説明

サンプルホールダー、および前記サンプルホールダーの使用法

【課題】新規サンプルホールダー、およびそのようなサンプルホールダーの使用法を提供すること。
【解決手段】好ましくは分析リーダーにおいて使用される、カード型基板またはプレート状の、顕微鏡スライド様のサンプルホールダーが提供される。このサンプルホールダーは、分析されるサンプルを受容するために、少なくとも一つの孔、好ましくは複数の孔を含む。該少なくとも一つの孔は、基板を完全に貫通して延び、そのサイズは、サンプルが、重力に対抗する該サンプルの表面張力によって、該少なくとも一つの孔の中に保持されるように選ばれる。必要に応じて、基板は、第1上部基板、および、該第1上部基板と一緒になって多孔性膜を埋設する、第2下部基板を含む。さらに別の選択肢として、サンプルホールダーは、第1上部基板の頂上側に付着する第1カバー、および/または、第2下部基板の底部側に付着する第2カバーを含む。さらに、このようなサンプルホールダーを分析リーダー中に納めて使用する方法であって、下記の工程:サンプルホールダーの少なくとも一つの孔を、サンプルおよび試薬混合物によって充填すること;サンプルホールダーを分析リーダー中に挿入すること;および、サンプルホールダーの、該少なくとも一つの孔における該サンプルおよび試薬混合物を、分析リーダーを用いて分析すること、を含む、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルホールダーまたはサンプルプレート、および、前記サンプルホールダーまたはサンプルプレートの、分析試験、例えば、DNA/RNAの定量、タンパク質の定量、および臨床試験のための使用法に関する。特に、本発明は、そのような試験を実行するための分析リーダー用の、例えば、光学リーダーまたは電気化学的リーダー用のサンプルホールダーに関する。
【背景技術】
【0002】
分析試験のためには、複数のサンプルを、例えば、ピペットを用いて、平らなカード型基板の上に注入し、このカード型平板サンプルホールダーにおいて、分析リーダーを用いてそのサンプルを分析することが知られる。さらに、分析試験用のサンプルホールダーとしては、マイクロタイタープレートまたはマイクロプレート状のものが知られる。マイクロタイタープレートとは、小型試験管として使用される、複数の「ウェル」を備えた平板プレートである。マイクロタイタープレートは、通常、長方形マトリックスに配置される、6、24、96、384、または場合によっては1536個ものサンプルウェルを有する。マイクロタイタープレートの各ウェルは、通常、数十ナノリットルと数ミリリットルの間のいずれかの容量の液体を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願PCT/EP2008/001468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規サンプルホールダー、およびそのようなサンプルホールダーの使用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、分析対象とされる少なくとも一つのサンプルを受容するための、少なくとも一つの孔、好ましくは複数の孔を有する、カード型基板形状を持つ、サンプルホールダーまたはサンプルプレート、例えば、プラスチックまたはガラス顕微鏡スライドが提供される。この少なくとも一つの孔は、完全に基板を貫通して延び、そのサイズは、サンプルが、重力に対抗するサンプルの表面張力のために、該少なくとも一つの孔の内部に保持されるように選ばれる。言い換えると、好ましくは円形の孔の場合、その直径は、孔を定める基板の内面と、サンプルとの間で作用する毛管力(表面張力)によって、サンプルが該孔の中に留まるように構成される。
【0006】
このようなサンプルホールダーまたはサンプルプレートは、分析リーダー、例えば、ESE GmbH、Stockach、ドイツから市販される"ESE-Quant Lateral Flow Reader"を用いるサンプル分析法において使用するのに特に好適である。本発明の、さらに別の好ましい実施態様は、特許請求の範囲の従属請求項に定義され、下記にさらに詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1aは、本発明によるサンプルホールダーの実施態様の模式平面図を示し、図1bは、図1aのサンプルホールダーの、直線A-Aに沿う模式断面図を示す。
【図2】図2aは、本発明によるサンプルホールダーの好ましい実施態様の模式断面図を示し、図2bは、本発明によるサンプルホールダーの、別の好ましい実施態様の模式断面図を示す。
【図3】本発明によるサンプルホールダーと共に使用するのに特に好適な分析リーダーの斜視図を示す。
【図4−1】図4aから4bは、本発明によるサンプルホールダー、および図3に示す分析リーダーによって得られる結果を示す。
【図4−2】図4cから4dは、本発明によるサンプルホールダー、および図3に示す分析リーダーによって得られる結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるサンプルホールダーまたはサンプルプレートの第1実施態様を、図1aにおいて平面図として示す。サンプルホールダー10は、該サンプルホールダー10内部にアレイ状に配置される6個の孔15を有することが示され、その際、それらの孔の内三つは、他の三つの孔の直径よりも大きな直径を持つ。図1bにおける、直線A-Aに沿って得られる断面図から見て取ることができるように、孔15は、サンプルホールダー10を完全に貫通して延びる。当業者であれば、下記の詳細な説明から、本発明は、図1aに示す孔15の数、サイズ、形状、および配置に限定されないことを了解するであろう。例えば、本発明によるサンプルホールダーは、そうしようと思えば、6個未満の孔、例えば、たった一つの孔を持つことも可能であるし、あるいは、6個を超える孔、例えば、10個の孔を持つことも可能であろう。好ましい実施態様では、孔15は全て同じ直径を持ち、円筒形または円形である。サンプルホールダー10は、従来の顕微鏡用スライドと同様のサイズ、例えば、下記の寸法:7.6 cm(長さ)× 2.6 cm(幅)× 0.1 cm(高さ、または厚み)を有することが好ましい。使用されるサンプル容量に応じて、さらに大きいサンプルホールダーは、最大10 cmの厚みを持つことも可能であると考えられる。しかしながら、多くの用途においては、厚みは、0.5から5 mmの範囲内にあることが好ましい。ある任意のサンプル容量について、サンプルホールダー10の厚みがより大きくなり、孔直径がより小さくなると、照明されるサンプルの高度が増す。これは、後述の分析リーダーによって、吸光測定、比色測定、反射などによる測定の実行が可能となる利点を有する。さらにある任意の容量について、孔内のサンプルの高度が増すと、サンプルの表面積がより小さくなるため蒸発がより少なくなる。
【0009】
サンプルホールダー10(より具体的には、その基板)は、ガラス、プラスチック、金属などから製造することが可能である。サンプルホールダー10(または少なくともそのある領域)は、該サンプルホールダー10、およびその孔15の中に配されるサンプルと共に、光学リーダーによって実行される測定のための光学的参照または標準資料として使用が可能な材料から製造することが可能であると有利である。例えば、サンプルホールダー10の材料の光学特性は、該サンプルホールダー10が、適当な励起放射光によって照射されると、あるきわめて明確に定められる波長において蛍光を発射するか、および/または、あるきわめて明確に定められる波長において、例えば、UVおよび/または可視光範囲において放射光を吸収するように選ぶことが可能である。好適な材料は、例えば、蛍光発光鉱物、例えば、ルビー、蛍石、トルコ石、琥珀、サファイア、ジルコンなどである。当業者であれば、光学リーダーのための参照または標準として使用することが可能な、明瞭に定められる光学特性を有する材料を含むサンプルホールダー10(または、少なくともその領域)によって、サンプルホールダーの孔の一つにおいて、「外部」参照、例えば、サンプル標準の使用を要することなく、より正確な結果の実現が可能となる利点が得られることを了解するであろう。
【0010】
孔15は、サンプルと試薬の混合物の、順次または一工程添加によって充填される。孔15のサイズは、各液体、すなわち、サンプルおよび試薬混合物が、その内部の表面張力および毛管力によって保持されるように選ばれる。図1aの斜線域から見て取ることができるように、孔15の内、大直径を持つ2つの孔が、サンプルと試薬の混合物によって満たされる。
【0011】
当業者であれば、孔15の中に充填されるサンプルおよび試薬混合物の物理的特性に応じて、孔の直径は、該サンプル・試薬混合物が、重力によって滴状として該孔から落下または滴下することがないよう、十分小さくなければならないことが了解されるであろう。好ましくは、孔は、0.1 - 10 mmの範囲の直径を有する。もっとも好ましくは、0.5 - 3.0 mmの範囲である。
【0012】
ある用途においては、孔15を定める基板内部の内面は、親水性または疎水性表面(すなわち、基板よりも親水性であるか、疎水性である)であることが有利である可能性がある。このことを実現するために、そうしようと思えば、孔15を定めるこれらの内面を、親水性または疎水性材料から製造される層によって被覆することも可能である。
【0013】
図2aに示す別の実施態様では、サンプルホールダー20は、本質的に、サンドイッチ状配置の三つの部分、すなわち、孔を有する第1基板22、多孔性膜24、および、孔を有する第2基板26から成る。第1基板22の孔、および、該第1基板22の孔に対して、形状、サイズ、および配置において合致する、第2基板26の孔は、一緒になって、基板(間に多孔性膜24を置く)を完全貫通する孔25を定める。多孔性膜24は、試薬(例えば、乾燥(dried down)試薬)の担体として使用することが可能である。多孔性膜24は、充填行程の間通気を可能とし、そのため、液体は、第1基板22の一孔から、多孔性膜24を経由して第2基板26の対応孔に通過することが可能となる。さらに、多孔性膜24は、溶液から排除するフィルター媒体(例えば、細胞、血球、またはその他の成分をろ過除去するための)として作動してもよい。多孔性膜24はさらに、可視光またはUV光などの照射放射光が、第2基板26の孔に到達するのを阻止してもよいし、あるいは、時間および温度、またはその他のパラメータに依存する、孔を通過する粒子の移動を測定するように作動してもよい。それとは別に、またはそれに加えてさらに、膜は、そうしようと思えば、導電要素、疎水性材料、または親水性材料を含むことが可能である。図2aに示すサンプルホールダー20の第1基板22および第2基板26は、多孔性膜24に接着され、完全に分離されている。しかしながら、当業者であれば、第1基板22および第2基板26はまた、そうしようと思えば、多孔性膜24を埋設する単一片として形成することも可能であることが了解されよう。
【0014】
図2bに示すサンプルホールダー30のさらに別の実施態様では、図1bおよび2bに示すサンプルホールダーの頂上側および/または底部側の孔35を覆うために、膜またはカバー31、37を使用することが可能である。これらの膜またはカバー31、37は、そうしようと思えば、光学的、電気化学的、またはその他の測定技術のために透明とすることも可能であるし、および/または、疎水性材料または親水性材料を含むことも可能である。
【0015】
上述のサンプルホールダー10、20、30の孔15、25、35はさらに、例えば、核酸増幅および診断試験、ELISAなどのための反応容器として使用することも可能である。ピペットを用いて孔15、25、35を手動またはロボット手段によって充填する代わりに、孔15、20、30はさらに、単純にサンプルホールダー10、20、30を液体に浸漬することによって充填することも可能である。
【0016】
上述のサンプルホールダー10、20、30は、図3に示し、特許文献1においてさらに詳細に記述される、光学的測定装置または分析リーダー50にとってきわめて好適である。なお、参照によりこの特許文献1の全体を本明細書に含める。測定装置50は、測定実行用の光学および電子部品を含む、モノリシック電気光学モジュール52を含む。上述の特許文献1にさらに詳細に記述される、このモジュール52は、オフアクシス形態(off-axis geometry)ではなく、共焦点原理にしたがって設計される。この装置の共焦点光学特性のために、装置は、サンプルの機械的不均等に対し敏感でなくなり、最高信号および最低背景という、共焦点設計に内在する特色が確保される。
【0017】
さらに、リーダー50は、サンプルホールダー56を受容するためのスロット54を含み、スロットは、そうしようと思えば、上述のサンプルホールダー10、20、30のいずれと合致することも可能である。
【0018】
サンプルホールダー56は、スロット54の中に挿入し、モジュール52に対し相対的に移動させることが可能である。さらに、モジュール52も、サンプルホールダー56に対し相対的に移動させることが可能である。
【0019】
さらに、リーダー50には、測定を制御するためのキーパッド58、および、得られた測定結果を表示するためのディスプレイ60が設けられる。
【0020】
リーダー50は、吸光、反射計測、発光計測、または蛍光測定によって色強度、蛍光強度、または化学発光強度、またはその他の信号、例えば、電気化学的信号を測定することが可能である。センサーおよびサンプルスライドは、リーダーの中に埋設され、リーダーは、筐体、工業デザイン、電子部品、光学部品、必要な機械部品全て、ディスプレイ、メモリー、バッテリー、USBポートに対する接続、プリンター、バーコードリーダー、および必要に応じて無線データ転送部を含む単独型(stand alone)装置である。該装置は、装置制御およびデータ解釈のためのファームウェアを有する。較正曲線は、内部メモリーにセーブすることが可能である。リーダー50は、外部コンピュータに接続し、該コンピュータを介しても同様に動作させることが可能である。サンプルホールダー(スライド)は、ドローワー(引き手)様キャリッジによってリーダー内に挿入することが可能であり、孔の充填は、このカートリッジ中に設置されるサンプルホールダーに対し直接実行することが可能である。一旦サンプルホールダーがリーダーの中に滑走挿入されたならば、リーダーは、サンプルを段階的かまたは一気に走査する。結果は、リーダーのディスプレイ60に直接表示されるか、および/または、結果の処理および分析のために、リーダー50に接続されるPCの外部モニターに表示される。
【0021】
多くの場合、DNAおよびタンパク質の定量は速やかに、例えば、数分以内に実行することが望ましい。従来の蛍光試験は、蛍光染料をそのDNAまたはタンパク質に結合させなければならないために、安定な信号を得るのに20分以上を要する。さらに、1から2μlなどの小容量の場合、このような期間に亘る蒸発を無視することはできない。本発明によれば、サンプルに蒸発を抑制する仲介因子を添加することによって、試験に対し否定的影響を及ぼす、このような蒸発を阻止することが可能である。
【0022】
サンプルの蒸発を抑制または回避するための試薬は、吸湿性化合物、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、MgCl2、LiCl、CaCl2、Ca(NO3)2、ZnCl2、および他の有機・無機化合物、例えば、アルコール類およびアミン類などであってもよい。
【0023】
それに加えてさらに、またはそれとは別に、測定信号を処理するとき、蒸発の、測定に及ぼす作用を考慮に入れることが可能である。言い換えると、蒸発、および、サンプル内の標的の濃度の経時的な上昇による対応信号の増加に関する較正および/またはモデルを用いて、「真の」信号を取得することが可能である。このためには、時間の関数としての、DNAおよびタンパク質の測定値に関する較正曲線が必要である。しかしながら、信号はさらに、添加された蒸発阻止剤だけでなく、サンプルにおけるDNAとタンパク質の混合比の関数でもある。これらの混合比は既知ではなく、決定しなければならない。これを実現するために、既知の混合比の較正曲線を使用することが可能である。
【0024】
このリーダーによって一つを超えるサンプルを同時に測定することが可能であるから、種々のサンプルを、例えばピペットを用いて操作するのに要する時間は測定を遅れさせ、そのため、信号が時間の関数として増加する可能性がある。したがって、本発明による装置は、第1サンプルが注入される時点(キャリッジの開放および時間測定の開始)の決定を考慮に入れる。その後、サンプル(一つ以上)が注入される。最後に、サンプルを運ぶキャリッジが閉鎖される(時間測定の終了)。このようにして、サンプルをピペットによって操作するのに要する合計時間を決定することが可能となり、第1から最終サンプルまでの時間遅延を外挿することが可能となる。装置の中に保存される種々の混合比に関する種々の較正曲線を用いることによって、各時点における信号補正係数を決定することが可能となる。これらの結果は、リーダーの応用、例えば、DNA-タンパク質調製、法医学的応用などに対し十分な正確度および感度を持つ。
【0025】
多くの場合、各サンプル(プラス試薬混合物)は、孔15、25、30によって供給される各スペース全体を占めることはない。本発明によれば、サンプルホールダー10、20、30の孔におけるサンプルおよび試薬混合物の容量は、リーダー50を用いることによって決定することが可能である。ある任意の孔における液体(サンプル、プラス、試薬混合物)は、メニスカスを形成し、そこでは、該液体の垂直な厚みは、その中央よりも、孔の壁に向かってより大きくなる(この区域における毛管力および表面張力のために)。メニスカスの形状(例えば、孔中央におけるピーク強度の、その壁におけるピーク強度に対する比によって決定される)を用いて、液体の容量を決定することが可能である。ある任意の孔の、サンプルおよび試薬混合物の容量を決定すると、蒸発性液体(すなわち、サンプルおよび試薬混合物)の表面積を決定することによって蒸発作用を考慮するのに用いることが可能である。
【0026】
図4aは、下記の例について10分の蒸発後に測定される例示のメニスカスを示す、すなわち、Fluoroprofileアッセイ(Sigma-Aldrich)によるタンパク質定量において、孔直径:1 mm、容量:1μl;数値はμg/mlで表す、センサー焦点距離:6 mm、励起光/発射光 470 nm/625 nmである。メニスカスは、「二重ピーク」として現れる。A、B、C、D、E、およびFの信号は、それぞれ、ブランク、100μg/ml、25μg/ml、6μg/ml、1μg/ml、および空の孔に一致する。当業者であれば、メニスカスによって引き起こされる二重ピーク構造を解消するには、光学リーダーの解像度は、孔直径よりも小さくなければならないことに気づくであろう。
【0027】
図4bは、Fluoroprofileアッセイ(Sigma-Aldrich)によるタンパク質定量の結果を示す。孔直径:1 mm、容量:1μl;数値はμg/mlで表す、センサー焦点距離:6 mm、励起光/発射光 470 nm/625 nmである。A、B、C、D、E、およびFの信号は、それぞれ、ブランク、100μg/ml、25μg/ml、6μg/ml、1μg/ml、および空の孔に一致する。
【0028】
図4cは、Quant-iT PicoGreen ds DNAアッセイキットによるDNA定量の結果を示す。容量は1μl、センサー焦点距離:6 mm、励起光/発射光 470 nm/520 nmである。A、B、C、D、E、およびFの信号は、それぞれ、50μg/ml、5μg/ml、0.5μg/ml、50 ng/ml、および5 ng/mlに相当する。図4dは、図4cの一部の拡大図を示す。
【0029】
本発明は、下記の利点を提供する:サンプルホールダーの背景は抑制されるか、または無となるため、結果に影響を及ぼさない;一時に複数のサンプルを測定することが可能である;孔中の試薬を簡単に操作および混合することが可能;孔が気泡無しで簡単に充填される;顧客およびメーカーにとって低コストである;消耗品としてディスポーザブルなサンプルホールダー(孔付きスライド);分析リーダーの汚染が無く洗浄不要;小さいサンプル容量;高い感度;試薬混合物の添加成分による、サンプル容量の蒸発抑制;長期間内でも測定が可能;要すればサンプルの再使用が可能;サンプルの配置誤差無し;広範囲のサンプル粘度/組成が可能;孔間の交差的干渉はごく僅かである;仮にスライドを落としてもサンプルは孔中に留まる;水滴形態はほとんど、サンプルの表面張力/粘度に依存しない(サンプルは表面に浮遊しない)。
【0030】
本明細書の本文を通じていくつかの文書が引用される。本明細書に引用した文書(特許、特許出願、科学的刊行物、メーカーの仕様、指示書などの全てを含む)は、それぞれについて、前述するものであれ後述するものであれ、引用することによりその全体を本明細書に含める。本明細書におけるいずれの記載であれ、それを、本発明が、以前の発明だからといってその開示に先行する資格を有しないことを認めるもの、と見なすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的または電気化学的リーダー(50)などの分析リーダーにおいて使用されるサンプルホールダー(10; 20; 30)であって:
分析されるサンプルを受容するための少なくとも一つの孔(15; 25; 35)を有する基板を含み、該少なくとも一つの孔(15; 25; 35)は、完全に基板を貫通して延び、そのサイズは、該サンプルが、該サンプルの表面張力によって、該少なくとも一つの孔(15; 25; 35)の中に保持されるように選ばれる、前記サンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項2】
前記基板が、第1上部基板(22; 32)、および、該第1上部基板と一緒になって多孔性膜(24; 34)を埋設する、第2下部基板(26; 36)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のサンプルホールダー(20; 30)。
【請求項3】
前記サンプルホールダー(30)が、第1上部基板(32)の頂上側に付着する第1カバー(31)、および/または、第2下部基板(36)の底部側に付着する第2カバー(37)をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のサンプルホールダー(30)。
【請求項4】
前記多孔性膜(24; 34)、および/または、前記第1カバー(31)、および/または、前記第2カバー(37)が、親水性材料か、または疎水性材料から製造されることを特徴とする、請求項2または3に記載のサンプルホールダー(20; 30)。
【請求項5】
前記基板が、ガラス、プラスチック、または金属、および/または、明瞭に定められる光学特性を有する材料、例えば、ルビー、蛍石、トルコ石、琥珀、サファイア、ジルコンなどから製造され、そのために、前記サンプルホールダー(10; 20; 30)が、前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)において前記サンプルの測定のための光学的標準として使用することが可能となることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項6】
前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)が円形を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項7】
前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)を定める前記基板の内面が、好ましくは疎水性材料によって被覆されることによる疎水性表面であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項8】
前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)を定める前記基板の内面が、好ましくは親水性材料によって被覆されることによる親水性表面であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項9】
前記サンプルホールダー(10; 20; 30)が、複数の孔(15; 25; 35)を含み、該複数の孔(15; 25; 35)の一部は、該複数の孔(15; 25; 35)の、別の一部の直径よりも大きな直径を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項10】
前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)が、0.1 - 10 mmの範囲の直径を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項11】
前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)が、0.5 - 3.0 mmの範囲の直径を有することを特徴とする、請求項10に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)。
【請求項12】
分析リーダー(50)において請求項1から11のいずれか1項に記載のサンプルホールダー(10; 20; 30)を使用する方法であって、下記の工程:
サンプルホールダー(10; 20; 30)の前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)を、サンプルおよび試薬混合物によって充填すること;
該サンプルホールダー(10; 20; 30)を該分析リーダー(50)中に挿入すること;および、
該サンプルホールダー(10, 20, 30)の、該少なくとも一つの孔(15; 25; 35)における該サンプルおよび試薬混合物を、該分析リーダー(50)を用いて分析すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記サンプルホールダー(10, 20, 30)の、前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)に配される前記サンプルの蒸発を抑制または回避するために、下記の群から選ばれる抗蒸発剤を、該少なくとも一つの孔(15; 25; 35)に添加する追加の工程を含み、前記群が、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、MgCl2、LiCl、CaCl2、Ca(NO3)2、ZnCl2、および他の有機・無機化合物、例えば、アルコール類およびアミン類から成ることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルホールダー(10; 20; 30)の前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)において、前記分析リーダー(50)を用いて前記サンプルおよび試薬混合物を分析する工程が、蒸発の作用を、該蒸発の較正および/またはモデルを用いることによって考慮することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルホールダー(10, 20, 30)の前記少なくとも一つの孔(15; 25; 35)において前記サンプルおよび試薬混合物を分析する工程が、該少なくとも一つの孔(15; 25; 35)における該サンプルおよび試薬混合物の容量を決定することをさらに含み、それによって、蒸発作用の考慮のために該容量を使用することが可能とされることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公表番号】特表2011−519416(P2011−519416A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502280(P2011−502280)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002333
【国際公開番号】WO2009/121556
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510260008)キアゲン レイク コンスタンツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】