説明

サブミクロン炭酸カルシウムを含むコーティング組成物

適用に際して光沢および不透明性を供し、5%から臨界顔料体積濃度の顔料体積濃度を有し、0.05および0.3μmの間の体積中位径を有する少なくとも1つの重質天然炭酸カルシウム、および2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を含むことを特徴とするコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミクロン天然重質炭酸カルシウムを含む光沢付与性および不透明化コーティング組成物に関する。本発明は、さらに、サブミクロン天然重質炭酸カルシウムを導入する光沢がありかつ不透明のコーティング組成物を調製する方法、ならびに光沢がありかつ不透明のコーティング組成物におけるサブミクロン天然重質炭酸カルシウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物顔料は、この調製または貯蔵の間において、またはこの基材への適用の間もしくはその後に、処方コストを減少させるためだけでなく、さらに、コーティング処方の特性を改良するために、コーティングシステムで広く用いられている。塗料処方の分野においては、コーティングシステムはほとんど必ず二酸化チタンを導入する。
【0003】
塗料適用との関係では、少なくとも2.5の屈折率を持つ顔料が重視されている。この点において1つの特に好ましい顔料は、特に、有意な不透明性または隠蔽力を供するために2.7の屈折率を有するルチル形態である二酸化チタン(TiO)である(Light Scattering by Pigmentary Rutile in Polymeric Films,Richard A.Slepetys,William F.Sullivan Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.,1970,9(3),pp266−271)。塗料処方で用いられる市販の二酸化チタン顔料は、材料および平均粒径測定方法に応じて、0.2および0.6μmの間の中位径と共に狭い粒度分布を呈することが周知である。硫化亜鉛および酸化亜鉛が同様に使用される。
【0004】
しかしながら、二酸化チタンは、コストが比較的高いことに悩まされ、この結果、光学的および他のコーティング組成物の特性の低下につながらない、より低コストのTiOの部分的置換顔料を見出すことへの継続した要望が生じている。
【0005】
GB1404564は、超微細天然炭酸カルシウムを充填した塗料および顔料を記載しており、ここにおいて、該天然炭酸カルシウムは0.5から4μmの粒径を有し、二酸化チタンを部分的に置き換えるために使用される。この関連で、(Imerys社によって商品化された)Polcarb(商標)は、0.9μmの平均粒径を有する、光沢のある塗料処方に適していると言われている。しかしながら、このような天然炭酸カルシウムは、光沢または不透明性を喪失することなく、臨界顔料体積濃度未満の顔料体積濃度を有する光沢のある塗料処方においてTiOの一部の置き換えを可能としない。
【0006】
本発明の目的においては、顔料体積濃度(PVC)は、顔料と処方の他の成分との合計体積に対する顔料体積の%で表した割合を指すと理解され、即ち、これは最終(乾燥した;即ち、水または他の溶媒を排除した)コーティングにおける合計処方体積に対する顔料体積に相当する。
【0007】
臨界顔料体積濃度(CPVC)は、超過した場合、コーティング処方の樹脂成分が、コーティングにおける顔料粒子の全てを完全にコーティングするのに十分でない顔料体積濃度と定義される。CPVCを超えると、処方が、一般には、艶消し仕上げになることは周知である。対照的に、光沢のある塗料処方のPVCはCPVC未満である。
【0008】
US5,171,631は、適切な基材への隠蔽を発生させるためのコーティング組成物を開示しており、該コーティング組成物は、最大で臨界顔料体積濃度(CPVC)の顔料体積濃度(PVC)を有し、および顔料系は約70から98体積%の二酸化チタン、および約2から30体積%の、約0.2ミクロンの中程度の粒径を有するアルミニウム三水和物(ATH)スペーサー/エクステンダー顔料を含む。US5,171,631の図1は、ほぼ2.7のd98/d50比率の値を示し、これは比較的狭い粒度分布に対応する。ATHはTiOの中位径および粒度分布曲線と概して類似する中位径および粒度分布を有することを条件として、TiOの一部は隠蔽の喪失なしに同等体積のATHで置き換えることができると述べられているが、US5,171,631の図2は、ATH−TiOを含む塗料処方は、一般には、TiO単独を含む対照塗料処方と同一の不透明性値を達成しないことを示している。
【0009】
天然重質炭酸カルシウム(GCC)は、この合成対応物である沈降炭酸カルシウム(PCC)とは対照的に、一般に、この適用分野において、広い粒度分布および不規則な粒子形状を有するという問題がある。事実、天然重質炭酸カルシウムは、採掘されたカルサイト、大理石、チョークまたは石灰石含有石を粉砕することによって調製されるので、これらの石を最終的に破砕して、非常に均一な粒径を有する微細な粒子を形成するのを確実とすることは困難である。
【0010】
対照的に、PCCは、核形成部位のまわりに結晶を形成する方法によって形成される。PCC析出の間における、数マイクロメートル未満のサイズドメインにおける、核形成および粒径発生の制御は、ここ数年の間で、よく研究された科学となり、小さくて、非常に均一な粒径および形状を有するPCC粒子が今日広く入手可能である。US5,171,631においては、二酸化チタンスペーサーとして均一な粒径の製品を使用する利点が周知である。この領域においては、Specialty MineralsはAlbafil PCC、微細な0.7ミクロンのプリズム状カルサイト、および様々な超微細またはナノPCC、即ち、Calofort S PCC、Calofort U PCC、Ultra−Pflex PCCおよびMultifex MM PCCを広告しており、各々、0.07ミクロンの中位径を有し、沈降炭酸カルシウム(PCC)は、二酸化チタンTiOのためのエクステンダーとして最も一般的に塗料に用いられていると述べている。小さな、狭く分布したPCC粒子は、個々のTiO粒子間の間隔を保ち、これらの隠蔽力を最大化するのに役立つ。
【0011】
先行技術の前記教示に鑑みれば、この分野で先に提供された重質天然炭酸カルシウム製品よりも微細な重質天然炭酸カルシウムが、この重質天然炭酸カルシウムが置き換えられる顔料とは異なる比較的広い粒度分布および/または中位径を特徴としている場合においても、少なくとも2.5の屈折率を持つ顔料、特に、TiOに代えて、置き換えまたは補助的顔料として用いることができることを出願人が見出したのは、注目すべきことであった。ATHで達成されたUS5,171,631の結果とは対照的に、本発明で使用される重質天然炭酸カルシウムは、一定のPVCにおいてTiOのような処方顔料の一部を置き換えるのに用いた場合に、塗料処方の光沢および不透明性をより十分に維持するだけでなく、光沢および/または不透明性の改良にもつながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第1404564号明細書
【特許文献2】米国特許第5,171,631号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Light Scattering by Pigmentary Rutile in Polymeric Films,Richard A.Slepetys,William F.Sullivan Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.,1970,9(3),pp266−271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の第一の目的は、従って、少なくとも2.5の屈折率を持つ顔料のコーティング組成物と同一または改良された光沢および不透明性を有するコーティング組成物であるが、ここにおいて、この顔料の含有量は同一のPVCにおいて低下している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるこの問題は、0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する重質天然炭酸カルシウム(以下、サブミクロン重質天然炭酸カルシウム、SMGCC)、および2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を含む、5体積%から臨界顔料体積濃度(CPVC)までの顔料体積濃度(PVC)を有するコーティング組成物により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の目的では、CPVCは、以下の実施例セクションで与えられる測定方法に従って決定される。
【0017】
本発明の目的では、体積中位径d50(d50(Mal))およびd98(d98(Mal))は、以下の実施例セクションで供されるMalvern測定方法に従って測定される。
【0018】
この点に関し、d50およびd98値は、各々、測定した粒子の50体積%がd50よりも小さな直径を有し、および測定した粒子の98体積%がd98よりも小さな直径を有する直径を定義する。
【0019】
好ましくは、コーティング組成物は10から30体積%、より好ましくは15から25体積%、なおより好ましくは17から21体積%、例えば、19体積%のPVCを有する。
【0020】
好ましくは、該SMGCCは、0.08および0.3μmの間、好ましくは、0.1および0.2μmの間、例えば、0.15μmの体積中位径d50を有する。
【0021】
従って、本発明によれば、サブミクロン粒子を用いることが好ましいだけでなく、低いナノメートル範囲の体積中位径d50を有するSMGCC粒子を用いることも可能であり、有利である。
【0022】
一実施形態において、該SMGCCは3よりも大きなd98/d50を有する。先に示したように、また先行技術とは対照的に、この重質天然炭酸カルシウムは、任意の実施形態において、広く、また組成物で使用される2.5以上の屈折率を有する該顔料の粒度分布には類似しない粒度分布を有する。実際、二峰性または多峰性のSMGCC粒度分布も想定することができる。
【0023】
以下の実施例セクションに示すように、本実施形態は本発明から排除されないが、該SMGCCは、2.5以上の屈折率を有する該顔料の体積中位径d50と同等な体積中位径d50を有する必要はない。SMGCCの体積中位径d50は、2.5以上ほぼ0.4μmまでの、好ましくは0.3μmまでの、特に0.2μmまでの屈折率を有する該顔料の体積中位径d50とは異なってよい。
【0024】
さらに、以下の実施例セクションによって示されるように、該SMGCCは、2.5以上の屈折率を有する該顔料の分布に対して広く、不均一でさえある粒度分布を特徴とすることができるが、これはまた、SMGCC、および2.5以上の屈折率を有する該顔料の粒度分布が幅において同様である場合を排除しない。
【0025】
好ましい実施形態において、該SMGCCは1μm以下の、より好ましくは0.8μm以下の、なおより好ましくは、0.6μm以下の、例えば、0.5μm、なおより好ましくは、0.4μm以下の、例えば、0.3μmのd98を有する。
【0026】
好ましくは、該SMGCCはほぼ1.4から1.8、より好ましくは約1.5から1.7、例えば、1.6の屈折率を有する。
【0027】
別の好ましい実施形態において、2.5以上の屈折率を有する該顔料は二酸化チタン、硫化亜鉛および酸化亜鉛を含む群の1以上から選択される。より好ましい実施形態において、2.5以上の屈折率を有する該顔料は二酸化チタンである。2.5以上の屈折率を有する該顔料が二酸化チタンである場合は、該二酸化チタンとSMGCCとの重量比が70:30から98:2であるのが好ましく、該二酸化チタンとSMGCCとの重量比が75:25から90:10であるのがなおより好ましく、最も好ましくは、該二酸化チタンとSMGCCとの重量比が80:20から85:15であり、例えば、88:12である。
【0028】
代替の実施形態において、本発明によるコーティング組成物は、さらに、クレイ、タルク、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム(PCC)、硫酸バリウム、マイカおよびベントナイトを含む群から選択される1以上の材料を含む。炭酸マグネシウムがSMGCCと組み合わせて導入される場合、これはドロマイトの形態であってよい。
【0029】
本発明によるコーティング組成物の光沢および/または不透明性が、0.05および0.3μmの間のd50を有する該重質天然炭酸カルシウムの代わりに2.5以上の屈折率を有する該顔料を同一量導入するコーティング組成物の光沢および/または不透明性以上であるのが、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0030】
本発明の目的では、基材に適用されるコーティング組成物の光沢は、以下の実施例セクションで供される測定方法に従って測定される。
【0031】
本発明の目的では、基材に適用されるコーティング組成物の不透明性は、以下の実施例セクションに供される測定方法に従って測定される。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明のコーティング組成物は、組成物の光沢が、5体積%からCPVCまでの範囲にある一定のPVC値において2.5以上の屈折率を有する該顔料によってSMGCCが十分に置き換えられている組成物の光沢の、±10%の範囲内にあることを特徴とする。
【0033】
好ましくは、本発明によるコーティング組成物の光沢は、2.5以上の屈折率を有する該顔料によってSMGCCが十分に置き換えられている組成物の光沢の±5%の範囲内、より好ましくは±3%の範囲内である。
【0034】
コーティング組成物の光沢は、SMGCCが、2.5以上の屈折率を有する該顔料によって十分に置き換えられている組成物の光沢に対して少なくとも1%だけ増加することが特に好ましい。この実施形態に対して、本発明のコーティング組成物の光沢は、SMGCCが2.5以上の屈折率を有する該顔料によって十分に置き換えられている組成物の光沢に対して少なくとも5%だけ増加することが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態において、該SMGCCは1以上の分散剤で分散される。当業者に周知の慣用的な分散剤を用いることができる。該分散剤はアニオン性、カチオン性またはノニオン性であり得る。好ましい分散剤はポリアクリル酸系である。
【0036】
該コーティング組成物は、限定されるものではないが、コンクリート、木材、紙、金属および板を含む種々の基材に適用することができる。
【0037】
好ましい実施形態において、該コーティング組成物は、40および400μmの間、好ましくは100から350μmの間、より好ましくは150から300μmの間、例えば、200および250μmの間の厚みを有する層を形成するような量で基材に適用される。
【0038】
基材への適用に続き、該コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも80%のDIN67 530に従って60°で測定された光沢を供する。
【0039】
基材への適用に続き、該コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に少なくとも98%のISO 6504/3に従って決定された不透明性(コントラスト比)を供する。
【0040】
該コーティング組成物は、好ましくは水性エマルジョンの形態であるラテックスまたはアクリレート系バインダーのような樹脂;二酸化チタンのような顔料;脱泡剤、レベリング剤、艶消し剤、保存剤、蛍光増白剤、光安定化剤、増粘剤等のレオロジー添加剤、分散剤のような添加剤;グリコールエーテルのような溶媒、および中空スフィアポリマー顔料(Ropaque(商標))のような充填剤を含む群から選択される1以上の成分をさらに含んでよい。
【0041】
一般に、当該分野で周知の、水系コーティングで通常用いることができるいずれの添加剤も、本発明で用いることができる。このような添加剤は、限定されるものではないが、純粋なアクリル化合物、スチレンアクリル化合物、ビニルアクリル化合物、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、澱粉ポリマー等をベースとするラテックス;シリコーン修飾、ポリウレタン修飾等をされていてもよい、大豆油、トール油のような水希釈性の、および乳化されたタイプのアルキド;溶媒を含有するまたは溶媒を含まなくてもよいポリウレタンのようなバインダーを含む。
【0042】
さらなる添加剤は二酸化チタン(ルチルまたはアナターゼ)、および酸化亜鉛、霞石閃長岩、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、焼成クレイ、ボールクレイ、水洗クレイ、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、石英、マイカ、ウォラストナイトのような通常の顔料および/または充填剤、ならびに着色した無機および有機顔料を含む。
【0043】
本発明で有用であり得るさらなる添加剤は、芳香族および脂肪族炭化水素、ミネラルスプリット、ナフサ、プロピレンおよびエチレングリコール等のような溶媒;テキサノール、ブチルカルビトール、ブチルジグリコール、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチル/ブチル/ヘキシル/エチルエーテル等のような合体性溶媒;ジブチル、ジエチル、ジオクチル、ジメチル、ベンジル、ジアルキルフタレート等の種々のフタレートのような可塑剤;アタパルジャイトクレイ、セルロース性増粘剤(例えば、HEC、HMEC、HMPC等)のような抗沈降剤;ナトリウム、アンモニウムおよび/またはカリウム中和されていてよい、および/または疎水性的に修飾されていてもよいポリアクリレートのような分散剤;アニオン性またはノニオン性界面活性剤のような界面活性剤;結合性および非結合性アクリル、およびポリウレタンのようなレオロジー修飾剤;鉱油系、シリコーン系等であってよい脱泡剤;殺生物剤、例えば、缶貯蔵で通常用いられるもの;防黴剤、特に乾燥した塗料の黴を防ぐために典型的に用いられるもの;乾燥剤、特に、乳化されたアルキド/水希釈性アルキドで典型的には用いられるもの;コバルト、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、マンガン等のような多様な金属;UV硬化系において、または幾つかの木材染料および仕上げで典型的には用いられるもののようなUV吸収剤;ヒンダードアミン光安定化剤、例えば、UV硬化系、または幾つかの木材染料および仕上げにおいて、UV吸収剤と組み合わせて典型的には用いられるもののような安定化剤を含む。
【0044】
本発明で用いることができるさらなる添加剤は、コーティングおよび塗料処方で通常用いられるいずれか1つのものであり、VdL−Richtlinie「Bautenanstrichstoffe」(VdL−RL 01/Juni 2004;Verband der deutschen Lackindustrie e.V.によって出版)のような、当業者に周知の対応するテキストブックおよびガイドラインで見出すことができる。
【0045】
好ましくは、コーティング組成物は、以下の実施例セクションで供される測定方法に従って測定して、200から500mPa・s、より好ましくは250から400mPa・s、例えば、300mPa・sのブルックフィールド粘度を有する。
【0046】
本発明のさらなる目的は、本発明によるコーティング組成物を調製するための方法にある。
【0047】
従って、本発明は、以下の工程:
a)0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する少なくとも1つの重質天然炭酸カルシウム(SMGCC)を準備し;
b)2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を準備し;
c)工程a)の該SMGCCを工程b)の該顔料と混合する;
によって特徴付けられる、5体積%からCPVCのPVCを有するコーティング組成物を調製するための方法にも関する。
【0048】
工程a)の該SMGCCは水性懸濁液、水性分散液または乾燥粉末の形態で準備することができる。好ましい実施形態において、工程a)の該SMGCCは水性懸濁液または分散液の形態で準備される。
【0049】
さらに、加えて、少なくとも1つの樹脂を準備し、これを工程a)の該SMGCCおよび工程b)の該顔料と混合するのが好ましい。
【0050】
該樹脂は、好ましくは、ラテックスおよび/またはアクリレート系バインダーであり、該アクリレート系バインダーは、好ましくは、水性エマルジョンの形態である。
【0051】
さらに、本発明の第三の目的は、2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を含む、5体積%からCPVCまでの範囲のPVCを有するコーティング組成物における、0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する少なくとも1つの重質天然炭酸カルシウムの使用にある。
【0052】
この点に関し、本発明の組成物の光沢および/または不透明性は、SMGCCが2.5以上の屈折率を有する該顔料によって十分に置き換えられている組成物の光沢および/または不透明性以上であることが好ましい。
【0053】
本発明の別の目的は、本発明のコーティング組成物を含む塗料である。
【実施例】
【0054】
懸濁液または分散液固形物含有量(%当量乾燥重量)
懸濁液または分散剤における固体材料の重量は、懸濁液の水性相を蒸発させ、得られた材料を一定の重量まで乾燥することによって得られた固体材料を秤量することによって決定される。
【0055】
粒状材料の粒度分布(直径<xでの体積%粒子>、体積中位径d50およびd98(粒子の98体積%がd98よりも細かい直径)
【0056】
体積中位径d50は、Malvern Mastersizer 2000(Fraunhofer)を用いて評価した。Malvern Mastersizer 2000(Fraunhofer)を用いて測定されたd98値は、粒子の98体積%がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。
【0057】
BET比表面積(m/g)
BET比表面積値は、窒素を使って、およびISO9277に従ったBET方法を用いて決定した。
【0058】
コーティングされた表面の光沢
光沢値は、コントラストカード上で150および300μmのコーターギャップを設けて調製した塗布表面でDIN 67 530に従ってリストされた角度で測定する。
【0059】
コーティングされた表面のコントラスト比率(不透明性)
コントラスト比率値は、7.5m/lの拡散率でISO 6504/3に従って決定する。
【0060】
懸濁液または分散液のブルックフィールド粘度(mPas)
ブルックフィールド粘度は、100rpmの回転速度および室温(20±3℃)にて、LV−3スピンドルを備えたブルックフィールドDV−II粘度計で測定する。
【0061】
顔料体積濃度(PVC、%)
顔料体積濃度は、Detlef Gysauによって「Fuellstoff」と題された書籍(Hannover:Vincentz Network 2005)のセクション6.2.3に記載されたように計算する。
【0062】
(塗料中の全ての顔料+エクステンダーの合計体積)/(塗料中の全ての固形成分の合計体積)×100%
【0063】
臨界顔料体積濃度(CPVC、%)
臨界顔料体積濃度は、塗料産業で広く用いられる周知の濃度である。伝統的なコーティングにおけるCPVCは、顔料を湿潤させるのに丁度十分なバインダーがあり、ミックスが理論的にゼロ多孔度を呈するバインダーに関する顔料の体積であると考えられる(例えば、「Estimation of Critical Pigment Volume Concentration in Latex Paint Systems Using Gas Permeation」,Manouchehr Khorassani,Saeed Pourmahdian,Faramarz Afshar−Taromi,and Amir Nourhani,Iranian Polymer Journal 14(11),2005,1000−1007参照。)。CPVCおよびISO4618に従ったこの測定方法は、Detlef Gysauによって「Fuellstoff」と題された書籍(Hannover:Vincentz Network 2005)のセクション6.2.4で議論されている。
【0064】
材料:
SMGCC
以下の実施例で用いるSMGCC分散液は、以下の表で与えられた体積中位径d50および粒径特徴を有する天然重質炭酸カルシウム(Vermontからの大理石)である。
【0065】
【表1】

【0066】
二酸化チタン
以下の実施例で使用される二酸化チタンは95重量%の純粋なルチルTiOからなり、残りの重量はアルミナ、ジルコニアおよび有機表面処理剤の表面処理で占められる。この顔料は、ほぼ0.55μmの体積中位径d50、および1.98のd98/d50(Mal)を特徴とし、75重量%固形物含有量を有する水性ペーストの形態で提供される。走査型電子顕微鏡イメージングによって、粒子は0.2から0.25μmの範囲にあるように見える。TiOの屈折率は2.7である。
【0067】
[実施例1]
以下の実施例は、比較塗料組成物および本発明による塗料組成物を示す。処方された塗料は、光沢および不透明性の両方を測定するために必要な量でコントラストカードに適用された。
【0068】
【表2】

前記表の結果は、TiOの一部の、本発明によるSMGCCでの置き換え、および2.4から5の範囲のd98/d50値を有する結果、同等なPVCを有するが、TiOのみを有する比較処方として実質的に同一な不透明性(コントラスト比率)を有するコーティングがもたらされることを示す。光沢値は、同等なPVCを有するが、TiOのみを有する比較処方に対して同等または改良されているように観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物が、0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する少なくとも1つのサブミクロン重質天然炭酸カルシウム(SMGCC);および
2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料
を含むことを特徴とする、5体積%から臨界顔料体積濃度(CPVC)までの顔料体積濃度(PVC)を有するコーティング組成物。
【請求項2】
該コーティング組成物が、10から30体積%、好ましくは15から25体積%、より好ましくは17から21体積%、例えば、19体積%のPVCを有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
該SMGCCが、0.08および0.3μmの間、好ましくは0.1および0.2μmの間、例えば、0.15μmの体積中位径d50を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
該SMGCCが、3よりも大きなd98/d50を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項5】
該SMGCCが、1μm以下の、好ましくは0.8μm以下の、より好ましくは0.6μm以下の、なおより好ましくは0.4μm以下の、例えば、0.3μmのd98を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項6】
2.5以上の屈折率を有する該顔料が、二酸化チタン、硫化亜鉛および酸化亜鉛を含む群の1以上から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
顔料が二酸化チタンである場合、該二酸化チタンとSMGCCとの重量比が70:30から98:2、好ましくは75:25から90:10、より好ましくは80:20から85:15、例えば、88:12であることを特徴とする、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
該組成物の光沢が、5体積%からCPVCまでの範囲である一定のPVC値において2.5以上の屈折率を有する該顔料によってSMGCCが十分に置き換えられている組成物の光沢の、±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内、より好ましくは±3%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項9】
該組成物の光沢が、SMGCCが2.5以上の屈折率を有する顔料によって十分に置き換えられている組成物の光沢に対して、少なくとも1%、好ましくは、少なくとも5%増加することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項10】
a)0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する少なくとも1つの重質天然炭酸カルシウム(SMGCC)を準備し;
b)2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を準備し;
c)工程a)の該SMGCCを工程b)の該顔料と混合する;
ことを特徴とする、5%からCPVCまでのPVCを有するコーティング組成物を調製する方法。
【請求項11】
工程a)の該SMGCCが、水性懸濁液または分散液の形態で準備することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの樹脂がさらに準備され、工程a)の該SMGCCおよび工程b)の該顔料と混合することを特徴とする、請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該樹脂が、ラテックスおよび/またはアクリレート系バインダーであり、該アクリレート系バインダーは、好ましくは、水性エマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
5%からCPVCまでの範囲のPVCを有し、2.5以上の屈折率を有する少なくとも1つの顔料を含むコーティング組成物における、0.05および0.3μmの間の体積中位径d50を有する少なくとも1つの重質天然炭酸カルシウムの使用。
【請求項15】
該組成物の光沢および/または不透明性が、2.5以上の屈折率を有する該顔料によって該SMGCCが十分に置き換えられている組成物の光沢および/または不透明性以上であるを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物でコーティングされることを特徴とするコンクリート、木材、紙、金属または板。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物を含むことを特徴とする塗料。

【公表番号】特表2013−518161(P2013−518161A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550414(P2012−550414)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050953
【国際公開番号】WO2011/092152
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】