説明

サンドイッチパネルに使用するためのポリイソシアネートベースの接着剤配合物

有機ポリシソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを反応させることによって製造される、A2火災ユーロ等級のサンドイッチパネルに使用するのに適した接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物および前記接着剤を使用した積層品に関する。さらに詳細には、本発明は、サンドイッチパネルを作製するためにコーティング層を絶縁層上に接着する際に特に有用なポリイソシアネートベースの接着剤に関する。
【0002】
1分子当たり1より多いイソシアネート基を含有する化合物と1分子当たり1より多いヒドロキシル基を含有する化合物とをベースとする接着剤、いわゆるポリウレタン接着剤またはポリイソシアネートベースの接着剤は、特性が優れていること、プロセシングが単純かつ経済的であること、および強度が高いことから、多くの応用分野において使用されている。ポリイソシアネートベースの接着剤に対する極めて重要で大きなマーケットは、特に積層プロセス用の構造物である。たとえばサンドイッチパネル(連続プロセスにて製造される)は、コーティング層(たとえば、スチール、アルミニウム、またはホイルのストレスドスキン材料)を絶縁層(たとえば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ミネラルウール、または他の絶縁用コア)に接合することによって造ることができる。
【0003】
上記種類のサンドイッチパネルが構造物用に使用可能となるためには、EU通達(EU directive)89/106/EECとコミッション・デシジョン(Commission Decision)2000/147/ECに規定されている、対火反応(reaction-to-fire)に関する特定の要件にサンドイッチパネルが適合しなければならない。
【0004】
現在有効なヨーロッパ等級システムの基礎となっているのはEN13501-1(対火反応)である。EN13501-1は7ユーロ等級(A1、A2、B〜F)からなり、4つの異なった試験法(ヨーロッパ全体にわたって同じ)といわゆるレファレンス・シナリオ(reference scenario)に基づいている。この新システムの主要な構成要素はSBI〔シングル・バーニング・アイテム(Single Burning Item)〕試験(EN13238)(中規模の試験法)である。等級A2〜Dに適合するために、物品はSBI試験を受けなければならない。この新等級システムの試験法により、現在では、物品の対火反応性能に対する実際の印象(realistic impression)が得られるようになっている。SBI試験は、小規模の、ほぼ実際の条件での火のタイプをシミュレートしている。このように、試験した物品が、現実の猛火において火災から逃げる機会を実際に増やすかどうかを明らかにすることができる。
【0005】
接着剤は本発明において特別な役割を果たす。なぜなら接着剤は、パネルにどの火災等級(fire rating)を与えるかを決定する上で大きな影響を有するからである。たとえば、サンドイッチパネルがEN13501-1によるA2等級を得るためには、こうしたサンドイッチパネルにおけるプライマーとの全ての接着剤接合部の発熱量が4MJ/m2を超えてはならない。
【0006】
ある材料の発熱量は、火災の場合に該材料から放出される可能性のあるエネルギーの量を示している。発熱量は、ボンベ熱量計においてENISO1716にしたがって決定される。ポリウレタン(上記種類のサンドイッチパネルを製造するための接着剤の基本成分として一般的に使用される)は約30〜40MJ/kgの発熱量を有し、高品質のパネルを製造するためには、ポリウレタン接着剤を少なくとも300g/m2の量にて使用することが一般に必要とされる。
【0007】
したがって最近の開発では、接着剤1kg当たりの発熱量に重点が置かれており、このあとで1m2当たりのコーティング重量が、したがって1m2当たりの発熱量が決定される。
【0008】
多量の無機充填剤を使用することによってポリウレタンベース接着剤の発熱量を低下させようとする試みは必然的に接着剤の粘度上昇を伴い、その粘度上昇の程度によっては、こうした接着剤を、現行の接着剤塗布法や接着剤塗布プラントと組み合わせて使用することができなくなることがある。
【0009】
WO02/46325は、サンドイッチパネルが形成されるように、たとえばミネラルウールの絶縁層上にコーティング層を接着させるための、少なくとも40重量%の粒状無機充填剤を含有するポリウレタンベースの結合剤を開示している。
【0010】
したがって、所望の火災安全性だけでなく使用条件や適用条件(たとえば、種々の基材に対する良好な接着性、彩色適性、フレキシビリティ、湿潤接着強度、亀裂抵抗、保存性、および適用時の非有害性)に適合することができる接着剤組成物が強く求められている。
【0011】
本発明の目的は、公知の接着剤組成物より低い発熱量を有し、そして同時に、利用目的に適した低粘度を有していて、好ましくは充填剤物質を全く含有しない接着剤組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、EU通達89/106/EECに従った対火反応性能に関する要件を満たすことができる(A2等級が得られる)サンドイッチパネルを製造する上で適切な量にて使用できる接着剤を提供することにある。
【0013】
驚くべきことに、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と有機ポリイソシアネートとを反応させることによって製造されることを特徴とするポリイソシアネートベースの接着剤を使用することでこれらの目的は達成される、ということが見出された。
【0014】
上記種類のサンドイッチパネルに接着剤接合部を形成させるのに本発明の接着剤を使用すると、接着剤接合部とプライマーの発熱量を4MJ/m2未満に減少させることができ、これにより必要とされる接着剤のコーティング重量を減らすことができ、したがってサンドイッチパネルはA2等級を得るための要件に適合するようになる。
【0015】
EN-13501-1(A2)による難燃特性は別として、本発明の接着剤は、必要とされる機械的特性を満たし、良好な接着性を示し、長期耐久性を有し、競争力のある製造コストにて確実なプロセシングを示す。
【0016】
本発明の接着剤は、30MJ/kg未満(好ましくは25MJ/kg未満、最も好ましくは10〜20MJ/kgの範囲)の発熱量を有し、したがってA2等級に適合するためには200〜400g/m2のコーティング重量で済む。
【0017】
本発明の接着剤配合物は一般に100〜5000mPas(好ましくは150〜3000mPas)の粘度を有しており、高圧インピンジメント・ヘッド(high pressure impingement heads)、ビーズ塗布(bead application)、エアミックス塗布(airmix application)、およびエアレス塗布(airless application)に対して使用することができる。
【0018】
本発明はさらに、接着剤付けされたコーティング層を少なくとも一方の側に有する絶縁層(好ましくは無機材料)を含んだサンドイッチパネルに関する。本発明のサンドイッチパネルは、絶縁層とコーティング層との間の接着剤接合部が上記の接着剤からなることを特徴とする。
【0019】
ミネラルウールもしくは発泡ガラスのコアを有していて、本発明の接着剤を使用して製造された上記のパネルは、新規の厳しいシングル・バーニング・アイテム(SBI)試験に合格している。本発明の接着剤のおかげで、パネルは現在、A2:“不燃性”として分類されている。この等級は、より一層高い基準に適合するようなサンドイッチパネルを製造する上で極めて重要である。
【0020】
他のパネル特性は変化がない。プロセシングおよび必要とする機械装置に関していかなる不利な点もない。この新規接着剤を使用して製造したパネルはより低い発熱量を有する(すなわち、火災危険性への潜在的寄与はより低い)、ということが試験からわかる。
【0021】
市販のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液(一般には“水ガラス”として知られている)が満足できる結果をもたらすことが見出されている。このようなケイ酸塩はM2O:SiO2(式中、Mはアルカリ金属の原子である)として表わすことができ、これらのケイ酸塩はM2O:SiO2の比が種々異なる。ケイ酸ナトリウムが極めて満足できるものであり、他のアルカリ金属ケイ酸塩(たとえば、ケイ酸カリウムやケイ酸リチウム)も使用することができるけれども、これらのケイ酸塩は、経済上および性能上の理由からあまり好ましいとはいえない、ということが見出されている。ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムとの混合物も使用することができ、このような場合、Na2O/K2Oの比は99.5:0.5〜25:75であるのが好ましい。M2OとSiO2とのモル比は重要なことではなく、通常の範囲内で変動してよい(すなわち0.2〜4、さらに特別には1.5〜3)。好ましいケイ酸ナトリウムを使用する場合、SiO2:Na2O重量比は、たとえば1.6:1〜3.3:1の範囲で変わってよい。しかしながら一般には、前記重量比が2:1〜3.3:1の範囲内であるケイ酸塩を使用するのが好ましい、ということがわかっている。使用する水ガラスの濃度は、粘度要件にしたがって、あるいは必要とされる水含量にしたがって容易に変えることができるが、約28〜55重量%の固体含量を有する水ガラス、または3000mPas未満の粘度を有する水ガラスを使用するのが好ましい(このことは、問題のないプロセシングに一般的に求められる)。
【0022】
完全には飽和していない水ガラスを使用するのが好ましく、飽和した水ガラス溶液に、1〜50重量%の、好ましくは1〜40重量%の、最も好ましくは1〜20重量%の量の水を加える。完全に飽和した水ガラス溶液においては、水分子のほとんど全てが、アルカリ金属ケイ酸塩において生成するイオンに物理的に結合されている。このような好ましい水ガラス溶液を使用すると、硬化プロセス時に接着剤組成物が幾らか発泡し、これによって絶縁パネルの平滑な外面と内部コア材料(たとえば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、およびミネラルウール)の粗い通気表面との間により良好な接着が得られる。
【0023】
適切な市販水ガラスの例としては、INEOSシリケーツ(INEOS Silicates)から市販のCrystal0072、Crystal0079、およびクリスタルCrystal0100S(いずれもナトリウムをベースとする)、ならびにINEOSから市販のMetso400(カリウムをベースとする)がある。
【0024】
固体のアルカリ金属ケイ酸塩と水との組み合わせ物を使用することによって、その場でケイ酸塩溶液を調製することもできる。
【0025】
本発明において使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)タイプのイソシアネート、およびこれらのイソシアネートのプレポリマー(これらに限定されない)を含めたいかなる数のポリイソシアネートを含んでもよい。ポリイソシアネートは、その構造中に少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ)の芳香環を有していて液体物質であるのが好ましい。2より大きい官能価を有する高分子量イソシアネートが好ましい。
【0026】
本発明において使用されるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、2,4’-異性体;2,2’-異性体;4,4’-異性体;これら異性体の混合物;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とそのオリゴマーとの混合物〔当業界においては、2より大きいイソシアネート官能価を有する“クルード”MDIもしくはポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)として知られている〕;あるいはウレタン基、イソシアヌレート基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、および/またはイミノオキサジアジンジオン基、ならびにこれらの基の混合を有する誘導体のいずれか;の形態であってよい。
【0027】
他の適切なポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジ(イソシアナートシクロヘキシル)メタン、イソシアナートメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、およびテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などがある。
【0028】
本発明に対する好ましいポリイソシアネートは、イソシアネート反応性水素原子を含有する化合物とポリイソシアネートとを反応させることによって得られるセミプレポリマーおよびプレポリマーである。イソシアネート反応性水素原子を含有する化合物の例としては、アルコール、グリコール、比較的高分子量のポリエーテルポリオールとポリエステルポリオール、メルカプタン、カルボン酸、アミン、ウレア、およびアミドなどがある。特に適切なプレポリマーは、ポリイソシアネートと一価アルコールもしくは多価アルコールとの反応生成物である。プレポリマーは、従来の方法によって〔たとえば、400〜5000の分子量を有するポリヒドロキシル化合物(特に、モノヒドロキシルポリエーテルもしくはポリヒドロキシルポリエーテルであって、400未満の分子量を有する多価アルコールと混合してもよい)と過剰量のポリイソシアネート(たとえば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、アリール脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、または複素環式ポリイソシアネート)とを反応させることによって〕製造される。ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール-エチレングリコールコポリマー、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、および2〜8の官能価を有するイソシアネート反応性の開始剤を使用してアルキレンオキシド(たとえば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)を開環共重合させることによって得られるポリエーテルポリオールなどがある。ポリエステルポリオールの例としては、多価アルコールと多塩基酸とを反応させることによって得られるポリエステルジオールが挙げられる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、および2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。多塩基酸の例としては、フタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、およびセバシン酸などが挙げられる。
【0029】
本発明の特に好ましい実施態様においては、2〜2.9(好ましくは2.1〜2.6)の平均官能価、最大で6000mPasの粘度、および6〜30重量%(好ましくは10〜26重量%)のイソシアネート含量を有するプレポリマーがポリイソシアネート成分として使用される。
【0030】
本発明において使用するのが好ましいポリイソシアネートは、ウレトンイミン変性のMDIやMDIプレポリマー等のMDIの誘導体を含めたMDIベースのポリイソシアネートである。これらのポリイソシアネートは一般に、5〜32重量%(好ましくは10〜31重量%)のNCO含量、および100〜5000mPas(好ましくは150〜2000mPas)の粘度を有する。
【0031】
アルカリ金属ケイ酸塩とポリイソシアネートの相対的比率を変えることで、種々の物理的特性を(そしておそらくは異なった化学構造を)有する生成物を得ることができる。一般には、過剰量のケイ酸塩(すなわち、使用されるポリイソシアネートに対する化学量論的当量より多い量のケイ酸塩)を使用するのが望ましい。他方、使用するポリイソシアネートの量が少なくなりすぎないようにすることが大切である。不充分な反応しか起こらなくなるからである。
【0032】
一般には、水ガラス(SiO2の含量が約30%)とポリイソシアネートとの重量比は1:2〜5:1(最も好ましくは1:1〜2:1)である。1:2より下がると耐火性が充分でなくなり、3:1より上がると接合強度が低下する。
【0033】
反応混合物の活性は、イソシアネート:ケイ酸塩比によって、および触媒を使用することによって調節することができる。適切な触媒の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、2-メチルイミダゾール、ピリミジン、ジメチルアニリン、およびトリエチレンジアミン等の第三アミンを含めたそれ自体公知の触媒がある。イソシアネート反応性水素原子を含有する第三アミンの例としては、トリエタノールアミンやN,N-ジメチルエタノールアミンなどがある。他の適切な触媒としては、炭素-ケイ素結合を有するシラアミン(silaamines)、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等の窒素含有塩基、アルカリ金属ヒドロキシド、アルカリ金属フェノラート、およびアルカリ金属アルコラートなどがある。本発明によれば、有機金属化合物(特に有機スズ化合物)も触媒として使用することができる。
【0034】
特に好ましい触媒は、ハンツマン社からJEFFCAT DMDEEの商標名で市販されている2,2’-ジモルホリノジエチルエーテルおよびエアプロダクツ社から市販のDABCO EGである。
【0035】
これらの触媒は一般に、接着剤配合物の総重量を基準として0.001〜10重量%の量にて使用される。
【0036】
本発明の組成物は、接着剤組成物において一般的に使用される添加剤(たとえば、湿潤剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤、顔料、無機充填剤、消泡剤、および抗菌剤)のような他の任意成分を含んでもよい。US2002/0031669とUS6231985に記載の加水分解された大豆タンパク質やGB1423558に記載のポリビニルアルコール等の物質は、本発明の接着剤組成物中には通常組み込まれない。
【0037】
本発明の接着剤の製造は簡単である。すなわち、液体ポリイソシアネートとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを均一に混合し、次いで一般には混合物をキュアーし、そして使用する装置に応じた適切な時間にわたって硬化させればよいだけである。
【0038】
アルカリ金属ケイ酸塩-ポリイシソアネート複合物を製造する従来の方法は、第1の成分(一般には、アルカリ金属ケイ酸塩、水、ならびに任意の触媒、界面活性剤、および湿潤剤を含む)と第2の成分(一般にはポリイソシアネートを含む)とを混合することを含む。第1と第2の成分を混合すると、反応が進行して硬化複合物が形成される。これとは別に、触媒は、アルカリ金属ケイ酸塩-水成分中ではなくポリイソシアネート組成物中に組み込むこともできる。
【0039】
接着剤が長いポットライフを有する場合は、刷毛、ローラー、切込み付こて、コーティング・ナイフ、もしくはロール・コーターを使用して手によって、またはキャスティングによって、または噴霧によって塗布することができる。しかしながら反応の速い系は、計量混合分配装置を使用して塗布しなければならず、少量の塗布に対してはスタティックミキサーで充分であるが、多量の塗布に対してはダイナミックミキサーが必要とされる。
【0040】
本発明の接着剤は、絶縁材料(特に断熱材料)の層および/または化粧面材を建築材料の種々の部位に接合するのに使用することができる。したがって本発明の第1の実施態様においては、有機ポリマーをベースとする絶縁材料(たとえば、ポリスチレンフォームやポリウレタンフォーム)を種々の建築材料に接合することができる。本発明の絶縁材料は、金属に標準的な表面処理(たとえば、パッシベーション、ラッカー塗り、またはプラスチックによる被覆)が施されている場合でも、該金属(たとえば、鉄、亜鉛、銅、またはアルミニウム)に接合することができる。本発明の絶縁材料はさらに、無機材料(たとえばコンクリート)やセラミック(たとえば、タイル、プラスター、または石膏)に接合することもできる。本発明の絶縁材料はさらに、硬質PVCを含めた種々のプラスチックに接合することもできる。本発明の他の実施態様においては、本発明の接着剤を使用して、無機絶縁材料(たとえば、ミネラルウールや、発泡材料をベースとする絶縁材料)を上記の建築材料に接合することができる。
【0041】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、内部コア断熱材(好ましくは不燃性の無機繊維、DIN4102-1による建築材料等級A1、たとえばロックウール)(好ましい厚さは4〜15cm)を含み、金属、石膏、もしくはセラミックの面材を一方の側または両側に取り付けたサンドイッチパネルに本発明の接着剤が使用される。面材は、使用する接着剤の発熱量に応じて、50〜400g/m2の量にて本発明の接着剤を使用して内部コアに接着される。このような複合パネルは、新規のユーロ等級(Euroclass)にしたがってA2火災等級(A2 fire rating)に合格する。
【0042】
本発明による複合材料は多くの利点を有する。本発明の複合材料は効果的な断熱材であり、優れた対火反応性能を備えた剛性構造を有する。本発明の複合材料はさらに、経済的な製造(ダブルベルト積層法によって)が可能である。
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の種々の態様を説明するが、これらの実施態様によって本発明が限定されることはない。
【0044】
これらの実施例においては、下記のような成分を使用した。
・クリスタル(CRYSTAL)0100S: INEOSシリケーツ社から市販のナトリウム水ガラス(モル比SiO2:Na2O=2:1)、28.0〜29.5%のケイ酸塩を含有し、1.49g/mlの密度および20℃にて380〜420mPasの粘度を有する。
・ピラミド(PYRAMID)P40: INEOSシリケーツ社から市販の、二ケイ酸ナトリウムの噴霧乾燥粉末(モル比SiO2:Na2O=2:2.2)、52〜54.5%のケイ酸塩を含有し、1.37g/mlの密度を有する。
・スプラセク(SUPRASEC)1007: ハンツマンポリウレタンズ社から市販の、MDI混合物と分子量6000のポリエーテルポリオールをベースとするNCO値が6.8%のプレポリマー。
・スプラセク2017: ハンツマンポリウレタンズ社から市販の、MDI混合物と分子量4000のポリエーテルポリオールをベースとするNCO値が16%のプレポリマー。
・スプラセク2026: ハンツマンポリウレタンズ社から市販の、MDI混合物とのポリエーテルポリオール混合物をベースとするNCO値が21.4%のプレポリマー。
・スプラセク2008: ハンツマンポリウレタンズ社から市販の、MDI混合物と分子量4000のポリエーテルポリオールをベースとするNCO値が10.2%のプレポリマー。
・スプラセク5025: ハンツマンポリウレタンズ社から市販のポリメリックMDI。
・イソ(ISO)2: MDI混合物と分子量4000のポリエーテルポリオールをベースとするNCO値が21.4%のプレポリマー。
・イソ3: MDI混合物と分子量2000のポリエステルポリオールをベースとするNCO値が21.4%のプレポリマー。
・DMDEEE: 2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル触媒。
・スプラセクはハンツマンインタナショナルLLCの商標である。
【0045】
(実施例1)
下記の表1に示す成分(量はグラムで表示)を含有する接着剤組成物を作製した。使用する前に、1重量%の水をクリスタル0100S溶液に加えた。種々の成分を低剪断速度で約15秒混合した。
【0046】
【表1】

【0047】
これら接着剤のそれぞれを、アルミニウム基材の表面に100〜120g/m2の量にて塗布した。10〜15秒後に、木材基材上にアルミニウム基材をプレスした。キュアー後に、標準的なNBN EN 205にしたがって接着強度を測定した。種々の接着剤系に関して測定した接着強度(MPaにて表示)の結果を表2に示す。対照標準の接着剤系としては、スプラセク2026とダルトフォーム(DALTOFOAM)TR44203(ハンツマンポリウレタンズ社から市販のポリイソシアネートベース系)を使用した(混合比66:34)。
【0048】
【表2】

【0049】
これらの結果から、本発明の接着剤配合物は、従来技術のポリイソシアネートベースの接着剤系と同等の、あるいは場合によってはより良好な接着強度をもたらす、ということがわかる。
【0050】
(実施例2)
下記の表3に示す成分(量は重量部で表示)を含有する接着剤組成物を作製した。使用する前に、1重量%の水をクリスタル0100S溶液に加えた。
【0051】
【表3】

【0052】
これら接着剤のそれぞれの火炎特性(fire properties)をDIN4202燃焼試験(fire test)にしたがって測定した。
【0053】
火炎高さ(cmにて表示)に関する結果を表4に示す。火炎高さが15cmより低いということは、当該物品が、DIN4201に従ってB2として等級付けされることを意味している。火炎高さが15cm以上である物品はB3として等級付けされる。対照標準の接着剤系としては、スプラセク5025とダルトフォームTR42000(ハンツマンポリウレタンズ社から市販のポリイソシアネートベース系)を使用した(混合比66:34)。
【0054】
【表4】

【0055】
これらの結果から、DIN4201p1〔小火炎試験(small flame test)〕における本発明の接着剤の性能が、従来技術のポリイソシアネートベース接着剤と比較して実質的に改良されている、ということがわかる。
【0056】
(実施例3)
下記の表5に示す成分(量はグラムで表示)を含有する接着剤組成物を作製した。使用する前に、1重量%の水をクリスタル0100S溶液に加えた。
【0057】
これら接着剤系の発熱量、および上記の対照標準系AとBの発熱量をEN ISO 1716にしたがって測定した。発熱量(MJ/kgで表示)に関する結果も表5に示す。
【0058】
これらの結果から、本発明の配合物の発熱量は常に、従来技術の接着剤配合物の発熱量よりかなり低い、ということがわかる。さらに、ポリイソシアネートの種類は、接着剤の性能に対してそれほど重要な役割を果たしてはいない、ということがわかる。
【0059】
これらの発熱量に基づき、基材に塗布することができて、そしてさらにA2等級が得られる接着剤の最大量を決定することができる。対照標準AとBの場合、これらの量はそれぞれ102g/m2と105g/m2であるが、本発明の配合物(番号9と13)の場合、これらの量はそれぞれ172g/m2と267g/m2である。本発明においてはより多くの量の接着剤を塗布することができるので、基材(たとえばミネラルウール)中への接着剤の浸透を増大させることができる。
【0060】
【表5】

【0061】
(実施例4)
上記接着剤配合物の幾つかを種々の量(g/m2で表示)にて使用してスチールをEPSに接合した場合の接着強度を目視によりチェックした。得られた結果を表6に示す(OKは基材が破損したことを意味する)。
【0062】
【表6】

【0063】
かなり少ない接着剤使用量でも接合部が破損する。
【0064】
(実施例5)
ピラミドP40粉末と水との飽和溶液を作製し、表7に示すような種々のポリイソシアネートを使用してキュアーした。これらの粗製物質は全く発泡しなかった。
【0065】
【表7】

【0066】
上記のピラミドP40飽和溶液に、下記の表8に示すような種々の量の水を加えた。これら接着剤系のいずれも、キュアーした際に発泡は起こらなかった。40重量%以上の水を加えると、より脆い接着剤層が形成された。
【0067】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と有機ポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリイソシアネートベースの接着剤。
【請求項2】
ENISO1716にしたがった測定にて25MJ/kg未満の、好ましくは10〜20MJ/kgの範囲の発熱量を有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
アルカリ金属ケイ酸塩が、好ましくは1.6:1〜3.3:1のSiO2:Na2O重量比を有するケイ酸ナトリウムである、請求項1または2のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項4】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が完全に飽和した水溶液ではない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が、完全に飽和したアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に1〜40重量%の、好ましくは1〜20重量%の水を加えることによって得られる、請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の粘度が3000mPas未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項7】
ポリイソシアネートが芳香族液体ポリイソシアネートである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項8】
ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体である、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
ポリイソシアネートが、2〜2.9の、好ましくは2.1〜2.6の平均官能価、6000mPasの最大粘度、および6〜30重量%の、好ましくは10〜26重量%のイソシアネート含量を有するプレポリマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項10】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液とポリイソシアネートとの重量比が1:2〜5:1、好ましくは1:1〜2:1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項11】
反応が触媒の存在下で行なわれる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項12】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と有機ポリイソシアネートとを含んだ、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリイソシアネートベースの接着剤を製造するための反応混合物。
【請求項13】
絶縁層とコーティング層との間の接着剤接合部が請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤を含むことを特徴とする、接着剤付けされたコーティング層を少なくとも一方の側に有する絶縁層を含んだサンドイッチパネル。
【請求項14】
絶縁層がロックウール等の不燃性無機繊維を含む、請求項13に記載のパネル。
【請求項15】
コーティング層が、金属、石膏、またはセラミックである、請求項13または14に記載のパネル。
【請求項16】
接着剤を50〜400g/m2の量にて塗布する、請求項13〜15のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項17】
EN13501-1によるA2火災ユーロ等級評価に合格する、請求項14〜16のいずれか一項に記載のパネル。

【公表番号】特表2007−504343(P2007−504343A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530181(P2006−530181)
【出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050757
【国際公開番号】WO2004/101699
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】