力を小さくして、減衰力調整機構3への供給電流量も小さくして減衰特性k2となる場合、補正後の目標減衰力の軌跡G2を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度をVp1(2)以上にする必要がある。さらに目標減衰力を小さくして、減衰力調整機構3への供給電流量も小さくして減衰特性k3となる場合、補正後の目標減衰力の軌跡G3を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度をVp1(3)以上にする必要がある。したがって、この緩衝器2の場合、目標減衰力が大きくなればなるほど、所定速度Vp1を大きくしなければならないことが分かる。このように目標減衰力が小さい場合には、補正後の目標減衰力が目標減衰力に等しくなる所定速度Vp1も小さくすることができ、このように目標減衰力をパラメータとして所定速度Vp1を変化させることで、補正後の目標減衰力をいち早く補正前の目標減衰力に追従させることができるメリットがある。
【0028】
つづいて、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合における補正部43の処理について説明する。具体的には、補正部43は、当該速度閾値Vp2から上記所定速度Vp1を差し引きした値である速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分をβとすると、一度、伸縮速度xがx>Vp2を満たすと伸縮速度xが0になるまでは、緩衝器2の伸縮速度xがβ≦x≦Vp2−Vp1/2の範囲にあるときは、補正係数αをα=2(x−β)2/Vp12を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp2−Vp1/2<x≦Vp2の範囲にあるときは、補正係数αを、α=−2(x−β−Vp1)2/Vp12+1を演算して求めるとともに、緩衝器2の伸縮速度xが0≦x<βの範囲にあるときは、補正係数αを0とし、こうして求めた補正係数αに上記目標減衰力を乗じて目標減衰力を補正する。なお、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができない。目標減衰力が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力と同方向へ減衰力を発揮することができないので、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が同一の場合、補正部43は、補正係数αを0として目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力は0となる。また、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超える範囲である場合、緩衝器2の伸縮方向と目標減衰力の方向とが異なり、目標減衰力を補正する必要がないので補正係数αを1として補正後の目標減衰力を演算する。
【0029】
以上より、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合、目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする状況を例にすると、補正後の目標減衰力は、図7中の実線で示すように、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度がβから速度閾値Vp2以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。なお、目標減衰力の方向が緩衝器2を収縮させる方向である場合には、補正後の目標減衰力は、図7中の破線で示すようになる。図7中では、緩衝器2の伸長方向の速度を負の値とし、緩衝器2を収縮させる方向の減衰力を負の値としているので、補正後の目標減衰力は破線のようになる。
【0030】
さらに、上記補正部43の補正処理を実際の緩衝器2の動きに即して説明する。目標減衰力の方向が変わらず、緩衝器2の伸縮速度xが負の値から正の値に転じて速度が増加し、さらに、反転して負に転じる場合について、補正部43による目標減衰力の補正については、図8に示すようになる。緩衝器2の伸縮速度xが負の値から正の値に転じて速度が増加していく過程では、図8中の実線で示すように、伸縮速度xが負の場合には、補正係数α=0として補正され、速度閾値Vp2を超えるまでは0≦x≦Vp1の範囲では上記したように補正され、所定速度Vp1を超えると補正係数α=1として補正される。その後、伸縮速度xが増加して速度閾値Vp2を超え、伸縮速度xが遅くなって、やがて0になり、伸縮方向が反転して伸縮速度xが負になる過程では、図8中破線で示すように、伸縮速度xがβ≦x≦Vp2−Vp1/2の範囲にあると上記のごとく補正され、所定速度を超えると補正係数α=1として補正され、伸縮速度xがx<βの範囲では補正係数α=0として補正され、伸縮速度xが負となると補正係数α=0として補正される。つまり、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えた場合における補正係数αは、図8に示すように、上記した緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えない場合における補正係数αに対して、当該速度閾値Vp2から上記所定速度Vp1を差し引きした値である速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分βだけ速度増側となる図中右方へオフセットされている。すなわち、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えない場合には、補正手段である補正部43は、上記緩衝器2の伸縮速度が0および所定速度Vp1における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和するが、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると伸縮速度xが0になるまでは、緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値Vp2と上記所定速度Vp1の差分βだけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正し、差分βから伸縮速度xが0までの範囲において発生減衰力を最小にするようになっている。
【0031】
このようにすることで、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超える場合には、伸縮速度xが減少に転じると、早い段階から目標減衰力が補正されて減少に転じるようになり、この目標減衰力が後段の目標電流指令値演算部44、ドライバ45を介して指令となって減衰力調整機構3へ供給されるので、図9に示すように、当該指令も伸縮速度xが減少に転じると早い段階から0へ変化して、減衰力調整機構3へ与える指令に対して減衰力調整機構3に流れる電流が遅れても、緩衝器2の伸縮速度xが0となるときには、減衰力調整機構3におけるコイル26に流れる実電流を0にすることができる。なお、図9中、実線は、補正手段としての補正部43によって目標減衰力を補正することで補正された指令を示しており、破線は、減衰力調整機構3のコイル26に流れている実電流を示している。
【0032】
ここで、速度閾値Vp2は、上記所定速度Vp1を超える値に設定されればよいのであるが、所定速度Vp1との差分βが小さすぎると、減衰力調整機構3におけるコイル26に緩衝器2の伸縮速度が0であるときに電流が残留してしまうので、減衰力調整機構3および電流を供給するドライバ45とでなる回路における時定数(この実施の形態の場合、コイル26を含めたドライバ45の回路の時定数)と車両走行中のばね下振動周波数から充分に緩衝器2の伸縮速度が0のときに上記残留電流が発生しない程度に設定されれば良い。
【0033】
なお、速度閾値Vp2についても、緩衝器2の伸縮速度が0のときに上記残留電流が発生しない限りにおいて、所定速度Vp1と同様に、目標減衰力の大きさに応じて、その値が変化するようにされてもよい。
【0034】
引き続き、補正部43の後段の目標電流指令値演算部44は、補正後の目標減衰力から電流量を求める。目標電流指令値演算部44で求めた目標電流指令値は、ドライバ45へ入力され、ドライバ45は、目標電流指令値に対応する電流を指令として減衰力調整機構3へ出力する。上記した演算を行って制御装置4は、減衰力調整機構3を介して緩衝器2の減衰力を調節する。つまり、補正部43は、この場合、目標減衰力を求める目標減衰力演算部41の後段にあって、目標減衰力を補正して減衰力調整機構3へ与える指令を補正している。
【0035】
目標電流指令値演算部44は、具体的には、上記目標減衰力から目標電流指令値を得るマップ演算を行う。なお、この実施の形態では、目標電流指令値演算部44は、マップ演算を行わずに目標減衰力から目標電流指令値を求めることもできる。
【0036】
上記マップ演算に使用するマップは、2つあり、具体的には、緩衝器2が収縮作動する場合に使用される収縮側マップM1と、緩衝器2が伸長作動する場合に使用される伸長側マップM2がある。つまり、マップは、緩衝器2の伸縮方向毎に用意されている。収縮側マップM1は、図10に示すように、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA1と、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なるものの出力上限を上回る場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB1と、出力下限ラインA1と出力上限ラインB1とを結ぶとともに、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なり緩衝器2が出力可能な場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC1を備えている。
【0037】
対して、伸長側マップM2は、図11に示すように、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA2と、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なるものの出力上限を上回る場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB2と、出力下限ラインA2と出力上限ラインB2とを結ぶとともに、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なり緩衝器2が出力可能な場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC2を備えている。
【0038】
なお、収縮側マップM1および伸長側マップM2において、目標減衰力は緩衝器2に伸長方向に減衰力を発生させる値を正とし、つまり、収縮を妨げる減衰力を緩衝器2に発揮させる目標減衰力の値を正としてあり、反対方向の減衰力を発生させる目標減衰力を負としている。この実施の形態で目標電流指令値が目標減衰力の如何によらず、0以上の値となるのは、減衰力調整機構3への電流供給によって減衰係数を調節しているからである。上記したところでは、目標減衰力が緩衝器2の出力可能範囲にある場合、減衰力調整機構3へ与える電流と緩衝器2の発生減衰力が比例関係にあるので、上記収縮側マップM1および伸長側マップM2において出力可能ラインC1,C2は、目標電流指令値が電流値目標減衰力に応じて比例的に変化するので直線となるが、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係が非線形である場合には、出力可能ラインC1,C2も発生減衰力と電流との関係に即したものとされればよい。つまり、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が途中で屈曲点を持っているのであれば、出力可能ラインC1,C2も途中に屈曲点を持つ折れ線で示され、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が曲線であれば、出力可能ラインC1,C2も曲線で示されることになる。
【0039】
上述したように緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができないので、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力の方向と同方向へ減衰力を発揮することができず、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、緩衝器2の減衰力を最小とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を0とする。すなわち、出力下限ラインA1,A2は、この場合、0で一定となる。
【0040】
また、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、緩衝器2の減衰力の出力上限を上回る場合、緩衝器2の発生減衰力を目標減衰力に追随させることができないが、緩衝器2の発生減衰力を限りなく目標減衰指令値に近づけるため、緩衝器2の減衰力を最大とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を所定の上限値とする。すなわち、出力上限ラインB1,B2は、この場合、ハードウェア上の電流値の上限値で一定となる。
【0041】
そして、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な範囲である場合には、上述したように目標減衰力に対して目標電流指令値が一対一の関係となり、目標減衰力に対して目標電流指令値が比例することになり、出力可能ラインC1,C2は、目標減衰力に対してある傾きをもって比例する。この出力可能ラインC1,C2の傾きは、目標減衰力軸に対する傾きは一定で、減衰力調整機構3への供給電流量と緩衝器2における減衰力との関係に依存して決定される。
【0042】
なお、電気粘性流体を用いた緩衝器の場合、収縮側マップM1と伸長側マップM2における縦軸を目標電圧指令値とし、制御装置4は、目標減衰力から目標電圧指令値を求めるようにすればよい。また、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力下限ラインA1,A2をハードウェア上の電流値の上限値で一定とし、出力上限ラインB1,B2を0で一定とするようなマップとすればよい。
【0043】
目標電流指令値は、この実施の形態の場合、減衰力調整機構3へ供給する電流値そのものとして説明しているが、たとえば、減衰力調整機構3のコイル26をPWM制御する場合には、目標電流指令値を供給電流値と一対一の関係となるデューティ比として求め、コイル26にPWMパルス電圧を印加するドライバ45へデューティ比でなる目標電流指令値を与えるようにして、減衰力調整機構3への供給電流を制御するようにしてもよい。また、ドライバは、制御装置4側に設けるのではなく、減衰力調整機構3側に設けるようにしてもよい。
【0044】
また、この例では、収縮側マップM1と伸長側マップM2を持っているが、伸長側と収縮側で減衰特性が同じであれば、マップを一つにしておき、目標減衰力の絶対値に対して目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記したところでは、減衰力調整機構3へ与える電流量によって緩衝器2の減衰係数が変化する特性となっており、目標減衰力を上記必要減衰力から最低減衰力を減じて求めるようにしているので、収縮側マップM1と伸長側マップM2を持っていればよく、マップ演算も簡単となるが、目標減衰力を上記で言うところの必要減衰力として目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求める場合には、緩衝器2の伸縮速度に応じて目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値との関係の三次元グラフをマップ化しておき、当該三次元マップを用いて求めるようにしてもよいし、複数の緩衝器2の伸縮速度に対して作成した目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値のマップを保有して、緩衝器2の伸縮速度に応じてマップ間を補間することで目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0046】
なお、目標電流指令値を求める目標電流指令値演算部44の後段に補正部43を配して、目標電流指令値を補正することで、減衰力調整機構3へ与える指令(電流)を補正するようにしてもよく、また、所定速度については、上述のように目標減衰力に応じて変化させる場合と同様に目標電流指令値の大きさによって変化させるようにしてもよい。
【0047】
上記したところから理解できるように、本実施の形態のサスペンション装置1によれば、目標減衰力を補正することで、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めつつ、緩衝器2の伸縮速度xが0および所定速度Vp1における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和することができ、また、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると、その後、伸縮速度xが減少に転じて0となる場合に、所定速度Vp1を超える速度閾値Vp2と差分βで発生減衰力変化を緩和し、差分βから伸縮速度xが0までの範囲において発生減衰力を最小にするように補正するので、減衰力調整機構3への指令が早い段階から緩衝器2の発生減衰力を最小とする値に変化するから、当該指令に対して減衰力調整機構3に流れる実電流の変化が遅れても、緩衝器2の伸縮速度xが0となるときには、減衰力調整機構3に流れる実電流を0にすることができる。
【0048】
このように、緩衝器2の伸縮速度xが0を横切る伸縮方向の切換りに減衰力調整機構3に電流が残留することがないので、緩衝器が意図しない減衰力を発揮することがなくなり、緩衝器2の伸縮速度が0の近傍で減衰力が急変してしまって、車両における乗り心地を悪化させてしまうこともなくなる。したがって、本発明のサスペンション装置1によれば、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0049】
また、本実施の形態のサスペンション装置1では、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるので、減衰力調整機構3へ無駄電流を与えずに済み、省エネルギとなる。つまり、目標減衰力を補正しない場合、図12の破線で示すように、緩衝器の伸縮速度が極低速域にあっても目標減衰力に一対一となる電流量を減衰力調整機構へ出力することになるが、本実施の形態におけるサスペンション装置1では、図12の実線で示すように、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるので、減衰力調整機構3へ無駄電流を与えずに済むのである。なお、図12の補正後の目標減衰力は、目標減衰力が緩衝器2に伸長方向へ減衰力を発生させるものである場合を示しているが、目標減衰力が緩衝器2に収縮方向へ減衰力を発生させるものである場合には、原点を中心に実線を180度回転させたものとなり、目標減衰力が緩衝器2に収縮方向へ減衰力を発生させる場合にあっても、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるのは当然である。
【0050】
また、上記補正された減衰力調整機構3への指令の変化率は、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1の二分の一までの範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に大きく(小さく)なり、緩衝器2の伸縮速度が所定閾値Vp1の二分の一を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加に伴って徐々に小さくなるので、車体へ急な加速度変化を与えることがなく、さらに、伸縮速度xが速度閾値をVp2超えても、当該指令の変化率は、緩衝器2の伸縮速度xがβ+Vp1/2を超えて速度閾値Vp2の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に小さく(大きく)なり、緩衝器2の伸縮速度xがβからβ+Vp1/2の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に大きく(小さく)なるので、この場合にあっても、車体へ急な加速度変化を与えることがない。
【0051】
さらに、この場合、補正係数αが上記演算式で演算されるので、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1の二分の一までの範囲にあるときの減衰特性と緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1の二分の一を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときの減衰特性とが連続して滑らかにつながり、緩衝器2の伸縮速度xがβ+Vp1/2を超えて速度閾値Vp2の範囲にあるときの減衰特性と、緩衝器2の伸縮速度xがβからβ+Vp1/2の範囲にあるときの減衰特性とが連続して滑らかにつながるので、車体への急な加速度変化を与えない効果を高めることができる。
【0052】
なお、補正係数αの演算に際しては、緩衝器2の伸縮速度xが0からVp1/2の範囲にあるときには、補正係数αをα=−(Vp12−4x2)1/2/2Vp1+1/2を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度がVp1/2を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときには、補正係数αをα={Vp12−4(x−4Vp1)2}1/2/2Vp1+1/2を演算して求めるようにしてもよい。また、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値を超えた場合において、緩衝器2の伸縮速度xがβからVp2−Vp1/2の範囲にあるときは、補正係数αをα=α=−{Vp12−4(x−β)2}1/2/2Vp1+1/2を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp2−Vp1/2からx速度閾値Vp2の範囲にあるときは、補正係数αを、α=[Vp12−4{(x−β)−4Vp1}2]1/2/2Vp1+1/2を演算して求めるようにしてもよい。
【0053】
この場合、補正後の目標減衰力は、二つの接する半径Vp1/2の円の軌跡上を辿るように変化することになるが、このように演算して求めても、減衰特性が連続して滑らかにつながり、車体へショックを与えることもない。
【0054】
また、補正係数αの演算には、上記以外にも、予め補正係数を演算するためのマップを用いてもよいし、三角関数や双曲線関数を用いて緩衝器2の伸縮速度xが0、所定速度Vp1、差分βおよび速度閾値Vp2における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和するようにしてもよいが、二次関数で補正係数αを演算する方が計算負荷が小さいので、制御装置4の各部を実現するCPU等の演算装置の負荷を低減でき、安価な演算装置の使用が可能となってサスペンション装置1のコストを低減できる。なお、補正係数αの演算に当たり、上記した演算式を用いること、ルート演算を行う必要がないのでより計算負荷を軽減できる利点もある。
【0055】
本実施の形態のサスペンション装置1では、上述のようにして減衰力の急峻な変化を抑制できるのであるが、目標減衰力がそもそも緩衝器2の最大減衰力を超える大きな値となって補正部43で補正しても補正後の目標減衰力が緩衝器2の最大減衰力を超えてしまうような場合、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点の減衰力の急峻な変化の抑制効果を弱めてしまう場合がある。というのは、目標減衰力が過大となる場合、補正係数αを目標減衰力に乗じても、緩衝器2の最大減衰力を超えてしまって、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における緩衝器2の発生減衰力の変化を効果的に緩和することが難しくなるからである。そこで、本実施の形態のサスペンション装置1にあっては、目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力を制限値にクランプするリミッタ処理を行うリミッタ42を備えている。リミッタ42は、具体的には、この場合、目標減衰力を緩衝器2の最大減衰力に対応する値に制限している。このようにリミッタ42により目標減衰力は緩衝器2の最大減衰力から上記最低減衰力を減算した値を最大値として制限されるので、補正部43における補正係数αで目標減衰力を補正すると、補正後の目標減衰力は必ず緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収まり、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和することができる。なお、このリミッタ処理をせずとも目標電流指令値演算部44で目標減衰力から目標電流指令値を得る際に、目標電流指令値がハードウェア上の最大値を超えないように配慮されるので、目標電流指令値演算部44自体も広義にはリミッタとして機能するが、リミッタ42を用い、目標減衰力を補正手段としての補正部43で補正することで、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における発生減衰力の変化を確実に緩和することができる点で有意義である。
【0056】
つづいて、他の実施の形態におけるサスペンション装置について説明する。この他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっては、目標電流指令値演算部44で使用するマップが上記一実施の形態におけるサスペンション装置1と異なっている。したがって、他の実施の形態におけるサスペンション装置におけるシステム構成は、図1に示した一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様である。
【0057】
そのため、他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっても、目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力から目標電流指令値を求めて減衰力調整機構3へ供給する電流量を調節するようになっており、上記目標減衰力の補正による作用効果は一実施の形態のサスペンション装置1と同様である。
【0058】
以下、説明の重複を避けるため、一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様の部分については説明を省略し、異なる部分について詳細に説明することとする。
【0059】
つづいて、この他の実施の形態におけるサスペンション装置における目標電流指令値演算部44で使用するマップについて説明する。この目標電流値指令値演算部44では、マップを用いて補正部43で補正した目標減衰力から目標電流指令値を得るマップ演算を行い、目標電流指令値をドライバ45へ出力する。
【0060】
上記マップ演算に使用するマップは、2つあり、具体的には、緩衝器2が伸長作動する場合に使用される収縮側マップM3と、緩衝器2が収縮作動する場合に使用される伸長側マップM4がある。つまり、マップは、緩衝器2の伸縮方向毎に用意されている。収縮側マップM3は、図13に示すように、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA3と、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB3と、出力下限ラインA3と出力上限ラインB3とを結ぶとともに、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC3と、出力可能ラインC3と出力下限ラインA3との間を接続する緩和ラインD3と、出力可能ラインC3と出力上限ラインB3との間を接続する緩和ラインE3とを備えている。対して、伸長側マップM4は、図14に示すように、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA4と、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB4と、出力下限ラインA4と出力上限ラインB4とを結ぶとともに、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC4と、出力可能ラインC4と出力下限ラインA4との間を接続する緩和ラインD4と、出力可能ラインC4と出力上限ラインB4との間を接続する緩和ラインE4とを備えている。なお、収縮側マップM3および伸長側マップM4において、目標減衰力は緩衝器2に伸長方向に減衰力を発生させる値を正とし、つまり、収縮を妨げる減衰力を緩衝器2に発揮させる目標減衰力の値を正としてあり、反対方向の減衰力を発生させる目標減衰力を負としている。この実施の形態で目標電流指令
値が目標減衰力の方向の如何によらず、0以上の値となるのは、減衰力調整機構3への電流供給によって減衰係数を調節しているからである。なお、上記したところでは、目標減衰力が緩衝器2の出力可能範囲にある場合、減衰力調整機構3へ与える電流と緩衝器2の発生減衰力が比例関係にあるので、上記収縮側マップM1および伸長側マップM2において出力可能ラインC1,C2は、目標電流指令値が電流値目標減衰力に応じて比例的に変化するので直線となるが、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係が非線形である場合には、出力可能ラインC1,C2も発生減衰力と電流との関係に即したものとされればよい。つまり、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が途中で屈曲点を持っているのであれば、出力可能ラインC1,C2も途中に屈曲点を持つ折れ線で示され、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が曲線であれば、出力可能ラインC1,C2も曲線で示されることになる。
【0061】
ここで、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができないので、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力の方向と同方向へ減衰力を発揮することができないため、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、緩衝器2の減衰力を最小とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を0とする。すなわち、出力下限ラインA3,A4は、この場合、0で一定となる。
【0062】
また、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、緩衝器2の減衰力の出力上限を上回る場合、緩衝器2の発生減衰力を目標減衰力に追随させることができないが、緩衝器2の発生減衰力を限りなく目標減衰力に近づけるため、緩衝器2の減衰力を最大とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を所定の上限値とする。すなわち、出力上限ラインB3,B4は、この場合、ハードウェア上の電流値の上限値で一定となる。
【0063】
そして、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な範囲である場合には、上述したように目標減衰力に対して目標電流指令値が一対一の関係となり、目標減衰力に対して目標電流指令値が比例することになり、出力可能ラインC3,C4は、目標減衰力に対してある傾きをもって比例する。この出力可能ラインC3,C4の傾きは、目標減衰力軸に対する傾きは一定で、減衰力調整機構3への供給電流量と緩衝器2における減衰力との関係に依存して決定される。
【0064】
なお、電気粘性流体を用いた緩衝器の場合、収縮側マップM3と伸長側マップM4における縦軸を目標電圧指令値とし、制御装置4は、目標減衰力から目標電圧指令値を求めるようにすればよい。また、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力下限ラインA3,A4をハードウェア上の電流値の上限値で一定とし、出力上限ラインB3,B4を0で一定とするようなマップとすればよい。
【0065】
たとえば、減衰力調整機構3のコイル26をPWM制御する場合には、目標電流指令値を供給電流値と一対一の関係となるデューティ比として求め、コイル26にPWMパルス電圧を印加するドライバ43へデューティ比でなる目標電流指令値を与えるようにして、減衰力調整機構3への供給電流を制御するようにしてもよい。また、ドライバは、制御装置4側に設けるのではなく、減衰力調整機構3側に設けるようにしてもよい。さらに、目標電流指令値は、減衰力調整機構3へ供給する電流値そのものとしてもよい。
【0066】
そして、収縮側マップM3において、緩和ラインD3は、出力下限ラインA3に対して、出力可能ラインC3より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC3が出力下限ラインA3に対して図13中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力下限ラインA3との交点P1を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。また、収縮側マップM3において、緩和ラインE3は、出力上限ラインB3に対して、出力可能ラインC3より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC3が出力上限ラインB3に対して図13中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力上限ラインB3との交点Q1を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。
【0067】
さらに、伸長側マップM4においても、緩和ラインD4は、出力下限ラインA4に対して、出力可能ラインC4より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC2が出力下限ラインA4に対して図14中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力下限ラインA4との交点P2を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。また、伸長側マップM4においても、緩和ラインE4は、出力上限ラインB4に対して、出力可能ラインC4より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC4が出力上限ラインB4に対して図14中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力上限ラインB4との交点Q2を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。
【0068】
このように、目標減衰力から減衰力調整機構3へ供給する電流量を決する目標電流指令値を求める収縮側マップM3および伸長側マップM4にあっては、緩和ラインD3,D4,E3,E4が設けられているので、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な減衰力の範囲(出力可能範囲)内から出力できない範囲(出力不能範囲)へ、或いは、出力不能範囲から出力可能範囲内へ変化する場合に、目標電流指令値の変化量が緩和されるので、緩衝器2が発生する減衰力の急変を抑制でき、車体振動を効果的に制振して、車両における乗り心地を向上することができる。すなわち、他の実施の形態におけるサスペンション装置では、目標減衰力を補正することによって、緩衝器2の伸縮速度に対する緩衝器2の減衰力の急変を緩和することができるだけでなく、目標減衰力の変化に対する減衰力の急変を緩和することができるのである。
【0069】
なお、緩和ラインD3,D4,E3,E4は、上記したところでは、一定の傾きをもった直線とされているが、徐々に傾きが変化して、出力可能ラインC3,C4、出力下限ラインA3,A4および出力上限ラインB3,B4へ滑らか接続するようにしてもよい。すなわち、緩和ラインD3,D4,E3,E4は、出力可能ラインC3,C4の傾きから徐々に傾きが小さくなって出力下限ラインA3,A4および出力上限ラインB3,B4へ滑らか接続する円弧状のラインとされてもよい。また、緩和ラインD3と緩和ラインE3の傾きや形状、長さは、ともに同じであるが異なるように設定されてもよいし、緩和ラインD4と緩和ラインE4の傾き、形状および長さについても同様に異なっていてもよい。さらに、収縮側マップM3と伸長側マップM4におけるライン形状(出力下限ラインA3,A4、出力上限ラインB3,B4、出力可能ラインC3,D4および緩和ラインD3,D4,E3,E4を繋いだ形状)は、目標電流指令値軸を中心として線対称の形状となっているが、これに限られるものではない。
【0070】
また、この例では、収縮側マップM3と伸長側マップM4を持っているが、伸長側と収縮側で減衰特性が同じであれば、マップを一つにしておき、目標減衰力の絶対値に対して目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0071】
さらに、上記したところでは、減衰力調整機構3へ与える電流量によって緩衝器2の減衰係数が変化する特性となっており、目標減衰力を上記必要減衰力から最低減衰力を減じて求めるようにしているので、収縮側マップM3と伸長側マップM4を持っていればよく、マップ演算も簡単となるが、目標減衰力を上記で言うところの必要減衰力として目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求める場合には、緩衝器2の伸縮速度に応じて目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値との関係が決定される三次元マップを用いて求めるようにしてもよいし、複数の緩衝器2の伸縮速度に対して作成した目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値のマップを保有して、緩衝器2の伸縮速度に応じてマップ間を補完することで目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0072】
ところで、緩和ラインD3,D4は、出力可能ラインC3,C4よりも傾きが小さいので、出力可能ラインC3,C4が傾きを変えずに出力下限ラインA3,A4と交わる仮想交点R1,R2に緩和ラインD3,D4を接続すると、出力可能ラインC3,C4と交わらなくなるので、仮想交点R1,R2よりも線分が上方にある。つまり、緩和ラインD3,D4を設けると、目標減衰力が0であるときに目標電流指令値が或る正の値をとることになる。
【0073】
このうち、緩和ラインD3,D4では、目標減衰力が0の近傍であって目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が異なる場合には、目標電流指令値が正の値をとることになるので、緩衝器2が僅かであるが減衰力を出力することになる。この減衰力が乗り心地に与える影響が無視できない場合、緩和ラインD3,D4を廃止するようにしてもよい。また、緩和ラインD3,D4を設けておいて、目標減衰力から目標電流指令値を求めた後に、緩衝器2の伸縮速度が緩和ラインD3,D4の影響する速度以内では0の値をとるゲインを乗じて、目標減衰力が0の近傍であるときの緩和ラインD3,D4が乗り心地に与える影響を取り除くようにしてもよい。なお、ゲインを用いる場合は、緩和ラインD3,D4を廃しするのではなく、乗り心地の悪化を及ぼす部分についてのみ、緩和ラインD3,D4の影響を排除すればよいので、緩和ラインD3,D4を設けることによる上記利点を生かしながら乗り心地の悪化を招くことを防止することができる。ゲインの設け方としては、たとえば、緩衝器2の伸縮速度によって緩和ラインD3,D4を効かせたくない範囲におけるゲインを0とし、そうでない範囲を1に設定すればよいが、図15に示すように、ゲインを0から急に1へステップ的に変化させるのではなく、ランプ的に徐々に変化させるようにしてもよい。ランプ的に変化させることで、緩衝器2の減衰力変化を滑らかにすることができる。なお、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力上限ラインB3,B4に接続される緩和ラインE3,E4の影響を取り除くようにすればよい。
【0074】
なお、他の実施の形態のサスペンション装置にあっても、上記した一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様にリミッタ42を省略することも可能であるが、リミッタ42を設ける場合、目標減衰力を制限する制限値の値を緩和ラインD3,D4が出力上限ラインB3,B4に接続する交点における目標減衰力に設定する。緩和ラインE3,E4を設けることにより、図13および図14に示すように、目標電流指令値が最大となるのは目標減衰力が緩衝器2のハードウェア上の最大減衰力を超えた値となるので、リミッタ42の制限値を目標電流指令値が最大となる目標減衰力とすればよいことになる。
【0075】
このようにすれば、他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっても、一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様に、リミッタ42の設置によって、目標減衰力を制限してから補正部43にて補正するようにすれば、補正後の目標減衰力は緩衝器2の発生可能減衰力範囲内にほぼ収まり、緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1および速度閾値Vp2における緩衝器2の発生減衰力の変化をほぼ確実に緩和することができる。
【0076】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の車両用緩衝器は、車両の制振用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 サスペンション装置
2 緩衝器
20 シリンダ
21 ピストン
22 ピストンロッド
23,24 圧力室
25 通路
26 コイル
3 減衰力調整機構
4 制御装置
41 目標減衰力演算部
42 リミッタ
43 補正部
44 目標電流指令値演算部
45 ドライバ
5 加速度センサ
6 ストロークセンサ
A1,A2,A3,A4 出力下限ライン
B1,B2,B3,B4 出力上限ライン
C1,C2,C3,C4 出力可能ライン
D3,D4,E3,E4 緩和ライン
M1,M3 収縮側マップ
M2,M4 伸長側マップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サスペンション装置にあっては、たとえば、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、供給される電流量に応じて当該緩衝器における減衰力を調節する減衰力調整機構と、当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えているものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このサスペンション装置における緩衝器は、図16に示すように、緩衝器の伸縮速度が極低速域にある場合を除き、減衰力調整機構へ供給する電流量を変化させても減衰特性(緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性)の傾きが変わらない性質を持っており、予め緩衝器の最低減衰力を把握しておき、緩衝器に発生させたい減衰力からその時の緩衝器の伸縮速度における最低減衰力を減算して目標減衰力とすれば、伸縮速度によらず、目標減衰力から減衰力調整機構へ供給すべき電流量を求めることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、特開2008−12959号公報に開示されているサスペンション装置では、緩衝器の伸縮速度が極低速域にある場合、目標減衰力通りには減衰力が発揮されず、また、緩衝器は伸縮方向と同一方向へは減衰力を発生させることができないため、目標減衰力が0ではなく、緩衝器の伸縮方向が切換って緩衝器が減衰力を発生できる状態となる場合、図16の原点Oで減衰特性の傾きが大きく変化していることから、緩衝器の発生減衰力の変化が急峻となってしまう。
【0005】
この減衰力の急変を回避するために、電流指令から双曲線正接関数を用いて減衰力調整機構へ出力する供給電流を求めることで、発生減衰力の急峻な変化を緩和する技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−12959号公報
【特許文献2】特開2010−52488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の技術では、特に、減衰力制御範囲外から減衰力制御範囲内へ電流指令が遷移する場合に減衰力の急変を緩和できる点で有効ではあるが、緩衝器の伸縮方向が切り替わり、それまで出力していた減衰力を最小にしなければならない場合には、ヒステリシスが生じて速やかに減衰力を最小にすることができずに、車両における乗り心地をかえって悪化させてしまう場合がある。
【0008】
というのは、車両のばね下振動の周波数は概ね10Hz〜20Hzと高く、電流指令から供給電流を得るのにヒステリシスがないように設定していても、特許文献1の緩衝器における減衰力調整機構やそれ以外にもソレノイドバルブを減衰力調整機構に採用している場合には、減衰力調整機構の回路中に誘導性負荷があって、当該回路の時定数によって実電流を下降させるのに無駄時間が生じるため、供給電流を指令電流から求めた通りに制御することができない。たとえば、緩衝器に収縮方向の減衰力を発揮させることを条件として、緩衝器が収縮してから伸長に転じ、さらに、収縮するまでを考えると、緩衝器は自身では積極的に伸縮させる力を発揮できないので、この場合、緩衝器が収縮しているときには緩衝器の減衰力を限りなく小さくすることになる。この緩衝器が減衰力調整機構へ供給する電流を0にすると減衰力を最低とすることができるとすると、図17に示すように、緩衝器が収縮行程にあるときには、減衰力調整機構へ供給する電流を0としているので実電流は0に維持され(図中線I1)、緩衝器が伸長行程に転じると減衰力調整機構へ供給されている実電流の急変が緩和されて徐々に大きくなって目標減衰力を発揮させる電流値にまで上昇する(図中線I2)。そして、緩衝器がさらに反転して収縮行程に至ると、今度は、供給電流が徐々に減少することになるが、先程のように、無駄時間の問題があって、実電流はすぐには0にはならず、応答に遅れが生じて、図中で線I1に対して収縮側にずれてヒステリシスが生じる(図中線I3)。
【0009】
このようにヒステリシスを生じると、緩衝器の伸縮方向の切換りに実電流が残ってしまって、緩衝器が意図しない減衰力を発揮することになり、緩衝器の伸縮速度が0の近傍で減衰力が急変してしまい、車両における乗り心地を悪化させてしまう可能性があるのである。
【0010】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができるサスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、減衰力を調節する減衰力調整機構と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えたサスペンション装置において、上記制御装置は、上記緩衝器の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和する補正手段を備え、当該補正手段は、緩衝器の伸縮速度が上記所定速度を超える値に設定される速度閾値を超えると当該伸縮速度が0となるまでは、発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値と上記所定速度の差分だけ速度増側へオフセットして目標減衰力を補正するとともに差分から0までは目標減衰力を0とするよう補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサスペンション装置によれば、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施の形態におけるサスペンション装置のシステム構成図である。
【図2】一実施の形態におけるサスペンション装置の緩衝器の一例を示した図である。
【図3】一実施の形態におけるサスペンション装置の緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性(減衰特性)を示した図である。
【図4】目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図5】緩衝器の伸縮速度が速度閾値を超えない場合の補正後の目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図6】目標減衰力と所定速度との相関関係を説明する図である。
【図7】緩衝器の伸縮速度が速度閾値を超えて0となるまでの補正後の目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係を示す図である。
【図8】補正手段による補正処理を実際の緩衝器の動きに即して説明する図である。
【図9】補正手段によって補正された指令に対する減衰力調整機構に実際に流れる電流を説明する図である。
【図10】一実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する収縮側マップを説明する図である。
【図11】一実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する伸長側マップを説明する図である。
【図12】一実施の形態におけるサスペンション装置の補正後の目標減衰力の一例を示した図である。
【図13】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標電流指令値を得る演算に使用する収縮側マップを説明する図である。
【図14】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標減衰力から目標評電流指令値を得る演算に使用する伸長側マップを説明する図である。
【図15】他の実施の形態におけるサスペンション装置の目標電流指令値或いは目標電圧指令値に乗ずるゲインを説明する図である。
【図16】従来のサスペンション装置の緩衝器の伸縮速度に対する減衰力の特性(減衰特性)を示した図である。
【図17】従来のサスペンション装置の緩衝器における減衰力調整機構に流れる実電流と緩衝器の伸縮速度との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態におけるサスペンション装置1は、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器2と、供給される電流量に応じて当該緩衝器2における減衰力を調節可能な減衰力調整機構3と、当該減衰力調整機構3を制御する制御装置4とを備えて構成されている。
【0015】
以下、各部材について詳細に説明すると、緩衝器2は、図2に示すように、シリンダ20と、シリンダ20内に摺動自在に挿入されるピストン21と、シリンダ20内に移動自在に挿入されてピストン21に連結されるピストンロッド22と、シリンダ20内にピストン21で区画されるとともに磁気粘性流体が充填される二つの圧力室23,24と、圧力室23,24同士を連通する通路25と、通路25を通過する磁気粘性流体に磁気を与えるコイル26とを備えて構成されており、車両の車体と車輪との間に介装されている。そして、この緩衝器2は、シリンダ20とピストンロッド22の軸方向の相対移動である伸縮作動に応じて圧力室23,24内に充填された磁気粘性流体が通路25を通過する際にコイル26への通電によって磁気を与えて、磁気粘性流体の移動に抵抗を与え、圧力室23,24間に差圧を生じせしめて、当該伸縮作動を抑制する減衰力を発揮し、車体と車輪の上下方向の相対移動を抑制するようになっている。なお、緩衝器2が片ロッド型緩衝器である場合、緩衝器2は、図示はしないが、シリンダ20内にピストンロッド22が出入りする体積を補償するために気体室やリザーバを備える。また、詳しくは図示しないが、緩衝器2がリザーバを備えて伸長しても収縮してもシリンダ20内からリザーバへ通じる通路を介して流体が排出されるユニフロー型に設定される場合、シリンダ20からリザーバへ通じる通路の途中にコイルを設けて、流体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するようにしてもよい。
【0016】
したがって、この実施の形態の場合、減衰力調整機構3は、磁気粘性流体に磁気を与えるコイル26とされていて、コイル26へ与える電流量を調節することにより、磁気粘性流体へ与える磁界の強さを調節することで、当該磁気粘性流体が通路25を通過する流れに与える抵抗の大きさを調節し、緩衝器2の発生減衰力を調節することができるようになっている。なお、この実施の形態の場合、図3に示すように、コイル26へ電流供給をしないと、磁気粘性流体に磁気が与えられず、緩衝器2の減衰特性は図中一点鎖線で示した最小の減衰特性Lとなり、コイル26への供給電流量が大きければ大きいほど、緩衝器2の発生減衰力も大きくなるようになっていて、ハードウェアとして制限される最大の電流供給量をコイル26へ与えると緩衝器2の減衰特性は図中実線で示した最大の減衰特性Hとなる。また、この実施の形態の場合、制御が容易となるように、緩衝器2の伸縮速度が極低速域にある場合を除き、コイル26へ供給する電流量に応じて、図3中破線で示すように傾きを一定に保ったまま減衰特性を最小Lから最大Hまで上下方向へ調節することができるようになっている。本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、緩衝器の伸縮速度に極低速域との区分を設けているが、極低速域は緩衝器の伸縮速度の絶対値が0から任意の速度までの範囲を示しており、当該範囲は、緩衝器2の設計に応じて任意に設定することができる。なお、図3で示したところでは、緩衝器の収縮を抑制する方向(伸長方向)の減衰力を正とし、緩衝器の伸長を抑制する方向(収縮方向)の減衰力を負とし、伸縮速度は、緩衝器の収縮方向を正とし、緩衝器の伸長方向を負として扱っている。このことは、後述する制御装置4における処理のうち補正部43での処理以外で同様である。
【0017】
緩衝器2の上記した構成は、一例であって、たとえば、緩衝器2が電気粘性流体を圧力室23,24内に充填している場合、減衰力調整機構3は、上記通路25に電圧を印加できるものとすればよく、減衰力の調節に際し供給電圧を調節することで行うようにすればよい。また、圧力室23,24内に磁気粘性流体や電気粘性流体以外の液体、或いは気体を充填する場合には、減衰力調整機構3を通路25の途中に設けるソレノイド弁として供給電流量によって流路面積を調節して緩衝器2の発生減衰力を制御するようにしてもよい。
【0018】
さらに、緩衝器2は、上記以外にも、電磁力でばね上部材とばね下部材の相対移動を抑制する減衰力を発揮する電磁緩衝器とされてもよく、電磁緩衝器としては、たとえば、モータと、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを備えて構成されるか、リニアモータとされる。このように緩衝器2が電磁緩衝器である場合には、減衰力調整機構3は上記モータ或いはリニアモータに流れる電流を調節するモータ駆動装置とされればよい。なお、運動変換機構としては、たとえば、螺子軸と螺子軸に螺合するボール螺子ナットとでなる送り螺子機構やラックアンドピニオンを採用することができる。
【0019】
また、この実施の形態では、制御装置4は、図1に示すように、スカイフック制御側に則って、緩衝器2の減衰力を制御するようになっており、そのため、車体の上下方向加速度を検出する加速度センサ5と、緩衝器2の伸縮速度を検知するためストロークセンサ6とを備えている。さらに、制御装置4は、目標減衰力を求める目標減衰力演算部41と、目標減衰力をリミッタ処理するリミッタ42と、リミッタ処理後の目標減衰力を補正する補正部43と、補正後の目標減衰力からマップ演算により目標電流指令値を求める目標電流指令値演算部44と、目標電流指令値の入力を受けて減衰力調整機構3としてのコイル26へ電流を供給するドライバ45とを備えている。
【0020】
なお、制御装置4における目標減衰力演算部41、リミッタ42、補正部43および目標電流指令値演算部44は、図示はしないが具体的にはたとえば、緩衝器2の制御に必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、上記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、CPUが上記プログラムを実行することで上記各部41,42,43,44が実現される。
【0021】
目標減衰力演算部41は、加速度センサ5で検知した上下加速度を積分することで車体の上下速度を得て、この上下速度にスカイフック減衰係数を乗じて必要減衰力を求める。そして、緩衝器2の伸縮速度から減衰力調整機構3としてのコイル26へ電力供給しない場合における当該伸縮速度での最小の減衰力を求めて、必要減衰力からこの最少減衰力を減算して目標減衰力を求める。このように、目標減衰力は、必要減衰力から図3中の減衰特性Lで示した最低減衰力分を除去したものになる。すると、この緩衝器2の減衰特性が緩衝器の伸縮速度が極低速域を超えるとコイル26への供給電流量によらず、傾きが同じであるので、上述したように最低減衰力を減算して求めた目標減衰力と緩衝器の伸縮速度との関係は、図3に示した減衰特性を原点回りに回転させた図4に示すがごとくとなり、緩衝器2の伸縮速度によらず、目標減衰力と減衰力調整機構3へ供給すべき電流量は一対一の関係となる。
【0022】
つまり、目標減衰力を求めれば、減衰力調整機構3へ供給すべき電流量が決まる関係となる。なお、緩衝器2の伸縮速度は、上記ストロークセンサ6で検知した緩衝器2のストローク(伸縮変位)を微分することで得ることができるが、車輪を支持するスピンドル等に上下加速度を検知する加速度センサを設け、当該車輪の上下加速度を積分して車輪の上下速度を得て、車体の上下速度と車輪の上下速度との差をとって緩衝器2の伸縮速度を得るようにしてもよい。
【0023】
このように制御装置4は、加速度センサ5で検知した上下加速度を積分して車体の上下速度を演算し、ストロークセンサ6で検知した緩衝器2のストロークを微分して緩衝器2の伸縮速度を演算し、上下速度にスカイフック減衰係数を乗じて必要減衰力を求め、緩衝器2の伸縮速度から当該伸縮速度における緩衝器2の最低減衰力を求め、必要減衰力から最低減衰力を減算して目標減衰力を求める。さらに、この目標減衰力から減衰力調整機構3としてのコイル26へ供給する電流量に対応する目標電流指令値を求めるが、こうして求めた目標減衰力から直接減衰力調整機構3へ供給する電流量を求めると、目標減衰力が緩衝器2の伸縮速度が極低速域にあって実際に緩衝器2が発生できない値に設定されて緩衝器2の伸縮方向が切換って緩衝器が減衰力を発生できる状態となる場合や目標減衰力が緩衝器2の発生可能減衰力範囲内から最大減衰力を超えてしまった場合に、緩衝器2の減衰力の変化が急峻となってしまう。
【0024】
そこで、本発明にあっては、減衰力調整機構3へ与える指令を補正して緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する補正手段としての補正部43を備えている。この補正部43は、この実施の形態では、目標減衰力を補正することで、減衰力調整機構3へ与える指令を補正するようになっており、具体的には、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1を超える値に設定される速度閾値Vp2を超えることなく、速度閾値Vp2以下の範囲にある場合と、緩衝器2の伸縮速度が速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合とで緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を違えて補正を行うようになっている。なお、この補正部43は、目標減衰力の方向と異なる緩衝器2の伸縮方向を正として、目標減衰力の方向と同じ緩衝器2の伸縮方向を負として補正を行うようになっている。
【0025】
まず、緩衝器2の伸縮速度が所得速度Vp1を超える値に設定される速度閾値Vp2を超えることなく、速度閾値Vp2以下の範囲内である場合の補正部43の処理について説明する。具体的には、補正部43は、目標減衰力の方向(目標減衰力が緩衝器2に指示する減衰力発生方向)と逆向きの緩衝器2の伸縮方向を正とし、緩衝器2の伸縮速度をxとすると、緩衝器2の伸縮速度xが0≦x≦Vp1/2の範囲にあるときには、補正係数αをα=2x2/Vp12を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp1/2<x≦Vp1の範囲にあるときには、補正係数αをα=−2(x−Vp1)2/Vp12+1を演算して求め、こうして求めた補正係数αに上記目標減衰力を乗じて目標減衰力を補正する。なお、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができない。目標減衰力が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、目標減衰力の方向が緩衝器の伸縮を助成する方向である場合、緩衝器2は目標減衰力と同方向へ減衰力を発揮することができないので、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする、つまり、最小とする必要がある。そのため、目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が同一の場合、具体的には、補正部43で採用する緩衝器2の伸縮方向の符号の定義に則って、伸縮速度xが負の値を採る場合、補正部43は、補正係数αを0として目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力は0となる。また、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超える範囲である場合、緩衝器2の伸縮方向と目標減衰力の方向とが異なり、目標減衰力を補正する必要がないので補正係数αを1として補正後の目標減衰力を演算する。
【0026】
すると、目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする場合を例にして説明すると、補正後の目標減衰力は、図5中の実線で示すように、緩衝器2が伸長作動を呈していて目標減衰力の方向に一致している場合には0となり、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。ここで、所定速度Vp1は、補正後の目標減衰力閾値が緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収まるように設定されるとよく、目標減衰力に対して変動しない一定の値をとるようにしてもよいし、目標減衰力の大きさによって変化するようにしてもよい。また、目標減衰力の方向が緩衝器2を収縮させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする場合を例にして説明すると、補正後の目標減衰力は、図5中の破線で示すように、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向に一致している場合には0となり、緩衝器2が伸長作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。なお、伸縮速度xは、目標減衰力の方向と逆向きの緩衝器2の伸縮方向を正としているが、図5中では、緩衝器2の伸長方向の速度を負の値とし、緩衝器2を収縮させる方向の減衰力を負の値としているので、補正後の目標減衰力は破線のようになる。
【0027】
目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向である場合を例にすると、図6に示すように、目標減衰力が最大であり減衰力調整機構3への供給電流量が最大となる場合の減衰特性k1に対して緩衝器2が出力可能な減衰力範囲は、減衰特性k1と伸縮速度軸との間となり、これに補正後の目標減衰力の軌跡G1を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度Vp1をVp1(1)以上にする必要がある。これに対して、目標減衰力を小さくして、減衰力調整機構3への供給電流量も小さくして減衰特性k2となる場合、補正後の目標減衰力の軌跡G2を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度をVp1(2)以上にする必要がある。さらに目標減衰力を小さくして、減衰力調整機構3への供給電流量も小さくして減衰特性k3となる場合、補正後の目標減衰力の軌跡G3を当該出力可能範囲内に収める場合には、所定速度をVp1(3)以上にする必要がある。したがって、この緩衝器2の場合、目標減衰力が大きくなればなるほど、所定速度Vp1を大きくしなければならないことが分かる。このように目標減衰力が小さい場合には、補正後の目標減衰力が目標減衰力に等しくなる所定速度Vp1も小さくすることができ、このように目標減衰力をパラメータとして所定速度Vp1を変化させることで、補正後の目標減衰力をいち早く補正前の目標減衰力に追従させることができるメリットがある。
【0028】
つづいて、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合における補正部43の処理について説明する。具体的には、補正部43は、当該速度閾値Vp2から上記所定速度Vp1を差し引きした値である速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分をβとすると、一度、伸縮速度xがx>Vp2を満たすと伸縮速度xが0になるまでは、緩衝器2の伸縮速度xがβ≦x≦Vp2−Vp1/2の範囲にあるときは、補正係数αをα=2(x−β)2/Vp12を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp2−Vp1/2<x≦Vp2の範囲にあるときは、補正係数αを、α=−2(x−β−Vp1)2/Vp12+1を演算して求めるとともに、緩衝器2の伸縮速度xが0≦x<βの範囲にあるときは、補正係数αを0とし、こうして求めた補正係数αに上記目標減衰力を乗じて目標減衰力を補正する。なお、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができない。目標減衰力が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力と同方向へ減衰力を発揮することができないので、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が同一の場合、補正部43は、補正係数αを0として目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力は0となる。また、補正部43は、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超える範囲である場合、緩衝器2の伸縮方向と目標減衰力の方向とが異なり、目標減衰力を補正する必要がないので補正係数αを1として補正後の目標減衰力を演算する。
【0029】
以上より、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えてから0となるまでの場合、目標減衰力の方向が緩衝器2を伸長させる方向であって目標減衰力をある一定の値とする状況を例にすると、補正後の目標減衰力は、図7中の実線で示すように、緩衝器2が収縮作動を呈していて目標減衰力の方向と異なるとともに緩衝器2の発生上限減衰力以下であって、緩衝器2の伸縮速度がβから速度閾値Vp2以下である場合には、緩衝器2の伸縮速度xよって変化し、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると、補正係数が1となって補正後の目標減衰力は目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力と一致するようになる。なお、目標減衰力の方向が緩衝器2を収縮させる方向である場合には、補正後の目標減衰力は、図7中の破線で示すようになる。図7中では、緩衝器2の伸長方向の速度を負の値とし、緩衝器2を収縮させる方向の減衰力を負の値としているので、補正後の目標減衰力は破線のようになる。
【0030】
さらに、上記補正部43の補正処理を実際の緩衝器2の動きに即して説明する。目標減衰力の方向が変わらず、緩衝器2の伸縮速度xが負の値から正の値に転じて速度が増加し、さらに、反転して負に転じる場合について、補正部43による目標減衰力の補正については、図8に示すようになる。緩衝器2の伸縮速度xが負の値から正の値に転じて速度が増加していく過程では、図8中の実線で示すように、伸縮速度xが負の場合には、補正係数α=0として補正され、速度閾値Vp2を超えるまでは0≦x≦Vp1の範囲では上記したように補正され、所定速度Vp1を超えると補正係数α=1として補正される。その後、伸縮速度xが増加して速度閾値Vp2を超え、伸縮速度xが遅くなって、やがて0になり、伸縮方向が反転して伸縮速度xが負になる過程では、図8中破線で示すように、伸縮速度xがβ≦x≦Vp2−Vp1/2の範囲にあると上記のごとく補正され、所定速度を超えると補正係数α=1として補正され、伸縮速度xがx<βの範囲では補正係数α=0として補正され、伸縮速度xが負となると補正係数α=0として補正される。つまり、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えた場合における補正係数αは、図8に示すように、上記した緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えない場合における補正係数αに対して、当該速度閾値Vp2から上記所定速度Vp1を差し引きした値である速度閾値Vp2と所定速度Vp1の差分βだけ速度増側となる図中右方へオフセットされている。すなわち、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えない場合には、補正手段である補正部43は、上記緩衝器2の伸縮速度が0および所定速度Vp1における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和するが、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると伸縮速度xが0になるまでは、緩衝器2の発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値Vp2と上記所定速度Vp1の差分βだけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正し、差分βから伸縮速度xが0までの範囲において発生減衰力を最小にするようになっている。
【0031】
このようにすることで、伸縮速度xが速度閾値Vp2を超える場合には、伸縮速度xが減少に転じると、早い段階から目標減衰力が補正されて減少に転じるようになり、この目標減衰力が後段の目標電流指令値演算部44、ドライバ45を介して指令となって減衰力調整機構3へ供給されるので、図9に示すように、当該指令も伸縮速度xが減少に転じると早い段階から0へ変化して、減衰力調整機構3へ与える指令に対して減衰力調整機構3に流れる電流が遅れても、緩衝器2の伸縮速度xが0となるときには、減衰力調整機構3におけるコイル26に流れる実電流を0にすることができる。なお、図9中、実線は、補正手段としての補正部43によって目標減衰力を補正することで補正された指令を示しており、破線は、減衰力調整機構3のコイル26に流れている実電流を示している。
【0032】
ここで、速度閾値Vp2は、上記所定速度Vp1を超える値に設定されればよいのであるが、所定速度Vp1との差分βが小さすぎると、減衰力調整機構3におけるコイル26に緩衝器2の伸縮速度が0であるときに電流が残留してしまうので、減衰力調整機構3および電流を供給するドライバ45とでなる回路における時定数(この実施の形態の場合、コイル26を含めたドライバ45の回路の時定数)と車両走行中のばね下振動周波数から充分に緩衝器2の伸縮速度が0のときに上記残留電流が発生しない程度に設定されれば良い。
【0033】
なお、速度閾値Vp2についても、緩衝器2の伸縮速度が0のときに上記残留電流が発生しない限りにおいて、所定速度Vp1と同様に、目標減衰力の大きさに応じて、その値が変化するようにされてもよい。
【0034】
引き続き、補正部43の後段の目標電流指令値演算部44は、補正後の目標減衰力から電流量を求める。目標電流指令値演算部44で求めた目標電流指令値は、ドライバ45へ入力され、ドライバ45は、目標電流指令値に対応する電流を指令として減衰力調整機構3へ出力する。上記した演算を行って制御装置4は、減衰力調整機構3を介して緩衝器2の減衰力を調節する。つまり、補正部43は、この場合、目標減衰力を求める目標減衰力演算部41の後段にあって、目標減衰力を補正して減衰力調整機構3へ与える指令を補正している。
【0035】
目標電流指令値演算部44は、具体的には、上記目標減衰力から目標電流指令値を得るマップ演算を行う。なお、この実施の形態では、目標電流指令値演算部44は、マップ演算を行わずに目標減衰力から目標電流指令値を求めることもできる。
【0036】
上記マップ演算に使用するマップは、2つあり、具体的には、緩衝器2が収縮作動する場合に使用される収縮側マップM1と、緩衝器2が伸長作動する場合に使用される伸長側マップM2がある。つまり、マップは、緩衝器2の伸縮方向毎に用意されている。収縮側マップM1は、図10に示すように、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA1と、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なるものの出力上限を上回る場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB1と、出力下限ラインA1と出力上限ラインB1とを結ぶとともに、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なり緩衝器2が出力可能な場合、つまり、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC1を備えている。
【0037】
対して、伸長側マップM2は、図11に示すように、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA2と、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なるものの出力上限を上回る場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB2と、出力下限ラインA2と出力上限ラインB2とを結ぶとともに、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向が異なり緩衝器2が出力可能な場合、つまり、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC2を備えている。
【0038】
なお、収縮側マップM1および伸長側マップM2において、目標減衰力は緩衝器2に伸長方向に減衰力を発生させる値を正とし、つまり、収縮を妨げる減衰力を緩衝器2に発揮させる目標減衰力の値を正としてあり、反対方向の減衰力を発生させる目標減衰力を負としている。この実施の形態で目標電流指令値が目標減衰力の如何によらず、0以上の値となるのは、減衰力調整機構3への電流供給によって減衰係数を調節しているからである。上記したところでは、目標減衰力が緩衝器2の出力可能範囲にある場合、減衰力調整機構3へ与える電流と緩衝器2の発生減衰力が比例関係にあるので、上記収縮側マップM1および伸長側マップM2において出力可能ラインC1,C2は、目標電流指令値が電流値目標減衰力に応じて比例的に変化するので直線となるが、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係が非線形である場合には、出力可能ラインC1,C2も発生減衰力と電流との関係に即したものとされればよい。つまり、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が途中で屈曲点を持っているのであれば、出力可能ラインC1,C2も途中に屈曲点を持つ折れ線で示され、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が曲線であれば、出力可能ラインC1,C2も曲線で示されることになる。
【0039】
上述したように緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができないので、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力の方向と同方向へ減衰力を発揮することができず、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、緩衝器2の減衰力を最小とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を0とする。すなわち、出力下限ラインA1,A2は、この場合、0で一定となる。
【0040】
また、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、緩衝器2の減衰力の出力上限を上回る場合、緩衝器2の発生減衰力を目標減衰力に追随させることができないが、緩衝器2の発生減衰力を限りなく目標減衰指令値に近づけるため、緩衝器2の減衰力を最大とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を所定の上限値とする。すなわち、出力上限ラインB1,B2は、この場合、ハードウェア上の電流値の上限値で一定となる。
【0041】
そして、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な範囲である場合には、上述したように目標減衰力に対して目標電流指令値が一対一の関係となり、目標減衰力に対して目標電流指令値が比例することになり、出力可能ラインC1,C2は、目標減衰力に対してある傾きをもって比例する。この出力可能ラインC1,C2の傾きは、目標減衰力軸に対する傾きは一定で、減衰力調整機構3への供給電流量と緩衝器2における減衰力との関係に依存して決定される。
【0042】
なお、電気粘性流体を用いた緩衝器の場合、収縮側マップM1と伸長側マップM2における縦軸を目標電圧指令値とし、制御装置4は、目標減衰力から目標電圧指令値を求めるようにすればよい。また、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力下限ラインA1,A2をハードウェア上の電流値の上限値で一定とし、出力上限ラインB1,B2を0で一定とするようなマップとすればよい。
【0043】
目標電流指令値は、この実施の形態の場合、減衰力調整機構3へ供給する電流値そのものとして説明しているが、たとえば、減衰力調整機構3のコイル26をPWM制御する場合には、目標電流指令値を供給電流値と一対一の関係となるデューティ比として求め、コイル26にPWMパルス電圧を印加するドライバ45へデューティ比でなる目標電流指令値を与えるようにして、減衰力調整機構3への供給電流を制御するようにしてもよい。また、ドライバは、制御装置4側に設けるのではなく、減衰力調整機構3側に設けるようにしてもよい。
【0044】
また、この例では、収縮側マップM1と伸長側マップM2を持っているが、伸長側と収縮側で減衰特性が同じであれば、マップを一つにしておき、目標減衰力の絶対値に対して目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記したところでは、減衰力調整機構3へ与える電流量によって緩衝器2の減衰係数が変化する特性となっており、目標減衰力を上記必要減衰力から最低減衰力を減じて求めるようにしているので、収縮側マップM1と伸長側マップM2を持っていればよく、マップ演算も簡単となるが、目標減衰力を上記で言うところの必要減衰力として目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求める場合には、緩衝器2の伸縮速度に応じて目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値との関係の三次元グラフをマップ化しておき、当該三次元マップを用いて求めるようにしてもよいし、複数の緩衝器2の伸縮速度に対して作成した目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値のマップを保有して、緩衝器2の伸縮速度に応じてマップ間を補間することで目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0046】
なお、目標電流指令値を求める目標電流指令値演算部44の後段に補正部43を配して、目標電流指令値を補正することで、減衰力調整機構3へ与える指令(電流)を補正するようにしてもよく、また、所定速度については、上述のように目標減衰力に応じて変化させる場合と同様に目標電流指令値の大きさによって変化させるようにしてもよい。
【0047】
上記したところから理解できるように、本実施の形態のサスペンション装置1によれば、目標減衰力を補正することで、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めつつ、緩衝器2の伸縮速度xが0および所定速度Vp1における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和することができ、また、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値Vp2を超えると、その後、伸縮速度xが減少に転じて0となる場合に、所定速度Vp1を超える速度閾値Vp2と差分βで発生減衰力変化を緩和し、差分βから伸縮速度xが0までの範囲において発生減衰力を最小にするように補正するので、減衰力調整機構3への指令が早い段階から緩衝器2の発生減衰力を最小とする値に変化するから、当該指令に対して減衰力調整機構3に流れる実電流の変化が遅れても、緩衝器2の伸縮速度xが0となるときには、減衰力調整機構3に流れる実電流を0にすることができる。
【0048】
このように、緩衝器2の伸縮速度xが0を横切る伸縮方向の切換りに減衰力調整機構3に電流が残留することがないので、緩衝器が意図しない減衰力を発揮することがなくなり、緩衝器2の伸縮速度が0の近傍で減衰力が急変してしまって、車両における乗り心地を悪化させてしまうこともなくなる。したがって、本発明のサスペンション装置1によれば、緩衝器の発生減衰力の急変を確実に緩和して車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0049】
また、本実施の形態のサスペンション装置1では、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるので、減衰力調整機構3へ無駄電流を与えずに済み、省エネルギとなる。つまり、目標減衰力を補正しない場合、図12の破線で示すように、緩衝器の伸縮速度が極低速域にあっても目標減衰力に一対一となる電流量を減衰力調整機構へ出力することになるが、本実施の形態におけるサスペンション装置1では、図12の実線で示すように、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるので、減衰力調整機構3へ無駄電流を与えずに済むのである。なお、図12の補正後の目標減衰力は、目標減衰力が緩衝器2に伸長方向へ減衰力を発生させるものである場合を示しているが、目標減衰力が緩衝器2に収縮方向へ減衰力を発生させるものである場合には、原点を中心に実線を180度回転させたものとなり、目標減衰力が緩衝器2に収縮方向へ減衰力を発生させる場合にあっても、補正後の目標減衰力を緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収めることができるのは当然である。
【0050】
また、上記補正された減衰力調整機構3への指令の変化率は、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1の二分の一までの範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に大きく(小さく)なり、緩衝器2の伸縮速度が所定閾値Vp1の二分の一を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加に伴って徐々に小さくなるので、車体へ急な加速度変化を与えることがなく、さらに、伸縮速度xが速度閾値をVp2超えても、当該指令の変化率は、緩衝器2の伸縮速度xがβ+Vp1/2を超えて速度閾値Vp2の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に小さく(大きく)なり、緩衝器2の伸縮速度xがβからβ+Vp1/2の範囲にあるときには、緩衝器2の伸縮速度の増加(減少)に伴って徐々に大きく(小さく)なるので、この場合にあっても、車体へ急な加速度変化を与えることがない。
【0051】
さらに、この場合、補正係数αが上記演算式で演算されるので、緩衝器2の伸縮速度が0から所定速度Vp1の二分の一までの範囲にあるときの減衰特性と緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1の二分の一を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときの減衰特性とが連続して滑らかにつながり、緩衝器2の伸縮速度xがβ+Vp1/2を超えて速度閾値Vp2の範囲にあるときの減衰特性と、緩衝器2の伸縮速度xがβからβ+Vp1/2の範囲にあるときの減衰特性とが連続して滑らかにつながるので、車体への急な加速度変化を与えない効果を高めることができる。
【0052】
なお、補正係数αの演算に際しては、緩衝器2の伸縮速度xが0からVp1/2の範囲にあるときには、補正係数αをα=−(Vp12−4x2)1/2/2Vp1+1/2を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度がVp1/2を超えて所定速度Vp1の範囲にあるときには、補正係数αをα={Vp12−4(x−4Vp1)2}1/2/2Vp1+1/2を演算して求めるようにしてもよい。また、緩衝器2の伸縮速度xが速度閾値を超えた場合において、緩衝器2の伸縮速度xがβからVp2−Vp1/2の範囲にあるときは、補正係数αをα=α=−{Vp12−4(x−β)2}1/2/2Vp1+1/2を演算して求め、緩衝器2の伸縮速度xがVp2−Vp1/2からx速度閾値Vp2の範囲にあるときは、補正係数αを、α=[Vp12−4{(x−β)−4Vp1}2]1/2/2Vp1+1/2を演算して求めるようにしてもよい。
【0053】
この場合、補正後の目標減衰力は、二つの接する半径Vp1/2の円の軌跡上を辿るように変化することになるが、このように演算して求めても、減衰特性が連続して滑らかにつながり、車体へショックを与えることもない。
【0054】
また、補正係数αの演算には、上記以外にも、予め補正係数を演算するためのマップを用いてもよいし、三角関数や双曲線関数を用いて緩衝器2の伸縮速度xが0、所定速度Vp1、差分βおよび速度閾値Vp2における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和するようにしてもよいが、二次関数で補正係数αを演算する方が計算負荷が小さいので、制御装置4の各部を実現するCPU等の演算装置の負荷を低減でき、安価な演算装置の使用が可能となってサスペンション装置1のコストを低減できる。なお、補正係数αの演算に当たり、上記した演算式を用いること、ルート演算を行う必要がないのでより計算負荷を軽減できる利点もある。
【0055】
本実施の形態のサスペンション装置1では、上述のようにして減衰力の急峻な変化を抑制できるのであるが、目標減衰力がそもそも緩衝器2の最大減衰力を超える大きな値となって補正部43で補正しても補正後の目標減衰力が緩衝器2の最大減衰力を超えてしまうような場合、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点の減衰力の急峻な変化の抑制効果を弱めてしまう場合がある。というのは、目標減衰力が過大となる場合、補正係数αを目標減衰力に乗じても、緩衝器2の最大減衰力を超えてしまって、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における緩衝器2の発生減衰力の変化を効果的に緩和することが難しくなるからである。そこで、本実施の形態のサスペンション装置1にあっては、目標減衰力演算部41で演算した目標減衰力を制限値にクランプするリミッタ処理を行うリミッタ42を備えている。リミッタ42は、具体的には、この場合、目標減衰力を緩衝器2の最大減衰力に対応する値に制限している。このようにリミッタ42により目標減衰力は緩衝器2の最大減衰力から上記最低減衰力を減算した値を最大値として制限されるので、補正部43における補正係数αで目標減衰力を補正すると、補正後の目標減衰力は必ず緩衝器2の発生可能減衰力範囲内に収まり、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における緩衝器2の発生減衰力の変化を緩和することができる。なお、このリミッタ処理をせずとも目標電流指令値演算部44で目標減衰力から目標電流指令値を得る際に、目標電流指令値がハードウェア上の最大値を超えないように配慮されるので、目標電流指令値演算部44自体も広義にはリミッタとして機能するが、リミッタ42を用い、目標減衰力を補正手段としての補正部43で補正することで、緩衝器2の伸縮速度xが所定速度Vp1および速度閾値Vp2となる時点における発生減衰力の変化を確実に緩和することができる点で有意義である。
【0056】
つづいて、他の実施の形態におけるサスペンション装置について説明する。この他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっては、目標電流指令値演算部44で使用するマップが上記一実施の形態におけるサスペンション装置1と異なっている。したがって、他の実施の形態におけるサスペンション装置におけるシステム構成は、図1に示した一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様である。
【0057】
そのため、他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっても、目標減衰力を補正し、補正後の目標減衰力から目標電流指令値を求めて減衰力調整機構3へ供給する電流量を調節するようになっており、上記目標減衰力の補正による作用効果は一実施の形態のサスペンション装置1と同様である。
【0058】
以下、説明の重複を避けるため、一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様の部分については説明を省略し、異なる部分について詳細に説明することとする。
【0059】
つづいて、この他の実施の形態におけるサスペンション装置における目標電流指令値演算部44で使用するマップについて説明する。この目標電流値指令値演算部44では、マップを用いて補正部43で補正した目標減衰力から目標電流指令値を得るマップ演算を行い、目標電流指令値をドライバ45へ出力する。
【0060】
上記マップ演算に使用するマップは、2つあり、具体的には、緩衝器2が伸長作動する場合に使用される収縮側マップM3と、緩衝器2が収縮作動する場合に使用される伸長側マップM4がある。つまり、マップは、緩衝器2の伸縮方向毎に用意されている。収縮側マップM3は、図13に示すように、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA3と、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB3と、出力下限ラインA3と出力上限ラインB3とを結ぶとともに、緩衝器2が収縮しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC3と、出力可能ラインC3と出力下限ラインA3との間を接続する緩和ラインD3と、出力可能ラインC3と出力上限ラインB3との間を接続する緩和ラインE3とを備えている。対して、伸長側マップM4は、図14に示すように、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に伸長方向の減衰力の発生を指示している場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力下限ラインA4と、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しているが出力上限を上回る場合に対応して目標減衰力の変化に対して一定値をとる出力上限ラインB4と、出力下限ラインA4と出力上限ラインB4とを結ぶとともに、緩衝器2が伸長しており目標減衰力が緩衝器2に収縮方向の減衰力の発生を指示しており出力可能範囲にある場合に対応して目標減衰力に対して比例的に変化する出力可能ラインC4と、出力可能ラインC4と出力下限ラインA4との間を接続する緩和ラインD4と、出力可能ラインC4と出力上限ラインB4との間を接続する緩和ラインE4とを備えている。なお、収縮側マップM3および伸長側マップM4において、目標減衰力は緩衝器2に伸長方向に減衰力を発生させる値を正とし、つまり、収縮を妨げる減衰力を緩衝器2に発揮させる目標減衰力の値を正としてあり、反対方向の減衰力を発生させる目標減衰力を負としている。この実施の形態で目標電流指令
値が目標減衰力の方向の如何によらず、0以上の値となるのは、減衰力調整機構3への電流供給によって減衰係数を調節しているからである。なお、上記したところでは、目標減衰力が緩衝器2の出力可能範囲にある場合、減衰力調整機構3へ与える電流と緩衝器2の発生減衰力が比例関係にあるので、上記収縮側マップM1および伸長側マップM2において出力可能ラインC1,C2は、目標電流指令値が電流値目標減衰力に応じて比例的に変化するので直線となるが、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係が非線形である場合には、出力可能ラインC1,C2も発生減衰力と電流との関係に即したものとされればよい。つまり、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が途中で屈曲点を持っているのであれば、出力可能ラインC1,C2も途中に屈曲点を持つ折れ線で示され、緩衝器2の発生減衰力と電流との関係を示す線が曲線であれば、出力可能ラインC1,C2も曲線で示されることになる。
【0061】
ここで、緩衝器2は、パッシブな緩衝器であり、自発的に推力を発生することができないので、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と同じ方向である場合、緩衝器2は目標減衰力の方向と同方向へ減衰力を発揮することができないため、緩衝器2の発生減衰力を限りなく小さくする必要がある。そのため、緩衝器2の減衰力を最小とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を0とする。すなわち、出力下限ラインA3,A4は、この場合、0で一定となる。
【0062】
また、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、緩衝器2の減衰力の出力上限を上回る場合、緩衝器2の発生減衰力を目標減衰力に追随させることができないが、緩衝器2の発生減衰力を限りなく目標減衰力に近づけるため、緩衝器2の減衰力を最大とすべく、この実施の形態では目標電流指令値を所定の上限値とする。すなわち、出力上限ラインB3,B4は、この場合、ハードウェア上の電流値の上限値で一定となる。
【0063】
そして、目標減衰力の方向が緩衝器2の伸縮方向と逆方向である場合であって、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な範囲である場合には、上述したように目標減衰力に対して目標電流指令値が一対一の関係となり、目標減衰力に対して目標電流指令値が比例することになり、出力可能ラインC3,C4は、目標減衰力に対してある傾きをもって比例する。この出力可能ラインC3,C4の傾きは、目標減衰力軸に対する傾きは一定で、減衰力調整機構3への供給電流量と緩衝器2における減衰力との関係に依存して決定される。
【0064】
なお、電気粘性流体を用いた緩衝器の場合、収縮側マップM3と伸長側マップM4における縦軸を目標電圧指令値とし、制御装置4は、目標減衰力から目標電圧指令値を求めるようにすればよい。また、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力下限ラインA3,A4をハードウェア上の電流値の上限値で一定とし、出力上限ラインB3,B4を0で一定とするようなマップとすればよい。
【0065】
たとえば、減衰力調整機構3のコイル26をPWM制御する場合には、目標電流指令値を供給電流値と一対一の関係となるデューティ比として求め、コイル26にPWMパルス電圧を印加するドライバ43へデューティ比でなる目標電流指令値を与えるようにして、減衰力調整機構3への供給電流を制御するようにしてもよい。また、ドライバは、制御装置4側に設けるのではなく、減衰力調整機構3側に設けるようにしてもよい。さらに、目標電流指令値は、減衰力調整機構3へ供給する電流値そのものとしてもよい。
【0066】
そして、収縮側マップM3において、緩和ラインD3は、出力下限ラインA3に対して、出力可能ラインC3より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC3が出力下限ラインA3に対して図13中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力下限ラインA3との交点P1を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。また、収縮側マップM3において、緩和ラインE3は、出力上限ラインB3に対して、出力可能ラインC3より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC3が出力上限ラインB3に対して図13中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力上限ラインB3との交点Q1を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。
【0067】
さらに、伸長側マップM4においても、緩和ラインD4は、出力下限ラインA4に対して、出力可能ラインC4より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC2が出力下限ラインA4に対して図14中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力下限ラインA4との交点P2を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。また、伸長側マップM4においても、緩和ラインE4は、出力上限ラインB4に対して、出力可能ラインC4より傾きを小さくして接続されており、出力可能ラインC4が出力上限ラインB4に対して図14中破線で示すように直接傾きを変えずに接続される場合に比較して、出力上限ラインB4との交点Q2を跨いでの目標電流指令値の変化が緩和されることになる。
【0068】
このように、目標減衰力から減衰力調整機構3へ供給する電流量を決する目標電流指令値を求める収縮側マップM3および伸長側マップM4にあっては、緩和ラインD3,D4,E3,E4が設けられているので、目標減衰力が緩衝器2の出力可能な減衰力の範囲(出力可能範囲)内から出力できない範囲(出力不能範囲)へ、或いは、出力不能範囲から出力可能範囲内へ変化する場合に、目標電流指令値の変化量が緩和されるので、緩衝器2が発生する減衰力の急変を抑制でき、車体振動を効果的に制振して、車両における乗り心地を向上することができる。すなわち、他の実施の形態におけるサスペンション装置では、目標減衰力を補正することによって、緩衝器2の伸縮速度に対する緩衝器2の減衰力の急変を緩和することができるだけでなく、目標減衰力の変化に対する減衰力の急変を緩和することができるのである。
【0069】
なお、緩和ラインD3,D4,E3,E4は、上記したところでは、一定の傾きをもった直線とされているが、徐々に傾きが変化して、出力可能ラインC3,C4、出力下限ラインA3,A4および出力上限ラインB3,B4へ滑らか接続するようにしてもよい。すなわち、緩和ラインD3,D4,E3,E4は、出力可能ラインC3,C4の傾きから徐々に傾きが小さくなって出力下限ラインA3,A4および出力上限ラインB3,B4へ滑らか接続する円弧状のラインとされてもよい。また、緩和ラインD3と緩和ラインE3の傾きや形状、長さは、ともに同じであるが異なるように設定されてもよいし、緩和ラインD4と緩和ラインE4の傾き、形状および長さについても同様に異なっていてもよい。さらに、収縮側マップM3と伸長側マップM4におけるライン形状(出力下限ラインA3,A4、出力上限ラインB3,B4、出力可能ラインC3,D4および緩和ラインD3,D4,E3,E4を繋いだ形状)は、目標電流指令値軸を中心として線対称の形状となっているが、これに限られるものではない。
【0070】
また、この例では、収縮側マップM3と伸長側マップM4を持っているが、伸長側と収縮側で減衰特性が同じであれば、マップを一つにしておき、目標減衰力の絶対値に対して目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0071】
さらに、上記したところでは、減衰力調整機構3へ与える電流量によって緩衝器2の減衰係数が変化する特性となっており、目標減衰力を上記必要減衰力から最低減衰力を減じて求めるようにしているので、収縮側マップM3と伸長側マップM4を持っていればよく、マップ演算も簡単となるが、目標減衰力を上記で言うところの必要減衰力として目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求める場合には、緩衝器2の伸縮速度に応じて目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値との関係が決定される三次元マップを用いて求めるようにしてもよいし、複数の緩衝器2の伸縮速度に対して作成した目標減衰力と目標電流指令値或いは目標電圧指令値のマップを保有して、緩衝器2の伸縮速度に応じてマップ間を補完することで目標電流指令値或いは目標電圧指令値を求めるようにしてもよい。
【0072】
ところで、緩和ラインD3,D4は、出力可能ラインC3,C4よりも傾きが小さいので、出力可能ラインC3,C4が傾きを変えずに出力下限ラインA3,A4と交わる仮想交点R1,R2に緩和ラインD3,D4を接続すると、出力可能ラインC3,C4と交わらなくなるので、仮想交点R1,R2よりも線分が上方にある。つまり、緩和ラインD3,D4を設けると、目標減衰力が0であるときに目標電流指令値が或る正の値をとることになる。
【0073】
このうち、緩和ラインD3,D4では、目標減衰力が0の近傍であって目標減衰力の方向と緩衝器2の伸縮方向が異なる場合には、目標電流指令値が正の値をとることになるので、緩衝器2が僅かであるが減衰力を出力することになる。この減衰力が乗り心地に与える影響が無視できない場合、緩和ラインD3,D4を廃止するようにしてもよい。また、緩和ラインD3,D4を設けておいて、目標減衰力から目標電流指令値を求めた後に、緩衝器2の伸縮速度が緩和ラインD3,D4の影響する速度以内では0の値をとるゲインを乗じて、目標減衰力が0の近傍であるときの緩和ラインD3,D4が乗り心地に与える影響を取り除くようにしてもよい。なお、ゲインを用いる場合は、緩和ラインD3,D4を廃しするのではなく、乗り心地の悪化を及ぼす部分についてのみ、緩和ラインD3,D4の影響を排除すればよいので、緩和ラインD3,D4を設けることによる上記利点を生かしながら乗り心地の悪化を招くことを防止することができる。ゲインの設け方としては、たとえば、緩衝器2の伸縮速度によって緩和ラインD3,D4を効かせたくない範囲におけるゲインを0とし、そうでない範囲を1に設定すればよいが、図15に示すように、ゲインを0から急に1へステップ的に変化させるのではなく、ランプ的に徐々に変化させるようにしてもよい。ランプ的に変化させることで、緩衝器2の減衰力変化を滑らかにすることができる。なお、減衰力調整機構3が電磁弁であって電流供給を行わない場合に緩衝器2が最大減衰力を発生する場合には、出力上限ラインB3,B4に接続される緩和ラインE3,E4の影響を取り除くようにすればよい。
【0074】
なお、他の実施の形態のサスペンション装置にあっても、上記した一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様にリミッタ42を省略することも可能であるが、リミッタ42を設ける場合、目標減衰力を制限する制限値の値を緩和ラインD3,D4が出力上限ラインB3,B4に接続する交点における目標減衰力に設定する。緩和ラインE3,E4を設けることにより、図13および図14に示すように、目標電流指令値が最大となるのは目標減衰力が緩衝器2のハードウェア上の最大減衰力を超えた値となるので、リミッタ42の制限値を目標電流指令値が最大となる目標減衰力とすればよいことになる。
【0075】
このようにすれば、他の実施の形態におけるサスペンション装置にあっても、一実施の形態におけるサスペンション装置1と同様に、リミッタ42の設置によって、目標減衰力を制限してから補正部43にて補正するようにすれば、補正後の目標減衰力は緩衝器2の発生可能減衰力範囲内にほぼ収まり、緩衝器2の伸縮速度が所定速度Vp1および速度閾値Vp2における緩衝器2の発生減衰力の変化をほぼ確実に緩和することができる。
【0076】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の車両用緩衝器は、車両の制振用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 サスペンション装置
2 緩衝器
20 シリンダ
21 ピストン
22 ピストンロッド
23,24 圧力室
25 通路
26 コイル
3 減衰力調整機構
4 制御装置
41 目標減衰力演算部
42 リミッタ
43 補正部
44 目標電流指令値演算部
45 ドライバ
5 加速度センサ
6 ストロークセンサ
A1,A2,A3,A4 出力下限ライン
B1,B2,B3,B4 出力上限ライン
C1,C2,C3,C4 出力可能ライン
D3,D4,E3,E4 緩和ライン
M1,M3 収縮側マップ
M2,M4 伸長側マップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、減衰力を調節する減衰力調整機構と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えたサスペンション装置において、上記制御装置は、上記緩衝器の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和する補正手段を備え、当該補正手段は、緩衝器の伸縮速度が上記所定速度を超える値に設定される速度閾値を超えると当該伸縮速度が0となるまでは、発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値と上記所定速度の差分だけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正するとともに上記差分から伸縮速度が0までは発生減衰力を最小とするよう補正することを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
上記補正手段は、上記緩衝器の伸縮速度から求めた補正係数を上記減衰力調整機構へ与える指令に乗じて発生減衰力を補正することを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
上記所定速度をVp1とし、上記速度閾値をVp2とし、当該速度閾値から上記所定速度を差し引きした速度閾値と所定速度の差分をβとし、上記緩衝器の伸縮速度をxとすると、上記補正手段は、x>Vp2を満たさずx≦Vp1の場合、0≦x≦Vp1/2の場合と、Vp1/2<x≦Vp1の場合に分けて、それぞれに対応する二次関数を用いて補正係数を演算し、x>Vp2を満たすと0になるまでは、β≦x≦Vp2−Vp1/2の場合と、Vp2−Vp1/2<x≦Vp2の場合に分けて、それぞれに対応する二次関数を用いて補正係数を演算するとともに0≦x<βのおける補正係数を0とすることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
上記所定速度をVp1とし、上記速度閾値をVp2とし、当該速度閾値から上記所定速度を差し引きした速度閾値と所定速度の差分をβとし、上記緩衝器の伸縮速度をxとすると、上記補正手段は、x>Vp2を満たさずx≦Vp1の場合、0≦x≦Vp1/2の場合には、補正係数αをα=2x2/Vp12を演算して求め、Vp1/2<x≦Vp1の場合には、補正係数αをα=−2(x−Vp1)2/Vp12+1を演算して求め、x>Vp2を満たすと0になるまでは、β≦x≦Vp2−Vp1/2の場合には、補正係数αをα=2(x−β)2/Vp12を演算して求め、Vp2−Vp1/2<x≦Vp2の場合には、補正係数αをα=−2(x−β−Vp1)2/Vp12+1を演算して求めるとともに0≦x<βのおける補正係数を0とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
上記制御装置は、上記指令を制限値にクランプするリミッタ処理を行うリミッタ手段を備え、当該指令のリミッタ処理を行ってから補正係数を演算するとともに、補正手段は、リミッタ処理後の上記指令を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
上記所定速度および速度閾値は、上記制御装置で求める目標減衰力に応じて変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【請求項1】
車両における車体と車輪との間に介装されて車体と車輪との上下方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する緩衝器と、減衰力を調節する減衰力調整機構と、目標減衰力に基づいて当該減衰力調整機構を制御する制御装置とを備えたサスペンション装置において、上記制御装置は、上記緩衝器の伸縮速度が0および所定速度における緩衝器の発生減衰力の変化を緩和する補正手段を備え、当該補正手段は、緩衝器の伸縮速度が上記所定速度を超える値に設定される速度閾値を超えると当該伸縮速度が0となるまでは、発生減衰力変化を緩和する伸縮速度を上記速度閾値と上記所定速度の差分だけ速度増側へオフセットして発生減衰力を補正するとともに上記差分から伸縮速度が0までは発生減衰力を最小とするよう補正することを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
上記補正手段は、上記緩衝器の伸縮速度から求めた補正係数を上記減衰力調整機構へ与える指令に乗じて発生減衰力を補正することを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
上記所定速度をVp1とし、上記速度閾値をVp2とし、当該速度閾値から上記所定速度を差し引きした速度閾値と所定速度の差分をβとし、上記緩衝器の伸縮速度をxとすると、上記補正手段は、x>Vp2を満たさずx≦Vp1の場合、0≦x≦Vp1/2の場合と、Vp1/2<x≦Vp1の場合に分けて、それぞれに対応する二次関数を用いて補正係数を演算し、x>Vp2を満たすと0になるまでは、β≦x≦Vp2−Vp1/2の場合と、Vp2−Vp1/2<x≦Vp2の場合に分けて、それぞれに対応する二次関数を用いて補正係数を演算するとともに0≦x<βのおける補正係数を0とすることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
上記所定速度をVp1とし、上記速度閾値をVp2とし、当該速度閾値から上記所定速度を差し引きした速度閾値と所定速度の差分をβとし、上記緩衝器の伸縮速度をxとすると、上記補正手段は、x>Vp2を満たさずx≦Vp1の場合、0≦x≦Vp1/2の場合には、補正係数αをα=2x2/Vp12を演算して求め、Vp1/2<x≦Vp1の場合には、補正係数αをα=−2(x−Vp1)2/Vp12+1を演算して求め、x>Vp2を満たすと0になるまでは、β≦x≦Vp2−Vp1/2の場合には、補正係数αをα=2(x−β)2/Vp12を演算して求め、Vp2−Vp1/2<x≦Vp2の場合には、補正係数αをα=−2(x−β−Vp1)2/Vp12+1を演算して求めるとともに0≦x<βのおける補正係数を0とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
上記制御装置は、上記指令を制限値にクランプするリミッタ処理を行うリミッタ手段を備え、当該指令のリミッタ処理を行ってから補正係数を演算するとともに、補正手段は、リミッタ処理後の上記指令を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
上記所定速度および速度閾値は、上記制御装置で求める目標減衰力に応じて変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のサスペンション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−148734(P2012−148734A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10643(P2011−10643)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
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