説明

サブ光源に面状発光体を用いた車両用灯具

【課題】 メイン光源の光を遮ることなく、サブ光源を灯室内の限られたスペースにコンパクトな形態で設置する。
【解決手段】 車両用前照灯1の灯室内に、2つのメイン光源2と3つのサブ光源3を設置する。メイン光源2はロービームランプ2A、ハイビームランプ2Bとして用いられ、サブ光源3がクリアランスランプ3A、ターンシグナルランプ3B、ランニングランプ3Cとして用いられる。サブ光源3に有機ELからなる面状発光体を使用し、メイン光源2と共通の光源ベース上に並設する。面状発光体はメイン光源2を取り囲み、メイン光源の光路から脇へ逸れた領域で拡散光を発生し、灯具前面の透光カバーを内側から照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯室内にメイン光源とサブ光源を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、ハウジング52と透光カバー53との間の灯室54内にメイン光源55とサブ光源56を装備した車両用前照灯51が知られている。図6に示すように、メイン光源55はロービームランプ55A、ハイビームランプ55Bとして用いられ、サブ光源56がクリアランスランプ56A、ターンシグナルランプ56B、ランニングランプ56Cとして用いられる。特許文献1には、灯室内にメイン光源を設置し、メイン光源前方の透光カバーの内側にインナーレンズを配置し、インナーレンズにサブ光源としての面状発光層を被着した車両用灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−216507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の車両用灯具によると、サブ光源の面状発光層がメイン光源の前方に位置するため、サブ光源がメイン光源からの光を遮るという不都合があった。これに対し、図5、図6の車両用灯具51は、メイン光源55とサブ光源56が上下異なる位置に設置されているので、遮光のおそれはなくなるが、灯具全体が大型化する問題点があった。また、サブ光源56をメイン光源55周りの空領域(図6のランプ55A,55Bの周囲)に設置することも考えられるが、どちらの光源55,56も支持部材や点灯回路等の部品57(図5参照)を付属するため、充分な設置スペースを確保するのが困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、メイン光源からの光を遮ることなく、サブ光源を灯室内の限られたスペースにコンパクトな形態で設置できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ハウジングと透光カバーとの間の灯室内にメイン光源とサブ光源を備えた車両用灯具において、次のような手段を提供する。
(1)サブ光源が面状発光体を含み、面状発光体がメイン光源の光路から脇へ逸れた領域に設置されていることを特徴とする車両用灯具。
【0007】
(2)メイン光源とサブ光源が共通の光源ベースの異なる領域に設置されている(1)に記載の車両用灯具。
【0008】
(3)面状発光体がメイン光源を取り囲むように形成されている(1)又は(2)記載の車両用灯具。
【0009】
(4)サブ光源が異なる色の光を発する複数の面状発光体を含む(1)〜(3)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【0010】
(5)面状発光体に有機EL(エレクトロルミネッセンス)を用いた(1)〜(4)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用灯具は、サブ光源の面状発光体をメイン光源の光路から脇へ逸れた領域に設置したので、メイン光源からの光を遮ることなく、サブ光源を灯室内の限られたスペースにコンパクトな形態で設置できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示す車両用前照灯の正面図である。
【図2】車両用前照灯の内部構造を示す水平断面図である。
【図3】サブ光源の面状発光体を示すハウジングの正面図である。
【図4】本発明の別の実施例を示すリアコンビネーションランプの斜視図である。
【図5】従来の車両用灯具を示す垂直断面図である。
【図6】従来の車両用灯具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を車両用前照灯に具体化した一実施例を図1〜図3に基づいて説明する。図1に示すように、この車両用前照灯1は、メイン光源2としてロービームランプ2A、ハイビームランプ2Bを備え、サブ光源3としてクリアランスランプ3A、ターンシグナルランプ3B、ランニングランプ3Cを装備している。3つのサブ光源3はメイン光源2の周辺に設けられ、前照灯1の全体が従来(図6参照)と比較し小型に構成されている。
【0014】
図2に示すように、車両用前照灯1の灯室4はハウジング5と透光カバー6との間に形成されている。ハウジング5は車体7に取り付けられ、透光カバー6がハウジング5の前面開口部を覆っている。灯室4の内部には光源ベース8が設けられ、共通の光源ベース8の異なる位置に2つのメイン光源2A,2Bと3つのサブ光源3A,3B,3Cとが並べて設置されている。メイン光源2A,2Bは、それぞれバルブ9、リフレクタ10、レンズ支持筒11、投射レンズ12、点灯回路13等で構成されている。
【0015】
サブ光源3A,3B,3Cには、それぞれ有機ELからなる面状発光体14が用いられている。面状発光体14は、有機発光層15に背面電極16と透明電極17を積層し、透明電極17にガラス層18を被せて構成され、メイン光源2A,2Bの光路19から脇へ逸れた領域において光源ベース8に取り付けられている。そして、有機発光層15の全面から発生した拡散光20を透明電極17とガラス層18に透過させ、透光カバー6を内側から照明するようになっている。
【0016】
図3に示すように、サブ光源3A,3B,3Cの面状発光体14は、メイン光源2A,2Bを取り囲むように光源ベース8の表面に設けられている。つまり、ロービームランプ2Aはクリアランスランプ3Aとシグナルランプ3Bにより取り囲まれ、ハイビームランプ2Bがシグナルランプ3Bとランニングランプ3Cによって取り囲まれている。また、サブ光源3A,3B,3Cから異なる色の光を発生できるように、3枚の面状発光体14の発光層15がそれぞれ異なる成分の有機材料で形成されている。ただし、図示例に限定されず、面状発光体14を部分的に設けたり、同一色を発するように形成したりすることも可能である。
【0017】
上記構成の車両用前照灯1によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)サブ光源3に面状発光体14を用いたので、メイン光源2のリフレクタ10や投射レンズ12に妨げられることなく、光源ベース18の空領域を有効に利用して、3つのランプ3A,3B,3Cをコンパクトな形態で設置できる。
(b)面状発光体14をメイン光源2の光路19から脇へ逸れた領域に設置したので、メイン光源2からの光がサブ光源3によって遮られる不都合がなく、サブ光源3からの光がメイン光源2によって遮られるおそれもない。
【0018】
(c)面状発光体14がメイン光源2を取り囲むように形成されているので、灯室4内のほぼ全域を発光面とすることができ、サブ光源3の点灯時に、前照灯1に斬新な光輝意匠を創作できる。
(d)サブ光源3の種類に合わせて面状発光体14の発光色を相違させることで、前照灯1の機能性を高めることができる。
(e)面状発光体14に有機ELを用いたので、前照灯1に薄く高輝度のサブ光源3を装備できる。
【0019】
本発明は、前照灯1に限定されるものではなく、自動車の各部に装備される各種車両用灯具に適用することもできる。図4に示すリアコンビネーションランプ21では、光源ベース8上の異なる位置に3つのメイン光源22と同数のサブ光源23とが設置されている。メイン光源22はテール/ストップランプ22A、バックランプ22B、ターンシグナルランプ22Cとして用いられ、サブ光源23が各ランプ22A,22B,22Cを取り囲むように形成されている。そして、サブ光源23に面状発光体14が用いられ、メイン光源22の光路19から脇へ逸れた領域で拡散光を発生するようになっている。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用前照灯
2 メイン光源
3 サブ光源
4 灯室
5 ハウジング
6 透光カバー
8 光源ベース
14 面状発光体
19 メイン光源の光路
21 リアコンビネーションランプ
22 メイン光源
23 サブ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと透光カバーとの間の灯室内にメイン光源とサブ光源を備えた車両用灯具において、サブ光源が面状発光体を含み、面状発光体がメイン光源の光路から脇へ逸れた領域に設置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記メイン光源とサブ光源が共通の光源ベースの異なる領域に設置されている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記面状発光体がメイン光源を取り囲むように形成されている請求項1又は2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記サブ光源が異なる色の光を発する複数の面状発光体を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記面状発光体に有機ELを用いた請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−150888(P2011−150888A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11056(P2010−11056)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】