説明

サッシ

【課題】 火災時に気密材の融解や障子の変形によって枠体と障子の間に隙間が生じても、その隙間を塞いで気密性を維持するサッシを提供する。
【解決手段】 枠体1と、障子2a,2bとを備え、障子2a,2bは、縦框3と、横框4と、コーナー部材9と、火災時に熱によって発泡する耐火材とを有し、左右の縦框3の間に上下の横框4を取り付け、縦框3の上下端部にコーナー部材9を取り付けたものであって、耐火材は、上下の横框4と、左又は右の縦框3と、コーナー部材9に取り付けてあり、横框4の耐火材61,62及び縦框3の耐火材63は、長手方向略全長にわたって取り付けてあって、横框4の耐火材61,62と、コーナー部材9の耐火材65,66と、縦框3の耐火材63が、発泡時に連続し枠体との隙間を塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時においても気密性を維持できるサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
サッシは、枠体や障子に取り付けた樹脂製の気密材により気密性を維持しているが、火災時にはこの気密材が融解してしまい、枠体と障子との間に隙間を生じることがあった。これについては、熱に強い素材からなる気密材を用いることで対策していた。また、炎熱により障子が変形して、枠体との間に隙間を生じることもあった。これについては、障子に各種の補強材を取り付けることで変形を抑えていた。しかしながら、熱に強い素材からなる気密材を用いても、融解までの時間を延ばすことはできるが、融解することを防ぐことはできなかった。また、障子の変形についても、補強材によって完全に抑えることはできず、僅かでも隙間が生じれば気密性は維持されなくなってしまう。そこで、特許文献1に示すように、障子に加熱時に発泡する耐火断熱材を取り付け、火災時には耐火断熱材が発泡して障子と枠体の間の隙間を塞ぐものが公知となっている(段落0025、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−169453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に障子の角部には樹脂製のコーナー部材を取り付けてあるが、このコーナー部材に耐火断熱材が備わっていないと、障子周囲の耐火ラインが途切れてしまい、火災時にはそこに隙間が生じて気密性を維持できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、火災時に気密材の融解や障子の変形によって枠体と障子の間に隙間が生じても、その隙間を塞いで気密性を維持するサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、枠体と、障子とを備え、障子は、縦框と、横框と、コーナー部材と、火災時に熱によって発泡する耐火材とを有し、左右の縦框の間に上下の横框を取り付け、縦框の上下端部にコーナー部材を取り付けたものであって、耐火材は、少なくとも一方の横框と、コーナー部材に取り付けてあり、横框の耐火材は、長手方向略全長にわたって取り付けてあって、横框の耐火材と、コーナー部材の耐火材が、発泡時に連続し枠体との隙間を塞ぐものであることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、耐火材は、少なくとも、下側の横框と左又は右の縦框に取り付けてあり、縦框の耐火材は、長手方向略全長にわたって取り付けてあって、横框の耐火材と、コーナー部材の耐火材と、縦框の耐火材が、発泡時に連続し枠体との隙間を塞ぐものであることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、枠体が、上下の横枠と、左右の縦枠とを四周枠組みしたものであり、横枠にはレールが形成してあって、障子が左右方向スライド自在に納めてあり、少なくとも一方の横框の耐火材が、レールの室外側面に対向する位置と、レールの室内側面に対向する位置に取り付けてあることを特徴とする。
【0009】
本発明のうち請求項4の発明は、コーナー部材の、横枠に対向する面に、耐火材が取り付けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1の発明によれば、横框からコーナー部材にかけて耐火材が途切れることがなく、サッシが炎熱にさらされて気密材が融解したり障子が変形したりした場合でも、障子の上辺又は下辺において、確実に気密性を維持できる。
【0011】
本発明のうち請求項2の発明によれば、火災時に特に炎熱にさらされやすい障子の下辺及び左辺又は右辺について耐火材を取り付けてあり、さらにそれらが発泡時にはコーナー部材で途切れることなく連続するように配置してあるので、サッシの気密性をより確実に維持できる。
【0012】
本発明のうち請求項3の発明によれば、レールの室外側面と室内側面の両方に対向して耐火材を取り付けてあるので、サッシが室外側と室内側のどちらから炎熱にさらされた場合であっても、少なくとも一方側の耐火材が確実に発泡して気密性を維持する。
【0013】
本発明のうち請求項4の発明によれば、サッシが炎熱にさらされた際に、耐火材が発泡してコーナー部材を覆うので、コーナー部材を炎熱から守り、サッシの気密性を維持する。また、コーナー部材に対向する位置にアタッチメントを取り付けてある場合、耐火材がアタッチメントを覆うので、アタッチメントが炎熱にさらされて融解し、室内外が連通して気密性が維持できなくなることを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のサッシの縦断面図である。
【図2】本発明のサッシの横断面図である。
【図3】室外側障子の戸当り側縦框の下端部を示し、(a)は左側側面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図4】室外側障子の召合せ側縦框の下端部を示し、(a)は左側側面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図5】室内側障子の戸当り側縦框の下端部を示し、(a)は左側側面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図6】室内側障子の召合せ側縦框の下端部を示し、(a)は左側側面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図7】スペーサ取り付け部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、上下は図1中の上下方向を、左右は図2中の左右方向を表す。ここでは、サッシの一例として、図1及び図2に示すように、枠体1に二枚の障子2a,2bを引違いに納めた引違い窓の例を挙げる。枠体1は、上下の横枠(上枠11及び下枠12)と、左右の縦枠13とを四周枠組みしたもので、上枠11の下側面にはレール11a,11bが形成してあり、下枠12の上側面にはレール12a,12bが形成してあって、二枚の障子2a,2bが左右方向スライド自在に納めてある。障子2a,2bは、何れも左右の縦框3と、上下の横框4(上框41及び下框42)と、パネル7とを備え、左右の縦框3の間に上下の横框4を取り付けて(縦框3の内周側面に横框4の端面を当接させて、縦框3の外周側からボルト止めしてある)四周框組みして、パネル7を嵌め込んだものである。なお、このサッシは、障子2a,2bの各縦框3及び横框4が(室外側の障子2aの召合せ側の縦框3を除く)、室外側のアルミ部材3c,4cと室内側の樹脂部材3d,4dとを組み合わせて構成された、いわゆる複合サッシである。
【0016】
そして、障子2a,2bの上框41には、アルミ部材4c部分の外周側面(上側面)の長手方向全長にわたって、火災時に熱によって発泡する耐火材61を取り付けてある。また、下框42は、アルミ部材4cの前後両端から下方に延びる垂下片43を備えており、前後の垂下片43の内側面(レール12a,12bの室外側面及び室内側面に対向する面)の長手方向全長にわたって、耐火材62を取り付けてある、さらに、戸当り側の縦框3には、アルミ部材3c部分の外周側面(戸当り面)の長手方向全長にわたって、耐火材63を取り付けてある。また、室外側の障子2a召合せ側の縦框3には、室内側面(召合せ面)の長手方向全長にわたって、耐火材64を取り付けてある。
【0017】
さらに、各縦框3の上下端部には、樹脂製のコーナー部材9を取り付けて開口部を塞いである。図3〜6に示すのは、各縦框3(室外側の障子2aの戸当り側、召合せ側及び室内側の障子2bの戸当り側、召合せ側)の下端部であり、各コーナー部材9は、細部の形状は異なるものの、何れも縦框3端部の開口部に嵌め込むものであり、下面にはレール12a,12bを跨ぐ溝部91を形成してある。そして、この溝部91内側の前後の壁面に、耐火材65を取り付けてある。また、図3(a)及び図5(c)に示すように、戸当り側の縦框3において、コーナー部材9の外周側面(戸当り面)は露出しており、ここに上下に延びる耐火材66を取り付けてある。なお、各縦框3の上端部のコーナー部材にも、同様に耐火材を取り付けてある。
【0018】
ここで、耐火材61,62,63,64,65,66は、エポキシ系の素材からなるもので、約200℃で発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張する。
【0019】
このように各所に耐火材61,62,63,64,65,66を取り付けたサッシが、火災時において炎熱にさらされると、耐火材61,62,63,64,65,66が発泡する。より詳しくは、上框41の耐火材61は上方に膨張して上枠11に密接する。下框42の耐火材62はそれぞれ前後に膨張して下枠12(レール12a,12b)に密接する(レール12a,12bの室外側面と室内側面の両方に対向して耐火材62を取り付けてあるので、サッシが室外側と室内側のどちらから炎熱にさらされた場合であっても、少なくとも一方側の耐火材62が確実に発泡して気密性を維持する)。戸当り側の縦框3の耐火材63は、それぞれ外周側に膨張して縦枠13に密接する。室外側の障子2aの召合せ側の縦框3の耐火材64は、室内側に膨張して室内側の障子2aの召合せ側の縦框3に密接する。さらに、各コーナー部材9の溝部91の耐火材65は、それぞれ前後に膨張して下枠12(レール12a,12b)に密接するとともに、下框42の膨張した耐火材62とも密接する。そして各コーナー部材9の外周側面の耐火材66は、それぞれ外周側に膨張して縦枠13に密接するとともに、縦框3の膨張した耐火材63及び溝部91の膨張した耐火材65とも密接する。このように、膨張した耐火材61,62,63,65,66同士が密接することで、障子2a,2bの周囲に連続した耐火ラインが形成され、障子2a,2bと枠体1との間を隙間なく塞ぎ、さらに室外側の障子2aと室内側の障子2bの召合せ部分についても膨張した耐火材64が隙間を塞ぐので、炎熱にさらされて障子が変形しても、サッシの気密性を維持することができる。
【0020】
なお、図1及び図2に示すように、本発明のサッシの障子2a,2bにおいては、パネル7の全周にわたって、鉄製で断面コ字形のパネル支持材100を取り付けてある。これは、サッシが炎熱にさらされて縦框3及び横框4が融解した場合にパネル7が外れるのを防ぎ、サッシの気密性を維持するためのものである。
【0021】
また、各縦框3のホロー内には、鉄製で断面コ字形の補強材110を挿入してある。補強材110は縦框3の全長にわたるもので、外側からネジ止めしてある。これは、サッシが炎熱にさらされた際に、縦框3の伸びを抑えるためのものである。
【0022】
さらに、縦框3の内周側面と横框4の端面の間には、スペーサ5が取り付けてある。図7は、下框42の場合を示したものであり、スペーサ5は、長方形状で、上下に二つのボルト孔51が形成してあり、縦框3と下框42を接合するボルト8が貫通している。また、スペーサ5の室外側と室内側には、上下方向に延びる耐火材6を取り付けてある。そして、縦框と上框の間にも略同様にスペーサ及び耐火材を取り付けてある。なお、スペーサ5は、ABS樹脂からなるもので、約100℃で軟化し始め、約300℃で融解する。融解する際には、可燃性のガスを生じる。火災時には、サッシが炎熱にさらされて、まずスペーサ5が軟化し、温度上昇に伴って伸び始める横框4に押しつぶされることで横框4の伸びを吸収する。そして、最終的にはスペーサ5が融解して、厚さ分だけ横框4の伸びを吸収して、障子の変形を防ぐことができる。そして、耐火材6が発泡して縦框3と横框4の間の隙間を塞ぎ、煙の流通を遮断し、またスペーサ5が融解することにより発生するガスも遮断し、さらに融解したスペーサ5を包み込んで、その流出を防ぐ。また、発泡した耐火材6は空気層を有し断熱性に優れているから、直接炎熱にさらされている部位から他の部位への熱伝導を抑え、熱による損傷範囲を小さくすることができる。なお、スペーサ5の大きさは横框4端面の大きさよりも小さくなっており、これはスペーサ5が大きすぎると溶け残りを生じて横框4の伸び吸収の妨げになるからである。一方、耐火材6の上下方向長さは横框4端面の上下方向長さと略同一であり、横框4と縦框3の間の隙間を確実に塞ぐ。また、横框4のうち伸びるのはアルミ部材4cであり、樹脂部材4dは溶けてしまうから、スペーサ5及び耐火材6は、アルミ部材4c部分に当接させてある。さらに、耐火材6をスペーサ5の室外側と室内側の両方に取り付けたことにより、サッシが室外側と室内側のどちらから炎熱にさらされた場合であっても、耐火材6が確実に発泡して隙間を塞ぐ。
【0023】
また、図3、4及び6に示すように、各縦框3(室内側の障子2bの戸当り側の縦框3を除く)の下端部のコーナー部材9の下面(室外側の障子2aにおいては溝部91の室内側、室内側の障子2bにおいては溝部91の室外側)に、溝部91に沿って耐火材67を取り付けてある。この耐火材67は、炎熱にさらされた際に発泡してコーナー部材9自身を炎熱から守る。なお、本実施形態では室内側の障子2bの戸当り側の縦框3のコーナー部材9の下面には耐火材を取り付けていないが、もちろんここにも取り付けてもよい。そして、下枠12の、召合せ側の縦框3のコーナー部材9に対向する位置には、樹脂製で室内外方向に連通するアタッチメント10を取り付けてあり、これは、図4(a)及び図6(a)に示すように、室内側への水の流入を抑えるための止水ピースである。また、室外側の障子2aの戸当り側の縦框3の下部にも、図2及び図3(a)に示すように、アタッチメント10として下枠12の排気孔の上方に室内側の障子2bのストッパーを取り付けてある。召合せ側のアタッチメント10(止水ピース)は、それ自体が室内外に連通しており、戸当り側のアタッチメント10(ストッパー)は、排気孔を覆うものであるから、何れにおいてもアタッチメント10が無くなるとサッシの室内外が連通してしまうが、火災時には、コーナー部材9下面の耐火材67が発泡してアタッチメント10を覆うので、アタッチメント10が炎熱にさらされて融解し、室内外が連通して気密性が維持できなくなることを防ぐ。なお、各縦框の上端部のコーナー部材の上面にも耐火材を取り付けてあり、さらに上枠の、召合せ側の縦框3のコーナー部材に対向する位置にはアタッチメントとして風の侵入や音もれを抑えるための風止板を取り付けてある。
【0024】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、本発明は引違い窓以外の種々の窓に適用できる。また、上記の実施形態では、框の耐火材が障子の四周に連続して取り付けてあるが、一部の框にのみ取り付けてもよい。ここで、火災時において炎は下方から侵入するので、少なくとも下框に取り付けてあるのが望ましく、下框と、左右の縦框に取り付けてあればより望ましい。さらに、コーナー部材には種々の形状のものがあるので、耐火材の形状や取付位置も都度異なるが、発泡時に縦框及び横框の耐火材と連続するものであれば、どのように取り付けてあってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 枠体
2a,2b 障子
3 縦框
4 横框
9 コーナー部材
11 上枠(横枠)
11a,11b レール
12 下枠(横枠)
12a,12b レール
13 縦枠
61,62,63,65,66 耐火材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、障子とを備え、障子は、縦框と、横框と、コーナー部材と、火災時に熱によって発泡する耐火材とを有し、左右の縦框の間に上下の横框を取り付け、縦框の上下端部にコーナー部材を取り付けたものであって、耐火材は、少なくとも一方の横框と、コーナー部材に取り付けてあり、横框の耐火材は、長手方向略全長にわたって取り付けてあって、横框の耐火材と、コーナー部材の耐火材が、発泡時に連続し枠体との隙間を塞ぐものであることを特徴とするサッシ。
【請求項2】
耐火材は、少なくとも、下側の横框と左又は右の縦框に取り付けてあり、縦框の耐火材は、長手方向略全長にわたって取り付けてあって、横框の耐火材と、コーナー部材の耐火材と、縦框の耐火材が、発泡時に連続し枠体との隙間を塞ぐものであることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項3】
枠体が、上下の横枠と、左右の縦枠とを四周枠組みしたものであり、横枠にはレールが形成してあって、障子が左右方向スライド自在に納めてあり、少なくとも一方の横框の耐火材が、レールの室外側面に対向する位置と、レールの室内側面に対向する位置に取り付けてあることを特徴とする請求項1又は2記載のサッシ。
【請求項4】
コーナー部材の、横枠に対向する面に、耐火材が取り付けてあることを特徴とする請求項1、2又は3記載のサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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