説明

サブ波長の形状サイズを有する結合フォトニック・マイクロデバイス

【課題】サブ波長(たとえばナノメートルスケール)の半径変動を有する光ファイバを利用して結合共振空洞を作製するマイクロデバイスを提供する。
【解決手段】複雑な結合フォトニック・マイクロデバイスが、共振空洞を作製するのに十分なサブ波長サイズの放射状の摂動を含むように形成され、これらのデバイスが、単一光ファイバ10の長さ方向に沿って形成され、互いに結合されて相対的に複雑なフォトニック・デバイスを形成する。これら局所的な半径変動12の配置および分離を注意深く選択することにより、またマイクロファイバ14(または他の適切な構成)を使用して、デバイス・ファイバ10との間で光信号Oを結合することにより、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)の形での共振がデバイス・ファイバ10内に生成され、その結果、複数の結合された微細構造(たとえば、リング共振器など)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年2月22日出願の米国特許仮出願第61/445,524号の利益を主張し、これを参考として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、結合フォトニック・マイクロデバイスから形成された共振器などの装置に関し、より詳細には、サブ波長(たとえばナノメートルスケール)の半径変動を有する光ファイバを利用して結合共振空洞を作製するマイクロデバイスの形成に関する。
【背景技術】
【0003】
当技術分野で知られている小型共振フォトニック・デバイスは、結合された高Q値の空洞、たとえばリング水晶共振子またはフォトニック水晶共振子から作製される。共振は、円形構造体の周辺の回りを光信号が進み、ほぼかすめるような入射角で内部反射を繰り返すときに、円形構造体の中で生成されるウィスパリングギャラリーモード(WGM)を循環させる結果である。これらの構造体では光の漏れを非常に小さくすることができ、固有のQ値(Q値)が高くなる。Q値は一般に、共振器(または任意のタイプの発振装置)に蓄えられるエネルギーに対するエネルギー損失の測定値として定義され、共振の中心周波数をその帯域幅で割った値で特徴付けられる。したがって、好ましい「高いQ」共振器は、相対的に狭く急峻なピークを有する共振特性に関連している。
【0004】
これらの小型共振フォトニック・デバイスを製造して、従来の平面フォトニック共振微細構造体と同様に、互いに結合することができ、より複雑な機能(たとえばフィルタ、分散補償装置、遅延線などの構造体)を実行することのできる、より複雑な構造体にしてもよい。
【0005】
従来の共振器構造体は、伝搬する光信号のおよそ波長程度以上のサイズの形状を生成することによって形成される。たとえば、既知のリングまたはトロイドまたは球は通常、寸法が数十ミクロンである。このような構造体は普通、リソグラフィ技法(たとえば、シリコン材料をエッチングして特徴パターンを生成すること)を使用して生成されるが、結果として、表面粗さが望ましくない。リソグラフィに関連する粗さにより、伝搬する光信号の散乱が生じ、デバイスのQ値が低下する。さらに、従来の製造プロセスが不正確であることにより、複数のデバイスを互いに結合してより複雑な構造体を形成することができる精度に限界がある。さらに小さい寸法(すなわち、サブ波長)の共振器構造体を生成することが有用になるはずであり、性能に関して一定の利点を提供するが、このようなより小さい寸法により、製造する際にさらなる困難が生じる。したがって、サブミクロンの製造において求められる確度を達成することは困難であり、光デバイスに求められる確度の再現可能な結果を達成するのに必要な技法はまだ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】出願番号第PCT/US2011/51879号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の問題に対して1つまたは複数の解決策を提供し、共振空洞を生成するのに十分なサブ波長サイズの放射状の摂動を含むように形成される微細構造を備える複雑な結合フォトニック・マイクロデバイスの開発に関し、この微細構造は、互いに結合し、相対的に複雑なフォトニック・マイクロデバイスを形成するように配置してもよい。
【0008】
好ましい一実施形態では、共振微細構造のうちのいくつかが、光ファイバの長手方向に沿って形成され、このファイバは、ファイバ(以下に「デバイス・ファイバ」と呼ぶ)の長さ方向に沿ったいくつかの位置でWGMをサポートするために使用される、半径におけるサブ波長(たとえば、ナノメートルスケール)の変動を含むように構成される。これらの局所的な半径変動の配置および分離を注意深く選択することにより、またマイクロファイバ(または他の適切な構成)を使用して、デバイス・ファイバとの間で光信号を結合することにより、複数の結合された微細構造(たとえば、リング共振器など)を形成してもよい。
【0009】
半径における変動を使用して、長さに応じて半径が単調に減少する「テーパー付き」領域を形成してもよく、またはマイクロファイバの長さ方向に沿って特定の位置まで半径が増加し、この位置を超えると半径が減少する「ボトル」領域を形成してもよい。半径における実際の物理的な修正を使用してもよいが、屈折率の局所的な変化をもたらすこと(たとえば、ドーパントを加え、もしくは取り除くこと)、またはファイバの局所的なひずみ状態もしくは温度を変化させることにより、光ファイバの「有効半径」におけるサブ波長の変化を実現することも可能である。有効半径での変化は、時間に応じて変化してもよく(たとえば、第1の期間にひずみを加え、第2の期間にひずみを取り除く)、あるタイプの光スイッチング・デバイスを生成する。両方のタイプの変動(物理変動および有効変動)の組合せも使用してよい。
【0010】
実施形態によっては、複数のマイクロファイバ(すなわち、直径がおよそ1ミクロン以下のファイバ)を使用して、デバイス・ファイバの長さ方向に沿った複数の異なる位置でWGMを励起してもよい(すなわち、デバイス・ファイバの長さ方向に沿って形成された複数の微細構造に複数のマイクロファイバを関連付ける)。
【0011】
他の実施形態では、「励起」マイクロファイバを平面導波路で置き換えて、光入力信号をデバイス・ファイバに供給し、同様に、伝搬する光信号の一部分をデバイス・ファイバに結合させ、WGMを励起して、デバイス・ファイバの特定の領域内で循環させることができる。また、自由空間の光入力信号を使用してもよい。他の実施形態では、マイクロファイバ、平面導波路、自由空間光信号、または一般に、デバイス・ファイバ(以下に時々「光導波装置」と呼び、自由空間信号を利用することを含むものとする)に光信号を導くための任意の適切な装置の組合せを使用することが示してある。
【0012】
入力信号導波装置(マイクロファイバ、平面導波路、自由空間光源など)は、デバイス・ファイバへの光信号のエバネッセント結合を可能にするために、デバイス・ファイバの十分近くに配置する必要がある。一実施形態では、入力信号導波装置は、(すべての場合に物理的な接触が必要なわけではないが)デバイス・ファイバと物理的に接触するよう配置してもよい。入力光導波装置のデバイス・ファイバへの相対的な配向が、この2つの要素間で実現される結合度合いの要因でもあり、入力光信号の伝搬方向がデバイス・ファイバの光軸に垂直に配置されるときに、最適な結合が実現する。
【0013】
具体的な一実施形態では、本発明は、内部でのウィスパリングギャラリーモード(WMG)の伝搬をサポートするための複数のマイクロキャビティを形成するのに十分な有効半径におけるサブ波長変動を示す複数の領域を含む光ファイバを備えるフォトニック・デバイスを定義し、これらの領域は、光ファイバの長さ方向に沿って間隔を空けた構成で形成され、このデバイスは、所定の波長での入力光信号の伝搬をサポートするための少なくとも1つの光信号導波装置を有し、この少なくとも1つの光導波装置は、入力光信号の光ファイバへのエバネッセント結合を生成し、光ファイバの中に形成される少なくとも1つのマイクロキャビティ内でWGMを励起するように光ファイバに配置される。
【0014】
したがって、これら実施形態の様々な組合せにより、デバイス・ファイバでのサブ波長(たとえば、ナノメートルスケール)の変動を生成することに基づいて、多数の異なる複雑な構造体の生成が可能になる。
【0015】
実際には、本発明のさらなる他の変形形態および態様は、以下の議論の過程で、また添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0016】
次に各図面を参照すると、いくつかの図において同様の番号は同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】閉じ込められた領域内でのウィスパリングギャラリーモード(WGM)をサポートするために使用されるファイバの半径におけるサブ波長スケールの変動を示す、本発明の例示的な構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、光ファイバの半径がサブ波長スケールで増大し、続いて低減する「ボトル」領域を利用する、本発明の一実施形態を示す図である。図2(b)は、図2(a)の実施形態での場の振幅をプロットした図である。
【図3】図3(a)乃至(d)は、テーパー付きのデバイス・ファイバに沿った入力マイクロファイバの様々な位置での、共振場の振幅の表面をプロットした図であり、図3(e)は、3つの異なる状態(n=0、1、2)における暗状態の空間分布を示す図であり、図3(f)は、入力マイクロファイバの1つの例示的な位置における伝送をプロットしたグラフであり、図3(g)は、長さに応じた、デバイス光ファイバの半径変動をプロットした図である。
【図4】本発明に従って形成される微小共振器の形の結合微細構造の例示的な構成を示す図である。
【図5】例示的なリング微細構造を示す図であり、図5(a)は、本発明の結合マイクロキャビティを含むデバイス・ファイバから形成されるリング微細構造を示す図であり、図5(b)は、従来技術の平面リング微細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
フォトニクスでは、共振構造体の「暗状態」は、導波路への結合が禁止されているか、または通常の(明るい)状態よりもはるかに小さい状態として定義される。暗状態は、もともとは光と原子の相互作用において探究されており、電磁誘導透過の効果を生じることで知られている。暗状態の理解および利用は、光の低減、停止および格納、高精度分光法、センシング、原子時計、計測などに対して基本的に重要である。最近では、フォトニック、プラズモン、およびメタ材料のナノ構造に暗状態を適用することに関心が集まっている。
【0019】
本発明のために、結合高Q値マイクロキャビティ(たとえば、リング共振器、フォトニック結晶共振器)から生成されるフォトニック・デバイスに対して暗状態の属性が調査される。これらのデバイスの許容可能な性能は、サブナノスケールの製作確度を必要とし、これらのデバイスを形成するのに使用される製作方法および材料における不完全性に著しく影響される。
【0020】
明確な暗状態は、しっかり閉じたWGMの形での横方向のマイクロファイバに結合された光ファイバに存在することが分かってきたが、これは、2011年9月16日出願の同時係属の国際出願第PCT/US2011/51879号で詳細に論じ、参考として本明細書に援用する。暗状態の出現は、ファイバの相対的に単純な(すなわち、線形または2次の)ナノメートルスケールの半径変動によって確実になる。このような小さな変動は、光ファイバ内に自然に存在するか、または製造後のプロセスにおいて制御された方法でもたらすことができる。以下で詳細に述べるように、ナノメートルスケールのフォトニック・デバイスにおける暗状態の存在を利用することができると、光を検知し、切り替え、減速するためにファイバ・ベースのデバイスを使用する機会が生まれる。シリカでできているので、これらのデバイスは、同程度のリソグラフィで製造される共振器デバイスよりもはるかに小さな損失を示すが、単一光ファイバ(「デバイス・ファイバ」)内に集積することができるという利点も提供する。
【0021】
図1には、光ファイバのテーパー付きの部分においてWGMを生成するのに利用される例示的な構成が示してあり、前述の我々の同時係属出願においてより完全に説明している。図に示すように、光ファイバ10(以下に「デバイス・ファイバ10」と呼ぶ)は、テーパー付き領域12を含むように形成され、このテーパーは、ナノメートルスケールで形成される。すなわち、デバイス・ファイバ10の半径は、長さに応じてナノメートルスケールで低減するように形成される。テーパー付き領域12の例示的な長さlは、一般に、およそ伝搬する光信号に関連する波長程度である(たとえば、1.3または1.5μmの入力信号に対して、テーパー付き領域の長さlは、およそ1ミクロン程度であることが適切である)。
【0022】
光マイクロファイバ14は、入力光信号をデバイス・ファイバ10に供給する。一般に、「マイクロファイバ」は、直径が伝搬波長の約0.1〜10倍程度の光ファイバとして定義され、1.5μmの信号の場合、これは、直径がおよそ0.15〜15μmということになる。エバネッセント結合を生成する任意の適切なタイプの光ファイバを使用して、入力信号をデバイス・ファイバ10に供給してもよく、ただ便宜上、この議論では用語「マイクロファイバ」を使用することを理解されたい。図1を参照すると、光マイクロファイバ14は、デバイス・ファイバ10の十分近くに配置され、その結果、エバネッセント結合が生じ、マイクロファイバ14に沿って伝搬する光信号の少なくとも一部分が、デバイス・ファイバ10に進む。一実施形態では、光マイクロファイバ14は、デバイス・ファイバ10と物理的に接触するように配置して、エバネッセント結合の生成を確実なものにしてもよい。さらに、光マイクロファイバ14は、最大の結合効率を実現するように、デバイス・ファイバ10の光軸(図1のz軸)に対して垂直に配向されることが好ましい。本発明により他の配向を使用し、やはりデバイス・ファイバ10内にWGMを生成してもよいことが明らかである。
【0023】
続いて図1を参照すると、光信号Oをマイクロファイバ14に導くために使用される光源16が示してある。光信号Oがマイクロファイバ14に沿って伝搬するとき、この信号Oの一部分がデバイス・ファイバ10のテーパー付き領域12にエバネッセントに結合し、図1に示すように、デバイス・ファイバ10とマイクロファイバ14の間のオーバラップ部分の近傍内のデバイス・ファイバ10内にWGMを生成する。光信号Oは、マイクロファイバ14に沿って伝搬を続け、最終的に検出器18に結合され、この結合器が、受信信号の特性を測定してデバイス・ファイバ10内の共振の挙動を監視するが、詳細は以下で論じることになる。以下に記述する様々な実施形態は、デバイス・ファイバと相互作用しWGMを励起するためのマイクロファイバの使用を説明するが、デバイス・ファイバ10内でWGMを励起するための光「入力/出力」として、他のタイプの光平面導波路構造体または自由空間光信号(すなわち光導波構成)を使用できることにも留意されたい。
【0024】
以下に論じるデバイス・ファイバ10に沿ったWGMの特性長は、およそΔzが100μm程度である。結果として、この長さに沿ったナノメートルスケールのファイバの半径変動は、およそ1メートル程度の曲率Rのきわめて大きい半径に対応する。図1の構成において、ターニング・ポイントzと、マイクロファイバ14がデバイス・ファイバ10に結合するポイントzとの間に暗状態が完全に閉じ込められるようになることが分かる。
【0025】
図2(a)には、本発明の一実施形態が示してあり、デバイス・ファイバ10は、図1のデバイスで示したテーパー付き領域12の代わりに「ボトル」領域20を含む。図2(a)を参照すると、デバイス・ファイバ10の領域20は、ファイバの半径が単調に増大する第1の部分22と、続いてファイバの半径が単調に低減する第2の部分24を含む。マイクロファイバ14は、前述したのと同様に、ボトル領域20内でWGMを励起するために使用される。この構成では、WGMは、デバイス・ファイバ10に沿って、ターニング・ポイントzt1とzt2の間で閉じ込められ、図2(b)の場の振幅のプロットに示すように、マイクロファイバ14が閉じ込められたWGMのノードに配置される場合に暗状態が生成される。
【0026】
本発明の目的として、デバイス・ファイバ10(具体的には、テーパー付き領域12、22または24)は、以下のように定義される小さくサブ波長スケールの半径変動を有するものと考えられる。

r(z)−r=Δr(z)

ここで、rは名目上の半径であり、zはファイバ軸として定義される。マイクロファイバ14によって励起されたWGMは、以下に定義される波長の近傍で共振する。

λ=λ=2πneff/q

ここで、qは大きい正の整数であり、neffはWGMの実効屈折率である。この分析を目的として、マイクロファイバ14は、位置z=zでのデバイス・ファイバ10の表面で発射されるコヒーレントな光の点光源と考えられ、波長λは共振の近くにある。すなわち、|λ−λ|<<λ/qである。円柱座標では、共振WGMは、U(z,ρ,φ,λ)=exp(iqφ)F(ρ)G(z,z,λ)と定義され、F(ρ)は、デバイス・ファイバ10の標準半径モードの成分であり、G(z,z,λ)は、シュレディンガー方程式のグリーン関数に比例する。

zz+k(z)G=Γδ(z−z

ここで、
【数1】

ここで、k(z)は、伝搬定数の小さいz成分であり、γおよびΓは、それぞれ減衰定数および結合定数である。マイクロファイバ14を通る共振伝送振幅f(λ)は以下のように定義される。

f(λ)=1−G(z,z,λ)
【0027】
図1の実施形態(デバイス・ファイバ10に沿ったテーパー付き領域12)では、Δrがzとともに単調に増大し、マイクロファイバ14がない場合、どんな局在化状態もサポートしない。したがって、この構成についてのシュレディンガー方程式の解は、z≧zで発せられる波であり、ターニング・ポイントz(すなわち、k(z)=0であるポイント)よりも小さいzについては指数関数的に消失する。暗状態の量子化波長、すなわち
【数2】

においては、破壊的な干渉の状態は
【数3】

であることを要する。上記関係から分かるように、これらの波長では、G(.)=0すなわちマイクロファイバ14の位置での共振場の振幅がゼロに等しいので、マイクロファイバ14と暗状態は光学的に分離される。この同じ時刻に、これら同じ波長では、デバイス・ファイバ10の軸zに沿った光の分布が完全に局所化される。
【0028】
上式はまた、任意のΔr(z)に対して共振場および伝送振幅を決定し、Δr(z)がそれぞれ一定で線形の関数であるとき、一様で円錐形の微小共振器の場合を一般化する。これら2つの状況を比較するために、Δr(z)の2次変動を考慮する。すなわち、r(z)=r+z/(2R)である。シュレディンガー方程式の解は、
【数4】

で表される波長の無次元偏差、および
【数5】

で表される距離を介して表すことができる。
【数6】

ここで、
【数7】

【0029】
図3(a)〜(d)には、マイクロファイバのそれぞれ以下の固定された無次元の位置
【数8】

(「2」の値が図3(d)などに関連しており、「8」の値が図3(a)のプロットに関連している)についての平面
【数9】

における共振場
【数10】

の振幅の表面プロットが示してある。図3(a)〜3(d)のそれぞれにおいて、図面の左手部分は、マイクロファイバ14とデバイス・ファイバ10の相対的な位置を示しており(「z」の値が位置を定義する)、図面の右手部分は、共振場の振幅の関連する表面プロットを示している。これらのプロットの興味深い特徴は、同じ波長すなわち
【数11】

においてスペクトルのすべてがカットオフになることである。
【0030】
図3(a)の垂直線は、第1の3つの暗状態
【数12】

を示し、空間振幅分布が図3(e)に示してある。これら暗状態が、デバイス・ファイバ10とマイクロファイバ14の間の接触ポイントにおいて、その光源から離れて局所化していることに留意することは興味深い。マイクロファイバ14の伝送振幅が、
【数13】

の場合について、図3(f)にプロットされている。図3(g)には、(共振特性から計算した通り)領域12に沿ったデバイス・ファイバ10の半径の変動が示してあり、開発された理論から以下の通り、図3(a)〜(d)の表面プロットにおける主ピークの偏移に比例する。デバイス・ファイバ10に沿った半径変動の実験測定に関して、この結果を以下で詳細に論じる。要約すると、rが約50μm、Rが約100m、λが約1.5μmの従来の光ファイバにおいては、共振場の特有のサイズおよびスペクトル幅は、それぞれδzが約100μmであり、δλが約3pmであることを、上式から結論づけることができる。
【0031】
ここで、図2に示した「ボトル」構成を参照すると、半径変動Δr(z)が完全に局所化された状態(「ボトル状態」とも呼ばれる)をサポートすることが分かる。領域20に沿ったデバイス・ファイバ10の半径のもっとも単純な2次変動が以下で定義される。

r(z)=r−z/(2R)

また、共振スペクトルの自由スペクトル範囲(FSR)が以下で定義される。
【数14】

上記に定義した同じパラメータを有する従来の光ファイバでは、図2の構成により、およそ2pm程度のΔλFSRの値が生じる。前述の通り、図2(b)に示すように、マイクロファイバ14の位置(すなわちz)がそのノードと一致する場合、ボトル状態が暗くなる。
【0032】
図4には、本発明に従って形成される微小共振器の形の結合微細構造の例示的な構成が示してある。この具体的な実施形態では、デバイス・ファイバ100が、1対のボトル形状の微小共振器110および112を含むように形成され、各微小共振器が、サブ波長スケールの半径変動を示すように形成され、前述の方法でWGMをサポートすることができる。図4に示した具体的な構成では、第1のマイクロファイバ130−1が、第1の微小共振器110内でWGMを励起するために使用され、位置zにおいてデバイス・ファイバ100に沿った(好ましくは、デバイス・ファイバ100の光軸zに対して実質上直交して(垂直に)配向された)微小共振器110に沿って配置される。同様にして、第2のマイクロファイバ130−2が、位置zにおいて第2の微小共振器112に沿って配置され、この場合、第2の微小共振器112から外部結合したWGMを受けるのに使用される。一般に、マイクロファイバ130−1および130−2を使用して、関連する微小共振器のWGMとの間で光を結合することができる。これら要素のそれぞれのボトル構成を考慮すると、1対のターニング・ポイントがWGMを閉じ込めるように示してあり、ターニング・ポイントzt1およびzt2が第1の微小共振器110に関連しており、ターニング・ポイントzt3およびzt4が第2の微小共振器112に関連している。第1の共振器110のターニング・ポイントzt2と第2の共振器112のターニング・ポイントzt3の間の長さLの分離がやはり図4に示してある。すなわち、この長さLは、共振器110および112それぞれの縁部間の長さを表す。
【0033】
各微小共振器におけるWGMは、上記に定義した場の変動δzの空間長を示す。すなわち以下の通りである。
【数15】

本発明によれば、デバイス・ファイバ100に沿った半径のナノメートルスケールの変動は、およそ数十ミクロン程度のδzについての値になることが分かる。微小共振器110と112の間の結合は、exp(−S)の量に比例し、ここでS=L/δzである(また、Lは上記に定義した微小共振器の「縁部」間の距離である)。
【0034】
たとえば、ほぼ30μmのδzの値に対して、ほぼ100μmの距離Lにより、各モード間での非常に著しい結合が確実になる。より正確には、2つの同一共振器について、共振波長間の分離が以下のように決まる。
【数16】

【0035】
前述の通り、本発明の一態様は、複数の入力/出力光信号経路(マイクロファイバ、平面導波路光源、自由空間信号、またはそれらの任意の組合せであり、まとめて「光導波装置」と呼ぶ)から構成される相対的に複雑なデバイスを作製できることであり、ファイバの長さ方向に沿ったサブ波長スケールの半径変動をもたらすことにより、複数の共振構造を含むように形成される単一のデバイス・ファイバとともに使用される。図5(a)には、このような複雑な構造体の1つが示してあり、この場合、1対のマイクロファイバ200、210とともに、図4に示す微小共振器110および112を利用する。図5(a)に示すマイクロファイバ200および210の位置決めにより、図5(b)に示す従来技術の平面リング微小構造と同様の構成が作製されるが、サブ波長の寸法で作製され、単一の光ファイバ内に集積化される。
【0036】
これらおよび同様のデバイスの性能は、サブナノスケールの設計確度を必要とし、製造法が不完全であることに著しく影響される。シリカから形成される同様のマイクロデバイスを有することが望ましいが、これらマイクロデバイスは、同様のリソグラフィで製造されるフォトニック回路と比較して伝搬損失がはるかに小さく、感度、Q値、遅延時間などに対してはるかに良好な性能を潜在的に示すはずである。近赤外の光波長(約1.3μmや1.5μm一般的な遠隔通信用の波長などの)で動作するマイクロデバイスにとって高純度シリカが適切な材料選択であるが、他の波長に対しては、他の材料選択がより有益になることもある。たとえば、2μmを超える波長では、フッ化物またはカルコゲニドのファイバを使用してもよい。
【0037】
各図面に示したデバイス・ファイバ10および100の実施形態では、ファイバ半径における物理変化を使用して結合微細共振器構造体を作製する様子が示してある。このタイプの物理変化は、従来の光ファイバを局所的に伸長させるか圧縮するかしながら、この光ファイバを加熱することによって形成することができる。局所エッチングなど他の技法を使用して、ファイバ半径における長さに応じた所望のサブ波長の変動をもたらすことができる。
【0038】
本発明の代替実施形態では、ファイバの物理的な半径と局所的な屈折率の値neffの両方によってWGMの特性が制御されるので、一定のファイバ半径を維持しながらneffを変化させることにより(あるいは、両方のパラメータを変化させることが可能である)、本発明による結合共振器微小構造体を作製することが可能である。neffの値を変更することは、ガラスのひずみ状態を変更すること(たとえば、ひずみの下でファイバを引っ張り、次いで局所的に加熱してひずみをアニールし、したがって局所的な屈折率を増大させること)により、組成を変更することにより、または化学線に曝されると屈折率が変化する光屈折効果などのよく知られた方法によって屈折率を変更することにより、実現することができる。後者の場合、少なくともファイバの外部領域を、GeまたはSnなどの適切な材料でドープして、ガラスの光屈折特性に影響を与えてもよい。たとえば、光ファイバの製造中に、構造体にドーパントを加える(または構造体から抽出する)ことができる。これらの変更は、「一度設定したら後はお任せ(set−it−and−forget−it)」の操作で実行することができ、または、ファイバ半径および組成のうちのいずれか1つ(もしくは両方)を変更しながら構造体の挙動を連続して監視することができる。
【0039】
あるいは、デバイス・ファイバの局所領域の周囲温度を変化させることなどにより、ファイバ半径の変化を動的にもたらす(すなわち、時間に応じて変化させる)ことができる。このタイプの動的制御により、光スイッチを作製することが可能になる。
【0040】
実際には、nefにおける永久または可逆性の変化を誘起する任意のメカニズムを使用して、本発明による微小共振器構造体を作製してもよい。
【0041】
一般に、半径の「物理的」な変化および局所的な屈折率の変化は、本発明の目的のためのデバイス・ファイバの「有効半径」に変化をもたらすものとみなされる。有効半径におけるサブ波長のスケール変化は、やはり、光ファイバの物理的な半径と局所的な屈折率の両方を修正することによってもたらされてもよいことを理解されたい。さらに、デバイス・ファイバの半径変動は、単調でもよく、局所的に最小および最大でもよく、またはいくつかの位置で最大および最小でもよい。
【0042】
本発明の具体的な実施形態は、0.01〜100mmの長さにわたって0.1〜100nmの半径変動を有し、半径が約1μmの横方向のマイクロファイバによって励起されるWGM用の光微小共振器として使用される光ファイバを利用してもよい。前述の通り、マイクロファイバは、平面導波路構造または自由空間信号で置き換えることができ、具体的な実施形態では、これらの光導波構成の組合せを使用して、単一デバイス・ファイバに沿って形成される複数の別々の微小共振器構造体に複数の別々の光信号(および/またはデバイス・ファイバからの外部結合光信号)を導いてもよい。
【0043】
本発明の様々な態様の説明を容易にするために、本発明の具体的な例がこれまで詳細に記述されているが、本発明は、それらの例の詳細内容に本発明を限定するものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内にあるすべての修正形態、実施形態および代替形態を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部でのウィスパリングギャラリーモード(WMG)の伝搬をサポートするための複数のマイクロキャビティを形成するのに十分な有効半径におけるサブ波長変動を示す複数の領域を含む光ファイバを備え、前記領域が、前記光ファイバの長さ方向に沿って間隔を空けた構成で形成され、さらに、
所定の波長での入力光信号の伝搬をサポートするための少なくとも1つの光信号導波装置を備え、前記入力光信号の前記光ファイバへのエバネッセント結合を生成し、前記光ファイバの中に形成される少なくとも1つのマイクロキャビティ内でWGMを励起するように前記光ファイバに対して配置される、フォトニック・デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光導波装置が複数の光導波装置を備え、前記複数の光導波装置のうちの各光導波装置が、前記光ファイバ内に形成される前記複数のマイクロキャビティのうちの互いに異なるマイクロキャビティに関連する、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項3】
前記複数の光導波装置が、1対1の関係で前記複数のマイクロキャビティに関連する、請求項2に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光導波装置が、エバネッセント結合を生成する光ファイバを備える、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項5】
前記光ファイバが、前記入力光信号の所定の波長の約0.1〜10倍の直径を有する光マイクロファイバを含む、請求項4に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光導波装置が、平面光導波構造体を備える、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光導波装置が、自由空間光信号を含む、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光導波装置が、前記光ファイバのマイクロキャビティと物理的に接触して配置されて、エバネッセント結合を生成する、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光導波装置が、前記光ファイバの光軸に実質上垂直になるように配向される、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項10】
有効半径における前記サブ波長の変動が、前記光ファイバの物理的な半径におけるサブ波長の変動を含む、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項11】
前記光ファイバ内の少なくとも1つの領域が、前記半径の値が単調に変化するテーパー付き領域を含む、請求項10に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項12】
前記光ファイバ内の少なくとも1つの領域が、前記半径が少なくとも1つの局所的な最大値を有するボトル領域を含む、請求項10に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項13】
有効半径における前記サブ波長の変動が、局所的な実効屈折率の値を修正するような前記光ファイバの組成における変動を含む、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項14】
有効半径における前記サブ波長の変動が、局所的な実効屈折率の値を修正するような前記光ファイバに沿った局所的なひずみ値における変動を含む、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項15】
有効半径における前記サブ波長の変動が、化学線に曝すことによって生成される局所的な実効屈折率における変動を含む、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項16】
動的なフォトニック・デバイスが形成され、有効半径における前記サブ波長の変動が時間に応じて変化する、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項17】
前記動的なフォトニック・デバイスが、時間に応じて前記光ファイバのマイクロキャビティに加えられるひずみを変化させることによって作製される、請求項16に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項18】
前記動的なフォトニック・デバイスが、時間に応じて前記光ファイバのマイクロキャビティの周辺温度を変化させることによって作製される、請求項16に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項19】
前記入力光信号がおよそ1.5μm程度の波長を含み、前記光ファイバに沿った複数の領域内の有効半径における前記サブ波長の変動がおよそナノメートルスケール程度である、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。
【請求項20】
前記複数のマイクロキャビティのうちの1対の隣接するマイクロキャビティが、前記光ファイバに沿った所定の距離Lによって分離され、これらの隣接したマイクロキャビティにおけるWGM間の結合がexp(−S)に比例し、ここで、S=L/δzであり、δz
【数1】

で定義される場の変動の局所的な空間長であり、neffが前記局所的な実効屈折率として定義され、λが共振波長であり、rが前記光ファイバの名目上の半径であり、Rが前記光ファイバの曲率の半径である、請求項1に記載のフォトニック・デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−173743(P2012−173743A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−35853(P2012−35853)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】