説明

サンプリングチューブ及びサンプリング方法

【課題】溶液中に含まれる気泡の影響を受けないように液体をサンプリングすることができるサンプリングチューブ及びサンプリング方法並びにそのサンプリングチューブを利用した洗浄装置及び洗浄方法を提供すること。
【解決手段】液体中に浸漬して液体2をサンプリングするサンプリングチューブであって、内側に設けたサンプリング用内管3を、底部が閉止されており、かつ液体が流入する流入口を設けたサンプリング用外管10で取り囲んで複合管構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のサンプリングチューブ及びサンプリング方法並びにそのサンプリングチューブを利用した洗浄装置及び洗浄方法に関し、特に、薬品濃度を常時管理する必要がある薬液のサンプリングのためのサンプリングチューブ及びサンプリング方法並びにそのサンプリングチューブを利用した洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(以下「ウェーハ」という。)を製造する工程の1つに、濃度が管理された混合薬液でウェーハを洗浄する工程がある。洗浄に使用する薬液は、処理槽内から薬液をサンプリングし、自動濃度測定器で測定を行い、測定結果をフィードバックして薬液濃度維持管理をしている。薬液濃度を維持するために、洗浄用試薬のフィードバック補充が必要となるからである。
【0003】
このように洗浄液をサンプリングして洗浄液中の含有物を測定しつつ、洗浄を行う装置の1例が特許文献1に開示されている。また、洗浄液中の気泡の量を測定して超音波の発振出力を制御する超音波洗浄システムが特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、配管内に混入した気泡を除去する装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−215002号公報
【特許文献2】特開2007−326088号公報
【特許文献3】特開2000−126507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液をサンプリングする時、液中に気泡が混入しているため、気泡が混入したままの液を直接測定すると、例えば液を透過した光量を測定する原理の濃度測定器等では、薬液濃度を正確に測定できない場合がある。そのため、測定結果に基づいて試薬をフィードバック補充するシステムにおいては、濃度維持が不安定となったり、異常な濃度範囲であっても正常と判断されて洗浄が不十分となる可能性がある。
【0006】
特許文献1又は2に記載の装置又は方法には、分析装置が液中の気泡の影響を受けないようにする方法は開示されていない。特許文献3に記載の装置では、気泡の浮力による気泡分離が開示されているが、微小気泡はメッシュによりトラップすることとしており、このようなメッシュは目詰まり等による清掃、交換が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の視点において、液体中に浸漬して液体をサンプリングする、本発明に係るサンプリングチューブは、液体を吸引するためのサンプリング用内管を、底部が閉止されており、かつ液体が流入する流入口を設けたサンプリング用外管で取り囲んで複合管構造としたことを特徴とする。
【0008】
第2の視点において、液体中に浸漬して液体をサンプリングする、本発明に係るサンプリング方法は、液体を吸引するためのサンプリング用内管を、底部が閉止されており、かつ液体が流入する流入口を設けたサンプリング用外管で取り囲んで複合管構造としたサンプリングチューブを用いることを特徴とする。
【0009】
第3の視点において、洗浄液中の物質濃度を常時サンプリング、測定しつつ物品の洗浄を行う本発明に係る洗浄装置は、上記のいずれか一に記載のサンプリングチューブを用いて洗浄液のサンプリングを行うことを特徴とする。
【0010】
第4の視点において、洗浄液中の物質濃度を常時サンプリング、測定しつつ物品の洗浄を行う本発明に係る洗浄方法は、上記のいずれか一に記載のサンプリング方法を用いて該洗浄液のサンプリングを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体をサンプリングする際の気泡の混入が防止でき、濃度測定に与える気泡の影響が無視できるようになり、サンプリングされた薬液の濃度を正確に測定できる。そのため、薬品濃度異状による洗浄不良を減少させ、また濃度値が正常にもかかわらず濃度測定値異常と判断されるケースが低減でき、設備稼働率が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るサンプリングチューブのサンプリング用外管は、液体の液面レベルよりも上方まで延在する長さを有し、かつ液面レベルよりも下方の壁面に液体の流入口を設ける。
【0013】
また、本発明に係るサンプリングチューブのサンプリング用外管は、液体の液面レベルの下方まで延在する長さを有し、液体の流入口はサンプリング用外管の上端面とすることができる。
【0014】
上記サンプリング用外管の流入口は、サンプリング用内管の液体吸入口よりも少なくとも50mm上方に配置されていることが好ましい。
【0015】
さらに、上記サンプリング用外管は、少なくとも2つとすることができる。こうすることにより、分析に与える気泡の影響をさらに低減することができる。
【0016】
本発明に係るサンプリング方法において用いるサンプリングチューブのサンプリング用外管は、液体の液面レベルよりも上方まで延在する長さを有し、かつ液面レベルよりも下方の壁面に液体の流入口を設ける。
【0017】
また、本発明に係るサンプリング方法において用いるサンプリングチューブのサンプリング用外管は、液体の液面レベルの下方まで延在する長さを有し、液体の流入口はサンプリング用外管の上端面とすることができる。
【0018】
また、本発明に係るサンプリング方法において用いるサンプリングチューブのサンプリング用外管の流入口は、サンプリング用内管の液体吸入口よりも少なくとも50mm上方に配置されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るサンプリング方法において用いるサンプリングチューブのサンプリング用外管は、少なくとも2つとすることができる。こうすることにより、分析に与える気泡の影響をさらに低減することができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
図1は、例えばウエーハの浸漬洗浄のように、薬液槽(洗浄槽)1中の薬液(洗浄液)2を適宜サンプリングして薬品の液中濃度を測定管理する必要がある洗浄装置に、本発明に係るサンプリングチューブを適用した洗浄装置30の概略図である(薬液中のウエーハは図示せず)。サンプリング用内管3とサンプリング用外管10でサンプリングした液は、濃度測定装置4で測定され、薬液濃度が所定値よりも低下すると、試薬用配管5に設けたバルブを自動的に開閉操作して試薬を薬液槽1に供給し、薬液濃度を所定の値に保つ。最終的に薬液2中の不純物が増加すると、薬液2は排水管6を通じて排水される。
【0021】
図2は、薬液槽に設置された従来のサンプリングチューブと本発明に係るサンプリングチューブの断面概略図を比較したものである。図2(a)は従来のサンプリングチューブの断面図である。図2(b)は本発明に係るサンプリングチューブであり、従来のサンプリングチューブと同様に液体を吸引するサンプリング用内管3と、その周囲にサンプリング用外管10を有する2重管構造となっている。
【0022】
図3(a)は、図2(b)の点線で囲んだ部分の拡大図である。サンプリング用外管10は底部が閉止されており、その側壁には、内部に薬液を流入させるための薬液取り入れ口11を有する。サンプリング用外管10の上端は、気泡が放出されるように開放されている。通常は薬液槽1の内部空間に開放する(図2(b)参照)。薬液槽内の薬液は薬液取り入れ口11から内部に流入し、サンプリング用内管3の最端部である吸引口3aから吸引される。
【0023】
このように、気泡を含む薬液はサンプリング用外管10の薬液取り入れ口11から内部へ流入し、2重管の間を通ってサンプリング用内管3の吸入口3aに到達するまでに、気泡のみが浮力によって上部へ浮上することによって気泡が分離される。
【0024】
2重管構造の寸法は、基本的に薬液2が2重管の間を通る間に、濃度測定装置4に影響を与える気泡が十分分離されるように設定される必要がある。即ち、薬液2が2重管の間を移動する速さが、分析に影響を与える大きさの気泡が浮上する速さよりも遅くなるように、サンプリング流量を考慮して2重管の間隔(断面積)を決定する。
【0025】
例えばウエーハを洗浄する洗浄槽中の薬液濃度を分析するためのサンプリングチューブであれば、サンプリング用内管3の直径は6〜12mm程度で肉厚が1mm程度であり、サンプリング用外管10は直径が12〜19mm程度で肉厚が1mm程度が好ましい。なお、本実施例1では内管、外管とも円管としたが、その目的から必ずしも円管状でなくとも可能である。
【0026】
図4は、薬液取り入れ口11の配置及び形状の例を示した正面図である。薬液取り入れ口11の配置は、ウエーハと干渉しなければどこでもよいが、薬液槽1の内壁側に近い位置に配置することが好ましい。またサンプリング用内管3の吸引口3aからの高さHは、気泡の吸い込みをできるだけ避けるために50mm程度ないしそれ以上の高さであることが好ましい(図4参照)。
【0027】
薬液取り入れ口11の大きさや形状は、薬液2が十分流入する程度であればどのような形状でもよいが、例えば直径2mm程度の孔(図4(a)参照)又は2mm×20mm程度の長孔(図4(b)参照)等が考えられる。
【0028】
サンプリング用外管10は、サンプリング用内管3に取り付けて一体型としてもよいし、もしもサンプリング用内管3の位置決めが正確にできるのであれば、薬液槽1の内壁にあらかじめサンプリング用外管10を取り付けておいて、その中にサンプリング用内管3を後で挿入するようにしてもよい。
【0029】
本実施例1では、浸漬型の洗浄装置内薬液槽の薬液管理のために本発明に係るサンプリングチューブを用いたが、薬液を混合調整して洗浄装置に供給するための薬液調整槽にこのサンプリングチューブを適用できることはいうまでもない。
【0030】
(実施例2)
図3(b)は、本発明に係るサンプリングチューブの第2の実施例を示す断面概略図である。本実施例2では、サンプリング用外管10の外側にさらに第2のサンプリング用外管20を設け、合わせてサンプリング用外管を2つにしている。第2のサンプリング用外管20にも同様に薬液取り入れ口21を設けている。このようにサンプリング用外管を多重化することにより、さらに濃度計への気泡混入を低減することができる。
【0031】
(実施例3)
実施例1においては、サンプリング用外管10は薬液面レベルよりも上まで長くしている。これは浮上する気泡の通路と薬液の流入路をできるだけ分けるためと、薬液面に浮遊する気泡の影響を除くためであるが、このような液面の影響が無視できるかあるいは十分長い分離時間を確保できる場合は、サンプリング用外管10全体を液面レベルよりも下に配置することが考えられる。
【0032】
図5は、サンプリング用外管10全体を液面レベルよりも下に配置した実施例3の断面概略図である。この場合、薬液はサンプリング用外管10の上端部から流入するので、薬液取り入れ口はサンプリング用外管10の上端部となる。
【0033】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るサンプリングチューブを用いた洗浄装置の概略図である。
【図2】(a)薬液槽に設置された従来のサンプリングチューブの断面概略図である。(b)薬液槽に設置された本発明に係るサンプリングチューブの第1の実施例を示す断面概略図である。
【図3】(a)図2(b)の点線で囲んだ部分Aの拡大図である。(b)本発明に係るサンプリングチューブの第2の実施例を示す断面概略図である。
【図4】本発明に係るサンプリングチューブの外管の薬液取り入れ口の配置及び形状の例を示したものである。
【図5】本発明に係るサンプリングチューブの第3の実施例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 薬液槽(洗浄槽)
2 薬液(洗浄液)
3 サンプリング用内管
3a 吸引口
4 濃度測定装置(兼バルブ制御装置)
5 試薬用配管
6 排水管
10、20 サンプリング用外管
11、21 薬液取り入れ口
30 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に浸漬して該液体をサンプリングするサンプリングチューブであって、
該液体を吸引するためのサンプリング用内管を、底部が閉止されており、かつ該液体が流入する流入口を設けたサンプリング用外管で取り囲んで複合管構造としたことを特徴とする、サンプリングチューブ。
【請求項2】
前記サンプリング用外管は、前記液体の液面レベルよりも上方まで延在する長さを有し、かつ該液面レベルよりも下方の壁面に前記液体の前記流入口を設けたことを特徴とする、請求項1に記載のサンプリングチューブ。
【請求項3】
前記サンプリング用外管は、前記液体の液面レベルの下方まで延在する長さを有し、前記液体の前記流入口は該サンプリング用外管の上端面であることを特徴とする、請求項1に記載のサンプリングチューブ。
【請求項4】
前記サンプリング用外管の前記流入口は、前記サンプリング用内管の液体吸入口よりも少なくとも50mm上方に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のサンプリングチューブ。
【請求項5】
前記サンプリング用外管は、少なくとも2つであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のサンプリングチューブ。
【請求項6】
液体中に浸漬して該液体をサンプリングするサンプリング方法であって、
該液体を吸引するためのサンプリング用内管を、底部が閉止されており、かつ液体が流入する流入口を設けたサンプリング用外管で取り囲んで複合管構造としたサンプリングチューブを用いることを特徴とする、サンプリング方法。
【請求項7】
前記サンプリング用外管は、前記液体の液面レベルよりも上方まで延在する長さを有し、かつ該液面レベルよりも下方の壁面に前記液体の前記流入口を設けたことを特徴とする、請求項6に記載のサンプリング方法。
【請求項8】
前記サンプリング用外管は、前記液体の液面レベルの下方まで延在する長さを有し、前記液体の前記流入口は該サンプリング用外管の上端面であることを特徴とする、請求項6に記載のサンプリング方法。
【請求項9】
前記サンプリング用外管の前記流入口は、前記サンプリング用内管の液体吸入口よりも少なくとも50mm上方に配置されていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載のサンプリング方法。
【請求項10】
前記サンプリング用外管は、少なくとも2つであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一に記載のサンプリング方法。
【請求項11】
洗浄液中の物質濃度を常時サンプリング、測定しつつ物品の洗浄を行う洗浄装置であって、請求項1〜5のいずれか一に記載のサンプリングチューブを用いて該洗浄液のサンプリングを行うことを特徴とする、洗浄装置。
【請求項12】
洗浄液中の物質濃度を常時サンプリング、測定しつつ物品の洗浄を行う洗浄方法であって、請求項6〜10のいずれか一に記載のサンプリング方法を用いて該洗浄液のサンプリングを行うことを特徴とする、洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270825(P2009−270825A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118637(P2008−118637)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】