説明

サンプリング装置

過剰サンプリングや気泡の混入を避けながら確実かつ簡便に多数種類の試料を代わる代わる測定ユニットへ導入することができるサンプリング装置。このサンプリング装置は、ペリスタリックポンプ(3)を用いて密度計(1)へ液体試料を導入する。判定手段(62)は、その試料が導入されたか否かを判定し、コントローラ(6)は、判定結果に基づいてペリスタリックポンプを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
液体試料を測定ユニットへ導入するためのサンプリング装置に関する。
【背景技術】
食品原料となる糖液や飲料、アルコール、ガソリンといった様々な液体試料の密度や屈折率などを測定するのに、サンプリング装置が用いられる。サンプリング装置には、測定ユニットへ試料を導入するだけでなく、測定経路の洗浄や乾燥を自動的に行う機能を有したものもある。
図8はサンプリング装置の構成の一例を示す。密度計1へ容器2内の試料を導入するのに、このサンプリング装置は、ダイアフラム式ポンプ301を備えている。試料の導入を開始する場合、このポンプ301を用いて、乾燥した空気を容器2内に送り込むことにより、液体試料は、その容器2から吐出しその容器2と密度計1とを接続する配管を通じて密度計1へ導かれる。密度計1を通過した後、試料は外部へ排出される。密度計1へ導入した試料について測定が行われると、ポンプ301によって洗浄剤および乾燥剤が測定経路に順次送り込まれる。測定経路の洗浄や乾燥が完了すると、次の試料について同様の手順が行われる
石油製品の品質管理現場では、このようなサンプリング装置を用いて、潤滑油や軽油などの複数種類の試料が代わる代わる測定され、また飲料製造の品質管理現場でも、完成品や中間製品、例えばジュースやその原料となるシロップなどが代わる代わる測定される。
複数種類の試料が代わる代わる測定される場合、測定ユニットへ導入される試料の間で粘度が大きく異なることも多い。ポンプを用いて試料に与える圧力をその試料に応じて変更しなければ、試料が測定ユニットへ導入されなかったり、逆に試料が過剰に採取されてしまったりする。さらに、測定ユニットへ導入された試料に気泡が混入し、測定に悪影響を及ぼすこともある。
このサンプリング装置では、ポンプ301から容器に送り込む空気の圧力を試料の粘度に応じて調整するために、ニードルバルブ302と開閉バルブ303とを備えている。ポンプ301の吸引経路の流量をこれらのバルブ302および303で変化させる。試料の粘性が低い場合、開閉バルブ303は閉じられる。この場合、ニードルバルブ302のニードルによって、その試料に適当なごく少ない量に流量を調節することができる。試料の粘性が高い場合、開閉バルブ303を開けることにより、大きな流量が確保される。
このようにニードルバルブ302と開閉バルブ303を用いることで容器2から試料を採取する速度を調整することができる。
しかしながら、試料が変わる度にバルブ302および303の設定を変更しなければならないので、試料の種類が多数あると、その変更作業が煩雑になる。また、誤った変更を行ったり、必要な変更が行われなかったりする可能性もある。
【発明の開示】
本発明は、このような従来の技術における課題を解決するために、様々な試料についての測定を簡便に行うことができるサンプリング装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明は、以下の構成を採用する。
本発明のサンプリング装置では、ペリスタリックポンプを用いて液体試料を測定ユニットへ導入する。判定手段は、その試料が測定ユニットへ導入されたか否かを判定する。この判定には、測定ユニットから試料を排出する経路に設けたリミットセンサを利用することができる。リミットセンサを利用する場合、判定手段は、そのセンサの出力と試料の採取開始からの経過時間に基づいて判定を行う。試料の採取開始から所定時間が経過してもそのリミットセンサが試料を検知しなければ、判定手段は、試料が導入されていないと判定する。制御手段は、判定結果に基づいてペリスタリックポンプを制御する。試料が導入されていないと判定された場合、例えばペリスタリックポンプを制御しサンプリング速度を増加させる。
このように本発明では、液体試料が測定ユニットへ導入されたか否かに基づいてペリスタリックポンプが制御されるため、過剰サンプリングや気泡の混入を避けながら確実かつ簡便に多数種類の試料を代わる代わる測定ユニットへ導入することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施の形態におけるサンプリング装置の概略構成を示す図;
図2はノズルと容器のシール部を説明するための断面図;
図3はノズルと容器の別のシール部を説明するための断面図;
図4は本発明の実施の形態におけるサンプリング装置と従来例のサンプリング装置の採取時間を比較する図;
図5は本発明の実施の形態におけるサンプリング装置と従来例のサンプリング装置の採取時間を比較する別の図;
図6は本発明の実施の形態におけるサンプリング装置で純水とオイルを交互に測定した場合の測定結果を示す図;
図7は試料採取量を示す図;そして
図8は従来のサンプリング装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
図1は本発明の実施の形態におけるサンプリング装置の概略構成を示す。
このサンプリング装置は、液体試料の密度を測定するための密度計1を備えている。この密度計1には、振動式のものを用いることができる。容器2から採取した試料をこの密度計1に導入する。
試料の採取には、ペリスタリックポンプ3を用いる。乾燥筒4で乾燥した空気をペリスタリックポンプ3が吸引し、その空気を容器2に送り込む。これによって、液体試料は加圧され容器2から吐出する。液体試料の加圧にペリスタリックポンプ3を用いることで、粘度の低い試料から粘度の高い試料まで様々な試料を適宜採取することが可能となる。また、ニードルバルブを用いて流量を調整する必要がなく、精密に加工されたニードルを用いる必要もなくなる。
密度計1から試料を排出する配管101には、リミットセンサ5が設けられている。このリミットセンサ5には、液検出に一般的な透過型の光学センサを採用することができる。リミットセンサ5の出力信号から、試料が配管内を流通しているか否かを区別する。
リミットセンサ5はコントローラ6に接続されている。コントローラ6は、密度計1やペリスタリックポンプ3、電磁弁7、8および9を制御する。このコントローラ6には、CPUなどの制御演算手段を用いることができる。
密度の測定を開始する場合、コントローラ6は電磁弁7および8を制御して、乾燥筒4からペリスタリックポンプ3を介して容器2へ至る経路を接続する。そして、ペリスタリックポンプ3に制御電圧を与えてペリスタリックポンプ3を動作させる。
この実施の形態におけるコントローラ6がペリスタリックポンプ3に与える制御電圧は2段階の電圧のいずれかである。制御電圧の高低でペリスタリックポンプ3の出力が上下し、サンプリング速度が増減する。試料の採取開始時に与えられる電圧は、低い方の電圧である。
低粘度の試料であれば、容器2内の試料は円滑に密度計1へ導入され、密度計1はコントローラ6の指示に従って測定を行う。
密度計1を通過した試料は排出される前に配管101を流通する。上述したように配管101を流通しているか否かはリミットセンサ5の出力によって区別することができる。コントローラ6は所定量の試料が配管101を流通したと判断すると、密度の測定を終了するため、ペリスタリックポンプ3を停止する。
測定終了後、コントローラ6は必要に応じてノズル10を洗浄する。このノズル10は、容器2へ加圧用の空気を送り込むためのものである。ノズル10を洗浄する場合、コントローラ6は電磁弁7および9を制御して洗浄装置11からポンプ12を介してノズル10に至る経路を接続する。洗浄装置11は、洗浄液や乾燥液を供給するために用いられる。ポンプ12を用いて洗浄装置11から洗浄液および乾燥液を順次ノズル10に供給することにより、ノズル10や測定経路の洗浄および乾燥が行われる。
図2はノズルが挿入された容器の断面図である。ノズル10はノズルホルダ201を用いて取り外し可能に容器2に取り付けられている。シール部材202は容器2へ挿入された部材とその容器2とをシールするために用いられる。図ではノズル10とノズルホルダ201とをシールしている。ここでは、シール部材202は、緩衝ラバー203とキャップ204とを有する。
ノズル10の洗浄に用いるトルエンのような洗浄液は溶解性が強い。また重油のような試料の場合、試料およびその測定経路を60℃から90℃程度に加熱する必要があり、耐熱性も要求される。このため、このシール部材202では、シートと緩衝ラバー204との二層構造を採用している。
緩衝ラバー203には、様々な形態の容器に対して密閉性を確保するため、耐熱性もあって弾力性もあるEPDM(エチレン・プロピレンジエンモノマー)のような素材を用いる。
キャップ204は耐溶剤性および耐熱性を有したシート材であり、例えばテフロン系素材を用いる。このキャップ204は緩衝ラバー203の変形を防止する。
このようなシール部材202を用いるのが好ましいけれども、図3に示すように、シール部にパッキン205を用いることも可能である。しかしながら、一つのパッキン205では、長期間漏れを防止するのは困難である。例えば80℃の温度でオイルの自動測定を連続して行った場合、パッキンを20日で交換する必要があったが、二層構造を有したシール部材では、同じ条件で、寿命が90日以上に延びることを確認した。
上述の構成により洗浄および乾燥が済めば、種類の異なる試料を次に測定することができる。低粘度の試料から高粘度の試料へ変わったときにも、まずコントローラ6は上述のように低い制御電圧をペリスタリックポンプ3に与える。しかしながら、試料の粘度によってはポンプの出力が不足し、試料が密度計1へ導入されない。
このため本実施の形態におけるサンプリング装置では、コントローラ6は試料の採取開始からの経過時間を計測するためのタイマ61を有しており、制御演算手段はソフトウェアの指令に従って判定手段62としても機能する。
判定手段62は、密度計1へ試料が導入されたか否かを判定する。ここでは、その判定は、タイマ61の値とリミットセンサ5の出力とに基づいて行われる。試料の採取開始からの経過時間が所定時間以上になっても、配管101に試料が流通していないことがリミットセンサ5により検知されている場合、判定手段62は、密度計1へ試料が導入されていないと判定する。
コントローラ6は、試料が導入されていないと判定された場合に、ペリスタリックポンプ3を制御してサンプリング速度を増加させる。ここでは、制御電圧を低い方の電圧から高い方の電圧に切り替えることにより、サンプリング速度を変更する。この変更によって、高粘度の試料も密度計1へ導入することができる。
このようにサンプリング速度の変更は自動的に行われるため、確実かつ簡便に多数種類の試料を代わる代わる測定ユニットへ導入することができる。さらに、過剰サンプリングや気泡の混入も避けることができる。
なお、高粘度の試料の次に低粘度の試料を測定する場合でも、この実施の形態におけるサンプリング装置では、採取開始時の制御電圧が常に低い値に設定されているため、過剰にサンプリングされる恐れはない。
図4および5は本実施の形態におけるサンプリング装置と図8のサンプリング装置とで粘度既知の2種類の試料をそれぞれ採取したときのサンプリング時間を示す。図5では、実線が本実施の形態におけるサンプリング装置に対応し、点線が従来例のサンプリング装置に対応する。図4および5に示すように、従来例のサンプリング装置で測定できた試料の粘度が最高6000mPa・sであるのに対し、本実施の形態におけるサンプリング装置では最高30000mPa・sの粘度の試料まで測定することが可能となっている。また、本実施の形態におけるサンプリング装置を用いることによって、いずれの試料でもサンプリング時間が大幅に短くなっている。
また、図6は純水とオイル(粘度2000mPa・s)とを交互に測定した場合、測定結果を示す。この例で示すように、本実施の形態におけるサンプリング装置では、低粘度の試料と高粘度の試料を交互に測定する場合でも、安定した測定を行うことが可能である。
図7は8mLバイアル瓶に純水を採取した場合の採取量を示す。このように繰り返し測定を行った場合でも、サンプリング停止時の採取量は極めて安定している。
上述した実施の形態は、本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、その範囲内で種々の変形や応用が可能である。
例えば密度計1の代わりに別の測定ユニットを採用することができる。
また、コントローラ6と判定手段62とを別々のハードウェアで実現するようにしてもよい。
さらに、コントローラ6がペリスタリックポンプ3の出力を多段階または連続的に変更するようにしてもよい。
また、リミットセンサ5の出力とタイマ61の値に基づいて試料が導入されたか否かを判定する代わりに、測定ユニットの測定結果に基づいてその判定を行うこともできる。
また、本サンプリング装置では、気泡の混入は抑制されるが、採取時に経路に振動を与えれば、気泡が混入した場合でも、経路に気泡が停滞せず測定誤差を抑えることができる。例えば配管101に電磁弁を設け、その電磁弁を周期的に開閉するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
本発明は、過剰サンプリングや気泡の混入を避けながら確実かつ簡便に多数種類の試料を代わる代わる測定ユニットへ導入することができるという効果を有し、様々な液体試料サンプリング装置に有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を測定ユニットへ導入するためのペリスタリックポンプ、
その試料が導入されたか否かを判定する手段、および
判定結果に基づいてペリスタリックポンプを制御する手段
を備えたサンプリング装置。
【請求項2】
制御手段は、試料が導入されていないと判定された場合に、ペリスタリックポンプを制御しサンプリング速度を増加させる請求の範囲第1項記載のサンプリング装置。
【請求項3】
測定ユニットから試料を排出する経路にリミットセンサを有し、
判定手段は、試料の採取開始からの経過時間とリミットセンサの出力とに基づいて判定を行う請求の範囲第1項記載のサンプリング装置。
【請求項4】
試料の容器へ挿入された部材とその容器とのシール部に、耐溶剤性および耐熱性のシートと緩衝ラバーとを備えた請求の範囲第1項記載のサンプリング装置。

【国際公開番号】WO2005/068970
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516938(P2005−516938)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000214
【国際出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000161932)京都電子工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】