説明

サルアデノウイルス核酸およびアミノ酸配列、それを含むベクターおよび使用方法

【課題】サルアデノウイルス遺伝子を発現する細胞系、ベクターおよび細胞系の使用方法の提供。
【解決手段】6種のサルアデノウイルスの単離された核酸配列およびアミノ酸配列、これらの配列を含むベクターおよびサルアデノウイルス遺伝子を発現する細胞系。また、ベクターおよびサルアデノウイルス配列およびヘテロロガスな遺伝子を含んでなる組換えベクターを、哺乳動物患者に投与することを含む、細胞の多数の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アデノウイルスは約36キロベース(kb)のゲノムサイズを持つ二本鎖DNAウイルスであり、種々の標的組織で高度に効率的な遺伝子転移を達成するその能力、および大きな導入遺伝子容量により遺伝子転移の応用に広く使用されてきた。従来は、アデノウイルスのE1遺伝子が削除され、そして選択したプロモーター、問題の遺伝子のcDNA配列およびポリAシグナルからなる導入遺伝子カセットに置き換えられ、複製欠損性組換えウイルスが生成された。
【0002】
アデノウイルスは多数の他のマイナータンパク質、VI、VIII、IX、IIIaおよびIVa2と一緒に3つの主要なタンパク質、ヘキソン(II)、ペントン塩基(III)および小塊状繊維(knobbed fiber)(IV)からなるイコサヘドロンキャプシドを持つ特徴的形態を有する[非特許文献1]。このウイルスゲノムは、逆方向末端反復(ITRs)を有する5’末端に共有結合した末端タンパク質を含む直線状の二本鎖DNAである。ウイルスDNAは高度に塩基性のタンパク質VIIおよびmuと名付けられている小さいペプチドに密接に会合している。別のタンパク質、VはこのDNA−タンパク質複合体と共にパッケージングされ、そしてタンパク質VIを介してキャプシドへの構造的連結を提供する。またウイルスは、成熟した感染性ウイルスを生産するために幾つかの構造タンパク質のプロセッシングに必要なウイルスがコードするプロテアーゼも含む。
【0003】
組換えアデノウイルスは宿主細胞へ分子を送達するためにも記載されてきた。例えば2種類のチンパンジーアデノウイルスのゲノムについて記載する特許文献1を参照にされたい。
【0004】
当該技術分野で必要とされているのは、集団中における選択されたアデノウイルス血清型に対する既存の免疫の効果を回避し、かつ/または必要ならば反復投与および2回目のワクチン接種による力価ブースティング(titer boosting)に有用な、より効果的なベクターである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,083,716号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】W.C.Russell,J.Gen.Virol.,81:2573−2604(Nov2000)
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明は、6種のサルアデノウイルスの単離された核酸配列およびアミノ酸配列、これらの配列を含むベクターおよびサルアデノウイルス遺伝子を発現する細胞系を提供する。また本発明のベクターおよび細胞の多数の使用方法も提供する。
【0008】
本発明の方法には1以上の選択されたヘテロロガスな遺伝子(1つまたは複数)を、本発明のベクターを投与することにより哺乳動物患者に送達することが関与する。様々なベクター構築物はヒトのアデノウイルスではなくサルに由来するので、非−サルのヒトまた
は獣医学上の患者の免疫系は、外来抗原としてのベクターに対して即座に応答するよう初回感作されていない。すなわち本発明の組成物の使用により、非−サル患者に投与した時、選択した導入遺伝子のより安定した発現が可能となる。ワクチン接種のために本発明の組成物を使用することにより、防御免疫応答を誘導するための選択した抗原の提示が可能となる。いかなる理論にも拘束されることなく、ヒト樹状細胞を形質導入するための本発明のアデノウイルスの能力は少なくとも部分的には免疫応答を誘導するための本発明の組換え構築物の能力に起因する。本発明の組換えサルアデノウイルスは、インビトロでヘテロロガスな遺伝子産物を生産するためにも使用することができる。そのような遺伝子産物自体が本明細書に記載するような様々な目的に様々に有用である。
【0009】
本発明のこれらのおよび他の態様および利点を以下により詳細に記載する。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、元々はチンパンジーのリンパ節から単離されたAdPan5[配列番号1−4、15および21]、AdPan6[配列番号5−8、16および19]およびAd血清型Pan7[配列番号9−12、17および20]に由来する新規核酸およびアミノ酸配列を提供する。本明細書を通して幾つかの場合では、これらのアデノウイルスは代わりにそれぞれ本明細書中C5、C6およびC7と命名する。また元々はカニクイザルの腎臓細胞から単離されたアデノウイルスSV1[配列番号24−28]に由来する配列も提供する。また本発明は、元々はアカゲザルの腎臓細胞から単離されたアデノウイルスSV−25[配列番号29−33]およびSV−39[配列番号34−37]の配列も提供する。
【0011】
本発明は、組換えタンパク質またはフラグメントまたは他の試薬をインビトロで生産するために使用するための新規アデノウイルスベクターおよびこれらベクターを生産するパッケージング細胞系を提供する。本発明はさらに治療用またはワクチン接種の目的でヘテロロガスな分子の送達に使用するための組成物も提供する。そのような治療用またはワクチン接種組成物は、挿入されたヘテロロガスな分子を運ぶアデノウイルスベクターを含む。さらに本発明の新規配列は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの生産に必要な必須のヘルパー機能を提供するにも有用である。このように本発明はこれら配列をそのような生産法で使用するヘルパー構築物、方法および細胞系を提供する。
【0012】
用語「実質的な相同性」または「実質的な類似性」とは、核酸またはそのフラグメントを指す時、適切なヌクレオチド挿入または欠損が別の核酸(またはその相補鎖)と最適に並べられた時に、並べられた配列の少なくとも約95〜99%にヌクレオチド配列の同一性があることを示す。
【0013】
用語「実質的な相同性」または「実質的な類似性」とは、アミノ酸またはそのフラグメントを指す時、適切なアミノ酸挿入または欠損が別のアミノ酸(またはその相補鎖)と最適に並べられた時に、並べられた配列の少なくとも約95〜99%にアミノ酸配列の同一性があることを示す。好ましくは相同性は完全長の配列、またはそのタンパク質、または少なくとも8個のアミノ酸、またはより望ましくは少なくとも15個のアミノ酸長であるそのフラグメントにわたる。適当なフラグメントの例を本明細書に記載する。
【0014】
本内容において核酸配列の「同一性の割合」または「同一の」という用語は、最大の対応について並べた時、2つの配列中で同じ残基を指す。配列同一性の比較の長さは、完全長のゲノム(例えば約36kbp)、遺伝子の完全長のオープンリーディングフレイム、タンパク質、サブユニットまたは酵素[例えばアデノウイルスコード領域を提供する表を参照にされたい]にわたることができ、あるいは少なくとも約500〜5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしより小さいフラグメント間、例えば少なくとも約
9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20〜24個のヌクレオチド、少なくとも約28〜32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチド間の同一性も望ましくなり得る。同様に「配列同一性の割合」は完全長のタンパク質またはそのフラグメントにわたるアミノ酸配列について容易に決定することができる。適当にはフラグメントは少なくとも約8個のアミノ酸長であり、そして最高700個のアミノ酸であることができる。適当なフラグメントの例を本明細書に記載する。
【0015】
同一性はデフォルト設定で本明細書に定義されるようなアルゴリズムおよびコンピュータープログラムを使用して容易に定められる。好ましくはそのような同一性は完全長のタンパク質、酵素またはサブユニットにわたるか、あるいは少なくとも約8個のアミノ酸長のフラグメントにわたる。しかし同一性はより短い領域に基づいてもよく、ここで同一の遺伝子産物を使用するために適する領域が入力される。
【0016】
本明細書に記載するように、アライメントはインターネットのウェッブサーバーを通してアクセス可能な「Clustal W」のように様々に公開または市販されて利用可能なマルチプルシークエンスアライメントプログラム(Multiple Sequence Alignment Program)を使用して行う。あるいはベクター NTIユーティリティ(Vector NTI utilities)も使用する。ヌクレオチド配列の同一性の測定するために使用することができる、当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムがあり、それらには上記のプログラムに含まれるものを含む。別の例として、ポリヌクレオチド配列はFasta、GCGバージョン6.1のプログラムを使用して比較することができる。Fastaはクエリとサーチ配列との間で最高の重複の領域のアライメントおよび配列同一性の割合を提供する。例えば核酸配列間の配列同一性の割合は、引用により本明細書に編入するGCGバージョン6.1に提供されているように、そのデフォルトパラメーター(6のワードサイズ、およびスコアリングマトリックスについてはNOPAMファクター)を用いてFastaを使用して決定することができる。同様なプログラムがアミノ酸アライメントを行うために利用可能である。一般にこれらのプログラムはデフォルト設定で使用するが、当業者は必要に応じてこれらの設定を変えることができる。あるいは当業者は参照にしたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるように、少なくとも同一性のレベルまたはアライメントを提供する別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用するように、用語「含んでなる(comprise)」および他の変形の中でも「含んでなる(comprises)」、「含んでなる(comprising)」を含むその変形、他の成分、要素、完全体(integers)、工程等を含むことができる。用語「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、他の成分、要素、完全体(integers)、工程等を含まない。
【0018】
I.サルアデノウイルス配列
本発明は、自然に伴う他のウイルス性物質から単離されたPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25およびSV39の核酸配列およびアミノ酸配列を提供する。
【0019】
A.核酸配列
本発明のPan5核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド1〜36462を含む。本発明のPan6核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1〜36604を含む。本発明のPan7核酸配列は、配列番号9のヌクレオチド1〜36535を含む。本発明のSV1核酸配列は、配列番号24のヌクレオチド1〜34264を含む。本発明のSV25核酸配列は、配列番号29のヌクレオチド1〜31044を含む。本発明のSV39核酸配列は、配列番号34のヌクレオチド1〜34115を含む。本明細書に編入する配列表を参照
にされたい。
【0020】
本発明の核酸配列はさらに配列番号5、9、24、29および34の配列に相補的な鎖、ならびにこれらの配列図およびそれらの相補鎖の配列に対応するRNAおよびcDNA配列を包含する。さらに本発明は配列表に対して95〜98%よりも高い、そしてより好ましくは約99〜99.9%よりも高い相同性を有するか、または同一である核酸配列を含む。また本発明の核酸配列に含まれるのは、配列番号5、9、24、29および34に提供される配列およびそれらの相補鎖の自然な変異体および工作された修飾を持つ核酸配列である。そのような修飾には例えば当該技術分野で既知の標識、メチル化および1以上の自然に存在するヌクレオチドの縮重ヌクレオチドとの置換を含む。
【0021】
さらに本発明は、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25およびSV39の配列のフラグメント、それらの相補鎖、それらに相補的なcDNAおよびRNAの配列を包含する。適当なフラグメントは少なくとも15ヌクレオチド長であり、そして機能的フラグメント、すなわち生物学的に興味深いフラグメントを包含する。例えば機能的フラグメントは所望するアデノウイルス産物を発現することができるか、または組換えウイルスベクターの生産に有用となり得る。そのようなフラグメントには以下の表に掲げる遺伝子配列およびフラグメントを含む。
【0022】
以下の表は本発明のサルアデノウイルス配列中の転写領域およびオープンリーディングフレイムを提供する。ある遺伝子については転写産物およびオープンリーディングフレイム(ORFs)は、配列番号5、9、24、29および34に提示する配列に相補的な鎖上に位置する。例えばE2b、E4およびE2aを参照にされたい。コードされるタンパク質の理論上の分子量も示す。E1aオープンリーディングフレイムPan5[配列番号1のnt576〜1436]、Pan6[配列番号5のnt576〜1437]およびPan7[配列番号9のnt576〜1437]は、内部スプライス部位を含む。これらのスプライス部位を以下の表に記す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】
【表7】

【0030】
【表8】

【0031】
【表9】

【0032】
【表10】

【0033】
【表11】

【0034】
Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25およびSV39アデノウイルスの核酸配列は、治療薬および種々のベクター系および宿主細胞の構築に有用である。本明細書で使用するようにベクターには、裸のDNA、プラスミド、ウイルス、コスミドまたはエピソームを含む任意の適当な核酸分子を含む。これらの配列および産物は単独で、あるいは他のアデノウイルス配列またはフラグメントと組み合わせて、あるいは他のアデノウイルスもしくは非−アデノウイルス配列の要素と組み合わせて使用することができる。本発明のアデノウイルス配列はアンチセンス送達ベクター、遺伝子治療ベクターまたはワクチンベクターとしても有用である。このように本発明はさらに核酸分子、遺伝子送達ベクターおよび本発明のAd配列を含む宿主細胞を提供する。
【0035】
例えば本発明は、本発明のサルAd ITR配列を含む核酸分子を包含する。別の例では、本発明は所望するAd遺伝子産物をコードする本発明のサルAd配列を含む核酸分子を提供する。さらに本発明の配列を使用して構築した別の核酸分子も、本明細書に提供する情報を考慮して当業者には容易に明らかとなるだろう。
【0036】
1つの態様では、本明細書で同定したサルAd遺伝子領域は細胞にヘテロロガスな分子を送達するための様々なベクターに使用することができる。例えばベクターは宿主細胞にパッケージングされるウイルスベクターを作成する目的のために、アデノウイルスキャプシドタンパク質(またはそのフラグメント)を発現するために作成される。そのようなベクターはトランスでの発現のために設計することができる。あるいはそのようなベクターは、所望するアデノウイルスの機能、例えば1以上のE1a、E1b、末端反復配列、E
2a、E2b、E4、E4ORF6領域を発現する配列を安定に含む細胞を提供するために設計される。
【0037】
加えてアデノウイルス遺伝子およびそのフラグメントは、ヘルパー依存性ウイルス(例えば本質的機能が削除されたアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AVV))の生産に必要なヘルパー機能を提供するために有用である。そのような生産方法に本発明のサルアデノウイルス配列を、ヒトAdについて記載した方法に類似する様式のような方法に利用する。しかし本発明の配列の使用は本発明のサルアデノウイルス配列とヒトAdの配列との間の配列中の差異により、rAAV生産中に感染性のアデノウイルスの混入を生じる可能性があるヒトAdE1機能を持つ宿主細胞、例えば293細胞中でのヘルパー機能との相同的組換えの可能性を本質的に排除する。
【0038】
アデノウイルスヘルパー機能を使用してrAAVを生産する方法は、ヒトアデノウイルス血清型を用いた技術文献で詳細に記載された。例えば米国特許第6,258,595号明細書およびそこに引用されている参考文献を参照にされたい。また米国特許第5,871,982号明細書;国際公開第99/14354号;同第99/15685号;同第99/47691号パンフレットも参照にされたい。これらの方法は非−ヒト霊長類AAV血清型を含む非−ヒト血清型AAVでの生産にも使用することができる。必要なヘルパー機能を提供する本発明のサルアデノウイルス遺伝子配列(例えばE1a、E1b、E2aおよび/またはE4ORF6)は必要なアデノウイルス機能を提供するために特に有用であることができると同時に、典型的にはヒト起源のrAAV−パッケージング細胞に存在する他のアデノウイルスとの組換えの可能性を最少にするか、または排除する。このように本発明のアデノウイルス配列の選択した遺伝子またはオープンリーディングフレイムを、これらのrAAV生産法に利用することができる。
【0039】
あるいは本発明の組換えアデノウイルスサルベクターをこれらの方法で利用することができる。そのような組換えアデノウイルスサルベクターには、例えばハイブリッドチンパンジーAd/AAVを含むことができ、ここでチンパンジーAd配列は、例えば発現を制御する調節配列の制御下にAAV3’および/または5’ITRsおよび導入遺伝子からなるrAAV発現カセットを挟む。当業者は本発明のさらに別のサルアデノウイルスベクターおよび/または遺伝子配列がrAAVおよびアデノウイルスヘルパーに依存性の他のウイルスの生産に有用であると認識するだろう。
【0040】
さらに別の態様では、所望する生理学的効果を達成するために、核酸分子は宿主細胞へ送達し、そして選択したアデノウイルス遺伝子産物を発現するために設計される。例えば本発明のアデノウイルスE1aタンパク質をコードする配列を含む核酸分子は、癌治療薬として使用するために個体に送達され得る。場合によりそのような分子は脂質基材の担体に配合され、そして癌細胞を優先的に標的とする。そのような製剤は他の癌治療薬(例えばシスプラチン、タキソール等)と組み合わせることができる。本明細書に提供するアデノウイルス配列に関するさらに別の使用は、当業者には直ちに明らかであろう。
【0041】
加えて当業者は本発明のAd配列が、治療薬および免疫原性分子のインビトロ、エクスビボまたはインビボ送達のための様々なウイルスおよび非ウイルスベクター系に使用するために容易に適合させることができると直ちに理解するだろう。例えば本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25および/またはSV39サルAdゲノムは、様々なrAdおよび非−rAdベクター系に使用することができる。そのようなベクター系には、例えばとりわけプラスミド、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノ随伴ウイルス系を含むことができる。これらベクター系の選択は本発明を限定するものではない。
【0042】
本発明はさらに本発明のサルおよびサルに由来するタンパク質の生産に有用な分子を提供する。本発明のサルAdのDNA配列を含むポリヌクレオチドを持つそのような分子は、裸のDNA、プラスミド、ウイルスまたは他のどのような遺伝要素であることもできる。
【0043】
B.本発明のサルアデノウイルスタンパク質
本発明はさらに、本発明のアデノウイルス核酸によりコードされるタンパク質、酵素およびそれらのフラグメントのような上記アデノウイルスの遺伝子産物を提供する。本発明はさらに、他の方法により生成されたこれら核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25およびSV39タンパク質、酵素およびそれらのフラグメントを包含する。そのようなタンパク質には上記の表、図1および2に確認されるオープンリーディングフレイムによりコードされるもの、およびそれらのフラグメントを含む。
【0044】
このように1つの観点では、本発明は実質的に純粋な、すなわち他のウイルス性およびタンパク質様タンパク質を含まない独特なサルアデノウイルスタンパク質を提供する。好ましくはこれらのタンパク質は少なくとも10%均一、より好ましくは60%均一、そして最も好ましくは95%均一である。
【0045】
1つの態様では、本発明は独特なサル−由来キャプシドタンパク質を提供する。本明細書で使用するようにサル−由来キャプシドタンパク質には、限定するわけではないがキメラキャプシドタンパク質、融合タンパク質、人工キャプシドタンパク質、合成キャプシドタンパク質および組換え的なキャプシドタンパク質を含め、これらのタンパク質の生成手段を限定せずに、上記定義のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39キャプシドタンパク質またはそれらのフラグメントを含む任意のアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む。
【0046】
適当にはこれらのサル−由来キャプシドタンパク質は、1以上のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39領域またはそれらのフラグメント(例えばヘキソン、ペントン、繊維またはそれらのフラグメント)を、異なるアデノウイルス血清型のキャプシド領域もしくはそのフラグメント、または修飾されたサルキャプシドタンパク質もしくはフラグメントと本明細書に記載するように組み合わせて含む。本明細書で使用する「改変されたトロピズムに関連するキャプシドタンパク質の修飾」には、特異性が改変されるように改変されたキャプシドタンパク質、すなわちペントン、ヘキソンまたは繊維タンパク質領域、または繊維領域の小塊ドメイン、それをコードするポリヌクレオチドのようなそれらのフラグメントを含む。サル−由来キャプシドは、1以上の本発明のサルAdまたはヒトもしくは非−ヒト起源でよい他のAd血清型で構築され得る。そのようなAdはATCC、商業用および研究用の供給元を含む様々な供給元から得ることができ、あるいはAdの配列はGenBankまたは他の適切な供給元から得ることができる。
【0047】
本発明のサルアデノウイルスのペントンタンパク質のアミノ酸配列を本明細書に提供する。AdPan5ペントンタンパク質は、配列番号2に提供する。AdPan7ペントンは、配列番号10に提供する。AdPan6ペントンは、配列番号6に提供する。SV1ペントンは、配列番号25に提供する。SV25ペントンタンパク質は、配列番号30に提供する。SV39ペントンは、配列番号35に提供する。適切にはこれら任意のペントンタンパク質またはそれらの独特なフラグメントを様々な目的に利用することができる。適当なフラグメントの例には、上記および配列番号2、配列番号6、配列番号25、配列番号30または配列番号35に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150または200個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有するペントンを含む。他の適当なフラグメントには、より短い内部、C−末端またはN−末端フ
ラグメントを含む。さらにペントンタンパク質は、当業者に知られている様々な目的のために修飾されることができる。
【0048】
本発明はさらに、Pan5[配列番号3]、Pan6[配列番号7]、Pan7[配列番号11]、SV1[配列番号26]、SV25[配列番号31]および/またはSV39[配列番号36]のヘキソンタンパク質のアミノ酸配列を提供する。適切にはこのヘキソンタンパク質またはそれらの独特なフラグメントは、様々な目的に利用することができる。適切なフラグメントの例には、上記および配列番号3、7、11、26、31および36に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150、200、300、400または500個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有するヘキソンを含む。他の適当なフラグメントには、より短い内部、C−末端またはN−末端フラグメントを含む。例えば1つの適切なフラグメントはDE1およびFG1と命名されたヘキソンタンパク質のループ領域(ドメイン)、またはそれらの超可変領域。そのようなフラグメントは配列番号3、7、11、26、31または36に関して、サルヘキソンタンパク質のアミノ酸残基約125〜443;約138〜441、または約残基138〜残基163に広がるもののようなより小さいフラグメント;約170〜約176;約195〜約203;約233〜約246;約253〜約264;約287〜約297;および約404〜430に広がるアミノ酸領域を含む。他の適当なフラグメントは当業者により容易に同定され得る。さらにヘキソンタンパク質を当業者に知られている様々な目的に修飾することができる。ヘキソンタンパク質はアデノウイルスの血清型の決定基であるので、そのような人工のヘキソンタンパク質は人工の血清型を有するアデノウイルスを生じるだろう。他の人工キャプシドタンパク質も、本発明のチンパンジーAdペントン配列および/または繊維配列および/またはそれらのフラグメントを使用して構築することができる。
【0049】
一例では、改変されたヘキソンタンパク質を有するアデノウイルスを本発明のヘキソンタンパク質の配列を利用して生成することが望ましい。ヘキソンタンパク質の1つの適切な改変法が、引用により本明細書に編入する米国特許第5,922,315号明細書に記載されている。この方法では、アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域が別のアデノウイルス血清型の少なくとも1つのループ領域と変えられている。すなわちそのように改変されたアデノウイルスヘキソンタンパク質の少なくとも1つのループ領域は、本発明のサルAdヘキソンループ領域である(例えばPan7)。1つの態様では、Pan7ヘキソンタンパク質のループ領域は別のアデノウイルス血清型に由来するループ領域に置き換えられる。別の態様では、Pan7ヘキソンのループ領域を別のアデノウイルス血清型に由来するループ領域に置き換えるために使用する。適当なアデノウイルス血清型は、本明細書に記載するようにヒトおよび非−ヒト血清型の中から容易に選択することができる。Pan7は具体的説明の目的のみに選択し;本発明の他のサルAdヘキソンタンパク質も同様に改変することができ、あるいは別のAdヘキソンを改変するために使用することができる。適当な血清型の選択は、本発明を限定するものではない。本発明のヘキソンタンパク質配列のさらに別の使用は、当業者には直ちに明白となるだろう。
【0050】
本発明はさらに本発明のサルアデノウイルスの繊維タンパク質を包含する。AdPan5の繊維タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を有する。繊維タンパク質AdPan6は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。AdPan7の繊維タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を有する。SV−1は2つの繊維タンパク質を有し;繊維2は配列番号27のアミノ酸配列を有し、そして繊維1は配列番号28のアミノ酸配列を有する。SV−25も2つの繊維タンパク質を有し;繊維2は配列番号32のアミノ酸配列を有し、そして繊維1は配列番号33のアミノ酸配列を有する。SV−39の繊維タンパク質は配列番号37のアミノ酸配列を有する。
【0051】
適切にこの繊維タンパク質またはそれらの独特なフラグメントを、様々な目的に利用することができる。1つの適切なフラグメントは繊維小塊であり、これは配列番号4、8、12、28、32、33および37のアミノ酸約247〜425に広がる。図2を参照にされたい。他の適当なフラグメントの例には、上記および配列番号4、8、12、28、32、33および37に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150もしくは200個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有する繊維を含む。さらに別の適当なフラグメントには内部フラグメントを含む。さらに繊維タンパク質は当業者に知られている種々の技術を使用して修飾することができる。
【0052】
本発明はさらに、少なくとも8アミノ酸長である本発明のタンパク質の独特なフラグメントを包含する。しかし他の所望する長さのフラグメントを容易に使用することができる。さら本発明は、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39遺伝子産物の収量および/または発現を強化するために導入できるような修飾、例えばPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39遺伝子産物のすべてまたはフラグメントが(直接またはリンカーを介して)強化するための融合パートナーに融合している融合分子の構築物を包含する。他の適切な修飾には限定するわけではないが、通常は開裂され、そして成熟タンパク質または酵素を提供するプレ−またはプロ−タンパク質を排除するためにコード領域(例えばタンパク質または酵素)の短縮化、および/または分泌可能な遺伝子産物を提供するためにコード領域の突然変異を含む。さらに他の修飾が当業者には明白であろう。本発明はさらに本明細書に提供するPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39タンパク質に少なくとも約95%〜99%の同一性を有するタンパク質を包含する。
【0053】
本明細書に記載するように、本発明のアデノウイルスキャプシドタンパク質を含有する本発明のベクターは、中和抗体が他のAd血清型に基づくベクターならびに他のウイルスベクターの効力を縮小する応用に使用するために特によく適している。本発明のrAdベクターは、反復遺伝子治療または免疫応答(ワクチン力価)のブーストのための再投与に特に有利である。
【0054】
特定の状況下では、1以上のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25および/またはSV39遺伝子産物(例えばキャプシドタンパク質またはそれらのフラグメント)を使用して抗体を生成することが望ましいかもしれない。本明細書で使用する用語「抗体」は、エピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を称する。このように本発明の抗体は好ましくは特異的に、しかも交差反応性無しで、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39エピトープに結合する。本発明では抗体は、例えば高親和性ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、キメラ抗体、組換え抗体およびヒト化抗体を含む種々の形態で存在する。そのような抗体は免疫グロブリンのIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEクラスから派生する。
【0055】
そのような抗体は当該技術分野で既知な多数の方法を使用して生成することができる。適当な抗体は周知の従来技術、例えばKohler and Milsteinおよびその多くの既知の変法により生成することができる。同様に望ましい高力価抗体は、これらの抗原に対して開発されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体に既知の組換え技術を応用することにより生成される[例えばPCT特許出願第PCT/GB85/00392号パンフレット;英国特許出願公開第2188638号明細書;Amit et al.,1986 Science,233:747−753;Queen et al.,1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029−10033;PCT特許出願第PCT/国際公開第9007861号パンフレット;およびRiechman et al.,Nature,332:323−327(1988);Huse et al.,1988a Science,246:1275−1281
を参照にされたい]。あるいは抗体は本発明の抗原に対する動物またはヒト抗体の相補性決定領域を操作することにより生産することができる。例えばE.Mark and Padlin、「モノクローナル抗体のヒト化(Humanization of Monoclonal Antibodies)」、第4章、実験薬理学のハンドブック(The Handbook of Experimental Pharmacology)、第113巻、モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of
Monoclonal Antibodies)、スプリンガーファーラーク(Springer−Verlag)(1994年6月);Harlow et al.,1999、抗体を使用して:ア ラボラトリーマニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、ニューヨーク州;Harlow et al.,1989、抗体:ア ラボラトリーマニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびBird et al.,1988,Science 242:423−426を参照にされたい。さらに本発明により提供されるのは、抗−イディオタイプ抗体(Ab2)および抗−抗−イディオタイプ抗体(Ab3)である。例えばM.Wettendorff et al.,「抗−イディオタイプ抗体による抗−腫瘍免疫の調節(Modulation of anti−tumor immunity by anti−idiotypic antibodies)」、イディオタイプのネットワークおよび疾患(Idiotypic Network and Diseases)で、J.Cerny and J.Hiernaux編集、1990 J.Am.Soc.Microbiol.,ワシントンD.C.第203〜229頁を参照にされたい]。これらの抗−イディオタイプおよび抗−抗−イディオタイプ抗体は、当業者に周知の技術を使用して生産される。これらの抗体は、診断および臨床的方法およびキットを含め様々な目的に使用することができる。
【0056】
特定の状況下では、検出可能な標識またはタグを本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39遺伝子産物、抗体または他の構築物に導入することが望ましい。本明細書で使用するように検出可能な標識は、単独または他の分子との相互作用で検出可能なシグナルを提供することができる分子である。最も望ましくは標識は免疫組織化学的分析または免疫蛍光顕微鏡で直ちに使用するために視覚的、例えば蛍光により検出することができる。例えば適当な標識にはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、コリホスフィン−O(CPO)またはタンデム色素、PE−シアニン−5(PC5)およびPE−テキサスレッド(ECD)を含む。これらすべての蛍光色素は市販されており、そしてそれらの使用は当該技術分野では知られている。他の有用な標識には金コロイド標識を含む。さらに別の有用な標識には放射性化合物または元素を含む。加えて標識にはアッセイで比色シグナルを示すように作動する様々な酵素系を含み、例えばグルコースオキシダーゼ(これは基質としてグルコースを使用する)は生成物としてペルオキシドを放出し、これはペルオキシダーゼおよびテトラメチルベンジジン(TMB)のような水素供与体の存在下で酸化TMBを生成し、これが青色として見える。他の例には西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)、およびATP、グルコースおよびNAD+と反応して生成物の中でも340nmの波長の吸収増加として検出されるNADHを生じるグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼと組み合わせたヘキソキナーゼを含む。
【0057】
本発明の方法に利用される他の標識系は他の手段、例えば着色されたラテックス微小球[バングス ラボラトリーズ(Bangs Laboratories)、インディアナ]により検出可能であり、ここで包埋された色素は酵素の代わりに使用されて標的配列と
結合物を形成し、適用可能なアッセイで生じた複合体の存在を示す視覚的シグナルを提供する。
【0058】
標識を所望の分子にカップリングまたは会合させる方法は同様に通例であり、そして当業者に知られている。標識結合(attachment)の既知の方法は記載されている[例えば蛍光プローブおよび研究用化学品のハンドブック(Handbook of Fluorescent probes and Research Chemicals)、第6版、R.P.M.Haugland、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社、ユージーン、オレゴン州、1996;ピアスカタログハンドブック(Pierce Catalog and Handbook)、ライフサイエンスおよび分析研究用製品、ピアスケミカル(Pierce Chemicals)社、ロックフォード、イリノイ州、1994/1995を参照にされたい]。このように標識およびカップリング法の選択は本発明を限定しない。
【0059】
本発明の配列、タンパク質およびフラグメントは、組換え生産、化学合成を含む任意の適当な手段、または他の合成手段により生産することができる。適当な生産技術は当業者に周知である。例えばSambrook et al.,モレキュラークローニング:ア
ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー出版(コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州)を参照にされたい。あるいはペプチドは周知の固相ペプチド合成法により合成することもできる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1962);Stewart and Young、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)(フリーマン、サンフランシスコ、1969)、第27−62頁)。これらのおよび他の適切な生産法は当業者の知識の範囲内であり、そして本発明を限定するものではない。
【0060】
さらに当業者は本発明のAd配列を、治療用および免疫原性分子のインビトロ、エクスビボまたはインビボ送達に、種々のウイルスおよび非−ウイルスベクター系で使用するために容易に適合させることができると容易に理解するだろう。例えば1つの態様では、本明細書に記載するサルAdキャプシドタンパク質および他のサルアデノウイルスタンパク質を、遺伝子、タンパク質および他の所望する診断用、治療用および免疫原性分子の非ウイルス性の、タンパク質に基づく送達に使用する。1つのそのような態様では、本発明のタンパク質を直接的または間接的にアデノウイルスのレセプターを持つ細胞を標的とする分子に連結する。好ましくは細胞表面レセプターに関するリガンドを有するヘキソン、ペントン、繊維またはそれらのフラグメントのようなキャプシドタンパク質を、そのような標的化のために選択する。送達のための適当な分子は、本明細書に記載する治療用分子およびそれらの遺伝子産物の中から選択される。脂質、ポリLys等を含む様々なリンカーをリンカーとして利用することができる。例えばサルのペントンタンパク質は、Medina−Kauwe LK,et al.,Gene Ther.2001 May;8(10):795−803およびMedina−Kauwe LK,et al.,Gene Ther.2001 Dec:8(23):1753−1761に記載されている様式に準じて、サルのペントン配列を使用して融合タンパク質の生産によりそのような目的に容易に利用することができる。あるいはサルAdタンパク質IXのアミノ酸配列は、米国特許出願第20010047081号明細書に記載されているようにベクターを細胞表面レセプターに標的化するために利用することができる。適当なリガンドにはCD40抗原、RGD−含有またはポリリシン−含有配列等を含む。さらに例えばヘキソンタンパク質および/または繊維タンパク質を含む他のサルAdタンパク質を、これらおよび類似の目的に使用することができる。
【0061】
さらに本発明の他のアデノウイルスタンパク質を単独で、または他のアデノウイルスタ
ンパク質と組み合わせて、当業者には容易に明白な様々な目的に使用することができる。加えて、本発明のアデノウイルスタンパク質に関するさらに他の使用は、当業者に直ちに明らかとなるであろう。
【0062】
II.組換えアデノウイルスベクター
本発明の組成物は、治療用またはワクチンのいずれかの目的でヘテロロガスな分子を細胞に送達するベクターを含む。本明細書で使用するようにベクターには、限定するわけではないが裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミドまたはウイルスを含む任意の遺伝子要素を含むことができる。そのようなベクターはPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25および/またはSV39のサルアデノウイルスDNAおよびミニ遺伝子(minigene)を含む。「ミニ遺伝子」とは選択したヘテロロガスな遺伝子と宿主細胞中で遺伝子産物の翻訳、転写および/または発現を駆動するために必要な他の調節要素との組み合わせを意味する。
【0063】
典型的には本発明のアデノウイルスベクターは、選択したアデノウイルス遺伝子に自然な領域に他のアデノウイルス配列を含む核酸分子中にミニ遺伝子を配置するように設計される。ミニ遺伝子は所望により既存の遺伝子領域に挿入して、その領域の機能を破壊することができる。あるいはミニ遺伝子は部分的または完全に削除されたアデノウイルス遺伝子の部位に挿入してもよい。例えばミニ遺伝子を、選択することができる部位の中でも機能的E1削除または機能的E3削除の部位のような部位に配置することができる。用語「機能的に削除された」または「機能的削除」とは、突然変異または修飾により十分量の遺伝子領域が除去されるかまたはそうではなく傷害を受けて、その遺伝子領域がもはや遺伝子発現の機能的産物を生産できないことを意味する。所望により、全遺伝子領域を除去してもよい。遺伝子破壊または削除について他の適当な部位は、本出願のいたるところで検討する。
【0064】
例えば組換えウイルスの生成に有用な生産ベクターについて、ベクターはミニ遺伝子およびアデノウイルスゲノムの5’末端もしくはアデノウイルスゲノムの3’末端のいずれか、またはアデノウイルスゲノムの5’および3’末端の両方を含むことができる。アデノウイルスゲノムの5’末端は、パッケージングおよび複製に必要な5’シス−エレメント;すなわち5’逆方向末端反復(ITR)配列(これは複製の起点として機能する)および天然の5’パッケージングエンハンサードメイン(これは直線状のAdゲノムをパッケージングするために必要な配列およびE1プロモーター用のエンハンサーエレメントを含む)を含む。アデノウイルスゲノムの3’末端は、パッケージングおよびキャプシド形成に必要な3’シス−エレメント(ITRsを含む)を含む。適当には組換えアデノウイルスは5’および3’の両方のアデノウイルスシス−エレメントを含み、そしてミニ遺伝子は5’と3’アデノウイルス配列の間に配置される。本発明の任意のアデノウイルスベクターはさらなるアデノウイルス配列も含むことができる。
【0065】
適当には本発明のこれらのアデノウイルスベクターは、本発明のアデノウイルスゲノムに由来する1以上のアデノウイルス要素を含む。1つの態様では、ベクターはPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39に由来するアデノウイルスITRsおよび同じアデノウイルス血清型に由来するさらなるアデノウイルス配列を含む。別の態様では、ベクターはITRsを提供する血清型とは異なるアデノウイルス血清型に由来するアデノウイルス配列を含む。本明細書に定義するように、シュードタイプ化されたアデノウイルスとは、アデノウイルスのキャプシドタンパク質がITRsを提供する血清型とは異なる血清型に由来するアデノウイルスを指す。ITRsの血清型およびベクターに存在する他のアデノウイルス配列の血清型の選択は、本発明を限定しない。種々のアデノウイルス株がバージニア州、マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能であり、あるいは様々な商業用および研究用の供給元から要求に応じて入手可能
である。さらに多くのそのような株の配列が、例えばPubMedおよびGenBankを含む種々のデータベースから利用可能である。他のサルから、またはヒトアデノウイルスから調製したホモロガスなアデノウイルスベクターは、公開された技術文献に記載されている[例えば米国特許第5,240,846号明細書を参照にされたい]。Ad5型[GenBank寄託番号M73260]を含め、多数のアデノウイルス型のDNA配列がGenBankから入手可能である。アデノウイルスの配列は、血清型2、3、4、7、12および40、そしてさらに現在同定されている任意のヒトの型を含むような既知のアデノウイルス血清型から得ることができる。同様に非−ヒト動物(例えばサル)に感染することが知られている同様のアデノウイルスも、本発明のベクター構築物に採用することができる。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照にされたい。
【0066】
本明細書に記載するベクターの構築に使用するウイルスの配列、必要ならばヘルパーウイルス、および組換えウイルス粒子、および他のベクター成分および配列は、上記のように得ることができる。本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25および/またはSV39サルアデノウイルス配列のDNA配列は、ベクターおよびそのようなベクターを調製するために有用な細胞系を構築するために使用される。
【0067】
配列の削除、挿入および他の突然変異を含む、本発明のベクターを形成する核酸配列の修飾は、標準的な分子生物学的技術を使用して生成することができ、そして本発明の範囲内にある。
【0068】
A.「ミニ遺伝子」
導入遺伝子の選択、「ミニ遺伝子」のクローニングおよび構築、およびそのウイルスベクターへの挿入に使用する方法は、本明細書に提供される技術を考慮すれば当業者の技術内である。
【0069】
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、問題のポリペプチド、タンパク質または他の産物をコードする導入遺伝子を挟むベクター配列にヘテロロガスな核酸配列である。核酸コード配列は、宿主細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳および/または発現を可能とする様式で調節成分に操作可能に連結される。
【0070】
導入遺伝子配列の組成は、生成するベクターに課される使用に依存するだろう。例えば導入遺伝子配列の1つの種類はレポーター配列を含み、これは発現により検出可能なシグナルを生産する。そのようなレポーター配列には限定するわけではないが、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を含む膜結合タンパク質、インフルエンザ赤血球凝集タンパク質、および当該技術分野で周知の他のもの(これらに対する高親和性抗体が存在するか、あるいは通例の手段により生成することができる)、ならびに中でもとりわけ赤血球凝集素またはMycに由来する抗原のタグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列を含む。これらのコード配列はそれらの発現を駆動する調節要素と会合した時、酵素、放射線、比色、蛍光または他の分光的アッセイ、蛍光活性化細胞ソーティングアッセイおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む通例の手段により検出可能なシグナルを提供する。例えばマーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを持つベクターの存在は、ベータガラクトシダーゼ活性に関するアッセイにより検出される。導入遺伝子がGFPまたはルシフェラーゼである場合、シグナルを持つベクターはルミノメーター中での色または光の生産により視覚的に測定することができる。
【0071】
しかし望ましくは、導入遺伝子はタンパク質、ペプチド、RNA、酵素または触媒RNAのような生物学および医学で有用な産物をコードする非−マーカー配列である。望ましいRNA分子にはtRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNAおよびアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の1例は、処置する動物中で標的核酸配列の発現を無効にする配列である。
【0072】
導入遺伝子は、例えば遺伝子欠損の処置に、癌の治療またはワクチンとして、免疫応答を誘導するために、および/または予防用ワクチンの目的に使用することができる。本明細書で使用するように免疫応答の誘導とは、分子に対するT細胞および/または体液性免疫応答を誘導する分子(例えば遺伝子産物)の能力を称する。本発明はさらに、例えば多−サブユニットタンパク質により引き起こされる状態を正すか、または改善するために多数の導入遺伝子を使用することを含む。特定の状況ではタンパク質の各サブユニットをコードするために、または異なるペプチドまたはタグをコードするために種々の導入遺伝子を使用することができる。これは例えば、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい時、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子またはジストロフィンタンパク質について望ましい。細胞が多−サブユニットタンパク質を生産するためには、細胞を異なる各サブユニットを含む組換えウイルスに感染させる。あるいはタンパク質の種々のサブユニットが同じ導入遺伝子によりコードされてもよい。この場合、1つの導入遺伝子が各サブユニットをコードするDNAを含み、各サブユニットのDNAはインターナルリボザイムエントリーサイト(internal ribozyme entry site:IRES)により分けられている。これは各サブユニットをコードするDNAのサイズが小さい時、例えばサブユニットをコードするDNAおよびIRESの全サイズが5キロベース未満である時に望ましい。IRESに対する代わりとして、DNAは2Aペプチド(これは翻訳後反応(event)で自己−開裂する)をコードする配列により分けられてもよい。例えば、M.L.Donnelly,et al.,J.Gen.Virol.78(Pt1):13−21(Jan1997);Furler,S.,et al.,Gene Ther.,8(11):864−873(June 2001);Klump H.,et al.,Gene Ther.,8(10):811−817(May 2001)を参照にされたい。この2AペプチドはIRESよりも有意に小さく、スペースが限定因子となる時の使用によく適している。しかし選択した導入遺伝子は生物学的に活性な産物または他の産物、例えば研究に望ましいいかなる産物もコードすることができる。
【0073】
適切な導入遺伝子は当業者により容易に選択され得る。導入遺伝子の選択が本発明を限定するとは考えられない。
【0074】
2.調節要素
ミニ遺伝子に関して上記で確認した主要な要素に加えて、本発明により生産されたベクターはプラスミドベクターでトランスフェクトした、またはウイルスに感染した細胞での転写、翻訳および/または発現を可能とする様式で導入遺伝子に操作可能に連結された、必要な通常の制御要素も含む。本明細書で使用するように「操作可能に連結した」配列には、問題の遺伝子に連続する発現制御配列、およびトランスに作用するか、または問題の遺伝子を制御するために一定距離の発現制御配列の両方を含む。
【0075】
発現制御配列には適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニレーション(ポリA)シグナルのような効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を強化する配列(すなわちKozak共通配列);タンパク質の安定性を強化する配列;および所望により、コードされた産物の分泌を強化する配列を含む。天然の、構成的な、誘導性のおよび/また
は組織特異的なプロモーターを含む莫大な数の発現制御配列が当該技術分野では知られており、そして利用することができる。
【0076】
構成的プロモーターの例には限定するわけではないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを含む)[例えばBoshart et al.,Cell,41:521−530(1985)を参照にされたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1αプロモーター[インビトロゲン(Invitrogen)]を含む。
【0077】
誘導性プロモーターは遺伝子発現の調節を可能とし、そして外から供給される化合物、温度のような環境的因子、または特別な生理学的状態、例えば急性期、細胞の特定の分化状態の存在により、あるいは複製している細胞のみで調節され得る。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、限定するわけではないがインビトロゲン、クローンテック(Clontech)およびアリアド(Ariad)を含む様々な商業的供給源から入手することができる。多くの他の系が記載され、そして当業者により容易に選択され得る。例えば誘導性プロモーターには亜鉛−誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーターおよびデキサメタゾン(Dex)−誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターを含む。他の誘導性の系にはT7ポリメラーゼプロモーター系[国際公開第98/10088号パンフレット];エクジソン昆虫プロモーター[No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351(1996)],テトラサイクリン−抑制系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリン−誘導系[Gossen et al.,Science,268:1766−1769(1995)、またHarvey et al.,Curr,Opin.Chem.Biol.,2:512−518(1998)を参照にされたい]を含む。他の系にはカストラジオール、ジフェノールムリスレロンを使用するFK506二量体、VP16またはp65、RU486−誘導性系[Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239−243(1997)およびWang et al.,Gene Ther.,4:432−441(1997)]およびラパマイシン−誘導性系[Magari et al.,J.Clin.Invest.100:2865−2872(1997)]を含む。幾つかの誘導性プロモーターの効率は時間経過に伴い上昇する。そのような場合、そのような系の効率はタンデムに多くのリプレッサーを挿入すること、例えばIRESによりTetRに連結されたTetRにより強化することができる。あるいは所望の機能をスクリーニングする前に少なくとも3日間待つことができる。所望するタンパク質の発現は、この系の効率を強化するための既知の手段により強化することができる。例えばウッドチャック(Woodchuck)肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)を使用すること。
【0078】
別の態様では、導入遺伝子に天然のプロモーターを使用する。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が自然な発現を模するべきであることが望まれる時に好適となり得る。天然のプロモーターは導入遺伝子の発現が一時的にもしくは発育的に、または組織特異的様式で、あるいは特異的な転写刺激に応答して調節されなければならない時に使用することができる。さらなる態様では、エンハンサーエレメント、ポリアデニレーション部位またはKozak共通配列のような他の天然発現制御要素を使用して、自然な発現を模することもできる。
【0079】
導入遺伝子の別の態様には、組織−特異的プロモーターに操作可能に連結された導入遺伝子を含む。例えば骨格筋中での発現が望まれる場合、筋肉中で活性なプロモーターを使用するべきである。これらには骨格筋β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン
、筋肉クレアチンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、ならびに自然に存在するプロモーターよりも高い活性を持つ合成の筋肉プロモーターを含む(Li et
al.,Nat.Biotech.,17:241−245(1999)を参照にされたい)。組織−特異的であるプロモーターの例は、中でも肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002−9(1996);アルファ−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,Hum.Gene.Ther.,7:1503−14(1996))、骨のオステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185−96(1997));骨シアロプロテイン(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654−64(1996)),リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063−8(1998);免疫グロブリン重鎖;T細胞レセプター鎖)、ニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターのような神経性(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503−15(1993))、ニューロフィラメント軽−鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611−5(1991))、およびニューロン−特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373−84(1995))について知られている。
【0080】
場合により治療的に有用な、または免疫原性の産物をコードする導入遺伝子を持つベクターは、中でもジェネティシン、ヒグロマイシンまたはピューロマイシン耐性をコードする配列を含むことができる選択可能なマーカーまたはレポーター遺伝子を含んでもよい。そのような選択可能なレポーターまたはマーカー遺伝子(好ましくはウイルス粒子にパッケージングされるウイルスゲノムの外側に位置する)を使用して、アンピシリン耐性のような細菌細胞中でのプラスミドの存在のシグナルを出すことができる。ベクターの他の成分には、複製起点を含むことができる。これらおよび他のプロモーターおよびベクター要素の選択は通例であり、そして多くのそのような配列を利用することができる[たとえばSambrook et al.、およびそこに引用されている参考文献を参照にされたい]。
【0081】
これらのベクターは、本明細書に提供する技術および配列を当業者に既知の技術と一緒に使用して作成される。そのような技術にはテキスト[Sambrook et al.、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州]に記載されているような通例のcDNAのクローニング技法、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応および所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適当な方法の使用を含む。
【0082】
III.組換えウイルス粒子の生産
1つの態様ではサルアデノウイルスプラスミド(または他のベクター)を使用して、組換えアデノウイルス粒子を生産する。1つの態様では、組換えアデノウイルスはE1aおよびE1b遺伝子が機能的に削除され、そして場合により他の突然変異、例えば温度−感受性突然変異または他の遺伝子の削除を持つ。他の態様では、完全なE1aおよび/またはE1b領域が組換えアデノウイルスに保持されていることが望ましい。そのような完全なE1領域はアデノウイルスゲノム中で自然な位置に配置されるか、または天然のアデノウイルスゲノム中で削除された部位に配置されてもよい(例えばE3領域)。
【0083】
遺伝子をヒト(または他の哺乳動物)細胞へ送達するために有用なサルアデノウイルスベクターの構築において、ある範囲のアデノウイルス核酸配列をベクターに使用すること
ができる。例えばアデノウイルス後初期遺伝子E3の全部または一部を、組換えウイルスの部分を形成するサルアデノウイルス配列から排除することができる。サルE3の機能は組換えウイルス粒子の機能および生産には無関係であると考えられている。サルアデノウイルスベクターはE4遺伝子の少なくともORF6領域の削除を有するように、そしてより望ましくはこの領域の機能の重複から、全E4領域の削除を有するように構築することもできる。本発明のさらに別のベクターは、後初期遺伝子E2aに削除を含む。削除はサルアデノウイルスゲノムの任意の後期遺伝子L1からL5に作成することができる。同様に中期遺伝子IXおよびIVa中の削除は幾つかの目的に有用となり得る。他の削除を別の構造的または非構造的アデノウイルス遺伝子に作成することができる。上記に検討した削除は個々に使用することができ、すなわち本発明で使用するアデノウイルス配列は単一領域にのみ削除を含むことができる。あるいはそれらの生物学的活性を破壊するために効果的な全遺伝子またはその部分の削除を、任意に組み合わせてもよい。例えば1つの例示ベクターでは、アデノウイルス配列はE1遺伝子およびE4遺伝子の削除、またはE1、E2aおよびE3遺伝子の削除、またはE1およびE3遺伝子の削除、またはE3の削除を含むか、または含まずにE1、E2aおよびE4遺伝子の削除等を有することができる。上記に検討したように、そのような削除は温度−感受性突然変異のような他の突然変異と組み合わせて使用して所望の結果を達成することができる。
【0084】
任意の本質的なアデノウイルス配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、E4 ORF6、L1、L2、L3、L4およびL5)を欠いているアデノウイルスベクターを、アデノウイルス粒子のウイルス感染性および増殖に必要な欠けている(missing)アデノウイルス遺伝子産物の存在下で培養する。これらのヘルパー機能は、アデノウイルスベクターを1以上のヘルパー構築物(例えばプラスミドまたはウイルス)またはパッケージング宿主細胞の存在下で培養することにより提供することができる。例えば「最少」ヒトAdベクターの調製について1996年5月9日に公開された国際公開第96/13597号パンフレットに記載された技術を参照にされたい、そしてこれは引用により本明細書に編入する。
【0085】
1.ヘルパーウイルス
このようにミニ遺伝子を運ぶために使用されるウイルスベクターのサルアデノウイルス遺伝子内容物に依存して、ヘルパーアデノウイルスまたは非−複製ウイルスフラグメントが、ミニ遺伝子を含む感染性の組換えウイルス粒子を生産するために必要な十分なサルアデノウイルス遺伝子配列を提供するために必要となり得る。有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクター構築物には存在せず、かつ/またはベクターがトランスフェクトされるパッケージング細胞系により発現されない選択したアデノウイルス遺伝子配列を含む。1つの態様では、ヘルパーウイルスは複製−欠損であり、そして上記の配列に加えて種々のアデノウイルス遺伝子を含む。そのようなヘルパーウイルスは、望ましくはE1−発現細胞系と組み合わせて使用される。
【0086】
ヘルパーウイルスは、Wu et al.,J.Biol.Chem.,264:16985−16987(1989);K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.299:49(1994年4月1日)に記載されているようにポリ−カチオン結合物中に形成することもできる。ヘルパーウイルスは場合により第2のレポーターミニ遺伝子を含んでもよい。多数のそのようなレポーター遺伝子が当該技術分野では知られている。アデノウイルスベクター上の導入遺伝子とは異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在は、Adベクターおよびヘルパーウイルスの両方を独立して監視できるようにする。この第2レポーターの使用により、精製時に生成した組換えウイルスとヘルパーウイルスとの間の分離が可能となる。
【0087】
2.相補細胞系(complementation Cell Lines)
任意の上記遺伝子が任意に削除されている組換えサルアデノウイルス(Ad)を生成するために、削除された遺伝子領域の機能は、ウイルスの複製および感染に必須であるならば、ヘルパーウイルスまたは細胞系、すなわち相補またはパッケージング細胞系により組換えウイルスに供給されなければならない。多くの状況において、ヒトE1を発現する細胞系を使用してチンパンジーAdベクターを相補作用する(transcomplement)ことができる。これは本発明のチンパンジーAd配列と現在利用可能なパッケージング細胞中に見いだされるヒトAdE1配列との間の多様性により、現在のヒトE1−含有細胞の使用が複製可能なアデノウイルスの生成を複製および生産プロセス中に妨げるので、特に有利である。しかし特定の状況下ではE1−削除サルアデノウイルスの生産に利用することができるE1遺伝子産物を発現する細胞系を利用することが望ましいだろう。そのような細胞系が記載された。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照にされたい。
【0088】
所望により、本明細書に提供する配列を利用してパッケージング細胞、または最低限、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39に由来するアデノウイルスE1遺伝子を、選択した親の細胞系中で発現するためのプロモーターの転写制御下で発現する細胞系を生成することができる。誘導性または構成的プロモーターをこの目的に使用することができる。そのようなプロモーターの例は、本明細書のいたるところに詳細に記載する。親の細胞は所望するAdPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39遺伝子を発現する新規細胞系を生成するために選択する。限定するわけではないが、そのような親細胞系はとりわけHeLa[ATCC寄託番号CCL2]、A549[ATCC寄託番号CCL185]、HEK293、KB[CCL17]、Detroit[例えばDetroit510、CCL72]およびWI−38[CCL75]細胞であることができる。これらの細胞系はすべて、20110−2209、バージニア州マナッサス、10801ブルヴァール大学のアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能である。他の適当な親細胞系は他の供給元から得ることができる。
【0089】
そのようなE1−発現細胞系は、組換えサルアデノウイルスE1削除ベクターの生成に有用である。さらにあるいは選択的に、本発明は組換えサルウイルスベクターの生成に使用する本質的に同じ手順を使用して構築することができる、1以上のサルアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2aおよび/またはE4 ORF6を発現する細胞系を提供する。そのような細胞系は、これらの産物をコードする本質的遺伝子が削除されたアデノウイルスベクターをトランス相補するために、あるいはヘルパー−依存性ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要なヘルパー機能を提供するために利用することができる。本発明による宿主細胞の生成には、選択したDNA配列の集成のような技術が関与する。この集成は通例の技術を利用して達成することができる。そのような技術は周知であり、そしてSambrook et al.、同上に記載されているcDNAおよびゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応、合成法および所望するヌクレオチド配列を提供する任意の他の適当な方法と組み合わせたアデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用を含む。
【0090】
さらに別の選択では、本質的なアデノウイルス遺伝子産物はアデノウイルスベクターおよび/またはヘルパーウイルスによりトランスで提供される。そのような場合、適当な宿主細胞は原核(例えば細菌)細胞および昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核細胞を含む任意の生物から選択することができる。特に望ましい宿主細胞は限定するわけではないがA549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK293細胞またはPERC6(その両方が機能的アデノウイルスE1を発現する)[Fallaux,FJ et al,(1998)、Hum.Gene Ther,9:1909−1917]、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2および初代繊維芽細胞、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む哺乳動物に由来する肝細胞および
筋芽細胞のような細胞を含む任意の哺乳動物種から選択される。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定せず;哺乳動物細胞の種類、すなわち繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞等も本発明を限定しない。
【0091】
3.ウイルス粒子の集合および細胞系のトランスフェクション
一般にミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する時、ベクターは約5μg〜約100μgのDNA、そして好ましくは約10〜約50μgのDNAの量で、約1×10細胞〜約1×1013細胞、そして好ましくは約10細胞に送達される。しかし宿主細胞に対するベクターDNAの相対的量は、選択したベクター、送達法および選択した宿主細胞のような因子を考慮して調整するとができる。
【0092】
ベクターは裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルス等を含め、当該技術分野で既知の、または上記に開示した任意のベクターでよい。ベクターの宿主細胞への導入はトランスフェクションおよび感染を含め、当該技術分野で知られているか、または上記に開示した任意の手段により行うことができる。1以上のアデノウイルス遺伝子が宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれ、エピソームとして安定に発現されるか、または一時的に発現される。遺伝子産物はすべてエピソームで一時的に発現されるか、または安定に組み込まれるか、または遺伝子産物の幾つかが安定に発現されるが、その他は一時的に発現され得る。さらに各アデノウイルス遺伝子のプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは天然のアデノウイルスプロモーターから独立して選択することができる。プロモーターは生物または細胞の特異的な生理学的状態(すなわち分化状態または複製中または静止細胞)により、あるいは例えば外から加えた因子により調節され得る。
【0093】
分子(プラスミドまたはウイルスとして)を宿主細胞へ導入することは、当業者に知られている技術を使用して、および本明細書を通して検討したように達成することができる。好適な態様では、標準的トランスフェクション技術、例えばCaPOトランスフェクションまたはエレクトロポレーションを使用する。
【0094】
アデノウイルスの選択したDNA配列ならびに導入遺伝子および他のベクター要素の種々の中間プラスミドへの集成、および組換えウイルス粒子を生成するためのプラスミドおよびベクターの使用はすべて通例の技術を使用して達成される。そのような技術にはテキスト[Sambrook et al.、同上]に記載されているような通例のcDNAのクローニング技法、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列、ポリメラーゼ連鎖反応、および所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適当な方法の使用を含む。標準的なトランスフェクションおよびコートランスフェクション技法、例えばCaPO沈殿技法を使用する。使用する他の常法には、ウイルスゲノムの相同的組換え、寒天層中のウイルスプラークの形成、シグナル生成の測定法等を含む。
【0095】
例えば所望するミニ遺伝子を含むウイルスベクターを構築し、そして集成した後、ベクターはヘルパーウイルスの存在下でインビトロでパッケージング細胞系にトランスフェクトされる。相同的組換えがヘルパーとベクター配列との間で起こり、これによりベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列の複製およびビリオンキャプシドへをパッケージングが可能となり、組換えウイルスベクター粒子が生成する。そのようなウイルス粒子を生産する現行法は、トランスフェクションに基づく。しかし本発明はそのような方法に限定されない。
【0096】
生成した組換えサルアデノウイルスは選択した導入遺伝子を選択した細胞に転移させるために有用である。パッケージング細胞系で成長した組換えウイルスを用いたインビボの実験では、本発明のE1−削除組換えサルアデノウイルスベクターが、導入遺伝子を非−
サル、好ましくはヒトの細胞へ転移させるための用途を示す。
【0097】
IV.組換えアデノウイルスベクターの使用
本発明の組換えサルアデノウイルスベクターは、ヒトまたは非−サルの獣医学上の患者に、インビトロ、エクスビボおよびインビボで遺伝子を転移するために有用である。
【0098】
本明細書に記載する組換えアデノウイルスベクターは、インビトロでヘテロロガスな遺伝子によりコードされる産物を生産するための発現ベクターとして使用することができる。例えばE1削除の位置に挿入された遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、上記のようにE1−発現細胞系にトランスフェクトすることができる。あるいは複製−可能なアデノウイルスを別の選択した細胞系で使用してもよい。次いでトランスフェクトされた細胞は通例の様式で培養され、組換えアデノウイルスがプロモーターから遺伝子産物を発現することを可能にする。次いで遺伝子産物は、タンパク質の分離およびカルチャーからの回収の既知の常法により培養基から回収され得る。
【0099】
本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39に由来する組換えサルアデノウイルスベクターは、たとえ生物が1以上のAAV血清型に対する中和抗体を有する場合でも、選択した導入遺伝子を選択した細胞にインビボまたはエクスビボで送達することができる効率的な遺伝子転移媒体を提供する。1つの態様では、rAAVおよび細胞をエクスビボで混合し;感染した細胞を常法を使用して培養し;そして形質導入した細胞を患者に再注入する。このような組成物は治療目的および防御免疫を誘導することを含む免疫感作のための遺伝子送達に特によく適している。
【0100】
より一般的には、本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39組換えアデノウイルスベクターは、以下に記載するように治療用または免疫原性分子を送達するために利用される。両方の応用について、本発明の組換えアデノウイルスベクターが組換えアデノウイルスベクターの反復送達が関与する処方での使用に特によく適していることは容易に理解されるだろう。そのような処方には典型的にはウイルスキャプシドが改変されている一連のウイルスベクターの送達を含む。ウイルスキャプシドはそれぞれの後の投与に、または特定の血清型のキャプシドを予め選択した回数(例えば1、2、3、4以上)投与した後に変えることができる。このように処方には第1のサルキャプシドを持つrAdの送達、第2のサルキャプシドを持つrAdの送達、そして第3のサルキャプシドでの送達を含むことができる。本発明のAdキャプシドを単独で、互いに組み合わせて、または他のAd血清型と組み合わせて使用する様々な他の処方は、当業者には明白であろう。場合によりそのような処方には他の非−ヒト霊長類のアデノウイルス、ヒトアデノウイルスまたは本明細書に記載するような人工血清型のキャプシドを持つrAd投与を含んでもよい。処方の各フェイズでは、単一のAd血清型キャプシドの一連の注射(または他の送達経路)、続いて別のAd血清型キャプシドの一連の注射の投与を含んでもよい。あるいは本発明の組換えAdベクターは、他のウイルス系、非−ウイルス送達系、タンパク質、ペプチドおよび他の生物学的に活性な分子を含む他の非−アデノウイルス媒介型送達系が関与する処方に利用することができる。
【0101】
以下の章では本発明のアデノウイルスベクターを介して送達され得る例示分子に焦点をあてる。
【0102】
A.治療用分子のAd−媒介型送達
1つの態様では、上記組換えベクターは遺伝子治療に関して公開された方法に従いヒトに投与される。選択した導入遺伝子を持つサルのウイルスベクターは、好ましくは生物学的に適合性がある溶液または製薬学的に許容され得る送達賦形剤中に懸濁されて患者に投与することができる。適当な賦形剤には滅菌塩水を含む。製薬学的に許容され得る担体と
なることが知られており、そして当業者に周知な他の水性および非−水性の等張滅菌注射溶液、および水性および非−水性の滅菌懸濁液を、この目的に使用することができる。
【0103】
サルアデノウイルスベクターは標的細胞を形質導入し、そして医学分野の当業者により定められ得る副作用無しで、または医学的に許容される生理学的効果で治療的利益を提供するために、十分なレベルの遺伝子転移および発現を提供するために十分な量で投与される。通例の、そして製薬学的に許容され得る投与経路には、限定するわけではないが網膜への直接送達および他の眼内送達法、肝臓への直接的送達、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸、経口および他の非経口投与経路を含む。投与経路は所望により組み合わせるか、または導入遺伝子または状態に依存して調整することができる。投与経路は主に処置する状態の性質に依存する。
【0104】
ウイルスベクターの投薬用量は、処置する状態、患者の年齢、体重および健康のような因子に主に依存し、そして患者間で変動し得る。例えばウイルスベクターの治療に効果的な成人ヒトまたは獣医学上の投薬用量は、一般に約1×10〜約1×1015粒子、約1×1011〜1×1013粒子、または約1×10〜1×1012粒子のウイルス濃度を含む約100μL〜約100mLの範囲内の担体である。投薬用量は動物のサイズおよび投与経路に依存した範囲になるだろう。例えば筋肉内注射に適するヒトまたは獣医学上の投薬用量(動物の体重約80kgあたり)は、1つの部位に1mLあたり約1×10〜約5×1012粒子の範囲である。場合により多くの投与部位に送達してもよい。別の例では、適当なヒトまたは獣医学上の投薬用量は、経口製剤について約1×1011〜約1×1015粒子の範囲でよい。当業者はこれらの用量を投与経路、および組換えベクター用の治療またはワクチンの応用に依存して調整することができる。導入遺伝子の発現レベル、または免疫原について循環する抗体レベルは、投薬頻度を決定するために監視することができる。投与の時期および頻度を決定するためのさらに別の方法は当業者に直ちに明らかである。
【0105】
方法の任意の工程には、ウイルスベクターの投与と同時、前、または後のいずれかに適当量の短期作用免疫調節物質を患者に同時投与することを含む。選択した免疫調節物質は、本発明の組換えベクターに対して向けられた中和抗体の形成を阻害できるか、またはベクターの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)排除を阻害できる作用物質とここでは定義する。免疫調節物質はTヘルパー物質(TH1またはTH2)とB細胞との間の相互作用を妨害して抗体形成を阻害することができる。あるいは免疫調節物質はTH1細胞とCTLsとの間の相互作用を阻害して、ベクターのCTL排除が発生することを減少させることができる。種々の有用な免疫調節物質およびそれを使用するための投薬用量が、例えばYang et al.,J.Virol.,70(9)(1996年9月);1996年5月2日に公開された国際公開第96/12406号パンフレット;および国際特許出願第PCT/US96/03035に開示され、これらはすべて引用により本明細書に編入する。
【0106】
1.治療用の導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療用産物には、限定するわけではないがインスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオポイエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリトロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGF、アクチビン、インヒビンを含むトランスフォーミ
ング増殖因子スーパーファミリーの任意のもの、あるいは任意の骨誘導タンパク質(BMP)のBMPs1〜15、増殖因子のヒレグリン/ニューレグリン/ARIA/neu 分化因子(NDF)ファミリーの任意のもの、神経増殖因子(NGF)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ノルチュリン(neurturin)、アグリン、セマフォリン/コラポスリンファミリーの任意のもの、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン類(ephrins)、ノギン、ソニックヘッジホッグおよびチロシンヒドロキシラーゼを含むホルモンおよび増殖および分化因子を含む。
【0107】
他の有用な導入遺伝子産物には、限定するわけではないがトロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を含む)、単球誘引タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子およびインターフェロン、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを含む免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系により生産される遺伝子産物も、本発明に有用である。これらには限定するわけではないが免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞レセプター、キメラT細胞レセプター、単鎖T細胞レセプター、クラスIおよびクラスII MHC分子ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を含む。有用な遺伝子産物には補体調節タンパク質、膜コファクタータンパク質(membrane cofactor protein:MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質を含む。
【0108】
さらに他の有用な遺伝子産物には、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の任意のレセプターを含む。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)レセプター、高密度リポタンパク質(HDL)レセプター、超低密度リポタンパク質(VLDL)レセプターおよびスカベンジャーレセプターを含むコレステロール調節に関するレセプターを包含する。また本発明は、グルココルチコイドレセプターおよびエストロゲンレセプター、ビタミンDレセプターおよび他の核レセプターを含むステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーの員のような遺伝子産物も包含する。加えて有用な遺伝子産物には、junfos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP−2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETS−ボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAAT−ボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS−結合タンパク質、STAT、GATA−ボックス結合タンパク質、例えばGATA−3、および翼型ヘリックス(winged helix)タンパク質のフォークヘッド(forkhead)ファミリーのような転写因子を含む。
【0109】
他の有用な遺伝子産物には、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンベータシンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル−coA、デヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ−グリコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性繊維症膜貫通調節(CFTR)配列、およびジストロフィンcDNA配
列を含む。
【0110】
他の有用な遺伝子産物には、挿入、削除またはアミノ酸置換を含む自然には存在しないアミノ酸配列を有するキメラまたはハイブリッドポリペプチドのような天然には存在しないポリペプチドを含む。例えば単鎖の工作された免疫グロブリンは特定の免疫抑制患者に有用となり得る。他の種類の天然には存在しない遺伝子配列には、標的の過剰発現を低下させるために使用することができるアンチセンス分子およびリボザイムのような触媒核酸を含む。
【0111】
遺伝子の発現の減少および/または調節は、癌および乾癬のような過増殖細胞の特徴である過増殖状態を処置するために特に望ましい。標的とするポリペプチドには、正常細胞に比べて過増殖細胞で排他的に、または高レベルで生産されるポリペプチドを含む。標的抗原には、myb、myc、fynおよびトランスロケーション遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFのような癌遺伝子によりコードされるポリペプチドを含む。標的抗原として癌遺伝子産物に加えて、抗−癌治療および防御的処方のための標的ポリペプチドには、B細胞リンパ腫により作られた抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞レセプターの可変領域を含み、これらは態様によっては自己免疫疾患の標的抗原としても使用される。他の腫瘍−関連ポリペプチドは、モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを含む腫瘍細胞中で高レベルで見いだされるポリペプチドのような標的ポリペプチドとして使用することができる。
【0112】
他の適切な治療用ポリペプチドおよびタンパク質には、自己免疫疾患、および細胞レセプターおよび自己に向かう抗体を生産する細胞を含む自己免疫に関連する標的に対して広範な防御免疫応答を与えることによる疾患を患っている個体を処置するために有用なものを含む。T細胞性自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む。これらの各疾患は、内因性の抗原に結合し、そして自己免疫疾患に関係する炎症カスケードを開始するT細胞レセプター(TCRs)を特徴とする。
【0113】
本発明のサルアデノウイルスベクターは、導入遺伝子を多数のアデノウイルスが媒介して送達することが望まれる治療的処方、例えば同じ導入遺伝子の再送達が関与する処方または他の導入遺伝子の送達が関与する併用処方に特によく適している。そのような処方には、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39サルアデノウイルスベクターの投与、続いて同じ血清型のアデノウイルスに由来するベクターの再投与を含むことができる。特に望ましい処方には、本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39サルアデノウイルスベクターの投与を含み、ここで初回投与で送達されるウイルスベクターの血清型は、1以上の後の投与で使用するウイルスベクターの血清型とは異なる。例えば治療的処方には、Pan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39ベクターの投与および同じかまたは異なる血清型の1以上のアデノウイルスベクターの反復投与を含む。別の例では、治療的処方にはアデノウイルスベクターの投与、続いて最初に送達したアデノウイルスベクターとは異なる血清型の本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39ベクターの反復投与、そして場合によりさらに同じか、または好ましくは前の投与工程でのベクターの血清型とは異なる別のベクターの投与を含む。これらの処方は本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39血清型を使用して構築したアデノウイルスベクターの送達には限定されない。むしろこれらの処方は限定するわけではないが他のサルアデノウイルス血清型(例えばPan9またはC68、C1等)、他の非−ヒト霊長類のア
デノウイルス血清型、またはヒトのアデノウイルス血清型を含む他のアデノウイルス血清型のベクターを、本発明の1以上のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39ベクターと組み合わせて容易に利用することができる。そのようなサルまたは他の非ヒト霊長類アデノウイルス血清型は、本明細書のいたるところで検討する。さらにこれらの治療的処方には、本発明のPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25および/またはSV39アデノウイルスベクターを、非−アデノウイルスベクター、非−ウイルスベクターおよび/または種々の他の治療的に有用な化合物または分子と組み合わせて、同時または順次のいずれかで送達することを含んでもよい。本発明はこれらの治療的処方には限定されず、その多様性は当業者には容易に明らかである。
【0114】
B.免疫原導入遺伝子のAd−媒介型送達
組換えサルアデノウイルスは、免疫原組成物としても使用することができる。本明細書で使用する免疫原組成物は、哺乳動物、そして好ましくは霊長類への送達後に免疫原組成物により送達された導入遺伝子産物に対する体液性(例えば抗体)または細胞性(例えば細胞傷害性T細胞)応答が高められる組成物である。本発明は所望の免疫原をコードする遺伝子をアデノウイルス配列の削除に含むことができる組換えサルAdを提供する。サルアデノウイルスはヒト起源のアデノウイルスに比べて、異なる動物種で生きている組換えウイルスワクチンとして使用するためにより適していると思われるが、そのような使用に限定されない。組換えアデノウイルスは、抗原(1つまたは複数)が免疫応答の誘導に重要な任意の病原体に対する予防用または治療用ワクチンとして使用することができ、そしてすでに同定され、そしてそのcDNAを利用することができる病原体の伝播を制限することができる。
【0115】
そのようなワクチン(または他の免疫原性)組成物は、上記のように適当な送達媒体中に配合される。一般に免疫原性組成物の用量は、治療用組成物について上記に定めた範囲である。選択した遺伝子の免疫のレベルは、もしあれば追加免疫についての必要性を決定するために監視することができる。血清中の抗体力価の評価後、任意に追加免疫感作することが望ましいかもしれない。
【0116】
場合により本発明のワクチン組成物は、例えばアジュバント、安定化剤、pH調整剤、保存剤等を含む他の成分を含むように配合することができる。そのような成分はワクチン分野の当業者には周知である。適当なアジュバントの例は、限定するわけではないがリポソーム、ミョウバン、モノホスホリル脂質A、およびサイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、リガンドおよび任意のそれらの組み合わせのような生物学的に活性因子を含む。これらの生物学的に活性な因子のあるものは、例えばプラスミドまたはウイルスベクターを介してインビボで発現され得る。例えばそのようなアジュバントは抗原をコードする初回感作DNAワクチンと共に投与して、抗原のみをコードするDNAワクチンでの初回感作で生じる免疫応答に比べて、抗原−特異的免疫応答を強化することができる。
【0117】
組換えアデノウイルスは「免疫原的量」、すなわち所望の細胞をトランスフェクトし、そして免疫応答を誘導するために選択した遺伝子の十分な発現レベルを提供するための投与経路で効果的な組換えアデノウイルスの量で投与される。防御免疫が提供される場合、組換えアデノウイルスは感染および/または再発疾患の防止に有用なワクチン組成物になると考えられる。
【0118】
あるいは、またはさらに、本発明のベクターは選択した免疫原に対して免疫応答を誘導するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする導入遺伝子を含んでもよい。本発明の組換えアデノウイルスは、ベクターにより発現される挿入されたヘテロロガスな抗原性タンパク質に対する細胞傷害性T細胞および抗体の誘導に高度に効率的であることが予想される。
【0119】
例えば免疫原は種々のウイルス科から選択することができる。免疫応答を望む所望のウイルス科の例は、一般的な風邪の原因の約50%を占めるライノウイルス属を含むピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスおよびA型肝炎ウイルスのようなヒト腸内ウイルスを含む腸内ウイルス属;および主に非−ヒト動物において足および口の疾患の原因であるアフトウイルス(apthoviruses)属を含む。ウイルスのピコルナウイルス科内で、標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびVPGを含む。別のウイルス科には、流行性胃腸炎の重要な病原体であるウイルスのノーウォーク群を包含するカルシウイルス科を含む。ヒトおよび非−ヒト動物に免疫応答を誘導するための標的抗原として使用するために望ましいさらに別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロス川ウイルスおよびベネゼエラ、東部および西部ウマ脳髄膜炎を含むアルファウイルス属、および風疹ウイルスを含むルビウイルスを含むトガウイルス科である。フラビウイルス科にはデング、黄熱、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介性脳炎ウイルスを含む。他の標的抗原は、感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数の非−ヒトウイルス、および普通の風邪および/または非−A、BまたはC型肝炎の原因となり得るヒト呼吸コロナウイルスを含むC型肝炎またはコロナウイルス科から生成することができる。コロナウイルス科内で、標的抗原にはE1(Mまたはマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(Sまたはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEまたは赤血球凝集素−エルテロース(elterose)とも呼ばれる)、糖タンパク質(すべてのコロナウイルスに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオキャプシド)を含む。さらに別の抗原は、ベシキュロウイルス(例えば水疱性口内炎ウイルス)および一般的な狂犬病ウイルス(例えば狂犬病)を含むラブドウイルス科を標的とすることができる。ラブドウイルス科内で適当な抗原は、Gタンパク質またはNタンパク質に由来することができる。マールブルグおよびエボラウイルスのような出血性の発熱ウイルスを含むフィロウイルス科も抗原の適当な供給源となり得る。パラミクソウイルス科には、1型パラインフルエンザウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、ウシ3型パラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(ムンプスウイルス)、2型パラインフルエンザウイルス、4型パラインフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびイヌジステンバーを含むモルビリウイルス、および呼吸合胞体ウイルスを含むニューモウイルスを含む。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルスの科に分類され、そして抗原の適切な供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブンヤウイルス科には、ブンヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラ クロス(La Crosse))、フレホウイルス属(リフト渓谷熱)、ハンタウイルス属(プレマーラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)および種々の割り当てられていないブンガウイルス属(bungavirus)を含む。アレナウイルス科は、LCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルス科には、レオウイルス属、ロタウイルス属(これは小児の急性胃腸炎の原因である)、オルビウイルス属およびカルチウイルス(cultivirus)属(コロラドダニ熱、レボンボ(Lebombo)(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)を含む。
【0120】
レトロウイルス科には、ネコ白血病ウイルス、HTLV1およびHTLVII、レンチウイルス(lentivirinal)(これはヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルスおよびスプーマウイルスを含む)のようなヒトおよび獣医学上の疾患を包含するオンコリウイルス(oncorivirinal)の亜科を含む。レンチウイルスの中から多くの適当な抗原が記載され、そして容易に選択することができる。適当なHIVおよびSIV抗原の例には限定するわけではないがgag、pol、Vif、Vpx、VPR、En
v、Tat、NefおよびRevタンパク質、ならびにそれらの種々のフラグメントを含む。例えばEnvタンパク質の適当なフラグメントにはgp120、gp160、gp41のようなそのサブユニット、またはそれらのより小さいフラグメント、例えば少なくとも約8個のアミノ酸長のフラグメントを含むことができる。同様にtatタンパク質のフラグメントを選択することができる。[米国特許第5,891,994号および同第6,193,981号明細書を参照にされたい。]またD.H.Barouch et al.,J.Virol.,75(5):2462−2467(March 2001)、およびR.R.Amara,et al.,Science,292:69−74(6 April 2001)に記載されたHIVおよびSIVタンパク質も参照にされたい。別の例では、HIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドを使用して、融合ペプチドまたは他の免疫原性分子を形成することができる。例えば2001年、8月2日に公開された国際公開第01/54719号および1999年4月8日に抗体された同第99/16884号パンフレットに記載されたHIV−1 Tatおよび/またはNef融合タンパク質および免疫感作処方を参照にされたい。本発明は本明細書に記載するHIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドに限定されない。さらにこれらのタンパク質に対する様々な修飾が記載され、そして当業者は容易に作成することができる。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記載されている修飾gagタンパク質を参照にされたい。さらに任意の所望するHIVおよび/またはSIV免疫原を単独で、または組み合わせて送達することができる。そのような組み合わせは単一ベクターから、または多数のベクターからの発現を含むことができる。場合により別の組み合わせには1以上の発現した免疫原の送達とタンパク質状の1以上の免疫原の送達が関与する。そのような組み合わせを以下により詳細に検討する。
【0121】
パポバウイルス科にはポリオーマウイルス(BKUおよびJCUウイルス)の亜科およびパピローマウイルス(癌または乳頭腫の悪性の進行に関連する)の亜科を含む。アデノウイルス科には呼吸疾患および/または腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を含む。パルボウイルス科のネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコパンロイコペニアウイルス(panleucopeniavirus)、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルス。ヘルペスウイルス科には、シンプレックスウイルス(simplexvirus)属(HSVI、HSVII)、バリセーロウイルス属(varicellovirus)(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)を含むアルファヘルペスウイルス亜科、およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス属(muromegalovirus))を含むベータヘルペスウイルス亜科、およびリンホクリプトウイルス属(lymphocryptovirus)、EBV(バーキットリンパ腫)、伝染性鼻気管支炎、マルク病ウイルスおよびラジノウイルス属(rhadinovirus)を含むガンマヘルペスウイルス亜科を含む。ポックスウイルス科にはオルソポックスウイルス(バリオーラ(Variola)(痘瘡)およびワクシニア(Vaccinia)(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルスを包含するポックスウイルス亜科、およびエントモポックスウイルスの亜科を含む。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスを含む。適当な抗原源となり得る1つの分類されていないウイルスは、デルタ肝炎ウイルスである。さらに別のウイル源には、鳥類感染性嚢疾患ウイルスおよびブタ呼吸および生殖症候群ウイルスを含む。アルファウルイス科にはウマ関節炎ウイルスおよび種々の脳炎ウイルスを含む。
【0122】
本発明はヒトまたは非−ヒト動物を、ヒトおよび非−ヒト動物に感染するか細菌、菌類、寄生微生物もしくは多細胞寄生生物を含む他の病原体に対して免疫感作するために有用な免疫原、あるいは癌細胞または腫瘍細胞に由来する免疫原も包含する。細菌病原体の例には、病原性グラム−陽性球菌を含み、それらには肺炎球菌(pneumococci);ブドウ球菌(staphylococci);および連鎖球菌(streptococ
ci)を含む。病原性グラム−陰性球菌には髄膜炎菌(meningococcus);淋菌(gonococcus)を含む。病原性腸内グラム−陰性桿菌には、腸内細菌科(enterobacteriaceae);シュードモナス(pseudomonas)、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびイケネーラ属(eikenella);類鼻疽;サルモネラ属(salmonella);シゲーラ属(shigella);ヘモフィラス属(haemophilus);モラクセーラ属(moraxella);H.デュクレイ(ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ属(brucella);野兎病菌(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア属(yersinia)(パスツレラ属);ストレプトバシラス モニリホルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリウム属(spirillum)を含む;グラム陽性桿菌にはリステアリモノシトゲネシス(listeria monocytogenes);豚丹毒菌(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis);(炭疽);ドノヴァン症(鼠径肉芽腫);およびバルトネラ症を含む。病原性の嫌気性細菌により引き起こされる疾患には、破傷風;ボツリヌス中毒;他のクロストリジウム属(clostridia);結核;ハンセン病;および他のマイコバクテリア属(mycobacteria)を含む。病原性スピロヘーター疾患には梅毒;トリポネーマ症;フランベジア、ピンタおよび性行為外の梅毒;およびレプトスピラ症を含む。より高等な病原性細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染には、放線菌症;ノルカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラズマ症およびコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症およびムコール症;スポロトリクス症;パラコクシジオイドミコーシス症、ペトリリジオーシス(petrielldiosis)、トルロプシス症、菌腫およびクロモミコシース;および皮膚糸状菌症を含む。リケッチア感染にはチフス熱、ロッキー山熱病、Q熱およびリケッチア痘を含む。マイコプラズマおよびクラミジア感染の例には:マイコプラズマ肺炎;リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染を含む。病原性真核生物には、病原性原生成物および蠕虫を含み、そしてそれらにより引き起こされる感染には;アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症;トリパノーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii)、トリカンス(Trichans);トキソプラズマ ゴンジ(Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア鞭毛虫症;旋毛虫症;フィラリア症;住虫吸虫症;線虫症;吸虫綱に属する吸虫類または吸虫類;および多節条虫亜綱(条虫)感染を含む。
【0123】
多くのこれら生物および/またはそれらにより生産されたトキシンが疾病管理センター[(CDC)、米国の保健福祉省]により、生物学的攻撃に使用するための可能性を有する病原体として同定された。例えばこれら生物剤の幾つかには、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(悪疫)、大痘瘡(痘瘡)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、およびウイルス性出血熱[フィロウイルス属(例えばエボラ、マールブルグ]、およびアレナウイルス属[例えばラッサ、マチュポ(Machupo])これらすべては現在、カテゴリーA剤に属する;Q熱リケッチア菌(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ種(Brucella)(ブルセラ症)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(鼻疽)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)(類鼻疽)、トウゴマ(Ricinus communis)およびそのトキシン(リシン トキシン)、ガス壊疽(Clostridium perfringens)およびそのトキシン(イプシロントキシン)、ブドウ球菌種(Staphylococcus)およびそのトキシン(エンテロトキシンB)、クラミジア シッタシ(Chlamydia psittaci)、オウム病、水の安全
性に関する脅威(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、クリトスポリジウム パルバム(Crytosporidium parvum)、チフス熱(発疹チフスリケッチア(Richettsia powazekii)およびウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネゼエラ ウマ 脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);このすべてが現在、カテゴリーB剤に属する;および現在、カテゴリーC剤に分類されるニパン(Nipan)ウイルスおよびハンタウイルスを含む。さらにそのように分類されるか、または異なって分類される他の生物を、将来、そのような目的に同定し、かつ/または使用することができる。ウイルスベクターおよび本明細書に記載する他の構築物は、感染または他の副作用を防止し、かつ/または処置するこれらの生物、ウイルス、それらのトキシンまたは副産物に由来する抗原を、これらの生物剤で送達するために有用であると理解されるであろう。
【0124】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投与は、CTLを含む免疫応答を誘導してこれらT細胞を排除する。RAでは、疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−3、V−14、V−17およびVα−17を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。MSでは、疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−7およびVα−10を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。硬皮症では、この疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−6、V−8、V−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28およびVα−12を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードする組換えサルアデノウイルスの送達は、硬皮症に関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。
【0125】
C.Ad−媒介型送達法
治療レベルまたは免疫のレベルでは選択した遺伝子を監視して、もしあるならば追加免疫の必要性を決定する。CD8+T細胞応答あるいは場合により血清中の抗体力価の評価後に、任意の追加免疫感作が望ましいかもしれない。場合により本発明の組換えサルアデノウイルスベクターを単回投与または様々な処方を組み合わせて、例えば他の有効成分が関与する処置計画または過程と組み合わせて、または初回−追加処方(prime−boost regimen)で送達することができる。そのような様々な処方が当該技術分野で記載され、そして容易に選択することができる。
【0126】
例えば初回−追加処方は、タンパク質またはそのような抗原をコードする配列を持つ組換えウイルスのような従来の抗原で第2、追加、投与に対して、免疫系を初回免疫感作するためのDNA(例えばプラスミド)に基づくベクターの投与を含むことができる。例えば引用により本明細書に編入する2000年3月2日に公開された国際公開第00/11140号明細書を参照にされたい。あるいは免疫感作処方には、抗原を持つベクター(ウイルスまたはDNAに基づくいずれか)またはタンパク質に対する免疫応答を増強(boost)するために、本発明の組換えサルアデノウイルスベクターの投与を含むことができる。さらに別の選択では、免疫感作処方にはタンパク質の投与に続いて抗原をコードするベクターでの追加免疫を含む。
【0127】
1つの態様では、本発明は上記抗原を持つプラスミドDNAベクターを送達し、続いて本発明の組換えサルアデノウイルスベクターでの追加免疫により、選択した抗原に対する免疫応答を初回そして追加免疫感作する方法を提供する。1つの態様では、初回−追加処方には、初回および/または追加免疫媒体からの複数のタンパク質の発現を含む。例えば、HIVおよびSIVに対する免疫応答を生じるために有用なタンパク質サブユニットを
発現させるために多タンパク質処方を記載するR.R.Amara,Science,292:69−74(2001年4月6日)を参照にされたい。例えばDNAの初回免疫感作は、Gag、Pol、Vif、VPXおよびVprおよびEnv、TatおよびRevを1回の転写から送達することができる。あるいはSIV Gag、PolおよびHIV−1 Envは本発明の組換えアデノウイルス構築物で送達される。さらに別の処方が、国際公開第99/16884号および同第01/54719号パンフレットに記載されている。
【0128】
しかし初回−追加処方はHIVの免疫感作またはこれら抗原の送達に限定されない。例えば、初回免疫感作には本発明の第1のチンパンジーベクターを送達し、続いて第2のチンパンジーベクターで、あるいは抗原自体をタンパク質形態で含む組成物で追加免疫感作することを含む。1つの態様では、初回−追加処方は抗原が誘導されるウイルス、細菌または他の生物に対する防御免疫応答を提供することができる。別の望ましい態様では、初回−追加処方は治療薬が投与される状態の存在を検出するための通例のアッセイを使用して測定することができる治療効果を提供する。
【0129】
初回免疫感作組成物は、身体の様々な部位に用量依存的様式で投与することができ、これは所望の免疫応答を標的とする抗原に依存する。本発明は注射(1回または複数回)の量および部位または製薬学的担体には限定されない。むしろ処方には初回および/または追加免疫感作工程を含むことができ、その各々が単回用量、または毎時間、毎日、毎週もしくは毎月もしくは毎年投与される投薬用量を含むことができる。例として哺乳動物は約10μgから約50μgの間のプラスミドを担体中に含む1または2回の用量を受けることができる。望ましいDNA組成物の量は、約1μgから約10,000μgの間のDNAベクターの範囲である。投薬用量は患者の体重1kgあたり約1μgから約1000μgのDNAで変動し得る。送達の量または部位は、望ましくは哺乳動物の同一性および状態に基づき選択される。
【0130】
哺乳動物への抗原の送達に適するベクターの投薬用量単位を本明細書に記載する。投与用のベクターは、そのような投与における当業者に明らかな等張性塩;等張性塩溶液または他の製剤のような製薬学的または生理学的に許容され得る担体に懸濁または溶解することにより調製される。適切な担体は当業者には明らかであり、そして大部分が投与経路に依存する。本発明の組成物は、生分解性の生物適合性ポリマーを使用した徐放性製剤で、あるいはミセル、ゲルおよびリポソームを使用した部位上(on−site)の送達により、上記の経路に従い哺乳動物に投与することができる。場合により本発明の初回免疫感作工程は、初回免疫感作組成物と適当量の本明細書に定めるようなアジュバントを投与することを含んでなる。
【0131】
好ましくは追加免疫感作組成物は、哺乳動物個体に初回免疫感作組成物を投与してから約2〜約27週間後に投与する。追加免疫感作組成物の投与は、初回感作DNAワクチンにより投与されるものと同じ抗原を含むか、または送達できる有効量の追加免疫感作組成物を使用して行う。追加免疫感作組成物は、同じウイルス源(例えば本発明のアデノウイルス配列)または別の起源に由来する組換えウイルスベクターから成ることができる。あるいは「追加免疫感作組成物」は、初回感作するDNAワクチンにコードされる抗原と同じ抗原を含む組成物であることができるが、タンパク質またはペプチドの状態であり、この組成物はその宿主に免疫応答を誘導する。別の態様では追加免疫感作組成物は、哺乳動物細胞中でのDNA配列の発現を支配する調節配列の制御下に、抗原をコードするDNA配列、例えば周知な細菌またはウイルスベクターのようなベクターを含む。追加免疫感作組成物の主な要件は、組成物の抗原が初回免疫感作組成物にコードされる抗原と同じ抗原であるか、または交差反応性の抗原であることである。
【0132】
別の態様では本発明のサルアデノウイルスベクターは、様々な他の免疫感作および治療的処方に使用するにも十分に適している。そのような処方には本発明のサルアデノウイルスベクターの送達と同時に、または順次に異なる血清型キャプシドのAdベクターの送達を含むことができ、この処方では本発明のアデノウイルスベクターが非−Adベクターと同時に、または順次に送達され、この投薬法は本発明のアデノウイルスベクターがタンパク質、ペプチドおよび/または他の生物学的に有用な治療薬または免疫原性化合物と同時に、または順次に送達される。そのような使用は当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】チンパンジーアデノウイルスC1[配列番号13]、チンパンジーアデノウイルスC68(Pan−9)[配列番号14]および本発明の新規Pan5[配列番号15]、Pan6[配列番号16]およびPan7[配列番号17]チンパンジーアデノウイルス配列のキャプシドタンパク質ヘキソンのL1およびL2ループ部分のアミノ酸配列のアライメントを提供する。介在する保存領域はアデノウイルス血清型間で保存されたペデスタルドメインの部分である。
【図2】チンパンジーC68(Pan−9)[配列番号18]、Pan−6[配列番号19]、Pan−7[配列番号20]およびPan−5[配列番号21]およびヒトアデノウイルス血清型2[配列番号22]および5[配列番号23]の繊維小塊ドメインのアミノ酸配列のアライメントを提供する。
【0134】
以下の実施例はサルアデノウイルスのクローニングおよび本発明の例示的な組換えアデノウイルスベクターの構築を具体的に説明する。これらの実施例は具体的説明だけであり、そして本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0135】
ウイルス増殖
元はチンパンジーのリンパ節から単離したPan5[ATCC寄託番号VR−591]、Pan6[ATCC寄託番号VR−592]およびPan7[ATCC寄託番号VR−593]ウイルスを、293細胞[ATCC CRL1573]中で増殖させた。典型的には、これらの細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)[シグマ(Sigma)またはハイクローン(Hyclone)、ローガン、ユタ州]および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ)を補充したダルベッコの改良イーグル培地(DMEM;シグマ、セントルイス、ミズーリ州)で培養した。293細胞の感染は、2%FCSを補充したDMEM中で最初に24時間行い、その後FCSを加えて10%の最終濃度とした。感染した細胞は、100%の細胞がウイルス−誘導の細胞変性効果(CPE)を表す時に収穫し、そして次いで回収し、そして遠心により濃縮する。細胞ペレットを10mM Tris(pH8.0)に再懸濁し、そして3サイクルの凍結および解凍により分解する。ウイルス調製物は、塩化セシウム密度勾配で2回の超遠心工程後に得、そしてウイルスのストックを1〜5×1012粒子/mlに10mM Tris/100mM NaCl/50%グリセロール中で希釈し、そして−70℃で保存する。
【0136】
293細胞がこれらのアデノウイルスを増殖させる能力は、他の非−ヒトアデノウイルス血清型の知識に基づく予想を超えた。
【0137】
ウイルス 収量(8×10個の細胞で生産されたウイルス粒子)
Pan5 8.8×1013
Pan6 1.6×1014
Pan7 8.8×1013
【実施例2】
【0138】
ウイルスゲノムDNAの特性決定
ゲノムDNAは実施例1の精製したウイルス調製物から分離し、そしてHindIIIまたはBamHI制限酵素で製造元の推薦に従い消化した。結果(示さず)は、本発明のPan5、Pan6、Pan7ゲノムおよび公開されているPan9(C68)ゲノムが異なる制限パターンを示し、すなわち互いに異なることを示した。
【0139】
Pan5、Pan6、Pan7のヌクレオチド配列を決定した。Pan5 DNAの上鎖のヌクレオチド配列を配列番号1に報告する。Pan6 DNAの上鎖のヌクレオチド配列を配列番号5に報告する。Pan7 DNAの上鎖のヌクレオチド配列を配列番号9に報告する。
【0140】
ウイルスDNA配列の調節およびコード領域は、通常の設定で上記の「Clustal
W」プログラムを使用した既知のアデノウイルス配列に対する相同性により同定した。アデノウイルス配列を提供する上記の表を参照にされたい。オープンリーディングフレイムが翻訳され、そして予想されるアミノ酸配列についてすでに記載されたアデノウイルスのタンパク質配列、Ad4、Ad5、Ad7、Ad12およびAd40に対する相同性について調査した。
【0141】
配列の分析は、ヒトアデノウイルスに存在するものと類似するゲノム構成を明らかとし、ヒトAd4と最大の類似性があった。しかしヘキソン超可変領域中の実質的な差異が、チンパンジーアデノウイルスとAdHu4を含む他の既知のアデノウイルスとの間で記録された。これらの差異はすでに得られている血清学的な交差反応性データによく合う(以下を参照にされたい)。
【0142】
ヘキソン配列の部分のアライメントを図1に示す。示した部分は外側に配置されて伸びているループDE1およびFG1に相当するヘキソンの領域に由来し、ここに血清間の最大の可変性が観察される。ヘキソンの塩基に貢献し、血清間型で高度に保存されている介在部分も存在する(公開されたAdC68配列の残基308〜368に対応する;米国特許第6,083,716号明細書)。以下の表はヘキソンタンパク質中のアミノ酸の対での比較をまとめる。
【0143】
【表12】

【0144】
チンパンジーアデノウイルスの繊維小塊ドメイン(レセプター結合の原因である)分析は、構造に全体的な類似性を示す(図2)。
【0145】
huAd5とC68との間のE1タンパク質の配列類似性の程度(以下の表を参照にされたい)は、huAd5とPan−5、Pan−6とPan−7間と同様である。
【0146】
【表13】

【0147】
【表14】

【0148】
AdC5、AdC6およびAdC7の複製−欠損変更体は、ミニ遺伝子カセットがE1aおよびE1b遺伝子の位置に挿入されている以下の実施例に記載されている分子クローニング法により作成した。組換えウイルスの分子クローンをレスキュー(rescued)し、そして公開されているCsCl沈降法[K.Fisher et al.,J.Virol.70:520(1996)]を使用する大規模精製用の293細胞で成長させた。ベクターの収量は、約1×10個の293細胞が対応するウイルスに感染している50プレート(150mm)調製(prep)に基づいた。収量は分光光度計でウイルス
粒子濃度を測定することにより決定した。E1−欠損ウイルスを構築した後、HEK293細胞(ヒトアデノウイルス血清型5E1機能を発現する)が新規ウイルスベクターのE1欠損をトランス−相補し、そして高力価ストックの生産を可能にすることを決定した。これら2、3の組換えウイルスのウイルス収量の例を以下の表に示す。
【0149】
これらのベクターについて導入遺伝子、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アルファ−1−アンチ−トリプシン(A1AT)、エボラ糖タンパク質(ebo)、膜貫通および細胞質ドメインを欠く可溶性エボラ糖タンパク質変異体(sEbo)、およびエボラ糖タンパク質の3種の欠損突然変異体(EboΔ2、EboΔ3およびEboΔ4)が、サイトメガロウイルスプロモーター(CMV)により発現された。以下の表では、NDは実験を行わなかったことを示す。
【0150】
【表15】

【0151】
ヒトアデノウイルスE1が本発明のE1−欠損チンパンジーウイルスをトランス−相補する能力は、これが本発明のE1−欠損チンパンジーアデノウイルスベクターの生産を可能とすると同時に、ヒトAdと本明細書に記載するチンパンジーアデノウイルスとの間の配列の差異による相同的組換えの危険性を排除するので大変有利である。
【実施例3】
【0152】
Pan5、6、7ウイルスの血清学的実験
ヘキソン超可変領域中の差異から、C5、C6およびC7ウイルスはAdHu4を含むヒトアデノウイルスとは血清学的に異なることが予想された。
【0153】
1.野生型ウイルスの交差反応性
抗体の交差反応性を決定するための野生型ウイルスのスクリーニングに関して、複製可能なウイルスを使用し、そして細胞変性効果(CPE)の阻害を測定した。簡単に説明すると、5×1012粒子/mlで保存したアデノウイルス(Adhu5、Pan−5、Pan−6、Pan−7およびAdC68)の調製物を、アッセイのために1/600に希釈した。このウイルス濃度は、中和なしで48時間以内に100%のCPEが生じることから選択した。ウイルスを293細胞(96ウェル皿中に4×10細胞/ウェル)を加える前に、1:20希釈血清を加えた。アッセイはCPEの存在または不存在として読む
;完全な中和は細胞変性効果が無いと読む。結果を以下の表にまとめる。9/36のヒト血清がAdhu5誘導CPEを中和したことは、ヒトの個体群における以前の中和抗体の予測と一致する。数は中和(分子)を示した全個体 対 調査した総数(分母)を示す。ND=測定成せず。
【0154】
【表16】

【0155】
調査したすべてのヒト血清の中で、35/36がAdC68に対する中和について陰性であったが、Pan−5、Pan−6およびPan−7に対する中和については36/36が陰性であった。調査した52匹のアカゲザルのうち、いずれもチンパンジーアデノウイルスに対して中和を示さなかった;アカゲザルはHIVワクチンを評価するための好適な臨床前モデルである。20匹のチンパンジーうちの9から12匹が幾つかの別のチンパンジーアデノウイルスに対して実質的な中和を有し、実際に特有のチンパンジー−特異的病原体であるという事実と一致した。興味深いことには、Pan−5、Pan−6またはAdC68にのみ中和抗体をもつチンパンジーがおり、これらチンパンジーアデノウイルスベクターの幾つかは互いに交差中和せず、そして異なる血清型であるという仮説を支持する。
【0156】
同じアッセイを20匹のチンパンジー血清サンプルについて行った。サンプルの50%が異なる程度で(Pan5に対して40%:Pan6に対して40%;Pan7に対して55%:そしてC68に対して60%)血清学的に反応した。陽性血清サンプルの中で、それら中の1つがすべての4種のチンパンジーウイルスに対して強い中和活性を有した。
【0157】
2.組換えウイルスとの交差−中和
異なる血清型間の交差−中和の程度をより正確に測定するために、各サルアデノウイルスに対する高力価ポリクローナル抗体を得た。これはアジュバントとして前に記載されたC68チンパンジーアデノウイルスに基づく、GFPを含有する組換えウイルスを使用してウサギの筋肉内免疫感作により行った。次いで血清は本発明の3種のチンパンジーアデノウイルス、AdC5、AdC6およびAdC7のそれぞれに対して中和活性をアッセイするために使用した。ウサギ1kgあたりにC68CMVGFPベクターの5×1012のウイルス粒子を筋肉内注射し、そして同じ用量を使用して5週間後に追加免疫感作した。9週目に集めた血液は、C68ならびにPan−5およびPan−7に対して極めて有力な中和活性を示したが、Pan−6には示さず(以下の表を参照にされたい)、C68(またはPan−5およびPan−7)に基づくワクチンの投与にPan−6に基づくベクターを使用した追加免疫が効果的に続く可能性を示す。しかしこの相関性のレベルは、抗ウイルス抗体力価がこのウサギで達成されるほどは高くない状況では、再投与を必ずしも妨げないことが分かった。以下の表では+は33%CPE;++は66%CPE;+++は100%CPEを示す。
【0158】
【表17】

【0159】
3.中和抗体の検出に関する定量的アッセイ
この結果は、GFPベクターの形質導入に基づく中和抗体を検出するためのより定量的に基づくアッセイにより確認した。簡単に説明すると、C57BL/6マウス群を5.0×1010粒子/mlのPan5、Pan6、Pan7またはC68で筋肉内または静脈内で免疫感作した。28日目の採血からの血清を、1/20および1/80の希釈でC68CMVEGFPに対して交差−中和活性について試験した。まとめると、ヒト免疫グロブリンの製薬学的調製物をPan5、6および7およびC68に対する血清学的反応に関して試験し、Pan7およびC68に対して幾らか低レベルの中和活性が検出された。Pan5またはPan6に対する中和活性は検出されなかった。36名のヒト個体からの血清サンプルを、同じアッセイで検査した。血清サンプルは1/20希釈で試験した。結果では、わずか1名の個体がC68に対して明瞭な中和活性を有することが示された。Pan5、Pan6またはPan7に対する中和活性は検出されなかった。
【0160】
4.インビトロ交差−中和
各アデノウイルスPan5、Pan6、Pan7、およびC68に対して生じた高力価ウサギポリクローナル抗体によるサルアデノウイルスの交差−中和を試験した。
【0161】
ウサギを1013粒子の各チンパンジーアデノウイルスの筋肉内注射で免疫感作し、そして不完全フロインドアジュバントを用いて同用量で40日後に追加免疫感作した。血清を分析し、または中和抗体の存在は2倍の連続希釈物を、GFPを発現する適切な各チンパンジーアデノウイルスベクターの10ゲノムコピーとインキューベーションし、そして293細胞に適用した時にGFPの発現の弱化について試験した。GFP発現に50%低下を生じた血清の希釈は、その特定のウイルスに対する中和抗体力価として採点した。
【0162】
結果を表に示す。データはAd Pan6が他のチンパンジーアデノウイルスに比べて最も血清学的に異なるらしいことを示したヘキソンのアミノ酸配列の配列分析からの予想と合致する。
【0163】
【表18】

【0164】
サルアデノウイルスと交差−反応する抗体が、ヒトでは普及率が低くなるかどうかを決定するために、サルアデノウイルスSV1、SV39およびSV25を、市販されているプールヒト免疫グロブリン(Ig)とインキューベーションした時、それらが中和に耐えられる能力について試験した。同じアッセイをAdhu5およびチンパンジーアデノウイルスPan−5、Pan−6、Pan−7およびC68を用いても行った。さらなる実験では、マウスからの血清をチンパンジーアデノウイルスC5、C6、C7およびC68の1つで免疫感作し、そしてそれらがサルアデノウイルスSV−15、SV−23、SA−17、およびヒヒアデノウイルスを交差−中和する能力について試験した。
【実施例4】
【0165】
組換えE1−欠損Pan5ベクターの生成
修飾pXプラスミドは、部位指向的突然変異誘発法によりpX(クローンテック)のbla遺伝子領域のFspI部位を破壊することにより調製した。生成した修飾プラスミド(pX’と命名)は、f1 oriおよびアンピシリン耐性遺伝子(AmpR−cds)を含む3000bpの環状プラスミドである。
【0166】
A.Pan−5アデノウイルスプラスミドの生産
Pan5DNAフラグメントのpX’への順次クローニング用のポリリンカーを作成する。ポリリンカーはMluIおよびEcoRIでの消化後に存在するpX’ポリリンカーに置き換える。Pan5の平滑−FseIフラグメントを、ポリリンカーのSmaIおよ
FseI部位へ挿入する。フラグメントはアデノウイルスゲノム(bp1〜3606、配列番号1)の5’末端を含む。Pan5のSnaBIFspIフラグメント(bp455〜3484、配列番号1)は、pShuttle(クローンテック)からI−CeuおよびPI−Sce部位により挟まれた短い配列に置き換えて、アデノウイルスゲノムのE1領域を排除する。Pan5のEcoRI−平滑フラグメント(bp28658〜36462、配列番号1)は、ポリリンカーのEcoRIおよびEcoRV部位に挿入し(アデノウイルスゲノムの3’末端を提供するために);FseIMluIフラグメント(bp3606〜15135、配列番号1)をポリリンカーに挿入し;そしてMluIEcoRIフラグメントをポリリンカーに挿入する(bp〜15135〜28658、配列番号1)。場合により所望する導入遺伝子を新たに作成したpX’Pan5ΔE1ベクターのI−CeuIおよびPI−SceI部位に挿入する。
【0167】
B.pX’Pan5ΔE1を作成する別の方法
最初のプラスミドpXは、上記のようにクローンテックから入手可能なpAdXアデノウイルスプラスミドに由来する。その後、pX’のPacIXhoI領域を削除し、そして平滑末端化したPan5ポリリンカーをFspI部位に挿入してpX’PLNK(2994bp)を作成した。Pan5の5’末端−FseI領域(bp1〜3607、配列番号1)を、pX’LNKのSmaIおよびFseI部位に挿入して、pX’Pan5−5’プラスミド(6591bp)を生成した。pX’Pan5−5’のSnaBiNde1領域を切り出し、そしてpRCSからPCR増幅したCeu/Sceカセットと置き換えて、pX’Pan5−5’ΔE1(4374bp)を作成した。簡単に説明すると、CeuIおよびPISceIレアカッター部位を含む配列をpRCSからPCR増幅した(3113bp)。3’PCRプライマーはNdeI部位をPCR産物に導入した。
【0168】
pX’Pan5−5’ΔE1(4374bp)中のPan5DNAを延長するために、Pan5のFseIMluI領域(bp3607〜15135、配列番号1)を加えて、pX’Pan5−5’Mlu(15900bp)を作成する。Pan5配列の残るMluI−3’末端(bp15135〜36462、配列番号1)を、ベクターのポリリンカーのMluIとEcoRV部位との間に加えて、E1領域に削除を含有する完全長のPan5−配列を含むpX’Pan5ΔE1を形成する。
【0169】
C.組換えウイルスの生成
pX’Pan5ΔE1から組換えアデノウイルスを生成するために、プラスミドはE1を発現するヘルパー、あるいは293細胞系または本明細書に記載するように調製した細胞系のようなE1−発現パッケージング細胞系に由来する細胞とコトランスフェクションする。パッケージング細胞中でのE1の発現は、Pan5ΔE1の複製およびビリオンキャプシドへのパッケージングを可能とする。別の態様では、pX’Pan5ΔE1でトランスフェクトしたパッケージング細胞を、目的の導入遺伝子をもつ上記のアデノウイルスベクターでトランスフェクトする。ヘルパーとプラスミドとの間で相同的組換えが起こり、これによりベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列が複製され、そしてビリオンキャプシドにパッケージングされるようになり、組換えアデノウイルスを生じる。
【0170】
トランスフェクションに続いて2週間の寒天重層、その後にウイルスはプラークを形成し、増殖し、そして導入遺伝子の発現について調査される。幾つかのさらなるプラーク精製に続いてさらに別の培養の拡大を行う。最終的に細胞を回収し、ウイルス抽出物を調製し、そして所望の導入遺伝子を含む組換えチンパンジーアデノウイルスを、CsCl勾配での浮遊密度超遠心により、または当業者に知られている別の手段により精製する。
【実施例5】
【0171】
組換えE1−欠損Pan6ベクターの作成
A.Pan6−アデノウイルスプラスミドの構築法
1.末端フラグメントのクローニング
Pan6ウイルスはプロナーゼ(pronase)およびプロテアナーゼ(proteanase)K処理、そしてフェノール抽出により脱タンパク質する。合成の12bp PmeIリンカーを、Berkner and Sharp,Nucleic Acids Research,11:6003(1983)に記載されているようにウイルスDNAに連結する。次いでウイルスDNAはXbaIで消化して、5’末端フラグメント(6043bp)を単離する。次いでAd6 XbaI5’フラグメントをpXリンクにSmaIおよびXbaI部位で連結して、pX−AdPan6−0−16.5を形成する。PmeIリンカーを含むウイルスDNAもPacIで消化して6475bpの3’末端フラグメントを単離し、そしてpXリンクへPacIおよびSmaI部位でクローン化してpXAdPan6−82−100を作成する。
【0172】
2.5’クローンからE1の削除
E1(m.u.1.2−9)を削除するために、pX−AdPan6−0−16.5中のBsiWi−XbaIフラグメントを、BsiWiおよびXbaIで処理したm.u.9−16.7フラグメントに広がるPCRフラグメントに置き換え、pX−Ad−Pan6m.u.0−1,9−16.5を導く。
【0173】
3.5’および3’クローンの融合および中央HindIIIフラグメントを受けるためのアンカー部位の作成
第1に、5’クローン、pX−Ad−Pan6m.u.0−1,9−16.5は、Pan6ゲノムからの第2のXbaIフラグメント(4350bp、m.u.16.5−28)をpX−Ad−Pan6m.u.0−1,9−16.5のXbaI部位に挿入することによりさらに拡大する。この構築物をpXAd−Pan6−mu0−1,9−28と命名する。
【0174】
第2に、3’クローンもPan6ゲノムからのm.u.41−82を網羅する15026bpのMluI/PacIフラグメントを、pX−Ad−Pan6−82−100のMluI/PacI部位に挿入することにより拡大し、pXAd−Pan6−m.u.41−100を作成する。
【0175】
次いで8167bpのHindIII/Eco47III Pan6フラグメントをpXAd−Pan6−m.u.0−1,9−28から単離し、そしてpXAdPan6−m.u.41−100に、HindIIIおよびXbaI平滑部位でサブクローン化する。この5’および3’融合クローンをpXAdPan6mu0−1,9−19.5,64−100と呼ぶ。
【0176】
4.ゲノムの中央フラグメントの融合クローンへの挿入(drop)
Pan6から16335bpのHindIIIフラグメント(m.u.19.5−64)を、pXAdPan6mu0−1,9−19.5,64−100のHindIII部位へ挿入して、pXAdPan6−0−1,9−100を形成する。
【0177】
5.問題の遺伝子を直接的にクローニングし、そして組換え形質転換体を緑/白選択するための最終構築物へのPKGFP選択マーカーの導入
GFPをlacプロモーター下で発現し、そして制限酵素、PI−SceIおよびI−CeuIをコードするレアイントロンの認識部位に挟まれたミニ遺伝子カセットを、pShuttle−pkGFP(裸:bare)からSapIおよびDraIII消化により単離し、続いてフィリング−イン反応を行った。pShuttle−pkGFP(裸)プ
ラスミドは4126bp長であり、そしてColE1−Ori、カナマイシン耐性遺伝子、plac、LacZプロモーター−GFPmut3−1cds(クローンテック)およびGFPmut3−1cds(クローンテック)を含む。このカセットを、SrfI切断および平滑化pXAdPan6−0−1,9−100にサブクローン化する。この最終構築物をpX−Pan6−pkGFPmu.0−1,9−100と呼び、これは直接的連結および遺伝的pShuttlepkGFPベクターと組み合わせた緑/白選択による問題の遺伝子を持つ組換えE1−削除Pan6分子クローンの作成に有用である。
【0178】
B.Pan−6プラスミドの別の作成法
1.5’末端フラグメントのクローニング
Pan6ウイルスは、上記のようにプロナーゼおよびプロテアナーゼK処理、そしてフェノール抽出により脱タンパク質し、そして合成の12bp PmeIリンカーを記載のようにウイルスDNAに連結する。上のA部に記載したようにAdPan6 5’XbaIフラグメントを単離し、そしてpXに連結して、pX−AdPan6−0−16.5(9022bp)を形成する。
【0179】
2.5’クローンからE1の削除
E1(m.u.1.2−9)を削除するために、pX−AdPan6−0−16.5をSnaBIおよびNdeIで消化して、E1aおよびE1bタンパク質をコードする領域(3442〜6310bp)を除去する。続いてこのベクターは、選択マーカーを持つミニ遺伝子カセットと共に平滑化のためにBsiWを用いて消化される。
【0180】
3.選択マーカーの導入
lacプロモーター下にGFPを発現し、そして制限酵素、PI−XceIおよびI−CeuIをコードするレアーイントロンの認識部位に挟まれたミニ遺伝子カセットを、pShuttle−pkGFPから上記のように単離した。次いでDraIII−SapIフラグメントを、消化したpX−AdPan6−0−16.5に連結してpX−AdPan6MU0−16.5ΔE1(7749bp)を形成した。
【0181】
4.Pan−6アデノウイルス配列の延長
pX−AdPan6MU0−16.5ΔE1をXbaI消化に供して、XbaI−RsrIIリンカーの挿入を可能とする。AdPan6ゲノムからXbaI/RsrII消化フラグメントを単離し(mu28−100、26240bp)、そしてXbaI/RsrII消化pX−AdPan6MU0−16.5ΔE1に連結して、pX−AdPan6MU0−1,9−16.5,28−100を提供した。次いでPan6ゲノムから第2のXbaIフラグメント(mu16.5−28、4350bp)をこのプラスミドに連結して、pX−AdPan6MU0−1,9−100(38551bp)を形成する。
【0182】
C.組換えアデノウイルスの作成
A部またはbで上記のように調製したE1−削除Pan6プラスミドから組換えアデノウイルスを作成するために、プラスミドはE1を発現するヘルパー、あるいは293細胞系または本明細書に記載するように調製した細胞系のようなE1−発現パッケージング細胞系に由来する細胞とコトランスフェクションする。パッケージング細胞中でのE1の発現は、Pan6−pkGFPmu.0−1,9−100の複製およびビリオンキャプシドへのパッケージングを可能とする。別の態様では、pX−Pan6−pkGFPmu.0−9,9−100でトランスフェクトしたパッケージング細胞を、別の目的の導入遺伝子をもつ上記のアデノウイルスベクターでトランスフェクトする。
【実施例6】
【0183】
組換えE1−欠損Pan7ベクターの作成
A.Pan7プラスミドの作成
制限部位Pac−SmaI−FseI−MluI−EcoRV−PacIを含む合成リンカーを、EcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化した。AdPan7の左末端(bp1−3618)を、SmaIとFseI部位との間にクローン化した。次いでアデノウイルスE1をクローン化した左末端からSnaBIおよびNdeIを用いて切り出し、そしてpShuttle(クローンテック)からのI−Ceu−GFP−PI−SceIカセットを正しい位置に挿入した。生成したプラスミドをFseIおよびMluIで切断し、そしてAd Pan7フラグメントFseI(bp3618)〜MluI(bp155114)を挿入して左末端を延長した。構築物(pPan7pGFP)は、MluI部位(bp15114)からの21421bpのAdPan7右末端フラグメントを上記プラスミドのMluIとEcoRVとの間に挿入することにより完成し、組換えアデノウイルスの作成に適するE1欠損アデノウイルスPa7の完全な分子クローンを作成した。場合により、所望する導入遺伝子を新たに作成したpPan7ベクタープラスミドのI−CeuIおよびPI−SceI部位に挿入する。
【0184】
B.E1−欠損Pan7ウイルスベクターの構築
pPan7ΔE1から組換えアデノウイルスを作成するために、プラスミドをE1を発現するヘルパー、あるいは293細胞系または本明細書に記載するように調製した細胞系のようなE1−発現パッケージング細胞系に由来する細胞にコトランスフェクションする。パッケージング細胞中でのE1の発現は、Pan7ΔE1の複製およびビリオンキャプシドへのパッケージングを可能とする。別の態様では、pX’Pan7ΔE1でトランスフェクトしたパッケージング細胞を、目的の導入遺伝子をもつ上記のアデノウイルスベクターでトランスフェクトする。相同的組換えがヘルパーとプラスミドとの間で起こり、これによりベクター中のアデノウイルス−導入配列が複製され、そしてビリオンキャプシドへのパッケージングが可能となり、組換えアデノウイルスを生じる。トランスフェクションおよび精製は上記の通りである。
【実施例7】
【0185】
E1遺伝子を発現するプラスミドベクターの作成
Pan5E1領域の遺伝子をコードするプラスミドベクターを構築し、そしてこれらのプラスミドはウイルスE1タンパク質を発現する安定な細胞系を作成するために使用する。
【0186】
Pan5のE1領域は、この領域をpShuttle(クローンテック)からのフラグメントに置き換える前に、本質的に上記実施例4に記載のようにpX’にクローン化する。発現プラスミドはPan5アデノウイルスゲノム配列中で少なくともbp1〜3959に広がるPan5アデノウイルスゲノム配列を含む。このように発現プラスミドはヘテロロガスなプロモーターの制御下にチンパンジーAd Pan5のE1aおよびE1bをコードする配列を含む。同様の発現プラスミドは、上記の表で確認されるAd Pan6およびAd Pan7 E1領域を使用して作成することができる。
【実施例8】
【0187】
チンパンジーアデノウイルスE1タンパク質を発現する細胞系の作成
ウイルスE1タンパク質を発現する細胞系は、HeLa(ATCC寄託番号CCL2)に実施例6のプラスミドをトランスフェクションすることにより作成する。これらの細胞系はゲノムウイルスDNAおよび上記のような発現プラスミドのコトランスフェクションにより、E1−欠損組換えチンパンジーアデノウイルスの生産に有用である。これらの細胞系のトランスフェクション、ならびにそれから組換えチンパンジーアデノウイルスの単離および精製は、他のアデノウイルス、すなわちヒトアデノウイルスに関する常法により行う[例えばHorwitz、同上および他の標準的テキストを参照にされたい]。
【0188】
A.Pan5E1タンパク質を発現する細胞系
10cm皿中のHeLa細胞を、10μgのpX−Pan51−E1DNAでCellphect(商標)キット(ファルマシア(Pahrmacia)、ウプサラ、スウェーデン)を使用し、そして製造元のプロトコールに従いトランスフェクトする。トランスフェクションから22時間後、細胞を3分間のグリセロールショック(Hepes緩衝化塩溶液、pH7.5中の15%グリセロール)にかけ、10%FCS、1%Pen−Strepを補充したDEME(HeLa)またはF12K(A549;ライフテクノロジーズ社、グランドアイランド、ニューヨーク州)培地で1回洗浄し、次いで上記培地中で6時間、37℃でインキューベーションする。トランスフェクトした細胞を2連の15cmプレートに1:20、1:40、1:80、1:160および1:320の比率で分ける。37℃で一晩インキューベーションした後、培地にG418(ライフテクノロジーズ社)を1μg/mlの濃度で補充する。培地を5日毎に交換し、そしてクローンをトランスフェクションから20日後に単離する。
【0189】
HeLaE1細胞クローンを単離し、そしてそれらがアデノ随伴ウイルス(AAV)感染および組換えLacZタンパク質の発現を増強する能力について以下に記載のようにアッセイする。
【0190】
B.E1発現細胞系をスクリーニングするためのAAV増強アッセイ
AAVは、その生活環を完遂するためにアデノウイルスがコードするタンパク質が必要である。アデノウイルスE1タンパク質ならびにE4領域がコードするORF6タンパク質は、AAV感染の増強に必要である。E1発現に基づくAAV増強に関するアッセイを使用する。簡単に説明すると、アデノウイルスE1−発現細胞を同定する方法は、推定されるアデノウイルスE1−発現細胞およびアデノウイルス配列を含まない細胞を別個の培養で、アデノ−関連ウイルス(AAV)発現マーカー遺伝子およびヒトアデノウイルスのE4遺伝子のORF6を発現するAAVの両方で適当な時期に感染させる工程を含んでなる。生成した細胞中のマーカー遺伝子の活性を測定し、そして対照細胞よりも有意に大きな測定可能なマーカー活性を持つ細胞を、確認されたE1−発現細胞として選択する。以下の実験では、マーカー遺伝子はlacZ遺伝子であり、そしてマーカー活性は青色染色の外観である。
【0191】
例えば、上記の細胞系ならびに非トランスフェクト対照細胞(HeLa)に、マーカー遺伝子、例えばAV.LacZ[K.Fisher et al.,J.Virol.,70:520(1996)]を持つAAVベクター、およびヒト5のORF6領域を発現するAAVベクター(AV.orf6)を、細胞あたり100ゲノムで感染させる。プラスミドのDNA配列はLacZ導入遺伝子、および発現産物が1本鎖(ss)から2本鎖(ds)へのrAAVゲノムDNAへの変換を促進するオープンリーディングフレイムであるAd E4 ORF6を含む新規な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成する。これらのベクターを2%FCSおよび1%Pen−Strepを含有する培地中で37℃にて4時間インキューベーションし、この時点で10%FCSを含む等容量の培地を加える。当業者は任意のマーカー遺伝子(またはレポーター遺伝子)、例えばアルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼおよびその他をこのアッセイの最初のAAVベクターに使用できると理解するはずである。抗体−酵素アッセイを使用して抗原のレベルを定量することもでき、ここでマーカーは抗原を発現する。このアッセイはマーカー遺伝子の同一性に限定されない。感染から20〜24時間後、細胞は標準的方法を使用してLacZ活性について染色する。4時間後、細胞を顕微鏡で観察し、そしてA549またはHeLa細胞対照よりも有意により青色の細胞を陽性と採点する。
【実施例9】
【0192】
導入遺伝子の宿主細胞への送達
次いで上記実施例4、5または6に記載した生成した組換えチンパンジーアデノウイルスを使用して、導入遺伝子を哺乳動物、好ましくはヒトの細胞に送達する。例えば組換えウイルスの精製後、ヒトの胚性腎293細胞を細胞あたり50粒子のMOIで感染させる。GFP発現は感染から24時間後に記録した。
【0193】
A.Pan−6、Pan−7およびPan−9ベクターを介するマウスモデルの遺伝子転移
組換えチンパンジーアデノウイルスの遺伝子転移効率および毒物学的プロフィールは、マウスの肝臓に向けられた遺伝子転移、マウスの肺に向けられた遺伝子転移、およびマウスの筋肉に向けられた遺伝子転移と比較した。
【0194】
CMVプロモーターの制御下にLacZを含むE1−欠損アデノウイルスベクターは、ヒトAd5、チンパンジーPan6、チンパンジーPan7およびチンパンジーPan9(C68)についての本明細書の技術を使用して構築した。ベクターは免疫−欠損NCRヌードマウス(各実験について80)に以下のように送達した。肝臓の実験については、100μl(1×1011粒子)を尾の静脈に注射した。肺の実験については、50μl(5×1010粒子)を気管内に送達した。筋肉の実験については、25μl(5×1010粒子)を脛側前面に注射した。マウスをベクター注射から3、7、14および28日後に屠殺した(各時点で群毎に5匹の動物)。各検死で、肝臓/肺/筋肉組織を回収し、そしてクリオブロック(cryoblock)およびパラフィン包埋するために調製した。クリオブロックをX−gal染色用に切片とし、そして組織病理学用にパラフィン切片をH&E染色する。各時点で、最終採血を行った。血清サンプルを肝機能検査に供した。
【0195】
この実験では、チンパンジーアデノウイルスPan−6、Pan−7およびPan−9は肝臓および肺への遺伝子転移においてhuAd5よりも効率が低いことが観察された。しかしこれはhuAd5で観察される肝臓毒性を減少させるために、特定の環境では望ましいかもしれない。筋肉での遺伝子転移効率は、血清間での変動が低かった。
【0196】
B.Adhu5、Pan−6、Pan−7およびPan9ベクター間の血清型スイッチングによるアデノウイルスベクターの再投与の可能性に対するマウスの実験
マウス(C57/B16;4/群)に、Adhu5、Pan−6、Pan−7およびPan9に基づくLacZベクター(H5.040CMVLacZ、Pan6.000CMVLacZ、Pan7.000CMVLacZ、Pan9.000CMVLacZ;1011粒子/注射)を尾の静脈から投与した。30日後、マウスにα1−アンチトリプシンを発現するアデノウイルスベクターを再投与した(H5.040CMVhA1AT、Pan6.000CMVhA1AT、1×1011粒子、Pan7.000CMVhA1AT、Pan9.000CMVhA1AT、1011粒子/注射)。再投与されたベクターによる成功裏の形質導入は、血清α1−アンチトリプシンを再投与から3および7日後に測定することにより監視する。
【0197】
huAd5、Pan−6、Pan−7およびPan9に基づくアデノウイルスベクターがそれぞれ、マウスの肝臓を形質導入する能力を他の血清型に対する中和抗体の存在下で決定した。結果をこの表にまとめる。
【0198】
【表19】

【0199】
ベクターが他の血清型に対する中和抗体の存在下でマウスの肝臓を形質導入する能力。
【0200】
このようにhuAd5での免疫感作は、チンパンジーアデノウイルスベクターPan−6、Pan−7またはPan−9(C68)のいずれかの再投与を妨げない。この実験はPan−7が抗原の関連性のスペクトルにおいてPan−6とPan−7との間であり、そして両方と交差−反応することも示すようである;しかしPan−6およびPan−9は互いに中和しない。これは相同性の比較に基づき驚くべき結果であり、Pan−6がPan−7およびPan−9とは極めてことなることを示している。Pan−9に対して生じた抗血清の評価ではPan−6に対する交差−中和は示されなかったが、Pan−7に対してはわずかな中和が示され、Pan−6が他とは異なることが明らかである。
【実施例10】
【0201】
組換えE1−欠損SV−25ベクターの生成
工作されたE1欠損を除き、完全なSV−25ゲノムを含むプラスミドを構築した。E1削除の部位に、シャトルプラスミドから導入遺伝子の挿入を可能とする制限酵素I−CeuIおよびPI−SceIに関する認識部位(ここで導入遺伝子カセットはこれら2つの酵素認識部位により挟まれている)を挿入した。
【0202】
制限部位SwaI−SnaBI−SpeI−AflII−EcoRV−SwaIを含む合成リンカーを、EcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化した。これは2つの合成オリゴマーSV25T(5’−AAT TTA AAT ACG TAG CGC ACT AGT CGC GCT AAG CGC GGA TAT CAT TTA AA−3’、配列番号38)およびSV25B(5’−TAT TTA AAT GAT ATC CGC GCT TAA GCG CGA CTA GTG CGC TAC GTA TTT A−3’、配列番号39)を一緒にアリーリングし、そしてこれをEcoRIおよびNdeIで切断したpBR322に挿入することにより行った。AdSV25の左末端(bp1〜1057、配列番号39)を、SnaBIとSpeI部位との間の上記リンカーにクローン化した。AdSV25の右末端(bp28059〜31042、配列番号29)を、AflIIとEcoRV部位との間のリンカーにクローン化した。次いでアデノウイルスE1はEcoRI部位(bp547)からXhoI(bp2031)の間でクローン化した左末端から以下のように切り出した。pShuttle(クローンテック)からPCRで生成したI−Ceu−PI−SceIカセットを、EcoRIとSpeI部位との間に挿入した。次いでAd SV−25の10154bpのXhoIフラグメント(bp2031〜bp12185、配列番号29)をSpeI部位に挿入した。生成したプラスミドをHindIIIで消化し、そして構築物(pSV25)は、18344bpのAdSVのHindIIIフラグメント(bp11984〜30328、配列番号29)を挿入することにより、組換えアデノウイルスの生成に適当なE1欠損アデノウイルスSV25の完全な分子クローンを生成した。場合により所望する導入遺伝子を新たに作成したpSV25ベクタープラスミドのI−CeuIおよびPI−SceI部位に挿入する。
【0203】
マーカー遺伝子を持つAdSV25を生成するために、事前にプラスミドpShuttle(クローンテック)にクローン化したGFP(緑色蛍光タンパク質)発現カセットを、制限酵素I−CeuIおよびPI−SceIで切り出し、そして同じ酵素で消化したpSV25(または本明細書に記載する別のAdチンパンジープラスミド)に連結する。生成したプラスミド(pSV25GFP)をSwaIで消化して細菌のプラスミド骨格を分離し、そしてE1相補細胞系HEK293にトランスフェクトする。約10日後、複製可能なウイルスの存在を示す細胞変性効果が観察された。このGFPを発現するAdSV25に基づくアデノウイルスベクターの成功裏の生成は、トランスフェクトした培養からの上清を新しい細胞培養に適用することにより確認された。2次的に感染した細胞の存在は、細胞群中の緑色蛍光タンパク質の観察により決定した。
【実施例11】
【0204】
E3欠損Pan−5、Pan−6、Pan−7およびC68ベクターの構築
アデノウイルスベクターのクローニング能力を強化するために、E3領域は培養中にウイルスの増殖に必要ではない遺伝子をコードするのでこの領域を削除することができる。この目的に向けて、Pan−5、Pan−6、Pan−7およびC68のE3−欠損変更体を作成した(E31−9を含む3.5kb Nru−AvrIIフラグメントが削除される)。
【0205】
A.E3欠損Pan5に基づくベクター
E1欠損pPan5−pkGFPプラスミドをAvrIIエンドヌクレアーゼで処理して、E3領域を含有する5.8kbのフラグメントを単離し、そしてpPan5−pkGFPとAvrII欠損とを再環状化して、構築物pPan5−pkGFP−E3−AvrIIを形成した。続いてNruI消化によるE3領域のさらなる削除のために、5.8kbのAvrIIフラグメントをpSL−Pan5−E3−AvrIIにサブクローン化した。これによりプラスミドpSL−Pan5−E3欠損を導いた。最終的な構築物pPan5−E3−pkGFPは、pSL−Pan5−E3−欠損プラスミドから4.3kbのAvrII/SpeIフラグメントを除去し、そしてpPan5−pkGFP−E3−AvrIIにAvrII部位で挿入することにより生成した。最終的な構築物では、E3領域に3.1kbの欠損が達成された。
【0206】
B.E3欠損Pan6に基づくベクター
E1欠損pPan6−pkGFP分子クローンをSbfIおよびNotIで消化して19.3kbのフラグメントを単離し、そしてSbfI部位に戻して連結した。生成した構築物pPan6−SbfI−E3をEco47IIIおよびSwaIで処理してpPan6−E3を生成した。最後にpPan6−pkGFPのSbfI消化からの21kbのSbfIフラグメントをpPan6−E3にサブクローン化して、E3に4kpの欠損を持つpPan6−E3−pkGFPを作成した。
【0207】
C.E3欠損Pan7およびPan9ベクター
同じ方法を使用して両方のベクターにE3の欠損を達成した。最初にE3領域に広がる5.8kbのAvrIIフラグメントをpSL−1180にサブクローン化し、続いてNru消化によりE3の削除を行った。生成したプラスミドをSpeIおよびAvrIIで処理して4.4kbのフラグメントを得、そしてpPan7−pkGFPおよびpPan9−pkGFPにAvrII部位でクローン化して、それぞれ元のE3含有AvrIIフラグメントと置き換えた。これにより最終的なpPan7−E3−pkGFPおよびpPan9−E3−pkGFP構築物は3.5kbのE3欠損を有する。
【実施例12】
【0208】
E3−およびE4−欠損Pan−7ベクターの構築
アデノウイルスのE1領域の欠損(第1世代アデノウイルス)は、それらを複製不能にするが、アデノウイルスベクター骨格遺伝子の発現が完全に破壊されたわけではない。E4領域の欠損はこの残存する遺伝子発現をかなり弱め、そして安全性の利益を付与することができる。2.5kbを欠損を含むE4−欠損Pan−7ベクター(E4ORF1−ORF7を含むPvuII−AgeIフラグメントを欠く)を構築した。このウイルスの高力価ストックは、E1に加えて必須なE4遺伝子(orf6)を発現するHEK293に基づく細胞系を使用して作成した。
【0209】
1.Pan7の分子クローン中のE4削除
19bpのXbaIフラグメントをpPan7−pkGFPから削除してpPan7−XbaIを作成し、これから2.54kbのE4フラグメントをAgeIおよびPvuII部分消化により削除し、pPan7−XbaI−E4を生成した。pPan7−E4−pkGFPプラスミドは、pPan7−XbaI−E4から2つの順次クローニング工程により生成し、両方がpPan7−pkGFP構築物に由来する19kbのXbaIおよび15kbのI−CeuI/MluIフラグメントを加えた。
【0210】
2.Pan9ベクターへのE3およびE4欠損の導入
E4領域を含有する11kbのプラスミドであるpPan9−EcoRIは、EcoRI消化および自己連結後にpPan9pkGFPから11kbのEcoRIフラグメント
を回収することにより作成した。E4領域はAgeI消化/フィルイン(filled in)、およびPvuII部分消化および自己連結によりこの構築物から削除して、pPan9−EcoRI−E4を作成した。23kbのEcoRIフラグメントをpPan9−pkGFPから単離し、そしてpPan9−EcoRI−E4にEcoRI部位で挿入し、続いて5.8kbのAvrIIフラグメントをpPan9−pkGFPから加えて、最終産物pPan9−E3−E4−pkGFを形成した。野生型Pan9のゲノムサイズと比較して、このE1−E3−E4欠損ベクターは、8kbまでの導入遺伝子容量を有する。
【0211】
3.レポーター遺伝子、Eboの糖−および核タンパク質を含む目的遺伝子を持つミニ遺伝子カセットのPanベクターへの導入
組換えウイルスの分子クローンを作成するために、高度に効率的な直接的クローニングおよび緑/白選択法を採用した。簡単に説明すると、目的遺伝子をpShuttlepkGFPに組換え体の白色コロニーを選択することによりクローン化した。続いてミニ遺伝子カセットは、I−CeuIおよびPI−SceI部位でpkGFPカセットと交換し、そして正しい組換え体について幾つかの白色コロニーをスクリーニングすることにより、チンパンジーのアデノウイルス骨格プラスミドである種々の欠損を有するpPanX−pkGFP中に簡単に転移させた。
【0212】
4.初期領域に多くの欠損を持つPanベクターの分子クローンのレスキューおよびウイルス増殖
チンパンジーのアデノウイルスベクターのE1−E3欠損分子クローンをレスキューするために、クローンを適切な制限酵素で直線状とし、そして通常の293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞にいったん完全な細胞変性効果(CPE)が観察されたら、粗ライゼートを回収し、そして293細胞中で大規模感染に拡大させた。ウイルスはCsCl沈降法により精製した。
【0213】
E1−E4およびE1−E3−E4欠損Panベクターについて、10−3細胞(293細胞に基づくE1−E4相補細胞系)をベクターのレスキューおよび増殖に使用した。10−3細胞中でのE4 ORF6遺伝子発現は、150μMのZnSOを培養基に加えることにより誘導した。
【実施例13】
【0214】
野生型および変異体EboZGPを発現するアデノウイルスベクターを用いたワクチン接種
エボラエンベロープキメラを発現するAdHu5またはAdC7ベクターを、C57BL/6マウスを対象としたインビボの免疫感作実験用に生成した。異なるウイルス骨格を有する組換えウイルスは分子クローニング法により作成し、ここでミニ遺伝子カセットがE1−欠損の場所に挿入された。すべての組換えウイルスの分子クローンはレスキューされ、そしてCsCl沈降法を使用した大規模精製のために293細胞中で成長させた。AdHu5またはAdPan7(C7)によりコードされる5個のEboZ変異体を選択し、そして生産させて筋肉内Ad注射後のそれらの相対的免疫原性について評価した。wtEbo、可溶性Ebo変異体、EboΔ1、EboΔ2、EboΔ3、EboΔ4、EboΔ5S、EboΔ6S、EboΔ7SおよびEboΔ8Sはそれらの最初のワクチン実験で評価した。以下の表にまとめるデータについて、感染した293細胞で生産され、そして増幅したウイルス粒子の数(mlあたり、または総数)は、分光光学的読み取りにより確立した。
【0215】
【表20】

【0216】
ベクターはC57BL/6マウスの筋肉内に投与し(1011ゲノムコピー/細胞)、そしてエボラエンベロープ糖タンパク質に対して生じた免疫応答の最初の尺度として、28日後にウイルス中和抗体(VNA)の存在を評価した。ここでVNAは、野生型エボラエンベロープでシュードタイプ化されたHIVに基づくベクターにより媒介されるHeLa細胞の形質導入を阻害することができる血清抗体と定める。
【0217】
EboZシュードタイプに対するVNAは、AdHu5よりも高い力価を生じるAdPan7(C7)で検出された。EboZΔ3は導入遺伝子標的という意味で最高のVNAを誘導した。以下の表でまとめるデータでは、HIV−EboZ−GFPシュードタイプ(逆数希釈)に対する中和抗体力価を提供する(N−5動物/群)。
【0218】
【表21】

【実施例14】
【0219】
エボラタンパク質のPan7媒介型発現
エボラエンベロープタンパク質およびエボラ核抗原を発現するPan−7ベクターを評価するためのマウス実験を開始した。これらはそれぞれ4つのエボラenv構築物を発現するAdhu5またはPan−7を筋肉内(IM)に注射したC57/B1/6マウスにおける中和抗体の評価を対象とする。
【0220】
A.エボラenv構築物を発現するAdhu5またはPan−7をIM注射したC57B1/6マウスからのCTLの評価
1.エボラウイルスでのマウスにおける対抗実験
エボラエンベロープに対する中和抗体(NAB)応答は、エボラエンベロープ糖タンパ
ク質の数種の構築物(eEbo、NTD2、NTD3、NTD4)でシュードタイプ化されたレンチウイルス(HIV)ベクターの中和を媒介した免疫感作マウスの血清を調査することにより分析した。C57BL/6またはBALB/cマウスは、エボラエンベロープ変異体をコードするC7(AdPan−7)のマウスあたり5×1010の粒子の単回の筋肉内注射を受けた。中和抗体はワクチン接種から30日後に評価した。簡単に説明すると、β−ガラクトシダーゼをコードするエボラザイールシュードタイプ化HIVベクター(EboZ−HIV−LacZ)を37℃で2時間、異なる希釈の不活性化マウス血清とインキューベーションした。血清とインキューベーションした後、次いでEboZ−HIV−LacZは37℃で16時間、HeLa細胞を感染させるために使用した。感染性はβ−ガラクトシダーゼ陽性の形質導入されたHeLa細胞のX−gal染色により示した。中和力価は、β−ガラクトシダーゼ陽性の青色細胞の数に50%の減少が観察される血清の逆数希釈を示す。血清は5×1010粒子/動物の単回筋肉内(I.M.)投与からなる免疫感作から30日後に集めた。エボラシュードタイプ化HIVに対する中和抗体は、すべての群から検出することができ、抗体力価はAd−EboZ(EboZを発現するAdhu5)、Ad−NTD3(NTD3を発現するAdhu5)およびC7−sEbo(可溶性EboZを発現するAdPan−7)についての20から、C7−NTD(可溶性NTD3を発現するAdPan−7)およびC−NTD4(可溶性NTD3を発現するAdPan−7)の130にわたる範囲であった。BALB/cマウスを対象とした同じ免疫感作法では、Ad−およびC7−NTD2およびNTD4について、低い中和抗体力価がもたらされた。
【0221】
B.細胞性免疫応答
C57BL/6マウスを対象としたエボラエンベロープに対する細胞性免疫応答は、動物あたり5×1010粒子のC7−LacZまたはC7−エボラエンベロープ変異体の単回I.M.投与から8日後に評価した。マウスにLacZまたはエボラエンベロープ変異体をコードする5×1010粒子のC7をI.M.ワクチン注射した。免疫感作したマウスの脾臓リンパ球はワクチン注射から8日後に集め、そして支持細胞(野生型のエボラエンベロープをコードするヒトアデノウイルス血清型5に感染した未処置マウスに由来する脾臓細胞、そして照射した)を用いてインビトロで刺激した。標準的な5時間のCTLアッセイは、EboZのエクスプレッサーでトランスフェクトした51Cr−標識相乗的C57細胞を使用して行った。
【0222】
陽性のMHC−拘束細胞傷害性T細胞(CTL)応答はエボラエンベロープ変異体をコードするすべてのAdPan−7から観察され、NTD2、NTD3またはNTD4免疫感作マウスからの応答がより高かった。実際に、エボラエンベロープ変異体をコードするC7を免疫感作したマウスに由来するエフェクター細胞は、EboZでトランスフェクトした標的細胞を認識し、そして30%の特異的溶菌まで回復したCTL応答を与えた。ナイーブな、またはLacZ免疫感作対象マウスに由来するエフェクター細胞では5%未満の溶菌が見られ、溶菌がエボラエンベロープ抗原に特異的であることが確認された。
【0223】
C.防御実験
マウスを対象とした成功したワクチンとしてのEboZバリアントをコードするC7(AdPan−7)を評価する最も直接的な手段は、マウス適合エボラザイールウイルスを用いて、致死的チャレンジ後の体重損失および死に対する防御を評価することであった。BALB/cマウスは以前に行ったように動物あたり5×1010粒子の単回用量で免疫感作し、そしてワクチン注射した動物はマウス適合エボラザイールの200LD50で21日後にチャレンジした(challenged)。すべての対照マウス(賦形剤およびC7−LacZ)はチャレンジから5〜9日の間に死亡した。対照的に(C7−sEbo群からの)1匹を除き、すべてのワクチン接種したマウスはエボラザイールでのチャレンジで生存した。
【0224】
C7−sEboでワクチン接種したマウスからの体重損失は4〜7日に観察された。逆毛だち(pilo−erection)のような病気の兆候、および軽度から重度の無気力もC7−sEbo、NTD2およびNTD3でワクチン注射したマウスで4〜7日に観察された。C7−EboZおよびC7−NTD4を免疫感作したマウスは、病気の兆候を示さなかった。全体として、C7−EboZおよびC7−NTD4の単回投与は、恐らく有意なT細胞性免疫により病気および死から免疫感作したマウスを完全に防御した。
【0225】
上記に引用したすべての文書は、引用により本明細書に編入する。本発明の多数の修飾および変更が上記の明細書の範囲に含まれ、そして当業者には明白であると予想される。異なるミニ遺伝子の選択またはベクターまたは免疫モジュレーターの投薬用量の選択のような本発明の組成物および方法に対するそのような修飾および変更は、これに添付する特許請求の範囲の範囲内であると考える。
【0226】
以下に本発明の主な特徴及び態様を列挙する。
【0227】
1.
(a)配列番号1の核酸1〜36462の配列を有するPan5:
(b)配列番号5の核酸1〜36604の配列を有するPan6:
(c)配列番号9の核酸1〜36535の配列を有するPan7:
(d)配列番号24の核酸1〜34264の配列を有するSV1:
(e)配列番号29の核酸1〜31044の配列を有するSV25:
(f)配列番号34の核酸1〜34115の配列を有するSV39:
(g)(a)〜(f)の任意の配列に相補的な核酸配列:
からなる群から選択される単離されたサルアデノウイルス核酸配列。
【0228】
2.Pan5配列番号1;Pan6配列番号5;Pan7配列番号9;SV1配列番号24;SV25配列番号29;およびSV39配列番号34の
(a)5’逆方向末端反復(ITR)配列;
(b)アデノウイルスE1a領域、または13S、12Sおよび9S領域の中から選択されるそのフラグメント;
(c)アデノウイルスE1b領域、またはスモールT、ラージT、IXおよびIVa2領域からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(d)E2b領域;
(e)L1領域、または28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノタンパク質、52/55kDタンパク質およびIIIaタンパク質からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(f)L2領域、またはペントン、VII、VIおよびMuタンパク質からなる群から選択されるそのフラグメント;
(g)L3領域、またはVI、ヘキソンまたはエンドプロテアーゼからなる群から選択されるそのフラグメント;
(h)2aタンパク質;
(i)L4領域、または100kDタンパク質、33kD相同体およびVIIIからなる群から選択されるそのフラグメント;
(j)E3領域、またはE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8およびE3 ORF9からなる群から選択されるそのフラグメント;
(k)L5領域、または繊維タンパク質から選択されるそのフラグメント;
(l)E4領域、またはE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2およびE4 ORF1からなる群から選択されるそのフラグメント
;および
(m)3’ITR、
あるいは任意の(a)〜(m)に相補的な配列からなる群の1以上から選択される単離されたサルアデノウイルス血清型核酸配列。
【0229】
3.上記2.に記載された核酸配列によりコードされるサルアデノウイルスタンパク質。
【0230】
4.上記2.に記載されたヘテロロガスなサルアデノウイルス配列を含んでなる核酸分子。
【0231】
5.上記サルアデノウイルス配列がアデノウイルス遺伝子産物をコードし、そして宿主細胞中でアデノウイルス遺伝子産物の発現を支配する調節配列に操作可能に連結されている、上記4.に記載の核酸分子。
【0232】
6.上記サルアデノウイルス配列がPan5配列番号1;Pan6配列番号5;Pan7配列番号9;SV1配列番号24;SV25配列番号29;およびSV39配列番号34のE1a領域を含んでなる、上記4.または5.に記載の核酸分子。
【0233】
7.上記6.に記載の核酸分子および生理学的に許容され得る担体を含んでなる製薬学的組成物。
【0234】
8.
(a)Pan5配列番号3、Pan6配列番号7、Pan7配列番号11、SV1配列番号26、SV25配列番号31、またはSV39配列番号36のヘキソンタンパク質、またはそのフラグメント;
(b)Pan5配列番号2、Pan6配列番号6、Pan7配列番号10、SV1配列番号25、SV25配列番号30またはSV39配列番号35のペントンタンパク質;
(c)Pan5配列番号4、Pan6配列番号8、Pan7配列番号12、SV1配列番号27および配列番号28、SV25配列番号32および配列番号33またはSV39配列番号37の繊維タンパク質、またはそのフラグメント、
からなる群から選択される単離されたサルアデノウイルスキャプシドタンパク質。
【0235】
9.上記8.に記載のキャプシドタンパク質またはそのフラグメントを含んでなる人工アデノウイルス血清型。
【0236】
10.上記キャプシドがPan5配列番号15、Pan6配列番号16およびPan7配列番号17からなる群から選択されるヘキソンタンパク質のフラグメントを含んでなる、上記9.に記載の人工アデノウイルス血清型。
【0237】
11.上記キャプシドがPan6配列番号19、Pan7配列番号20およびPan5配列番号21からなる群から選択される繊維タンパク質のフラグメントを含んでなる、上記9.または10.に記載の人工アデノウイルス血清型。
【0238】
12.上記3.もしくは8.に記載のタンパク質または上記9.ないし11.のいずれかに記載の人工アデノウイルス血清型をコードするヘテロロガスな配列を含んでなる核酸分子。
【0239】
13.上記2.に記載のサルアデノウイルス配列または上記4.もしくは12.に記載の核酸分子および宿主細胞中で該遺伝子の発現を支配する配列に操作可能に連結されたヘテロロガスな遺伝子を含んでなる組換えベクター。
【0240】
14.さらに複製およびキャプシド形成に必要な5’および3’アデノウイルス・シスエレメントを含んでなる、上記13.に記載の組換えベクター。
【0241】
15.上記ベクターがウイルスである上記13.または上記14.に記載の組換えベクター。
【0242】
16.上記ベクターがE1遺伝子のすべてまたは一部を欠いている上記13.ないし15.のいずれかに記載の組換えベクター。
【0243】
17.上記3.に記載のサルキャプシドタンパク質または上記9.ないし11.のいずれかに記載の人工アデノウイルス血清型を含んでなる組換えウイルス。
【0244】
18.上記4.ないし6.または12.のいずれかに記載の核酸分子、上記13.ないし16.のいずれかに記載の組換えベクター、または上記17.に記載の組換えウイルスを含んでなる宿主細胞。
【0245】
19.上記宿主細胞が核酸分子または組換えベクターにより安定に形質転換されている、上記18.に記載の宿主細胞。
【0246】
20.上記宿主細胞が上記核酸分子または組換えベクターから1以上のアデノウイルス遺伝子産物を発現し、該アデノウイルス遺伝子産物がE1a、E1b、E2aおよびE4 ORF6からなる群から選択される、上記18.または19.に記載の宿主細胞。
【0247】
21.上記宿主細胞が、サルアデノウイルス逆方向末端反復を含んでなる核酸分子で安定に形質転換されている、上記18.ないし20.のいずれかに記載の宿主細胞。
【0248】
22.製薬学的に許容されうる担体中に組換えベクターを含んでなる組成物であって、該ベクターが上記1.または2.のいずれかに記載のサルアデノウイルス配列および宿主細胞中で該遺伝子の発現を支配する調節配列に操作可能に連結された選択されたヘテロロガスな遺伝子を含んでなる上記組成物。
【0249】
23.ヘテロロガスな遺伝子を哺乳動物細胞に送達するための方法であって、該細胞に有効量の上記13.ないし16.のいずれかに記載のベクターまたは上記17.に記載のウイルスを導入することを含んでなる上記方法。
【0250】
24.ヘテロロガスな遺伝子を哺乳動物に反復投与する方法であって:
(a)該哺乳動物にヘテスロロガスな遺伝子を含んでなる第1ベクターを導入し、そして(b)該哺乳動物にヘテスロロガスな遺伝子を含んでなる第2ベクターを導入する、
工程を含んでなり、ここで少なくとも第1ウイルスまたは第2ベクターが上記17.に記載のウイルスであり、そして第1および第2の組換えベクターが異なるものである上記方法。
【0251】
25.哺乳導入細胞を上記13.ないし16.のいずれかに記載のベクターまたは上記17.に記載のウイルスで感染させ、該細胞を適切な条件下で培養し、そして該細胞培養から発現した遺伝子産物を回収することを含んでなる、選択した遺伝子産物の生産法。
【0252】
26.感染源に対する哺乳動物宿主の免疫応答を誘導する方法であって、該宿主に有効量の上記17.に記載の組換えアデノウイルスを投与することを含んでなり、ここで該ヘテロロガスな遺伝子が感染源の抗原をコードする上記方法。
【0253】
27.組換えアデノウイルスを投与する前にヘテロロガスな遺伝子を含んでなるDNAワクチンで宿主を初回感作する工程を含んでなる、上記26.に記載の方法。
【0254】
28.選択した宿主細胞に送達するための、ヘテロロガスな分子に連結された上記8.に記載のサルアデノウイルスキャプシドタンパク質を含んでなる組成物。
【0255】
29.個体に上記28.に記載の組成物を送達することを含んでなる、アデノウイルスレセプターを有する細胞を標的とする方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列を有するAdPan5ヘキソンタンパク質を含んでなるキャプシドを有する組換えアデノウイルスであって、該アデノウイルスは、更に、E1遺伝子の一部または全部を欠いているアデノウイルス配列、複製およびキャプシド形成に必要な5’および3’アデノウイルス・シスエレメント、および宿主細胞中での導入遺伝子の発現を支配する配列に操作可能に連結されたアデノウイルスにヘテロロガスな導入遺伝子を含んでなる、上記組換えアデノウイルス。
【請求項2】
キャプシドが更に配列番号21のAdPan5繊維タンパク質フラグメントを含んでなる、請求項1に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項3】
キャプシドが配列番号4のAdPan5繊維タンパク質を含んでなる、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項4】
キャプシドが更に、AdPan5ペントンタンパク質を含んでなる、請求項1に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項5】
キャプシドがAdPan5キャプシドである、請求項1から4のいずれかに記載の組換えアデノウイルス。
【請求項6】
複製およびキャプシド形成に必要な5’および3’アデノウイルス・シスエレメントを含んでなるシュードタイプ化されたアデノウイルスである、請求項5に記載の組換えアデノウイルスであって、シスエレメントが、AdPan5にヘテロロガスなアデノウイルスからの、アデノウイルス5’逆方向末端反復およびアデノウイルス3’逆方向末端配列を含んでなる、上記組換えアデノウイルス。
【請求項7】
AdPan5ヘキソンタンパク質のフラグメントを含有するヘキソンを含んでなるキャプシド、E1遺伝子の一部または全部を欠いているアデノウイルス配列、およびAdPan5にヘテロロガスな核酸配列を有する、組換えアデノウイルスであって、ここで、AdPan5ヘキソンタンパク質のフラグメントは、配列番号3のAdPan5ヘキソンタンパク質配列の全長の50アミノ酸のN末端またはC末端の切頭型である、上記組換えアデノウイルス。
【請求項8】
アデノウイルスが、更に、Pan5配列番号1の、
5’逆方向末端反復(ITR)配列;
E3領域、またはE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8およびE3 ORF9からなる群から選択されるそのフラグメント;
E4領域、またはE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2およびE4 ORF1からなる群から選択されるそのフラグメント;および
3’ITR、
からなる群の1またはそれ以上から選択されるアデノウイルス核酸配列、またはそれらに相補的な配列、を含んで成る請求項7に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項9】
Pan5配列番号2のペントンタンパク質;および
Pan5配列番号4の繊維タンパク質
から選択される、少なくとも1つのサルキャプシドタンパク質を含んでなる、請求項7に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1に記載の組換えアデノウイルスを含んでなる単離された宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1に記載の組換えアデノウイルス及び製薬学的に許容し得る担体を含んでなる組成物。
【請求項12】
哺乳動物宿主における感染源に対する免疫応答を誘導するため医薬の製造のための、請求項1から9のいずれか1に記載の組換えアデノウイルスの使用であって、導入遺伝子またはヘテロロガスな配列が感染源の抗原をコードする、上記使用。
【請求項13】
AdPan5ヘキソンタンパク質のフラグメントとAdPan5にヘテロロガスな核酸配列とを含有するヘキソン、を含んでなるキャプシドを有する組換えアデノウイルスであって、ここで、AdPan5ヘキソンタンパク質のフラグメントは、配列番号3のAdPan5ヘキソンタンパク質配列の50アミノ酸のN末端またはC末端の切頭型であるか、または、
配列番号3のアミノ酸残基125から443;
配列番号3のアミノ酸残基138から441;
配列番号3のアミノ酸残基138から163;
配列番号3のアミノ酸残基170から176;および
配列番号3のアミノ酸残基404から430残基
からなる群から選択される、
上記組換えアデノウイルス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−55835(P2011−55835A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225018(P2010−225018)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2009−18231(P2009−18231)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】