説明

サンプリング装置、方法及びシステム

【課題】微細物体のあらゆるサンプリングを可能としたサンプリング装置、方法及びシステムを提供する。
【解決手段】サンプリング細管7と、該サンプリング細管に連接された捕獲器15と、該捕獲器を通じてサンプリング細管内を真空吸引するポンプ102とを備え、該ポンプの駆動によりサンプリング細管7、あるいは該サンプリング細管に連接された捕獲器15内に、サンプリング対象の細菌類をサンプリング可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気、動植物、土壌、水、海水、極限環境、等々に存在する「微細物体」、例えば、浮遊細胞、酵母、バクテリア(細菌)、カビ胞子、花粉、結晶、金属粒子、原生動物等々のサンプリング装置、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサンプリング方法としては、「セルソーター(Cell-sorter)」システムを用いて、コロニー全体の捕捉後に分離、判断、分配するセパレーター方式(Separating-method)や、コロニー等の凝塊を個体分離させ、判断、個体捕捉、分配するサンプリング方式(Sampling-method)等が知られている。セルソーターの特徴は、非常に高速に大量の細菌を計測できることで、多くの機器が開発・市販化されている。
しかし、この固体捕獲方法は、基本的には、その対象物の特性が予め明確な場合は、非常に効率良く、大量分離が可能で有る反面、捕獲後の処理が膨大となる欠点を有している(例えば、特許文献1参照)。
これに対し、サンプリング方式(Sampling-method)は、解析すべき対象物を、細菌の特徴(相対的大きさ、形状および内部構造の違い、蛍光標識を用いた時の蛍光強度の違い等。)を基準に、操作者の知見や経験に基づいて予め選定できるため、サンプリング後の解析時間の省力化を図れる利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のサンプリング方式は、例えば培養液中のバクテリア(細菌)を捕獲する考え等に立脚しているため、培養液等の液体環境が必須となる欠点を有し、例えば、空気中に存在する「微細物体」等、自然界の暴露環境下にある細菌類を、該暴露環境と一緒に収集して、当該収集物からサンプリングするのが困難であった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、あらゆるサンプリングを可能としたサンプリング装置、方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、サンプリング細管と、該サンプリング細管に連接された捕獲器と、該捕獲器を通じてサンプリング細管内を真空吸引するポンプとを備え、該ポンプの駆動により前記サンプリング細管、あるいは該サンプリング細管に連接された前記捕獲器内に、サンプリング対象の細菌類をサンプリング可能としたことを特徴とする。
前記ポンプは、シリンダーとピストンとを備え、前記ピストンが位置制御及び速度制御されてもよい。
前記ピストンは、「スタート・スイッチ」あるいは、「ストップ・スイッチ」を操作することにより、下死点方向に移動して停止してもよい。
前記ピストンは、ピストン上面が所定の真空度になると停止し、所定の圧力に上昇すると稼動してもよい。
【0006】
前記ピストンは、「リバース・スイッチ」を操作することにより、上死点方向に移動して、前記サンプリング細管内にサンプリングされたサンプリング対象をサンプリング細管の外に排出可能としてもよい。
この稼動の際、サンプリング細管内の流速は限定されるため、単純に、ピストン移動をさせた場合、下死点方向移動(吸引)の時は真空状態となり、上死点方向移動(吐出)の時は、過圧状態となり、高圧化され、シリンダー等に過大応力が負荷される。
これを防止するため、ピストン上面のシリンダーに装備された「圧力センサー」の値が、例えば、「≧0.1(MPa)」の如く、任意の指定の高圧になった瞬間、あるいは、操作者が「ストップ・スイッチ」を押した瞬間に、ピストンが停止すると共に、シリンダーに装備された「電磁弁」が開放し、シリンダー内圧力が放出され、吸引若しくは吐出下にある、微細物体の移動を瞬間停止させてもよい。
【0007】
微細物体の一種のバクテリア(細菌)に限定しても、自然状態では、空気中に浮遊し、動・植物等に付着し、あるいは水中、土壌中、海中、極限(高圧、高温、酸/アルカリ)環境の様々な状態で存在する。
本発明は、サンプリング対象の微細物体の存在する、当該環境条件でそのままサンプリングを行なう、及び水等の培養液にて精製分離させてサンプリングを行なうの、2つの条件でのサンプリングを可能とした。
また、シリンダー及びピストンからなるポンプにおいて、ピストン上面の媒体が空気であれば、気体膨脹により、最大負荷圧力は−0.1(MPa)となる。
このとき、サンプリング細管内が液で満たされる状態で、液中サンプリングが行われると、最大管内流量は、大凡「8.3(cm/sec)」程度で、しかも、管内粘性による速度減衰により、吸引ポンプを過大に動作させても、サンプリング細管内流速は低下し、サンプリング対象の細菌類をサンプリング細管内に捕捉し易い。
【0008】
これに対し、気体サンプリングの場合は、サンプリング細管内流速が、周囲温度での音速(≒〜340(m/sec))に移行し易く、サンプリング対象の細菌類をサンプリング細管内に、きわめて捕捉し難くなる。この場合に、サンプリング細管内での細菌類の捕獲に失敗すると、捕獲器内で捕獲される。
これに加えて、気体サンプリングの場合は、サンプリング細管内流速が大き過ぎるため、サンプリングされた微細物体を損傷し易い。
本発明では、シリンダー内圧力が、例えば指定の吸引圧力「≦−750(mmHg)」になった瞬間に、ピストンを一時停止し、指定の負圧に減少し、例えば「≧−0(mmHg)」になった瞬間に、ピストンを再稼動させ断続運転可能とした。
【0009】
前記捕獲器は、放物線、若しくは、円錐形状の凹状に成型された、HEPAフィルター(0.3(μm)の粒子を99.97(%)捕集)あるいは、ULPAフィルター(0.15(μm)の粒子を99.9995(%)捕集)を有し、該フィルターの中心部に、前記ポンプに連なる真空吸引部を対向させてもよい。
その中心部に、真空吸引部を導くことで、バクテリア(細菌)等の捕獲物体に損傷を与えることなく、フィルター中心部にサンプリングできる。
また、当該フィルター部分の中央背後に吸引部を配置し、ピストンを逆転させて吐出動作させれば、サンプリング微細物体を、サンプリング細管の外に排出可能な構造とした。
前記捕獲器は、前記サンプリング細管の奥端が接線方向に連続する旋回流室を有し、旋回流室で分離したサンプリング対象の細菌類を捕集するシャーレを備えてもよい。シャーレへの捕集は、主として、水や海水等の液体環境に存在する微細物体をサンプリングするに際し、当該物体を損傷しないで捕集できる。
前記サンプリング細管の外周部に、当該サンプリング細管内を通過するサンプリング対象の細菌類の検出器を配置し、当該細菌類が検出された場合に、前記ポンプを瞬間停止させてもよい。
ポンプによる吸引・吐出作用時に、「サンプリング物体」に他の細菌による汚損影響を排除するために、前記捕獲器と前記ポンプの間の例えばチューブ配管部に、「≦0.1(μm)」のフィルターを配置してもよい。
【0010】
自然界の暴露環境下にある細菌類を該暴露環境と一緒に収集する収集行程と、前記収集行程で得た収集物中のサンプリング対象となる1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させる分離行程と、前記分離行程で分離した後のサンプリング対象の1つの細菌類にサンプリング細管を指向させて、該サンプリング細管内を吸引して前記1つの細菌類を採取するサンプリング行程とを備えてもよい。
前記分離行程が、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で覗いて、CCDカメラを用いて画像化し、コンピューターを用いて、該画像を拡大・図形処理する行程を含んでもよい。
前記分離行程が、サンプリング対象の1つの細菌類にマーカーを行なう行程を含んでもよい。
【0011】
自然界の暴露環境下にある細菌類を該暴露環境と一緒に収集する収集器と、前記収集器で収集した収集物中のサンプリング対象となる1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させる分離器と、分離器で分離した後のサンプリング対象の1つの細菌類にサンプリング細管を指向させて、該サンプリング細管内を吸引して前記1つの細菌類を採取するサンプリング装置とを備えてもよい。
前記分離器が、長方形断面を有するジェットにより、高圧空気あるいは水等の高圧液体を、断続的に噴射して、例えば凝縮、群棲、凝塊、結合している微細物体の塊の中で、1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させてもよい。
前記分離器が、水晶発振子等の振動体に支持した振動板により、例えば凝縮、群棲、凝塊、結合している微細物体の塊の中において、1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させてもよい。
前記分離器が、1つの細菌類以外の物体を、当該1つの細菌類の大きさの5倍以上の間隔となるまで、当該1つの細菌類から分離させてもよい。
【0012】
サンプリング前処理として、凝縮、群棲、凝塊、結合している微細物体の塊を個々に分離させることが望ましい。
本発明では、長方形断面を有する「ジェット」により、高圧空気あるいは、水(培養液)等の高圧液体を噴射して、サンプリング対象の微細物体を分離する。あるいは、電気的に駆動された水晶発振子等の振動体に、振動板を構成した機器により、サンプリング対象の微細物体を分離させて、操作者がサンプリングを希望する微細物体のみをサンプリング可能としている。
サンプリング対象物体は、「≧1(μm)」の微少なため、肉眼での捕捉は困難である。
本発明では、光学ズーム機能の他に、コンピューターによるデジタル・ズーム機能を有する、いわゆるマイクロ・スコープで、ディスプレイに拡大表示させて、対象物体の観察及び把握を行ないながら、微細物体の塊を個々に分離する。
【0013】
本構成では、自動サンプリングが可能になる。
上記分離器が、「3軸構成以上のロボット・アーム」に連接された場合には、サンプリング対象物体が確定された状態で、対象物体が、凝縮、群棲、凝塊、結合しているとき、操作者が、「スタート・ボタン」を押すと、「ジェット」による流体噴射、若しくは、電気振動板等により、指定された当該対象物体の大きさの「≧5倍」相当の距離となるまで、自動的に、対象物体から他の物体が分離される。
ついで、同様に、「3軸構成以上のロボット・アーム」に連接された、サンプリング装置が、マウスによりクリックされた物体の空間位置、サンプリング細管先端部位置を自動認識しつつ、対象物体に近接し、対象物体と細管先端部距離が、指定された「≦5(μm)」の距離になった瞬間に、「ピストン・シリンダー」から構成される吸引部が動作し、対象物体をサンプリングする。マニュアル作動の場合は、例えば、ストップ・ボタンを押すことにより、吸引が停止する。
【0014】
本構成では、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で覗かれた、サンプリング対象の1つの細菌類を、CCDカメラを用いて画像化し、該画像を拡大・図形処理し、ディスプレイに表示するコンピューターを備え、前記サンプリング対象が、前記サンプリング装置に吸引された瞬間に、前記コンピューターが制御信号を出力し、該サンプリング装置の吸引動作を停止してもよい。
ディスプレイで観測される対象物体が吸引された瞬間に、コンピューターを介して制御信号を出力し、吸引部の停止命令をおこなうことで、該1つの細菌類のサンプリング自動化を実現できる。
この場合、二重の捕捉性能を確保するため、サンプリング装置に、細菌類を検出する物体検出器を備えてもよい。物体検出器が、サンプリング対象物体の捕捉を確認すると、その瞬間に、「ピストン・シリンダー」から構成される吸引部が停止し、同時に、ピストン上面のシリンダーに装備された「電磁弁」を開放し、吸引下にある微細物体の移動を瞬間停止させる。その後には、サンプリング細管内に捕捉された対象物体を、例えば、シャーレ等の所要の容器に格納する。
この場合、「3軸構成以上のロボット・アーム」に連接された、「細管・物体検出器・捕獲器」からなるサンプリング装置は、指定された場所に移動し、当該容器に、採取した対象物体を吐出し、終了後は、所定の初期状態に復帰する。
【0015】
サンプリング対象物体を、サンプリング装置の捕獲器で捕獲する場合は、ディスプレイ上での吸引観測、若しくは物体検出器により確認した後、指定の遅れ時間を経て、「ピストン・シリンダー」から構成される吸引部が停止し、ピストン上面のシリンダーに装備された「電磁弁」を開放させる。
捕獲器が、HEPAフィルター形式の場合は、当該フィルターが自動的に排出され、新しいフィルターが装着される。
また、捕獲器が、旋回流構造の下部のシャーレ形式の場合は、当該シャーレが自動的に排出され、新しいシャーレが装着されて、再度、初期状態に復帰した後に、新しいサンプリングが行なわれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、サンプリング対象の微細物体の存在する、当該環境条件でそのままサンプリングを行なうことができ、水等の培養液にて精製分離させてサンプリングを行なうこともでき、あらゆるサンプリングを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バクテリア(細菌)の重なり状態とマーカーを示す図で、Aは古細菌を示し、Bは真正細菌を示す図である。
【図2】機械的分離器を示す図で、Aは側面図、Bは平面図である。
【図3】流体的分離器を示す図で、Aは系統図、BはAのB−B断面図である。
【図4】流体的分離器を示す図で、Aは系統図、BはAのB−B断面図である。
【図5】サンプリング装置の一実施の形態を示す系統図である。
【図6】捕獲器の一実施の形態を示す系統図である。
【図7】捕獲器のフィルターを示す断面図である。
【図8】圧力比と空気流量を示す図である。
【図9】別実施の形態を示す図で、Aは断面図、BはAのB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
図1は、細菌の重なり合いの状態を示している。
「細菌」は、「真正細菌」と「原始古細菌」に進化し、その後、「原始古細菌」から「古細菌」と「真核生物」に分岐されたと言われている。これらの細菌の中で、これまでに収集された細菌は、主として培養可能な細菌に属し、その割合は、全細菌中の「1/100」程度に過ぎず、残りの多くは不明な状態にある。しかも、不明な細菌の多くは、「好熱菌」としての基本特性を有する古細菌であり、その中の「高度好塩菌」等は、「メタン菌」の系統から発生したと推定される。
これら個々の細菌を捕捉分離して、その特徴を明確にすることは、
(A)地球温暖化ガスのメタン、二酸化炭素、フレオンを固定/分解する細菌の発見
(B)塩害汚損土地の改良可能な「高度好塩菌」の発見
(C)酸性雨等の環境改善に有用な「硫酸還元/NOx還元/SOx還元/硝酸呼吸」細菌の発見
(D)砂漠等の高温・乾燥環境改善に有用な各種「好熱菌」の発見
(E)希少金属等の資源確保に有用な「鉄還元菌」等々の発見
(F)メタン等のエネルギー資源を生成可能な「メタン菌」等の発見
(G)植物共生/成長阻害等々、農業支援する「育成菌/農薬菌」の発見
等々を可能とし、更には、その利用技術の開発は、人類の発展に極めて有益と考える。
これらの細菌は、(イ)大気(空気)中、(ロ)地中、(ハ)海中、(ニ)極限環境中に、生存しているが、総てに共通する暴露環境として、水(水分)が上げられる。
【0019】
本実施の形態では、これらの細菌をサンプリングする場合、水を含む当該環境条件下で、そのままサンプリングを行なうことを可能としている。
サンプリング対象物体が、例えば、空気中の木の葉に付着したバクテリア(細菌)とした場合、その採取に当たっては、まず、当該木の葉に付着したバクテリアと、その周囲に存在する暴露環境としての水(水分)とを、一緒に例えばシャーレ等(収集器)に収集する。なお、シャーレ等は一例であって、木の葉の場合、木の葉ごと収集してもよい。
この場合、バクテリア(外径寸法「≧1(μm)」)の例を見ると、シャーレ等において、図1A,Bに示すように、採取対象の物体が重なり合っている。
図1Aは古細菌、図1Bは真正細菌を示し、一般に、これらをサンプリングする場合、バクテリア(細菌)S単体の採取が好適であり、採取対象の物体が重なり合った状態で、サンプリングを行なった場合、隣り合う物体も一緒にサンプリングしてしまう。
【0020】
そこで、本実施の形態では、まず、隣り合う物体を一緒にサンプリングしないように、シャーレ上で、サンプリング対象物体S以外の物体を分離する。この場合、サンプリング対象物体Sを含んで各物体は凝縮、群棲、凝塊、結合している。
【0021】
採取対象物体S以外の分離の手順としては、シャーレ等に採取したバクテリアと、その周囲に存在する暴露環境としての水を、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で覗いて、CCDカメラ(不図示)を用いて画像化する。ついで、コンピューターを用いて、該画像を拡大・図形処理する。更には、操作者の意図により、採取対象物体(1つのバクテリア)Sを確定し、マウス等を用いてサンプリング物体に対してマーカーMを行なう。
【0022】
つぎに、当該サンプリング対象物体Sの境界部分に、小型電気モーターと偏芯軸より構成された機械的分離器(不図示)あるいは、水晶振動子(発振子)等で構成された振動板(図2参照)をあてて、マーカーMが添付された「サンプリング微細物体S」をコンピューター・ディスプレイ上で追跡しながら、この「サンプリング微細物体S」と他の物体との距離が、サンプリング対象物体Sの大きさ(「≧1(μm)」)の凡そ「≧5倍」の任意の設定値となるまで分離する。あるいは、ジェット(吐出細管)を用いた流体的分離器による分離も可能である。この流体的分離器や、機械的分離器等は、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で観測しながら、操作者が操作してもよく、あるいは例えば3軸以上の自由度を有するロボットに保持して、当該ロボットの作業により、「サンプリング微細物体」と他の物体に分離する構成としてもよい。
【0023】
図2A、図2Bは、機械的分離器の一実施の形態を示している。
71は保持ロッドを示している。保持ロッド71の先端には水晶振動子(発振子)72が設けられ、水晶振動子72の振動面には、平面視(図2B参照)で鋭角状に先細る、板圧≦100(μm)の、SUS316等の金属製、あるいは、ガラスやセラミックス製の振動板73が一体構成されている。保持ロッド71の基端には供給電源端子74,75が設けられ、該端子74,75を介して電力が供給され、水晶振動子72と一体に振動板73が矢印X方向に往復振動自在である。
保持ロッド71は、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で観測しながら、操作者が操作してもよく、保持ロッド71の基端を、例えば3軸以上の自由度を有するロボットに保持し、マーカー添付された「サンプリング微細物体」をコンピューター・ディスプレイ上で追跡しながら、「サンプリング微細物体」と他の物体との距離が、対象物体の大きさの凡そ「≧5倍」の任意の設定値となるまで自動分離させてもよい。
【0024】
図3は、流体的分離器の一実施の形態を示している。
この流体的分離器は、「空気」あるいは「水、食塩水、培養液」等の流体を高圧で、断続噴射させて「サンプリング微細物体」と他の物体とを分離する。
図3Aに示すように、ピストン・シリンダー部分80は、シリンダー81を備え、シリンダー81内には、Oリング82が装着されたピストン83が格納され、ピストン83には直動軸85が連結されている。直動軸85は摺動ベアリング86で保持され、直動変換機91を介して、駆動モーター92に連結されている。駆動モーター92に、ステッピング・モーターやACサーボモーター等の回転モーターを使用した場合、直動変換機91は、回転を直動に変換する。直動変換機91は、ラック&ピニオンやネジ機構(不図示)等を使用する。駆動モーター92が直動式モーターの場合、直動変換機91は不要である。シリンダー・ヘッド87には、吸入・吐出時のピストン上面の圧力を計測・管理するための、圧力センサー88と圧力制御計89が配置され、更に、流体を吸込可能に電磁弁90が配置されている。駆動モーター92には、インバーター等のモーター制御装置93Aが接続され、モーター制御装置93Aには、上述した圧力制御計89が接続され、更にリモートコントローラ95Aが接続されている。
【0025】
また、シリンダー・ヘッド87には、「≦0.1(μm)」のフィルター内蔵配管ジョイント84が接続され、このフィルター内蔵配管ジョイント84には、フレキシブル・チューブ93を介して、ハウジング94が連結されている。また、フレキシブル・チューブ93の途中には、電磁弁97が接続されている。電磁弁97は、フィルター内蔵配管ジョイント84とシリンダー・ヘッド87との間に配置してもよい。
このハウジング94には貫通孔が穿孔され、該貫通孔には保持管95が嵌合し、この保持管95には、噴射細管96が支持され、これらが袋ナット197によりハウジング94に固定されている。噴射細管(ジェット)96は、図3Bに示すように、噴射孔96Aを有し、噴射孔96Aは、例えば「H≦20(μm)」×「W≦200(μm)」の矩形状である。
【0026】
この流体的分離器では、電磁弁97を閉じて、電磁弁90を開き、ピストン83を下死点に移動すると、電磁弁90を通じて「空気」あるいは「水、食塩水、培養液」等の流体がシリンダー81内に吸引される。そして、電磁弁90を閉じ、電磁弁97を開いて、ピストン83を上死点に移動すると、シリンダー81に吸引した液体が圧縮されて、フレキシブル・チューブ93、電磁弁97、噴射孔96Aを通じて噴射される。噴射の指向方向は、サンプリング対象物体S(図1)の境界部分である。これを1サイクルとして連続で噴射が繰り返される。これにより、流体は、高圧で断続噴射され「サンプリング微細物体S」と他の物体とが分離される。噴射形態としては、任意の設定間隔での断続噴射が選択され、マニュアル操作の場合は、操作者の「スタート・ボタン/ストップ・ボタン」(不図示)の操作により噴射する。
【0027】
図4は、流体的分離器の別実施の形態を示す。
120は、市販のポンプである。ポンプ120の吸込口120Aから吐出口120Bに向かって圧送される流体は、圧力調整弁121の機能により、規定の圧力に維持される。吐出口120Bには、「≦0.1(μm)」のフィルター内蔵配管ジョイント122が接続され、このフィルター内蔵配管ジョイント122には、フレキシブル・チューブ123を介して、ハウジング124が連結される。フレキシブル・チューブ123の途中には電磁弁128が接続されている。ハウジング124には貫通孔が穿孔され、該貫通孔には保持管125が嵌合し、この保持管125には、噴射細管126が支持され、これらが袋ナット127によりハウジング124に固定されている。噴射細管(ジェット)126は、噴射孔126Aを有し、噴射孔126Aは、例えば「H≦20(μm)」×「W≦200(μm)」の矩形状である。
【0028】
本構成では、操作者若しくは、コンピューターによる指令で、電磁弁128が開放され、流体は、フィルター内蔵配管ジョイント122を介して、噴射細管126に供給される。噴射形態は、噴射/停止のそれぞれの時間設定による、任意のサイクルでの断続噴射が選択される。
操作者がハウジング124を手に持って、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡(不図示)で観測しながら、操作してもよい。あるいは、ハウジング124を3軸以上の自由度を有するロボットに保持し、マーカー添付されたサンプリング微細物体をコンピューター・ディスプレイ上で追跡しながら、サンプリング微細物体と他の物体との距離が、対象物体の大きさの凡そ「≧5倍」となるまで自動分離してもよい。
【0029】
上記分離器によって、サンプリング微細物体Sと他の物体との距離が、対象物体の大きさの凡そ「≧5倍」になるように、「サンプリング微細物体S」が他の物体から分離された後、以下に説明するサンプリング装置によって、分離された1つの「サンプリング微細物体S」が、暴露環境としての水を含んで吸引捕獲される。
【0030】
図5は、本実施の形態によるサンプリング装置を示す。
基本構成は、サンプリング部分100、配管部分101、ピストン・シリンダー部分102、駆動部分103から構成されている。
図6は、サンプリング部分100を拡大して示す。
サンプリング部分100は、大気、動植物、土壌、水、海水、極限環境、等々に存在する「微細物体」、例えば、浮遊細胞、酵母、バクテリア(細菌)、カビ胞子、花粉、結晶、金属粒子、原生動物等々を採取する部分であり、ガラス、SUS316、セラミックス等の、採取対象物体に反応しない、耐食性を有する各種材料が使用可能である。
標準的にはガラスが使用されている。
【0031】
サンプリング部分100は、サンプリング本体1を備え、サンプリング本体1にはT字状に交わる開口3(3A〜3C)が設けられている。第1開口3Aには保持管5が嵌合し、保持管5にはサンプリング細管7が嵌合し、各管5,7は、袋ナット9によりOリング11を介してサンプリング本体1のねじ部1Aに一体に装着される。サンプリング細管7は、光透過性素材からなり、採取対象物体の大きさに対応した、「≦50(μm)」の細孔7Aを有する。
サンプリング本体1には、第1開口3Aに対向し、サンプリング細管7の奥端を受ける受け溝12が設けられ、受け溝12には、細孔7Aに連通した細孔12Aが形成され、細孔12Aは、捕獲器15に連通している。第1開口3Aに対し、第2、第3開口3B,3Cが直交し、これら第2、第3開口3B,3Cには、それぞれジョイント17,19が連結されている。これらジョイント17,19には、オプティカル・ファイバー21が接続され、オプティカル・ファイバー21は光アンプ(物体検出器)23に接続されている。
光アンプ23は、後述のように、サンプリング細管7内に浸入する「サンプリング微細物体S」を検出する。光アンプ23は、サンプリング細管7の奥端に対向しているが、望ましくはサンプリング細管7の先端への対向配置である。
【0032】
捕獲器15は、サンプリング本体1に、Oリング24を介して、ボルト25により固定されている。この捕獲器15は、空気中に存在する採取対象物体のサンプリングを目的として構成されている。図7は、拡大図である。サンプリング細管7の細孔7Aの内径d1は、細孔12Aの内径d2と同径、あるいは、若干大きく形成されている。
また、細孔7Aと細孔12Aとが近接する端面では、採取対象物体が円滑に移動できるように、各孔の通路端に、それぞれ面取りR1が行なわれている。細孔12Aの出口側(捕獲器15への入口側)には、角度θ1の末広がりの円錐面12Bが形成され、円錐面12Bに対向し、放物線、乃至は円錐形状のフィルター27が設けられ、フィルター27は、サンプリング本体1と捕獲器15の合わせ面に挟持されている。
【0033】
放物線、乃至は円錐形状のフィルター形状に合わせて、角度θ1の円錐面12Bを設けているため、空気中に存在する採取対象物体が、θ1の末広がり(拡大)角度で、フィルター27に導かれ、フィルター27の圧損が軽減できる。
また、フィルター27の下流も同様に、フィルター形状に合わせて、捕獲器15の合わせ面に、角度θ2の適切な窄み(収束)角度の円錐面15Aが設けられ、θ2の収束角度で、捕獲器15に設けた吸引管29に導かれる。
吸引管29の細孔29Aの内径d3は、サンプリング細管7の細孔7Aの内径d1との関係において、d3≧d1に設定される。吸引管29を、吸引側ハウジングと一体に製作することは困難なため、絞り加工技術、あるいは、焼結技術等で別途製作された細管からなる吸引管29が、ハウジングに圧入構成されている。
吸引管29の先端部は、フィルター27に適正な距離H≦5mmで近接して配置される。距離H≦5mmを適宜定めたため、放物線形状フィルター27の凹側27Aの流速が大きくなり、捕捉された対象物体が、凹側27Aの中心部に捕捉される。フィルター27は、HEPA、あるいは、ULPAフィルター等の柔軟な材質で構成され、採取対象物体のフィルター捕獲時の衝撃を緩和し、採取対象物体の損傷を防止している。
【0034】
吸引管29は、図6に示すように、開口31に連通し、この開口31には配管ジョイント32が接続され、配管ジョイント32には、図5に示すように、配管部分101を介して、ピストン・シリンダー部分102が接続されている。
配管部分101は、通常では、「≦0.5(MPa)耐圧」程度のフレキシブル・チューブ配管が行なわれ、配管ジョイント32、ナイロン樹脂あるいはテフロン(登録商標)樹脂製フレキシブル・チューブ33、及び「≦0.1(μm)」のフィルター内蔵配管ジョイント34を経て、ピストン・シリンダー部分(ポンプ)102に接続される。フレキシブル・チューブ33の材質としては、バクテリア(細菌)等のサンプリングにおいては、対象以外のバクテリア(細菌)の繁殖等の防止・管理のため、ナイロン樹脂あるいはテフロン樹脂製フレキシブル・チューブの中でも、テフロン(PFA、PTFE)製チューブの使用が理想的である。
【0035】
ピストン・シリンダー部分102は、図5に示すように、シリンダー41を備え、シリンダー41内には、Oリング42が装着されたピストン43が格納され、ピストン43には直動軸45が連結されている。ピストン43は、位置制御及び速度制御されてもよい。
直動軸45は摺動ベアリング46で保持され、駆動部分103に連結されている。シリンダー・ヘッド47には、上述した「≦0.1(μm)」のフィルター内蔵配管ジョイント34が接続され、ピストン43による流体の出入りに関わらず、ピストン・シリンダー部分102からフレキシブル・チューブ33への影響が排除されている。
シリンダー・ヘッド47には、吸入・吐出時のピストン上面の圧力を計測・管理するための、圧力センサー48と圧力制御計49が配置され、更に、圧力制御計49に接続され、シリンダー・ヘッド47内圧力を大気開放する電磁弁50が配置されている。
【0036】
上記構成では、フィルター内蔵配管ジョイント34が、シリンダー・ヘッド47に連結されているが、望ましくは、捕獲器15側への連結である。捕獲器15に連結した場合、当該フィルター内蔵配管ジョイント34で、バクテリア(細菌)が捕捉され、それ以降のフレキシブル・チューブ33内への浸入が阻止される。それ故、バクテリア(細菌)サンプリング等の場合は、フレキシブル・チューブ33内でのバクテリア(細菌)の繁殖等が防止できる。この場合、稼動初期において、フレキシブル・チューブ33内を純空気で満たすことができ、この間での、バクテリア(細菌)等の混在を防止できる。
フィルター内蔵配管ジョイント34のフィルターは、流路圧損の問題を除けば、「≦0.1(μm)」に設定するが望ましい。フィルター能力を「≦0.1(μm)」とした理由は、サンプリング対象のバクテリア(細菌)の外径寸法が「≧1(μm)」のため、その「1/10」の大きさの影響を除去したいためである。因みに、細菌の大きさは、家シロアリの腸内細菌=〜10(μm)、細菌=0.5〜数(μm)程度、マイコプラズマ=0.125〜0.25(μm)、リケッチア=0.3〜0.5(μm)×0.3(μm)の小さな球桿菌、ウイルス=0.02〜0.3(μm)、サルモネラ=0.5〜2(μm)、ブドウ球菌=1(μm)、ピロリ菌=4(μm)、結核菌=2(μm)、クラジミア=0.8(μm)である。
【0037】
駆動部分103について説明する。
直動軸45は、直動変換機51を介して、駆動モーター52に連結されている。駆動モーター52に、ステッピング・モーターやACサーボモーター等の回転モーターを使用した場合、直動変換機51は、回転を直動に変換する。この場合、直動変換機51は、ラック&ピニオンやネジ機構(不図示)等を使用する。但し、駆動モーター52がリニア・アクチュエーターのように、直動式モーターの場合、直動変換機51は不要になる。
駆動モーター52は、インバーター等のモーター制御装置53に接続されている。モーター制御装置53には、上述した光アンプ23、及び圧力制御計49が接続され、更にリモートコントローラ55が接続されている。
【0038】
この実施の形態では、モーター制御装置53は、リモートコントローラ55による、操作者からの命令を受けて、スタート(正規回転による吸引動作)、ストップ(停止)、リバース(逆回転による吐出動作)等が行なわれる。瞬時ストップを実現するため、「ストップ」命令の場合は、駆動モーター52を停止させると共に、上述した電磁弁50を開放し、ピストン上面の圧力をゼロとして、吸引/吐出動作を瞬間停止する。また、光アンプ23によるサンプリング物体の認識が入力されると、モーター制御装置53を介して、駆動モーター52を停止させ、電磁弁50を開放して、吸引/吐出動作を瞬間停止する。
【0039】
また、「吸引・吐出」動作時において、シリンダー・ヘッド47内の圧力が任意の設定圧力以上になった瞬間に、圧力制御計49が検知し、モーター制御装置53に停止命令を出力し、駆動モーター52を停止させる。上述のサンプリング細管7の内径d1は、例えば、「20(μm)」と小さいため、ピストン速度を制御しない場合、吸引動作の場合は真空のような超低圧になり、一方、吐出動作の場合は、0.1(MPa)を越える高圧になる恐れがある。この結果、採取された微細物体の瞬間停止等の移動管理が困難になることが予測される。これを抑制するため、圧力制御計49に、任意の臨界値を入力し、これを維持するように、駆動モーター52を制御する。同時に、「吸引/吐出」動作時に、「ストップ」命令を受けた場合は、上記の電磁弁50が開放されて、吸引/吐出動作が瞬間停止される。
【0040】
吸引管29から、逆に吐出作用を行なう場合は、瞬間的に吐出を行なう(ピストンの排出速度(=ピストン速度×ピストン断面積)を高める)ことにより、フィルター27の凹部27Aに捕捉されたサンプリング物体を上流側に放出できる。また、柔軟なフィルター27を使用すると共に、更に、ピストン速度を高めることにより、吸引管29とフィルター27下面との間に、大きな差圧を形成させて、凹形状のフィルター27をサンプリング細管7の側に凸型に変形させて、捕獲物体の吐出に貢献することも可能である。
【0041】
この空気中サンプリング・システムにおいて、注意すべき事は、サンプリング細管7のサンプリング口{=大気圧力=上流側圧力=Pa}と、ピストン43の上面圧力{=フィルター下部圧力≒フィルター下部の吸引管端面圧力=Pp}との関係が、大凡、「(Pa/Pp)≧2」となると、サンプリング細管7内の流速が、その時の温度の音速となることである。
図8は、内径=480(μm)のノズルにて、Pa=大気圧力にて、下流側圧力Ppを減少させて、(Pa/Pp)を横軸に、当該ノズルを流れる流量Q(l/min)を見たものであるが、「(Pa/Pp)≧2」の領域から、流量Qが一定となって、当該ノズルを通る流速が一定となっていることが分かる。
すなわち、当該ノズルを通る流速V(m/sec)は、
V={1700(cm/min)/60}/{π×0.48/400}/100
≒156(m/sec)
の音速に近い速度で一定となっている(当該ノズルは、長さ方向に長い、半円ノズルのため、流量係数の関係で、音速の半分の数値となっている)。
このように、ピストン43の上面圧力管理を行なわないまま、ピストン43を移動させ、吸引圧力を低下させると、細管7内流速は、最大で音速に至るため、ピストン43の上面圧力を圧力センサー48により計測して、「(Pa/Pp)≦2」の範囲で、駆動モーター52の速度管理や電磁弁50の開閉により管理することが望ましい。
【0042】
つぎに、サンプリング装置の動作を説明する。
上記シャーレ上では、分離器(図2〜図4参照。)によって、サンプリング微細物体Sと他の物体との距離が、対象物体の大きさの凡そ「≧5倍」になるように、暴露環境としての水を含んでサンプリング微細物体Sが他の物体から分離されている。
操作者は、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で観測しながら、対象物体の大きさの凡そ「≧5倍」に離れた1つのサンプリング微細物体Sを吸引すべく、当該サンプリング微細物体Sに、図5に示す、サンプリング装置のサンプリング細管7の先端を近づける。
【0043】
ついで、リモートコントローラ55を操作して、スタート(正規回転による吸引動作)の指令を出す。すると、モーター制御装置53が、駆動モーター52を駆動して、ピストン・シリンダー部分102のピストン43が下死点に移動し、吸引動作が行われる。この場合、ピストン43の移動速度は例えば逆U字形状の任意の速度形態で稼働制御され、吸引動作は所定の間隔で断続的に行われる。
吸引動作により、1つの「サンプリング微細物体S」は、フレキシブル・チューブ33、捕獲器15の吸引管29を経て、サンプリング細管7内に吸引される。
【0044】
本構成では、1つの「サンプリング対象物体S」を覗くためのデジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡(不図示)と、「サンプリング対象物体S」を撮像するCCDカメラ(不図示)と、撮像した画像を拡大・図形処理するコンピューター(不図示)と、画像を表示するディスプレイ(不図示)とを備えてもよい。
採取対象物体Sが、サンプリング細管7内に吸引された瞬間に、ディスプレイ(不図示)上の採取対象物体Sを現す画像が消滅し、この瞬間に、コンピューターがモーター制御装置53に制御信号を出力し、該サンプリング装置の吸引動作を停止する。
この場合、ディスプレイ(不図示)上の画像消滅だけでなく、上述した光アンプ23(図5参照。)によっても二重に採取対象物体Sが検出される。
この採取対象物体Sは、サンプリング細管7に吸引されると、図6に示すように、サンプリング本体1内に吸引される。サンプリング本体1には、物体検出用のオプティカル・ファイバー21が配置されており、サンプリング物体が通過する際の透過光(若しくは、反射光)の変化を、光アンプ23で検出することにより存在が確定される。
光アンプ23からの制御信号は、図5に示すように、モーター制御装置53に入力され、電動モーター52の稼動を制御し、採取対象物体がサンプリングされた場合は、吸引を瞬間停止し、サンプリング細管7内で、対象物体が捕捉される。瞬時ストップを実現するため、停止の場合は、駆動モーター52を停止させると共に、上述した電磁弁50を開放し、ピストン上面の圧力をゼロとして、吸引/吐出動作を瞬間停止する。
【0045】
サンプリング細管7への「サンプリング微細物体S」を含む吸引対象が、ほとんど液体の場合には、当該液体がサンプリング細管7に吸引された瞬間に流速が大きく低下する。従って、この場合には、上記瞬間停止によって、サンプリング細管7内への「サンプリング微細物体S」の捕捉が容易になる。しかし本事案のように、シャーレ等に採取した1つの「サンプリング微細物体S」を吸引する場合、吸引対象に、暴露環境としての水(水分)を含むとは云え、その水分は僅かであり、吸引対象は、ほとんど空気となる。
この場合には、図8に示すように、吸引速度が音速に近くなり、吸引を瞬間停止しても、サンプリング細管7での捕捉は難しい。
【0046】
サンプリング細管7内での対象物体Sの捕捉に失敗した場合、1つの「サンプリング微細物体S」は、捕獲器15に入り、そこで捕獲される。
図7に示すように、細孔7Aと細孔12Aとが近接する端面には、それぞれ面取りR1が行なわれているため、「サンプリング微細物体S」は円滑に移動し、放物線形状フィルター27の凹側27Aの中心部に捕捉される。この場合、フィルター27は、HEPA、あるいは、ULPAフィルター等の柔軟な材質で構成されているため、採取対象物体Sのフィルター捕獲時の衝撃は緩和され、採取対象物体Sの損傷を防止できる。
【0047】
捕獲が完了した場合、リモートコントローラ55による、操作者からの命令を受けて、電動モーター52の稼動がストップ(停止)される。
【0048】
サンプリング完了後、操作者からの命令を受けて、電動モーター52の稼動が制御され、リバース(逆回転による吐出動作)等が行なわれる。
リバースが行われると、吸引管29(図6)から、逆に吐出作用を行なう。この吐出作用を行なうことで、サンプリング細管7内にサンプリング物体Sが捕捉されていれば、当該サンプリング物体Sはサンプリング細管7の外に放出され、外に放出されたサンプリング物体Sは、別のシャーレ等に捕捉されて、細菌分析に供される。
サンプリング細管7内での対象物体Sの捕捉に失敗し、フィルター27の凹部27Aにサンプリング物体Sを捕捉した場合、サンプリング本体1から捕獲器15を取り外して、フィルター27を取り外し、このフィルター27に捕獲したサンプリング物体Sを、上記と同様に、別のシャーレ等に捕捉して、細菌分析に供される。
【0049】
この捕獲器15は、ボルト25(図6)によりサンプリング本体1に連結したが、例えばワンタッチ式の脱着機構でもよく、図示を省略したロボットに捕獲器15を保持し、このロボットで押圧して、捕獲器15とサンプリング本体1を連結する構成としてもよい。
また、柔軟なフィルター27を使用すると共に、更に、ピストン43の速度を高めることにより、吸引管29とフィルター27下面との間に、大きな差圧を形成させて、凹形状のフィルター27をサンプリング細管7の側に凸型に変形させて、サンプリング細管7内に捕捉したサンプリング物体Sだけでなく、サンプリング細管7内での捕捉に失敗し、フィルター27に捕捉したサンプリング物体Sも、同様に、外への放出が可能になる。
【0050】
図9は、捕獲器の別実施の形態を示している。
この捕獲器は、旋回流式シャーレ捕獲器である。なお、図6と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。図9Aにおいて、135は捕獲器であり、この捕獲器135内には、旋回流室138が形成されている。この旋回流室138の下部には、円錐状内壁を有した流速増加器139が嵌合し、流速増加器139の下部には、ガラス製シャーレ141が配置される。また、捕獲器135内には、保持管5で保持したサンプリング細管7が延在し、サンプリング細管7の奥端は、図9Bに示すように、旋回流室138の中心軸よりX偏芯して、旋回流室138の接線方向に、その内壁138Aに近接して配置されている。シャーレ141は、Oリング142と共に、捕獲器135の凹部135Aに嵌合し、その上に樹脂製ホールダー143を嵌合し、ねじ孔144に固定用蝶ねじ145を螺合し、捕獲器135に脱着自在に装着されている。ロボット(不図示)により、シャーレ141の自動交換がなされる場合は、ロボット・アームにより、シャーレ141が、Oリング142と共に、捕獲器135に直接押し付けられている。
また、捕獲器135内には、透過型(若しくは、反射型)のオプティカル・ファイバー21が配置されており、オプティカル・ファイバー21は、上記実施の形態と同様に、光アンプ23に接続されている。この構成では、光アンプ23がサンプリング物体Sを確認すると、上記の構成と同様に、ピストン43を瞬間停止させると共に、電磁弁50を開放して、吸引を瞬間停止し、サンプリング細管7内に、サンプリング物体Sを保持できる。
【0051】
この実施の形態では、捕獲器135に吸引された流体は、該旋回流室138内で旋回流を形成して、サンプリング物体Sは、旋回流室138の内壁に沿って流入する。
該流体は、旋回流室138の下部に位置する、円錐状内壁を有する流速増加器139により、旋回流半径を小さくされ、遠心力効果を強く受けて、サンプリング物体Sは、その中央部に集中され、その下部に配置されたガラス製シャーレ141に捕獲される。サンプリング細管7内に、サンプリング物体Sが保持された場合には、操作者からの命令を受けて、電動モーター52(図5)の稼動が制御され、リバース(逆回転による吐出動作)等が行なわれる。リバースが行われると、ピストン43からの吐出圧が、通路147を通って、旋回流室138に至り、該吐出圧で、サンプリング細管7内に保持したサンプリング物体Sが外に放出される。
【符号の説明】
【0052】
7 サンプリング細管
15,135 捕獲器
23 光アンプ(物体検出器)
27 放物線形状フィルター
29 吸引管
34 フィルター内蔵配管ジョイント
43 ピストン
48 圧力センサー
50 電磁弁
100 サンプリング部分
102 ピストン・シリンダー部分(ポンプ)
103 駆動部分
72 水晶振動子(発振子)
73 振動板
96,126 噴射細管(ジェット)
96A,126A 噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング細管と、該サンプリング細管に連接された捕獲器と、該捕獲器を通じてサンプリング細管内を真空吸引するポンプとを備え、該ポンプの駆動により前記サンプリング細管、あるいは該サンプリング細管に連接された前記捕獲器内に、サンプリング対象の細菌類をサンプリング可能としたことを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
前記ポンプは、シリンダーとピストンとを備え、前記ピストンが位置制御及び速度制御されることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記ピストンは、「スタート・スイッチ」あるいは、「ストップ・スイッチ」を操作することにより、下死点方向に移動して停止することを特徴とする請求項2に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
前記ピストンは、ピストン上面が所定の真空度になると停止し、所定の圧力に上昇すると稼動することを特徴とする請求項2又は3に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
前記ピストンは、「リバース・スイッチ」を操作することにより、上死点方向に移動して、前記サンプリング細管内にサンプリングされたサンプリング対象をサンプリング細管の外に排出可能としたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項6】
前記ピストン上面が所定の高圧になった瞬間、あるいは「ストップ・スイッチ」を操作した瞬間に、当該ピストンが停止することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項7】
前記ピストンが停止し、ピストン上面のシリンダーに装備された電磁弁が開放されてシリンダー内圧力が放出され、サンプリング対象の移動を瞬間停止させることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項8】
前記捕獲器は、放物線、若しくは、円錐形状の凹状に成型された、HEPAフィルターあるいは、ULPAフィルターを有し、該フィルターの中心部に、前記ポンプに連なる真空吸引部を対向させたことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項9】
前記捕獲器は、前記サンプリング細管の奥端が接線方向に連続する旋回流室を有し、旋回流室で分離したサンプリング対象の細菌類を捕集するシャーレを備えたことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項10】
前記サンプリング細管の外周部に、当該サンプリング細管内を通過するサンプリング対象の細菌類の検出器を配置し、当該細菌類が検出された場合に、前記ポンプを瞬間停止させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項11】
前記捕獲器と前記ポンプの間に「≦0.1(μm)」のフィルターを配置したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のサンプリング装置。
【請求項12】
自然界の暴露環境下にある細菌類を該暴露環境と一緒に収集する収集行程と、
前記収集行程で得た収集物中のサンプリング対象となる1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させる分離行程と、
前記分離行程で分離した後のサンプリング対象の1つの細菌類にサンプリング細管を指向させて、該サンプリング細管内を吸引して前記1つの細菌類を採取するサンプリング行程とを備えた
ことを特徴とするサンプリング方法。
【請求項13】
前記分離行程が、デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で覗いて、CCDカメラを用いて画像化し、コンピューターを用いて、該画像を拡大・図形処理する行程を含むことを特徴とする請求項12に記載のサンプリング方法。
【請求項14】
前記分離行程が、サンプリング対象の1つの細菌類にマーカーを行なう行程を含むことを特徴とする請求項12又は13に記載のサンプリング方法。
【請求項15】
自然界の暴露環境下にある細菌類を該暴露環境と一緒に収集する収集器と、
前記収集器で収集した収集物中のサンプリング対象となる1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させる分離器と、
分離器で分離した後のサンプリング対象の1つの細菌類にサンプリング細管を指向させて、該サンプリング細管内を吸引して前記1つの細菌類を採取するサンプリング装置とを備えた
ことを特徴とするサンプリング・システム。
【請求項16】
前記分離器が、長方形断面を有するジェットにより、高圧空気あるいは水等の高圧液体を、断続的に噴射して、1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させることを特徴とする請求項15に記載のサンプリング・システム。
【請求項17】
前記分離器が、水晶発振子等の振動体に支持した振動板により、1つの細菌類以外の物体を当該1つの細菌類から分離させることを特徴とする請求項15に記載のサンプリング・システム。
【請求項18】
前記分離器が、1つの細菌類以外の物体を、当該1つの細菌類の大きさの5倍以上の間隔となるまで、当該1つの細菌類から分離させることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか一項に記載のサンプリング・システム。
【請求項19】
デジタル・マイクロスコープ等の光学顕微鏡で覗かれた、サンプリング対象の1つの細菌類を、CCDカメラを用いて画像化し、該画像を拡大・図形処理し、ディスプレイに表示するコンピューターを備え、
前記サンプリング対象が、前記サンプリング装置に吸引された瞬間に、前記コンピューターが制御信号を出力し、該サンプリング装置の吸引動作を停止することを特徴とする請求項15乃至18のいずれか一項に記載のサンプリング・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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