説明

サファイア単結晶の製造方法

【課題】青色、白色LEDや各種電子デバイスなどに好適なサファイア単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】適度な温度勾配を有する単結晶育成装置1内部に設置した容器3内で原料(酸化アルミニウム)を溶融させ、酸化アルミニウム融液4の液面にサファイアの種結晶5を接触させ、その後種結晶5を周速0〜12mm/secの速度で回転させ、種結晶5の引き上げ距離dは育成初期の酸化アルミニウム融液4の液面高h1の0〜20%未満とし、種結晶5を酸化アルミニウム融液4に接触させた後、炉2の温度を0.2〜2°C/hrで降下させながら育成し、溶融した酸化アルミニウムを固化させて、大型で高品質なサファイア単結晶Sを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、青色、白色LEDや各種電子デバイスなどに好適なサファイア単結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサファイア単結晶を製造する方法の代表例にチョクラルスキー法(CZ法)、EFG法、熱交換法(HEM)及びキロポーラス法などが知られている。
CZ法は、容器内に酸化アルミニウムを溶融させ、その酸化アルミニウム融液の液面(表面)に種結晶を接触させ、その後に上記種結晶を回転させながら引上げることによって、円柱状のサファイア単結晶インゴットを成長させる方法である(特開2002−68884号公報及び特開2005−231958号公報など)。
EFG法は、容器内に酸化アルミニウムを溶融させ、上記容器内にセットしたスリット内を上昇してきた酸化アルミニウム融液に種結晶を接触させ、その後にその種結晶を引き上げることによって、板状のサファイア単結晶を成長させる方法である。
HEMは、容器内に酸化アルミニウムを溶融させ、上記容器の底部にセットした種結晶を冷却しながら容器内の酸化アルミニウム融液を全て結晶化させることによってサファイア単結晶を成長させる方法である。
キロポーラス法は、酸化アルミニウム融液に種結晶を接触させ、種結晶を起点に結晶を成長させる方法として知られている。
【非特許文献1】Kristall und Technik,14,6,(1979)pp.661−664
【特許文献1】特開2002−68884号公報
【特許文献2】特開2005−231958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CZ法で製造されるサファイア単結晶インゴットの直径は使用する容器直径の50%程度であるため、大型の単結晶インゴットを製造する場合にはさらに大型の装置や容器が必要であり、結晶製造コストが高額になるという問題があった。そしてこの方法は、投入した原料重量に対して得られる結晶重量の割合(固化率)が約50%と低いために容器内の残存原料を繰り返し使用しなければならず、不純物の濃縮による結晶品質の劣化を引き起こすという問題がある。
CZ法やEFG法によれば、サファイアの融点は2000°C以上であるため、加熱方法や炉の構成に制約が生じ、その制約の中でサファイア単結晶を製造しようとすると、温度勾配がきつい環境で結晶を製造しなければならず、良質な結晶を得るのが難しかった。
HEMは、酸化アルミニウム融液を容器内部で全て結晶化させるため、大型の結晶を製造し易いという利点はあるが、上記容器とサファイア単結晶の間に熱膨張差があるため、容器との接触部周辺にはひずみや結晶欠陥が生じやすく、また、使用する容器の寿命が短いために製造コストが高額になるという問題点がある。
キロポーラス法は、CZ法と類似し、このCZ法に比べて酸化アルミニウム融液内部で結晶が成長する割合が高いことが特徴であるが、CZ法と同様に、大型で高品質の結晶を得ようとすると、装置が大型化し、温度分布が不均一になりやすい。特にサファイアは融点が2000°C以上と高いため、炉の構成材や耐火物、加熱方法の制約が多いことから、実用的な形状の大型結晶を製造するのは極めて困難である。
この発明の目的は、大型で品質の高いサファイア単結晶を低コストで製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の第1の特徴は、容器中で酸化アルミニウムを溶融し、上記容器の酸化アルミニウム融液の液面に種結晶を接触させて、上記酸化アルミニウム融液内でサファイア単結晶を成長させる方法であって、上記種結晶の引き上げ距離は育成初期の酸化アルミニウム融液の液面高の0〜20%未満とし、上記種結晶を上記酸化アルミニウム融液に接触させた後、炉の温度を0.2〜2°C/hrで降下させながら育成することにある。
この発明の第2の特徴は、上記第1の特徴を備えており、種結晶を回転周速0〜12mm/secの速度で回転させることにある。
この発明の第3の特徴は、上記第1又は第2の特徴を備えており、直径10〜20mmの種結晶を用いることにある。
この発明の第4の特徴は、上記第1乃至第3のいずれかの特徴を備えており、容器内の溶融した酸化アルミニウムの固化率が80重量%以上まで結晶成長を継続することにある。
この発明の第5の特徴は、上記第1乃至第4のいずれかの特徴を備えており、炉内の縦方向の温度勾配が容器の上端と下端の間で3°C/cm以下であることにある。
この発明の第6の特徴は、上記第1乃至第5のいずれかの特徴を備えており、容器はその材質がイリジウム、モリブデン、タングステン又はこれらの合金からなり、高さ/直径が1.0以上の形状であることにある。
この発明の第7の特徴は、上記第1乃至第6のいずれかの特徴を備えており、雰囲気はAr、Ar+CO2、Ar+CO+CO又はAr+H+HOであることにある。
この発明の第8の特徴は、上記第7の特徴を備えており、酸素分圧が1E−14〜3E−5であることにある。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、装置や容器を大型化しなくても大型のサファイア単結晶の製造が可能となり、ウェハの取れ枚数が増加し、最終製品の製造コストを低減でき、製造されるサファイア単結晶は内部歪が少なく、高純度であり、従来の製造方法と比較して高品質のサファイア単結晶を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明に係るサファイア単結晶を製造するには、図1に示す単結晶育成装置1を用いる。
単結晶育成装置1について説明すると、これは、加熱手段によってその外側から内部が加熱される炉2、上記炉内に配置されている容器3、この容器内に収納されている酸化アルミニウム融液4及び種結晶5を備えている。加熱手段として抵抗式のヒーターを用いて容器3を加熱する。容器3の材質は、イリジウム、モリブデン、タングステン又はこれらの合金からなる。容器3の高さ/直径が1.0以上の形状であるのが良い。1.0未満の場合には温度勾配がきつくなり、酸化アルミニウム融液4の内部での成長すなわち、高さ方向の成長が妨げられるおそれがある。
【0007】
この発明の製造方法は、加熱手段を用いて容器3内で原料である酸化アルミニウムを溶融してから、図1(ア)に示すように酸化アルミニウム融液4の液面(表面)に種結晶5を接触させ、同図(イ)に示すように酸化アルミニウム融液内でサファイア単結晶Sを成長させるものである。製造工程における酸化アルミニウム融液の液面高は、育成初期の液面高h1から育成後の液面高h2に変化する。
製造工程における種結晶5の引き上げ距離dは、育成初期の酸化アルミニウム融液の液面高h1の0〜20%未満とし、そして炉2の温度を0.2〜2°C/hrで降下させながら育成するものである。
種結晶5の引き上げ距離dの最小値0は、引き上げることなく製造することを意味し、設定条件によっては可能な限り種結晶5を引き上げずに結晶を育成することが望ましいからである。種結晶5の引き上げ距離dを上記の条件に設定することにより、酸化アルミニウム融液の液面での結晶化が起こりにくく、酸化アルミニウム融液内部で結晶化が支配的となる。
また炉2の温度に関して、温度降下速度が0.2°C/hr未満の場合には結晶育成に時間がかかり過ぎ、そのために製造などのコストがかかり、また2°C/hrを越える場合には結晶育成速度が速すぎて、泡や不純物の取り込みが多くなり、結晶の品質が悪化する。このために上記した温度降下速度範囲が良い。
【0008】
この発明の製造方法では、大型のサファイア単結晶Sを得るために、炉2内の縦方向の温度勾配が容器3の上端と下端の間で温度勾配を3°C/cm以下として、炉2の全体を上記した温度降下速度0.2〜2°C/hrで冷却することにより、酸化アルミニウム融液4内部の結晶化を進行させる。
この製造方法を用いれば、緩やかな温度勾配の環境下で結晶が成長し、熱ひずみや応力ひずみも減少するため、サファイアの結晶品質が向上する。温度勾配を3°C/cm越えると、酸化アルミニウム融液4の液面付近でしか結晶が成長しないために結晶を積極的に引き上げない限り、結晶成長が行えなくなるからである。
【0009】
この発明の製造方法は、サファイア単結晶Sを育成する際に種結晶5を回転させる。
種結晶5の回転時には、例えば回転周速12mm/sec以下の低速回転にすることによって、均一な円筒形状のサファイア単結晶Sが得られやすくなる。回転周速12mm/secを越えて回転を行うと、サファイア単結晶Sの形状制御が難しくなったり、結晶内部に泡が取り込まれて品質の向上に悪影響を与える。
もちろん、この発明の製造方法において、種結晶5を回転させることは不可欠な要件ではなく、他の実施の形態として種結晶を回転させることなく結晶の成長をする場合も含むのである。これは、酸化アルミニウム融液4の温度勾配を小さくすることによって強制的に対流を生じさせる必要がなくなるからである。その結果として、自然対流が支配的な環境で育成する方が泡の巻き込みなどが少なくなり品質向上に良好である。
【0010】
この発明の製造方法において、種結晶5として直径10〜20mmのサファイアを用いる。
このことによって、種結晶5を経由した熱交換を促進させる。
種結晶5の大きさは上記範囲に限定されないが、この種結晶の直径が10mmより細いと、種結晶を経由した熱交換が促進されないために、結晶成長が不均一になり、結果的に結晶品質の向上に悪影響を与え、また種結晶の直径が20mmより太いと、種結晶表面での温度差が大きくなり過ぎて、最適な種付けを行うことができなくなるものと推察される。
【0011】
この発明の製造方法では、種結晶5から積極的に熱を奪うことによって、酸化アルミニウム融液4内へのサファイア単結晶の成長を促進させる。そのために、種結晶5を保持する軸を水又は気体によって冷却し、この時、冷却部位から種結晶5までの距離をできるだけ短く設定する。
【0012】
この発明の製造方法では、容器3内の溶融した原料(酸化アルミニウム)の固化率が80重量%以上まで結晶成長を継続する。
溶融した酸化アルミニウムの結晶固化率が少なくとも80重量%以上とすることによって、1回の育成において効率良くサファイア単結晶Sを育成でき、製造コストも低減できる。そして容器3内に古い原料が残存せず、常に新しい原料から結晶育成を開始できるため、高純度な結晶が育成可能となる。
【0013】
この発明の製造方法では、酸化アルミニウム融液4の原料(酸化アルミニウム)を入れる容器3にイリジウム、モリブデン、タングステン又はこれらの合金材からなり、高さ/直径が1.0以上の細長い形状のものを用いるのが良い。
これは、容器3として細長い容器を用いることによって、温度勾配を緩く設定できるからである。また、一度により多くの酸化アルミニウム融液4の原料を容器3にセットできるため、原料をチャージするためだけに炉を稼動させる必要がなくなり、さらに使用できる酸化アルミニウム融液の原料の種類(例えば粉末原料、セラミックス原料、結晶原料など)を広く選択できる。容器3として、細長い容器を用いる代わりに容器の上に円筒状又はコーン状の熱遮蔽板を設置しても良い。
【0014】
この発明の製造方法では、加熱手段による容器3への加熱方式は炉2を介する間接加熱方式とするのが良い。これは、容器3を直接加熱する直接加熱方式では容器内の温度勾配が大きくなり良質の結晶が得られないからである。また直接加熱方式では、サファイア単結晶Sの酸化アルミニウム融液4中への成長が阻害されるため、大径結晶を得ることができないからである。
【0015】
この発明の製造方法では、結晶育成時の雰囲気として、Ar、Ar+CO、Ar+CO+CO又はAr+H+HOのいずれかを用いるのが良い。
これらの雰囲気は、炉2の材質であるモリブデンやカーボンなどの炉材を酸化させず、かつサファイアを還元させずに結晶を成長させる可能性が生じる。上記雰囲気により、加熱手段としてカーボンのヒーター、炉2の炉材として耐火材や断熱材を使用することができるようになり、設備コストの低減が実現できる。
また上記雰囲気において、酸素分圧は1E−14〜3E−5であることが結晶成長に好ましいものと推測される。
【実施例】
【0016】
以下、この発明の実施例について表1を参照して説明する。
【0017】
(実施例1)
容器3として、直径(内径)230mmのモリブデン製のものを用い、種結晶5として直径20mmのサファイア種結晶を使用した。
容器3内に原料である酸化アルミニウムをAr雰囲気中で溶融させてから、サファイアの種結晶5を酸化アルミニウム融液4の液面に接触させ、酸化アルミニウム融液内の温度勾配を制御しながら炉2の温度降下速度を0.2°C/hrとして、炉内全体を均一に冷却した。
製造過程における種結晶5の引き上げ速度は0.3mm/hrとした。ただし、種結晶5の引き上げ時には回転周速0.0mm/sec(これを回転しないもの)とした。
この結果、表1に示すように、結晶最大径165mm、結晶長(高さ)205mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なかった。サファイア単結晶Sから作成したサファイアウエハー上でその転位(欠陥)密度(EPD)を測定すると、平均で3500/cmであった。
容器3の直径に対して165/230mmの直径(約72%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の70%以上を結晶化できた。
【0018】
(実施例2)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例1と同様な条件により実施した。ただし、炉2の温度降下を0.4°C/hrにし、炉内全体を均一に冷却し、種結晶5の引き上げ速度を0.2mm/hrに設定した。
この結果、表1に示すように、結晶最大径210mm、結晶長(高さ)200mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で2200/cmであった。
容器3の直径に対して210/230mmの直径(約91%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の90%以上を結晶化できた。
【0019】
(実施例3)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例1と同様な条件により実施した。ただし、種結晶5の引き上げ速度を0.1mm/hrに設定した。
この結果、表1に示すように、結晶最大径165mm、結晶長(高さ)200mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で8700/cmであった。
容器3の直径に対して165/230mmの直径(約72%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の70%以上を結晶化できた。
【0020】
(実施例4)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例1と同様な条件により実施した。ただし、炉2の温度降下を0.6°C/hrとし、種結晶5の引き上げ速度は0.1mm/hrに設定した。
この結果、表1に示すように、結晶最大径215mm、結晶長(高さ)180mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で5100/cmであった。
容器3の直径に対して215/230mmの直径(約93%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の90%以上を結晶化できた。
【0021】
(実施例5)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
容器3内に酸化アルミニウム原料をAr雰囲気中で溶融させてから、サファイアの種結晶5を酸化アルミニウム融液4の液面に接触させ、酸化アルミニウム融液内の温度勾配を制御しながら炉2の温度降下を2.0°C/hrとし、その後この種結晶を回転周速3mm/secで回転させながら、炉内全体を均一に冷却した。製造過程における種結晶5の引き上げ速度は0.1mm/hrとした。
この結果、表1に示すように、結晶最大径195mm、結晶長(高さ)185mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で9100/cmであった。
容器3の直径に対して195/230mmの直径(約85%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の80%以上を結晶化できた。
【0022】
(実施例6)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例1と同様な条件により実施した。ただし、種結晶5の引き上げ速度を0.0mm/hrに設定した。すなわち、種結晶5の引き上げ距離dは0である。
この結果、表1に示すように、結晶最大径168mm、結晶長(高さ)196mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で2700/cmであった。
容器3の直径に対して168/230mmの直径(約73%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の70%以上を結晶化できた。
【0023】
(実施例7)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
容器3内に酸化アルミニウム原料をAr雰囲気中で溶融させてから、サファイアの種結晶5を酸化アルミニウム融液4の液面に接触させ、酸化アルミニウム融液内の温度勾配を制御しながら炉2の温度降下を0.4°C/hrとし、その後この種結晶を回転周速11mm/secで回転させながら、炉内全体を均一に冷却した。
なお、種結晶5の引き上げ速度を0.0mm/hrに設定した。
この結果、表1に示すように、結晶最大径215mm、結晶長(高さ)180mmの大型サファイアインゴットを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なかった。サファイア単結晶Sの転位密度(EPD)は、平均で2200/cmであった。結晶内の不純物は10ppm以下であった。
容器3の直径に対して215/230mmの直径(約93%の結晶径)を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の90%以上を結晶化できた。
【0024】
(実施例8)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例7と同様な条件により実施した。ただし、炉2の温度降下を0.6°C/hrとし、種結晶5の回転周速を9mm/secに設定した。
この結果、表1に示すように、結晶最大径215mm、結晶長(高さ)180mmの大型サファイアインゴットを育成できた。この時、酸化アルミニウム原料の約98%を結晶化することができた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で3100/cmであった。
実施例7と同様の結晶径を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の90%以上を結晶化できた。
【0025】
(実施例9)
実施例1と同じ容器3及び種結晶5を使用した。
実施例8と同様な条件により実施した。ただし、雰囲気をAr+COに設定した。
この結果、表1に示すように、実施例7と同様のサファイア単結晶Sを育成できた。
この実施例により育成したサファイア単結晶Sは無色透明で、泡などの巨視的欠陥が極めて少なく、転位密度(EPD)は平均で5100/cmであった。
実施例7と同様の結晶径を有するサファイアインゴットを製造でき、そして投入した原料(酸化アルミニウム)の90%以上を結晶化できた。
【0026】
実施例1〜実施例9において、直径165mm以上の大きさを有し、かつ高品質なサファイア(酸化アルミニウム;Al)単結晶Sを製造することができた。
実施例1、実施例3及び実施例6を除いてすべての実施例において、容器径の80%以上の結晶径を有するサファイア単結晶Sを得ることができ、また、溶融した酸化アルミニウム融液4の結晶固化率が少なくとも80重量%以上を達成することができた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係るサファイア単結晶の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 単結晶育成装置
2 炉
3 容器
4 酸化アルミニウム融液
5 種結晶
d 種結晶の引き上げ距離
h1 育成初期の酸化アルミニウム融液の液面高
S サファイア単結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器中で酸化アルミニウムを溶融し、上記容器の酸化アルミニウム融液の液面に種結晶を接触させて、上記酸化アルミニウム融液内でサファイア単結晶を成長させる方法であって、
上記種結晶の引き上げ距離は育成初期の酸化アルミニウム融液の液面高の0〜20%未満とし、
上記種結晶を上記酸化アルミニウム融液に接触させた後、炉の温度を0.2〜2°C/hrで降下させながら育成する
ことを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
【請求項2】
種結晶を回転周速0〜12mm/secの速度で回転させることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項3】
直径10〜20mmの種結晶を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項4】
容器内の溶融した酸化アルミニウムの固化率が80重量%以上まで結晶成長を継続することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項5】
炉内の縦方向の温度勾配が容器の上端と下端の間で3°C/cm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項6】
容器は、その材質がイリジウム、モリブデン、タングステン又はこれらの合金からなり、高さ/直径が1.0以上の形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項7】
雰囲気はAr、Ar+CO2、Ar+CO+CO又はAr+H+HOであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のサファイア単結晶の製造方法。
【請求項8】
酸素分圧は1E−14〜3E−5であることを特徴とする請求項7に記載のサファイア単結晶の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−31019(P2008−31019A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208653(P2006−208653)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(391049530)株式会社信光社 (14)
【Fターム(参考)】