説明

サラシア属植物の粉末組成物

【課題】サラシア属植物の幹や葉の部位の違いによる多様な活性、抽出溶媒の違いによる多様な活性を広く利用し、さらに、抽出エキスを得た後の抽出残渣の食物繊維も利用し、しかも、活性の高い抽出成分を効率よく吸収することができるサラシア属植物の粉末組成物を提供すること。
【解決手段】サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分と、その抽出残渣の両者を混合し、粉末化して得たことを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物であり、具体的には、サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分が、粉末化されたものであること、更にはサラシア属植物の抽出残渣が、粉末化されたものであることを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物であり、カプセル化、粒状化、顆粒化又は錠剤化されたサラシア属植物の粉末組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の薬効を発揮するサラシア属植物について、その有効成分を効果的に含有する粉末組成物に関する
【背景技術】
【0002】
デチンムル科(Hippocrateaceae)のサラシア(Salacia)属植物は、スリランカ、インド、タイ、インドネシア、マレーシアなどの熱帯地方に広く分布しており、世界に約120種のサラシア属植物が知られている。
例えばスリランカにおいては、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)及びサラシア プリノイデス(S. prinoides)の2種のサラシア属植物が存在している。なお、サラシア プリノイデス(S. prinoides)は、サラシア チネンシス(S. chinensis)とも称されている。
【0003】
また、インドには10種類ものサラシア属植物の存在が知られているが、特に、サラシア プリノイデス、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)の他、主にインド南西部に生育するサラシア オブロンガ(S. oblonga)には優れた薬効があることが知られている。
更に、タイには、サラシア チネンシス(S. chinensis)が広く分布している。
【0004】
これらサラシア属植物の薬効は古くから知られており、スリランカの薬用植物書には、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の根皮をリュウマチや淋病および皮膚病の治療に用いるほか、糖尿病の初期の治療においてもしばしば用いることが記載されている。また、サラシア プリノイデス(S. prinoides)の根を煎じたものは、無月経や月経困難の治療、堕胎薬として効果があると言われている。
【0005】
インドのアーユル・ヴェーダ医学では、サラシア チネンシス(S. chinensis)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)の根を煎じた液を糖尿病の治療に用いると共に、無月経・月経困難・性病の治療にも用いられている。また、サラシア オブロンガ(S. oblonga)の根を煎じた液やその粉末物、及び胡麻油での抽出物は、リュウマチ、淋病、掻痒、喘息、耳の病気の治療に用いられる。タイでも、サラシア チネンシス(S. chinensis)を煎じて得た液は、緩下、筋肉痛、糖尿病等の改善に用いられるほか、駆風や強壮効果があると伝承されている。
【0006】
これらの永年の伝承をもとに、サラシア属植物の抽出試料を対象にして多くの機能研究が行われ、多くの活性成分が葉、幹、根などの様々な部位の抽出試料に含まれていることが明らかになった。
例えば、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の根及び幹の水抽出エキスについて、血糖上昇抑制作用及びその活性成分が報告されている(非特許文献1及び2)。さらに、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の根および幹の水抽出エキスに体重増加の抑制作用、内臓脂肪量抑制作用、血清中性脂質減少作用、膵リパーゼおよびリポプロテインリパーゼ阻害作用とその活性成分が報告されている(非特許文献3〜7)。
【0007】
また、インド産のサラシア オブロンガ(S. oblonga)とタイ産のサラシア チネンシス(S. chinensis)の根や幹の抽出エキスについて、糖尿病合併症と関わりのあるアルドース還元酵素素に対する阻害活性と、その活性成分が明らかにされている(非特許文献8〜11)。
また、サラシア属植物は、通常は根や幹部が薬用とされてきたが、インドの薬物書には葉部の煎じ液も糖尿病の治療に用いられていると記載されている。
サラシア レティキュラータ(S. reticulata)及びサラシア レティキュラータ(S. reticulata)の葉部分の水及びアルコール抽出エキスには、血糖値抑制効果およびアルドース還元酵素阻害活性が認められている(非特許文献12)。
【0008】
【特許文献1】特開2007−031345号公報
【非特許文献1】Yoshikawa M., Murakami T., Shimada H., Matsuda H., Yamahara J., Tanabe G., Muraoka O.: Tetrahedron Lett., 38, 8367-8370 (1997)
【非特許文献2】Yoshikawa M., Murakami T., Yashiro K., Matsuda H.: Chem. Pharm. Bull., 46, 1339-1340 (1998)
【非特許文献3】Yoshikawa M., Nishida N., Shimoda H., Takada M., Kawahara Y., Matsuda H.: Yakugaku Zasshi, 121, 371-378 (2001)
【非特許文献4】Matsuoka O., Ying S., Yoshikai K., Matsuura Y., Yamada E., Minematsu T., Tanabe G., Matsuda H., Yoshikawa M.: Chem. Pharm. Bull., 49, 1503-1505 (2001)
【非特許文献5】Yoshikawa M., Ninomiya K., Shimoda H., Nishida N., Matsuda H.: Biol. Pharm. Bull. 25, 72-76 (2002)
【非特許文献6】Yoshikawa M., Morikawa T., Matsuda H., Tanabe G., Muraoka O.: Bioorg. Med. Chem.: 10, 1547-1554 (2002)
【非特許文献7】Yoshikawa M., Shimoda H., Nishida N., Takada M. Matsuda H.: J. Nutr. 132, 1819-1824 (2002)
【0009】
【非特許文献8】Matsuda H., Murakami T., Yashiro K., Yoshikawa M.: Chem. Pharm. Bull. 47, 1725-1729 (1999)
【非特許文献9】Kishi A., Morikawa T., Matsuda H., Yoshikawa M.: Chem. Pharm. Bull., 51, 1051-1055 (2003)
【非特許文献10】Morikawa T., Kishi A., Pongpiriyadacha Y., Matsuda H., Yshikawa M.: J. Nat. Prod., 66, 1191-1196 (2003)
【非特許文献11】Yoshikawa M., Pongpiriyadacha Y.、Kishi A., Kageura T., Wang T., Matsuda H.: Yakugaku Zasshi, 123, 871-880 (2003)
【非特許文献12】古賀、金高、芳野:第一回サラシア属植物シンポジウム講演要旨集、50-56 (2008)
【0010】
このように、サラシア属植物の根、幹、葉それぞれの部位の抽出エキスには様々な活性が認められている。
例えば、根や幹には強いα−グルコシダーゼ阻害活性が見られており、葉は、幹や根に比べれば弱いことが明らかにされている。
しかしながら、脂質代謝に関係するリパーゼ阻害活性は、葉に強い活性が認められ、幹は葉に比べれば弱い。
【0011】
一方、糖尿病の合併症と関わりの強いアルドース還元酵素阻害活性は、葉も幹も同程度の強さであるとされている。また、同じ部位であっても、水溶性の活性成分や脂溶性の活性成分では異なった活性を示すことが知られている。
例えば、サラシア レティキュラータ(S. reticulata)の幹には、強いα−グルコシダーゼ阻害を持つ水溶性成分のコタラノール、サラシノールがあると同時に、脂溶性成分のトリテルペンも存在する。
【0012】
このように、サラシア属植物にあっては、其々の部位の様々な溶媒による抽出エキスに多様な活性が認められている。また、抽出エキスを得た後の抽出残渣には、整腸作用に関与する食物繊維を中心とした成分が含まれている。
ところで、サラシア属植物にあっては、その溶媒抽出エキス成分に強い整腸作用があることは、すでに知られている(特許文献1)が、さらに抽出エキスを取得した後の抽出残渣の食物繊維を併用すれば、さらにその作用に寄与するものと考えられる。
事実、サラシア属植物について、予め溶媒抽出操作を行わずに、まるごと各部位を粉砕摂取したとしても、摂取後において有効成分の薬効発現効率が悪く、食物繊維の併用効果は発揮されない。
【0013】
すなわち、様々な特性を持つサラシア属植物は、植物全体を食することが、最も効果的であろうと考えられる。特に、食品としてなじみ深い、幹と葉については、抽出することなく、その全体をあわせて食することが望ましい。しかしながら、摂食したのち、それぞれの部位に含まれる多様な有効成分が同じように効率よく、吸収されるとは考えられない。そのため、根や葉など、それぞれの部位を限定し、抽出条件も限定し、特定の活性成分を含む抽出エキスを調製し、摂食していた。しかし、これでは抽出エキスを得た後の植物繊維を豊富に含む抽出残渣を摂取することはできないという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、上記のサラシア属植物の幹や葉の部位の違いによる多様な活性、抽出溶媒の違いによる多様な活性を広く利用し、さらに、抽出エキスを得た後の抽出残渣の食物繊維も利用し、しかも、活性の高い抽出成分を効率よく吸収することができるサラシア属植物の粉末組成物を提供することを課題とする。
【0015】
かかる課題を解決するべく本発明者等は鋭意検討を加え、サラシア属植物の溶媒抽出成分と、その溶媒抽出後の残渣の両者を混合し、粉末化した組成物としてやれば、サラシア属植物の有する特異的な生理活性効果と、植物繊維の有する特異的効果の両者を広く利用できる組成物になることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、その基本的態様は、サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分と、その抽出残渣の両者を混合し、粉末化して得たことを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物である。
【0017】
具体的には、サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分が、粉末化されたものであること、更にはサラシア属植物の抽出残渣が、粉末化されたものであることを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物である。
【0018】
より具体的には、サラシア属植物が、サラシア属植物の幹及び/又は葉であり、かかるサラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア プリノイデス(S. prinoides)、サラシア チネンシス(S. chinensis)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)及びサラシア オブロンガ(S. oblonga)から選択される1種又は複数種であるサラシア属植物の粉末組成物である。
【0019】
最も具体的には、本発明は上記の粉末組成物がカプセル化、粒状化、顆粒化又は錠剤化されたものであるサラシア属植物の粉末組成物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、サラシア属植物の幹や葉の部位の違いによる多様な活性、抽出溶媒の違いによる多様な活性を広く利用し、さらに、抽出エキスを得た後の抽出残渣の食物繊維も利用し、しかも、活性の高い抽出成分を効率よく吸収することができるサラシア属植物の粉末組成物が提供される。
本発明が提供する粉末組成物により、サラシア属植物体をすべて有効に効率よく摂取することができるものである。
従来にあっては、溶媒抽出後捨てていた植物繊維を豊富に含む抽出残渣も活用することができ、本方法で調製したサラシア属植物の粉末組成物を含有する製品は、総合的に健康に資する点で、極めて特異的なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記するように、本発明はその基本的態様は、サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分と、その抽出残渣の両者を混合し、粉末化して得たことを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物であり、具体的には、サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分が、粉末化されたものであり、またサラシア属植物の抽出残渣が、粉末化されたものであるサラシア属植物の粉末組成物である。
【0022】
その点をより詳細に説明すると、本発明は、サラシア属植物の幹、葉それぞれの部位を原料として、水により抽出した成分、およびその抽出残渣、アルコール溶液により抽出した成分、およびその抽出残渣を得る。
その後、それぞれを乾燥させて得た粉末を混合することによって、幹、葉それぞれの部位の多様な抽出成分を含み、しかも植物繊維を豊富に含む抽出残渣も含んだ、サラシア属植物全体成分を含有する組成物が得ることができる。
【0023】
本発明において使用するサラシア属植物としては、種々のサラシア属植物を挙げることができるが、なかでも、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア プリノイデス(S. prinoides)、サラシア チネンシス(S. chinensis)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)及びサラシア オブロンガ(S. oblonga)等を挙げることができる。
これらのサラシア属植物は1種でもよく、また複数種組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明におけるサラシア属植物の溶媒抽出成分を得る場合に使用する抽出溶媒は水及び/又はアルコール溶媒が好ましく使用される。
この場合、アルコール溶液としては、エタノールもしくはメタノールがよいが、食品であることを考えれば、エタノールが特に好ましい。また、アルコール濃度は1%〜100%までの範囲で適用可能であるが、特に20%〜80%濃度の範囲の水との混合溶媒を使用するのがよい。
【0025】
その溶媒の使用量、抽出温度、抽出時間は特に限定されず、対象とされるサラシア属植物に応じて種々変更することができる。例えば、抽出溶媒量としては、抽出対象となるサラシア属植物の全重量に対して1〜100倍量の溶媒を使用し、抽出温度は室温〜100℃程度、抽出時間は、1〜48時間程度である。
【0026】
抽出対象なるサラシア属植物の部位としては、サラシア属植物の幹及び/又は葉であるが、サラシア属植物の根にも多様な活性成分が含まれていることが知られており、上記の幹および葉由来の粉末組成物に適宜、根の抽出成分あるいは抽出残渣の粉末物を混合することもできる。
【0027】
溶媒抽出成分は、乾燥することにより粉末化して用いるのがよく、乾燥手段としては、減圧加熱乾燥、凍結乾燥などがよい。なお、高熱での乾燥は、成分の加熱による変性、加熱酸化、加熱重合が生じやすいため、回避するのがよい。また、各抽出成分、抽出残渣を混合後、減圧加熱乾燥、凍結乾燥してもよいし、各抽出成分および抽出残渣を減圧加熱乾燥、凍結乾燥した後、混合してもよい。前者は、混合の操作が容易になるが、後者は、成分間の相互作用による活性の低下の心配がない。適宜、メリットとデメリットを考慮して、選択することが可能である。
【0028】
得られた本発明の粉末組成物は、そのまま摂取することも可能であるし、粉末組成物の粒状化製品(顆粒状、細粒状)、カプセル化製品、或いは適宜賦形剤等と共に錠剤化して摂取してもよい。また、得られた粉末組成物を、他の組成物と適宜混合して摂取することも可能である。
【0029】
かくして調製された本発明のサラシア属植物の粉末組成物は、その組成物を摂取することにより、予め抽出されていた抽出成分は効率よく吸収されると同時に、食物繊維を中心とした抽出残渣も難消化成分として効果を発揮することができる。
したがって、多様な部位に多様な有効成分を含むサラシア属植物の特性を効果的に利用できる点で、本発明は極めて特異的なものといえる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の具体的実施例を示すが、本発明はこれ等実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1:
サラシア レティキュラータの幹および葉、サラシア オブロンガの葉を粉末にし、9倍量の水と混合し50℃/4時間の振とう抽出、その抽出残渣に9倍量の60%エタノールを加えて50℃/4時間の振とう抽出、さらに、その抽出残渣に9倍量の99.8%エタノールを加えて50℃/4時間の抽出を行い、その抽出量を測定した。
その結果を表1に示した。それぞれの溶媒による抽出成分が得られた。また、部位の違いによって抽出量が異なっており、幹より葉の抽出量の方が大きかった。また、同じ部位でも、サラシア属植物の種の違いによって抽出特性が異なっていた。
【0032】
表1.各試料の抽出成分量(μg/g試料)
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2:
サラシア レティキュラータの幹および葉粉末物に9倍量の60%エタノール溶液を加えて、50℃/2時間の振とう抽出を行い、抽出エキスとエキス取得後の抽出残渣を得た。それぞれの試料を凍結乾燥して重量測定を行った結果を表2に示す。
葉の抽出成分量は葉の試料の約25%、幹の抽出成分の量は幹の試料の約8%であり、幹よりも葉の方が60%エタノール溶液によって抽出される成分を多く含んでいる。
【0035】
表2.各試料の抽出エキスと抽出残渣の乾燥重量(g/g粉末試料)
【0036】
【表2】

【0037】
実施例3:
実施例2で得られた粉末物の成分組成を表3に示す。
葉、幹それぞれの抽出エキスおよび抽出残渣の組成は異なっている。抽出残渣には、食物繊維は勿論、タンパク・脂質・糖質・灰分も含まれているものであった。
【0038】
表3.各試料の抽出成分と抽出残渣の成分組成
【0039】
【表3】

【0040】
実施例4:
胃を模した実験系での試料の抽出評価を行った。実施例2で得られた葉の60%エタノール抽出粉末物と抽出残渣粉末物を混合した試料(1)と、それに相当する抽出操作を行わない葉の粉末試料(2)をpH2.5の0.01M塩酸バッファー100mL中にそれぞれ1%になるように懸濁して、ゆるやかに攪拌しながら37℃に保持し、30分後の抽出成分量を測定した。
その結果を表4に示した。
抽出操作を加えた試料にあっては、抽出成分が溶け出ていたが、予め抽出操作を加えない試料は、抽出成分の溶出がきわめて悪かった。
【0041】
表4.試料(1)および(2)の懸濁30分後の溶出成分量
【0042】
【表4】

【0043】
実施例5:
実施例2で得られた幹の60%エタノール抽出粉末物と抽出残渣粉末物を混合した試料(3)と、それに相当する抽出操作を行わない幹の粉末試料(4)をpH2.5の0.01M塩酸バッファー100mL中にそれぞれ1%になるように懸濁して、ゆるやかに攪拌しながら37℃に保持し、30分後の抽出成分量を測定した。
その結果を表5に示した。
抽出操作を加えた試料にあっては、抽出成分が溶け出ていたが、予め抽出操作を加えない試料は、抽出成分の溶出がきわめて悪かった。
【0044】
表5.試料(3)および(4)の懸濁30分後の溶出成分量
【0045】
【表5】

【0046】
実施例6:
実施例2で得られた葉0.5gと、幹0.5gそれぞれの60%エタノール抽出エキス粉末物、さらにそれぞれの抽出残渣粉末物を混合した試料(5)と、それに抽出操作を行わない幹の粉末物0.5gと葉の粉末物0.5gを混合した試料(6)をpH2.5の0.01M塩酸バッファー100mL中にそれぞれ懸濁して、ゆるやかに攪拌しながら37℃に保持し、30分後の抽出成分量を測定した。
その結果を表6に示した。
抽出操作を加えた試料にあっては、抽出成分がほぼ溶け出ていたが、予め抽出操作を加えない試料は、抽出成分の溶出がきわめて悪かった。
【0047】
表6.試料(5)および(6)の懸濁30分後の溶出成分量
【0048】
【表6】

【0049】
実施例7:
実施例1で示した方法のサラシア レティキュラータ葉0.5gと幹0.5gそれぞれの水抽出エキス粉末物、60%エタノール抽出エキス粉末物、99.8%エタノール抽出エキス粉末物と抽出残渣粉末物を混合した試料(7)と、それに抽出操作を行わない幹の粉末物0.5gと葉の粉末物0.5gを混合した試料(8)をpH2.5の0.01M塩酸バッファー100mL中にそれぞれ懸濁してゆるやかに攪拌しながら37℃に保持し、30分後の抽出成分量を測定した。
その結果を表7に示した。
抽出操作を加えた試料は、各溶媒の抽出成分がほぼ溶け出ていたが、予め抽出操作を加えない試料は、抽出成分の溶出がきわめて悪かった。
【0050】
表7.試料(7)および(8)の懸濁30分後の溶出成分量
【0051】
【表7】

【0052】
実施例8:
実施例2で得られたサラシア レティキュラータ葉1gの60%エタノール抽出エキスおよび抽出エキス取得後の抽出残渣の各試料を凍結乾燥したのち混合した試料(9)と、それに抽出操作を行わない葉の微粉砕物1gの試料(10)をpH2.5の0.01M塩酸バッファー100mL中にそれぞれを懸濁して、ゆるやかに攪拌しながら37℃に保持し、30分後の溶出してきた抽出成分の組成と不溶性の食物繊維量を測定した。
その結果を表8に示した。
予め抽出操作を行った(9)の試料は食物繊維が共存していても抽出成分がバランスよく溶出しているが、抽出操作を行っていない(10)の試料は、食物繊維は存在しているが、抽出される成分量はきわめて少ないことが明らかになった。
【0053】
表8.試料(9)および(10)の懸濁30分後の各成分量(乾燥物として)
【0054】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0055】
以上記載したように、本発明により多様な部位に多様な性質を持つサラシア属食物の有効成分を効率よく総合的に摂取するためのサラシア属食物の粉末組成物が提供される。
本発明が提供するサラシア属食物の粉末組成物は、サラシア属植物体を有効に効率よく摂取することができるものであり、従来では捨てていた抽出残渣も活用できる。
したがって、本発明により提供されるサラシア属植物の粉末組成物を含有する製品は、総合的に健康に資するものとして役立つものと考えられ、その産業上の貢献度は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分と、その抽出残渣の両者を混合し、粉末化して得たことを特徴とするサラシア属植物の粉末組成物。
【請求項2】
サラシア属植物の水及び/又はアルコールによる抽出成分が、粉末化されたものであることを特徴とする請求項1に記載のサラシア属植物の粉末組成物。
【請求項3】
サラシア属植物の抽出残渣が、粉末化されたものであることを特徴とする請求項1及び2に記載の サラシア属植物の粉末組成物。
【請求項4】
サラシア属植物が、サラシア属植物の幹及び/又は葉であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のサラシア属植物の粉末組成物。
【請求項5】
サラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア プリノイデス(S. prinoides)、サラシア チネンシス(S. chinensis)、サラシア フルチコーサ(S. fruticosa)、サラシア マクロスペルマ(S. macrosperma)及びサラシア オブロンガ(S. oblonga)から選択される1種又は複数種である請求項1〜4のいずれかに記載のサラシア属植物の粉末組成物。
【請求項6】
カプセル化、粒状化、顆粒化又は錠剤化された請求項1〜5のいずれかに記載のサラシア属植物の粉末組成物。

【公開番号】特開2010−95500(P2010−95500A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269898(P2008−269898)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(502365977)株式会社盛光 (10)
【Fターム(参考)】