説明

サンドイッチパネル

【課題】低コストで製造可能であって耐久性に優れたサンドイッチパネルを提供する。
【解決手段】サンドイッチパネルPは、多数の開口11aを有する金属製のコア材11を2枚の金属製のスキン材12の間に挟んでをロウ付けあるいは接着で接合して構成される。コア材11の多数の開口11aをパンチング加工により形成した丸孔で構成するので、コア材11の製造が極めて容易になって大幅なコストの削減が可能になるだけでなく、コア材11はその周縁の少なくとも一部に多数の開口11aが形成されない中実部11bを有するので、スキン材12の縁部の変形を抑制できるだけでなく、水分や塵がコア材11の開口11aに入り難くしてサンドイッチパネルPの耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の開口を有する金属製のコア材を2枚の金属製のスキン材の間に挟んでをロウ付けあるいは接着で接合したサンドイッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の円形の開口を形成した厚紙製のコア材の両面に2枚の合成樹脂製のスキン材を積層したサンドイッチパネルが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また一定幅のリブの間に多数の正三角形の開口および多数の正六角形の開口を形成したサンドイッチパネル用のコア材が、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−52048号公報
【特許文献2】米国特許第4035536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1に記載されたものは、厚紙製のコア材が合成樹脂製のスキン材に挟まれているため、ある程度の耐水性を有しているものの、サンドイッチパネルの周縁部において厚紙製のコア材が露出しているため、そこから水等がしみ込んで耐久性を低下させる問題があった。
また上記特許文献2に記載されたものは、コア材が多数の正三角形および多数の正六角形の開口を組み合わせた複雑なパターンで配置されているため.その製造が面倒でコストが増加する問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、低コストで製造可能であって耐久性に優れたサンドイッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、多数の開口を有する金属製のコア材を2枚の金属製のスキン材の間に挟んでをロウ付けあるいは接着で接合したサンドイッチパネルにおいて、前記コア材の多数の開口をパンチング加工により形成した丸孔で構成するとともに、前記コア材はその周縁の少なくとも一部に前記多数の開口が形成されない中実部を有することを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記サンドイッチパネルは、前記中実部において曲げ加工されることを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記サンドイッチパネルは、前記中実部においてスポット溶接されることを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか1項の構成に加えて、前記サンドイッチパネルは自動車のフロアパネルを構成し、前記フロアパネルは前記中実部においてサイドシルに接合されることを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか1項の構成に加えて、前記サンドイッチパネルは自動車のルーフパネルを構成し、前記コア材はルーフアーチに対応する部分が中実に形成されることを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【0012】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか1項の構成に加えて、前記サンドイッチパネルは自動車のフロントサイドフレームあるいはリヤフレームを構成し、前記多数の開口の直径は衝突荷重が入力する側ほど大きく形成されることを特徴とするサンドイッチパネルが提案される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、サンドイッチパネルは、多数の開口を有する金属製のコア材を2枚の金属製のスキン材の間に挟んでをロウ付けあるいは接着で接合して構成される。コア材の多数の開口をパンチング加工により形成した丸孔で構成するので、コア材の製造が極めて容易になって大幅なコストの削減が可能になるだけでなく、コア材はその周縁の少なくとも一部に多数の開口が形成されない中実部を有するので、スキン材の縁部の変形を抑制でき、しかも水分や塵がコア材の開口に入り難くしてサンドイッチパネルの耐久性を高めることができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、サンドイッチパネルは中実部において曲げ加工されるので、曲げ加工時に中実部以外の部分でコア材が座屈してサンドイッチパネルが変形するのを防止することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、サンドイッチパネルは中実部においてスポット溶接されるので、スポット溶接部に大きな荷重が加わったときにコア材が変形するのを防止し、スポット溶接部の強度を高めることができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、自動車のフロアパネルを構成するサンドイッチパネルが中実部においてサイドシルに接合されるので、路面からの騒音を遮音効果が高いサンドイッチパネルで遮断して車室の静粛性を高めるとともに、サンドイッチパネルとサイドシルとの接合部の強度を容易に確保することができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、自動車のルーフパネルを構成するサンドイッチパネルのコア材は、ルーフアーチに対応する部分が中実に形成されるので、特別のルーフアーチ部材を必要とせずにルーフパネルの強度を確保することができる。
【0018】
また請求項6の構成によれば、自動車のフロントサイドフレームあるいはリヤフレームを構成するサンドイッチパネルのコア材の多数の開口の直径は、衝突荷重が入力する側ほど大径に形成されるので、衝突初期の衝撃荷重のピークを比較的に強度の低い大径の開口の座屈により吸収するとともに、衝突中期および衝突末期の衝撃荷重を比較的に強度の高い小径の開口の座屈により吸収することで、衝突初期から衝突末期まで略一定の衝撃荷重を維持して衝撃吸収性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】サンドイッチパネルの構造を示す図。(第1の実施の形態)
【図2】自動車のフロアパネルの断面構造を示す図。(第1の実施の形態)
【図3】サンドイッチパネルの曲げ加工時の作用説明図。(第1の実施の形態)
【図4】自動車のフロアパネルおよびサイドシルの断面図。(第1の実施の形態)
【図5】自動車のルーフパネルの斜視図。(第2の実施の形態)
【図6】自動車のフロントサイドフレームの斜視図および断面図。(第3の実施の形態)
【図7】図6の7方向矢視図。(第3の実施の形態)
【図8】フロントサイドフレームの変形量と荷重との関係を示すグラフ。(第3の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0021】
図1に示すように、サンドイッチパネルPはアルミニウムあるいは鉄等の金属製のコア材11と、そのコア材11の両面にロウ付けあるいは接着で接合される2枚のスキン材12,12とで構成される。コア材11はムク(中実)の板材をパンチング加工して直径が数mm程度の多数の開口11a…を形成したものであり、その周縁に沿って開口11a…が形成されていない中実部11bが一定幅で設けられる。
【0022】
図2(A)は、自動車のフロアパネルに用いられる厚さ0.6mmの鋼板の断面図であって、その単位幅当りの断面二次モーメントは0.018mm4 である。図2(B)は、前記厚さ0.6mmの鋼板と同じ重量を有する本実施の形態のサンドイッチパネルPの断面図であって、コア材11の厚さは1.2mm、2枚のスキン材12,12の厚さはそれぞれ0.2mmであってトータルの厚さは1.6mmであり、その単位幅当りの断面二次モーメントは0.226mm4 である。このように、サンドイッチパネルPは、同じ重量のムクの板材に比べて、断面二次モーメントを12倍以上に拡大し、曲げ剛性を飛躍的に増加させることができる。
【0023】
ところで、従来のサンドイッチパネルPは、その周縁でコア材11の断面がスキン材12,12に覆われずに露出してしまうため、コア材11の断面に露出した開口11a…に水分や塵が付着して耐久性を低下させる可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、コア材11の周縁に中実部11bが形成されるため、コア材11の断面に開口11a…が露出することがなくなり、水分や塵の付着によるサンドイッチパネルPの耐久性低下が防止される。
【0024】
またコア材11の断面に開口11a…が露出すると、その開口11a…の部分でスキン材12,12がコア材11に接続されない状態になり、薄いスキン材12,12のエッジが傷付き易くなる。しかしながら、本実施の形態によれば、コア材11の周縁に中実部11bが形成されるため、サンドイッチパネルPの周縁でスキン材12,12は必ずコア材11の接続されて厚さが確保されるので、薄いスキン材12,12のエッジを傷付き難くすることができる。
【0025】
またサンドイッチパネルPは、コア材11に開口11a…が形成されている部分が中空構造となるため、その部分をスポット溶接することができない問題がある。スポット溶接を可能にするには、図2(C)に示すように、その部分を押し潰して実質的に中実にすれば良いが、そのようにすると押し潰した部分が中実の板材と同じになり、断面二次モーメントが減少して曲げ剛性が低下する問題がある。
【0026】
また図3(A)、(B)に示すように、サンドイッチパネルPをダイス13およびポンチ14よりなるプレス金型15を用いて曲げ加工しようとすると、曲げ方向外側となる下側のスキン材12に引張力Ftが作用し、曲げ方向内側となる上側のスキン材12に圧縮力Fcが作用する。その結果、圧縮力Fcが作用する上側のスキン材12が下向きに座屈するため、コア材11が厚さ方向に圧縮されて座屈することでサンドイッチパネルPが変形してしまう問題がある。
【0027】
図4は、本実施の形態のサンドイッチパネルPで構成した自動車のフロアパネル16を示すもので、その周縁に沿う中実部11bが上向きに直角に曲げ加工されてフランジ16aが形成されており、そのフランジ16aがサイドシル17の側面にスポット溶接18により固定される。
【0028】
このように、サンドイッチパネルPのコア材11の中実部11bの部分をスポット溶接18することで、サンドイッチパネルPを中実状態に押し潰してスポット溶接18する必要がなくなり、サンドイッチパネルPの断面二次モーメントを大きい値に維持して曲げ剛性を確保することができるだけでなく、スポット溶接18される部分で薄いスキン材12,12に荷重が集中して破断する事態を回避することができる。
【0029】
またサンドイッチパネルPを曲げ加工すると、上述したようにコア材11が座屈する問題があるが、その中実部11bにおいてサンドイッチパネルPを曲げ加工することで、座屈の発生を確実に防止することができる。
【0030】
更に、サンドイッチパネルPはコア材11が多数の開口11a…を有する中空構造であるため、路面からの騒音をサンドイッチパネルPよりなるフロアパネル16で遮断して車室の静粛性を確保することができる。
【0031】
ところで、コア材11の開口11a…の形状としては、代表的なサンドイッチパネルPであるハニカムパネルで採用されている正六角形が理想的であるが、パンチング加工で直径6mm以下の正六角形の開口11a…を形成しようとすると穴形状が不正確になるため、開口11a…の設計自由度が損なわれる問題があるだけでなく、パンチング加工の加工コストが増加する問題がある。
【0032】
一方、本実施の形態ではコア材11の開口11a…が円形であるため、直径0.35mm以上の開口11a…であればパンチング加工で形成することが可能となり、開口11a…の設計自由度が高まるとともに加工コストの削減が可能になる。特に、複雑な形状に屈曲させた帯状の板材を組み合わせてコア材11を構成する場合に比べて、コア材11の加工コストが大幅に削減される。
【0033】
尚、コア材11の空間率(コア材11の外形容積に対する開口11a…の容積の比率)は開口11a…が正六角形である場合に最大になり、軽量化の観点から最も有利である。本実施の形態の如く開口11a…が円形である場合には、正六角形である場合に比べて空間率が若干低下するものの殆ど遜色ない剛性を得ることができる。
【0034】
次に、図5に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0035】
第2の実施の形態は、サンドイッチパネルPを自動車のルーフパネル19に適用したものである。このサンドイッチパネルPのコア材11は、前後左右の周縁に中実部11bを備えているが,その前縁の中実部11bは前側のルーフアーチ19aを構成し、その後縁の中実部11bは後側のルーフアーチ19bを構成する。更にサンドイッチパネルPは前後のルーフアーチ19bの中間に第3のルーフアーチ19cを備えており、この第3のルーフアーチ19cもコア材11が開口11a…を持たない領域によって構成される。
【0036】
このように、サンドイッチパネルPのコア材11が開口11a…を持たない領域によってルーフアーチ19a〜19cを構成することで、ルーフアーチを構成する特別の部材を不要にして部品点数を削減し、コストダウンに寄与することができる。
【0037】
次に、図6〜図8に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0038】
第3の実施の形態は、サンドイッチパネルPを自動車のフロントサイドフレーム20(あるいはリヤフレーム)に適用したものである。図6に示すように、このフロントサイドフレーム20は、断面L字状に曲げ加工した2個のサンドイッチパネルP,Pをスポット溶接21…して四角断面に構成される。
【0039】
即ち、各サンドイッチパネルPは、一側縁に沿って直角に曲げ加工されたフランジ部22と、他側縁に沿って形成された結合縁部23と、フランジ部22および結合縁部23の間に形成された屈曲部24とを備える。フランジ部22および結合縁部23は、サンドイッチパネルPのコア材11が中実部11bにより構成され、屈曲部24もコア材11が開口11a…を持たない部分で構成される。よって、フランジ部22および屈曲部24の曲げプレス加工を支障なく行えるだけでなく、2個のサンドイッチパネルP,Pのフランジ部22および結合縁部23のスポット溶接21…を支障なく行うことができる。
【0040】
図7に示すように、各サンドイッチパネルPのコア材11は、車両が衝突したときに衝突荷重が入力する側、つまりフロント側において開口11a…の直径が大きく、リヤ側において開口11a…の直径が小さくなっている。
【0041】
図8(A)は、サンドイッチパネルPを用いていない従来のフロントサイドフレーム20を備えた車両が正面衝突したときに、フロントサイドフレーム20が前部から後部に向かって圧壊して行くときの衝撃荷重の変化を示すものである。従来のフロントサイドフレーム20では、衝突した瞬間に大きな衝撃荷重が立ち上がり、その後に略一定の衝撃荷重が発生するが、最初の衝撃荷重のピークが高いために乗員の保護性能が低くなる問題がある。
【0042】
一方、図8(B)は、本実施の形態のフロントサイドフレーム20が前部から後部に向かって圧壊して行くときの衝撃荷重の変化を示すものである。サンドイッチパネルPよりなるフロントサイドフレーム20は、最初に圧壊する前部に座屈し易い大径の開口11a…を備えているため、最初の衝撃荷重のピークを大径の開口11a…の座屈により吸収し、その後にフロントサイドフレーム20の後部の小径の開口11a…を座屈させることにより、衝突の初期から末期まで略一定の衝撃荷重を発生させて理想的な衝撃吸収特性を得ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0044】
例えば、実施の形態ではコア材11の周縁の全域に中実部11bが形成されているが、コア材11の周縁の一部だけに中実部11bを形成しても良い。
【0045】
また第3の実施の形態では、コア材11の開口11a…の直径を2段階に変化させているは、3段階以上に変化させたり無段階に変化させたりすることができる。
【符号の説明】
【0046】
11 コア材
11a 開口
11b 中実部
12 スキン材
16 フロアパネル
17 サイドシル
18 スポット溶接
19 ルーフパネル
19a ルーフアーチ
19b ルーフアーチ
19c ルーフアーチ
20 フロントサイドフレーム
21 スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開口(11a)を有する金属製のコア材(11)を2枚の金属製のスキン材(12)の間に挟んでをロウ付けあるいは接着で接合したサンドイッチパネルにおいて、
前記コア材(11)の多数の開口(11a)をパンチング加工により形成した丸孔で構成するとともに、前記コア材(11)はその周縁の少なくとも一部に前記多数の開口(11a)が形成されない中実部(11b)を有することを特徴とする、請求項1に記載のサンドイッチパネル。
【請求項2】
前記サンドイッチパネル(P)は、前記中実部(11b)において曲げ加工されることを特徴とする、請求項1に記載のサンドイッチパネル。
【請求項3】
前記サンドイッチパネル(P)は、前記中実部(11b)においてスポット溶接(18,21)されることを特徴とする、請求項1に記載のサンドイッチパネル。
【請求項4】
前記サンドイッチパネル(P)は自動車のフロアパネル(16)を構成し、前記フロアパネル(16)は前記中実部(11b)においてサイドシル(17)に接合されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサンドイッチパネル。
【請求項5】
前記サンドイッチパネル(P)は自動車のルーフパネル(19)を構成し、前記コア材(11)はルーフアーチ(19a〜19c)に対応する部分が中実に形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサンドイッチパネル。
【請求項6】
前記サンドイッチパネル(P)は自動車のフロントサイドフレーム(20)あるいはリヤフレームを構成し、前記多数の開口(11a)の直径は衝突荷重が入力する側ほど大きく形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81826(P2012−81826A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228262(P2010−228262)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】