説明

サッシ

【課題】 框の内部空間内のガスの排気手段を備えるサッシを提供する。
【解決手段】 開閉自在な障子を備え、障子は、竪框と、樹脂製の手掛け部と、塞ぎ材とを有しており、竪框は、見付面に取付孔を形成してあって、取付孔に手掛け部を取り付けてあり、取付孔の上方の竪框内部に、竪框内部空間を塞ぐ塞ぎ材を取り付けてある。塞ぎ材は、火災時に熱によって発泡する耐火材からなり、耐火材は発泡すると竪框内部空間を上下に遮断するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に延焼を防ぐ防火対応のサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サッシには樹脂製部品が多く用いられている。火災時には樹脂製部品が炎熱にさらされ溶解して可燃性ガスを発生し、この可燃性ガスに引火してさらに炎が広がる場合があり、問題であった。そこで、熱に強い樹脂を用いたり、樹脂製部品を耐火材で覆ったりするなどといった対策がとられているが、樹脂製部品の溶解及び可燃性ガスの発生を完全に防ぐことは難しく、ある程度の可燃性ガスが発生することを前提とした対策が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、火災時には下側から炎が回る場合が多く、樹脂製部品の溶解によって発生した可燃性ガスは、図9中の斜線付矢印で示すように、まずサッシの下框6bの内部空間に充満する。そして、下框6bの内部空間は戸当り框2aや召合せ框2bの内部空間と連通しているので、可燃性ガスは下框6bから戸当り框2aや召合せ框2bを通って上昇し、戸当り框2aや召合せ框2bの上端部の隙間から漏れ出す。この漏れ出した可燃性ガスに炎が引火すると、サッシの全体に炎が回り、さらには框の周囲の枠体5まで炎にさらされることになるため、延焼の範囲が広がってしまい問題であった。そこで、下框6bの内部空間内に充満した可燃性ガスを効率よく排気できるサッシが求められていた。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、框の内部空間内のガスの排気手段を備えるサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、開閉自在な障子を備え、障子は、竪框と、樹脂製の手掛け部と、塞ぎ材とを有しており、竪框は、見付面に取付孔を形成してあって、取付孔に手掛け部を取り付けてあり、取付孔の上方の竪框内部に、竪框内部空間を塞ぐ塞ぎ材を取り付けてあることを特徴とする。なお、塞ぎ材は、取付孔よりも上側に取り付けてあればよいが、ガスが塞ぎ材に導かれて取付孔から効率よく排気されるよう、好ましくは、取付孔の上側の近傍の十数cm以下の範囲、さらに好ましくは数cm以下の範囲に取り付けるのがよい。また、竪框内部空間を塞ぐ塞ぎ材は、完全に上下を遮断するものに限られず、ある程度、液体や気体が通過し得るものであってもよい。
【0006】
本発明のうち請求項2の発明は、塞ぎ材は、火災時に熱によって発泡する耐火材からなり、耐火材は発泡すると竪框内部空間を上下に遮断するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1の発明によれば、火災時において、樹脂製の手掛け部が焼失して取付孔が露出する。これにより、竪框内部空間を通って下方から上昇する可燃性ガスは、塞ぎ材に導かれて取付孔から効率よく排気され、延焼を防ぐことができる。
【0008】
本発明のうち請求項2の発明によれば、平常時においては竪框内部空間が上下に遮断されないので、竪框内部に浸入した雨水の排水が妨げられない。そして、火災時においては耐火材が発泡して取付孔の上側で竪框内部空間を上下に遮断し、可燃性ガスが確実に取付孔から排気される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態に係る塞ぎ材部分の斜視図である。
【図2】塞ぎ材部分の分解斜視図である。
【図3】戸当り框(竪框)の横断面図である。
【図4】サッシの横断面図である。
【図5】サッシの室外側正面図であって、框の内部空間内のガスの流れを示す。
【図6】下框の戸当り框に対する突き付け部(図5中のA部)の説明図である。
【図7】下框の召合せ框に対する突き付け部(図5中のB部)の説明図である。
【図8】第二実施形態に係る塞ぎ材部分の分解斜視図である。
【図9】従来のサッシの正面図であって、框の内部空間内のガスの流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において左右とは、図4における左右を示す。このサッシの第一実施形態は、図4及び図5に示すように、四周枠組みした枠体5に、二枚の障子1を引違いに収めた引違い戸である。障子1は、左右の竪框2(戸当り框2aと、召合せ框2b)と、上下の横框6(上框6aと、下框6b)と、パネル7とを備え、左右の竪框2の間に上下の横框6を取り付けて(竪框2の内周側面に横框6の端面を当接させて、竪框2の外周側からボルト止めしてある)四周框組みして、パネル7を嵌め込んだものである。なお、竪框2及び横框6はアルミの押出形材からなり、長手方向に延びる内部空間を有する。また、このサッシはいわゆる複合サッシであって、室外側の障子1の召合せ框2b以外の竪框2及び横框6には、室内側に樹脂部材8を取り付けてある。そして、障子1の戸当り框2aには、手掛け部3と塞ぎ材4とを設けてあり、図1〜図3に基づいて、以下に詳述する。
【0011】
手掛け部3は、室外側から障子1を開閉する際に手を掛けるためのものであり、樹脂製で、室外側に開口部31を有する箱形の形状であって、開口部31の周縁部には室外側から見て矩形の鍔部32を有する。そして、障子1の戸当り框2aの室外側面には、矩形で戸当り框内部空間22a(竪框内部空間22)に連通する取付孔21を形成してあり、取付孔21に手掛け部3を嵌め込み、鍔部32を戸当り框2aの室外側面に当接させてある。また、戸当り框内部空間22a内には、長手方向に延びる補強材9を挿入してある。補強材9は、鋼板からなり、断面略コ字形で、室外側に開口する向きである。さらに、補強材9の、取付孔21から数cm上方の位置に、鋼板からなる二枚の支持板41を上下に10mm離隔して平行に取り付けてあり、両支持板41の対向する面(上側の支持板41の下面と、下側の支持板41の上面)の全面に、耐火材からなる塞ぎ材4を取り付けてある(図3では、上側の塞ぎ材4及び支持板41を省いてある)。支持板41は矩形平板で、室内側辺の中央と左右辺の室外側端に突起42を設けてあり、補強材9の室内側面の中央には係合孔91を、左右面の室外側端には係合切欠92を設けてあって、突起42を係合孔91及び係合切欠92に嵌め込んで固定してある。また、補強材9の室内側面及び左右面の内周側の、二枚の支持板41の間部分にも、耐火材からなる塞ぎ材4を取り付けてある。なお、塞ぎ材4に用いられる耐火材は、エポキシ系の素材からなるもので、火災時に熱により発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張する。
【0012】
次に、竪框2(戸当り框2a及び召合せ框2b)と、下框6bとの接合部分について説明する。上述のとおり、この接合部分は、竪框2の側面に、下框6bの端面を突き付けてある。そして、竪框2の側面と、下框6bの端面との間には、耐火材からなるシーラー10を挟んであるが、戸当り框2a側と、召合せ框2b側とで、このシーラー10の形状が異なっている。図6は、戸当り框2a側(図5中のA部)について示すものであり、(a)は室外側の障子の下框6bと戸当り框2aを、(b)はそれらを接合した状態を示し、(c)は室内側の障子の下框6bと戸当り框2aを、(d)はそれらを接合した状態を示す。戸当り框2a側のシーラー10は、下框6bの端面の全体を覆う略矩形のものであって、下框6bの下框内部空間61が露出するように大きな切欠部101を形成してある。そして、戸当り框2aの側面には、戸車の調整時にドライバーを挿入するための貫通孔23を形成してあり、この貫通孔23によって、下框6bの下框内部空間61と、戸当り框2aの戸当り框内部空間22aとが連通する。火災時にはシーラー10が発泡するが、下框内部空間61部分が切り欠いてあるので、貫通孔23が塞がれることはなく、下框内部空間61と戸当り框内部空間22aとは常に連通した状態となる。一方、図7は、召合せ框2b側(図5中のB部)について示すものであり、(a)は室外側の障子の下框6bを、(b)は室内側の障子の下框6bを示す。召合せ框2b側のシーラー10も、下框6bの端面の全体を覆う略矩形のものであるが、切欠部102はレールを跨ぐだけの小さなものであり、下框内部空間61は覆われている。そして、召合せ框2bの側面にも貫通孔が形成してあり、貫通孔に対向する位置にはシーラー10にも孔103を開けてあるが、火災時にはシーラー10が発泡して孔103が塞がれ、下框内部空間61と召合せ框内部空間22bとは遮断される。
【0013】
このように、火災時においては、下框内部空間61と戸当り框内部空間22aとが連通した状態であって、下框内部空間61と召合せ框内部空間22bとは遮断される。よって、図5中の斜線付矢印で示すように、下框内部空間61に充満した可燃性ガスは、戸当り框内部空間22aへと導かれる。そして、火災時においては樹脂製の手掛け部3が焼失して取付孔21が露出し、さらに耐火材からなる塞ぎ材4が発泡して、取付孔21の上側で、戸当り框内部空間22aを上下に遮断するので、戸当り框内部空間22aに導かれた可燃性ガスは、取付孔21から室外側に排気される。これにより、可燃性ガスが戸当り框2aや召合せ框2bの上端部から漏れ出すことを防ぎ、延焼の範囲が広がることを防いでいる。また、戸当り框内部空間22aに、耐火材からなる塞ぎ材4のみを取り付けた場合、戸当り框2aの上部に設けた樹脂製部品が炎熱にさらされて溶け落ち、塞ぎ材4を脱落させるおそれがあるが、本発明においては、上側の支持板41が溶解した樹脂製部品を受け止め、耐火材からなる塞ぎ材4が脱落することを防ぐ。なお、平常時においては、耐火材からなる塞ぎ材4は発泡しておらず、また支持板41と補強材9とは鋼板同士が当接していて両者の間には隙間が生じるので、戸当り框内部空間22aは上下に遮断されない。よって、戸当り框内部空間22aに浸入した雨水の排水が妨げられない。
【0014】
次に、本発明のサッシの第二実施形態について、図8に基づき説明する。第二実施形態は、第一実施形態と同じ引違い戸であって、戸当り框2aの室外側面に取付孔21を形成してあり、取付孔21に手掛け部3を嵌め込んである。また、戸当り框内部空間22a内には、長手方向に延びる補強材9を挿入してある。さらに、竪框と下框との接合部分の構造についても、第一実施形態と同様である。そして、第二実施形態においては、補強材9の、取付孔21から数cm上方の室内側面及び左右面の内周側に、耐火材からなる塞ぎ材4を取り付けてある。さらに、塞ぎ材4の上方には、鋼板からなる一枚の補助板43を取り付けてある。なお、この補助板43の取り付け構造は、第一実施形態の支持板と同じである。この第二実施形態においても、火災時においては樹脂製の手掛け部3が焼失して取付孔21が露出し、さらに耐火材からなる塞ぎ材4が発泡して、取付孔21の上側で、戸当り框内部空間22aを上下に遮断する。よって、戸当り框内部空間22aに導かれた可燃性ガスは、取付孔21から室外側に排気される。また、戸当り框2aの上部に設けた樹脂製部品が炎熱にさらされて溶け落ちても、補助板43がそれを受け止め、耐火材からなる塞ぎ材4が脱落することを防ぐ。なお、平常時においては、耐火材からなる塞ぎ材4は発泡しておらず、また補助板43と補強材9とは鋼板同士が当接していて両者の間には隙間が生じるので、戸当り框内部空間22aは上下に遮断されない。よって、戸当り框内部空間22aに浸入した雨水の排水が妨げられない。
【0015】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、サッシの種類は引違い戸に限られず、それ以外の様々な種類の戸や窓に適用できる。また、塞ぎ材は、必ずしも熱によって発泡する耐火材からなるものでなくてもよい。たとえば、第一実施形態において耐火材を設けずに、支持板を塞ぎ材としてもよい。支持板は戸当り框内部空間を完全に遮断するものではないが、それでも大部分の可燃性ガスを取付孔に導いて排気することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 障子
2 竪框
3 手掛け部
4 塞ぎ材(耐火材)
21 取付孔
22 竪框内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在な障子を備え、障子は、竪框と、樹脂製の手掛け部と、塞ぎ材とを有しており、竪框は、見付面に取付孔を形成してあって、取付孔に手掛け部を取り付けてあり、取付孔の上方の竪框内部に、竪框内部空間を塞ぐ塞ぎ材を取り付けてあることを特徴とするサッシ。
【請求項2】
塞ぎ材は、火災時に熱によって発泡する耐火材からなり、耐火材は発泡すると竪框内部空間を上下に遮断するものであることを特徴とする請求項1記載のサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−64265(P2013−64265A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203362(P2011−203362)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】