説明

サンプル中の化合物を同定する方法および装置

本発明の実施形態は、経時的に、または生物もしくは培養に関する変化、すなわち摂動が起こった後に、生物もしくは培養のプロテオームおよび/またはメタボノームを標準値と比較する方法および装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年10月9日に提出された米国仮出願番号60/417366(代理人処理番号WAA−307)の恩典を主張する。本出願はまた、2002年11月27日に提出された米国仮出願番号60/429851(代理人処理番号WAA−310)の恩典を主張する。前述の出願の全内容は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、分析および体内の薬物の代謝を理解することが望ましい製剤分析の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
研究者および医療従事者は、身体が生物学的作用を有する化合物を代謝する方法を理解することを望んでいる。そのような理解により、研究者および医療従事者は毒性および/または治療効果を理解することができる。そのような理解により、研究者および医療従事者はさらなる活性な化合物を、適切な薬物による制御または修飾の可能性を有するさらなる化学的経路を特定し、あるいは他の薬物または化学物質との薬物相互作用の可能性を提案することができる。
【0004】
しかし、生存している生物の代謝は複雑である。そして、生物に投与した組成物の標識は不完全な結果をもたらす可能性がある。必ずしも標識されていないが、代謝経路に役割を有する可能性がある化合物の濃度の変化に関する情報を有することが望ましい。
【発明の開示】
【0005】
本発明の実施形態は、サンプル中の1種または複数の化合物を同定するための方法および装置を対象とする。方法を対象とする一実施形態は、サンプルをクロマトグラフィーによって、保持時間範囲により定義される複数のアリコートに分離する段階を含む。各保持時間範囲は、サンプル中の化合物の保持時間値を生じさせる1種または複数の化合物に関連する。次に、前記アリコートの各々の質量分析を行う。各質量分析は、各化合物の質量値を生じさせる保持時間範囲内の1種または複数の化合物に関連する1つまたは複数の質量値を有する。次に、各アリコートを少なくとも1つのさらなる方式の分析に供して、各化合物のさらなる分析値を得る。したがって、サンプル中の1種または複数の化合物は、保持時間、質量スペクトル値およびさらなる分析値により同定される。これらの値は、経時的な、異なるサンプルからの値または正常値との比較を容易にする。
【0006】
本明細書で用いているように、「アリコート」という用語は、より大きいサンプルの一部という通常の化学的意味で用いる。「クロマトグラフィー」という用語は、化合物が固定相を通して、またはその上を移動する速度が異なる結果としての混合物のその成分化合物への分離を指す。本明細書で用いているように、「保持時間範囲」という用語は、クロマトグラフ装置を通る混合物の流れにおけるある点を通過する問題のピークまたはバンドにより定義される期間を指す。
【0007】
「質量分析」という用語は、化合物の質量を測定する方法および過程を指す。質量分析は、通常、アリコートまたはサンプルに関連する1つまたは複数の質量を決定する。すなわち、1つの化合物は、その化合物のフラグメントによる複数の質量値を有する可能性がある。そのような化合物の質量スペクトルは、複数の質量値を有する可能性がある。
【0008】
本明細書で用いているように、さらなる分析値は、化合物の1つまたは複数の特性値を生じさせるかなり多数の技術または方法を含む。好ましくは、さらなる方式の分析である少なくとも1つの方式の分析は、前記サンプル中の濃度または相対濃度に関連づけることができる値を生じさせる。複数のサンプルを経時的に採取する場合、質量および保持時間値により同定される1種または複数の化合物を好ましくは経時的な濃度の変化によりさらに同定する。
【0009】
本発明の方法は、化合物の推定上の同一性を確定するために、サンプル中の1種または複数の化合物の値を同様な値のデータベースと比較する特別な適用例を有する。
【0010】
本発明の方法は、薬物投与した、または疾患の進行を追跡するために、1人または複数の人からの生物学的組織からサンプルを得るさらなる適用例を有する。本方法は、少なくとも1つの化合物、すなわち薬物、代謝物またはタンパク質を保持時間値、質量値および相対濃度により同定することを可能にする。薬物が代謝されて代謝物を生ずる場合、本方法は、前記薬物が代謝されるときの経時的な濃度の増加による代謝物の同定を可能にする。あるいは、疾患状態が特定の代謝物もしくはタンパク質、またはその非存在によって特徴づけられる場合、そのような代謝物もしくはタンパク質を時間にわたってモニターすることができる。
【0011】
本発明の実施形態は、識別子および濃度範囲により、生物の全代謝構成要素(メタタボノーム)または全タンパク質構成要素(プロテオーム)の確定を可能にする。したがって、本発明は、プトテオミックおよびメタボノミック研究のツールとして有用である。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、複数のサンプル中の少なくとも1つの化合物を同定するための装置を特徴とする。装置は、サンプルをクロマトグラフィーにより複数のアリコートに分離する手段を含む。サンプルを複数のアリコートに分離する手段は、サンプル中の1種または複数の化合物に関連する保持時間範囲によってそのようにする。分離は、各化合物の保持時間を生じさせる。装置はさらに、前記アリコートの各々の質量分析を得る手段を含む。質量分析を得る手段は、化合物に関連する1つまたは複数の質量値を生じさせる。装置はさらに、各アリコートを少なくとも1つのさらなる方式の分析に供する手段を含む。少なくとも1つのさらなる方式の分析は、化合物に関連するさらなる分析値を生じさせる。装置はさらに、値を比較することを促進するために、化合物の各々の保持時間値を質量値および1つまたは複数のさらなる分析値と関連づけるコンピュータ手段を含む。本明細書で用いているように、値を比較することという用語は、標準、または正常値、疾患状態に一致する値、または時間にわたる同じ人の、もしくは異なるサンプルの値に対して行う比較を含む。
【0013】
好ましくは、装置は、サンプルを、サンプル中の濃度または相対濃度に関連づけることができる値を生ずる方式の分析に供する少なくとも1つの手段を有する。装置が経時的に複数のサンプルを受ける場合、質量および保持時間により同定される1種または複数の化合物を経時的な濃度の変化によりさらに同定する。
【0014】
上で用いたように、「コンピュータ手段」は、パーソナルおよび汎用大型コンピュータ手段に対して一般的な意味で用いる。コンピュータ手段は、前記化合物の推定上の同一性を確定するために、前記1種または複数の化合物を同様な値のデータベースと比較する。
【0015】
好ましくは、クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーからなる群から選択される。本明細書で用いているように、液体クロマトグラフィーは、限定せずに例として、サイズ排除、イオン交換、逆相および順相クロマトグラフィーを含む。
【0016】
本明細書で用いているように、質量分析は、限定せずに例として、MALD−TOF、EI−MS、ESI−MSおよびESI−MS/MS、APCI−MSおよびAPCI−MS/MS、光イオン化MSおよびMS/MSを含む。
【0017】
好ましくは、さらなる方式の分析は、限定せずに例として、質量分析、核磁気共鳴、FT−IR、UV/VIS分光光度法、蛍光および化学発光を含む。
【0018】
装置は、サンプルが、薬物を投与した、または疾患の症状を示す1人または複数の人の生物学的組織から得られる特別な適用例を有する。
【0019】
装置は、保持時間、質量スペクトルおよび相対濃度により同定される化合物の同定に特別な有用性を有する。化合物は、薬物、薬物代謝物、正常もしくは異常なタンパク質または代謝物であってよい。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例について述べる。
【0021】
(発明の詳細な説明)
図1は本発明の特徴を具体化する装置を示す図である。
図2a、図2b、図2c、図2d、図2e、図2fおよび図2gは、本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
図3は本発明の特徴を示す質量イオン化を示す図である。
【0022】
本発明は、生物のプロテオームおよびメタボノームの包括的、すなわち大規模な比較のための方法および装置に関する。本発明の方法および装置は、経時的な生物のプロテオームおよびメタボノームにおける1つもしくは複数の変化、または正常標準もしくは対照の開発、ならびに生物が置かれている物理的環境またはそれが摂取する薬物の変化の研究を促進する。
【0023】
本発明の特徴を具体化する装置に関して、本発明を詳細に記載することとする。当業者は、好ましい実施形態の記述およびそれを示す図面を明確に理解するであろう。本発明は、変更および修正を受けるので、記述および図面の正確な詳細に限定すべきでない。
【0024】
図1に目を向けると、数字11によって一般的に示される複数のサンプル中の少なくとも1つの化合物を同定するための装置を示す。装置11は、次の主要な構成要素、すなわち、クロマトグラフィーアセンブリ15、質量分析計アセンブリ17、UV検出器アセンブリ19のような第3の分析システムおよびコンピュータ21から構成されている。
【0025】
クロマトグラフィーアセンブリ15、質量分析計アセンブリ17およびUV検出器アセンブリ19は、導管23および25を介して流体連結されている。質量分析計アセンブリ17とUV検出器アセンブリ19の順序は個人的な好みの問題であり、逆にすることができることは理解されよう。保持値、質量値およびUVデータ値は、線31、33および35を介してコンピュータ21に伝達される。コンピュータと分析装置は無線網等を介して通信することもでき、線31、33および35はすべての形の通信を表すためのものであることは認識されよう。
【0026】
1つまたは複数のサンプルがクロマトグラフィーアセンブリ15により受け入れられる。クロマトグラフィーアセンブリ15は、サンプルをクロマトグラフィーにより複数のアリコートに分離する。好ましくは、クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーからなる群から選択される。本明細書で用いているように、液体クロマトグラフィーは、限定せずに例として、サイズ排除、イオン交換、逆相および順相クロマトグラフィーを含む。1つの好ましいクロマトグラフィーアセンブリ15は、適切なカラムおよび検出器を装着したALLIANCE(登録商標)オートサンプラおよびポンプアセンブリ(Water Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォード)である。
【0027】
クロマトグラフィーアセンブリ15は、サンプルを受け入れ、各サンプルを1種または複数の化合物に関連する保持時間範囲によりアリコートに分離する。すなわち、サンプルの成分が保持時間によりバンドまたはピークに分離される。当業者は、そのような保持時間が溶媒組成および分離が実現される固相、すなわち、カラム固相の差異によって異なることを認識するであろう。しかしながら、所与の組成、溶媒および固相に対しては、保持時間は十分に明確にすることができ、再現性がある。したがって、クロマトグラフィーアセンブリ15は、各化合物の保持時間を生じさせ、その保持時間がコンピュータ21によって受け入れられる。
【0028】
装置はさらに、前記アリコートの各々の質量分析を得るための手段を含む。質量分析を得るための手段は、質量分析計17である。質量分析計は、いくつかの供給業者から入手可能であり、MALD−TOF、EI−MS、ESI−MSおよびESI−MS/MS、APCI−MSおよびAPCI−MS/MS、光イオン化MSおよびMS/MSを含んでいてよい。好ましい質量分析計は、Waters Corporation(米国マサチューセッツ州ミルフォード)により販売されているQUATTRO MICRO(商標)、Q−TOF(商標)、QUATTRO PREMIER(商標)およびZQ(商標)ブランドの質量分析計である。
【0029】
質量分析計17は、化合物に関連する1つまたは複数の質量値を生じさせ、コンピュータ21に送り、関連する保持時間値を含むメモリーに保存する。装置はさらに、各アリコートを少なくとも1つのさらなる方式の分析に供する手段を含む。
【0030】
装置11は、化合物に関連するさらなる分析値を生じさせる少なくとも1つのさらなる方式の分析を有する。示したように、そのようなさらなる方式の分析はUV検出器19である。しかし、さらなる方式の分析は、UV検出器19の代わりに質量分析、核磁気共鳴、FT−IR、UV/VIS分光光度法、蛍光および化学発光のようなものを用いることができよう。好ましいUV検出器は、Waters Corporation(米国マサチューセッツ州ミルフォード)により販売されている2996(商標)UV検出器である。
【0031】
UV検出器19は、導管25を介して質量分析計17に連結されていて、サンプルまたはサンプルのアリコートを受け入れる。UV検出器19は、サンプルまたはアリコートを排出導管[示さず]を経て排出させる。
【0032】
UV検出器19は、検出されている化合物に特有なさらなる分析値であるUV吸収を生じさせる。読みの強度に誘導されるこの第2の値は、経時的に、またはサンプルの間の濃度または相対濃度の示度を与えることができる。相対濃度は、ピークサイズおよび面積に関連する通常のクロマトグラフィー値からも推定することができる。これらの値はコンピュータに送られる。
【0033】
コンピュータ21は、保持値、質量値、UV吸収および強度に対応するシグナルを受け入れ、質量値、UV値および強度値を保持値と関連づける。保持値、質量値およびUV値は、化合物に特有である。強度値は、コンピュータ21がそのような化合物を経時的に追跡することを可能にする。保持値、質量値およびUV値は、化合物を種々のサンプルにより追跡またはモニターし、標準もしくは正常値と比較し、または平均値をデータベースに保存することを可能にする。本明細書で用いているように「値の比較」という用語は、標準、または正常値、または疾患状態に一致する値、または同じ個体からの経時的な、もしくは異なるサンプルからの値に対して行う比較を含む。好ましくは、コンピュータ21は値および結果を表示するためにモニターまたはプリントを有する。
【0034】
装置11の操作は、操作および使用の方法に関して述べる。クロマトグラフィーアセンブリ15は、サンプルを受け入れ、クロマトグラフ処理により保持時間値を生じさせる。次いで、保持時間値に関連するアリコートが質量分析計17により受け入れられる。質量分析計17は、質量値を生じさせる。保持時間値および質量値は、コンピュータ21に送られ、そのような値に関連する1種または複数の化合物の識別子が使用される。例えば、コンピュータ21は、ピークの保持時間を質量値と関連づける。関連の1つの仕方を以下に示す。
【0035】
[A、B]
【0036】
上で用いているように、AおよびBの少なくとも1つは保持時間値であり、残りの値は質量値である。クロマトグラフィーの分野の技術者は、異なるクロマトグラフ条件は異なる保持値をもたらす可能性があることを認識するであろう。関連する質量値は、異なるクロマトグラフ条件からの異なる保持値に伴う識別特性を単一化学物質または化合物に対する1つの質量に対応させる手段を提供する。
【0037】
保持時間値および質量値に関連するアリコートは、次に、UV検出器19のようなさらなる分析手段により受け入れられる。UV検出器19は、該保持時間の化合物に関連するさらなる特性値を生じさせる。このUV吸光度値は、さらなる識別子として保持時間および質量値と関連する。関連の1つの仕方を以下に示す。
【0038】
[A、B、C]
【0039】
上で用いているように、A、BおよびCの少なくとも1つは保持時間値であり、残りの値の1つは質量値であり、さらなる残りの値の1つはUV吸光度値である。クロマトグラフィーの分野の技術者は、これらの値が記録され、保存され、処理される順序は任意であることを認識するであろう。当業者はさらに、さらなる検出器および特性値の数は極めて多いことを認識するであろう。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つの値は、濃度または相対濃度値である。例えば、UV検出器は、保持値に関連する化合物の濃度に相関するシグナルの強度の値を与える可能性がある。関連の1つの仕方を以下に示す。
【0041】
[A、B、C、D]
【0042】
上で用いているように、A、B、CおよびDの少なくとも1つは保持時間値であり、残りの値の1つは質量値であり、さらなる残りの値の1つはUV吸光度値であり、値のうちの1つは濃度または相対濃度値である。
【0043】
代謝または経時的なプロテオームもしくはゲノムの変化をモニターすることが望まれる場合、関連する値に時間値を加えることが有用である。この時間値は、時間にわたる化合物の保持時間の追跡を可能にする。例えば、保持時間は、薬物の投与と関連づけることができる。薬物は経時的に身体から排出されて、追跡することができる濃度の変化がもたらされる。化合物は、保持時間に関連するサンプルの流れに出現する代謝物であってよい。関連の1つの仕方を以下に示す。
【0044】
[A、B、C、D、E]
【0045】
上で用いているように、A、B、C、DおよびEの少なくとも1つは保持時間値であり、残りの値の1つは質量値であり、さらなる残りの値の1つはUV吸光度値であり、値のうちの1つは濃度または相対濃度値であり、値のうちの1つは時間値である。
【0046】
さらに、得られる値は、多数の同様なサンプリングのデータベースからのコンピュータ21に保存されている正常値または平均値と比較することもできる。
【0047】
図2aから図2dに目を向けると、そのような図は本発明の一実施形態を例示している。特に図2aについて述べると、最初の生物学的サンプル(正常または正常サンプルの複合物とされる一連のサンプルからなっていてよい。)[S]。このサンプル[S]は、保持時間、質量値およびUV値ならびに相対濃度を定める化合物を有する。サンプルの源が、例えば、薬剤、化学物質の使用による、または物理的条件(熱、寒冷等)の変化による摂動を受ける場合、経時的な変化を検討するために源はサンプルされて、第1のサンプル[S]、第2のサンプル[S]ならびに添え字「x」により表示される他のさらなるサンプル[S]が得られる。新たな保持時間(Rx1、Rx2、Rxx)を定める新たな化合物を経時的に同定することができる。ベースまたは最初のサンプル[S]を含むサンプルは、プロテオーム「[P]」、メタボノーム「[M]」またはゲノム「[G]」を対象とすることができる。この場合、[S]=[G]、[P]、[M]のように、サンプルはその構成成分に相当する。ここで、[G]⇔[P]⇔[M]である。各サンプル成分を分析し、上記の化合物注釈スキームを用いて同定する。
【0048】
別の実施形態において、3つのクラスの生化学的分子の組合せを分析する。例えば、本発明の一態様は、分析するプロテオームおよびメタボノームのみに関する。生化学的クラスの分析の他の変更が当業者により認識され、実施され得る。他の実施形態において、1つの生化学的クラスのみを分析する。例えば、プロテオームのみまたはメタボノームのみを分析する。
【0049】
異なるサンプルからのプロテオーム(「P」)の値が決定されたならば、主成分分析(PCA)のような適切な統計法を用いた比較解析を実施することができる。一般的に、PCAは1対1比較に用いられる。しかし、PCAの最も適切な適用は、多数のサンプルの「学習セット」を用いて対照データセットを発生させ、試験データセットを学習または対照セットと比較することである。これにより、所与の試験セットが「正常人」の集団と有意に異なっているかどうかを判定することができる。
【0050】
本発明においては、化合物注釈スキームは、開業医が検査された異なるサンプル間などで種々のプロテオーム要素を追跡することを可能にするであろう。
【0051】
図2eにおいて、異なるサンプルのプロテオームを最初のサンプル(またはサンプルセット)を含む他の各々のサンプルと比較する。この比較解析は、例えば、最初のサンプルまたはサンプルセット(S)と1つまたは複数の処理サンプル(S、S等)との間のプロテオームの検出可能な変化の検出を促進する。それぞれ図2fおよび図2gに示すように、同じことがメタボノーム(「M」)およびゲノム(「G」)について当てはまる。
【0052】
図2e、2fおよび2gは、図2b〜2dの基礎をなすメカニズムを示している。サンプル成分のいずれかの変化を確認するために、個々の成分をその各標準値、すなわち、[P]、[G]または[M]と比較する。1つの成分の変化は、他のサンプル成分の変化を反映する可能性がある。例えば、ゲノム[G]の変化は、メタボノーム[M]に影響を及ぼし得るプロテオーム[P]の変化をもたらし得る。
【0053】
本明細書に示す分析法は、細胞および生化学的レベルでの理解を促進する。本明細書に記載するような方法でプロテオームおよびメタボノームを分析することにより、開業医は、例えばメタボノームの変化をプロテオームに認められる変化と関連づけることができる。したがって、プロテオームのどのような要素がメタボノームに認められる変化に影響を及ぼすかについての理解が促進される。そして、あらゆる分子生物学者が知っているように、ゲノム(「G」)の変化はプロテオームに劇的に影響を及ぼし得る。
【実施例1】
【0054】
図3は、サンプル識別子:1.3.2.5.40[乳癌患者尿サンプル]、化合物注釈:RT27.72〜28.64の質量イオン化である。
【0055】
サンプル1.3.2.5.40の個々のデータ記録は次のとおりである。
【0056】
【表1】

2°このサンプルにおいては、RRTおよびMSに基づく注釈における重複に起因する不明確さが1°注釈に認められるとき、MS/MSデータからの注釈が発生する。この注釈は、主二次イオンの質量に基づいている。
【0057】
したがって、本明細書に記載する方法は、メタボノーム、プロテオームおよびゲノムの間の相互関係の理解を促進する。ゲノムの解明は、本明細書に記載の方法に適用可能であるが、当業者がよく理解している既知の分子技術を用いて比較的容易に達成することができることを指摘すべきである。
【0058】
これらならびに他の特徴および利点は、本明細書を読み、図面を見ることにより、当業者には容易に明らかになろう。したがって、本発明は、厳密な詳細に限定すべきでなく、特許請求の範囲における主要事項を含むべきである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の特徴を具体化する装置を示す図である。
【図2a】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2b】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2c】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2d】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2e】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2f】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図2g】本発明の方法および装置の特徴を示す図である。
【図3】本発明の特徴を示す質量イオン化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)サンプルをクロマトグラフィーによって、各々が1種または複数の化合物に関連する保持時間範囲により定義される複数のアリコートに分離して、前記化合物の保持時間を得るステップと、
b)前記アリコートの各々について、前期保持時間範囲内の1種または複数の化合物に関連する1つまたは複数の質量値を有する質量分析を得て、各化合物の質量を得るステップと、
c)各アリコートを少なくとも1つのさらなる方式の分析に供して、各化合物のさらなる分析値を得るステップとを含み、前記サンプル中の前記1種または複数の化合物を保持時間値、質量スペクトル値および前記さらなる分析値により同定して、経時的な、異なるサンプルからの値の比較を容易にする、サンプル中の1種または複数の化合物を同定する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの方式の分析が前記サンプル中の濃度または相対濃度に関係する値をもたらす請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のサンプルを経時的に採取し、質量および保持時間値により同定される1種または複数の化合物を経時的な濃度の変化によりさらに同定する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種または複数の化合物を同様な値のデータベースと比較して、前記化合物の推定上の同一性を確定する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記クロマトグラフィーが液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体クロマトグラフィーがサイズ排除、イオン交換、逆相および順相からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記質量分析がMALD−TOF、EI−MS、ESI−MSおよびESI−MS/MS、APCI−MSおよびAPCI−MS/MS、光イオン化MSおよびMS/MSからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる方式の分析が質量分析、核磁気共鳴、FT−IR、UV/VIS分光光度法、蛍光および化学発光からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが薬物を投与した1人または複数の人の生体組織由来のものである請求項3に記載の方法。
【請求項10】
保持時間値、質量値および相対濃度により同定される少なくとも1つの化合物が前記薬物である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬物が代謝されて第1の代謝物を生成し、前記第1の代謝物が前記薬物が代謝されるときに経時的に濃度の増加を示す請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a)1種または複数の化合物の保持時間を得るために、クロマトグラフィーにより、サンプル中の1種または複数の化合物に関連する保持時間範囲別にサンプルを複数のアリコートに分離する手段と、
b)化合物に関連する1つまたは複数の質量値を生じさせる、前記アリコートの各々の質量分析を得るための手段と、
c)前記化合物のさらなる分析値を生じさせる、少なくとも1つのさらなる方式の分析に各アリコートを供する手段と、
d)経時的に、異なるサンプルからの値を比較することを促進するために、前記化合物の各々の前記保持時間を前記質量値および前記1つまたは複数のさらなる分析値と関連させるためのコンピュータ手段とを含む、
薬物を人に投与し、経時的に採取する複数のサンプル中の少なくとも1つの代謝物を同定するための装置。
【請求項13】
前記サンプルをある方式の分析に供する少なくとも1つの手段が前記サンプル中の濃度または相対濃度に関連させることができる値を生じさせる請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が経時的に複数のサンプルを受け、質量および保持時間により同定される1種または複数の化合物が経時的な濃度の変化によりさらに同定される請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記コンピュータ手段が前記1種または複数の化合物を同様な値のデータベースと比較して、前記化合物の推定上の同一性を確定する請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーが液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーからなる群から選択される請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記液体クロマトグラフィーがサイズ排除、イオン交換、逆相および順相からなる群から選択される請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記質量分析がMALD−TOF、EI−MS、ESI−MSおよびESI−MS/MS、APCI−MSおよびAPCI−MS/MS、光イオン化MSおよびMS/MSからなる群から選択される請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記さらなる方式の分析が質量分析、核磁気共鳴、FT−IR、UV/VIS分光光度法、蛍光および化学発光からなる群から選択される請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記サンプルが薬物を投与した1人または複数の人の生体組織由来のものである請求項14に記載の装置。
【請求項21】
保持時間、質量スペクトルおよび相対濃度により同定される少なくとも1つの化合物が前記薬物である請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記薬物が代謝されて第1の代謝物を生成し、前記第1の代謝物が前記薬物が代謝されるときに経時的に濃度の増加を示す請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−502414(P2006−502414A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543692(P2004−543692)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/032211
【国際公開番号】WO2004/034049
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(504187179)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (4)
【Fターム(参考)】