説明

サンプリング容器及びその使用方法

【課題】液状物が固化したサンプルを少量だけ取り分けられるサンプリング容器及びその使用方法を提供する。
【解決手段】第1のカップ7と、第1のカップ7内に組み入れ可能で、しかも組み入れ時に側板16外周面が第1のカップ7の側板12内周面に対して間隙を隔て得る第2のカップ8とを備え、第2のカップ8の側板16に、上縁から下方へ向かうスリット17を切り込んだ構成を採り、第2のカップ8に注いだ溶融ガラスをスリットから第2のカップ8の側板16の外周面へと滴らせ、この滴った溶融ガラスを固化させてガラス薄片を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプリング容器及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済み燃料の再処理に伴って発生する廃液は、廃液処理設備においてガラス固化処理される。
【0003】
図6はガラス固化処理に用いるガラス固化体容器の一例であって、この固化体容器は、底部が閉塞した長円筒状の容器胴部1と、該容器胴部1の上部に連なる短筒状の流入管2及びその上端外周縁部に設けたフランジ3からなる容器頭部4と、前記流入管2の上端面に当接し且つフランジ3に内接するように配置される蓋体5とを備えている。
【0004】
これらの容器胴部1、流入管2、容器頭部4及び蓋体5の形成素材には、剛性が高く、しかも耐腐蝕性に優れたステンレス鋼が用いられる。
【0005】
放射性廃液をガラス固化処理する際には、溶融炉内で液状を呈するように加熱保温されている溶融ガラスに放射性廃液を混入し、この放射性廃液を含んだ溶融ガラスを、流入管2から容器胴部1内へ流下させる。
【0006】
更に、容器胴部1内の溶融ガラスが自然風冷によって固化した後、蓋体5下面周縁部が流入管2の上端面に接し且つ蓋体5外周面がフランジ3に内接するように蓋体5を配置したうえ、容器頭部4に対して固着する。
【0007】
このようにして製造されたガラス固化体は、崩壊熱が取り除かれるまで廃棄物保管施設に保管される。
【0008】
固化体容器に充填したガラスの組成は、溶融炉に供給される廃液の分析結果、及びガラス原料の量を把握することにより算定できるが、将来、実際に製造したガラスの組成分析や浸出試験を行うためには、ガラス固化処理時にサンプルを確保しておく必要がある。
【0009】
ガラス固化処理に際してサンプルを得るための装置としては、固化体容器の溶融ガラス流入口に、入れ子関係の筒状外側部材と筒状内側部材とを設けて、溶融ガラスを筒状内側部材で受けるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−264417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
組成分析や浸出試験を行うときには、少量(2g程度)のガラスを粉末状にして用いることになるが、特許文献1のものは、筒状内側部材に溜まって固化したガラスを少量だけ取り出すことは困難である。
【0011】
本発明は、液状物が固化したサンプルを少量だけ取り分けられるサンプリング容器及びその使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、第1のカップと、当該第1のカップ内に組み入れ可能で、しかも組み入れ時に外周面が第1のカップの内周面に対して間隙を隔て得る第2のカップとを備え、当該第2のカップに、その内部に注いだ液状物を外周面へと滴らせるための導液路を形作ってある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、第2のカップに形作った導液路を、第2のカップの上縁から下方へ切り込んだスリットとしてある。
【0014】
請求項3に記載の発明は、第1のカップ内に第2のカップを組み入れ、溶融ガラスを第2のカップに注いで、少量の溶融ガラスを導液路から第2のカップ外周面へと滴らせ、この滴った溶融ガラスを自然に固化させてガラス薄片を形成した後、第1のカップ内の第2のカップを取り出し、前記ガラス薄片を第2のカップ外周面から剥離させて分析試料に使う。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサンプリング容器及びその使用方法によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0016】
(1)第2のカップに注いだ液状物がその液面上昇に伴い、導液路を経て第2のカップ外周面へと滴るので、これを少量のサンプルとして得ることができ、また、もしも誤操作によって液状物が第2のカップから溢れ出したとしても、第1のカップで液状物の流出を阻止できる。
【0017】
(2)導液路をスリットとした場合、液状物を第2のカップ外周面へと確実に滴らせることができる。
【0018】
(3)溶融ガラスを導液路から第2のカップ外周面へと滴った溶融ガラスを固化させてガラス薄片を形成した後、第1のカップ内の第2のカップを取り出すことにより、任意のときに、前記ガラス薄片を第2のカップ外周面から剥離させて分析試料に使える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1〜図5は本発明のサンプリング容器の一例であって、ハンドリング用のツール6で支持される第1のカップ7と、当該第1のカップ7内に組み入れ可能な第2のカップ8とを備えている。
【0021】
ツール6は、略水平に延び、マニピュレータ(図示せず)により遠隔操作される支持部9と、当該支持部9の先端から上方へ略垂直に突出する係合部10とを有している。
【0022】
第1のカップ7は、平面視が円形で、しかも底面がツール6の支持部9に載る底板11と、当該底板11の外縁全周に連なって上方へ延びる筒状の側板12とを有している。
【0023】
側板12の上縁は、目視や撮像手段を用いたカップ内部の視認性などの点を考慮して、底板11に対して全体的に傾斜させてある。
【0024】
側板12の最高位部分の下方になる底板11外縁近傍個所には、ツール6の係合部10が差し込まれる開口13が穿設してある。
【0025】
底板11上面の開口13の周囲から側板12の最高部位までの間には、開口13に差し込んだツール6の係合部10を全体的に覆うカバー14が設けてある。
【0026】
つまり、底板11の開口13の係合部10を差し込み、第1のカップ7の差し渡し方向に支持部9が位置するように、当該支持部9に底板11を載せて、マニピュレータにより第1のカップ7を遠隔操作する。
【0027】
第2のカップ8は、平面視が略四角形(四隅に面取りを施した正方形)で、しかも底面が前記第1のカップ7の底板11に載る底板15と、当該底板15の各辺に連なって上方へ略垂直に延びる型枠状の側板16とを有しており、第1のカップ7内に第2のカップ8を組み入れると、第2のカップ8の側板16外周面が、第1のカップ7の側板12内周面に対して間隙を隔てる。
【0028】
第2のカップ8の各側板16には、その上縁から下方へ延びるスリット17が形作ってある。
【0029】
スリット17は、第2のカップ8の内部に注いだ溶融ガラスGを、側板16外周面へと滴らせる導液路としての役割を果たす。
【0030】
このため、スリット17の下端は、側板16の内周面から外周面に向けて急な下り傾斜を呈するようにしてある。
【0031】
次に、サンプリング容器の使用方法について述べる。
【0032】
まず、第1のカップ7内に第2のカップ8を組み入れ、溶融ガラスGを第2のカップ8に慎重に注いで、少量の溶融ガラスGをスリット17から側板16外周面へと滴らせる。
【0033】
このとき、誤操作により溶融ガラスGが第2のカップ8から溢れ出したとしても、第1のカップ7で溶融ガラスGの流出を阻止できる。
【0034】
側板16に滴った溶融ガラスGが自然に固化してガラス薄片Sを形成したならば、第1のカップ7内の第2のカップ8を取り出し、放射線管理区域内に保管しておく。
【0035】
すなわち、ガラス薄片Sが少量だけ選択的に取り分けるサンプルとなる。
【0036】
この後、ガラス薄片Sをスクレーパなどの簡易な工具により第2のカップ8の側板16外周面から剥離させれば、当該ガラス薄片Sを分析試料に使うことができる。
【0037】
更に、第1のカップ7に新たに未使用の第2のカップ8を組み入れ、第1のカップ7は再使用して次回のサンプル採集を行う。
【0038】
なお、本発明のサンプリング容器及びその使用方法は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のサンプリング容器及びその使用方法は、溶融ガラス以外の様々な液状物からのサンプル採集にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のサンプリング容器の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1に関連する第1のカップの斜視図である。
【図4】図1に関連する第2のカップの斜視図である
【図5】図4の第2のカップに溶融ガラスを注いだ後の状態を示す斜視図である。
【図6】ガラス固化体容器の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
7 第1のカップ
8 第2のカップ
17 スリット(導液路)
G 溶融ガラス(液状物)
S ガラス薄片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカップと、当該第1のカップ内に組み入れ可能で、しかも組み入れ時に外周面が第1のカップの内周面に対して間隙を隔て得る第2のカップとを備え、当該第2のカップに、その内部に注いだ液状物を外周面へと滴らせるための導液路を形作ったことを特徴とするサンプリング容器。
【請求項2】
第2のカップに形作った導液路が、第2のカップの上縁から下方へ切り込んだスリットである請求項1に記載のサンプリング容器。
【請求項3】
第1のカップ内に第2のカップを組み入れ、溶融ガラスを第2のカップに注いで、少量の溶融ガラスを導液路から第2のカップ外周面へと滴らせ、この滴った溶融ガラスを自然に固化させてガラス薄片を形成した後、第1のカップ内の第2のカップを取り出し、前記ガラス薄片を第2のカップ外周面から剥離させて分析試料に使うことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれかに記載のサンプリング容器の使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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