説明

サンプリング容器

【課題】包装材料中の残留溶剤測定において、サンプリング容器より発生ガスのリークを低減させ、蓋と容器本体の嵌合具合に個人差の影響が出ず再現性の良い測定結果が得られ、且つサンプルの出し入れが容易となるサンプリング容器を提供する。
【解決手段】従来のサンプリング容器形態を変更し、発生ガスのリークを低減するため、シリコン製セプタム5付きガラス製蓋7とガラス製容器本体15の接合部にすりガラス9を用い、さらに蓋と容器本体の突起物13部分3箇所を金属バネ11で固定し、さらに本件容器の蓋部分の外径寸法と容器底部寸法が近似する円柱状とし、サンプルの出し入れを容易とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング容器を用いたヘッドスペースガス分析法(HS−GC/MS)において、サンプリング容器中で発生した測定に供するガスのリークを低減し、個人差の影響を受けず精度の良い測定結果が得られるサンプリング容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に食品の包装材料や容器については、その製造過程の印刷や接着などの工程で有機溶剤が使用されるため、残留有機溶剤の品質管理がグラビア印刷業界にもとめられており、特に残留溶剤による臭気トラブル等を避けるため、例えば被印刷体中に溶剤がどの程度残留しているかを把握する必要がある。
【0003】
包装材料中や被印刷体中の残留溶剤測定には、サンプリング容器に包装材料あるいは標準溶液(STD)を添加した後、オーブン内で加熱し発生したヘッドスペース(HS:上部空間)ガスをガスタイトシリンジ(ニードルを有し、発生ガスを吸引したり、注入できる注射筒)で採取したものを、GC(ガスクロマトグラフ)あるいはHS−GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)等により測定する方法がある。この際に、サンプリング容器にリーク等の問題があると測定結果にばらつきが出るだけでなく誤った結果を導くことになる。サンプリング容器としてマヨネーズ瓶を使用する場合、金属蓋とガラス製容器本体の嵌合具合あるいは金属蓋とセプタム(ニードル刺ゴム部)の密着性具合により発生ガスのリークが起こり、包装材料及び標準溶液スタンダード(STD)測定時の再現性に影響するという問題点がある。
【0004】
一方、軟包装衛生協議会(軟衛協)規定の包装材料の残留溶剤測定方法である500ml三角フラスコを用いる場合(特許文献1の第8頁6行目から13行目)、三角フラスコの開口部が小さく包装材料の出し入れが困難であるという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−355915号公報
【特許文献2】特開2002−5913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術においては、試料より発生した揮発ガスを捕集しているサンプリング容器より分析装置に注入する前にリークさせてしまっている問題と、包装体や被印刷体を規定の細片群に裁断した後、サンプリング容器に投入する際と検査終了後に取り出す際の煩雑さ、困難さが伴うという非能率の問題があり、その改良、解決がもとめられていた。
【0007】
本発明は、上記欠点を解決することを目的とする。即ち、本発明は発生ガスのリークを低減することで精度の良い測定結果が得られ、尚且つサンプルの出し入れを容易に行うことができるサンプリング容器を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、ヘッドスペースガス法により分析測定するガス捕集用サンプリング容器であって、前記サンプリング容器の形状を、蓋部分の外径寸法と容器底
部寸法が近似する円柱状としたことである。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、前記サンプリング容器において、蓋部分と容器本体の接合部にすりガラスを用いたサンプリング容器である。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、前記サンプリング容器において、蓋部分と容器本体の突起物部分を金属バネで2箇所以上固定したサンプリング容器である。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、前記サンプリング容器において、その蓋部分にシリンジ貫入が可能なシリコン製セプタムを付けたサンプリング容器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明により三角フラスコ容器に比べ試料の出し入れのハンドリング性が向上し、ヘッドスペース(HS)ガスを採取し分析を容易に能率良く行うことが可能である。
【0013】
請求項2記載の本発明により、蓋と容器本体の密着性を良くし、発生ガスのリークを低減することが可能である。
【0014】
請求項3記載の本発明により、金属バネ使用により蓋と容器本体の密着性をさらに良くし、発生ガスのリークを低減することが可能であり、測定バラツキを減少し、測定精度を安定させることが可能である。
【0015】
請求項4記載の本発明により、シリコン製セプタムは耐熱性が優れており、またセプタムからの汚染(シリンジの先端にあるニードルがセプタムへの貫入の際、セプタムの内壁のゴム成分を削り取って試料ガスとともに分析器内へ移送注入してしまうこと)の影響を低減し、精度の良い分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(A)は、マヨネーズ瓶を用いた現行サンプリング容器の斜視図。図1(B)は、本発明の新サンプリング容器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、サンプリング容器を示したものである。
【0018】
図1(A)は、これまでに用いられてきた現行サンプリング容器を示す図である。
図1(A)に示すように、発生ガスのリークを低減させるため、5mm径のシリコン製セプタム5付き金属蓋1とガラス製容器本体15をネジ式で蓋をする140ml容量のサンプリング容器である。
【0019】
図1(B)は、本発明の新サンプリング容器を示す図である。図1(B)に示すように、発生ガスのリークを低減させるため、5mm径のシリコン製セプタム5付きガラス製蓋7とガラス製容器本体15の接合部にすりガラス9を用い、蓋と容器本体の突起物部分3箇所13を金属バネ11で固定した140ml容量サンプリング容器である。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
残留溶剤6種STD(酢酸エチル(EA),メチルエチルケトン(MEK),イソプロピルアルコール(IPA),酢酸n−プロピル(NPAC),トルエン(TOL),プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))を0.5μl採取した場合の理論値を表1の(表―1)に示す。
【0022】
(1)現行サンプリング容器の場合
金属蓋を締めた現行サンプリング容器(アルミ箔使用なし、表裏シリコンパッキンなし)に、STDを採取したマイクロシリンジを、セプタムを通してサンプリング容器内に打ち込む(マイクロシリンジ針はサンプリング容器内部に接触しない。)繰り返し測定は、n5測定で行った。測定は、2名で各々n5測定した。現行140mlマヨネーズ瓶を用いGC/MS測定した結果を、表1の(表―2),(表―3)に示す。
【実施例2】
【0023】
(2)新サンプリング容器の場合
蓋をして、金属バネで固定した新サンプリング容器に、STDを採取したマイクロシリンジを、セプタムを通しサンプリング容器内に打ち込む(マイクロシリンジ針はサンプリング容器内部に接触しない。)測定は、2名で各々n5測定した。140ml新サンプリング容器を用いGC/MS測定した結果を、表1の(表―4),表2の(表―5)に示す。また、現行サンプリング容器と新サンプリング容器のピーク変動係数比較を表2の(表―6)に示す。
【0024】
結果について、以下に記載する。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
(ピーク面積値に関して)
現行サンプリング容器使用の場合、A氏測定結果よりもB氏測定結果ではピーク面積値が約1割小さいが、新サンプリング容器使用の場合、A氏とB氏でピーク面積値はほぼ一致した。これは、現行サンプリング容器の場合、A氏とB氏で金属蓋の締め具合が異なり、B氏測定では一定量リークするためにピーク面積値が小さいが、新サンプリング容器ではリークがないためと考えられる。
【0028】
(ピーク面積値CV値に関して)
現行サンプリング容器使用の場合よりも新サンプリング容器使用の場合のほうが、溶剤6種平均ピーク面積CVが小さかった(現行サンプリング容器使用 A氏2.14%、B氏6.80%に対し、新サンプリング容器使用 A氏2.28%、B氏2.23%)。現行サンプリング容器では、B氏はピーク面積値CVが6.80%と高い値であったが、新サンプリング容器では、A氏、B氏共にピーク面積CV値が2%台であり、測定精度は良好である。
繰り返し分析精度は、分析を繰り返して求めた変動係数CV%で表す。
変動係数CV=標準偏差S/平均値AV×100
標準偏差S2=Σ(個々の測定値―AV)2/(測定回数―1)
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の新サンプリング容器は、GC,GC/MS等の一定容量ガス採取が必要な分析を行う際に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 金属蓋
5 シリコン製セプタム
7 ガラス製(本体部分と同材質)蓋
9 すりガラス
11 金属バネ
13 突起物
15 ガラス製容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドスペースガス法により分析測定するガス捕集用サンプリング容器であって、その蓋部分の外径寸法と容器底部寸法が近似する円柱状としたことを特徴とするサンプリング容器。
【請求項2】
蓋部分と容器本体の接合部にすりガラスを用いたことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング容器。
【請求項3】
容器本体の外周部に2箇所以上突起物部分が設けられ、蓋部分と容器本体の突起物部分を金属バネで2箇所以上固定したことを特徴とする請求項1または2項に記載のサンプリング容器。
【請求項4】
蓋部分にシリンジ貫入が可能なシリコン製セプタム(ニードル刺ゴム部)を付けたことを特徴とする請求項1から3項のいずれかに記載のサンプリング容器。

【図1】
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