説明

サラサラタッチを有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する布帛およびそれからなる繊維製品

【課題】 サラサラ感を有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する、デザイン性を損なわない布帛および繊維製品を提供すること。
【解決手段】 布帛表面に、粒子径1〜100μmであり、吸水性能および/または吸油性能を有する微粒子を付着させたことを特徴とする布帛、または、布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子と吸水性能および/または吸油性能を有する物質とを付着させたことを特徴とする布帛、または、吸水性能および/または吸油性能を有する布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子を付着させたことを特徴とする布帛およびそれらからなる繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラサラ感を有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する布帛に関し、特に、シャツ地やふとんカバー地等に好適に用いられる布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維素材への後加工において、樹脂等を用いてドライタッチにする加工は以前よりあり、各薬剤メーカーから市販されている。また、織布工程において表面を凹凸に織り上げたものや、特殊な糸を用いて織り上げたもの(例えば、特許文献1参照)で、サラサラ感を出すものもあった。
【0003】
しかしながら、樹脂加工品では、風合いが硬くなりすぎ、また、吸水性能や吸油性能を同時に発揮することが困難である。
また、織布工程において表面を凹凸に織り上げたものや特殊な糸を用いたものは、生地が限定されているので、用途やデザインが限られたものとなる。
【0004】
例えば、人が着用する衣類のうち、特にシャツ地は、背中部分と接触する面積が大きく、吸水性能や吸油性能が十分でないと、汗や皮脂が皮膚に溜まり、にきびができやすい等の不愉快な現象が生じる。
【0005】
一方、ベビーパウダー等のようなサラッとした感覚は、爽快な感覚を与える。
しかし、繊維製品のうち、一般衣料用途においては、洗濯耐久性が求められる。更に、ファッションの多様化が望まれる現代においては、いかなる布帛においても付与できる加工方法の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−336067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これら問題点を解決するものであって、その目的は、ファッションの多様化のニーズに十分に応え得る、サラサラタッチを有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する布帛を提供することにある。
また、本発明の目的は、サラサラタッチを有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、布帛表面に、粒子径1〜100μmであり、吸水性能および/または吸油性能を有する微粒子を付着させたことを特徴とする布帛によって達成される。
また、本発明の目的は、布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子と吸水性能および/または吸油性能を有する物質とを付着させたことを特徴とする布帛によって達成される。
また、本発明の目的は、吸水性能および/または吸油性能を有する布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子を付着させたことを特徴とする布帛によって達成される。
また、本発明の目的は、請求項1乃至3いずれかに記載の布帛からなる繊維製品によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、デザイン性を損なわない、サラサラタッチを有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する布帛を提供することができる。
また、これらについての洗濯耐久性を兼ね備えた布帛を提供することができる。
【0010】
また、本発明の布帛を用いることにより、ファッションの多様化のニーズに十分応え得る、サラサラタッチを有し、かつ吸水性能およびまたは吸油性能を有する繊維製品を得ることができる。よって、T−シャツ、Y−シャツ等の肌に直接触れる衣類やシーツ、布団カバー等の寝具類の繊維製品として使用したとき、汗等によるべたつきを感じることなく、爽快感を持続して得ることができる。また、洗濯等により、サラサラタッチ、吸水性能や吸油性能の低下がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の布帛としては、
1)布帛表面に、粒子径1〜100μmであり、吸水性能および/または吸油性能を有する微粒子を付着させたことを特徴とする布帛、
2)布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子と吸水性能および/または吸油性能を有する物質とを付着させたことを特徴とする布帛、
3)吸水性能および/または吸油性能を有する布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子を付着させたことを特徴とする布帛がある。
また、これらを適宜組合わせた布帛としてもよい。
【0012】
まず、本発明においては、粒子径が1〜100μmの微粒子を用いるものであり、好ましくは5〜50μmの微粒子である。
粒子径が1〜100μmであれば、微粒子が肉眼では見え無い為、布帛のファッション性を損なわないが、触感で微粒子のサラサラ感を容易に感じ取れる。また、大部分の繊維径よりも小さい為に繊維1本1本の間に微粒子が入り込み、微粒子が繊維に接触する面積が大きくなり、布帛への微粒子付着、更に洗濯等に対する耐久性に優れる。
また、微粒子の形状は、球状が好ましいが、球状以外のものでもよい。
【0013】
このような微粒子としては、シリコン等の無機系微粒子、鶏の卵殻や牡蠣殻を原料とした炭酸カルシウム等の天然物無機系微粒子、デンプン、糖類、小麦粉、シルクフィブロイン、セリシン等の天然物有機系微粒子を使用することができるが、これらに限定されるものでなく、その形態は、天然、非天然、無機質、有機物であるかを問わない。
【0014】
また、本発明に用いる微粒子は、吸水性能および/または吸油性能を有することが望ましい。
吸水性能を有する微粒子としては、デンプン、小麦粉、セリシン、フィブロイン等が挙げられ、吸油性能を有する微粒子としては、シリコン等が挙げられる。また、吸水性能および/または吸油性能を有する多孔質形状等のポリマー等を用いても良い。
【0015】
中でも、シリコン微粒子は、吸油性能を兼ね備え、触感がサラサラとしている為、好ましい。
また、デンプンは、安全性、処理液作成が容易である点からも好適である。
【0016】
本発明において、上記微粒子のうち、吸水性能もしくは吸油性能に乏しい微粒子を用いる場合には、上記微粒子に加え、吸水性能および/または吸油性能を有する成分を併用する。吸水性能を有する成分としては、リン脂質等が挙げられ、吸水性能および吸油性能を有する成分としては、天然ベントナイト等が挙げられる。
また、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の微粒子を固定する性能を有するものを併用すると好適である。
【0017】
本発明の布帛は、織物、編物、不織布、いずれの形態でもよい。
また、用いられる繊維は、綿、絹、羊毛等の天然繊維、または合成繊維等が挙げられ、単一繊維で構成される布帛の他、これらの糸が交織編されてなる織編物、これら繊維の混繊糸や引き揃え糸からなる織編物、これらの繊維が混綿されてなる不織布等が使用できる。
素材として、吸水性能を有する綿素材を使用することが好ましい。
中でも、綿の混合率が高い方が、綿素材自身が持つ高い吸水性能が得られる。
【0018】
上記微粒子と吸水性能および/または吸油性能を有する成分の布帛への付着方法は、パディング法、浸漬法、コーティング法、プリント法、噴霧法等が挙げられ、好ましくはパディング法である。
【0019】
微粒子の布帛への好ましい付着量は、課題を解決する範囲内であればよく、具体的には、微粒子0.5〜50%owsの水溶液を用いて、前述の方法で布帛に付与することが好ましく、操業性および生産性を損なわない濃度が好ましい。
【0020】
また、微粒子付与を視覚的に確認することが、品質管理の点で好ましい。具体的には、走査型電子顕微鏡で布帛表面を拡大し、確認する方法、もしくは、微粒子に特異的に反応する指示薬を布帛表面に滴下し、色変化を視覚的に確認する方法等がある。
【0021】
しかし、本発明の布帛の表面は、微粒子付与前の布帛と肉眼で見た目には一切変わらない。
【0022】
本発明の布帛において、吸水性は、30秒以内、吸油性は、通常仕上加工布帛に比べ、吸油時間が2割以上短い時間であることが好適である。
【0023】
以上に述べた微粒子を付着させた布帛を、通常行われている方法にて種々の繊維製品とする。このような繊維製品としては、シャツ類、布団カバー、シーツ等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
処理液を綿織物にパディング後、2〜4kg/cm2で絞り、120〜130℃×2〜3分の乾燥を行なった布帛3−11を得た。
処理液とは、デンプン(粒子径1〜30μm)(アミロジェル(三和澱粉工業(株)製))
5%OWS、天然ベントナイト(林化成(株)製)10%OWS、反応性ウレタン(KN−VC(信越化学工業(株)製))2%OWS、イソプロピルアルコール(大伸化学(株)製)2%OWSを加えた水溶液である。
【0026】
[実施例2]
上記処理液として、天然ベントナイトを除いたものを使用し、実施例1と同様の処理を行ない、布帛3−01を得た。
【0027】
[比較例1]
仕上げ剤として、KN5000(日華化学(株)製)2%OWS、SNX9(一方社油脂工業(株
)製)1%OWSを用い、これらを含む処理液を綿織物にパディング後、2〜4kg/cm2で絞り、120〜130℃×2〜3分の乾燥を行なった布帛standardを得た。
【0028】
布帛3−01, 3−11, standardのそれぞれについて、洗剤(アタック(花王(株)製))を用いて、それぞれ10回、20回、30回洗濯を行なった。
【0029】
このようにして得られた布帛を用いて各測定を行なった。
【0030】
[手触り測定]
実施例1と比較例の布帛の触感テストを10名で行ない、5段階(5が最もサラサラした触感である)で10名の評価の平均値にて評価した。
その結果、表1に示すように、実施例1の布帛が比較例の布帛に比べ、洗濯処理後においてもサラサラタッチを有することがわかった。
【0031】
【表1】

【0032】
[KES風合い測定]
KES−FB4 SURFACE TESTER((株)加藤鉄工所製)を用いて、表面摩擦力、接触子移動
距離及び表面粗さの測定を行ない、これらから表面摩擦係数の平均偏差を求めた。
その結果、実施例の布帛、特に実施例1の布帛が比較例の布帛に比べ、洗濯処理後においてもサラサラ効果が持続することがわかった(図1参照)。
【0033】
[微粒子付着・洗濯耐久性確認]
SCANNING ELECTRON MICROSCOPE((株)日立製作所製)を用いて、布帛表面に微粒子が付与されているか確認した。
その結果、実施例の布帛は、洗濯30回後の実施例の布帛においても、微粒子が付着していることが確認できた。
【0034】
[吸水性測定]
JIS L 1907(滴下法)に基づき、布帛(20cm×20cm)上に水50μlを滴下し、水滴が布帛に吸収されるまでの時間測定を行なった。
その結果、実施例の布帛、特に実施例1の布帛が比較例の布帛に比べ、洗濯処理前後において吸水性能が高い事がわかった(図2、3参照)。
【0035】
[吸油性測定]
布帛(20cm×20cm)上に皮脂の成分の一部であるオレイン酸50μlを滴下し、オレイン酸が布帛に吸収されるまでの時間測定を行なった。
その結果、実施例の布帛が比較例の布帛に比べ、洗濯処理前後においてオレイン酸吸収性能が高い事がわかった(図4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、サラサラ感を有し、かつ吸水性能および/または吸油性能を有する、デザイン性を損なわない布帛を提供することができ、特に、シャツ地やふとんカバー地等の繊維製品として好適なものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例および比較例の「摩擦係数偏差」を示すグラフ。
【図2】実施例および比較例の「吸水性」を示すグラフ。
【図3】図2のグラフのスケールを拡大したグラフ。
【図4】実施例および比較例の「吸油性」を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛表面に、粒子径1〜100μmであり、吸水性能および/または吸油性能を有する微粒子を付着させたことを特徴とする布帛。
【請求項2】
布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子と吸水性能および/または吸油性能を有する物質とを付着させたことを特徴とする布帛。
【請求項3】
吸水性能および/または吸油性能を有する布帛表面に、粒子径1〜100μmである微粒子を付着させたことを特徴とする布帛。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の布帛からなる繊維製品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−299435(P2006−299435A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119294(P2005−119294)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】