説明

サブラジエータの搭載構造

【課題】チッピングガード部材を使用することなくサブラジエータへの石はね等のチッピングを抑制することのできるサブラジエータの搭載構造を提供する。
【解決手段】本発明に係るサブラジエータの搭載構造は、車両前方から車両後方に向けてサブラジエータ9とコンデンサ10とメインラジエータ11とをこの順番でそれぞれ対向して配置し、前記サブラジエータ9を、車両正面視でバンパフェイシャ3に形成された空気取り入れ口5、6から見えない位置で且つバンパレインフォース1の車両後方位置に該バンパレインフォースに重ねて配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブラジエータの搭載構造であり、詳細には車両に搭載された電子機器を冷却するためのサブラジエータの車体前部への取り付け技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと電動モータの2つの動力源を持ったハイブリッド自動車では、走行用の電動モータ及び電動モータ制御用のコントローラやインバータといった電子機器を冷却するために、エンジン冷却用のラジエータとは別に電子機器冷却用のサブラジエータが搭載されている(例えば、特許文献1等に記載)。
【0003】
特許文献1では、インバータ用ラジエータとエアコン用コンデンサとエンジン用ラジエータを、この順で車両前方から車両後方に向けて配置した、いわゆる3列配置構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4306136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、車体前部には、車両前方からモータルーム内に空気を取り入れるために、ラジエータグリルと、バンパフェイシャに形成された空気取り入れ口とが形成されている。これらラジエータグリル及び空気取り入れ口から車両後方を見たときに、エアコン用コンデンサ及びエンジン用ラジエータの前方に配置されたインバータ用ラジエータが見える。
【0006】
このため、走行風がインバータ用ラジエータに直接当たるものの、ラジエータグリル及び空気取り入れ口から車体前部内に入り込んだ石などの飛来物が、インバータ用ラジエータにぶつかることがある。
【0007】
そこで、インバータ用ラジエータに対するチッピング対策として、飛来物がインバータ用ラジエータに直接衝突しないようにチッピングガード部材をラジエータグリルと対向する位置に、該インバータ用ラジエータに取り付ける必要性が生じる。しかし、チッピングガード部材を使用すると、コストアップにつながる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、チッピングガード部材を使用することなくサブラジエータへの石はね等のチッピングを抑制することのできるサブラジエータの搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサブラジエータの搭載構造は、サブラジエータを、車両正面視でバンパフェイシャに形成された空気取り入れ口から見えない位置で且つバンパレインフォースの車両後方位置に該バンパレインフォースに重ねて配置している。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るサブラジエータの搭載構造によれば、車両正面視でバンパフェイシャに形成された空気取り入れ口から見えない位置にサブラジエータが配置されているため、この空気取り入れ口から車体前部内に飛び込んで来る石などの飛来物が直接サブラジエータに当たることを抑制することができる。また、本発明によれば、バンパレインフォースの車両後方位置に、車両正面視で該バンパレインフォースに重ねてサブラジエータが配置されているので、バンパレインフォースがチッピングガード部材として機能してサブラジエータへの石はね衝突のチッピングを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はサブラジエータ、コンデンサ及びメインラジエータが配置される車体前部の断面図である。
【図2】図2は図1の車体前部を車両前方から車両後方に向かって正面視したときの正面図である。
【図3】図3は図1のバンパフェイシャを取り外して車体前部を車体前方から車体後方に向かって正面視したときの正面図である。
【図4】図4はサブラジエータを示し、(A)はその側面図、(B)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用したサブラジエータの搭載構造について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、エンジンと電動モータの2つの動力源を持ったハイブリッド自動車に本発明を適用した例である。
【0013】
図1はサブラジエータ、コンデンサ及びメインラジエータが配置される車体前部の断面図、図2は図1の車体前部を車両前方から車両後方に向かって正面視したときの正面図、図3は図1のバンパフェイシャを取り外して車体前部を車体前方から車体後方に向かって正面視したときの正面図、図4はサブラジエータを示し、(A)はその側面図、(B)はその正面図である。なお、図1から図3において、矢印Xは車両前後方向、矢印Yは車幅方向、矢印Zは車両高さ方向をそれぞれ表す。
【0014】
図1から図3に示すように、車両前部には、フロントバンパを構成するバンパレインフォース1と、衝撃吸収部材2と、バンパフェイシャ3とが取り付けられている。バンパレインフォース1は、車体骨格部材として車幅方向Yに延在して車体前部に取り付けられている。衝撃吸収部材2は、バンパレインフォース1とバンパフェイシャ3との間に配置され、バンパフェイシャ3に入力した衝撃荷重を吸収して緩和させる。バンパフェイシャ3は、バンパレインフォース1の前面を覆って車体前端部の形状を形成する外装部品である。
【0015】
バンパフェイシャ3には、バンパレインフォース1と同一高さ位置に対応する部位(以下、これをフェイシャレインフォース対応部位3aという)の車両上下部分に、空気をモータルーム4内に取り入れるための空気取り入れ口5、6が形成されている。前記フェイシャレインフォース対応部位3aを挟んで車両上方に形成された空気取り入れ口5には、フロントグリル7が取り付けられている。これに対して、前記フェイシャレインフォース対応部位3aを挟んで車両下方に形成された空気取り入れ口6には、フロントアンダーグリル8が取り付けられている。これにより、モータルーム4には、前記両空気取り入れ口5、6から空気が取り入れられることになる。
【0016】
車両前部には、車両前方から車両後方に向けて電子機器用冷却水を冷却するサブラジエータ9とエアコン用冷媒を冷却するコンデンサ10とエンジン用冷却水を冷却するメインラジエータ11とが、この順番でそれぞれ対向して配置されている。これらサブラジエータ9、コンデンサ10及びメインラジエータ11は、何れもラジエータコアサポート12に取り付けられている。
【0017】
ハイブリッド自動車では、通常の内燃機関用エンジンを流れるエンジン冷却水を冷却するためのメインラジエータ11の他に、走行用の電動モータ及び電動モータ制御用のコントローラやインバータといった電子機器の周囲に設けられたウォータジャケットを流れる電子機器用冷却水を冷却するサブラジエータ9が必要になる。また、ハイブリッド自動車は、車両走行開始時には電動モータのみが作動する(電動モータとエンジンの両方が作動する場合もある)ため、車両停止時から低速走行時では両空気取り入れ口5、6からモータルーム4内に流入する空気量が少なくなる。そのため、メインラジエータ11の背面側に配置した冷却ファン13で冷却風を発生させている。
【0018】
サブラジエータ9は、図4に示すように、電子機器用冷却水が流れるチューブ14と冷却フィン15とを交互に複数積層して形成されたラジエータコア16と、このラジエータコア16の車幅方向両端に取り付けられたタンク17、18と、ラジエータコア16の積層方向上下に取り付けられた上部レインフォース19及び下部レインフォース20とから構成されている。
【0019】
前記サブラジエータ9は、車両正面視で(車両前方から車両後方を見たときに)バンパフェイシャ3に形成された両空気取り入れ口5、6から見えない位置で且つバンパレインフォース1の車両後方位置に該バンパレインフォース1に重ねて配置されている。更に言えば、サブラジエータ9は、バンパレインフォース1と同一の車両高さ位置に、該バンパレインフォース1及びバンパフェイシャ3の裏側に略全体が覆われる(隠れる)ように配置されている。
【0020】
サブラジエータ9の略全体がバンパレインフォース1及びバンパフェイシャ3に覆われるというのは、少なくともラジエータ構成部品であるチューブ14及び冷却フィン15全体が隠れるという意味である。そのため、図2及び図3に示すように、ラジエータ構成部品である下部レインフォース20がバンパレインフォース1及びバンパフェイシャ3から若干露出している状態も、前記サブラジエータ9の略全体がバンパレインフォース1及びバンパフェイシャ3に覆われるという意味に含まれるものとする。
【0021】
サブラジエータ9は、製造コストを抑制するために、エンジン冷却用に使用されるメインラジエータ11のラジエータコアが流用される。メインラジエータ11は、コンデンサ10の背面に配置されるため、チューブ自体を肉厚にするといったチッピング対策が施されない。したがって、メインラジエータ11に使用されるラジエータコアを流用したサブラジエータ9を、両空気取り入れ口5、6から見えるようにコンデンサ10の車両前方に配置した場合には、石はね等でサブラジエータ9のチューブ14が破損することが考えられる。
【0022】
しかしながら、本実施形態では、チューブ14及び冷却フィン15全体が両空気取り入れ口5、6から見えないようにバンパレインフォース1及びバンパフェイシャ3で覆われているため、チッピングの影響を受けない。また、例え車両下方の空気取り入れ口6からラジエータ構成部品である下部レインフォース20が露出していても、この下部レインフォース20には冷却水が流れることが無いため漏水の心配が無く、また下部レインフォース自体の強度が高いために石はねで破損するようなことはない。
【0023】
また、サブラジエータ9は、メインラジエータ11の車両後方に設けられた冷却ファン13と車両正面視で該冷却ファン13に重ねて配置されている。つまり、車両前方から車両後方を見たときに、サブラジエータ9の背面に、該サブラジエータ9の投影部分が冷却ファン13に重なるようになっている。このため、冷却ファン13で車両後方へ引かれた風によって生じる冷却風を、前記サブラジエータ9全体に対して作用させて熱くなった電子機器用冷却水を熱交換して冷却することができる。
【0024】
以上のように配置されたサブラジエータ9、コンデンサ10及びメインラジエータ11からなる熱交換器では、何れも各熱交換器の通気率が従来構造に比べて高くなるという実験結果が得られた。通気率とは、サブラジエータ9、コンデンサ10及びメインラジエータ11全てを通過したときの平均風速(m/sec)を、時速60Kmで走行したときの速度で割った値である。
【0025】
本実施形態のサブラジエータの搭載構造によれば、車両正面視でバンパフェイシャ3に形成された空気取り入れ口5、6から見えない位置にサブラジエータ9を配置しているため、この空気取り入れ口5、6から車体前部内に飛び込んで来る石などの飛来物が直接サブラジエータ9に当たることを抑制(回避)することができる。また、本実施形態によれば、バンパレインフォース1の車両後方位置に、車両正面視で該バンパレインフォース1に重ねてサブラジエータ9を配置しているので、バンパレインフォース1がチッピングガード部材として機能してサブラジエータ9への石はね衝突を回避できる。そのため、本実施形態では、チッピングガード部材を不要としてコストの低下を図ることができ、更にはチッピングガード部材も空気取り入れ口5、6から見えないので見栄えも良くなる。
【0026】
また、本実施形態のサブラジエータの搭載構造によれば、サブラジエータ9を、メインラジエータ11の車両後方に設けられた冷却ファン13と車両正面視で該冷却ファン13に重ねて配置しているので、サブラジエータ9と冷却ファン13との相対位置がずれている場合に比べて、当該冷却ファン13で車両後方へ引かれた風によって生じる冷却風を、前記サブラジエータ9全体に対して作用させることができる。その結果、熱くなった電子機器用冷却水を冷却ファン13により熱交換させて冷却することができる。
【0027】
また、本実施形態のサブラジエータの搭載構造によれば、サブラジエータ9を、ラジエータ構成部品である電子機器用冷却水が流れるチューブ14全体をバンパフェイシャ3で覆っているため、石はねがあった場合にはバンパフェイシャ3に当たりチューブ14には石などの飛来物が当たることを回避することができる。特に、チューブ14には電子機器用冷却水が流れることから、当該チューブ14の損傷を未然に防げることができる。
【0028】
以上説明した実施形態では、バンパフェイシャ3に2つの空気取り入れ口5、6が形成されているが、その空気取り入れ口5、6の数は1つでも良い。要は、車両前方から車両後方を正面視したときに空気取り入れ口からサブラジエータ9が見えず且つバンパレインフォース1の車両後方位置に正面視で該バンパレインフォース1にサブラジエータ9が重ねて配置されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、メインラジエータの他にサブラジエータを車体前部に取り付けた車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…バンパレインフォース
2…衝撃吸収部材
3…バンパフェイシャ
4…モータルーム
5、6…空気取り入れ口
9…サブラジエータ
10…コンデンサ
11…メインラジエータ
12…ラジエータコアサポート
13…冷却ファン
14…チューブ
15…冷却フィン
16…ラジエータコア
20…下部レインフォース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方から車両後方に向けて電子機器用冷却水を冷却するサブラジエータとエアコン用冷媒を冷却するコンデンサとエンジン用冷却水を冷却するメインラジエータとをこの順番でそれぞれ対向して配置しており、
前記サブラジエータを、車両正面視でバンパフェイシャに形成された空気取り入れ口から見えない位置で且つバンパレインフォースの車両後方位置に該バンパレインフォースに重ねて配置した
ことを特徴とするサブラジエータの搭載構造。
【請求項2】
請求項1記載のサブラジエータの搭載構造であって、
前記サブラジエータは、前記メインラジエータの車両後方に設けられた冷却ファンと車両正面視で重ねて配置された
ことを特徴とするサブラジエータの搭載構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のサブラジエータの搭載構造であって、
前記サブラジエータは、ラジエータ構成部品である電子機器用冷却水が流れるチューブ全体を前記バンパフェイシャで覆われている
ことを特徴とするサブラジエータの搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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