説明

サファイア基板を活性窒素に暴露して半導体デバイスを作製する方法及び半導体デバイス

【課題】真性に近い単結晶GaN膜を有し、かつこの膜をn形又はp形に選択的にドープした半導体デバイスを提供する。
【解決手段】次の要素を有する半導体デバイス:基板であって、この基板は、(100)シリコン、(111)シリコン、(0001)サファイア、(11−20)サファイア、(1−102)サファイア、(111)ヒ化ガリウム、(100)ヒ化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、および炭化シリコンからなる群から選択される物質からなる;約200Å〜約500Åの厚さを有する非単結晶バッファ層であって、このバッファ層は前記基板の上に成長した第一の物質を含み、この第一の物質は窒化ガリウムを含む;および前記バッファ層の上に成長した第一の成長層であって、この第一の成長層は窒化ガリウムと第一のドープ物質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマアシスト単結晶ビームエピタキシー(ECR-assisted MBE)によって作製される単結晶窒化ガリウム薄膜を有する半導体デバイスに関する。更に、本発明は、n形又はp形の窒化ガリウム(GaN)膜を有する半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶GaNは電子的特性及び光学的特性に有用である見込みがあるため、これを作製する試みが行われている。GaNは廉価でかつコンパクトな固体の青いレーザーの有望な源である。GaNのバンドギャップは約3.4eVであり、これはUV〜可視領域の端の光を発することができることを意味している。真性GaNでは、キャリヤー濃度(ni)は5.2×103cm-3、移動度は330cm2-1-1で、抵抗率は3.6×1012Ω-cmである。
【0003】
単結晶GaN膜が所望されているにもかかわらず、その開発はその成長過程において遭遇する多くの問題のために遅れている。単結晶GaN膜を作製するために行われて来た従来の試みではキャリヤー濃度の高いn形膜が作製されてきた。n形の特性は、結晶構造中に含まれる窒素の空孔のためである。なお、空孔は、該膜の成長中に結晶格子中へ組み込まれる。結果として、膜は、成長中に意図せずに窒素でドープされる。窒素の空孔は該膜の電子的特性及び光学的特性に影響を及ぼす。
【0004】
ECR-アシスト有機金属気相成長により、高度に導電性でかつ意図せずにドープされたn形のGaN膜が得られた(S.ZembutsuとT.Sasaki J.Cryst. Growth 77,25−26(1986))。キャリヤー濃度は1×1019cm-3で、移動度は50〜100cm2-1-1であった。膜をp形にドープする試みは成功していない。キャリヤー濃度は補正によって低くさせた、すなわち、ドナー濃度をアクセプタ不純物の添加によって”中性化”させた。
【0005】
高抵抗性の膜を窒素雰囲気で超純度のガリウムターゲットを用いてスパッターリングして作製した。膜はn形で、高抵抗性は膜が多結晶性のためであった(E.Lakshmi他 Thin Solid Films 74,77(1977))。
【0006】
反応性イオン分子ビームエピタキシーでは、ガリウムは標準的な発散セル(effusion cell)から供給し、窒素はイオンビームによって供給した。単結晶膜はn形だが、抵抗率は106Ω-cm とより高く、キャリヤー濃度と移動度は比較的低い(1014cm-3と1〜10cm2-1-1)ものが得られた(R.C.Powell他"Diamond, Silicon Carbide and Related Wide Bandgap Semiconductors”Vol.162,J.T.Glass,R.MessierおよびN.Fujimori著、(Material Research Society,Pittsburgh,1990),525〜530頁)。
【0007】
唯一報告されているp形GaNは低いエネルギーの電子ビームを放射して成長の後に処理したMgドープGaNであった。p形の導電性はn形GaNを補正することによって達成された(H.Amano他、Jap.J Appl.Phys.28(12),L2112〜L2114(1989))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在のGaN作製方法は、格子内の窒素空孔を制御することができない。したがって、真性GaNを作製することができない。さらに、GaN膜のドープ工程を制御して、p-n接合の製造を可能ならしめることが望ましい。本発明は、真性に近い単結晶GaN膜を有し、かつこの膜をn形又はp形に選択的にドープした半導体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高度に絶縁性の真性に近い単結晶GaN膜を有する半導体デバイスはECRアシストMBEを利用する装置によって作製される。装置の好適な実施例においては、Gaの分子ビーム源と活性窒素源をMBE成長室内に設ける。所望の基板をGa と活性窒素に暴露する。膜を2つの工程、低温核形成工程と高温成長工程でエピタキシャル成長させる。核形成工程は基板を100〜400℃の範囲の温度の窒素プラズマとガリウムに暴露させるのが好ましく、高温成長工程は600〜900℃の範囲の温度で実施するのが好ましい。好適な基板には、例えば、(100)と(111)のシリコンと(0001)、(11−20)及び(1−102)のサファイア、(111)と(100)のヒ化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び炭化ケイ素がある。好適な活性窒素種源は、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマもしくはホットタングステンフィラメント又はその他の慣用的な方法によって生じうる窒素プラズマである。
【0010】
好適な実施例では、窒素プラズマの圧力とGa フラックスの圧力を制御して、金属ガリウムの膜表面のビード(beading)の形成と格子内の窒素空孔の形成を阻止する。Ga フラックスは2.0〜5.0×10-7トルの範囲にあるのが好ましい。成長室内では窒素の過圧があるのが好ましく、過圧は10-3〜10-5トルの範囲であるのがより好ましい。
【0011】
更に別の好適な実施例では、低温核形成工程において3〜15分間基板をGaと窒素に暴露させる。厚さが200〜500Åの膜を蒸着させる。この膜は、核形成工程の低温下においては非晶質である。非晶質膜を活性窒素の存在下において600〜900℃で加熱することによって結晶化することができる。続いて、高温、好ましくは600〜900℃の処理を行うと、単結晶の真性に近いGaN膜のエピタキシャル成長が行われる。成長層の好適な厚さは0.5〜10μmの範囲内である。
【0012】
本発明の別の実施例では、単結晶GaN膜をn形又はp形で優先的にドープする。p形半導体を作り出すために、MBE成長室にはGa、活性窒素及びアクセプタの各源が備えられている。アクセプタ源には、Be、Zn、Cd 及びCa のようなII族の元素が含まれる。基板には、基板表面へ又は基板の正面に直接おかれた金属グリッドへ正のバイアスを付加することによって電子を衝突させる。低温蒸着及び高温蒸着の条件は既述の通りである。基板をGa、窒素及びアクセプタの源に暴露させると、ドープされたGaN膜が得られ、アクセプタは電子を帯びて陰電荷の種として格子内に組み込まれる。電荷を有するアクセプタ種は中性のアクセプタに比べて低いエネルギーでGaN格子内に組み込むことができる。物質をn形でドープするために、基板又はグリッドに負のバイアスをかけることによって陽イオンを衝突させる。従って、ドナー不純物は荷電状態でGaNに組み込まれる。これは、中性のドナー種を組み込む場合と比べて低いエネルギーしか必要としないことを意味する。適切なドナーにはIV族とVI族の元素がある。このようにして、200℃で1010Ω-cm の抵抗率と100cm2-1-1の移動度を有する真性に近いGaN膜を作製することができる。p形半導体とn形半導体を、単に表面又はグリッドバイアス及び不純物源を選択することによって選択的に作製することができる。あるいは、p-n接合を効果的に製造することも可能である。
【0013】
本発明の絶縁性単結晶GaN膜を有する半導体デバイスを作製する方法と装置の好ましい態様は、以下の(1)〜(21)によって要約される。
(1)絶縁性単結晶GaN膜を作製する方法であって、
分子ビームエピタキシャル反応室内に、所望の相のGaNに整合する適当な格子を有する単結晶基板を設け、
分子ビームガリウム源を設け、
活性窒素源を設け、そして
前記基板を前記のガリウム源と窒素源に暴露することによって、下記の2工程成長法を用いてGaN膜を蒸着する:
工程中に、基板が約100℃〜400℃の温度に維持され、そして実質的に一定のガリウムフラックス圧力と実質的に一定の窒素圧力が維持される、低温核形成工程、および
工程中に、基板が約600℃〜900℃の温度に維持され、そして実質的に一定のガリウムフラックス圧力と実質的に一定の窒素圧力が維持される、高温成長工程、
以上の工程を含む方法。
(2)ドープしたp形GaN膜を作製する方法であって、
分子ビームエピタキシャル反応室内に、所望の相のGaNに整合する適当な格子を有する単結晶基板を設け、
ガリウム源、窒素プラズマ源およびアクセプタ源を設け、
前記基板を、約100℃〜400℃の温度において、実質的に一定のフラックス圧力に維持された前記ガリウム源と実質的に一定の圧力に維持された前記窒素源に暴露することによって核形成工程を実施し、
約600℃〜900℃の温度において成長工程を実施して、それによって前記基板上にGaN膜を蒸着させ、
前記基板の表面に正のバイアスをかけて、そして
前記表面を、前記実質的に一定のフラックス圧力に維持された前記ガリウム源、前記実質的に一定の圧力に維持された前記窒素源、及び前記アクセプタ源に暴露することによって、ドープしたGaN膜を蒸着させて、それによって、前記成長工程の間前記アクセプタを負に荷電した状態におく、
以上の工程を含む方法。
(3)ドープしたn形GaN膜を作製する方法であって、
分子ビームエピタキシャル反応室内に、所望の相のGaNに整合する適当な格子を有する単結晶基板を設け、
ガリウム源、窒素プラズマ源およびドナー源を設け、
核形成工程において前記基板を前記のガリウム源と窒素源に低温で暴露し、このとき、基板は約100℃〜400℃の温度に維持され、また実質的に一定のガリウムフラックス圧力と実質的に一定の窒素圧力が維持され、そして
600℃〜900℃の温度において成長工程を実施して前記基板上にGaN膜を蒸着さ
せ、さらに
前記基板の表面を負にバイアスさせ、そして
前記表面を、前記実質的に一定のフラックス圧力に維持された前記ガリウム源、前記実質的に一定の圧力に維持された前記窒素源、及び前記ドナー源に暴露することによって、ドープしたGaN膜を蒸着させて、それによって、前記成長工程の間前記ドナーを正に荷電した状態におく、
以上の工程を含む方法。
(4)前記の単結晶基板は(100)シリコン又は(111)シリコン、(11-3)サファイア、(0001)サファイア又は(1-102)サファイア、(100)ヒ化ガリウム又は(111)ヒ化ガリウム、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムである、
(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(5)前記ガリウム源はクヌーセン発散セル又は金属-有機源である、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(6)前記金属−有機源がトリメチルガリウムである、(5)に記載の方法。
(7)ガリウムフラックス圧力は約2.0〜5.0×10-7トルの範囲である、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(8)前記活性窒素源は電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ(ECR源)またはホットタングステンフィラメントで発生した窒素のプラズマである、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(9)窒素の過圧を前記成長室内で保持する、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(10)前記窒素圧力/前記ガリウムフラックス圧力の比率は約102〜104の範囲である、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(11)活性窒素源には窒素原子種又は窒素イオン種が含まれる、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(12)前記の低温核形成工程には、基板を前記のガリウム源と窒素源へ3〜15分間暴露することが含まれる、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(13)前記膜の厚さは30〜500Åである、(12)に記載の方法。
(14)前記の高温成長工程で0.5〜10μmの厚さの膜を蒸着する、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(15)基板の表面を荷電させる前記工程は、前記基板の直前におかれたグリッドに電気的にバイアスをかけるか、電子ガンからの電子を前記表面に衝突させるか、イオンガンからの陽イオンを前記表面に衝突させるか、または前記基板表面の背面に電気アースを設けることを含む、(2)又は(3)に記載の方法。
(16)前記成長工程には、基板を800℃未満の温度に保持することを含む、(1)(2)又は(3)に記載の方法。
(17)前記成長工程には、基板を600℃以下の温度に保持することを含む、(16)に記載の方法。
(18)絶縁性単結晶GaN膜の作製装置であって、
所望の相のGaNと整合する適当な格子を有する単結晶基板を収容する分子ビームエピタキシャル反応室、
分子ビームガリウム源、
活性窒素源、および
前記基板を前記のガリウム源と窒素源に暴露させて、低温核形成工程と高温成長工程を含む2工程成長法を用いて膜を蒸着させる手段、
を含む装置。
(19)ドープしたGaN膜の作製装置であって、
所望の相のGaNと整合する適当な格子を有する単結晶基板を収容する分子ビームエピタキシャル反応室、
ガリウム源、活性窒素源及びアクセプタまたはドナー源、
前記基板の表面に負または正のバイアスをかける手段、および
前記基板を前記のガリウム源、窒素源及びアクセプタまたはドナー源に暴露して、低温核形成工程と高温成長工程とを含む2工程成長法を用いて膜を蒸着させる手段、
を含む装置。
(20)高絶縁性単結晶GaN薄膜の作製装置であって、
膜を蒸着させるべき基板を収容する分子ビームエピタキシャル反応室、
前記膜の一つの成分の活性種を前記基板に向かわせるための電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ源、および
前記膜の別の成分のビームを前記基板に向けて、前記基板上に前記膜を蒸着させる装置、
を含む装置。
(21)アクセプタ不純物又はドナー不純物を前記基板に向かわせる装置、および前記基板に適切に電気的にバイアスをかけることによって前記アクセプタ不純物又はドナー不純物を前記膜の中に取り込ませる装置をさらに含む、(20)に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る半導体デバイスを作製するためのECRアシストMBE成長室の断面図である。
【図2】1工程法で成長した(11−20)サファイア上のGaN膜のX線回折パターンである。
【図3】2工程法で成長した(11−20)サファイア上のGaN膜のX線回折パターンである。
【図4】本発明に係るGaN膜をドープする装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
GaNの意図しないドープはGaN格子内の窒素の空孔の形成による。GaNは、上記方法の処理温度(>1000℃)より十分に低い温度である約650℃で分解する(かつ窒素を失う)。それ故、成長法自身が空孔形成のために十分な熱エネルギーを提供することになる。より低い温度での成長方法では、窒素の格子内の空孔の数が減り、GaN格子に意図しないn形ドープが行なわれるのが阻止され、真性GaNの形成が達成される。
【0016】
上記の装置を用いると、活性窒素源を利用して有意的に低い処理温度でGaNを形成することができる。ECRマイクロ波窒素プラズマは好適な活性窒素源である。2工程加熱法によれば、より低い温度で単結晶GaNを形成することができる。
【0017】
本発明の半導体デバイスを作製するためのECR-MBEシステムは図1に示されているものである。ECRシステム10は、ECRシステムが発散口12に取り付けられていることによってMBEシステム11と一体にされている。ECRシステムには、マイクロ波発生器13、導波器14、高真空プラズマ室15及び2つの電磁石16、17が含まれている。2.43GHz のマイクロ波をマイクロ波発生器13で発生させて長四角形の導波器14に移送させる。100〜500Wのパワーのマイクロ波が導波器14を通過してプラズマ室15に至る。窒素がマスフロー制御器18を通ってプラズマ室15に流れ込む。マスフロー制御器18は調節可能な一定の流速を維持する。上方の磁石16は2kWの出力供給器(図示せず)により機能し、下方の磁石17は5kWの出力供給器(図示せず)により機能する。このようにして電磁石を配置するとより強力で安定なプラズマが生ずる。
【0018】
上方の電磁石16は室15内の自由電子をサイクロトロン軌道におく。サイクロトロンの振動数は磁界の強度と電子の電荷-質量比(charge-mass ratio)に依存して変わる。全ての電子がサイクロトロンの軌道にあると想定されるので、ランダムな動きと衝突で失われるエネルギーは減る。更に、プラズマは室15の中央へ閉じ込められる。磁界は、マイクロ波の振幅の振動数が電子のサイクロトロン振動数にちょうど等しくなるように調整される。その後、N2をマスフロー制御器18を通過させて室内へ導入させ、そして、高エネルギーの電子の衝突によって、高エネルギーの窒素原子と窒素イオンに分解させる。その後、下方の電磁石17がイオンを発散口12を通過させて基板19まで誘導する。該基板19は、MBEシステム11の成長室21内の連続方位回転(continuous azimuthal rotation)(C.A.R.)装置20上におかれたものである。
【0019】
C.A.R.20を0〜120rpm の間で回転させることができる。ある種の基板上ではGaN膜はウルツ鉱型(wurtzitic)構造で成長し、その他の基板上ではGaN膜はジンクブレンデ型(zincblende)構造で成長する。このような基板には、例えば、サファイア(ウルツ鉱型構造のGaN)やSi(100)(ジンクブレンデ型構造のGaN)がある。ガリウムフラックスはクヌーセン発散セル22で発生する。
【0020】
典型的な方法においては、基板19を600℃の窒素でスパッターエッチングした。基板を270℃まで窒素プラズマの存在下で冷却した。その後、Ga シャッター23を開いて、始めにGaNのバッファ層を蒸着した。活性窒素源を使用することにより、GaNを低温で蒸着させることが可能となった。バッファ層は10分以上にわたって核形成を可能とし、その後に、Ga シャッター23を閉めて該膜の核形成を止めた。その後に、基板を、窒素プラズマの存在下において15秒毎に4℃の割合でゆっくりと600℃にした。窒素の過圧も窒素空孔の形成を減らすのを助けた。
【0021】
600℃まで至った後、基板19を窒素プラズマの存在下において30分間この温度で保持してGaNバッファ層を結晶化させた。Ga シャッター23をもう一度開けて、GaN単結晶膜を成長させた。膜の厚さは、理論上は制限はないが、約1μm であった。窒素圧力とガリウムフラックスは全工程にわたって一定に保たれている。
【0022】
2工程成長法によれば、バッファ層の核形成を可能とする。バッファ層は100〜400℃の範囲の温度で成長する。温度が低いために、窒素の空孔が形成される可能性は低い。温度が600℃まで上がるにつれて、非晶質膜が結晶化する。この2工程法により成長した膜は1工程法により成長した膜より優れている。
【0023】
図2および図3は、1工程法(図2)と2工程法(図3)での(11−20)サファイアのα面上に成長したGaN膜のX線回折(XRD)パターンを示している。図2の約2θ=35°における2つのピークはGaN結晶が不完全なためである。図3は、よりよい品質の膜であることを示す単一のピークを示している。これは、GaNバッファの上に大部分の膜が成長して下層の基板が見えないためである。GaNの成長層はGaNバッファ層を"認めて”、その上に該成長層が欠陥なく成長することができるからである。バッファは唯一のかなり欠陥のある部分の膜である。
【0024】
既述の方法で成長した膜は室温で抵抗率が高い(1010Ω-cm)。この物質の移動度は10cm2-1-1であり、真性GaNの理論移動度である330Ω-cm-3に比べて応分な値である。
【0025】
GaN膜を、荷電状態にある適当な不純物を組み入れることによってn形又はp形にドープする。これは、格子内に荷電不純物を組み入れるのに必要なエネルギーは中性の不純物を組み入れるのに必要なエネルギーより低いからである。図4は、荷電アクセプタをGaN格子へドープすることを概略的に示したものである。基板19又はその前に直接おかれたグリッド19aに正のバイアスをかける。図4は、基板19とグリッド19aの両方が電圧源に結合していることを示している。本発明を実施する際には、基板19又はグリッド19aのいずれかに正のバイアスをかけることになるであろう。それ故、電子は基板表面へ引き寄せられ、一方で、N+のような陽イオンは反発される。成長方法は、既述のようにアクセプタ源24を加えて実施して、Ga、窒素及びアクセプタを基板の電子で富化した表面に蒸着させる。アクセプタの原子が表面に近づくにつれて、それは電子を帯びて陰の種として格子内へ組み込まれる。組み込まれる際のエネルギーは中性のアクセプタ種と比べて低い。基板又はグリッドに負のバイアスをかけることを除いては同じようにして、GaN格子にドナー不純物をドープする。あるいは、基板表面に電子又は陽イオンを衝突させることによって、荷電表面を作り出すことができる。電子ガンとイオンガンは、それぞれ、これらの種の慣用的な源である。
【0026】
適切なアクセプタ種には、例えば、マグネシウム、ベリリウム、カルシウムなどがある。適切なドナー種には、例えば、シリコン、ゲルマニウム、酸素、セレン、硫黄などがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの作製方法であって、該方法は、
第1の温度で、III族元素の不存在下において、サファイア基板の表面を活性窒素に暴露し、窒化サファイア基板を形成するステップと、
続いて、前記窒化サファイア基板の表面に窒化ガリウム半導体材料の層を堆積するステップと、
を備えた方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記第1の温度は600℃である、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記堆積するステップに先立って、前記サファイア基板が、前記第1の温度より低温の第2の温度まで冷却される、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記第2の温度は270℃であり、前記堆積するステップは分子ビームエピタキシャル法を用いて実施される、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記暴露するステップが、
(1)窒素含有ガスを、堆積システムに導入するステップ、及び
(2)前記堆積システム内で、前記窒素含有ガスを活性化するステップ
を備えている、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記堆積システムは、分子ビームエピタキシャル反応室を備え、前記活性窒素は、前記分子ビームエピタキシャル反応室内の窒素プラズマに含有される活性窒素種を含む、方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記分子ビームエピタキシャル反応室は、そこに取り付けられた電子サイクロトロン共鳴システムを有し、前記窒素プラズマは、前記電子サイクロトロン共鳴システムにより引き起こされる、前記分子ビームエピタキシャル反応室内の前記窒素含有ガスと高エネルギ電子との間の相互作用により創出される、方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記分子ビームエピタキシャル反応室は、加熱タングステンフィラメントを備えている、方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記分子ビームエピタキシャル反応室は、マイクロ波発生器を備えている、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記窒化ガリウム半導体材料の層は、非単結晶バッファ層である、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、該方法は、前記バッファ層上に窒化ガリウム半導体材料の成長層を堆積するステップを更に備える、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記バッファ層は、100℃〜400℃の範囲の温度で堆積される、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記バッファ層は、前記バッファ層の堆積後で且つ前記成長層の堆積前に、600℃〜900℃の範囲の温度で非単結晶状態に転化される、方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法において、前記成長層は、p型又はn型のドープ材料を含む、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記サファイア基板は、(0001)サファイア、(11−20)サファイア、又は(1−102)サファイアである、方法。
【請求項16】
窒化サファイア基板と、
窒化ガリウムを含む第1成長層と、
を備えた、半導体デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体デバイスにおいて、前記サファイア基板は、(0001)サファイア、(11−20)サファイア、又は(1−102)サファイアである、半導体デバイス。
【請求項18】
請求項16に記載の半導体デバイスにおいて、前記基板は、前記サファイア基板の表面を活性窒素に暴露することにより窒化処理され、該デバイスは、高度に絶縁性の真性に近い単結晶窒化ガリウム膜を含む、デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体デバイスにおいて、前記暴露が600℃で実施される、半導体デバイス。
【請求項20】
請求項16に記載の半導体デバイスであって、該デバイスは、200Å〜500Åの範囲の厚さを有する非単結晶バッファ層を含み、該バッファ層は、前記窒化サファイア基板をガリウム及び窒素に暴露することにより成長させた窒化ガリウムを含む、半導体デバイス。
【請求項21】
請求項20に記載の半導体デバイスにおいて、前記バッファ層は、100℃〜400℃の範囲の温度で堆積され、前記堆積されたバッファ層は非晶質窒化ガリウムを含む、半導体デバイス。
【請求項22】
請求項20に記載の半導体デバイスにおいて、前記バッファ層は、600℃〜900℃の範囲の温度で非単結晶状態に転化される、半導体デバイス。
【請求項23】
請求項16に記載の半導体デバイスにおいて、前記成長層は、p型又はn型のドープ材料を含む、半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−248856(P2012−248856A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156705(P2012−156705)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2011−125538(P2011−125538)の分割
【原出願日】平成4年3月18日(1992.3.18)
【出願人】(301069856)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】