説明

サブミクロンの水中油型エマルジョンと合わせた微粒子の使用

【課題】広範な抗原の免疫抗原性を高めるための、安全で有効なアプローチを提供すること。
【解決手段】サブミクロンの水中油型エマルジョン、および生分解性微粒子中に捕捉されているか、または生分解性微粒子に吸着されている、選択された抗原を含む、組成物。(a)4〜5% w/vのスクアレン、0.25〜0.5% w/vのTween 80(登録商標)、および0.5% w/vのSpan 85(登録商標)、ならびに必要であれば、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ−エチルアミンを含む、サブミクロンの水中油型エマルジョン、および(b)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)微粒子中に捕捉されているか、またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)微粒子に吸着されている、選択された抗原を含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般に、ワクチン組成物に関する。特に、本発明は捕捉型または吸着型抗原を含む生分解性の微粒子を、サブミクロンの水中油型(oil−in−water)エマルジョンと組み合わせて使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
弱毒化病原体またはサブユニットタンパク質抗原を含む多数のワクチン処方物が開発されてきた。従来のワクチン組成物はしばしば、免疫応答を高めるために免疫アジュバントを含む。例えば、蓄積(depot)アジュバントがしばしば使用され、これは投与された抗原を吸着および/または沈殿させ、そして注射部位に抗原を保持し得る。典型的な蓄積アジュバントには、アルミニウム化合物および油中水(water−in−oil)エマルジョンが挙げられる。しかし、蓄積アジュバントは抗原性を増加するが、皮下または筋肉内に注射した場合、重篤な、持続性の局所反応(例えば、肉芽腫、膿瘍および瘢痕)を頻繁に引き起こす。リポ多糖類のような他のアジュバントは、注射および/またはライター症候群(インフルエンザ様症状、全身的な関節の不快感、そして時には前部ブドウ膜炎、関節炎および尿道炎)に対して、発熱性の応答を引き起こし得る。種々の疾患のワクチン組成物において、Quillaja saponariaのようなサポニンもまた、免疫アジュバントとして使用されてきた。
【0003】
より詳細には、フロイントの完全アジュバント(CFA)は、実験ベースで、多くの抗原とともにうまく使用されてきた強力な免疫刺激剤である。CFAは3つの成分を含む:鉱油、乳化剤、および死菌ミコバクテリア(例えば、Mycobacterium tuberculosis)。水性抗原溶液は、油中水エマルジョンを作製するためにこれらの成分と混合される。CFAはアジュバントとして有効であるが、主にミコバクテリア成分の存在に起因して重篤な副作用(疹痛、膿瘍形成および発熱を含む)を引き起こす。従って、CFAはヒトおよび動物用ワクチンに使用されない。
【0004】
フロイント不完全アジュバント(IFA)はCFAと類似しているが、細菌性成分は含まない。IFAは合衆国では使用が許可されていないが、他ではインフルエンザおよびポリオのヒトワクチンにおいて、ならびに狂犬病、イヌジステンバーおよび口蹄疫の動物ワクチンのために使用されてきた。しかし、IFAで使用される油および乳化剤の両方が、マウスに腫瘍を引き起こし得るという証拠が示されている。
【0005】
ムラミルジペプチド(MDP)はミコバクテリアの細胞壁複合体の最小単位であることが見出され、これはCFAを用いて観測されるアジュバント活性を生成する。例えば、Ellouzら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1974)59:1317を参照のこと。広範なアジュバント効力および副作用を示すいくつかのMDPの合成アナログが生成されてきた。これらのアナログの概説については、Chedidら、Prog.Allergy(1978)25:63を参照のこと。
【0006】
MDPの代表的なアナログには、MDPのトレオニル誘導体(Byarsら、Vaccine(1987)5:223)、MDPのn−ブチル誘導体(Chedidら、Infect.Immun.35:417)およびムラミルトリペプチドの親油性の誘導体(Gislerら、Immunomodulations
of Microbial Products and Related Synthetic Compounds(1981)Y.Yamamura and S.Kotani編、Excerpta Medica,Amsterdam、p.167)が挙げられる。
【0007】
1つのMDPの親油性の誘導体は、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシ(huydroxy)−ホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)である。このムラミルトリペプチドはリン脂質末端を含み、これは脂質環境を有する分子の疎水性部分の会合を可能にし、一方、ムラミルペプチド部分は、水性環境と会合する。従って、MTP−PEは単独で、安定な水中油エマルジョンを生成するための乳化剤として作用し得る。MTP−PEは、0.008%Tween(登録商標)80を含有する4%スクアレンのエマルジョン(MTP−PE−LO(低級油)と呼ばれる)で、有効な結果を伴う単純ヘルペスウイルスgD抗原を送達するために、物質的安定性が乏しいにもかかわらず使用されてきた(Sanchez−Pescadorら、J.Immunol.(1988)141:1720〜1727)。最近、4〜5%w/v スクアレン、0.5%w/v Tween(登録商標)80、0.5% Span(登録商標)85、および必要に応じて種々の量のMTP−PEを含有する、安全な、高い免疫原性のサブミクロン水中油エマルジョンが、ワクチン組成物に使用するために開発されてきた。例えば、Ottら、「MF59−−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」:Vaccine Design、The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.偏)Plenum Press、New York,1995,pp.277〜296を参照のこと。
【0008】
このようなアジュバントの存在にもかかわらず、従来のワクチンは、しばしば、標的化された病原体に対する十分な防御を提供しない。この点に関して、細胞内の病原体(例えば、多数のウイルス)に対するワクチン接種は、免疫系の細胞性および体液性アーム(arm)の両方を標的化するべきであるという証拠が出てきている。
【0009】
より詳細には、細胞傷害性T−リンパ球(CTL)は、細胞内の病原体(例えば、ウイルスおよび悪性細胞によって生成される腫瘍特異的抗原)に対する細胞性免疫防御において重要な役割を果たす。CTLは、感染した細胞によって表に出されるMHCクラスI分子とともにウイルスの抗原決定基を識別することによって、ウイルスに感染した細胞の細胞傷害性を媒介する。タンパク質の細胞質発現は、MHCクラスIプロセシングおよび抗原性ペプチドのCTLへの提示に不可欠である。しかし、死滅または弱毒化ウイルスを用いる免疫は、しばしば、細胞内感染を抑制するのに必要なCTLを産生しない。さらに、顕著な遺伝子の異型接合性および/または免疫回避(escape)変異体の選択を促進する速い突然変異速度を示すウイルス(例えば、HIVまたはインフルエンザ)に対する従来のワクチン接種技術は、問題がある。従って、ワクチン接種に対する代替技術が開発されてきた。
【0010】
吸着または捕捉型抗原を有する粒子状のキャリアが、十分な免疫応答を引き出すための試みに使用されてきた。このようなキャリアは、免疫系に対して選択された抗原の複数のコピーを提示し、そして局所リンパ節において、抗原の捕捉および保持を促進する。この粒子はマクロファージによって摂取され得、サイトカイン放出を介して抗原提示を高め得る。特定のキャリアの例には、ポリメチルメタクリレートポリマーから誘導されるキャリア、ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)から誘導される微粒子(PLGとして公知である)が挙げられる。ポリメチルメタクリレートポリマーは非分解性であり、一方、PLG粒子は、乳酸およびグリコール酸とのエステル結合のランダムな非酵素的加水分解によって、生分解され、正常な代謝経路に沿って排出される。
【0011】
最近の研究で、捕捉型抗原を有するPLG微粒子が細胞性免疫を引き起こし得ることが示された。例えば、マイクロカプセル化ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp120は、マウスにおいて、HIV−特異的CD4+およびCD8+T細胞応答を引き起こすことが示された(Mooreら、Vaccine(1995)13:1741〜1749)。同様に、微粒子でカプセル化されたオボアルブミンは、インビボで細胞性免疫応答をプライムすることが可能であり、経口で投与された場合、粘膜IgA応答を引き起こし得ることが示された(非特許文献1)。さらに、抗体およびT−細胞応答の両方が、PLG−捕捉型Mycobacterium tuberculosis抗原をワクチン接種されたマウスにおいて引き起こされた(非特許文献2)。抗原特異的CTL応答もまた、Plasmodium bergheiのスポロゾイト周囲(circumsporozoite)タンパク由来のマイクロカプセル化された短い合成ペプチドを使用して、マウスにおいて引き起こされた。
【0012】
しかし、捕捉または吸着型抗原を有する微粒子を、サブミクロンの水中油エマルジョンとともに使用することは、これまでには記載されていない。
【非特許文献1】O’Haganら、Vaccine(1993)11:149〜154
【非特許文献2】Vordermeierら、Vaccine(1995)13:1576〜1582
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
広範な抗原の免疫抗原性を高めるための、安全で有効なアプローチを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の開示)
本発明は、サブミクロンの水中油型エマルジョンと組み合わせての、生分解性微粒子(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)から誘導されるもの)(捕捉されたまたは吸着された抗原を含む)の使用が、抗原の免疫抗原性を高めるのに役に立つ、という驚くべきかつ予想外の発見に基づく。このような組み合わせの使用は、広範な抗原の免疫抗原性を高めるための、安全で有効なアプローチを提供する。
【0015】
したがって、1つの実施態様において、本発明は、サブミクロン水中油型エマルジョン、および生分解性微粒子に捕捉されるまたは吸着される、選択された抗原を包含する組成物に関する。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、(a)サブミクロン水中油型エマルジョン(4〜5%w/v スクアレン、0.25〜0.5%w/v Tween80(登録商標)、および0.5%w/v Span85(登録商標)、ならびに必要に応じて、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル(isogluatminyl)−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンを包含する)、ならびに(b)生分解性微粒子に捕捉されるか、または吸着される、選択された抗原、を包含する組成物に関する。
【0017】
さらに別の実施態様において、本発明は、(a)サブミクロン水中油型エマルジョン、および(b)生分解性微粒子に捕捉されるか、または吸着される、選択された治療的に有効な量の抗原を、脊椎動物の被験体に投与する工程を包含する免疫処置の方法に関する
なおさらなる実施態様において、本発明は、生分解性微粒子に捕捉されるか、または吸着される、選択された抗原と、サブミクロン水中油型エマルジョンとを混合する工程を包含する組成物を作製する方法に関する。
【0018】
特に好ましい実施態様において、微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、好ましくはポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)から誘導される。
・本発明はさらに、以下を提供する:
・(項目1) サブミクロンの水中油型エマルジョン、および生分解性微粒子中に捕捉されているか、または生分解性微粒子に吸着されている、選択された抗原を含む、組成物。
・(項目2) 上記微粒子が、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)からなる群から選択される、ポリ(α−ヒドロキシ酸)から形成される、項目1に記載の組成物。
・(項目3) 上記微粒子が、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)から形成される、項目2に記載の組成物。
・(項目4) 上記サブミクロンの水中油型エマルジョンが、4〜5% w/vのスクアレン、0.25〜0.5% w/vのTween 80(登録商標)、および0.5% w/vのSpan 85(登録商標)、ならびに必要であれば、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ−エチルアミンを含む、項目1〜3のいずれかの項に記載の組成物。
・(項目5) 上記選択された抗原が、ウイルス性抗原である、項目1〜4のいずれかの項に記載の組成物。
・(項目6) 上記選択された抗原が、gp120である、項目5に記載の組成物。
・(項目7) 上記選択された抗原が、p24gagである、項目5に記載の組成物。
・(項目8) 上記選択された抗原が、C型肝炎ウイルスE2である、項目5に記載の組成物。
・(項目9) 上記選択された抗原が、上記微粒子中に捕捉されている、項目1〜8のいずれかの項に記載の組成物。
・(項目10) 上記選択された抗原が上記微粒子に吸着されている、項目1〜8のいずれかの項に記載の組成物。
・(項目11) 組成物であって、(a)4〜5% w/vのスクアレン、0.25〜0.5% w/vのTween 80(登録商標)、および0.5%
w/vのSpan 85(登録商標)、ならびに必要であれば、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ−エチルアミンを含む、サブミクロンの水中油型エマルジョン、および(b)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)微粒子中に捕捉されているか、またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)微粒子に吸着されている、選択された抗原を含む、組成物。
・(項目12) 上記選択された抗原が、上記微粒子中に捕捉されている、項目11に記載の組成物。
・(項目13) 上記選択された抗原が上記微粒子に吸着されている、項目11に記載の組成物。
・(項目14) 免疫の方法であって、脊椎動物の被験体に、(a)サブミクロンの水中油型エマルジョン、および(b)生分解性微粒子中に捕捉されているか、または生分解性微粒子に吸着されている、治療的に有効量の選択された抗原を投与する工程を含む、方法。
・(項目15) 上記微粒子が、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)からなる群から選択される、ポリ(α−ヒドロキシ酸)から形成される、項目14に記載の方法。
・(項目16) 上記微粒子が、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)から形成される、項目15に記載の方法。
・(項目17) 上記サブミクロンの水中油型エマルジョンが、4〜5% w/vのスクアレン、0.25〜0.5% w/vのTween 80(登録商標)、および0.5% w/vのSpan 85(登録商標)、ならびに必要であれば、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ−エチルアミンを含む、項目14〜16のいずれかの項に記載の方法。
・(項目18) 上記選択された抗原がウイルス性抗原である、項目14〜17のいずれかの項に記載の方法。
・(項目19) 上記選択された抗原がgp120である、項目18に記載の方法。
・(項目20) 上記選択された抗原がp24gagである、項目18に記載の方法。
・(項目21) 上記選択された抗原がC型肝炎ウイルスE2である、項目18に記載の方法。
・(項目22) 上記選択された抗原が上記微粒子中に捕捉されている、項目14〜21のいずれかの項に記載の方法。
・(項目23) 上記選択された抗原が上記微粒子に吸着されている、項目14〜21のいずれかの項に記載の方法。
・(項目24) 上記サブミクロンの水中油型エマルジョンが、上記微粒子より前に投与される、項目14〜23のいずれかの項に記載の方法。
・(項目25) 上記サブミクロンの水中油型エマルジョンが、上記微粒子の後に投与される、項目14〜23のいずれかの項に記載の方法。
・(項目26) 上記サブミクロンの水中油型エマルジョンが、上記微粒子と実質的に同時に投与される、項目14〜23のいずれかの項に記載の方法。
・(項目27) 脊椎動物の被験体の免疫のための薬剤の製造における、項目1〜13のいずれかの項に記載の組成物の使用。
・(項目28) 組成物を作製する方法であって、サブミクロンの水中油型エマルジョンと、生分解性微粒子中に捕捉されているか、または生分解性微粒子に吸着されている、選択された抗原とを合わせる工程を包含する、方法。
・(項目29) 上記選択された抗原が上記微粒子中に捕捉されている、項目28に記載の方法。
・(項目30) 上記選択された抗原が上記微粒子に吸着されている、項目28に記載の方法。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の実施態様は、本明細書中の開示を参照することによって、当業者に容易に理解される。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されなければ、当該分野内の、化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を利用する。このような技術は、文献において十分に説明される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company、1990年);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press,Inc.);ならびにHandbook of Experimental Immunology,I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986年、Blackwell Scientific Publications);ならびにSambrookら、Molecular Cloning;A Laboratory Manual(第2版、1989年)を参照のこと。
【0021】
本明細書および添付の請求の範囲において使用されるように、単数形式「a]、「an]および「the」は、本明細書が明白に他に示さない限り、複数の言及を含む。
【0022】
(I.定義)
本発明の記載において、以下の用語が利用され、そして下記に示したように定義されることが意図される。
【0023】
本明細書中で使用されるように、用語「微粒子」とは、直径が約100nm〜約150μm、より好ましくは直径が約200nm〜約30μm、そして最も好ましくは直径が約500nm〜約10μmの、粒子のことを言う。好ましくは、微粒子は、針および毛細管を塞ぐことなしに、非経口投与を可能にする。微粒子のサイズは、当該分野において周知である技術(例えば、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査型電子顕微鏡)によって、容易に測定される。
【0024】
本明細書中で使用される微粒子は、滅菌可能な、非毒性および生分解性である物質から形成される。このような物質には、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明で使用するための微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特にポリ(ラクチド)(「PLA」)またはD,L−ラクチドおよびグリコリドまたはグリコール酸のコポリマー(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グルコリド(「PLG」または「PLGA」))、あるいはD,L−ラクチドおよびカプロラクトンのコポリマーから誘導される。微粒子は、種々の分子量、そしてPLGのようなコポリマーの場合、種々のラクチド:グリコリド比を有する、任意の種々のポリマー出発物質から誘導され得、上記の項目は大部分が選択の問題であり、一部は同時投与した抗原に依存する。これらのパラメータは以下でより十分に議論される。
【0025】
「抗原」は、抗原が存在する場合、宿主の免疫系を刺激し、細胞性の抗原特異的な免疫応答、または体液性の抗体応答を生じる1つ以上のエピトープを含む分子を意味する。正常には、エピトープは、約3〜15の間の、一般的には、約5〜15の間のアミノ酸を含む。本発明の目的のために、抗原は、任意のいくつかの公知のウイルス、細菌、寄生虫および真菌に由来し得る。この用語はまた、任意の種々の腫瘍抗原をも意味する。さらに、本発明の目的のために、「抗原」は、タンパク質が免疫学的応答を誘導する能力を維持する限り、天然の配列に対して、欠失、付加および置換(一般に、実質上保存的な)のような改変を含むタンパク質をいう。これらの改変は、部位指向的な変異誘発を通じてのような、意図的なものであってもよいし、抗原を産生する宿主の変異を通じるような偶発性のものであってもよい。
【0026】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、目的の組成物に存在する分子に対する体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答の被検体における発生である。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」は、抗体分子により媒介される免疫応答をいう。その一方、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球細胞により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な局面は、細胞溶解性のT細胞(「CTL」)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によりコードされるタンパク質に関連して存在し、そして細胞の表面上に発現される、ペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内における破壊、またはこのような微生物に感染された細胞の溶解の誘導および促進を補助する。細胞性免疫の別の局面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的な応答を含む。ヘルパーT細胞は、機能の刺激を助けるために作用し、そして細胞の表面のMHC分子に関連するペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的なエフェクター細胞の活性をフォーカスする。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカイン、ならびにCD4+T細胞およびCD8+T細胞に由来する分子を含む、活性化T細胞および/または他の白血球細胞により産生される他のそのような分子の産生をいう。
【0027】
細胞性免疫応答を誘発する組成物およびワクチンは、細胞表面で、MHC分子に関連する抗原の提示により、脊椎動物の被験体を感作させるように働き得る。細胞媒介性の免疫応答は、細胞の表面で抗原を提示する細胞に指向されるか、またはその細胞近傍に指向される。さらに、抗原特異的なTリンパ球は、産生され、免疫された宿主の将来の防御を可能にし得る。
【0028】
細胞媒介性の免疫学的応答を刺激する特定の抗原または組成物の能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性アッセイによるか、または感作された被験体における抗原に特異的なTリンパ球のアッセイによるような多くのアッセイによって決定され得る。このようなアッセイは、当該分野において周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993)151:4189〜4199;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369〜2376;および以下の実施例を参照のこと。
【0029】
従って、本明細書において用いられるような免疫学的応答は、CTLの産生、および/またはヘルパーT細胞の産生または活性化を刺激するものであり得る。目的の抗原はまた、抗体媒介性の免疫応答を誘発し得る。従って、免疫学的応答は、以下の1つ以上の効果を含み得る:B細胞による抗体の産生;および/またはサプレッサーT細胞および/または目的の組成物またはワクチンに存在する抗原を特異的に指向するγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染力を中和するために働き得、および/または抗体−補体、または免疫された宿主へ防御を提供する抗体依存細胞傷害性(ADCC)を媒介し得る。このような応答は、当該分野で周知の、標準的なイムノアッセイおよび中和アッセイを用いて決定され得る。
【0030】
サブミクロンの水中油型のエマルジョンアジュバントと一緒に微粒子に捕捉または吸着された選択された抗原を含むワクチン組成物、またはサブミクロンの水中油型のエマルジョンアジュバントと被験体に同時投与される微粒子に捕捉または吸着された抗原を含むワクチン組成物は、これが、サブミクロンの水中油型のエマルジョンアジュバントなしに微粒子/抗原の等価の量により誘発された免疫応答よりも、免疫応答を誘発するより大きい能力を有する場合、「増強した免疫原性」を示す。従って、ワクチン組成物は、「増強された免疫原性」を示し得る。なぜなら、この抗原は、より強力に免疫原性であるか、またはこれを投与された被験体において免疫応答を獲得するのにより少ない用量の抗原しか必要でないからである。このような増強された免疫原性は、動物への、微粒子/抗原組成物およびサブミクロンの水中油型エマルジョン、ならびに微粒子/抗原コントロールの投与することにより、そして、当該分野で周知のラジオイムノアッセイおよびELISAのような標準的アッセイを用いてこの2つに対する抗体の力価を比較することにより決定され得る。
【0031】
本明細書において提供される用語、抗原の「有効量」または「薬学的に有効な量」は、所望の免疫学的応答および対応する治療的な効果を提供する、薬剤の無毒だが十分な量をいう。以下に指摘するように、必要な正確な量は、被験体の種、齢、および全身状態、処置される状態の重篤度、および目的の特定の抗原、投与の様式などに依存して、被験体の間で変わる。任意の個体例における適切な「有効」量は、慣用的な実験法を用いて当業者により決定され得る。
【0032】
本明細書において用いられる「処置」は、以下のいずれかをいう:(i)伝統的なワクチンでのような感染または再感染の防御、(ii)症状の軽減または排除、および(iii)問題の病原の実質的なまたは完全な排除。処置は、予防的に(感染の前に)または治療的に(感染後に)作用され得る。
【0033】
「薬学的に受容可能な」または「薬理学的に受容可能な」とは、生物学的にまたはそうでなければ所望されなくはない物質を意味する。すなわち、この物質は、どんな所望されない生物学的効果も生じることなしに、またはこの物質を含む組成物のどんな成分も有害な様式で相互作用することなしに、微粒子アジュバント処方物と共に個体に投与され得る。
【0034】
「生理学的なpH」または「生理学的な範囲のpH」は、約7.2〜8.0を含む範囲のpH、より代表的には、約7.2〜7.6を含む範囲のpHを意味する。
【0035】
「脊椎動物の被験体」は、cordata亜門の任意のメンバーを意味する。これは、(制限なく)以下を含む:ヒトおよび他の霊長類(これには、チンパンジーおよび他の類人猿のような非ヒト霊長類ならびにサルの種を含む);ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマのような家畜;イヌやネコのような愛玩動物;マウス、ラットおよびモルモットのようなげっ歯類を含む実験動物;ニワトリ、七面鳥および他のキジ類のトリ、アヒル、ガチョウなどの愛玩用、野生および狩猟用のトリを含む鳥類。この用語は、特別な年齢を意味しない。従って、成人(成体)および新生児(新生仔)の両方の個体が包含されることが意図される。上記の系は、上記の任意の脊椎動物種において使用を意図される。なぜならば、これらの脊椎動物すべての免疫系は同様に働くからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(II.発明を実施するための形態)
本発明は、サブミクロンの水中油型エマルジョンと組み合わせた、捕捉されたまたは吸着された抗原を有する微粒子の使用が、抗原がそれ自身弱い免疫原性である場合でさえ、強力な免疫応答を提供するという発見に基づく。本発明のサブミクロンの水中油型アジュバントは、所望の微粒子/抗原を含むワクチン組成物に組み込まれ得るか、または微粒子/抗原含有組成物と同時にか、直前にか、もしくは引き続きのいずれかで別々に投与され得る。さらに、本発明の処方物は、インビボで産生される抗原の活性を増強するために(すなわち、DNA免疫と一緒に)用いられ得る。
【0037】
本明細書において記載されるワクチン組成物の個々の成分および方法は、公知であるが、このような組み合わせが、成分が別々に用いられた場合に得られるレベルを超えて抗原の有効性を増強することは予期せぬことであり、そして驚くべきことであった。
【0038】
本発明の方法は、細胞媒介性免疫および/または体液性抗体応答を提供する。従って、従来の抗体応答に加えて、本明細書に記載された系は、例えば、クラスI MHC分子と発現した抗原の会合を提供し得、結果として、目的の抗原に対するインビボの細胞性免疫応答が、増加され得、これはCTLの産生を刺激し、この抗原の将来の認識を可能にする。さらに、本方法は、ヘルパーT細胞により抗原特異的応答を誘発し得る。従って、本発明の方法は、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答が所望される任意の抗原との使用を見出す。これには、抗体、T細胞ヘルパーエピトープおよびT細胞細胞傷害性エピトープを誘発し得る、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫病原由来の抗原が挙げられる。このような抗原は、ヒトウイルスおよび動物ウイルスによりコードされる抗原を含むがこれらに限定されない、そして構造的または非構造的タンパク質のいずれかに対応し得る。
【0039】
この技術は、通常わずかな免疫応答しか誘発しない、細胞内のウイルスおよび腫瘍細胞抗原に対して免疫するために特に有用である。例えば、本発明は、ヘルペスウイルスファミリー由来の広範な種々のタンパク質に対する免疫応答を刺激するための用途を見出す。このタンパク質には、単純ヘルペスウイルス(HSV)の1型および2型由来のタンパク質(例えば、HSV−1およびHSV−2の糖タンパク質gB、gDおよびgH);水痘‐帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタインバールウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)由来の抗原(CMVのgBおよびgHを含む);ならびにHHV6およびHHV7のような他のヒトヘルペスウイルス由来の抗原を含む。(例えば、Cheeら、Cytomegaloviruses(J.K.McDougall編、Springer−Verlag 1990)125〜169頁、サイトメガロウイルスのタンパク質コード内容の総説について;McGeochら、J.Gen.Virol.(1988)69:1531〜1574、種々のHSV−1にコードされるタンパク質の考察について;米国特許第5,171,568号 HSV−1およびHSV−2のgBおよびgDタンパク質ならびにこれらをコードする遺伝子の考察について;Baerら、Nature(1984)310:207〜211、EBVゲノムのタンパク質コード配列の同定について;ならびにDavison およびScott,J.Gen.Virol.(1986)67:1759〜1816、VZVの総説について:を参照のこと)。
【0040】
肝炎ウイルスファミリーのウイルス(A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む)由来の抗原はまた、本明細書中に記載の技術において都合良く使用され得る。例として、HCVのウイルスゲノム配列は、この配列を得るための方法が公知であるのと同様に、公知である。例えば、国際出願番号WO 89/04669;WO 90/11089;およびWO 90/14436を参照のこと。このHCVゲノムは、E1(またEとしても知られる)およびE2(またE2/NSIとしても知られる)を含むいくつかのウイルスタンパク質ならびにN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と呼ばれる)をコードする(E1およびE2を含むHCVタンパク質の議論について、Houghtonら、Hepatology(1991)14:381−388を参照のこと)。これらの各タンパク質ならびにそれらの抗原性フラグメントは、本方法における使用を見い出す。
【0041】
同様に、HDV由来のδ抗原の配列は公知であり(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)、そしてこの抗原はまた、本方法において都合良く使用され得る。さらに、HBV由来の抗原(例えば、コア抗原、表面抗原であるsAg、ならびにプレ表面(presurface)配列であるプレS1およびプレS2(以前はプレSと呼ばれた)、ならびに上記の組み合せ(例えば、sAg/プレS1、sAg/プレS2、sAg/プレS1/プレS2、およびプレS1/プレS2))は、本明細書中で使用を見い出す。例えば、HBV構造の議論について、「HBVワクチン−実験室から認可まで:ケーススタディ」Mackett,M.およびWilliamson,J.D.,Human Vaccines and Vaccination,159〜176頁;ならびに米国特許第4,722,840号、同第5,098,704号、同第5,324,513号;Beamesら、J.Virol.(1995)69:6833−6838、Birnbaumら、J.Virol.(1990)64:3319−3330;ならびにZhouら、J.Virol.(1991)65:5457−5464を参照のこと。
【0042】
他のウイルス(ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイスルなど);カルシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば、狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、A型、B型およびC型インフルエンザウイルスなど);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしても知られる))の科のメンバー由来のタンパク質を含むがこれらに限定されない)由来の抗原(とりわけ単離体HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN);HIV−1CM235、HIV−1US4;HIV−2;サル免疫不全ウイルス(SIV)由来の抗原を含むがこれらに限定されない)はまた、本願の方法において使用を見い出す。さらに、抗原はまた、ヒトパピローマウイルス(HPV)およびダニ媒介脳炎ウイルス由来であり得る。例えば、これらのウイルスおよび他のウイルスの説明について、Virology、第3版(W.K.Joklik編、1988);Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1991)を参照のこと。
【0043】
より詳しくは、任意の上記HIV単離体(HIVの種々の遺伝的サブタイプのメンバーを含む)由来のgp120エンベロープタンパク質は、公知でありそして報告されている(例えば、種々のHIV単離体のエンベロープ配列の比較について、Myersら、Los Alamos Database、Los Alamos National Laboratory、Los Alamos、New Mexico(1992);Myersら、Human Retroviruses and Aids、1990、Los Alamos、New Mexico:Los Alamos National Laboratory;およびModrowら、J.Virol.(1987)61:570−578を参照のこと)。そして、任意のこれらの単離体由来の抗原は、本方法において使用を見い出す。さらに、本発明は、任意の種々のエンベロープタンパク質(例えば、gp160およびgp41)、gag抗原(例えば、p24gagおよびp55gag)、ならびにpol領域由来のタンパク質を含む、任意の種々のHIV単離体由来の他の免疫原性タンパク質に等しく適用できる。
【0044】
上記で説明したように、インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用であるウイルスの別の例である。特に、A型インフルエンザのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、免疫応答を生ずるために特に興味深いものである。多数のインフルエンザA型HAサブタイプは、同定されている(Kawaokaら、Virology(1990)179:759−767;Websterら、「Antigenic variation among type A influenza viruses」127〜168頁、P.PaleseおよびD.W.Kingsbury(編)、Genetics of influenza viruses.Springer−Verlag、New York)。従って、任意のこれらの単離体由来のタンパク質はまた、本明細書中に記載の免疫処置技術において使用され得る。
【0045】
本明細書中に記載の方法はまた、多数の細菌性抗原(例えば、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎および他の病原性状態(髄膜炎菌A、BおよびC、B型ヘモフィルスインフルエンザ(HIB)ならびにヘリコバクターピロリを含むが、これらに限定されない)を引き起こす生物体由来の細菌性抗原)を用いた使用を見い出す。寄生生物性抗原の例は、マラリアおよびライム病を引き起こしている生物学体由来の寄生生物性抗原を含む。
【0046】
さらに、本明細書中に記載の方法は、種々の悪性癌の処置のための手段を提供する。例えば、本発明の系は、問題となる癌に対して特異的な特定のタンパク質に対する体液性免疫応答および細胞媒介性免疫応答を増大させるために使用され得る(例えば、活性化癌遺伝子、胎児抗原、または活性化マーカー)。このような腫瘍抗原は、とりわけ、MAGE1、2、3、4など(Boon,T.Scientific American(1993年3月):82〜89)を含む任意の種々のMAGE(メラノーマ関連抗原E);任意の種々のチロシナーゼ;MART1(T細胞によって認識されるメラノーマ抗原)、ras変異体;p53変異体;p97メラノーマ抗原;CEA(癌胎児抗原)を含む。
【0047】
本発明が広範な疾患の予防または処置のために使用され得ることは、容易に理解できる。
【0048】
選択される抗原は、引き続く送達のための、微粒子に捕捉されるか、または吸収される。本発明において有用な微粒子を製造するための生分解性ポリマーは、例えば、Boehringer Ingelheim,Germany and Birmingham Polymers,Inc.,Birmingham,ALから市販され、容易に入手できる。例えば、本明細書中で微粒子を形成するために有用なポリマーには、ポリヒドロキシ酪酸;ポリカプロラクトン;ポリオルトエーテル;ポリ無水物;およびポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)(本明細書で両方とも「PLA」として知られる)、ポリ(ヒドロキシブチレート))、D,L−ラクチドおよびグリコリドのコポリマー(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(本明細書中で「PLG]または「PLGA」として表される))、あるいは、D,L−ラクチドおよびカプロラクトンのコポリマーから誘導されるものが挙げられる。本明細書中で使用する特に好ましいポリマーは、PLAおよびPLGポリマーである。これらのポリマーは、種々の分子量で利用可能であり、そして所定の抗原についての適切な分子量は、当業者によって容易に測定される。このため、例えば、PLAについて、適切な分子量は、約2000〜250,000のオーダーである。PLGについて、適切な分子量は、一般的に、約10,000〜約200,000、好ましくは約15,000〜約150,000、そして最も好ましくは約50,000〜約100,000の範囲である。
【0049】
PLGのようなコポリマーが微粒子を形成するために使用される場合、本明細書で使用される種々のラクチド:グリコリド比があり、そしてこの比は、大部分が選択の問題であり、一部は同時投与した抗原および所望の分解速度に依存する。例えば、50:50PLGポリマー(50%D,L−ラクチドおよび50%グリコリドを含有する)は、速い吸収コポリマーを提供するが、75:25PLGはより遅く分解し、そして85:15および90:10は、さらにより遅く、これは増加したラクチド成分に起因する。ラクチド:グリコリドの適切な比は、問題の抗原および疾患の性質に基づいて、容易に当業者によって測定される。さらに、微粒子と種々のラクチド:グリコリド比との混合物は、所定の抗原に対して所望の放出の動力学を達成し、そして第一および第二両方の免疫反応を提供するために、処方物における使用を見出す。本発明の微粒子の分解速度はまた、ポリマーの分子量およびポリマーの結晶化度のようなファクターによって、制御され得る。種々のラクチド:グリコリド比および分子量を有するPLGコポリマーは、数多くの供給源(Boehringer Ingelheim,Germany and Birmingham Polymers,Inc.,Birmingham,ALを含む)から市販され、容易に入手可能である。これらのポリマーはまた、当該分野に周知である技術(例えば、Tabataら、J.Biomed.Mater.Res.(1988)22:837〜858に記載される)を使用して、乳酸成分の単純な重縮合によって合成され得る。
【0050】
抗原/微粒子は、当該分野において周知の任意のいくつかの方法を使用して、調製される。例えば、二重エマルジョン/溶媒蒸発技術(例えば、米国特許第3,523,907号、およびOgawaら、Chem.Pharm.Bull.(1988)36:1095〜1103に記載される)が、微粒子を形成するために、本明細書中で使用され得る。これらの技術は、抗原を含有する(抗原が微粒子内に捕捉される場合)、ポリマー溶液の液滴からなる第1のエマルジョンの形成を包含し、これは引き続いて、粒子安定剤/界面活性剤を含有する連続水層と混合される。
【0051】
さらに詳細には、水中油中水型(w/o/w)溶媒蒸発システムは、微粒子を形成するために使用され得、これは、O’Haganら、Vaccine(1993)11:965〜969、およびJefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362に記載される。この技術において、特定のポリマーは、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、ジメチルクロリド(またメチレンクロリドおよびジクロロメタンと呼ばれる)、アセトニトリル、アセトン、クロロホルムなど)と混合される。ポリマーは、有機溶媒中に、約2〜15%、より好ましくは約4〜10%、そして最も好ましくは6%溶液で提供される。ほぼ同量の抗原溶液(例えば、水溶液)が添加され、そしてポリマー/抗原溶液は、例えばホモジナイザーを使用して、乳化される。このエマルジョンを、次いで、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドンのような多量のエマルジョン安定化剤の水溶液と混合する。このエマルジョン安定化剤は、より典型的には、約2〜15%溶液、典型的には約4〜10%溶液で提供される。次いで、この混合物を均質化し、安定なw/o/w二重エマルジョンが生成する。次いで、有機溶媒をエバポレートする。
【0052】
処方物パラメータは、小さい(<5μm)および大きい(>30μm)微粒子の調製を可能にするために、操作され得る。例えば、Jefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362〜368;McGeeら、J.Microencap.(1996)を参照のこと。例えば、減少した攪拌はより大きな微粒子を生じ、内側相の体積における増加も同様の結果である。小さな粒子は乞高濃度のPVAを有する低い水相体積によって生成される。
【0053】
微粒子はまた、噴霧乾燥およびコアセルベーション(例えば、Thomasinら、J.Controlled Release(1996)41:131;米国特許第2,800,457号;Masters,K.(1976)Spray Drying 第2版、Wiley編、New Yorkに記載される);空気−懸濁コーティング技術、例えば、パンコーティングおよびWursterコーティング(例えば、Hallら、(1980)The「Wurster Process」in Controlled Release Technologies:Methods,Theory,and Applications(A.F.Kydonieus編)、第2巻、133〜154頁 CRC Press、Boca Raton、FloridaおよびDeasy,P.B.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.(1988)S(2):99〜139に記載される);イオンゲル化(例えば、Limら、Science(1980)210:908〜910によって記載される)を使用して形成され得る。
【0054】
上記技術はまた、吸収された抗原を有する微粒子の生成に適用可能である。この実施態様において、微粒子は上記で説明されるように形成されるが、しかし形成後に抗原が微粒子と混合される。
【0055】
粒径は、例えば、例えば、ヘリウム−ネオンレーザーを組込んだ分光器を使用する、レーザー光散乱によって決定され得る。一般に、粒径は室温で決定され、そして問題の試料の多重分析(multiple analyses)(例えば、5〜10回)と関連して、粒子直径の平均値を得る。また、粒径は走査電子顕微鏡(SEM)を使用して容易に測定される。
【0056】
この微粒子を使用する前に、抗原含有量を一般に決定し、従って適切な量の微粒子が被験体に送達され得、その結果十分な免疫反応を誘発する。
【0057】
微粒子の抗原含有量は当該分野で公知の方法(例えば、微粒子の破壊および捕捉された抗原の抽出)に従って決定され得る。例えば、微粒子は以下に記載されるようにジメチルクロリド(dimethylchloride)および蒸留水中に抽出されたタンパク質に溶解され得る(例えば、Cohenら、Pharm.Res.(1991)8:713;Eldridgeら、Infect.Immun.(1991)59:2978;およびEldridgeら、J.Controlled Release(1990)11:205)。
【0058】
あるいは、微粒子は5%(w/v)SDSを含有する0.1MのNaOH中に分散され得る。試料を攪拌し、遠心分離し、そして適切なアッセイを用いて目的の抗原について上清をアッセイした。例えば、O’Haganら、Int.J.Pharm.(1994)103:37−45を参照のこと。
【0059】
上記で説明したように、サブミクロン水中油型エマルジョン処方物がまた、抗原/微粒子の送達前、送達と同時、または送達後のいずれかで脊椎動物の被験体に投与される。
【0060】
本明細書中で使用されるサブミクロン水中油型エマルジョンは、非毒性、代謝可能なオイルおよび市販の乳化剤を含有する。例えば、非毒性、代謝可能なオイルには、植物油、魚油、動物油または合成的に調製されたオイルが挙げられるがこれらに限定されない。鱈肝油、鮫肝油、および鯨油のような魚油が好ましく、鮫肝油で発見されたスクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンを含有するものが特に好ましい。オイル成分は約0.5%〜約20%の量で、好ましくは約15%までの量で、より好ましくは約1%〜約12%の量で、最も好ましくは約1%〜約4%のオイルで存在する(体積%)。
【0061】
アジュバントの水性部分は緩衝化された生理食塩水または純水(unadulterrated water)であり得る。組成物の非経口的な投与が意図されるので、張度(例えば、重量モル浸透圧濃度)が基本的に通常の生理学的流体と同一であるように最終濃度を調製することが好ましい。なぜなら、組成物と生理学的流体との間で異なるイオン濃度による投与後の膨潤または組成物の急速な吸収を防ぐためである。水よりはむしろ生理食塩水が使用される場合、通常の生理学的な条件と適合するpHを維持するために生理食塩水を緩衝化することが好ましい。また、特定の事例において、特定の組成物物含量の安定性を確立するためにpHを特定のレベルに維持することが必要とされ得る。従って、一般に、組成物のpHをpH6〜8にし、そしてpHは、任意の生理学的に受容可能な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、重炭酸または炭酸緩衝液など)を用いて維持され得る。一般に、水溶性薬剤の量は組成物を所望の最終容量に導くために必要な量で存在する。
【0062】
水中油型処方物における使用に適した乳化剤には以下が挙げられるが、これらに限定されない:ソリビタン−ベース非イオン性界面活性剤(例えば、Span(登録商標)またはArlacell(登録商標)の名で市販されているもの;Tween(登録商標)の名で知られている市販のポリオキシエチレンソルビタンモノエステルおよびポリオキシエチレンソルビタントリエステル;Myrj(登録商標)の名で市販のポリオキシエチレン脂肪酸;Brij(登録商標)の名で知られているようなポリオキシエチレン脂肪酸エーテルであって、ラウリルアルコール、アセチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールから誘導されるもの;など。これらの物質は、ICI America’s Inc.,Wilmington,DEを含む多数の商業的な供給源から容易に入手可能である。これらの乳化剤は単独または併用して使用され得る。通常、乳化剤は0.02%〜約2.5%、好ましくは、0.05%〜約1%、および最も好ましくは0.01%〜約0.5(重量%)(w/w)の量で存在する。一般に、使用されるオイルの約20〜30重量%の量で存在する。
【0063】
また、エマルジョンは、ムラミルぺプチドのような他の免疫刺激剤を含む(N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル(normuramyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン(isogluatme)(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル(isogluatminyl)−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ(huydroxyphosphoryloxy))−エチルアミン(MTO−PE)、などが挙げられるが、これらには限定されない)。免疫刺激細菌性細胞壁成分(モノリン脂質A(monophosphorylipid)(MPL)、ジミコール酸トレハロース(TDM)、および細胞壁骨格(CWS))がまた、存在し得る。本発明と共に使用される、種々の適切なサブミクロン水中油型エマルジョン処方物の記載に関しては、以下を参照のこと:例えば、国際公開第WO90/14837号;Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania、第19版、1995;Van Nestら、「Advanced adjuvant formulations for use with recombinant subunit vaccines」In Vaccines 92,Modern Approaches to New Vaccines(Brownら、編)Cold Spring Harbor Laboratory Press、頁57−62(1992);およびOttら、「MF59−−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.編)Plenum Press,New York(1995)頁277−296。
【0064】
サブミクロン粒子(すなわち、直径が1ミクロンン未満の粒子、および大きさがナノメーターの範囲である粒子)を生成するために、多数の技術が使用され得る。例えば、市販の乳化剤に、高圧下で狭い開口部を通して流体に応力を掛けることによって発生する高いせん断応力の原理による操作を用い得る。市販の乳化剤の例には以下が挙げられるが、これらには限定されない:Model 110Y microfluidizer(Microfluidics,Newton,MA)、Gaulin Model 30CD(Gaulin,INC.,Everett,MA)、およびRainnie Minilab Type 8.30H(Miro Atomizer Food and Dairy,Inc.,Hudson,WI)。個々の乳化剤に使用される適切な圧力は容易に、当業者によって決定される。例えば、Model 110Y microfluidizerが使用される場合、5000〜30,000psiでの操作によって約100〜750nmの直径を有する油滴が生成される。
【0065】
油滴の大きさは、オイルに対する界面活性剤の比(この比が増加するにつれて液滴の大きさが減少する)、作動圧力(作動圧力が増加するにつれて液滴の大きさが減少する)、温度(温度が増加するにつれて液滴の大きさが減少する)を変えること、および両親媒性免疫刺激剤の添加(このような薬剤の添加は液滴の大きさを減少させる)によって変化され得る。実際の液滴の大きさは、特定の界面活性剤、オイルおよび免疫刺激剤(任意)によって、ならびに特定の選択された操作条件と共に変化する。液滴の大きさは、サイジング装置(例えば、市販のSub−Micron Particle Analyzer(Model N4MD)、Coulter Corporationによって製造される)の使用によって確認され得、そして上記の指針を使用し、実質的に全油滴が直径において1ミクロン未満、好ましくは直径が約0.8ミクロン未満、および最も好ましくは直径が約0.5ミクロン未満となるまで、パラメータを変化し得る。よって、実質的に全体が少なくとも約80%未満(数による)、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、および最も好ましくは少なくとも約98%未満を意図する。粒径の分布は典型的にGaussianであり、したがって、平均の直径は上述の制限よりも小さい。
【0066】
本明細書中で使用される特に好ましいサブミクロン水中油型エマルジョンはスクアレン/水エマルジョンであり、このエマルジョンは必要に応じて、異なる量のMTP−PE(例えば、「MF59」として公知である、サブミクロン水中油型エマルジョン(国際公開第WO90/14837号;Ottら、「MF59−−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powel,M.F.and Newman,M.J.編)Plenum Press,New York,1995、頁277−296)を含む。MF59は、4〜5% w/vのスクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5% w/vのTween 80(登録商標)、および0.5% w/vのSpan 85(登録商標)含有し、そして必要に応じて異なる量のMTP−PEを含有する(微細流動化装置(microfluidizer)(例えば、Model 110Y microfluidizer(Microfluidics、Newton、MA)を用いてサブミクロン粒子に処方される)。例えば、MTP−PEは、約0〜500μg/用量、より好ましくは0〜250μg/用量、および最も好ましくは、0〜100μg/用量の量で存在し得る。従って、MF59−0は、MTP−PEのない上記サブミクロン水中油型エマルジョンを意味し、一方、MF59−100は、1用量あたり100μgのMTP−PEを含む。MF69は、本明細書中で使用される別のサブミクロン水中油型エマルジョンであり、4.3%w/vスクアレン、0.25%w/vのTween80(登録商標)、および0.75%w/vのSpan85(登録商標)、必要に応じてMTP−PEを含む。さらに、別のサブミクロン水中油型エマルジョンはSAFであり、これは10%のスクアレン、0.4%のTween 80(登録商標)、5%の プルロニック−ブロック(pluronic−blocked) ポリマー L121、およびthr−MDPであって、これらはまた、サブミクロンエマルジョンへと微細流動化される。
【0067】
一旦、サブミクロン水中油型エマルジョンが処方されると、これが微粒子の送達前、送達と同時、または送達後のいずれかで脊椎動物被験体に投与され得る。免疫前に微粒子を投与する場合、このアジュバント処方物は免疫前5〜10日、好ましくは免疫前3〜5日、および最も好ましくは、免疫前1〜3日または2日で関心の抗原と共に投与され得る。別々に投与される場合、サブミクロン水中油型処方物は、微粒子組成物として同一の送達部位または異なる送達部位のいずれかに送達され得る。
【0068】
同時送達が所望される場合、サブミクロン水中油型処方物は微粒子組成物と共に含まれ得る。一般に、微粒子およびサブミクロン水中油型エマルジョンは、単純な混合、攪拌、または振盪によって併され得る。他の技術(例えば、2成分の混合物を迅速に小さな開口部(例えば、皮下用針)を通すような工程)はまた、ワクチン組成物を提供するために使用され得る。
【0069】
併用される場合、組成物の種々の成分が広範な比で存在し得る。例えば、微粒子およびエマルジョン成分は典型的に、容量比において1:50〜50:1、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1で使用される。しかし、特定の目的に関しては、他の比がより適切であり得る。例えば、特定の抗原が微粒子中に取り込まれることが困難であり、かつ低い免疫原性(immungenicity)を有する場合、より高い相対的量の抗原成分が要求される。
【0070】
一旦処方したら、本発明の組成物を一般には注射によって非経口的に、投与する。この組成物を、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内のいずれかに注射し得る。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多数回用量スケジュールであり得る。多数回用量スケジュールは、ワクチン摂取の最初のクールが、1〜10の別々の用量を用いてであり得、続いて、免疫応答を維持および/または増強するために選ばれた所定の続きの時間間隔(例えば、2回目の用量については1〜4ヶ月、および必要ならば続きの用量は数ヶ月後に)で他の用量が与えられ得るスケジュールである。ブーストは、一次免疫応答のために与えられる微粒子/サブミクロン油−水−エマルジョンを用いたものであり得るか、または抗原を含む異なる処方物を用いたものであり得る。投与量摂生はまた、少なくとも一部は、被験体の必要性により決定され、そして医者の判断に依存する。さらに、疾患の予防が所望される場合、一般的にワクチンは、目的の病原体での一次感染より前に投与される。例えば、症状または再発の減少などの処置が所望される場合、ワクチンは、一般的には一次感染に続いて投与される。
【0071】
一般にこの組成物は、1つ以上の「薬学的に受容可能な賦形剤またはビヒクル」(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなど)を含む。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)がこのようなビヒクル中に存在し得る。
【0072】
この組成物は、「治療有効量」の目的の抗原を含む。すなわち、サブミクロン水中油型エマルジョンと組み合せた場合、症状を予防、減少または除去するために十分な免疫学的応答を被験体に生じさせる量の抗原が組成物中に含まれることである。正確な必要量は、他の因子の中でも、処置される被験体;処置される被験体の年齢および一般的状態;被験体の免疫系が抗体を合成する能力;所望される防御の程度;処置される状態の重篤度;選択された特定の抗原およびその投与様式に依存して異なる。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。従って、「治療有効量」は、慣用的試行を通じて決定され得る比較的広範な範囲に入る。例えば、本発明の目的のために、有効用量は、1用量あたりで送達される抗原について、代表的には約1μg〜約100mg、より好ましくは約10μg〜約1mg、そして最も好ましくは約50μg〜約500μgの範囲である。
【0073】
(III.実験)
以下は、本発明を実施するための特定の実施態様の例である。実施例は、例示的な目的のためのみに提供され、そしていかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図されない。
【0074】
使用される数(例えば、量、温度など)について正確さを保証するように試行されたが、いくらかの実験的誤差および偏差は、もちろん許容されるべきである。
【実施例】
【0075】
(実施例1:p24抗原捕捉微粒子の調製)
微粒子を処方するために使用する材料は、以下の通りである:
(1)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)。ラクチド対グリコリドのモル比は50:50、平均分子量=70〜100kDa(50:50 PLGA高粘性ポリマー)(Medisorb Technologies International、Cincinnati、OH);
(2)8%ポリビニルアルコール(PVA)3−83(Mowiol、Frankfurt、Germany)水に、酢酸エチルを6ml添加して、ねじ口瓶内で10分間攪拌することにより10%飽和させたもの;および
(3)30mM Tris、pH7.5中のp24gag/sf2。6.1mgの抗原/mlの濃度であり、20:1のスクロース:タンパク質を含む。
【0076】
P24gag微粒子を、以下の溶媒抽出技術により調製した。微粒子を作製するために、2.58gのポリマー溶液を、0.8mlの抗原溶液と共に30秒間超音波処理した。一次エマルジョンを、60グラムの飽和PVA溶液と共に、20mmプローブを有する卓上型ホモジナイザーを使用して、10Krpmで1時間、ホモジナイズした。得られたエマルジョンに、直ちに2.5リットルの水を添加し、溶媒抽出のために2時間攪拌し、38μメッシュに通して濾過し、遠心分離により3度洗浄し、そして水浴超音波処理機で1分間、間断的に超音波処理して、次いでレーザー回折測定により大きさを合わせた。その微粒子の直径の大きさの平均は、10μmであった。その微粒子を凍結乾燥し、そして−20℃で保存した。
【0077】
(実施例2:MF59を含むp24gag/sf2抗原捕捉微粒子の免疫原性)
10頭のヒヒを、2つの群に分け(1群あたり5頭)、そして表1に示した処方物を投与した。群1について、等量のアジュバントMF59−0およびp24gag/sf2(クエン酸/Tris緩衝液中の)を組合せて、0.7mlの全量を得た。その組成物を穏やかに混合し、そして500μl(100μg p24gag/sf2/投与量を得た)のワクチンを、大腿筋に筋肉内(IM)注射した。群2について、1.5mlの2×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、実施例1で作製した46.8mgのPLG捕捉p24gag/sf2処方物に添加した。その物質を、約30秒間ボルテックスして、全てのビーズを懸濁した。1.5mlのMF59−0を、再懸濁したビーズに添加して、3mlの全量を得た。その組成物を穏やかに混合し、そして500μl(100μg p24gag/sf2/投与量を得た)のワクチンを、大腿筋にIM注射した。
【0078】
両群の動物を、初回の注射後、4週間隔で2度、500μlのワクチン組成物でブーストした。2回目のブースト後の2週目(初回免疫後10週目)で、血清を収集し、そして、本質的に以下に示すように、IgG力価を標準的ELISAにより評価した。
【0079】
表1に示されるように、含有p24/gag/sf2+MF59は、非含有p24gag/sf2+MF59より、有意に大きく抗体応答を誘発した。
【0080】
【表1】


(実施例3:gp120/sf2抗原捕捉微粒子の調製)
微粒子を処方するために使用する材料は、以下の通りである:
(1)ラクチド対グリコリドのモル比が50:50で構成され、80kダルトンの平均分子量を有する、3.0gのポリマー、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(Boehringer Ingelheim Resomer RG505)を、50mlのジクロロメタン(DCM,HPLCグレード、Aldrichより入手)に溶解した;
(2)16gのポリビニルアルコール(平均分子量13〜23Kダルトン、ICN Biomedicals、Aurora、OH)を、200mlの脱イオン水に溶解した;および
(3)HIV gp120sf2抗原(Chiron、臨床グレード)を、30mM クエン酸ナトリウム、pH6.0の緩衝液中、7.2mg抗原/mlの濃度で使用した。
【0081】
微粒子を、以下のように調製した。30mlのガラスの密な壁の(heavy−walled)試験管内で、1.67mlのHIV gp120sf2抗原を、16.7mlのポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)溶液に添加した。その溶液を、10mm直径発生器を備えた、小型手動ホモジナイザーを使用して、23,000RPMで、3分間ホモジェナイズした。次いで、そのホモジネートを20mm直径発生器を備えた卓上型ホモジナイザーを使用して、12,000RPM、全ホモジナイズ時間3分間でホモジナイズしながら150mlガラスビーカー中の66.8mlのポリビニルアルコール溶液にゆっくり注いだ。得られた二重(double)エマルジョンを含むビーカーに、小型磁気攪拌子を備えた。次いで、これを周囲温度で、中程度(約1000RPM)の攪拌速度下で一晩放置し、DCM溶媒をエバポレートさせた。本方法で調製して得られた微粒子を洗浄して、余分なPVAおよび未捕捉の抗原を除去した。微粒子の調製物を約450mlの脱イオン水で希釈し、遠心分離して微粒子をペレット化し、上清をデカントし、そして微粒子を約30mlの脱イオン水に再懸濁することを繰り返して(全3回)、洗浄を完了した。最後の再懸濁の工程後、微粒子を凍結乾燥し、そして−20℃で保存した。
【0082】
凍結乾燥した微粒子の小サンプル(10〜30mg)を利用して、粒子の大きさの分布および抗原含量を測定した。このように調製した微粒子の大きさの分布を、Malvern Mastersizer機器を使用する動的レーザー光散乱法により測定し、そして0.6μmの大きさの中央値を有することを決定した。抗原含量(%負荷)を、0.1M水酸化ナトリウム、1%ドデシル硫酸ナトリウム溶液中に微粒子のサンプルを溶解することにより測定し、次いで、標準バイシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce、Rockford、IL)を使用して、タンパク質含量を測定した。微粒子の%負荷を、この方法で測定し、そして0.7重量%のタンパク質を含むことを決定した。
【0083】
(実施例4:ヒヒにおけるMF59を含むgp120/sf2抗原捕捉微粒子の免疫原性)
実施例2に記載されるように、p24gag/sf2に代えてgp120/sf2を使用して、同様の実験を実施した。特に、gp120/sf2をMF59−0と組合せ、そして上記のように、群1のヒヒに対して50μg投与した。さらに、実施例1のPLG捕捉gp120/sf2を、記載のようにMF−59と組合せ、そして群2の動物に対して50μg投与した。
【0084】
両群の動物を、初回の注射後4週目で、500μlのワクチン組成物でブーストした。血清サンプルを、初回投与の4週後(4wp1)、ならびに2回目の投与4週後(4wp2)および2回目の投与後(8wp2)に採取して、そしてIgG力価を、以下のようにELISAにより評価した。96ウェルELISAプレート(Nunc U96、cat♯449824)を、1ウェルあたり100μlの、50mMホウ酸ナトリウム緩衝液、pH9.0中の2μg/mlのgp120/sf2抗原で覆った。そのプレートを4℃で一晩インキュベートした。最初に100mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA、0.5M塩化ナトリウム緩衝液(希釈液)、pH7.5中に1:50〜1:1000に希釈したヒヒ血清サンプルを、ELISAプレート(血清サンプルあたり1列)の上面から底面まで、希釈液で1:2に連続的に希釈することによってサンプルを最初の希釈液より1、2、4、8、16、32、64、および128倍高い率で希釈し、ウェルあたり100μlサンプルの最終容量にした。希釈液のみ(ブランク)を含む列、および標準血清(標準)を含む列を、各プレートについての比較の目的のために含んだ。ELISAプレートを、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.05%Triton−X100溶液で広範に洗浄後、ウェルあたり100μlの1:5000希釈したGoat抗サルIgG−HRP結合体溶液(Organon Teknike Corp.、West Chester、PA、cat#55432)を添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。プレートを再度、0.05%Triton−X100で広範に洗浄した。100μlの過酸化TMB発色液(Kirkegaard&Petty labs、Gaithersburg、MD)を各ウェルに添加した。呈色反応を、約3分間発色させ、ウェルあたり50μlの2M HClを添加して停止させた。プレートを450nmでELISAリーダーを使用して読み取った。各プレートについて得られたODを、ブランクの列からの平均値を使用した基底ODから減算した。各血清サンプルについての力価を、得られたデータを対数関数に適合して決定した、OD0.5を達成するために必要な希釈率として表した。
【0085】
表2に示すように、全ての群で捕捉gp120/sf2+MF59は、非捕捉gp120/sf2+MF59より大きい抗体応答を誘発し、初回投与後4週目で見られた応答は、有意により高かった。
【0086】
【表2】


(実施例5:マウスにおけるMF59を含むgp120/sf2抗原捕捉微粒子の免疫原性)
PLG微粒子に含有させる場合、または吸着させる場合およびMF59と同時投与させる場合の、HIV gp120の免疫応答を刺激する能力をまた、以下のようにマウスにおいて試験した。Balb/Cマウス(6〜7週齢)を、4つの群に分け、そして10μgのHIV gp120および表3に示されるアジュバントを含む50μlのワクチン組成物を筋肉内投与した。種々の組成物は、上記の実施例4に記載されるように調製した。
【0087】
【表3】


動物を、初回注射後4週目および8週目でブーストした。血清を注射後2、6、10、および12週目に採取し、そしてIgG力価を、標準的ElISAにより(本質的に実施例4に記載されるように)評価した。
【0088】
得られたものを、表4および図1に示す。全ての場合において、IgG力価は、PLG捕捉gp120+MF59を投与した群において、他の群におけるIgG力価より高く、そしてMF59単独で投与した群より有意に高かった。注射後10週目で、IgG力価は、PLG捕捉gp120+MF59を投与した群において、他の全ての群と比較して有意に高かった。
【0089】
【表4】


(実施例6:マウスにおけるMF59を含むHCV E2抗原捕捉微粒子の免疫原性)
PLG微粒子に捕捉させる場合、または吸着させる場合およびMF59と同時投与させる場合の、C型肝炎ウイルス(HCV)E2抗原の免疫応答を刺激する能力を、以下のように試験した。マウスを、6つの群に分け、そして5μgのHCV E2抗原および表5に示されるアジュバントを含む50μlのワクチン組成物を筋肉内投与した。組成物を、本質的に、上記に記載されるように調製した。
【0090】
動物を、初回注射後4週目および6週目でブーストした。血清を注射後2、6、10、および12週目に採取し、そしてIgG力価を、標準的ElISAにより(本質的に上記に記載されるように)評価した。
【0091】
表6に示されるように、PLG微粒子中に吸着させたか、または捕捉させたかのいずれのHCV E2、およびMF59と同時投与されたHCV E2についての抗体力価は、PLGまたはMF59を単独で投与した場合にみられた力価より高かった。
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】


従って、抗原捕捉微粒子および抗原吸着微粒子を有する、サブミクロンの水中油型エマルジョンの使用を開示する。本発明の好ましい実施態様は、詳細に記載されているが、添付の請求の範囲に記載されるような本発明の思想および範囲を逸脱することなく、明らかな変化がされ得ることは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、gp120;gp120+MF59;捕捉したgp120を有するPLG;および捕捉したgp120を有するPLG+MF59を用いて免疫したマウスにおける、最初のワクチン接種後の2、6および10週での、総IgG力価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の被験体を免疫するための方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50374(P2008−50374A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292637(P2007−292637)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【分割の表示】特願2000−538716(P2000−538716)の分割
【原出願日】平成10年1月29日(1998.1.29)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】