説明

サンドイッチ材

【課題】軽量性、剛性、耐衝撃性が求められる用途、部材に好適な成形材料を提供する。
【解決手段】金属材料、ガラス、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一種の無機材料からなる高剛性材と、有機繊維と熱可塑性樹脂とからなる複合材料であって、有機繊維の形態が、撚糸コード、または撚糸コードで構成される織物あるいは編物である衝撃吸収材とからなるサンドイッチ材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やセラミックス等の無機材料からなる高剛性材と、有機繊維と熱可塑性樹脂との複合材料である衝撃吸収材とからなるサンドイッチ材であり、軽量性のほか、特に剛性と耐衝撃性の双方が求められる用途、部材に好適な成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
靭性や柔軟性に優れるプラスチックは様々な成形方法による加工が可能であり、今日の我々の生活には欠かせない材料である。一方、強度や剛性に優れる金属やセラミックス等の無機材料も我々の生活には欠かせない材料である。しかし、金属などの無機材料は一般に高比重であり、重いという大きな欠点があった。また、プラスチックは一般に剛性に劣る材料である。これら相反する特徴を有する2種類の材料を組み合わせ、それぞれの長所を生かし、短所を抑えることが出来れば、たいへん有用な新らしい材料になると予想される。しかし、そのような報告はこれまで少なかった。例えば、特許文献1や特許文献2では、フェノールフォームをコア材とし、その両表面を金属材料で覆ったサンドイッチ材が提案されている。このような材料構成とすることにより、軽量で耐火性に優れた材料が得られている。しかし、これらの特許文献では、プラスチックの靭性を生かした性能に関しては言及されていない。また、特許文献3では、炭素繊維などを強化繊維とした繊維強化樹脂層をコア材とし、この両表面を金属材料で覆ったサンドイッチ材が提案されている。このような材料構成とすることにより、たいへん剛性や強度が高い材料が得られている。しかし、この特許文献でもプラスチックの靭性や柔軟性を生かした言及や提案はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−201557号公報
【特許文献2】特開平5−96675号公報
【特許文献3】特開2006−297929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軽量、剛性、強度、耐衝撃性を併せ持つサンドイッチ材および成形材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、金属材料、ガラス、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一種の無機材料からなる高剛性材と、有機繊維と熱可塑性樹脂とからなる複合材料であって、有機繊維の形態が、撚糸コード、または撚糸コードで構成される織物あるいは編物である衝撃吸収材とから構成されるサンドイッチ材とすることにより標記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、軽量、高強度、高剛性、耐衝撃性を併せ持つ複合材料を、経済性よく提供することができる。また本発明のサンドイッチ材から、軽量、高強度、高剛性な衝撃吸収性に優れた成形体を提供することができ、自動車構造材用部品、自動車外装材用部品、自動車内装材用部品として好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。
本発明のサンドイッチ材は、金属材料、ガラス、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一種の無機材料からなる高剛性材と、有機繊維と熱可塑性樹脂とからなる複合材料であって、有機繊維の形態が、撚糸コード、または撚糸コードで構成される織物あるいは編物である衝撃吸収材とから構成されるサンドイッチ材である。好ましくは、衝撃吸収材をコア層に含み、高剛性材をスキン層として配置したサンドイッチ材である。
【0008】
本発明において、スキン材とはサンドイッチ材の表層に位置する材料を示し、コア材とはサンドイッチ材の内層に位置する材料である。
本発明のサンドイッチ材における高剛性材と衝撃吸収材の構成比には特に限定はなく、目的用途の要求物性に応じて適宜設定したらよいが、高剛性材と衝撃吸収材との体積比が、高剛性材100部に対し、好ましくは衝撃吸収材が40〜9900部、より好ましくは衝撃吸収材が70〜3500部、さらに好ましくは衝撃吸収材が100〜1900部である。高剛性材が少なすぎるとサンドイッチ材の強度と剛性が低下しすぎてしまう。逆に、衝撃吸収材が少なすぎると、高比重となって重たいだけでなく、複合材料の耐衝撃性が十分でなくなる虞がある。
【0009】
[高剛性材]
本発明において、高剛性材は、金属材料、ガラス、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一種の無機材料である。金属材料の具体例としては、一般鋼板、熱延鋼板、冷延鋼板などのスチール類、SUS301、SUS304、SUS316などのステンレス類、ハステロイ類のほか、チタン、ジュラルミン、アルミニウム、銅、銀、白金等の金属、およびこれらの各種合金などが挙げられる。またセラミックスの具体例としては、アルミナ、ジルコニアなどに代表される各種の金属酸化物、金属窒化物などのセラミックス類が挙げられる。ガラスには特に限定はなく、世間一般で使用される各種のガラス類が含まれる。この中でも、汎用性や取扱い性、性能の面から金属材料が好ましい。金属材料としては、スチール類、ステンレス類、アルミニウム合金類が好ましく挙げられる。
【0010】
高剛性材の厚みはとくに限定はなく、成形体の用途に合わせて適宜選択できる。軽量化や性能の観点からは高剛性材の厚みは0.1〜2mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。厚みが薄すぎると期待する効果が発現しにくくなり、厚すぎると重くなりすぎる。高剛性材の形態もとくに限定はなく、一枚板であっても良く、また格子のように空間部を有したものであっても良い。
また、サンドイッチ材および成形品の特性を高める目的で、適切な処理剤や物理的手法で高剛性材の表面を処理していても良い。例えば高剛性材の表面をやすり等で削ったり、エンボス加工を施するなどで表面積を高める方法などが挙げられる。
【0011】
[衝撃吸収材]
本発明における衝撃吸収材は、有機繊維と熱可塑性樹脂により構成される。有機繊維を強化繊維とするのは、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維よりも軽量であるだけでなく、柔軟性が高く、耐衝撃性に優れるためである。また、マトリックスを熱可塑性樹脂とするのは、熱硬化性樹脂よりも汎用性、取扱い性、加工性が高いためである。
【0012】
[衝撃吸収材を構成する有機繊維]
衝撃吸収材を構成する有機繊維としては、とくに限定はないが、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルスルホン繊維、アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリケトン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維などが挙げられる。その中でも、融点が200℃以上の有機繊維が好ましい。
【0013】
有機繊維の融点が200℃以上であることが好ましい理由は、本発明において有機繊維は衝撃吸収材を構成する複合材料の強化材として用いられるわけであるが、複合材料のマトッリクスとなる熱可塑性樹脂の中で特に有用な樹脂の成形温度は、例外を除いて170℃以上であることに起因する。有機繊維の融点が成形温度以下であると熱可塑性樹脂とともに溶融してしまうことがある。一般に、融点付近では有機繊維内のポリマーの配向や結晶が緩和されやすいことから、有機繊維の融点は成形温度より10℃以上高いことが好ましい。有機繊維の融点は、成形温度より20℃以上高ければより好ましい。
【0014】
また、熱可塑性樹脂の中で最も多く使用されているポリオレフィンなどが属する汎用プラスチックの成形温度は通常170℃以上であるが、より耐熱性が高いポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルなどのエンジニアリングプラスチックの成形温度は230℃以上である。これより、本発明で使用する有機繊維の融点は250℃以上であれば、汎用プラスチックだけでなくエンジニアリングプラスチックにも使用することができ、より好ましい。
【0015】
融点が200℃以上の有機繊維の中でも、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維が力学特性や耐熱性などの物性と価格とのバランスが取れていて好ましく、その中でもポリエステル繊維が特に好ましい。
【0016】
ポリエステル繊維の骨格としては、ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレート、ポリアルキレンテレフタレート、ポリ乳酸、中でもステレオコンプレックス型ポリ乳酸などが挙げられる。これらの中でも、融点が250℃以上であるポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートとポリアルキレンテレフタレートが好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を混合しても、共重合して用いてもよい。
【0017】
ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートとしては、アルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートまたはアルキレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが好ましい。ポリエステル中のアルキレンナフタレンジカルボキシレートの含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは96〜100モル%以上である。アルキレン基としては、脂肪族アルキレン基、脂環族アルキレン基いずれでもよいが、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートは、好ましくはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、より好ましくはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。
【0018】
ポリアルキレンテレフタレートとしては、アルキレン−テレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが好ましい。ポリエステル中のアルキレンテレフタレートの含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは96〜100モル%である。アルキレン基としては、脂肪族アルキレン基、脂環族アルキレン基いずれでもよいが、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、ポリアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0019】
ポリエステル繊維の全繰り返し単位中には、少量なら他の単位(第三成分)を含んでいても差し支えない。かかる第三成分としては(a)2個のエステル形成性官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのカルボン酸、グリコール酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(p−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレングリコールなどのオキシ化合物、それらの機能的誘導体、前記カルボン酸、オキシカルボン酸、オキシ化合物またはそれらの機能的誘導体から誘導される高重合度化合物や、(b)1個のエステル形成性官能基を有する化合物、例えば安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどが挙げられる。さらに(c)3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物、例えばグリセリン、ペンタエリストール、トリメチロールプロパンなども、重合体が実質的に線状である範囲内で使用可能である。またこれらのポリエステル中には、二酸化チタンなどの艶消し剤、リン酸、亜リン酸、それらのエステルなどの安定剤が含まれても良い。
【0020】
また有機繊維はマルチフィラメントであることが好ましい。一般に、有機繊維には、比較的太い単糸1本で商品となるモノフィラメントと、比較的細い複数の単糸で構成され、束状となっているマルチフィラメントがある。モノフィラメントは生産性が低いことから高価なため、スクリーン紗などの特殊用途で使用され、一般の衣料、産業資材用途にはマルチフィラメントが使用される。本発明のサンドイッチ材には、比較的安価なマルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメントを構成する単糸の本数は2本から10000本が好ましく、50本から5000本がより好ましい。更には、100本から1000本がより好ましい。単糸本数が10000本を超えると、生産が困難であると共に、マルチフィラメントとしての繊維の取り扱い性が著しく悪くなる。
【0021】
マルチフィラメントとしての有機繊維の総繊度は100dtexから10000dtexが好ましく、200dtexから8000dtexがより好ましい。更には、500dtexから5000dtexがより好ましい。繊度が100dtexより小さくなると、糸自体の強力が小さくなるために複合材料への補強効果が得られにくい。繊度が10000dtexより大きくなると、糸の製造が困難となる。
【0022】
有機繊維を構成する単糸の繊度は1〜30dtexであることが好ましく、さらには上限値としては25dtex以下、特には20dtex以下であることが好ましい。また下限値としては1.5dtex以上であることが好ましい。もっとも好ましくは2〜20dtexの範囲である。このような範囲にあることにより、本発明の目的を達成しやすくなる。単糸繊度が1dtex未満では製糸性に問題が生じる傾向にあり、繊度が大きすぎると繊維/樹脂間の界面強度が低下し、複合材料の物性が低下する傾向にある。
【0023】
有機繊維の引張強度は300MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは500MPa以上である。300MPa未満では、得られる複合材料の強度が低すぎる傾向にある。
さらに有機繊維は、180℃における乾熱収縮率が20%以下であることが好ましい。さらに好ましくは18%以下である。20%を超えると成形加工時の熱による繊維の寸法変化が大きくなり、補強樹脂の成形形状に不良が発生しやすくなる傾向にある。
【0024】
このような物性を有する有機繊維の製造方法には、特に限定はない。例えば、溶融紡糸して得られる未延伸糸を紡糸後、一旦巻き取り別途延伸する方法、あるいは未延伸糸を巻き取らずに連続的に延伸する方法などによって製造することができる。得られる繊維は高強度で寸法安定性にも優れたものである。また、原料となるポリマーを含む溶液を湿式紡糸する方法でも有機繊維を得ることができる。
また、樹脂成形品の特性を高める目的で、適切な処理剤で繊維表面を処理しても良い。この場合、繊維の表面に、該繊維100重量部に対して、表面処理剤が0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜3重量部付着させたらよい。表面処理剤は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜、選定したらよい。
【0025】
[有機繊維の形態]
有機繊維がマルチフィラメントの場合、製糸メーカーから供給された原糸は無撚りの状態であるため、この原糸をそのまま加工する際には単糸の引き揃えが乱れ、繊維の性能が十分に発現できないおそれがある。また、無撚りの糸は収束性が低いためにハンドリングが悪い。このような糸の引き揃えやハンドリング性を改善するために、繊維に撚りを加えることは有効である。また、原糸に撚りを加えた撚糸コードは、原糸よりも伸度が高くなること、屈曲疲労性が高くなることなどから耐衝撃性に関して有効である。これより、衝撃吸収材の強化繊維としては、撚りが施された状態であることが好ましい。
【0026】
撚り構成には特に限定はなく、有機繊維に1度だけ撚りを施す片撚りでも良く、2本以上の糸を使用し、下撚りと上撚りで構成される諸撚りでも良い。糸の強度や取り扱い性を考慮すると、スナールの発生を抑制しやすい諸撚りが好ましく、下撚りと上撚りのそれぞれの構成本数は求める物性に合わせて、適宜設定して良い。繊維の撚数は、1mあたり1回から1000回の範囲、好ましくは10〜1000回の範囲で規定される。この中で、撚糸コードの強度と伸度の積であるタフネスを考えると、1mあたりの撚数は30回から700回が好ましく、50回から500回がより好ましい。撚数が1000回を超えると、撚糸コードの強度が下がりすぎるので複合材料の補強効果を考慮すると好ましくない。また、撚数が1000回を超えると生産性も極端に悪くなる。上記の撚数範囲で下撚りと上撚りの回数は設定されるが、スナールの抑制を考慮すると、下撚りと上撚りは撚り係数を合わせて撚数を設定することが好ましい。また、タイヤコードに使用されているように下撚りと上撚りの回数を同数とするバランス撚りとすることも撚糸コードの耐久性の面で好ましい。
【0027】
有機繊維は連続長を有するものであり、有機繊維の形態は、撚糸コード、または撚糸コードで構成される織物あるいは編物である。複合材料中には、さらに不連続長の繊維を併用しても良い。
【0028】
織物における織り組織としては、平織り、綾織り、朱子織りなどを挙げることができる。その中でも、有機繊維束間に樹脂が含浸しやすい平織りが好適である。織物の経糸密度は、繊維束間の樹脂の含浸性を考慮すると2.5cmあたり5本から50本が好ましく、10本から40本がより好ましい。経糸密度が5本より少なくなると、糸が動きやすくなるために目開きが起きやすくなり、織物の取り扱い性が著しく悪くなる。経糸密度が50本より多くなると繊維束間が狭くなりすぎて繊維束間へ樹脂が浸透しにくくなり、目的の複合材料が得られなくなる。織物の緯糸密度は繊維束間の樹脂の含浸性などを考慮すると2.5cmあたり1本から50本が好ましく、1本から40本がより好ましい。織物の中には、織物性能は経糸に委ね、緯糸は経糸の極端な目開きを抑制するために使用されている簾織物もある。このような簾織物はタイヤコードなどに使用されており、緯糸が極端に少ない織物であるが、本発明においても適用可能である。これより、2.5cmあたりの緯糸密度は1本以上あれば良い。これに対し、経糸密度が多くなりすぎて50本以上となると繊維束間が狭くなりすぎて繊維束間へ樹脂が浸透しにくくなり、目的の複合材料が得られなくなる。経糸と緯糸の密度は、上記の範囲内であれば同一、アンバランスのどちらでも構わない。織物の目付は、有機繊維束間の樹脂の含浸性を考慮すると1mあたり30gから500gが好ましく、50gから400gがより好ましい。目付が30gより少なくなると、織物強度が低下するため複合材料への補強効果が得られなくなる。目付が500gより多くなると、繊維束間が狭くなって繊維束間へ樹脂が含浸しにくくなり、目的の複合材料が得られなくなる。
【0029】
編物における編み組織としては、たて編み、よこ編み、ラッセル編みなどを挙げることができる。その中でも、編物の強度を考えると、より強靭な組織としやすいラッセル編みが好適である。編物の目付は、有機繊維束間の樹脂の含浸性を考慮すると1mあたり30gから500gが好ましく、50gから400gがより好ましい。目付が30gより少なくなると、編物強度が低下するため複合材料への補強効果が得られなくなる。目付が500gより多くなると、繊維束間が狭くなって繊維束間へ樹脂が含浸しにくくなり、目的の複合材料が得られなくなる。
【0030】
[有機繊維の複合状態]
本発明における衝撃吸収材において、有機繊維束間は実質的に熱可塑性樹脂が含浸した構造であることが好ましい。繊維束間が樹脂で十分に満たされていないと、繊維束間にボイドが残る状態となるため、複合材料の強度が低下する。本発明において、有機繊維束間が実質的に樹脂が含浸した構造とは、繊維束間のボイド率が10%以下であることを指す。その検証は、体積が算出可能な試料の重量を秤量することや断面の顕微鏡観察によって実施することができる。
【0031】
また衝撃吸収材において、有機繊維束内部は実質的に熱可塑性樹脂が含浸していても未含浸であっても良いが、耐衝撃性を考慮すると、材料中で繊維には多少自由度がある方がエネルギー吸収に有効であると考えられることから、繊維束内部は実質的に樹脂が未含浸である方がより好ましい。マルチフィラメントである有機繊維束内部が実質的に樹脂未含浸であるということは、繊維束間のボイド率が10%以下の複合材料中で、繊維束内部への樹脂浸透率が50%以下であることを指す。
【0032】
その検証は、複合材料から取り出した有機繊維から、マルチフィラメントを構成する単糸をどの程度取り出せるか、すなわち遊離単糸率を算出することにより判断できる。例えば、250本の単糸から構成される有機繊維の場合、150本の遊離単糸を取り出せるのであれば遊離単糸率は60%となり、樹脂含浸率は残りの40%ということとなる。また、電子顕微鏡や光学顕微鏡などの顕微鏡観察によっても樹脂含浸率は確認できる。
【0033】
上記のような構造とすることにより、衝撃吸収材の強度は有機繊維と繊維束間の熱可塑性樹脂によって保つことができる。また、複合材料中で有機繊維、厳密には繊維を構成する単糸には変形や動きの自由度があることから、複合材料が受けた衝撃を、破壊も伴うこれらの自由度によって吸収することが可能となり、耐衝撃性に優れた材料となる。
【0034】
衝撃吸収材において、有機繊維と熱可塑性樹脂の組成比は、体積比で有機繊維100部に対し、熱可塑性樹脂は20部から900部であることが好ましく、より好ましくは25部から400部である。有機繊維100部に対する熱可塑性樹脂の割合が20部より少なくなると、繊維束間がボイドだらけとなり複合材料の力学的強度が大きく低下する。逆に、900部より多くなると有機繊維の補強効果が十分に発現しなくなる。
【0035】
[衝撃吸収材の熱可塑性樹脂]
衝撃吸収材の複合材料を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などが挙げられる。
【0036】
この中でも、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂はより好ましく、特に好ましいのは、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂である。
衝撃吸収材を上記のような原料、組成、構成とすることにより、複合材料および成形体に耐衝撃性を付与することができる。
【0037】
[サンドイッチ材の構成]
本発明のサンドイッチ材は、上述した高剛性材と衝撃吸収材を組み合わせることにより構成される。高剛性材をスキン層とし衝撃吸収材をコア層に含むもの、あるいは衝撃吸収材をスキン層とし高剛性材をコア層に含む構成が具体的には挙げられ、厚み方向に対称となる構成が好ましい。
【0038】
剛性や耐衝撃性などの物性が良好に発現する好ましい構成は、衝撃吸収材をコア材に含み、高剛性材をコア層の両外層に配する構成である。しかし、この構成では両表面に高比重の高剛性材を配する必要があることから、構成比によっては重くなりすぎる虞がある。そのため、軽量性を重視する場合や剛性よりも耐衝撃性を重視する場合などには、高剛性材をコア材とし、衝撃吸収材をスキン材としても構わない。また、サンドイッチ材における構成成分の積層数には特に限定はないが、スキン材/コア材/スキン材の3層構造が最も生産性に優れた構成である。また本発明の目的を損なわない範囲で、サンドイッチ材には、衝撃吸収材や高剛性材以外の層を含んでも良い。
【0039】
サンドイッチ材の製造方法には特に限定はなく、いかなる方法で製造されたものであっても良い。例えば、接合成分を用いる方法としては、トリエトキシシリルプロピルアミノトリアジンチオールモノナトリウムなどのトリアジンチオール誘導体のゾル−ゲル反応などによって、金属やガラスとプラスチックを化学結合で結びつけることが出来る。また、アンカー効果を用いて接合することも可能であり、金属やガラスなどの表面を物理的手法や化学的手法で荒らすことにより表面積を高め、加温することによりマトリックス樹脂を溶融軟化させた衝撃吸収材と合わせて加圧後、冷却することによっても高剛性材と衝撃吸収材を接合できる。
【0040】
また、サンドイッチ材の成形方法は用途の形状に合わせて適宜設定してよい。工程短縮という観点からは、高剛性材と衝撃吸収材の複合化の際に同時に成形することが好ましい。成形方法としては、所望形状の型枠や金型を用いたプレス成形、真空成形などが挙げられ、大型・平面・薄物部材から小型・複雑形状部材まで作製することができる。成形体の形状としては、平板のほかにコルゲート、トラスなどの三次元形態が挙げられる。
【0041】
有機繊維束間および繊維束内部への樹脂含浸のコントロールは成形条件で適宜調整する。一般に、成形温度や圧力を高めれば、樹脂の溶融粘度が低下するために樹脂の浸透性が増す。温度は、樹脂が結晶性樹脂の場合には融点温度から融点温度+50℃、樹脂が非晶性樹脂の場合にはガラス転移温度から融点+50℃の範囲が好ましい。圧力は0.01MPaから20MPaの範囲、時間は30秒から1時間程度の範囲が好ましい。
【0042】
有機繊維とマトリックス樹脂の組み合わせは、使用する樹脂が結晶性樹脂の場合には、繊維の融点は樹脂の融点より10℃以上高いことが好ましい。また、使用する樹脂が非晶性樹脂の場合には、繊維の融点は樹脂のガラス転移温度より10℃以上高いことが好ましい。
このような方法で得られたサンドイッチ材および成形体は、特に自動車部材に好適であり、自動車の構造材、外装部材、内装部材などに使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
1)衝撃吸収材における有機繊維/樹脂の体積分率測定
1cmから10cmの試料の重量を秤量する。繊維または樹脂のいずれか一方を溶解、または分解する薬品を使用して溶解成分を抽出する。残渣を洗浄および乾燥後に秤量する。残渣と溶解成分の重量、および繊維と樹脂の比重から、繊維と樹脂の体積分率を算出する。例えば、樹脂がポリプロピレンの場合、加熱したトルエンまたはキシレンを用いることにより、ポリプロピレンのみを溶解することができる。樹脂がポリアミドの場合は、加熱したギ酸によりポリアミドを分解することができる。樹脂がポリカーボネートの場合には加熱した塩素化炭化水素を用いることにより、ポリカーボネートを溶解することができる。また、有機繊維/樹脂の体積分率より、有機繊維100部に対する、熱可塑性樹脂の体積部を求めることができ、例えば繊維体積分率が50%である場合、有機繊維100部に対し、熱可塑性樹脂の体積部は100部となる。
【0044】
2)有機繊維への樹脂の含浸度評価
衝撃吸収材における有機繊維へのマトリックス樹脂の含浸度については、試料から取り出した繊維をピンセットや針などを用いてほぐし、容易に選別できるマルチフィラメント構成単糸の本数から、遊離単糸率を算出する。例えば、250本の単糸から構成される有機繊維の場合、150本の遊離単糸を取り出せるのであれば遊離単糸率は60%となり、樹脂含浸率は残りの40%ということとなる。
【0045】
3)引張試験
引張試験は、JIS K 7113に準拠して、島津製作所製のオートグラフAG−I型を用いて測定した。試験片の形状は1号形試験片とし、試長部の長さは60mm、幅は10mmとした。チャック間距離は115mm、試験速度は10mm/分とした。
【0046】
4)落錘衝撃試験
試料の落錘衝撃試験は、インストロン社製のダイナタップ落錘衝撃試験機9250HV型を用いて測定した。試験片サイズ150mm×100mm、錘重量5.43kg、負荷エネルギー量45Jとした。
【0047】
[使用原料]
1)ポリアミド6フィルム
ユニチカ社製エンブレムONフィルム、標準グレード、厚み25μm
2)ポリプロピレンフィルム
サン・トックス社製サントックス−CPフィルム、Kグレード、厚み25μm
3)ポリエチレンテレフタレート織物
帝人ファイバー社製T−4498織物:原糸;ポリエチレンテレフタレート繊維1100dtex192f、撚数;120T/m(S方向)、組織;平織り、厚み;0.4mm、目付;175g/m
4)ポリエチレンテレフタレート撚糸コード
帝人ファイバー社製ポリエチレンテレフタレート繊維P900M1100T250fを原糸とし、カジテック社製のリング撚糸機を用いて、Z方向に275T/mの下撚を掛けた(撚り係数3.0)。次に、下撚糸を2本合わせ、S方向に200T/mの上撚りを掛けて(撚り係数3.0)、実験用の撚糸コードとした。撚糸コード1本の直径は0.5mmであった。
5)ポリエチレンナフタレート撚糸コード
帝人ファイバー社製ポリエチレンナフタレート繊維Q904M1100T250fを原糸とし、ポリエチレンテレフタレート撚糸コードと同様の加工を行い、上/下撚数:200/275(T/m)の撚糸コードを得た。
6)ナイロン66撚糸コード
旭化成せんい社製ナイロン66繊維T5940T140fを原糸とし、ポリエチレンテレフタレート撚糸コードと同様の加工を行い、上/下撚数:210/300(T/m)の撚糸コードを得た。
7)スチール
JFEスチール社製の冷間圧延鋼板JFE−CC270を使用した。比重7.9g/cm、厚み0.25mmおよび1.5mm。
8)アルミ合金
神戸製鋼社製アルミ合金板KS5J30−T4を使用した。比重2.8g/cm、厚み0.25mmおよび1.5mm。
【0048】
[作製例1]ポリエチレンテレフタレート織物/ポリアミド6衝撃吸収材
ポリアミド6フィルム6枚/ポリエチレンテレフタレート織物1枚/ポリアミド6フィルム6枚を名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度240℃、最大圧力0.5MPaで10分間加熱加圧することによりポリアミド6フィルムを溶融し、ポリエチレンテレフタレート織物の繊維束間にポリアミド6を浸透させた。その後、加圧した状態で冷却し、ポリエチレンテレフタレート織物/ポリアミド6の1PLY成形体を得た。1PLY成形体の厚みは0.3mm、織物の体積分率は30%、繊維束内へのポリプロピレンの含浸度は体積分率で42%であった。得られた1PLY成形体から、織物の経糸方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、ポリアミド6フィルムとポリエチレンテレフタレート織物を、フィルム6枚/織物1枚/フィルム12枚/織物1枚/フィルム12枚/織物1枚/フィルム12枚/織物1枚/フィルム6枚の順で積層し、1PLY成形体と同じ条件で成形することにより、厚みが1.0mmの4PLY成形体を得た。この4PLY成形体から落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
[作製例2]ポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリアミド6衝撃吸収材
ポリアミド6フィルム5枚をアルミ製平板に貼り付けた後、この上に上/下撚数:200/275(T/m)のポリエチレンテレフタレート撚糸コードを100gのテンション下、1mmのピッチで巻きつけた。次に、この撚糸コードの上にフィルム5枚を貼り付けた後、名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度240℃、最大圧力0.5MPaで10分間加熱加圧することによりポリアミド6フィルムを溶融し、ポリエチレンテレフタレート撚糸コードのコード間にポリアミド6を浸透させた。その後、加圧した状態で冷却し、ポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリアミド6の1PLY成形体を得た。成形体の厚みは0.3mm、撚糸コードの体積分率は40%、繊維内へのポリアミド6の含浸度は体積分率で30%であった。得られた1PLY成形体から撚糸コード方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、成形体を撚糸コード0度方向、90度方向、90度方向、0度方向と重ねた後に再度加熱加圧し、その後加圧した状態で冷却することによりポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリアミド6の4PLY成形体を得た。成形体の厚みは1.1mmで、撚糸コードの体積分率は40%であった。この4PLY成形体から落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
[作製例3]ポリエチレンテレフタレート織物/ポリプロピレン衝撃吸収材
ポリプロピレンフィルム3枚/ポリエチレンテレフタレート織物1枚/ポリプロピレンフィルム3枚を、最高温度200℃、最大圧力0.5MPaで作製例1と同様の処理を行うことにより、ポリエチレンテレフタレート織物/ポリプロピレンの1PLY成形体を得た。1PLY成形体の厚みは0.3mm、織物の体積分率は51%、繊維束内へのポリプロピレンの含浸度は体積分率で42%であった。得られた成形体から、織物の経糸方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、ポリエチレンテレフタレート織物とポリプロピレンフィルムを、フィルム3枚/織物1枚/フィルム6枚/織物1枚/フィルム6枚/織物1枚/フィルム6枚/織物1枚/フィルム3枚の順に積層し、1PLY成形体と同じ条件で成形することにより、厚みが1.0mmの4PLY成形体を得た。この4PLY成形体から落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
[作製例4]ポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリプロピレン衝撃吸収材
ポリプロピレンフィルム3枚をアルミ製平板に貼り付けた後、この上に上/下撚数:200/275(T/m)のポリエチレンテレフタレート撚糸コードを100gのテンション下、1mmのピッチで巻きつけた。次に、この撚糸コードの上にフィルム2枚を貼り付けた後、最高温度200℃、最大圧力0.5MPaで作製例2と同様の処理を行い、ポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリプロピレン1PLY成形体を得た。1PLY成形体の厚みは0.2mm、撚糸コードの体積分率は60%、繊維内へのポリプロピレンの含浸度は体積分率で37%であった。得られた1PLY成形体から、撚糸コード方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、1PLY成形体を撚糸コード0度方向、90度方向、90度方向、0度方向と重ねた後に再度加熱加圧し、加圧した状態で冷却することによりポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリプロピレンの4PLY成形体を得た。成形体の厚みは1.0mmで、撚糸コードの体積分率は60%であった。この4PLY成形体からと落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
[作製例5]ポリエチレンナフタレート撚糸コード/ポリアミド6衝撃吸収材
ポリアミド6フィルム5枚をアルミ製平板に貼り付けた後、この上に上/下撚数:200/275(T/m)のポリエチレンナフタレート撚糸コードを100gのテンション下、1mmのピッチで巻きつけた。次に、この撚糸コードの上にフィルム5枚を貼り付けた後、作製例2と同様の処理を行い、ポリエチレンナフタレート撚糸コード/ポリアミド6の1PLY成形体を得た。1PLY成形体の厚みは0.3mm、撚糸コードの体積分率は40%、繊維内へのポリアミド6の含浸度は体積分率で42%であった。得られた1PLY成形体から、撚糸コード方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、1PLY成形体を撚糸コード0度方向、90度方向、90度方向、0度方向と重ねた後に再度加熱加圧し、加圧した状態で冷却することによりポリエチレンナフタレート撚糸コード/ポリアミド6の4PLY成形体を得た。4PLY成形体の厚みは1.1mmで、撚糸コードの体積分率は40%であった。この4PLY成形体から落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
[作製例6]ポリアミド66撚糸コード/ポリアミド6衝撃吸収材
ポリアミド6フィルム5枚をアルミ製平板に貼り付けた後、この上に上/下撚数:210/300(T/m)のポリアミド66撚糸コードを100gのテンション下、1mmのピッチで巻きつけた。次に、この撚糸コードの上にフィルム5枚を貼り付けた後、作製例2と同様の処理を行い、ポリアミド66撚糸コード/ポリアミド6の1PLY成形体を得た。1PLY成形体の厚みは0.3mm、撚糸コードの体積分率は40%、繊維内へのポリアミド6の含浸度は体積分率で44%であった。得られた1PLY成形体から、撚糸コード方向を基準として、引張試験片を切り出して評価した。また、1PLY成形体を撚糸コード0度方向、90度方向、90度方向、0度方向と重ねた後に再度加熱加圧し、加圧した状態で冷却することによりポリアミド66撚糸コード/ポリアミド6の4PLY成形体を得た。4PLY成形体の厚みは1.1mmで、撚糸コードの体積分率は40%であった。この4PLY成形体から落錘試験片を切り出して評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
[衝撃吸収材]
作製例1から6の衝撃吸収材は、落錘試験の結果、エネルギー吸収性に優れた材料であり、試験後の変形などはほとんどなかった。
【0055】
[実施例1]スチール/ポリエチレンテレフタレート織物−ポリアミド6樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmの冷間圧延鋼板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。この鋼板と、作製例1のポリエチレンテレフタレート織物/ポリアミド6樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、鋼板/衝撃吸収材/鋼板の順に積層し、30cm×20cmの金型に仕込んで名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度230℃、最大圧力0.5MPaで5分間加熱加圧することにより鋼板と衝撃吸収材材を接合して、スチールとポリエチレンテレフタレート織物/ポリアミド6樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、スチールの体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリエチレンテレフタレート織物の繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0056】
[実施例2]アルミ合金/ポリエチレンテレフタレート撚糸コード−ポリアミド6樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmのアルミ合金板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。このアルミ合金板と、作製例2のポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリアミド6樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、アルミ合金板/衝撃吸収材/アルミ合金板の順に積層し、実施例1と同様の処理を行って、アルミ合金板とポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリアミド6樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、アルミ合金の体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリエチレンテレフタレート撚糸コードの繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0057】
[実施例3]スチール/ポリエチレンテレフタレート織物−ポリプロピレン樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmの冷間圧延鋼板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。この鋼板と、作製例3のポリエチレンテレフタレート織物/ポリプロピレン樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、鋼板/衝撃吸収材/鋼板の順に積層し、30cm×20cmの金型に仕込み、名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度200℃、最大圧力0.5MPaで5分間加熱加圧することにより鋼板と衝撃吸収材を接合して、スチールとポリエチレンテレフタレート織物/ポリプロピレン樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、スチールの体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリエチレンテレフタレート織物の繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0058】
[実施例4]アルミ合金/ポリエチレンテレフタレート撚糸コード−ポリプロピレン樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmのアルミ合金板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。このアルミ合金板と、作製例4のポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリプロピレン樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、アルミ合金板/衝撃吸収材/アルミ合金板の順に積層し、実施例3と同様の処理を行って、アルミ合金とポリエチレンテレフタレート撚糸コード/ポリプロピレン樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、アルミ合金の体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリエチレンテレフタレート撚糸コードの繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0059】
[実施例5]スチール/ポリエチレンナフタレート撚糸コード−ポリアミド6樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmの冷間圧延鋼板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。この鋼板と、作製例5のポリエチレンナフタレート撚糸コード/ポリアミド6樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、鋼板/衝撃吸収材/鋼板の順に積層し、実施例1と同様の処理を行って、スチールとポリエチレンナフタレート撚糸コード/ポリアミド6樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、スチールの体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリエチレンナフタレート撚糸コードの繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0060】
[実施例6]アルミ合金/ポリアミド66撚糸コード−ポリアミド6樹脂 サンドイッチ材の作製
厚み0.25mmのアルミ合金板の表面をサンドペーパー#100で擦り、表面積を高めた。このアルミ合金板と、作製例6のポリアミド66撚糸コード/ポリアミド6樹脂衝撃吸収材の4PLY品を、アルミ合金板/衝撃吸収材/アルミ合金板の順に積層し、実施例1と同様の処理を行って、アルミ合金とポリアミド66撚糸コード/ポリアミド6樹脂のサンドイッチ材を得た。サンドイッチ材の厚みは1.5mm、アルミ合金の体積分率は33%であった。得られたサンドイッチ材から、ポリアミド66撚糸コードの繊維方向を基準として引張試験片を切り出して評価した。同様に、サンドイッチ材から落錘試験片も切り出して評価した。評価結果を表2に示した。
【0061】
[比較例1]スチールの評価
厚み1.5mmの冷間圧延鋼板から、引張試験片と落錘試験片を切り出して評価した。その結果、鋼板の強度と剛性は確認できたが、たいへん重かった。評価結果を表3に示す。
【0062】
[比較例2]アルミ合金の評価
厚み1.5mmのアルミ合金板から、引張試験片と落錘試験片を切り出して評価した。その結果、アルミ合金板の強度と剛性は確認できたが、たいへん重かった。評価結果を表3に示す。
【0063】
[比較例3]ポリアミド6成形板
ポリアミド6フィルム68枚を積層し、名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度240℃、最大圧力0.5MPaで10分間加熱加圧することによりフィルムを溶融し、その後、加圧した状態で冷却することによりポリアミド6の成形板を得た。成形板の厚みは1.5mmであった。得られたポリアミド成形板は強度や剛性が低かった。また、落錘試験では、落錘子が成形板を貫通した。評価結果を表3に示す。
【0064】
[比較例4]ポリプロピレン成形板
ポリプロピレンフィルム68枚を積層し、名機製作所製ホットプレスMHPC型を用いて、最高温度200℃、最大圧力0.5MPaで10分間加熱加圧することによりフィルムを溶融し、その後、加圧した状態で冷却することによりポリプロピレンの成形板を得た。成形板の厚みは1.5mmであった。得られたポリプロピレン成形板は強度や剛性が低かった。また、落錘試験では、落錘子により破砕した。評価結果を表3に示す。
【0065】
[実施例まとめ]
実施例1から6の金属材料をスキン層に配し、衝撃吸収材をコアとしたサンドイッチ材は、高剛性材と衝撃吸収材の長所を併せ持ち、強度と剛性の力学的強度に優れ、更に耐衝撃性にも優れていた。また、たいへん軽量であった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料、ガラス、およびセラミックスからなる群から選択される少なくとも一種の無機材料からなる高剛性材と、有機繊維と熱可塑性樹脂とからなる複合材料であって、有機繊維の形態が、撚糸コード、または撚糸コードで構成される織物あるいは編物である衝撃吸収材とから構成されるサンドイッチ材。
【請求項2】
衝撃吸収材をコア層に含み、高剛性材をスキン層として配置したことを特徴とする請求項1記載のサンドイッチ材。
【請求項3】
高剛性材が金属材料である請求項1または2に記載のサンドイッチ材。
【請求項4】
有機繊維の融点が250℃以上である請求項1から3のいずれかに記載のサンドイッチ材。
【請求項5】
有機繊維の撚数が、1mあたり10〜1000回である請求項1から4のいずれかに記載のサンドイッチ材。
【請求項6】
有機繊維が、ポリエステル繊維またはナイロン繊維である請求項1から5のいずれかに記載のサンドイッチ材。
【請求項7】
ポリエステル繊維が、ポリアルキレンテレフタレートおよび/またはポリアルキレンナフタレートをポリエステル中の95モル%以上の成分とする請求項6に記載のサンドイッチ材。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のサンドイッチ材。
【請求項9】
衝撃吸収材と高剛性材との体積比が、衝撃吸収材100部に対し、高剛性材が10〜900部である請求項1から8のいずれかに記載のサンドイッチ材。

【公開番号】特開2012−240402(P2012−240402A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115908(P2011−115908)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】