説明

サンプリング変換装置

【課題】入力クロックとは異なるクロック源から供給される,入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数をもつクロックに同期するように入力データをサンプリング変換して出力する。
【解決手段】第1のクロックに同期して入力されるサンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と,前記第1のクロックの周波数を逓倍した第3のクロックに同期して前記入力サンプルデータを補間する補間係数を格納する記憶部と,前記第3のクロックに同期して前記記憶部における前記補間係数のアドレスをカウントするカウンタと,前記第1のクロックの周波数の有理数倍でない周波数の第2のクロックに応答して,前記カウンタ値のアドレスに格納される前記補間係数を用いて前記入力サンプルデータを補間し,当該補間データを出力するサンプルデータ補間部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,第1のクロックに同期して入力されるサンプルデータを第2のクロックに同期して出力するサンプリング変換装置に関し,特に,前記入力サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と,補間係数を用いて前記入力サンプルデータを補間し,当該補間データを出力するサンプルデータ補間部とを有するサンプリング変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数のクロックでサンプリングされたサンプルデータを入力し,異なる周波数のクロックに同期して補間あるいは間引きしたサンプルデータを出力するサンプリング変換装置が知られている。例えば,特許文献1には画素数の異なる画像データを所定の画素数で共通の出力装置に表示する画像処理装置や,複数の画像フォーマットを多重化した放送波を受信し,所定のサイズの画像に変換して表示する受像装置などに用いられるサンプリング変換装置が記載されている。
【0003】
かかるサンプリング変換装置の構成例を図1に示す。入力クロックCLKinに同期してサンプリング装置に入力されるサンプルデータSinはシフトレジスタにより構成されるサンプルデータ蓄積部1に蓄積される。そして,カウンタ5が入力クロックCLKinの周波数を自然数(L)倍したクロックで記憶部3に格納された補間係数のアドレスをカウントし,サンプルデータ補間部2は入力クロックCLKinの周波数を有理数倍(L/M倍)した出力クロックCLKoutに応答して,その時点でカウントされたアドレスに格納される補間係数を用いてデジタルフィルタによりサンプルデータ蓄積部1に蓄積された入力サンプルデータSinを補間し,その補間データを出力サンプルデータSoutとして出力する。
【0004】
かかるサンプリング変換装置は,入力前のデータの処理系統と出力後のデータの処理系統とが共通のクロック源をもつ場合に有効に用いられる。すなわち,サンプリング変換装置への入力クロックを外部の共通クロック源から得てこれを有理数倍した出力クロックを用いることにより,出力クロックに同期して出力されるサンプルデータは外部クロックの有理数倍の周波数をもつことになり,出力データの処理系統のクロックと同期したサンプリング周波数のデータを出力することができる。
【特許文献1】特開2001−24479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来のサンプリング変換装置では,入力前の処理系統と出力後の処理系統とが異なるクロック源をもつ場合には,入力クロックの周波数を有理数倍した出力クロックに同期したデータを出力しても,その出力データのサンプリング周波数は出力後の処理系統のクロックに同期していないという問題が生じる。
【0006】
例えば,放送波を受信して受信信号をAD変換する受信部と,受信部から受け取ったデジタルデータを復調する復調部とを有する放送波受信装置において,受信部と復調部とが異なるクロック源を有するような場合には,受信部のクロックを有理数倍したクロックに同期するようにデジタルデータをサンプリング変換しても,出力データのサンプリング周波数が復調部のクロックに同期しないことになる。
【0007】
そこで,本発明の目的は,入力クロックとは異なるクロック源から供給される,入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数をもつクロックに同期するように入力データをサンプリング変換して出力できるサンプリング変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために,本発明の第1の側面におけるサンプリング変換装置は,第1のクロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第1のクロックの周波数の有理数倍でない周波数の第2のクロックに同期して出力するサンプリング変換装置において,前記入力サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と,前記第1のクロックの周波数を逓倍した第3のクロックの分解能に対応する補間係数を格納する記憶部と,前記第3のクロックに同期して前記記憶部における前記補間係数のアドレスをカウントするカウンタと,前記第2のクロックに応答して,前記カウンタのカウント値に対応する前記記憶部のアドレスに格納される前記補間係数を用いて前記入力サンプルデータを補間し,当該補間データを出力するサンプルデータ補間部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記側面の好ましい実施態様によれば,前記第1のクロックは,入力されるサンプルデータの処理系統の第1のクロック源から供給され,前記第2のクロックは,出力される補間データの処理系統の,前記第1のクロック源とは異なる第2のクロック源から供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記側面によれば,第1の(入力)クロックの周波数を逓倍した高速の第3のクロックの分解能に対応する補間係数のアドレスをカウントし,第2の(出力)クロックに応答して,カウント値に対応するアドレスに格納される補間係数を用いて入力サンプルデータを補間して出力する。よって,出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても,出力クロックにほぼ同期して補間されたサンプルデータを得ることができる。また,第3のクロックに同期してアドレスカウントを高速に行い,出力クロックに応答して補間を行うという手順により,第3のクロックに同期して逐一補間データを求めて保持しておき,出力クロックに応答して出力する場合と比べて,補間データを求める処理や求めた補間データを保持するために要する回路の規模を小さく抑えることができ,かつ処理を高速化することができる。
【0011】
さらに,上記実施態様によれば,出力クロックを出力後のデータの処理系統のクロックから得ることで,入力クロックと異なるクロック源をもつ出力後のデータ処理系統のクロックに同期するようにサンプリング変換したデータを出力することができる。よって,データ処理ブロック間での同期を考慮した設計が不要となり,データ処理システムを柔軟かつ容易に設計することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0013】
図2は,本実施形態におけるサンプリング変換装置の構成例を説明する図である。まず図2(A)は,このサンプリング変換装置が適用される車載用放送波受信装置の構成例を示している。この車載用放送波受信装置は,AM,FMなどのラジオ放送や,地上デジタルテレビジョン放送など複数系統の放送波を受信する車載機器用の放送波受信装置であり,複数のアンテナ11−1,…,11−nと,アンテナ直下筐体100と,復調部筐体200と,アンテナ直下筐体100から出力されるデジタル信号を復調部筐体200へ伝送する伝送ケーブル300とを有する。
【0014】
アンテナ直下筐体100では,アンテナ11−1,…,11−nによる高周波の受信信号が高周波増幅部12−1,…,12−nで増幅され,周波数変換部14−1,…,14−nにより高周波の受信信号からユーザに選択されたチャネルの周波数帯域が抽出されて中間周波信号に周波数変換される。そしてBPF(Band Pass Filter,帯域通過フィルタ)16−1,…,16−nで中間周数信号から必要な帯域の信号が抽出され,ADコンバータ18−1,…,18−nにより抽出された信号が所定のサンプリング周波数でサンプリングされデジタルデータに変換される。
【0015】
多重化部17では受信信号の処理系統ごとのデジタルデータが予め設定したフォーマットに従って多重化され,多重化された所定のビット数,例えば8ビット単位のパラレルデータが生成される。そして,シリアルデータ送出部19で多重化されたパラレルデータがシリアルデータに変換され,所定の伝送クロックに同期してシリアルデータ伝送ケーブル300に送出される。
【0016】
復調部筐体200では,シリアルデータ受信部21でアンテナ直下筐体100から伝送されるシリアルデータを受信クロックに従って受信し,パラレルデータに変換する。多重分離部22では多重化部17と同じフォーマットを用いてパラレルデータに多重された元の信号系統ごとの信号を分離して,サンプリング変換装置23−1,…,23−nへ入力する。サンプリング変換装置23−1,…,23−nは,入力されるパラレルデータを,復調処理部24−1,…,24−nの動作クロックに同期したサンプリング周波数のデータに変換して各復調部へ入力する。そして,復調処理部24−1,…,24−nは,各信号を復調し車載機器へ出力する。
【0017】
上記構成において,復調処理部24−1,…,24−nはDSP(Digital Signal Processor)で構成され,受信するメディアごとの信号処理を書き換え可能なプログラムに従って実行するので,アンテナ直下筐体100のハード構成に依存せず,かつ放送メディアの信号処理方法の変更に柔軟に対応することができる。このため,復調処理部24−1,…,24−nは多重分離部22のクロック源25aと異なるクロック源25bによるクロックに同期して動作するので,多重分離部22の動作クロックの周波数を有理数倍しても復調処理部24−1,…,24−nの動作クロックの周波数と一致しない場合が生じる。
【0018】
そこで,本実施形態のサンプリング変換装置23−1,…,23−nは,図2(B)に示すように,クロック源25aからの入力クロックCLKinに同期して入力される入力データを蓄積するサンプルデータ蓄積部1と,入力クロックCLKinの周波数を逓倍したクロックCLKipの分解能に応じて入力サンプルデータSinを補間する補間係数を格納する記憶部3を有し,カウンタ5bがクロックCLKipに同期して補間係数のアドレスをカウントする。そして,サンプルデータ補間部2aは,復調処理部24−1,…,24−nと共通のクロック源25bから供給される出力クロックCLKoutに応答して,その時点でカウントされたアドレスに格納されている補間係数を用いて,入力サンプルデータを補間して出力することを特徴とする。
【0019】
図3は,図2(B)に示したサンプリング変換装置の第1の構成例を説明する図である。この構成例では,入力サンプルデータの補間方法としてラグランジュ補間による2次補間を用い,3つの入力サンプルデータに基づき2つのサンプル間の補間データを求める。その際,2つのサンプル間において3つの補間データを求め,入力サンプルデータを4倍に補間する。
【0020】
サンプルデータ蓄積部1は3つの入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1,SR2,SR3を有し,入力クロックCLKinに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),…,Y(n)は,入力クロックCLKinに同期してSR2,SR3と順次シフトし,SR1,SR2,SR3に蓄積された3つの入力サンプルデータがサンプルデータ補間部2aの乗算器4a,4b,4cへ入力される。
【0021】
また,カウンタ5は入力クロックCLKinの周波数を4倍したクロックCLKipで4クロック分のカウントを行い,これに伴って「3」〜「0」までデクリメントされる記憶部3における補間係数のアドレスのカウント値が第1のラッチ回路6にラッチされる。そして出力クロックCLKoutに同期して,ラッチされたカウント値に対応した記憶部3のアドレス「0」,「1」,「2」,「3」から,そのアドレスに格納される3つの補間係数「t−n1」,「t−n2」,「t−n3」(n=0,1,2,3)が第2のラッチ回路7のレジスタtap1,tap2,tap3へラッチされ,乗算器4a,4b,4cにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され,乗算結果が加算器8dにより合計されてバッファBUFに出力される。そして,次の出力クロックCLKoutに同期して,バッファBUFから補間データが出力サンプルデータSoutとして出力される。
【0022】
ここで,図4を用いて記憶部3に格納される補間係数について説明する。公知のラグランジュ補間では,間隔Sの離散点D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))で表される2つの入力サンプルデータ間の補間点(xn,yn)のY座標値は,点D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))を含む3つ以上の既知の離散点のY座標値に対して所定の式で求められる補間係数を乗算し,その乗算結果の和として求められる。本構成例では等間隔Sの3つの離散点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))を用いて,点D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))の2点間を4倍に補間,つまり2点間に3点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を等間隔に挿入する2次補間を行う。
【0023】
ここで各補間点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)による補間比pを,p=dn/S(ただしdn=xn−X(2),n=0,1,2,3)とすると,各補間点のX座標値x1,x2,x3に対応する補間比pは0,0.25,0.5,0.75となり,下記の式(1)〜(3)で求められる補間係数Q1,Q2,Q3と点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))のそれぞれのY座標値との積和演算(式(4))により,各補間点のY座標値ynが求められる。
Q1=(p−p)/2 :式(1)
Q2=―p+1 :式(2)
Q3=(p+p)/2 :式(3)
yn=Q1・Y(0)+Q2・Y(1)+Q3・Y(2):式(4)
よって,かかる補間比に応じた補間係数の組合せ(表1)を予め求め,カウンタ5のカウント値に関連づけた記憶部3のアドレスに格納しておき,カウント値に対応する補間係数が第2のラッチ回路7にラッチされ,入力サンプルデータと積和演算されて補間が行われる。なお,補間比「0」は点D2(X(2),Y(2))に対応する。
【0024】
【表1】

【0025】
例えば,カウント値「3」の場合は補間比「0」に対応する補間係数{0,1,0},カウント値「2」の場合は補間比「0.25」に対応する補間係数{−0.125,0.75,0.375},カウント値「1」の場合は補間比「0.5」に対応する補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625},カウント値「0」の場合は補間比「0.75」に対応する補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}が出力クロックに同期してラッチされ,入力サンプルデータと積和演算されて補間が行われる。そして,補間データがバッファBUFに出力される。
【0026】
なお,上述においてはラグランジュ補間の2次補間を行う場合を説明したが,(n+1)個の補間係数と(n+1)個のシフトレジスタを有し,3次以上のn次補間を行う構成としてもよい。また,2点間の補間比に応じた数の補間係数の組合せを記憶部3に格納し,入力クロックの周波数を逓倍して補間比に応じた分解能を有するクロックCLKipを生成し,そのクロックに同期して補間係数のアドレスカウントが行われるように構成することで,2点間の分解能を高めることができる。例えば,入力クロックCLKinを16倍したクロックCLKipを生成し,このクロックに同期して「15」から「0」までデクリメントするカウンタ5を備え,補間比を0,1/16,2/16,…,14/16,15/16として算出された補間係数を16組記憶部3に格納しておくことで,サンプルデータを16倍に補間することが可能となる。
【0027】
図5は,第1の構成例のサンプリング変換装置各部に入力されるデータについて説明するチャート図である。本図においては横軸方向に時間が示される。入力クロックCLKinの立ち上がりに同期して,Y(1),Y(2),…,Y(n)の値を示す入力サンプルデータがシフトレジスタSR1へ入力され,シフトレジスタSR1からSR2へ,SR2からSR3へと順次シフトする。図5は,入力クロックCLKinの第1クロックに同期して入力サンプルデータのY(1),Y(2),Y(3)がシフトレジスタへ格納された時点から示している。
【0028】
入力クロックCLKinが4倍されたクロックCLKipに同期して,カウンタ5によるカウント値は「3」から「0」までデクリメントする。そして,出力クロックCLKoutの第1クロックの立ち上がりに同期してカウント値「3」に対応した補間係数{0,1,0}が第2のラッチ回路7へラッチされる。そして,乗算器4a,4b,4cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{0,1,0}がそれぞれ乗算され,各乗算結果が加算器8dで合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0」の補間点(つまりY(2))としてバッファBUFへ格納される。
【0029】
次に,出力クロックCLKoutの第2クロックの立ち上がりに同期してカウント値「0」に対応した補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}が第2のラッチ回路7へラッチされる。そして,乗算器4a,4b,4cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}がそれぞれ乗算され,各乗算結果が加算器8dで合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0.75」の補間点としてバッファBUFへ格納される。
【0030】
次に,出力クロックCLKoutの第3クロックの立ち上がりに同期してカウント値「1」に対応した補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}が第2のラッチ回路7へラッチされる。この時はシフトレジスタSR1,SR2,SR3には入力サンプルデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}が格納されているので,乗算器4a,4b,4cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}と補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}がそれぞれ乗算され,各乗算結果が加算器8dで合計されてサンプルデータY(3)とY(2)の間の補間比「0.5」の補間点としてバッファBUFへ格納される。
【0031】
次に,出力クロックCLKoutの第4クロックの立ち上がりに同期してカウント値「2」に対応した補間係数{−0.125,0.75,0.375}が第2のラッチ回路7へラッチされる。この時はシフトレジスタSR1,SR2,SR3には入力サンプルデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}が格納されているので,乗算器4a,4b,4cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}と補間係数{−0.125,0.75,0.375}がそれぞれ乗算され,各乗算結果が加算器8dで合計されてサンプルデータY(4)とY(3)の間の補間比「0.25」の補間点としてバッファBufへ格納される。
【0032】
以降,同様にして,カウンタ5がクロックCLKipに同期して「3」〜「0」のカウントを反復する間,出力クロックCLKoutの立ち上がりに同期したカウント値に対応したアドレスの補間係数を用いて,その時サンプルデータ蓄積部1のシフトレジスタSR2,SR3に蓄積されているサンプルデータ間の補間が行われる。
【0033】
上記のように構成されるサンプリング変換装置の入出力データを模式的に図6において示す。本図において横軸は時間を示しており,サンプルデータ蓄積部1に入力される入力クロックCLKinに同期したサンプルデータSinを入力クロックCLKinの4倍のクロックCLKipの分解能に対応して補間したとすると,実線及び点線で示される補間データSipのようになる。なお,入力サンプルデータSin,補間データSipはともに縦軸にデータの値を示す。ここで,実際の補間は出力クロックCLKoutに同期してラッチされたカウンタ5のカウント値に対応して行われるので,実線で示される補間データSipが算出されて,出力サンプルデータSoutとして出力される。
【0034】
このように,本構成例によれば,入力クロックCLKinの周波数の有理数倍でない周波数をもつ出力クロックCLKoutを用いた場合であっても,出力クロックCLKoutに同期した補間データが確実に得られ,出力後の処理系等のクロックに同期するようにサンプリング変換することが可能となる。また,入力クロックの周波数を逓倍した高速クロックの分解能に対応する補間係数のアドレスを高速にカウントし,出力クロックに応答してカウント値に対応するアドレスに格納される前記補間係数を用いて補間を行う構成とすることにより,例えば入力クロックを逓倍したクロックに同期してすべての補間データを求めて保持しておき,出力クロックに応答して補間データを出力する場合と比べて,補間データを求める処理や求めた補間データを保持するために要する回路の規模を小さく抑えることができ,処理時間も短縮することができる。
【0035】
図7は,本実施形態のサンプリング変換装置の第2の構成例を説明する図である。この構成例は,出力クロックCLKoutに同期して,6次のラグランジュ補間により7つの入力サンプルデータに基づき2つのサンプルデータ間の補間サンプルデータを求めて出力する場合の構成例である。さらに,この構成例では,サンプルデータ間を48倍で補間するために,7つの補間係数からなる組合せを48組備える。
【0036】
サンプルデータ蓄積部1は7つの入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1,SR2,…,SR7を有し,入力クロックCLKinに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),…,Y(n)は,入力クロックCLKinに同期してSR2,SR3,…,SR7と順次シフトし,シフトレジスタSR1,…,SR7に蓄積された7つの入力サンプルデータはサンプルデータ補間部2bの乗算器4a,4b,…,4gへ入力される。
【0037】
また,移相器5aは入力クロックCLKinの周波数を12倍したクロックCLKipに基づき0度,90度,180度,270度に位相をずらした4つのクロックCLKip−1,…,CLKip−4を生成し,それぞれのクロックに同期して12クロック分のカウントを行うカウンタ51b,52b,53b,54bのそれぞれから「12」または「11」から「0」までデクリメントされるそれぞれのカウント値が第1のラッチ回路6aにラッチされる。そしてラッチされた4位相分のカウント値が出力クロックCLKoutに同期して第1の加算器6bにより加算される。
【0038】
ここで,第1の加算器6bにより加算されるカウント値について図8を用いて説明する。カウンタ51b,52b,53b,54bは,1つのカウンタにより入力クロックCLKinの周波数を48倍したクロックでカウントを行う代わりに,入力クロックCLKinの12倍の速度で90度ずつ位相が異なる4つのクロックCLKip−1,…,CLKip−4それぞれに同期してカウントを行う。各カウント値は,「12」または「11」から「0」までデクリメントし,入力クロックCLKinによりリセットされる。よって「12」または「11」から「0」までのカウント値が4位相分合計されると「47」から「0」までの48通りのいずれかの値となり,出力クロックCLKoutに同期して第1の加算器6bからは記憶部3における「47」から「0」までのいずれかのアドレスのカウント値が出力される。
【0039】
そして,記憶部3のそのアドレスに格納される7つの補間係数t−n1,t−n2,…,t−n7(n=00,01,02,…,46,47)が第2のラッチ回路7のレジスタtap1,tap2,…,tap7へラッチされ,乗算器4a,4b,…,4gにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され,乗算結果が第2の加算器8dにより合計されて出力サンプルデータSoutとして出力される。
【0040】
なお,この構成例では,サンプルデータ間を48倍に補間するために,記憶部3には48組の補間係数の組合せが格納される。この場合,補間比Pは,0,1/1,1/2,…,1/46,1/47の48通りであり,それぞれに対応する補間係数は次式(5)〜(11)で求められる。
【0041】
Q1=(p6-3p5-5p4+15p3+4p2-12p)/720) :式(5)
Q2=(-p6+2p5+10p4-20p3-9p2+18p)/120) :式(6)
Q3=(p6-p5-13p4+13p3+36p2-36p)/48) :式(7)
Q4=(-p6 +14p4 -49p2 +36)/36) :式(8)
Q5=(p6+p5-13p4-13p3+36p2+36p)/48) :式(9)
Q6=(-p6-2p5+10p4+20p3-9p2-18p)/120) :式(10)
Q7=(p6+3p5-5p4-15p3+4p2+12p)/720) :式(11)

このようにして,入力クロックCLKinの周波数を12倍するだけで,48倍まで高めた分解能での補間が可能となる。よって,サンプルデータ補間部2bは入力クロックCLKinが48倍される場合より安定した状態で補間を行うことが可能となる。
【0042】
図9は,本実施形態のサンプリング変換装置の第3の構成例を説明する図である。この構成例は,第1の構成例に出力クロックCLKoutのクロック源を切替可能なスイッチ9が「クロック切替手段」として設けられた構成例である。スイッチ9により,クロック源25aからの入力クロックCLKinを有理数倍したクロックまたは外部クロックであるクロック源25bからのクロックのいずれかを出力クロックCLKoutのクロックとすることができる。よって,出力サンプルデータSoutの処理系統が入力サンプルデータSinの処理系統と同一のクロック源を有するようなシステムにおけるサンプリング変換を行う場合は,入力クロックCLKinを有理数倍したクロックを出力クロックCLKoutとし,異なるクロック源の場合は,出力データの処理系統のクロック源から供給されるクロックを出力クロックCLKoutとする。そうすることにより,サンプリング変換装置が適用されるシステム構成に応じて出力データの処理系統のクロックに同期した出力サンプルデータSoutを出力することができる。
【0043】
なお,第1の構成例では2次補間,第2の構成例では6次補間について説明したが,補間係数の個数は3つあるいは7つに限られず,補間係数の数に応じた入力サンプルデータを蓄積できるサンプルデータ蓄積部を備え,これに応じた数の補間係数を記憶部3に格納することにより任意の高次補間を行うことができる。また,補間比も上記の4倍あるいは48倍に限られず,補間比に応じた補間係数の組合せを記憶部3に格納し,入力クロックを逓倍して補間比に応じた分解能でカウントするカウンタ5を備えることにより,任意の補間比とすることが可能である。
【0044】
また,上記の構成例ではラグランジュの補間を行うが,蓄積されたサンプルデータに対し補間係数を用いて補間データを求めるようにサンプルデータ補間部を構成すれば,係数の積和演算以外の方法により補間を行う方法にも本実施形態は適用できる。
【0045】
さらに,本実施形態のサンプリング変換装置は,車載用放送波受信装置だけでなく,種々の画像処理装置,音声出力装置等,異なるクロックにより動作するデータ処理系統間で転送されるデータのサンプリング周波数変換に適用される。
【0046】
このように,本実施形態によれば,出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても出力クロックにほぼ同期して補間されたサンプルデータを出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来のサンプリング変換装置の構成例を説明する図である。
【図2】本実施形態におけるサンプリング変換装置の構成例を説明する図である。
【図3】図2(B)に示したサンプリング変換装置の第1の構成例を説明する図である。
【図4】記憶部3に格納される補間係数について説明する図である。
【図5】第1の構成例のサンプリング変換装置各部に入力されるデータについて説明するチャート図である。
【図6】第1の構成例のサンプリング変換装置の出力データを模式的に示す図である。
【図7】本実施形態のサンプリング変換装置の第2の構成例を説明する図である。
【図8】第1の加算器6bにより加算されるカウント値について説明する図である。
【図9】本実施形態のサンプリング変換装置の第3の構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1:サンプルデータ蓄積部 2a:サンプルデータ補間部
3:記憶部 5:カウンタ
6:第1のラッチ回路 7:第2のラッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第1のクロックの周波数の有理数倍でない周波数の第2のクロックに同期して出力するサンプリング変換装置において,
前記入力サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と,
前記第1のクロックの周波数を逓倍した第3のクロックの分解能に対応する補間係数を格納する記憶部と,
前記第3のクロックに同期して前記記憶部における前記補間係数のアドレスをカウントするカウンタと,
前記第2のクロックに応答して,前記カウンタのカウント値に対応する前記記憶部のアドレスに格納される前記補間係数を用いて前記入力サンプルデータを補間し,当該補間データを出力するサンプルデータ補間部とを有することを特徴とするサンプリング変換装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記第1のクロックは,入力されるサンプルデータの処理系統の第1のクロック源から供給され,
前記第2のクロックは,出力される補間データの処理系統の,前記第1のクロック源とは異なる第2のクロック源から供給されることを特徴とするサンプリング変換装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記カウンタは,位相が異なる複数の前記第3のクロックそれぞれに同期して前記アドレスをカウントする複数のカウンタを有し,
前記サンプルデータ補間部は,前記複数のカウンタのカウント値の合計に対応する前記記憶部のアドレスに格納される前記補間係数を用いて前記補間を行うことを特徴とするサンプリング変換装置。
【請求項4】
請求項2において,
前記サンプルデータ補間部へ入力される第2のクロックと,前記第1のクロックを有理数倍した第4のクロックとのいずれかに切り替えるクロック切替手段を更に有し,
前記サンプルデータ補間部は,前記第4のクロックに切り替えられたときは,前記第2のクロックの代わりに前記第4のクロックに応答して動作することを特徴とするサンプリング変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−113123(P2008−113123A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293822(P2006−293822)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】