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サンゴハリタケ新菌株及びその人工栽培方法
説明

サンゴハリタケ新菌株及びその人工栽培方法

【課題】サンゴハリタケを季節に関係することなく周年栽培で施設において工業的に高品質かつ安価に、短期間に安定的に子実体を形成することが可能であるサンゴハリタケの菌株及び人工栽培方法を提供する。
【解決手段】サンゴハリタケ(Hericium ramosum)UFC−2770株(FREM AP−21307)及びこれらの変異株から選択されるサンゴハリタケ新菌株並びにこれらのサンゴハリタケ新菌株を菌床栽培してサンゴハリタケの子実体を収穫することを特徴とするサンゴハリタケの人工栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担子菌サンゴハリタケの新菌株及びその人工栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンゴハリタケ(Hericium ramosum)は、生物分類学上サンゴハリタケ科(Hericiaceae)、サンゴハリタケ属(Hericium)に属するキノコである(非特許文献1)。
【0003】
本種は木材腐朽性のきのこであり、日本国内ではブナ等の広葉樹の立木や切り株、埋没木等に発生することが知られている。また野外においては、秋にかけて発生し(例えば、非特許文献2、3及び4参照)、日本では、古くから好まれてきた食経験を有するきのこの一つである。
【0004】
サンゴハリタケと生物分類学上、サンゴハリタケ属(Hericium)に分類される近縁な食用きのことして、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)が挙げられる。ヤマブシタケについてはすでに様々な栽培方法が開示されている(例えば、特許文献1〜7、非特許文献5〜11参照)。また、ヤマブシタケは種苗法における、農林産物の品種登録の対象にも指定されており、栽培上優良な形質を有する菌株がすでに複数報告されている(例えば、出願公表番号第19783号「妙効1号菌」、登録番号第14667号「KX−YB044号」、第14668号「長林総Y1号」)。
【0005】
サンゴハリタケが含有する機能性成分の一つとして、神経成長因子(NGF)産生促進作用を有するエリナシンEが知られており、その物質はk−オピオイド受容体のアゴニストであることがすでに報告されている(非特許文献12)。
【0006】
サンゴハリタケの人工栽培方法については、すでにビン栽培による工業的な栽培方法が報告されており、広葉樹鋸屑、加水処理した針葉樹鋸屑(スギ)を培養基材とし、米ヌカ、コーンブラン、フスマ等の栄養源を添加した培養基を用いることによって、850mlの栽培ビンから100g程度の収量が得られることが報告されている(例えば、非特許文献13〜15)。さらに、一部の研究機関によって子実体がピンク色を呈している品種も栽培されている。
【0007】
今後大幅に拡大すると予想される「新規きのこ」の需要と供給を考慮すると、一般的な食用きのこ(例えば、エノキタケ、ブナシメジ、エリンギ等)の栽培で行われるようなビン栽培による工業的な方法は、初期の設備投資に一定のコストを必要とするが、栽培期間が露地栽培と比較し短く、施設の回転数を増やせば周年生産が可能で、気象条件での影響を受けないため、栽培技術の確立によっては計画的な生産を図ることが可能である。そのため、近年拡大するきのこ消費拡大における需要と供給に即した生産のためには、ビン栽培方法の確立並びにその栽培技術に適した優良菌株の作出が重要な課題である。しかし、工業的な栽培方法に適した子実体発蕈の同調性を有し、栽培期間が45日以下と短く、形状の揃った子実体が生産可能なサンゴハリタケ菌株は報告されていない。
【非特許文献1】「Ainsworth & Bisby’s Dictionary of Fungi」 9th edition, Commonwealth Agricultural Bureaux Commonwealth Mycological Institute、2001年12月15日、p.224
【非特許文献2】今関六也、本郷次雄著、「原色日本新菌類図鑑(II)」、保育社、平成元年5月31日初版発行、p.118
【非特許文献3】今関六也、大谷吉雄、本郷次雄著、「カラー名鑑日本のきのこ」、山と渓谷社、1998年11月10日初版発行、p.432
【非特許文献4】本郷次雄ら著、「山渓フィールドブックス10きのこ」、山と渓谷社、1994年9月20日初版発行、p.215
【特許文献1】特開2006−129766号公報
【特許文献2】特開2006−129743号公報
【特許文献3】特開2003−023860号公報
【特許文献4】特開平4−045724号公報
【特許文献5】特公平4−009484号公報
【特許文献6】特許第3804944号公報
【特許文献7】特開2003−023860号公報
【非特許文献5】増野和彦、小出博志著、「菌床栽培用きのこの育種と栽培技術の改良」、長野県林業総合センタ−研究報告、第12号、長野県林業総合センター、1998年3月、p.129−135
【非特許文献6】増野和彦著、「ヤマブシタケの栽培法の検討−子実体発生温度−」、日本林学会中部支部大会講演集、第41号、日本林学会中部支部、1993年1月、p.169−170
【非特許文献7】増野和彦著、「ヤマブシタケの殺菌原木栽培」、長野県林業技術センター技術情報、第117号、長野県林業総合センター、2004年7月、p.4−5
【非特許文献8】増野和彦著、「ヤマブシタケの栽培法の検討(II)−培養期間について−」、第45回日本木材学会大会講演集、日本木材学会、1990年3月15日、p.614
【非特許文献9】増野和彦著、「ヤマブシタケ栽培法の検討(III)−培養期間の短縮−」、第52回日本木材学会大会講演集、日本木材学会、2002年3月10日、p.647
【非特許文献10】増野和彦、小出博志、高木茂、松瀬收司著、「ニュータイプきのこ資源の利用と生産技術の開発」、長野県林業総合センター研究報告、第19号、長野県林業総合センター、2005年4月、p.31−35
【非特許文献11】増野和彦、高木茂、松瀬收司著、「里山を活用した特用林産物(きのこ)の生産技術の開発」、平成16年度長野県林業総合センター業務報告、長野県林業総合センター、2005年7月、p.60−61
【非特許文献12】Saito, T. et al., Erinacine E as a kappa opioid receptor agonist and its new analogs from a basidiomycete, Hericium ramosum., J. Antibiot., vol.51, p.983−990(1998年)
【非特許文献13】川島祐介著、「野生きのこ遺伝資源の保存と栽培技術に関する研究−サンゴハリタケ栽培試験」、平成14年度群馬県林業試験場業務報告、p.83(2002年)
【非特許文献14】川島祐介、中嶋薫著、「サンゴハリタケの栽培特性」、第54回日本林学会関東支部大会論文集、p.259−260(2003年)
【非特許文献15】川島祐介、松本哲夫著、「野生きのこ遺伝資源の保存と栽培技術に関する研究」、群馬県林業試験場研究報告第10号、p.66(2004年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、新規食用きのことしての一つであるサンゴハリタケを季節に関係なく、周年栽培施設での生産が可能で、工業的に高品質に、子実体発蕈に同調性を有し、接種から収穫までの栽培期間が40日程度で形状の揃った子実体を形成するサンゴハリタケの菌株並びにその栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
キノコは一般に生物分類学上同一種とされていても採集された地域や時期、系統により培養時の菌糸体生長、子実体形成能力、子実体発生後の収量及び耐病性等にそれぞれ特性があることが知られている。そのような観点から、本発明者らは、工業的生産に適する菌株が野外に必ず存在するはずであるとの考えに立ち、全国各地から天然のサンゴハリタケを収集し鋭意検討した。その結果、野外でブナ(Fagus crenata)林内の倒木に発生していた子実体を採取し、その個体より分離培養し、その後純粋培養した後、作出、選抜、育種というスクリーニングの工程を得て得られた菌株が、既知の公的な菌株分譲機関の複数菌株と比較し、菌床人工栽培方法において優れた子実体形成能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第一は、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)UFC−2770株(FREM AP−21307)及びこれの変異株から選択されるサンゴハリタケ新菌株を要旨とするものである。本発明の第二は、上記のサンゴハリタケ新菌株を栽培してサンゴハリタケの子実体を収穫することを特徴とするサンゴハリタケの人工栽培方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価な培地原料を用いた培養基で、天然物と同様に収穫時の収量が高く、形状に優れ美味なサンゴハリタケの工業的栽培方法が可能となる。具体的には、本発明のサンゴハリタケ新規菌株を用いることにより、施設栽培において子実体発生率90%以上、総栽培日数40日程度で、収量は850ml培養ビンの場合115g以上の天然物と同様の形状を有するサンゴハリタケを効率よく発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における菌株の収集、作出、選抜、育種は、以下の通りに実施した。供試培地として、1/2PDA培地(組成は、ポテトデキストロ−ス寒天培地(ニッスイ社製)を蒸留水1リットルに19.5g溶解し、粉末寒天(ニッスイ社製)10gを添加後、高圧蒸気滅菌したものpH5.5)を用いた。自然界において野外で発生していた子実体を採取し、子実体の組織の一部もしくは子実層の胞子形成部より胞子を無菌的に採取し、前述の1/2PDA培地に置床し分離培養を行った。培養条件は23℃±1で実施した。その後、生長したサンゴハリタケの菌糸体を前述の培地を用い、菌株の純粋培養を実施しサンゴハリタケ菌株とした。そして、得られた菌株の中から作出、選抜、育種という工程より得られたものをサンゴハリタケ保存菌株とした。また、同一の個体から単胞子分離によって得られた菌株は交配後、2核化を確認し保存菌株とした。またUV照射や、薬剤処理(NTG処理)によって遺伝的な変異を起こした。
【0013】
次に本発明における菌株の選抜は、以下に示す方法で実施した。まず、培地作製は、850ccポリプロピレン製の培養ビン(千曲化成(株))にブナ鋸屑(有限会社新井商店)150g、フスマ(豊橋飼料(株))30gに水350gを加えてよく混合し、湿潤状態後の含水率が63.0±2%になるように調製した。その後、圧詰して、中央に直径1cmの穴を穿孔させ、打栓後105℃、60分で、120℃、45分間高圧蒸気滅菌し、固形培養基を調製した。試験数は、それぞれ16本ずつ試験を行った。これに上記の培地(1/2PDA培地)で培養した種菌を接種した。培養条件は、暗黒下23℃、湿度55±5%条件化で培養基に見かけ上菌糸体が蔓延するまで培養し、さらに5日間培養を続け熟成させた。
【0014】
次いで子実体原基発生処理として、照度20ルクス、温度18℃、湿度90%の条件化で子実体原基が形成されるまで培養を続け、サンゴハリタケの各菌株における子実体収量、総栽培日数、子実体形状について調べた。その結果を表1に示す。なお、表1の子実体収量、子実体発生率、子実体の形状、総栽培日数は、16本の平均を示すものである。
【0015】
【表1】

供試した菌株は、本発明者らが収集したすべてのサンゴハリタケ10菌株と、日本国内で何人でも入手できる公知のサンゴハリタケ菌株である、MAFF(独立行政法人農業生物資源研究所)、ATCC(American Type Culture Collection)に寄託されている4菌株である。なお、表に示す菌株の番号(UFC−番号、UFC−F番号)は本発明者が採集した際に、個々の菌株の識別のために用いている略式記号と通し番号の組み合わせの他、選抜の際に用いた記号である。飛び番号は、他きのこの保存菌株が番号内に含まれるためであり、本発明において特別な意味は示していない。
【0016】
表1においてdata not availableとは総栽培日数が100日を経過しても子実体が形成されない菌株を示す。また、表1における形状とは、◎が子実体の形が優れたもの(子実体の下面に子実層を形成し、全体の色が白色からやや黄土色を呈し、栽培容器の肩口に白色の胞子を落下させたもので収穫時の収量が100g以上あったもの。
供試数16本に対しすべてで子実体を形成したもの)。○が子実体の形が良いもの(上記の条件と同様であるが、収穫時の終了が100gに満たないもの。供試数16本に対し、すべてで子実体を形成したもの)、×が子実体の形が劣るもの(子実体は発生したが、収穫時の収量が50gに満たず、成熟した子実体が得られず途中で枯死してしまったもの)を示す。
【0017】
表1で明らかなように、供試した菌株のうち、サンゴハリタケUFC−2770菌株(FREM AP−21307)は、子実体発生率が90%以上であり、総栽培日数が45日以下と短かった。収量も約115g以上と多く、特に優れた形状を示した。また、サンゴハリタケの子実体を野外で採集した場合、他生物の影響により食害や枯死してしまった部位もあるため十分な収量を得ることは非常に困難であるが、人工栽培によって、形態的にも天然物以上の個体を得ることが可能であった。また、子実体発生率が他菌株と比較し良く、子実体発生率の同調性が得られたことにより、本菌株を用いることにより工業的生産が可能である。
【0018】
表1で示したサンゴハリタケUFC−2770菌株(FREM AP−21307)の子実体及び胞子の形態的特徴は、以下の通りである。
【0019】
子実体の特徴は、白色からややピンク色(生長時)で、成熟するとやや黄土色を呈する。形態はサンゴ状となり、子実層托は、針状、各枝の下面より無数の針を下垂する。大きさは60mm〜140mm。子実層の長さは、1.0mm〜4.0mm。胞子は類球形で無色、大きさは、4.5〜5.0μm×2.5〜3.5μm。
【0020】
上記の形態学的特徴に基づいて、非特許文献1〜3により同定すると、本菌株がサンゴハリタケであることは明らかである。なお、本菌は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約下、平成19年6月22日に日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に所在する独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにサンゴハリタケ(Hericium ramosum)UFC−2770株(FREM AP−21307)として寄託されている。
【0021】
次に、サンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)の微生物学的諸形質を以下に示す。なお、以下の培地では、1/2PDA培地で前培養した菌糸体を直径5.0mmのコルクボーラーで打ち抜き、暗黒下で培養した結果に基づくものである。
【0022】
麦芽エキス寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は18.5mm、白色の菌糸体で菌叢は一般的な食用きのこ(シイタケ、ナメコ、エノキタケ)と比較し、密度が低い。15日目でコロニー径は20.8mm、20日目でコロニー径は21.2mmとなる。菌糸体伸長は放射状であるが均一ではなく、菌叢も密度にムラが生じる。
バレイショ・ブドウ糖寒天培地(23℃)おける生育状態:10日目でコロニー径は19.2mm、菌糸体性状が、麦芽エキス寒天培地と同様。15日目でコロニー径は21.2mm、20日目でコロニー径は22.4mmとなる。
オートミール寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は5.2mm。15日目でコロニー径は5.8mm、20日目でコロニー径は6.8mmとなり、菌糸体は前述2つの培地と比較し、培地中に菌糸体は生長していない。
Lフェノールオキシダーゼ検定用培地「0.1%没食子酸添加ポテト・グルコース寒天培地」(23℃)おける生育状態:10日目では発菌したに過ぎず菌糸体生長はほとんどしない。
最適生育温度:PGY寒天培地(PGY液体培地に寒天を加えたもの)に直径5±1mmの種菌を接種し、各温度でそれぞれ培養して、14日後に各コロニー直径を測定したところ、最適生育温度は15〜23℃であった。また、5℃では菌糸体が発菌するがほとんど生育せず、30℃では生育が著しく悪かった。
最適生育pH:PGY液体培地20mlを滅菌後、1規定塩酸又は1規定水酸化ナトリウム溶液で無菌的にpH3.0〜10.0の範囲で0.5毎に調整、直径5mmの種菌を接種し、15日間静置後、各乾燥重量を測定したところ、最適生育pHは5.5付近であった。また本菌株の生育範囲はpH3.0〜7.5の範囲であった。
【0023】
次に、サンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)と、他のサンゴハリタケ菌株との異同を調べるため、以下のようにして対峙培養を行なった。供試したサンゴハリタケ菌株は、表1に示した菌株すべてである。また、MAFF番号、ATCC番号が付与されているサンゴハリタケ菌株についても同様に試験した。
【0024】
供試菌株の二核菌糸体を1/2PDA培地より直径5.0mmのコルクボーラーで切り出し、それぞれを1/2PDA寒天培地の中央部に対峙して接種し(2cm間隔)、23℃、40間暗黒条件下において培養後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。結果を表2に示す。なお、帯線を生じた場合は+、帯線を生じない場合は−と表記した。なお、ここで、帯線には着色していない拮抗状態のものも含む。
【0025】
【表2】

表2に示したように、サンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)は、供試菌株すべてと帯線を形成し、同じ菌株間において対峙線の形成が見られなかったことから、サンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)が新菌株であることが明らかになった。
【0026】
次に本発明の第二のサンゴハリタケの人工栽培方法について説明する。上記した本発明のサンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)は、通常の菌床人工栽培方法で栽培することができる。
【0027】
本発明において、通常の菌床人工栽培方法とは、エノキタケ、ヒラタケ、ブナシメジ等の食用きのこ栽培に用いられている方法であって、ビン栽培、袋(プラスティックバック)栽培、トロ箱、コンテナ栽培等がある。ここでは、一例として、ビン栽培について述べると、その方法とは、通常、「培地調製」、「ビン詰め」、「滅菌」、「接種」、「培養」、「芽だし」、「生育」及び「収穫」の各工程からなる。
【0028】
「培地調製」とは、通常キノコの人工栽培に使用されている鋸屑と米糠、フスマ、穀類粉砕物等の混合物に水を加えて湿潤状態にする工程で、バーク堆肥、麦わら堆肥、コンポスト等を加えても良い。含水率は50〜80%、好ましくは55〜70%、より好ましくは60〜65%が適当である。培地組成は、サンゴハリタケ子実体形成が良好な組成であればよいが、その一例を示せば、鋸屑、フスマやコーンマッシュ等の組み合わせがある。鋸屑は培地基材となり、フスマやコーンマッシュは栄養源として作用する。
【0029】
培地基材となる鋸屑は、針葉樹でも広葉樹由来のものでも良く、一般的な食用きのこ栽培に用いられるコーンコブ等も使用できる。好ましくは、植物分類学上、針葉樹であるマツ科(PINACEAE)、スギ科(TAXODIACEAE)、広葉樹では、ヤマモモ科(MYRICACEAE)、クルミ科(JUGLANDACEAE)、クワ科(MORACEAE)、ヤマグルマ科(TROCHODENDRACEAE)、フサザクラ科(EUPTELEACEAE)、カツラ科(CERCIDIPHYLLACEAE)アケビ科(LARDIZABALACEAE)、メギ科(BERBERIDACEAE)、モクレン科(MAGNOLIACEAE)、クスノキ科(LAURACEAE)、ユキノシタ科(SAXIFRAGACEAE)、トベラ科(PITTOSPORACEAE)、マンサク科(HAMAMELIDACEAE)、スズカケノキ科(PLATANACEAE)、バラ科(ROSACEAE)、マメ科(FABACEAE)、ミカン科(RUTACEAE)、センダン科(MELIACEAE)、トウダイグサ科(EUPHORBIACEAE)、ツゲ科(BUXACEAE)、モチノキ科(AQUIFOLIACEAE)、ニシキギ科(CELASTRACEAE)、トチノキ科(HIPPOCASTANACEAE)、アワブキ科(SABIACEAE)、クロウメモドキ科(RHAMNACEAE)、ブドウ科(VITACEAE)、アオイ科(MALVACEAE)、マタタビ科(ACTINIDIACEAE)、ツバキ科(THEACEAE)、イイギリ科(FLACOUTIACEAE)、キブシ科(STACHYURACEAE)、グミ科(ELAEGNACEAE)、ミソハギ科(LYTHRACEAE)、ザクロ科(PUNICACEAE)、ウコギ科(ARALIACEAE)、ミズキ科(CORNACEAE)、リョウブ科(CLETHRACEAE)、ツツジ科(ERICACEAE)、ヤブコウジ科(MYRSINACEAE)、カキノキ科(EBENACEAE)、ハイノキ科(SYMPLOCACEAE)、エゴノキ科(STYRACACEAE)、モクセイ科(OLEACEAE)、キョウチクトウ科(APOCYNACEAE)、クマツヅラ科(VERBENACEAE)、ノウゼンカズラ科(BIGNONIACEAE)、アカネ科(RUBIACEAE)、スイカズラ科(CAPRIFOLIACEAE)等であるが、より好ましくは、ヤナギ科(SALICACEAE)、シナノキ科(TILIACEAE)カエデ科(ACERACEAE)、カバノキ科(BETULACEAE)、ニレ科(ULMACEAE)、最も好ましくはブナ科(FAGACEAE)に分類されるブナ属(Fagus)の鋸屑が好適に使用できる。また、植物性腐食物(例えば、コーンコブ、バカス、ライムケーキ、芝生、ビートパルプ、イネやムギワラ等のイネ科植物の茎葉部等)でも良いが、本種は、木材腐朽性のきのこであるため、前述の鋸屑を基材として用いることが望ましい。
【0030】
上記の植物種の一種類からのものを用いて良いが、二種類以上を混合しても良い。また、きのこの菌床用鋸屑製造業者によって市販されている、複数の樹種が混在(例えば、広葉樹チップ、ザラメチップ等の商品名で販売)されているものであっても良い。粒径は、1.0mm〜10mmであれば良く、好ましくは1.2mm〜8.0mm、より好ましくは、1.5mm〜7.0mmが好適に使用できる。また、鋸屑の乾燥状態は含水率5.0%〜40.0%が良く、好ましくは6.0%〜35.0%、より好ましくは、7.0〜30.0%が好適に使用できる。また、これまで報告されている発生樹種以外(例えば、非特許文献1〜3記載等)を使用する場合(例えば、針葉樹のスギやカラマツ等)には野外にて野積みや、散水等の処理により木材中に含まれるフェノール類等の忌避物質を除外する工程がなされたものを用いることが望ましい。
【0031】
一般的な食用きのこの菌床栽培において(例えば、シイタケ、ヒラタケ、エリンギ、ブナシメジ、エノキタケ、マイタケ等)、人工培養基を作製する場合、生長促進、増収効果、pHの調整や、培地の保水性、通気性の向上等を目的として、補助的な添加剤を加えることも一般的な食用きのこの菌床栽培において行われており、本発明においても好適に使用できる。補助的に加える添加剤の例としては、オカラ、大豆カス、ビール粕、海草、ビートパルプ、豆殻、ジャガイモ皮、玉葱皮、綿実かす、落花生殻、貝殻等の砕物、ピートモス、バーミキュライト、ゼオライト、パーライト、カオリナイト、赤玉土、珪藻土焼成粒、鹿沼土、黒ボク土、木炭、油粕、魚粉、骨粉、血粉、貝化石、堆肥等を添加しても良い。さらに、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マンノース、フルクトース、スクロース、グリコーゲン、麦芽糖、乳糖、ショ糖、可溶性デンプン、イヌリン、ペクチン、デキストリン、マンニット、グリセリン等の単糖類、複糖類、多糖類、高級アルコール等の炭素源、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、酒石酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、尿素、アセトアミド、グリココール等の無機窒素化合物、有機窒素化合物を適宜添加しても良い。また、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン等のアミノ酸類を添加しても良い。さらに、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸、葉酸、ビオチン等のビタミン類も適宜添加しても良い。以上に挙げた添加する補助的な添加剤の量は、培地基材との重量比として0.05%以上添加されれば良く、好ましくは10.0%以下が望ましい。
【0032】
「ビン詰め」とは、800〜1000ml、より好ましくは850mlのポリプロピレン製ビンに、調製した培地を350〜750g、好ましくは400〜700g、より好ましくは460〜600g圧詰し、中央に1cm程度の穴を穿孔し、打栓する工程をいう。
【0033】
「滅菌」とは、蒸気により培地中のすべての微生物を死滅させる工程で、高圧蒸気滅菌機を用いて実施することができる。一般的なきのこの栽培(例えば、シイタケ、ヒラタケ、ナメコ、エノキタケ等)においては、常圧滅菌では98℃、4〜5時間、高圧滅菌では121℃、30〜90分間行われるが、本発明では、例えば105℃、60分行った後、121℃、45分間高圧蒸気滅菌を実施することが好ましい。
【0034】
「接種」とは、放冷された培地に種菌を植えつける工程で、種菌としてはサンゴハリタケ菌株を1/2PD液体培地で23℃、10〜15日間培養したものを用いることができ、1ビン当り100mlほど無菌的に植えつける。また、ここまで説明した工程で得られる液体種菌接種済みの培養基を、23℃で15〜25日間培養し、培養基全体にサンゴハリタケの菌糸体がまん延したものを固体種菌として用いることができ、1ビン当り15gほど無菌的に植えつける。
【0035】
「培養」とは、接種済みの培養基を温度20〜23℃、湿度40〜70%において菌糸体をまん延させ、更に熟成をさせる工程で、10〜40日間、好ましくは15〜30日間、より好ましくは18〜24日間行われる。
【0036】
「芽だし」とは、子実体原基の発蕈を促進する操作として実施され、環境的な子実体原基形成刺激の例について以下に述べる。温度条件としては、10〜20℃が良く、より好ましく17℃±2である。湿度条件としては80.0%以上が良く、好ましくは85.0〜99.8%、最も好ましくは、90.0〜98.0%である。光条件としては、500ルックス以下、好ましくは100ルックス以下、最も好ましくは50ルックス以下が好ましい。
【0037】
「生育」とは、子実体原基から成熟子実体を形成させる工程で温度10〜20℃、好ましくは12〜18℃、より好ましくは15〜17℃、湿度80.0%以上、好ましくは85.0〜90.0%、照度20ルックス以上、好ましくは50〜500ルックスで5〜15日間培養を続けると、サンゴハリタケの成熟子実体を得ることができ、「収穫」を行い栽培の全工程は終了する。
【0038】
以上、ビン栽培について説明したが、本発明はビン栽培に限定されるものではなく、袋(プラスティックバック)栽培、トロ箱栽培、コンテナ栽培においても同様の方法で実施できる。
【0039】
本発明の人工栽培方法で使用し得るサンゴハリタケ菌株としては、サンゴハリタケUFC−2770株(FREM AP−21307)が最適であるが、これらの菌株に限定されるものではなく、この菌株を親株と育種した菌株、並びにこの菌株から紫外線照射や薬剤処理等の変異処理によって得られた菌株であっても用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
1/2PD液体培地(蒸留水1リットルに対し、ジャガイモ200g(市販品の皮を剥いたもの)を采の目に細断後、1時間湯煎し、グルコース7.5gを添加し高圧蒸気滅菌したものpH5.5)100mlにサンゴハリタケUFC−2770菌株(FREM AP−21307)を接種して、23℃で15日間培養し液体種菌とした。一方、ポリプロピレン製の培養ビン850ml(千曲化成(株))に、ブナ(Fagus crenata)鋸屑150g(有限会社新井商店)、コーンマッシュ30g(豊橋飼料(株))、水350gを加えて良く混合し湿潤状態後の含水率が63.0±2%にしたものを圧詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後105℃、60分、120℃、45分間高圧蒸気滅菌を行い放冷した。なお、供試本数は、16本とした。これに上記の液体種菌約20mlを接種し、まず暗所にて、温度23℃、湿度55%の条件下、培養基に見掛け上菌糸体がまわるまで培養し、さらに5日間培養を続け熟成させた。
【0042】
子実体発生処理として、照度50ルクス、温度17℃、湿度90.0〜98.0%の条件化で子実体原基が形成されるまで培養を続け成熟子実体を収穫した。なお実施例1は16本の平均で試験を実施した。収穫されたサンゴハリタケは、天然に近い形状を呈し癖が無く大変美味であった。得られた子実体は、1ビン当り117.5g、総栽培日数は、41日間であった。
【0043】
実施例2
栄養源として、コーンマッシュの代わりに米糠30g((有)一井商店)、を使用した以外は、実施例1と同様の方法で栽培試験を実施し成熟子実体を得た。得られた子実体は、1ビン当り118.8g総栽培日数は、42日間であった。
【0044】
実施例3
栄養源として、コーンマッシュの代わりに小麦粉30g(日清製粉(株))を使用した以外は、実施例1と同様の方法で栽培試験を実施し成熟子実体を得た。得られた子実体は、1ビン当り115.9g総栽培日数は、42日間であった。
【0045】
実施例4
栄養源として、コーンマッシュの代わりにコーンフラワー30g(豊橋飼料(株))を使用した以外は、実施例1と同様の方法で栽培試験を実施し成熟子実体を得た。得られた子実体は、1ビン当り116.2g総栽培日数は、44日間であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1で得られたサンゴハリタケUFC−2770菌株(FREM AP−21307)の子実体の形状を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンゴハリタケ(Hericium ramosum)UFC−2770株(FREM AP−21307)及びこれの変異株から選択されるサンゴハリタケ新菌株。
【請求項2】
請求項1記載のサンゴハリタケ新菌株を菌床栽培してサンゴハリタケの子実体を収穫することを特徴とするサンゴハリタケの人工栽培方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−27984(P2009−27984A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195966(P2007−195966)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】