説明

サッシ

【課題】火災時にアルミニウム製の框や枠が溶けてもガラスの脱落を防止できるサッシを提供する。
【解決手段】本発明のサッシ1は、障子ガラス保持溝を有するアルミニウム製の框12と、ガラス保持溝21の溝壁とガラス端部との間に設けてガラス端部を覆うガラス保持溝補強材25と、下框7に設けた下框補強材51とを備えており、下枠15は下枠補強材52を備え、障子支持具19は上框5と上枠13の間及び下框7と下枠15の間に設けてあり、障子支持具19、ガラス保持溝補強材25、下框補強材51及び下枠補強材52はアルミニウムよりも融点が高い材質でできており、ガラス保持溝補強材25と下框補強材51とがねじで固定してあり、下框補強材51と下枠補強材52とが各々障子支持具19にねじで固定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、障子と枠との間に障子を開閉自在に支持する障子支持具を備えたサッシが開示されている。この特許文献1のサッシでは、障子の框と枠とにアルミニウム形材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4286572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、火災時にアルミニウム製の框や枠が溶けた場合に、框や枠に対してガラスが脱落するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、火災時にアルミニウム製の框や枠が溶けてもガラスの脱落を防止できるサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、障子と、枠と、障子を開閉自在に支持する障子支持具とを備え、障子はガラスと、ガラス保持溝を有するアルミニウム製の框と、ガラス保持溝の溝底とガラス端部との間に設けてガラス端部を覆うガラス保持溝補強材と、下框に設けた下框補強材とを備え、下枠は下枠補強材を備え、障子支持具は上框と上枠の間及び下框と下枠の間に設けてあり、障子支持具、ガラス保持溝補強材、下框補強材及び下枠補強材はアルミニウムよりも融点が高い材質でできており、ガラス保持溝補強材と下框補強材とがねじで固定してあり、下框補強材と下枠補強材とが各々障子支持具にねじで固定してあることを特徴とするサッシである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、火災時に、火災の熱によりアルミニウム製の框や枠が溶けた場合であっても、アルミニウムよりも融点が高い材質でできたガラス保持溝補強材、下框補強材、障子支持具及び下枠補強材が、一連にねじで固定しているから、ガラスの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態にかかるサッシの図であり、図12に示すA−A断面図である。
【図2】本実施の形態にかかるサッシの図であり、図12に示すB−B縦断面図である。
【図3】本実施の形態にかかるサッシの図であり、図12に示すC−C縦断面図である。
【図4】図3に示す落下防止金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は横断面図である。
【図5】図3に示す落下防止受け金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図6】図3に示す開き受け金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
【図7】図3に示す開き防止金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
【図8】ハンドル取付け金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
【図9】障子が開き状態にあるときの障子支持具と下枠の平面図である。
【図10】下框の下面の左側端部を示す底面図である。
【図11】下框補強材の図であり、(a)は正面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(b)のE−E断面図である。
【図12】本実施の形態にかかるサッシを室内側から見た概観を示す正面図である。
【図13】コーナ金具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態に係るサッシ1は、すべり出しサッシであり、図1〜図3に示すように、障子3の框12はアルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組して形成してあり、各框の室内側には樹脂製形材6が取付けてある。枠11はアルミニウム製の上枠13、下枠15及び左右の竪枠17、17を枠組してあり、室内側には樹脂製形材18が取付けてある。
図1に示すように、上框5と上枠13との間と、下框7と下枠15との間に、各々障子3を室外側に吊り出すステー(障子支持具)19が設けてある。
【0010】
障子3の下框7の上部には、ガラス4の下端部を保持するガラス保持溝21が設けてあり、ガラス保持溝21の下方には中空部23が形成されている。
ガラス保持溝21にはガラス端部を保持するグレイジングガスケット24と、ガラス保持溝21の溝壁とグレイジングガスケット24との間に設けたスチール製のガラス保持溝補強材25が設けてある。ガラス保持溝補強材25は断面略コ字形状を成しており、コ字の開口内にグレイジングガスケット24と共にガラス端部を覆っている。
下框7の上面には、左右側端部及び中央部に排水孔7dが形成されており、ガラス保持溝補強材25には、排水孔7dが形成してある位置に対応して切除部が形成されている。
図10に示すように、下框補強材51が配置されている下框7の下面7aには、その長手方向一端部に排水穴7bが形成されており、図1及び図11に示すように、補強材51には、排水穴7bの位置に対応して穴51dが形成されていると共に穴51dの横にある側壁51cに第11熱膨張耐火材32kが設けてある。
下框7のガラス保持溝21の溝底に設けた第2熱膨張耐火材32bは、竪框9との組付けコーナにおいて竪框9と下框7との間に挟んであり、火災時に膨張して竪框9と下框7とのメタルタッチ部分を塞ぐようになっている。
下框7の下面には、スチール製の下補助板29がねじ30で固定してある。下補助板29は下框7に取付けてある樹脂製形材6の長手方向に亘って樹脂製形材6の下面を覆っている。
また、図1に示すように、下框7には、中空内にスチール製の断面コ字状の下框補強材51が設けてあり、下框補強材51の上端部51aは下框7のガラス保持溝補強材25にねじ50で固定してあり、下端部51bは下補助板29及び下ステー19にねじ30で固定されている。
【0011】
下枠15に設けた熱膨張耐火材保持具43は、図9に示すように、下ステー19の配置空間を規定しており、下ステー19の位置決めを兼ねている。また、図1に示すように、下枠15にはスチール製の断面コ字形状の下枠補強材52が設けてあり、下枠15の排水穴42に対向して配置する第5熱膨張耐火材32eはこの下枠補強材52に設けてある。
上框5の下部にもガラス保持溝21が設けてあり、ガラス保持溝21の上部には中空部23が形成されている。上框5の中空23内には、断面コ字形状のスチール製の上框補強材49が設けてあり、この上框補強材49は、上端部49aがねじ46により上ステー19に固定してあり、下端部49bがねじ48によりガラス保持溝補強材25に固定されている。上ステー19は、上枠13に設けた裏板68にねじ67で固定してある。
上框5の室外側上面には上枠13との間を塞ぐ第8熱膨張耐火材32hが設けてある。
【0012】
図2に示すように、左右の竪框9、9には、各々ガラス保持溝21に上述したスチール製のガラス保持溝補強材25が設けてあり、中空部9aにはスチール製の竪框補強材39が設けてあり、ガラス保持溝補強材25と竪框補強材39とはねじ40により固定されている。ガラス保持溝補強材25には、左右のガラス端面に対向する第1熱膨張耐火材32aがガラス保持溝補強材25の長手方向に全体に亘って設けてある。
また、各竪框9のガラス保持溝21の室内側壁には、その室外側面にガラス保持溝補強材25に対向する第12熱膨張耐火材32mが設けてある。
左右の竪框9、9の外周側面の室外側には、対向する竪枠17との間を塞ぐ第8熱膨張耐火材32hが設けてある。
図2に示すように、ハンドル53側の竪框(図2及び図3において右側框)9には、デッドボルト54が設けてある。ハンドル53は樹脂製であり、ハンドル53の取付け部には、図8に示すハンドル台座55が取付けてある。図2に示すように、ハンドル台座55には、その内周側に第9熱膨張耐火材32iが固定されている。
【0013】
図3に示すように、ハンドル側の竪框9の下部にはスチール製の落下防止具57が設けてあり、対応する竪枠17には、スチール製の落下防止受け59が固定してある。図4及び図5に示すように、落下防止受け59には落下防止具57を上から係合する凹状の係合部59aが形成されている。
ハンドル53を取り付けていない側の竪框9には、図2及び図3に示すように、スチール製の開き防止金具61が設けてあり、対向する竪枠17にはスチール製の受け金具63が取付けてある。開き防止金具61は、図7に示すように竪枠側に突出した突片61aを有し、受け金具63は、図6に示すように室外側壁63a、上壁63b及び下壁63cを有し、開き防止具61が受け金具63から室外側に外れるのを阻止している。開き防止金具61及び受け金具63は、図12に示すように、上下方向の3箇所に設けている。
【0014】
また、図2及び図3に示すように、左右の竪枠17、17には、各々熱膨張耐火材保持具65を長手方向に設けてあり、熱膨張耐火材保持具65は横断面が略L字形状を成し、見込壁65aを竪枠17の見込方向略中央部にねじ66で固定してあり、室内側に第10熱膨張耐火材32jを保持する保持部65bを備えている。熱膨張耐火材保持部65bは、室内側から室外側に向けて傾斜してあり、第10熱膨張耐火材32jは、竪框9の室内側面と見込面とが成すコーナ部9cに対向して設けてある。
【0015】
図1に示すように、上枠13には、第3熱膨張耐火材32cを保持する熱膨張耐火材保持具43が上枠13の見込方向略中央でねじ固定されている。熱膨張耐火材保持具43には室内側に延出する保持部43aが形成してあり、保持部43aは上框5の室内側見付面と見込面とのコーナ部5cに近接するように傾斜している。熱膨張耐火材保持具43の保持部43aに第3熱膨張耐火材32cが設けてあり、第3熱膨張耐火材32cは、上框5の室内側見付面と見込面とのコーナ部5cに室内側で対向している。
下枠15には、第4熱膨張耐火材32dを保持する熱膨張耐火材保持具43が下枠15の見込方向略中央でねじ固定されている。熱膨張耐火材保持具43は室内側で枠内周側に延出する保持部43aが形成してあり、保持部43aは下框7の室内側見付面と見込面とのコーナ部7c且つ近接するように傾斜している。下枠15の第4熱膨張耐火材32dは下補助板29の下面に対向して設けてあると共に、下框7の室内側見付面と見込面とのコーナ部7cに室内側で対向している。
【0016】
障子3において、ガラス4の各コーナ部には、図13に示すコーナ金具47が設けてある。コーナ金具47のガラス4側面には、図1及び図2に示すように、第13熱膨張耐火材32nが設けてある。
尚、上述した第1熱膨張耐火材32a及び下述する第12熱膨張耐火材32m、第13熱膨張耐火材32nには熱が伝わり難い箇所に設けてあるので低温熱発泡体(約160℃で発泡を開始する)が用いられており、その他の熱膨張耐火材、即ち第2熱膨張耐火材32b〜第11熱膨張耐火材32kには一般的は熱発泡体(約200℃で発泡を開始する)が用いられている。
【0017】
次に、本実施の形態にかかるサッシ1の作用効果について、説明する。
火災の熱によりアルミニウム製の框や枠11が溶けた場合であっても、図1に示すように、アルミニウムよりも融点が高い材質でできたガラス保持溝補強材25、下框補強材51、下ステー19及び下枠補強材52が、一連にねじ50、30、68で固定してあるから、ガラス4の脱落を防止できる。
更に、火災時に、アルミ樹脂複合障子3の樹脂形材6が焼け落ちた場合でも、火災の熱により下枠15に設けた第4熱膨張耐火材32dが膨張して下框7の下補助板29及びコーナ部7cに当接して、下框7と下枠15との間の空間を塞ぐ。これにより、火災時にアルミ樹脂複合障子3の下框7と下枠15との間から外気が室内に入り込んだり、室内の炎を外に噴出するのを防止できる。
【0018】
上下左右の框5、7、9、9には、ガラス保持溝21内にスチール製のガラス保持溝補強材25が設けてあり、ガラス保持溝補強材25によりガラスの四周を保持しているので、火災時にアルミニウム製の框5、7、9、9及びグレイジングガスケット24が溶けた場合でもガラス4を保持して、ガラス4の脱落を防止できる。
ガラス保持溝21の溝壁とグレイイジングガスケット24との間にガラス保持溝補強材25を設けてあるので、框5、7、9、9のガラス保持溝21に予めガラス保持溝補強材25を固定しておき、そこにグレイジングガスケット24を取付けたガラス4を挿入することで、障子3が組立てできるので、施工性が良い。
各ガラス保持溝補強材25にはガラス端面に対向して第1熱膨張耐火材32aが設けてあり、火災時に第1熱膨張耐火材32aが熱膨張してガラス4の端面との間を塞ぐから、ガラス保持溝補強材25とガラス端面との間から、外気が室内に入り込んだり室内の炎を外に噴出するのを防止できる。
また、コーナ金具47に設けた第13熱膨張耐火材32nがガラスコーナ部との間を塞ぎ、竪框9ではガラス保持溝21の室内側面に設けた第12熱膨張耐火材32mが竪框9の室内側壁とガラス保持溝補強材25との間を塞ぐ。
下枠15では第5熱膨張耐火材32eが膨張して排水穴42を塞ぐので、かかる排水穴42から外気が室内に入り込んだり、室内の炎を外に噴出するのを防止できる。
【0019】
枠7には、図1に示すように、障子3の上框5の室内側コーナ部5cに対向する第3熱膨張耐火材32c、下框7の室内側コーナ部7cに対向する第4熱膨張耐火材32d及び図2、図3に示すように、左右の框9、9の室内側コーナ部9cに対向する第10熱膨張耐火材32jを設けてあり、火災時に、枠11の室内側の四周に設けた熱膨張耐火材32c、32d、32jが膨張して障子3の四周における室内側コーナ部5c、7c、9cに室内側から当接して、障子3と枠11との間を塞ぐ。これにより、火災時に障子3と枠11との間から外気が室内に入り込んだり、室内の炎を外に噴出するのを防止できる。
また、上框5の室外側、下框7の室外側、左右の竪框9、9の室外側には第8熱膨張耐火材32hが設けてあり、火災時に室外側における障子3と枠11との間を塞いで、外気が室内に入り込んだり、室内の炎を外に噴出するのを更に防止できる。
図2に示すように、ハンドル台座55に第9熱膨張耐火材32iが設けてあるから、火災時に、樹脂製ハンドル53が溶け落ちても、ハンドル53を取付けてあるハンドル台座55の穴55aを塞ぐことができる。
火災時に、下框7の下面7a形成されている排水穴7bを補強材51に設けた第11熱膨張耐火材32kで塞ぐことができる。
【0020】
図3に示すように、ハンドル側竪框9には、落下防止金具57が設けてあり、対向する枠17には落下防止金具受け59を設けているので、火災時における障子3の落下を防止できる。
また、他方の竪框9bには、図2及び図3に示すように、開き防止金具61を設けてあり、対向する竪枠17には受け金具63が設けてあるので、火災時に障子3が回転して開くのを防止できる。
【0021】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、第1及び第2実施の形態において、下框7の補助板29はスチール材に限らず、アルミニウム等の他の金属材やカーボン材であっても良く、樹脂製形材6よりも融点が高いものであれば良い。
ガラス保持溝補強材25、下框補強材51及び下枠補強材52は、スチール材に限らず、例えば、カーボン材等のアルミニウムよりも融点が高い材質であれば、材質は制限されない。
ガラス保持溝補強材25は、ガラス保持溝21の溝底とガラス端部の室内側面を覆う断面略L字形状であっても良い。
サッシ1はすべり出しサッシに限らず、上框5と上枠13の間及び下框7と下枠15の間にステー19を設けてあるサッシであればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 サッシ
3 障子
7 下框
11 枠
12 框
15 下枠
19 ステー(障子支持具)
25 ガラス保持溝補強材
51 下框補強材
52 下枠補強材
30、50、68 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子と、枠と、障子を開閉自在に支持する障子支持具とを備え、障子はガラスと、ガラス保持溝を有するアルミニウム製の框と、ガラス保持溝の溝底とガラス端部との間に設けてガラス端部を覆うガラス保持溝補強材と、下框に設けた下框補強材とを備え、下枠は下枠補強材を備え、障子支持具は上框と上枠の間及び下框と下枠の間に設けてあり、障子支持具、ガラス保持溝補強材、下框補強材及び下枠補強材はアルミニウムよりも融点が高い材質でできており、ガラス保持溝補強材と下框補強材とがねじで固定してあり、下框補強材と下枠補強材とが各々障子支持具にねじで固定してあることを特徴とするサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−76261(P2013−76261A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216750(P2011−216750)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】