説明

サンプリング容器用蓋、サンプリング容器、及び、その殺菌方法

【課題】容器内への微生物等の異物混入を確実に防止できる液体サンプリングを可能とするサンプリング容器用蓋を提供する。
【解決手段】サンプリング容器20は、サンプリング容器本体21と、サンプリング容器本体21の内部を密閉する蓋型密閉部31とを備える。蓋型密閉部31は、サンプリング容器本体21の開口部22を閉塞するための蓋型密閉部31と、蓋型密閉部31に取り付けられる弁機構部40と、弁機構部40の一端に取り付けられた筒状部材50とを備える。弁機構部40は、略直方体形状の弁基部41と、蓋型密閉部31により開口されてサンプリング容器本体21内に連通する孔32aに挿入されるポート部42aと、蓋型密閉部31をサンプリング容器本体21に取り付けた際に蓋型密閉部31及びサンプリング容器本体21の外部に配置されるポート部42b・42cと、切替部43とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体をサンプリングするために用いられ、サンプリングされる液体(サンプリング液体)を容器内に導入するための配管が接続されるサンプリング容器用蓋、及び、それを備えるサンプリング容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体サンプルを抽出するサンプリング装置として、回転テーブル上にサンプリング容器を同心円状に配置して、各サンプリング容器にサンプリング液体を自動的に注入し、注入後のサンプリング容器を保管するサンプリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示されるサンプリング装置では、サンプリング容器の上部に配置されサンプリング液体を外部から受け入れるためのロートと、サンプリング液体のオーバーフロー配管と、ロート及びオーバーフロー配管が差し込まれた蓋とを有するサンプリング容器が用いられることとしている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるような従来のサンプリング容器では、サンプリング容器を回転テーブル上にそのまま保管しておくと、容器内にごみや結露水といった目に見える異物や、細菌といった目に見えない異物が入り込むことが懸念される。これに対処するべく、サンプリング終了時に自動的にサンプリング容器に蓋をする機構を採用することが考えられるが、この機構を別途設ける必要があり、装置構成が複雑になるという問題がある。
【0005】
また、ビール等の発酵液体をサンプリングする場合では、特に、微量の微生物(菌類を含む)の混入によってもサンプリング液体の成分や特性が変化するため、サンプリング容器内への異物等の混入を防止する必要性が高くなる。また、サンプリング液体を容器内に導入する経路を構成する一次側配管においては、サンプリングの前段階において、配管内をサンプリング液体にて洗浄し、経路内をサンプリング液体にて定常化させる必要がある。
【0006】
上記のような問題を解決するべく、サンプリング液体にて一次側配管内を洗浄した後、洗浄された一次側配管をサンプリング容器の蓋に設けられた孔に挿入し、サンプリング液体を容器内に収容する方法が考えられる。
【0007】
しかし、上記方法においては、一次側配管を洗浄後、前記蓋の孔に挿入するまでの過程において、一次側配管の開口部や、前記孔の開口部から微生物等が混入する可能性がある。また、前記孔の内径を一次側配管の外径以下に構成すること等によりサンプリング時の密閉性を保つことが図られるが、この構成では、当該孔への一次側配管挿入作業が困難となる可能性がある。また、微生物等の混入を避けるために、作業者は急いで一次側配管を前記孔に挿入するものと考えられ、落ち着いて作業できないといった可能性がある。
【特許文献1】特開平08−43274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑み、容器内への微生物等の異物混入を確実に防止できる液体サンプリングを可能とするサンプリング容器用蓋、及び、それを備えるサンプリング容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1に記載のごとく、
サンプリング容器本体に取り付けられるサンプリング容器用蓋であって、
前記サンプリング容器本体の開口部を閉塞するための蓋型密閉部と、
前記蓋型密閉部に取り付けられる弁機構部とを備え、
前記弁機構部は、
前記蓋型密閉部に開口されて前記サンプリング容器本体内に連通する孔に挿入される第一のポート部と、
前記蓋型密閉部を前記サンプリング容器本体に取り付けた際に前記蓋型密閉部及び前記サンプリング容器本体の外部に配置される第二、第三のポート部と、
前記第一と第二のポート部を連通させる第一の連通状態と、前記第二と第三のポート部を連通させる第二の連通状態とを、択一的に切り替えるための切替部と、を具備する構成とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載のごとく、
前記蓋型密閉部の前記孔に挿入された第一のポート部を、前記孔の内径よりも大きな外形を有し、前記第一のポート部に対して着脱自在に構成される筒状部材にて包囲することにより、前記弁機構部を前記蓋型密閉部に対して固定する、こととするものである。
【0012】
また、請求項3に記載のごとく、
前記蓋型密閉部、及び、前記筒状部材は、透明の部材にて構成されることとするものである。
【0013】
また、請求項4に記載のごとく、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサプリング容器用蓋と、
前記サプリング容器用蓋が取り付けられ、サンプリング液体を収容するサンプリング容器本体と、を具備し、
前記サンプリング容器本体は、透明の部材にて構成されることとするものである。
【0014】
また、請求項5に記載のごとく、
サンプリング液体を収容するサンプリング容器本体と、
前記サンプリング容器本体の開口部を閉塞するための蓋型密閉部、及び、前記蓋型密閉部に取り付けられる弁機構部と、を備えるサンプリング容器用蓋と、
を備えてなるサンプリング容器の殺菌方法であって、
前記サンプリング容器用蓋について、前記蓋型密閉部と前記弁機構部を分解した状態で洗浄し、乾燥するステップと、
前記サンプリング容器本体を洗浄し、乾燥するステップと、
前記蓋型密閉部と前記弁機構部を一体として前記サンプリング容器用蓋を組み立てるとともに、組み立てた前記サンプリング容器用蓋を前記サンプリング容器本体に取り付けることで、サンプリング容器を完成するステップと、
完成したサンプリング容器を殺菌処理装置にて殺菌処理するステップと、
を含むこととするものである。
【0015】
また、請求項6に記載のごとく、
前記蓋型密閉部、及び、前記サンプリング容器本体は、透明の部材にて構成される、
こととするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
即ち、請求項1に記載の発明においては、第一の連通状態にてサンプリング液体をサンプリング容器内に収容する前に、第二の連通状態とし、サンプリング液体による一次側配管、及び、第二のポート部を洗浄できるため、これらの内部に存在する可能性のある異物のサンプリング容器内への混入を防止できることになる。また、前記一次側配管を接続してサンプリング液体の流れる経路の気密状態を保った後、切替操作によってサンプリング液体の収容が可能となるため、経路内への外部空気の侵入に伴う微生物等(菌類等)の混入といった不具合も防止できる。さらに、弁機構部がサンプリング容器の近傍に配置されるので、サンプリング液体を弁機構部を通過した直後にサンプリング容器内へ導入することができ、前記弁機構部からサンプリング容器までの間における微生物等の混入の確率を低減することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明においては、サンプリング容内の密閉状態を維持することができる。また、筒状部材が着脱自在に構成されるので、切替部の操作等によって第一のポート部と蓋型密閉部との間に荷重が作用する場合であっても、両者間の荷重の集中を分散することができ、破損の防止を図ることが可能となる。また、筒状部材を蓋型密閉部と別体にすることにより、サンプリング容器用蓋を弁機構部、蓋型密閉部及び筒状部材に分解した状態での洗浄処理等が可能となり、サンプリング容器用蓋の各構成部材の殺菌性を確保することが可能となる。さらに、各構成部材が損傷等した場合には、適宜交換することが可能となり、コスト的にも有利な構造となる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明においては、紫外線を照射することにより、蓋型密閉部及び筒状部材の外面のみならず内面を容易に殺菌することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明においては、上記のサプリング容器用蓋の適用により、菌類等の混入を防いだ液体サンプリングが可能となる。また、サンプリング容器本体は透明の部材にて構成されるので、紫外線を容器の外部から照射することにより、サンプリング容器本体の外面のみならず内面を殺菌することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明においては、殺菌処理後の組立作業が発生せず、該組立作業に伴う微生物等の付着の不具合も発生しないことから、サンプリング容器の利用時において、その殺菌状態を維持したままの利用が可能となる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明においては、組み立てた状態における紫外線殺菌が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
一実施形態として、
サンプリング容器本体に取り付けられるサンプリング容器用蓋であって、
前記サンプリング容器本体の開口部を閉塞するための蓋型密閉部と、
前記蓋型密閉部に取り付けられる弁機構部とを備え、
前記弁機構部は、
前記蓋型密閉部に開口されて前記サンプリング容器本体内に連通する孔に挿入される第一のポート部と、
前記蓋型密閉部を前記サンプリング容器本体に取り付けた際に前記蓋型密閉部及び前記サンプリング容器本体の外部に配置される第二、第三のポート部と、
前記第一と第二のポート部を連通させる第一の連通状態と、前記第二と第三のポート部を連通させる第二の連通状態とを、択一的に切り替えるための切替部と、を具備する構成とする、サンプリング容器用蓋とするものである。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るサンプリング容器20を設置したサンプリング装置1の構成を概略的に示す外観図である。
【0025】
図1に示すごとく、サンプリング装置1は、サプリングの対象となる液体を樽容器10a内に収容する装置本体10を備えている。また、前記装置本体10の正面下部には、サンプリング容器20・20・・・を収容するための収容部11が設けられている。また、前記収容部11の上方には、前記樽容器10aからサンプリング液体を送出するための複数の液体送出部12・12・・・が設けられており、各液体送出部12・12・・・から各サンプリング容器20・20・・・へと、サンプリング液体を個別に供給できることとしている。また、装置本体10の正面上部には、サンプリング装置1の運転状況を表示等する表示部13が設けられている。また、前記表示部13の下方には、各種操作を実行するための操作部14・14・・・が設けられている。
【0026】
また、図1に示すごとく、各サンプリング容器20・20・・・には、前記各液体送出部12・12・・・と接続され、サンプリング液体を容器内に導入するための一次側配管3・3・・・が接続される。また、各サンプリング容器20・20・・・には、二次側配管4・4・・・が接続され、後述する洗浄時において、前記一次側配管3・3・・・から導入されるサンプリング液体を、各サンプリング容器に収容せずにそのまま外部へ排出できるようにしている。
【0027】
そして、以上のように構成し、図1に示すごとく、前記操作部14・14・・・、及び、液体送出部12・12・・・の操作によって、サンプリング液体を自動的に各サンプリング容器20へと送出できるようになっている。このサンプリング装置1は、飲料用液体の製造工程、例えば、ビールの製造工程において、製造ライン中のビールを前記樽容器10a内に取り込み、定期的にサンプリングを実行するとき等に用いられる。
【0028】
図2は、図1におけるサンプリング容器20の構成を示す外観図である。
このサンプリング容器20は、上部に開口部22が形成され、該開口部22から導入されるサンプリング液体を収容するためのサンプリング容器本体21を備えている。このサンプリング容器本体21は、例えば、半透明の樹脂製部材であり、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)から成型されることができる。また、これにより、収容したサンプリング液体を外部から視認できるようになっている。そして、前記開口部22には、サプリング容器用蓋30の蓋型密閉部31が着脱可能に固定され、これにより、サンプリング容器本体21内が密閉される構成とし、この密閉された空間内にサンプリング液体を収容する構成としている。
【0029】
また、図3に示すごとく、前記サンプリング容器本体21の開口部22の外周面には雄螺子部22aが形設され、前記蓋型密閉部31の内周面には雌螺子部31aが形成されている。これにより、両螺子部を螺合させることで、前記蓋型密閉部31にて前記開口部22が包囲され、サンプリング容器本体21の内部が密閉状態に保たれるようになっている。
【0030】
また、図3及び図4に示すごとく、前記サプリング容器用蓋30は、サンプリング容器本体21の開口部22を閉塞するための蓋型密閉部31と、蓋型密閉部31に取り付けられる弁機構部40と、該弁機構部40の第一のポート部42aに取り付けられる筒状部材50とを備えている。
【0031】
また、図4に示すごとく、前記蓋型密閉部31は、弁機構部40を載置するための上面部32と、上面部32の周縁において下方に突出する外周部33を有している。前記上面部32には、前記弁機構部40の第一のポート部42a及び筒状部材50が挿入される孔32aが上下方向に貫通して設けられている。該孔32aは、上面部32のほぼ中央に形成されて、上下方向の幅をもった円環面32bを構成しており、その内径は、前記第一のポート部42aの外径に合わせて適宜設計され、例えば、12mmとされる。また、前記外周部33の内周面には雌螺子部31aが形成されており、雌螺子部31aがサンプリング容器本体21の雄螺子部22a(図3参照)と螺合するようになっている。また、このように構成される蓋型密閉部31は、例えば、半透明の樹脂製部材であり、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)から成型されることができる。
【0032】
また、図3及び図4に示すごとく、弁機構部40は、略直方体形状の弁基部41と、前記蓋型密閉部31に開口されてサンプリング容器本体21内に連通する孔32aに挿入される第一のポート部42aと、蓋型密閉部31をサンプリング容器本体21に取り付けた際に、蓋型密閉部31及びサンプリング容器本体21の外部に配置される第二、第三のポート部42b・42cと、前記第一のポート部42aと第二のポート部42bを連通させる第一の連通状態と、前記第二のポート部42bと第三のポート部42cを連通させる第二の連通状態とを、択一的に切り替えるための切替部43とを具備している。また、このように構成される弁機構部40は、例えば、白色の樹脂製部材であり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から成型されることができる。
【0033】
また、図3及び図4に示すごとく、第一のポート部42aは、弁基部41の下面に設けられ、下方に向けて突設されている。また、第一のポート部42aは、その外周面に複数の管状突条部45aを有する筒状部材(竹の子型の外観)に構成され、前記孔32aを介して蓋型密閉部31を貫通し、且つ、サンプリング容器本体21の開口部22に向かって延出するように設けられる。また、第二のポート部42bは、弁基部41の上面に設けられ、上方に向けて突設されている。また、第二のポート部42bは、その外周面に複数の管状突条部45bを有する筒状部材に構成されている。また、第三のポート部42cは、弁基部41の側面に設けられ、側方に向けて突設されている。また、第三のポート部42cは、その外周面に複数の管状突条部45cを有する筒状部材に構成されている。前記各ポート部42a・42b・42cは、例えば、それぞれ外径8.0mm、オリフィス径3.0mm、長さ25mmに設計されることができる。
【0034】
また、図3及び図4に示すごとく、前記弁基部41には、紙面奥行き方向に貫通孔44が設けられ、該貫通孔44に円柱形状の切替部43が回転自在に挿入される。また、図2に示すごとく、前記切替部43の軸方向の一側端部43aは、弁基部41の外部に配置されており、該一側端部43aには作業者が指で操作をするための棒状の操作部43bが半径方向に突設されている。
【0035】
また、図3に示すごとく、前記切替部43には、その回転方向において90度位置をずらした位置に両端の開口部を有し、前記第二・第三のポート部42b・42c内の流路46b・46cを連通するための、略L字状の連通路47aが形成されることとしている。また、図4に示すごとく、前記切替部43には、その軸心に直交し、第一・第二のポート部42a・42b内の流路46a・46bを連通させるための連通路47bが形成されることとしている。本実施例では、略T字型の流路を形成することにより、前記連絡路47a・47bが、それぞれ、切替部43の回転位置に応じて各流路を開通又は閉鎖する構成としている。尚、各連絡路47a・47bを切替部43の軸方向に位置をずらして配置することとしてもよい。
【0036】
以上のように弁機構部40を構成し、まず、図3に示すごとく、前記操作部43bが前記第三のポート部42cと平行になるように操作されると、前記第二、第三のポート部42b・42c内の流路46b・46cが連通路47aを介して開通される。また、図4に示すごとく、前記操作部43bが第二のポート部42bと平行となるように操作されると、前記第一、第二のポート部42a・42b内の流路46a・46bが連通路47bを介して開通される。以上のように、前記操作部43bの操作によって、各ポート部間の連通状態を切り替えることができ、該操作部43bが流体の流れを制御するコックとして機能するようになっている。
【0037】
また、図3及び図4に示すごとく、前記第一のポート部42aは、筒状部材50に挿入されることとしている。該筒状部材50は、例えば、外径12mm、内径7.0mm、長さ30mmに設計されるシリコン樹脂から構成されることができる。また、図4に示すごとく、この筒状部材50に前記第一のポート部42aを挿入した状態で、前記蓋型密閉部31の孔32aに挿入されることとしている。この挿入時には、筒状部材50を弾性変形させることで前記孔32aよりも外径を小さくすることで挿入が可能となる。そして、挿入が完了した際には、筒状部材50が弾性復帰し、図3に示すごとく、筒状部材50の上端部50aの外周面が孔32aの円環面32bに対して圧接されることとしている。そして、このように構成することで、第一のポート部42bが、筒状部材50を介して蓋型密閉部31に支持固定されるようになっている。
【0038】
尚、図5に示すごとく、蓋型密閉部31Aの孔32Aを前記第一のポート部42aの外径と略同一とし、前記筒状部材50の上端面50bを前記孔32Aの周囲の下面31bに当着させることで、弁機構部40を蓋型密閉部31Aに固定する形態としてもよい。この場合は、第一のポート部42aを孔32Aに挿入後に、筒状部材50を図において下側から移動して第一のポート部42aを覆うようにすることで、固定が完了される。
【0039】
また、以上のように、弁機構部40、蓋型密閉部31、及び、筒状部材50は別体であるので、図6の左上に示すごとく、分解して効果的な洗浄を行うことができる。
【0040】
また、図6に示すごとく、以上のような洗浄を行って各部材を乾燥させた後、サプリング容器用蓋30(蓋型密閉部31、弁機構部40、筒状部材50)を組み立てるとともに、組み立てたサプリング容器用蓋30をサンプリング容器本体21に対し固定し、サンプリング容器20を完成する。そして、完成したサンプリング容器20を殺菌処理装置60内に収容し、例えば、175℃で約100分間の乾熱滅菌(殺菌処理)を施すことができる。尚、洗浄後に各部材を乾燥させた後に組み立てを行うのは、内部の水滴等の残留による不具合発生を防止するためである。
【0041】
そして、このように殺菌処理したサンプリング容器20を殺菌処理装置60内に保管しておくことによれば、必要に応じて、殺菌処理装置60から取出して利用することができる。そして、この手順によれば、殺菌処理後の組立作業が発生せず、該組立作業に伴う微生物等の付着の不具合も発生しないことから、サンプリング容器20の利用時において、その殺菌状態を維持したままの利用が可能となる。
【0042】
次に、上記のように構成されるサンプリング装置1を用いたサンプリング方法について説明する。
図1に示すごとく、適切な殺菌処理を施したサンプリング容器20をサンプリング装置1の収容部11に設置する。そして、図3に示すごとく、第二のポート部42bに対して一次側配管3を接続し、前記液体送出部12(図1参照)と第二のポート部42bを連通させる。また、第三のポート部42cに対して二次側配管4を接続する。尚、この接続の操作時においては、各配管3・4の先端近傍、及び、各ポート部42b・42cをアルコール消毒することとし、各接続部の殺菌性を確保することが好適である。
【0043】
次に、図3に示すごとく、操作部43bをポート部42cの長手方向に対して略平行に位置させ、第二のポート部42bと第三のポート部42cとを連通路47aを介して連通させた状態(第二の連通状態)にする。この状態で、図1に示すごとく、液体送出部12から被サンプリング溶液をサンプリング容器20へ送ると、被サンプリング溶液はサンプリング容器本体21に導入されず、一次側配管3から弁機構部40を介して二次側配管4に排出される。これにより、一次側配管3の内部が洗浄されると共に、弁機構部40の内部の連通路47a(図3)・47b(図4)が洗浄される。
【0044】
以上のようにして被サンプリング溶液にて弁機構部40の内部を所定時間洗浄した後、図4に示すごとく、操作部43bを第二のポート部42bの長手方向に対して略平行に位置させ、第一のポート部42aと第二のポート部42bを連通路47bを介して連通させた状態(第一の連通状態)に切り替える。これにより、被サンプリング溶液が一次側配管3から弁機構部40を介してサンプリング容器本体21の内部に導入される。このようにして、サンプリング溶液をサンプリング容器20に収容することができる。
【0045】
以上のように、本実施では、サンプリング液体をサンプリング容器内に収容する前に、サンプリング液体を用いて第二のポート部42bに接続される一次側配管3を洗浄することができるため、内部に存在する可能性のある異物のサンプリング容器20内への混入を防止することが可能となる。また、前記一次側配管3を接続してサンプリング液体の流れる経路の気密状態を保った後、切替操作によってサンプリング液体の収容が可能となるため、経路内への外部空気の侵入に伴う微生物等の混入といった不具合も防止できる。さらに、弁機構部40がサンプリング容器20の近傍に配置されるので、サンプリング液体を弁機構部40を通過した直後にサンプリング容器20内へ導入することができ、前記弁機構部40からサンプリング容器20までの間における微生物等の混入の確率を低減することができる。
【0046】
また、図4に示すごとく、第一のポート部42aが挿入される蓋型密閉部31の孔32aの内径よりも大きい外径を有する筒状部材50にて第一のポート部42aを包囲し、ポート部42a及び筒状部材50を孔32aに挿入することで、弁機構部40が蓋型密閉部31に対して固定されるので、サンプリング容器20内の密閉状態を維持することができる。また、筒状部材50が着脱自在に構成されるので、切替部43の操作等によって第一のポート部42aと蓋型密閉部31との間に荷重が作用する場合であっても、両者間の荷重の集中を分散することができ、破損の防止を図ることが可能となる。また、筒状部材50を蓋型密閉部31と別体にすることにより、蓋型密閉部31を弁機構部40、蓋型密閉部31及び筒状部材50に分解した状態での洗浄処理等が可能となり、サプリング容器用蓋30の各構成部材の殺菌性を確保することが可能となる。さらに、各構成部材が損傷等した場合には、適宜交換することが可能となり、コスト的にも有利な構造となる。
【0047】
さらに、図3に示すごとく、蓋型密閉部31、筒状部材50、及び、サンプリング容器本体21が透明の部材にて構成され、紫外線の透過性を有することとするので、紫外線UVを照射することにより、蓋型密閉部31及び筒状部材50の外面のみならず内面を容易に殺菌することができる。また、蓋型密閉部31を組み立てた状態(アッセンブリ)で紫外線殺菌処理等を施すことができるので、サンプリング後、図6に示すごとく、各構成部材を洗浄、組立てた後に、蓋型密閉部31をサンプリング容器本体21に取り付けた状態で殺菌処理装置60内で処理・保管しておくことにより、次回のサンプリング時における利用の際には、サンプリング容器20を殺菌処理装置60から取り出して速やかに使用することができ、作業時間を短縮することができる。
【0048】
また、図6に示すごとく、本実施例では、サンプリング液体を収容するサンプリング容器本体21と、前記サンプリング容器本体21の開口部を閉塞するための蓋型密閉部31、及び、前記蓋型密閉部31に取り付けられる弁機構部40と、をを備えるサンプリング容器用蓋30と、備えてなるサンプリング容器20の殺菌方法であって、前記サンプリング容器用蓋30について、前記蓋型密閉部31と前記弁機構部40を分解した状態で洗浄し、乾燥するステップと、前記サンプリング容器本体21を洗浄し、乾燥するステップと、前記蓋型密閉部31と前記弁機構部40を一体として前記サンプリング容器用蓋30を組み立てるとともに、組み立てた前記サンプリング容器用蓋30を前記サンプリング容器本体21に取り付けることで、サンプリング容器20を完成するステップと、完成したサンプリング容器20を殺菌処理装置60にて殺菌処理するステップと、を含むこととするものである。また、前記蓋型密閉部31、及び、前記サンプリング容器本体21は、透明の部材にて構成される、こととするものである。
【0049】
これにより、殺菌処理後の組立作業が発生せず、該組立作業に伴う微生物等の付着の不具合も発生しないことから、サンプリング容器の利用時において、その殺菌状態を維持したままの利用が可能となる。
【0050】
なお、以上の実施例では、蓋型密閉部31は半透明の樹脂製部材であるが、これに限るものではなく、殺菌性(紫外線透過性等)及び耐熱性が保証されるのであれば、無色透明、有色半透明等の樹脂製部材であってもよい。また、蓋型密閉部31はPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)より構成することとしたが、これに限るものではなく、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)から成る群から選択された材料であってもよい。また、該蓋型密閉部31は、前記操作部43bの操作の際において、前記弁機構部40をしっかりと支えて、良好な操作性を保証すべく、適度な剛性を呈することが望ましい。また、蓋型密閉部31は、乾熱殺菌処理の温度以上の融点、即ち、175℃以上の融点を有するフッ化エチレン樹脂から成るものであってもよい。
【0051】
また、以上の実施例では、弁機構部40は、白色の樹脂製部材であるが、これに限るものではなく、耐熱性が保証されるのであれば、有色半透明の樹脂製部材であってもよい。また、弁機構部40はPTFEから構成されるが、これに限るものではなく、PFA、FEP、ETFE、PCTFEから成る群から選択された材料であってもよい。また、弁機構部40は、乾熱殺菌処理の温度以上の融点、即ち、175℃以上の融点を有するフッ化エチレン樹脂から成るものであってもよい。
【0052】
また、以上の実施例では、前記筒状部材50は一般的な白濁色のシリコン樹脂から構成されるが、これに限るものではなく、殺菌性(紫外線透過性等)及び耐熱性、さらには、適切な弾性が保証されるのであれば、無色透明、有色半透明等の材料から構成されるものであってもよい。
【0053】
また、以上の実施例では、サンプリング容器本体21は透明の樹脂製部材であるが、これに限るものではなく、殺菌性(紫外線透過性等)及び耐熱性が保証されるのであれば、無色透明、有色半透明等の樹脂製部材であってもよい。また、サンプリング容器本体21は、PFA、FEP、ETFE、PTFE、PCTFEから成る群から選択された材料であってもよい。また、サンプリング容器本体21は、乾熱殺菌処理の温度以上の融点、即ち、175℃以上の融点を有するフッ化エチレン樹脂から成るものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係るサンプリング容器を備えるサンプリング装置の構成を概略的に示す外観図。
【図2】図1におけるサンプリング容器の構成を示す外観図。
【図3】蓋型密閉部の構成を示す断面図。
【図4】蓋型密閉部の各構成部材を示す分解した状態を示す断面図。
【図5】弁機構部の筒状部材による固定方法の別の構成例を示す断面図。
【図6】サンプリング容器の分解、洗浄、殺菌等の流れについて説明する図。
【符号の説明】
【0055】
1 サンプリング装置
3 一次側配管
4 二次側配管
20 サンプリング容器
21 サンプリング容器本体
30 サプリング容器用蓋
31 蓋型密閉部
40 弁機構部
41 弁基部
42a 第一のポート部
42b 第二のポート部
42c 第三のポート部
43 切替部
50 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング容器本体に取り付けられるサンプリング容器用蓋であって、
前記サンプリング容器本体の開口部を閉塞するための蓋型密閉部と、
前記蓋型密閉部に取り付けられる弁機構部とを備え、
前記弁機構部は、
前記蓋型密閉部に開口されて前記サンプリング容器本体内に連通する孔に挿入される第一のポート部と、
前記蓋型密閉部を前記サンプリング容器本体に取り付けた際に前記蓋型密閉部及び前記サンプリング容器本体の外部に配置される第二、第三のポート部と、
前記第一と第二のポート部を連通させる第一の連通状態と、前記第二と第三のポート部を連通させる第二の連通状態とを、択一的に切り替えるための切替部と、
を具備することを特徴とするサンプリング容器用蓋。
【請求項2】
前記蓋型密閉部の前記孔に挿入された第一のポート部を、
前記孔の内径よりも大きな外径を有し、前記第一のポート部に対して着脱自在に構成される筒状部材にて包囲することにより、
前記弁機構部を前記筒状部材によって前記蓋型密閉部に対して固定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング容器用蓋。
【請求項3】
前記蓋型密閉部、及び、前記筒状部材は、透明の部材にて構成される、
ことを特徴とする、請求項2に記載のサンプリング容器用蓋。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサプリング容器用蓋と、
前記サプリング容器用蓋が取り付けられ、サンプリング液体を収容するサンプリング容器本体と、を具備し、
前記サンプリング容器本体は、透明の部材にて構成される、
ことを特徴とするサンプリング容器。
【請求項5】
サンプリング液体を収容するサンプリング容器本体と、
前記サンプリング容器本体の開口部を閉塞するための蓋型密閉部、及び、前記蓋型密閉部に取り付けられる弁機構部を備えるサンプリング容器用蓋と、
を備えてなるサンプリング容器の殺菌方法であって、
前記サンプリング容器用蓋について、前記蓋型密閉部と前記弁機構部を分解した状態で洗浄し、乾燥するステップと、
前記サンプリング容器本体を洗浄し、乾燥するステップと、
前記蓋型密閉部と前記弁機構部を一体として前記サンプリング容器用蓋を組み立てるとともに、組み立てた前記サンプリング容器用蓋を前記サンプリング容器本体に取り付けることで、サンプリング容器を完成するステップと、
完成したサンプリング容器を殺菌処理装置にて殺菌処理するステップと、
を含む、サンプリング容器の殺菌方法。
【請求項6】
前記蓋型密閉部、及び、前記サンプリング容器本体は、透明の部材にて構成される、
ことを特徴とする、請求項5に記載のサンプリング容器の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−31231(P2009−31231A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198195(P2007−198195)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】