説明

サブフレーム構造

【課題】燃料電池を搭載して車体に支持されるサブフレームの構造において、車両の側突時にその側突荷重が燃料電池に伝わることを抑制する。
【解決手段】燃料電池2の前端及び後端を支持する前側及び後側サブクロスメンバ31,32と、該前側及び後側サブクロスメンバ31,32の間に設けられる中間サブクロスメンバ33と、前記前側及び後側サブクロスメンバ31,32並びに中間サブクロスメンバ33を連結する左右一対のサブサイドメンバ34とを有し、前記中間サブクロスメンバ33は、前記一対のサブサイドメンバ34の間に渡る部位(中間ビーム41)において、前記燃料電池2の下面との間に所定のスペースを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池車両における燃料電池を搭載して車体に支持されるサブフレームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記サブフレーム構造において、燃料電池の前端及び後端を上面に支持して車幅方向に延びる前側及び後側クロスメンバと、該前側及び後側クロスメンバを連結して前記燃料電池の側面に沿って延びる一対のサイドメンバとを有する平面視格子状のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−15588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の技術は、前側及び後側クロスメンバの間かつ左右サイドメンバの外側に左右に延びる中間パイプが設けられているが、これは左右サイドメンバの間に渡って設けられておらず、サイドメンバに側方から入力された荷重を受けるものではない。このため、車両の側突(側面衝突)時にはその側突荷重を受けたサイドメンバが変形し易く、前記側突荷重が燃料電池に伝わるおそれがあることから、燃料電池の保護性を高めるためにもこのような点の改善が要望されている。
そこでこの発明は、燃料電池を搭載して車体に支持されるサブフレームの構造において、車両の側突時にその側突荷重が燃料電池に伝わることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、燃料電池(例えば実施例の燃料電池スタック2)を搭載して車体に支持されるサブフレーム(例えば実施例のサブフレーム7)の構造において、前記燃料電池の前端及び後端を上面に支持して車幅方向に延びる前側及び後側クロスメンバ(例えば実施例の前側及び後側サブクロスメンバ31,32)と、該前側及び後側クロスメンバの間に設けられて車幅方向に延びる中間クロスメンバ(例えば実施例の中間サブクロスメンバ33)と、前記前側及び後側クロスメンバ並びに中間クロスメンバを連結して前記燃料電池の側面に沿って延びる一対のサイドメンバ(例えば実施例のサブサイドメンバ34)とを有し、前記中間クロスメンバは、前記一対のサイドメンバの間に渡る部位(例えば実施例の中間ビーム41)において、前記燃料電池の下面との間に所定のスペース(例えば実施例のスペースS)を有することを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記中間クロスメンバにおける前記一対のサイドメンバの間に渡る部位が、所定の側突荷重によって下方に向けて撓むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、サイドメンバに入力された側方からの荷重が、燃料電池の下方に位置する中間クロスメンバでも受けられる。このため、車両の側突(側面衝突)時にもサイドメンバを変形し難くし、燃料電池に側突荷重が伝わることを抑制できる。また、中間クロスメンバが、燃料電池の下面との間に所定のスペースを有することで、側突荷重を受けて中間クロスメンバが撓んだ場合にも、該中間クロスメンバが燃料電池に干渉することを抑制できる。
【0007】
請求項2に記載した発明によれば、側突荷重を受けた中間クロスメンバが撓んだ場合にも、該中間クロスメンバがその上方の燃料電池に干渉することをより一層抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
【0009】
図1,2に示す燃料電池車両1は、水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う燃料電池スタック(以下、単に燃料電池ということがある)2を車体のフロア下に搭載し、該燃料電池スタック2で生じた電力によりモータ3を駆動して走行する。燃料電池スタック2は、単位電池(単位セル)を例えば車両前後方向に沿って多数積層してなる。前記単位電池は周知の固体高分子膜型燃料電池(PEMFC)であり、そのアノード側に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給することで、電気化学反応により電力及び水を生成する。
【0010】
前記モータ3は、燃料電池2のカソード側へ供給する空気を圧縮するコンプレッサ4と共に、フロントサブフレーム5に搭載された状態で、車体前部のモータルーム(エンジンルーム)内に配置される。また、前記燃料電池2及び該燃料電池2のための補器6は、サブフレーム7に搭載された状態で、車体前後中間部のフロアパネル8の車室外側に配置される。さらに、燃料電池2のアノード側へ供給する水素ガスを蓄える水素タンク9は、モータ3からの回生電力を蓄電するバッテリ11と共に、リヤサブフレーム12に搭載された状態で、車体後部のリヤフロア13の車室外側に配置される。
【0011】
なお、前記燃料電池2のための補器6とは、レギュレータやエゼクタ等の水素供給補器、並びに加湿器や希釈ボックス等の空気排出補器である。また、図1中符号14,15は燃料電池車両1の前後輪を、符号16,17は車室内の前後シートをそれぞれ示す。
【0012】
フロアパネル8の下面両側には、車体の前後に渡って延びる左右サイドフレーム18がそれぞれ接合される。フロアパネル8の左右外側方には、前後に延びる左右サイドシル19がそれぞれ設けられる。左右サイドシル19の前部、前後中間部、及び後端部は、それぞれ前後アウトリガ21,22及びエクステンション23を介して左右サイドフレーム18に接合される。左右サイドフレーム18の前部間、前後中間部間、及び後端部間は、それぞれ左右に延びる前クロスメンバ24、中間クロスメンバ25、及び後クロスメンバ26を介して結合される。
【0013】
フロアパネル8は、左右方向では左右サイドシル19の間に渡って設けられ、前後方向ではダッシュロア27の下端部から後シート17の下方に至るまで設けられる。フロアパネル8の後端部には、後シート17の下方から斜め後上方に立ち上がった後に後方へ延びるリヤフロア13の前端部が接続される。
【0014】
図5を併せて参照し、フロアパネル8の車幅方向(左右方向)の中央部には、上方に膨出するフロアトンネル28が形成される。フロアトンネル28は、下方に開放する断面コ字状をなして前後に延在し、その後半部分はさらに上方に膨出してセンターコンソール29を形成する。このセンターコンソール29内には、サブフレーム7上に搭載された燃料電池2及びその補器6が収容される。
【0015】
図2に示すように、サブフレーム7は、前後アウトリガ21,22に対応する位置に設けられて車幅方向に沿って延びる前側及び後側サブクロスメンバ31,32と、該前側及び後側サブクロスメンバ31,32の間に設けられて車幅方向に沿って延びる中間サブクロスメンバ33と、前側及び後側サブクロスメンバ31,32並びに中間サブクロスメンバ33を連結するべく前後方向に沿って延びる左右サブサイドメンバ34とを有してなる。サブフレーム7は、車体左右中心に対して左右対称に設けられる。
【0016】
図3,4に示すように、前側サブクロスメンバ31は、左右サブサイドメンバ34の前端がそれぞれ後方から接合される左右連結ピース35と、該左右連結ピース35の間に渡って延在する中間ビーム36と、左右連結ピース35の外側にそれぞれ延在する左右ビーム37とを一体的に結合してなる。中間ビーム36及び左右ビーム37は、それぞれ一定の閉断面構造を有して左右に延びる。左右連結ピース35は、その内側端の前後幅が外側端の前後幅よりも広く、左右連結ピース35の内側端の間に渡る中間ビーム36の前後幅は、左右連結ピース35の外側端から延びる左右ビーム37の前後幅よりも広くされる。
【0017】
左右サブサイドメンバ34は、前側サブクロスメンバ31の左右連結ピース35の後方においてそれぞれ一定の閉断面構造を有して前後に延びる。左右サブサイドメンバ34の断面形状は、方形状の中空部38の下部両側に略水平なフランジ部39を設けてなる(図5参照)。この左右サブサイドメンバ34の前後中間部を左右に横断するように、前記中間サブクロスメンバ33が設けられる。
【0018】
中間サブクロスメンバ33は、左右サブサイドメンバ34の前後中間部の間に渡って延在する中間ビーム41と、左右サブサイドメンバ34の前後中間部の外側に延在する左右ビーム42とを有してなる。中間ビーム41と左右ビーム42とは、左右サブサイドメンバ34の前後中間部を介して一体的に結合される。すなわち、中間サブクロスメンバ33は、左右サブサイドメンバ34の前後中間部を含んで構成される。なお、中間サブクロスメンバ33が左右サブサイドメンバ34の一部を含まない構成(中間ビーム41と左右ビーム42とが直接結合されたり、左右サブサイドメンバ34とは別体の部材を介して結合される構成)であってもよい。
【0019】
中間ビーム41は、例えば略水平な板状部材の前後中間部に左右方向に沿うビード部41aを形成してなり、略一定の断面形状を有して左右に延びる。ビード部41aは、その前後の平坦部41bに対して下方に膨出してなる。中間ビーム41は、その左右端部における前記前後の平坦部41bの上面を、左右サブサイドメンバ34の内側のフランジ部39の下面に下方から接合することで、左右サブサイドメンバ34に一体的に取り付けられる。
【0020】
左右ビーム42は、それぞれ一定の閉断面構造を有して左右に延びる。左右ビーム42は、その内側端部を左右サブサイドメンバ34の外側のフランジ部39に上方から接合すると共に、該内側端部を中空部38の外側壁に側方から接合することで、左右サブサイドメンバ34にそれぞれ一体的に取り付けられる。左右ビーム42の前後幅は、中間ビーム41の前後幅よりも狭くされる。
【0021】
後側サブクロスメンバ32は、左右サブサイドメンバ34の後端に連なるように接続される左右連結ピース43と、該左右連結ピース43の間に渡って延在する中間ビーム44とを一体的に結合してなる。中間ビーム44は、一定の閉断面構造を有して左右に延び、その両端部が左右連結ピース43の後部内側に接合される。左右連結ピース43の左右幅は、左右サブサイドメンバ34の左右幅よりも狭くされる。
後側サブクロスメンバ32の左右連結ピース43の後端には、前後に延びる左右エクステンションメンバ45の前端がそれぞれ接合される。左右エクステンションメンバ45の後端部間は、左右に延びるエンドメンバ46を介して結合される。
【0022】
前側サブクロスメンバ31の左右ビーム37の外側端部及び中間サブクロスメンバ33の左右ビーム42の外側端部には、それぞれ前記左右サイドフレーム18に対する取り付け部47,48が設けられる。また、エンドメンバ46における左右エクステンションメンバ45との交差部分には、それぞれ前記中間クロスメンバ25に対する取り付け部49が設けられる。
そして、これら各取り付け部47,48,49を用いて、サブフレーム7が左右サイドフレーム18及び中間クロスメンバ25に車体下方から取り付けられる。
【0023】
サブフレーム7において、前側及び後側サブクロスメンバ31,32並びに左右サブサイドメンバ34で囲まれる部位の上方には、前記燃料電池スタック2がその積層方向を前後方向に沿わせた状態で配置される。燃料電池スタック2は、前後に長い直方体状をなし、その前端部が前側サブクロスメンバ31の上面に前側ブラケット31aを介して支持され、後端部が後側サブクロスメンバ32の上面に後側ブラケット32aを介して支持される。
【0024】
すなわち、燃料電池スタック2は、サブフレーム7の前側及び後側サブクロスメンバ31,32にのみ支持(連結)され、左右サイドメンバ及び中間サブクロスメンバ33には支持(連結)されていない。そして、図5(a)に示すように、中間サブクロスメンバ33における左右サブサイドメンバ34間に位置する中間ビーム41の上面と燃料電池スタック2の下面との間には、所定のスペースSが形成される。
【0025】
中間サブクロスメンバ33は、左右サブサイドメンバ34の間に渡って設けられることで、一方のサブサイドメンバ34に入力された側方からの荷重を受けてこれを他方のサブサイドメンバ34に伝達する。このため、車両の側突(側面衝突)時には、その側突荷重が中間サブクロスメンバ33の中間ビーム41を介して左右サブサイドメンバ34に分散され、左右サブサイドメンバ34が車幅方向中央側すなわち燃料電池2側に変形することを抑制する。
【0026】
また、前記側突荷重が過大であり、中間サブクロスメンバ33の中間ビーム41が撓む(座屈する)ような場合にも、該中間ビーム41と燃料電池スタック2との間にスペースSが設けられることで、変形した中間ビーム41が燃料電池スタック2の前後中間部に干渉(接触)し難くなっている。
【0027】
さらに、中間サブクロスメンバ33の中間ビーム41は、その左右端部の上面が左右サブサイドメンバ34の下面に接合されることで、左右サブサイドメンバ34の一方に側突荷重が入力された際には、該サブサイドメンバ34が中間ビーム41との接合位置を中心に傾動し(図5(b)参照)、中間ビーム41を下方に突出させるように撓ませる。これにより、変形した中間ビーム41が燃料電池2により一層干渉し難くなっている。
【0028】
以上説明したように、上記実施例におけるサブフレーム構造は、燃料電池2の前端及び後端を上面に支持して車幅方向に延びる前側及び後側サブクロスメンバ31,32と、該前側及び後側サブクロスメンバ31,32の間に設けられて車幅方向に延びる中間サブクロスメンバ33と、前記前側及び後側サブクロスメンバ31,32並びに中間サブクロスメンバ33を連結して前記燃料電池2の側面に沿って前後方向に延びる左右一対のサブサイドメンバ34とを有し、前記中間サブクロスメンバ33は、前記一対のサブサイドメンバ34の間に渡る部位(中間ビーム41)において、前記燃料電池2の下面との間に所定のスペースSを有するものである。
【0029】
この構成によれば、サブサイドメンバ34に入力された側方からの荷重が、燃料電池2の下方に位置する中間サブクロスメンバ33(中間ビーム41)でも受けられる。このため、車両の側突(側面衝突)時にもサブサイドメンバ34を変形し難くし、燃料電池2に側突荷重が伝わることを抑制できる。また、中間サブクロスメンバ33(中間ビーム41)が、燃料電池2の下面との間に所定のスペースSを有することで、側突荷重を受けて中間サブクロスメンバ33が撓んだ場合にも、該中間サブクロスメンバ33が燃料電池2に干渉することを抑制できる。
【0030】
また、上記サブフレーム構造においては、前記中間サブクロスメンバ33における前記一対のサブサイドメンバ34の間に渡る部位が、所定の側突荷重によって下方に向けて撓むことで、側突荷重を受けた中間サブクロスメンバ33が撓んだ場合にも、該中間サブクロスメンバ33がその上方の燃料電池2に干渉することをより一層抑制できる。
【0031】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、図6(a)に示すように、中間サブクロスメンバ33の中間ビーム41を下方に凸の湾曲形状としたり、図6(b)に示すように、中間ビーム41の上面側に切り欠き形状等の脆弱部41cを設けることで、側突荷重入力時に中間ビーム41を下方に向けて撓ませるようにしてもよい。
また、上記実施例では後側サブクロスメンバ32を車体に取り付けていないが、該後側サブクロスメンバ32の両側部を延出してこれを車体に取り付けるようにしてもよい。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施例における燃料電池車両の側面説明図である。
【図2】上記燃料電池車両の上面説明図である。
【図3】上記燃料電池車両の燃料電池を搭載するサブフレームの上面図である。
【図4】上記サブフレームの斜視図である。
【図5】上記サブフレームの中間サブクロスメンバ近傍の前後方向と直交する断面説明図であり、(a)は通常状態を、(b)は側突荷重入力時をそれぞれ示す。
【図6】(a),(b)共、上記中間サブクロスメンバの中間ビームの変形例を示す前面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料電池車両
2 燃料電池スタック(燃料電池)
7 サブフレーム
31 前側サブクロスメンバ(前側クロスメンバ)
32 後側サブクロスメンバ(後側クロスメンバ)
33 中間サブクロスメンバ(中間クロスメンバ)
34 サブサイドメンバ(サイドメンバ)
41 中間ビーム(中間クロスメンバにおける一対のサイドメンバの間に渡る部位)
S スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を搭載して車体に支持されるサブフレームの構造において、
前記燃料電池の前端及び後端を上面に支持して車幅方向に延びる前側及び後側クロスメンバと、
該前側及び後側クロスメンバの間に設けられて車幅方向に延びる中間クロスメンバと、
前記前側及び後側クロスメンバ並びに中間クロスメンバを連結して前記燃料電池の側面に沿って延びる一対のサイドメンバとを有し、
前記中間クロスメンバは、前記一対のサイドメンバの間に渡る部位において、前記燃料電池の下面との間に所定のスペースを有することを特徴とするサブフレーム構造。
【請求項2】
前記中間クロスメンバにおける前記一対のサイドメンバの間に渡る部位が、所定の側突荷重によって下方に向けて撓むことを特徴とする請求項1に記載のサブフレーム構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−23383(P2009−23383A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185576(P2007−185576)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】